JP4904477B2 - 血液流動性の改善剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液の流動性が低下する疾患の予防及び治療に有用な医薬品に関するものである。
また、本発明は、配糖体の糖部がビシアノシド、プリメベロシド又はラクトシドであるベンジルアルコールの二糖配糖体を有効成分として含む血液流動性が低下する疾患の予防及び治療剤に関する。
さらに、本発明は、生梅又は梅酢由来のベンジルビシアノシド又はベンジルプリメベロシドを有効成分として含む血液流動性が低下する疾患の予防及び治療剤に関する。
【0002】
従来、血液流動性の低下の原因は加齢とは無関係とされている。日常の食習慣、運動不足、喫煙、精神的ストレス等の生活習慣の影響を強く受けるものであり、実際的には血液流動性はその人の健康状態を反映するものであって、血液流動性の低下は多くの生活習慣病の発症を誘引していることが知られている。
血液流動性を良くするには適正な生活習慣に戻せばよく、過食、偏食、不規則な時間帯の食事、運動不足、精神的ストレスなどを避け、健康的な生活習慣に戻せばよいことはわかっているが、習慣化した生活パターンは元に簡単には戻らないという問題がある。
【0003】
今や、成人病という表現は見直され、”生活習慣病”と言い換えられている。
生活習慣病の前駆症状は、血流の悪さにまず現れてくる。例えば、長期にわたって血液流動性が低下した状態が続くと、高脂血症、血栓症、肥満症に始まる糖尿病、高血圧症、さらには動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などが引き起こされる。また、血液流動性は、血圧と密接な関係を持っており、特定の疾病ではなく、原因の明らかでない高血圧は本態性高血圧と呼ばれている。ヒトの身体は血液が流れにくい状態におかれると、流れを維持するために血圧を上げることで補償しようとする。
【0004】
しかしながら、血圧を上げて血液を無理に流すことにより、血管内皮や血液細胞を含む循環器系に大きな力学的ストレスを与えることになる。特に血小板はストレスに敏感であり、自らの凝集性を亢進し、血液流動性がさらに低下するという悪循環が形成されると考えられる。そして長時間にわたって血液流動性の低下の状態が続くと、高血圧を誘発するとともに動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳出血等、循環器系の疾病が起きやすくなることも知られている。
こうした生活習慣病の急増は疾病に至る寸前の膨大な数の予備的患者の存在を意味しており、また、循環器系疾病の後遺症による寝たきり老人や痴呆性患者の介護などの点で大きな社会的問題となっている。
【0005】
【従来の技術】
血液流動性は、循環器としての心臓や状況に応じて収縮、弛緩する柔軟な弾性体である血管の状態もさることながら、血液そのものの影響をより強く受けている。ヒトの体重の約8%を占める血液は、小さい血球成分が血漿と称する液体中に分散する懸濁液であり、正常なヒトの血液では血球成分の殆どは直径約7μm 、厚さ1〜2μm の中央がくぼんだ円形の極めて変形性に富む赤血球であって、血球成分の全数の1/600 以下の白血球と1/800 以下の血小板などからなる。一方、血球成分を分散させている液体である血漿には90%の水分、約7%のタンパク質及びその他の有機、無機化合物が含まれている。
【0006】
直径 100μm 以下の細動脈や毛細血管の流れは、微小循環と呼ばれ、周辺組織との間で血流によって運ばれる栄養物質やガス交換が行われるので、生体の維持にとって非常に重要な働きを果たしており、循環器系の生活習慣病と密接な関係をもっている。
毛細血管では直径7μm の赤血球は、直径5〜8μm 血管内を大きく変形しながら流動する。また、直径7〜22μm の白血球も細い血管内皮上を横転しながら流れるが、場合によっては血管内皮の壁面に容易に付着する。さらに、直径2μm 程度の血小板も高脂血症やなんらかのストレスがあると、互いに凝集し、凝集塊を形成し血管内皮の壁面に付着したり、ときには脂質をともなって斑状に血栓として沈着する。
【0007】
このように微小循環部位での血液流動性は、種々の要因によって支配されているが、血液側からみると、赤血球の変形能、白血球の粘着能、血小板の凝集能、ヘマトクリット値、血漿粘度などに主として依存していると考えられる。
従って、これらの個々の要因を変化させ、正常化することにより血液流動性は改善されると考えられる。しかし、ヒト血液中においてどの要因がどの程度、強く働いているかを判定することは現実的に困難と言える。
【0008】
ところで、ここ数年、血液流動性を改善する食品として、コウジ黒酢、黒豆の煮汁、赤ワイン、梅肉エキス、ダッタンそばなどの伝統的食品が有効であるとして報告されている。しかし、その有効成分が単離、同定された例は数少ない。唯一、最近になって梅肉エキス中のムメフラールが血流改善成分として発表された。しかし、この成分は梅肉エキスの加熱、脱水の製造工程で生成してきた化合物で生梅中に含まれていたものではなかった。
【0009】
そこで、本発明者らは、南紀和歌山で生産される南高梅の梅漬けのさいに生成する、青梅の塩漬けの抽出物である梅酢を脱塩し、商品化、その梅酢の血流改善効果について報告した(ヘモレオロジー研究会誌; 2, 37〜41(1999)) 。また、梅酢の飲用効果についても報告した(近畿化学工業会、通巻570 号、P.4〜7、平成12年10月1日)。すなわち、昔から日本人に親しまれ、常食されてきた伝統的食品にこうした血液流動性を改善する効果があるとすれば、分離精製した有効成分も又、医薬品として有効であり、その服用においても副作用の少ない安全な成分であると考えられたからである。
一方、赤血球の変形能を改善する作用を有する薬剤として、ベントキシフィリンやサルボグレラートが臨床的に用いられている。また、ビンポセチン、ニセルゴリン、マレイン酸シネパジド、塩酸フルナリジンなども赤血球変形能を改善するとされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、血液流動性が低下する疾患の予防及び治療に有用な医薬品を提供することにある。
さらに具体的に言えば、本発明の目的は血液流動性、特に微小循環部位での血液流動性を改善することにより、血液流動性が低下する疾患の予防及び治療に有用な医薬品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者ら、上記の目的を達成するべく鋭意努力した結果、ベンジルアルコールの二糖配糖体が血液流動性を著しく改善することを見出した。
また、これらの化合物が血液流動性、特に微小循環部位での血液流動性を改善することができるので、血液流動性が低下する疾患の予防及び治療に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明における血液流動性の改善に資する有効成分は、ベンジルアルコールのグルコース配糖体であるベンジルβ−Dグルコピラノシドにさらに1分子の糖が結合した二糖配糖体である。
そのうちの一つは、ベンジルアルコールのグルコース配糖体であるベンジルβ−Dグルコピラノシド、略してベンジルグルコシドに、さらに1分子のアラビノースがβ(1→6)結合したベンジルビシアノシドである。もう一つは、ベンジルグルコシドにさらに1分子のキシロースがβ(1→6)結合したベンジルプリメベロシドであり、更なる一つは、ベンジルグルコシドにさらに1分子のガラクトースがβ(1→4)結合したベンジルラクトシドである。
【0013】
本発明で見出されたこれらの血流改善成分の1つであるベンジルビシアノシド又はベンジルプリメベロシドは、例えば次のようにして梅酢から抽出、分離精製される。
生梅を塩漬けする際に生成してくる約20%の塩分含有の梅酢からイオン交換膜電気透析法で塩分だけを分離し、濾過精製した脱塩梅酢を得る。この脱塩梅酢に疎水性吸着剤のアンバーライト樹脂 XAD-2を添加、混合撹拌処理した後、濾過する。ポリフェノール類など有効成分を吸着した XAD-2樹脂は同時に吸着されている余分な有機酸、アミノ酸、糖質などを除去するため十分に水洗浄後、メタノールで溶離し、このメタノール溶液を減圧濃縮、凍結乾燥にかけ、褐色の粉末を得る。
【0014】
次に、脱塩梅酢から吸着分離されたこの粉末をメタノール、クロロホルム、水系の遠心液々分配クロマトグラフィーにかけ粗分画する。粗分画の1つ Fr.4 をセファデックスLH-20 ゲル濾過クロマトカラム及び ODP-50 ショウデックス逆相分配カラムにかけ、白色の高純度結晶物のベンジルビシアノシド並びにベンジルプリメベロシドを得ることができる。
本発明における、もう一つの血液流動性の改善成分は、ベンジル基を有するベンジルアルコールから誘導されるベンジルグルコシドをはじめとする数多くの関連する化合物を探索の結果、効果のあることが明らかとなったベンジルアルコールのジグリコシドであるベンジルラクトシドである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の血液流動性の改善成分であるベンジルビシアノシド及びベンジルプリメベロシドの製造の具体例を示すと以下のとおりである。
【0016】
【製造例】
(1)脱塩梅酢20kgに疎水性吸着剤アンバーライト樹脂 XAD-2( オルガノ社製) 容量1000ml (重量660g) を添加、混合撹拌処理後、濾過した。ポリフェノール類や糖質を吸着した XAD-2樹脂を十分に水洗浄後、メタノールで溶離した。このメタノール溶離液を減圧濃縮、凍結乾燥にかけ、褐色の粉末22.0g を得た。
(2)上記(1)の操作で得られた粉末10.0g メタノール−クロロホルム−水系の遠心液々分配クロマドクラフィー (三鬼エンジ製)にかけ、Fr.1, 2, 3, 4, 5, 6, 7に粗分画した。そのうちの Fr.4 に関し、乳褐色の結晶状粉末を得た。
この粗分画 Fr.4 の脱塩梅酢中の濃度は 276ppm であった。
(3)上記(2)の操作で得られた Fr.4 の粉末 1.0g をセファデックスLH-20 のゲル濾過クロマトカラム並びにショウデックス ODP-50 の逆相分配カラムにかけて精製し、白色の結晶物Fr.4A 100mgとFr.4B 50mg とを単離した。
【0017】
NMR で分析した結果、Fr.4Aはベンジルビシアノシドであり、Fr.4Bはベンジルプリメベロシドであることが明らかとなった。両者の分子構造上の関係は立体異性体であり、前者ベンジルビシアノシドの性状は次の通りであった。
【0018】
分子式:C18H26O10
性状 :白色粉末状
MS : 425.2 、391.3 、307.1 、282.3
イオンモード: FAB+ (Na塩で検出) 、理論値 (Na塩) 425.38
【0019】
1H-NMR δ(ppm) 、重水; 3.33(1H,dd, J=8Hz, 9Hz, H-2') 、3.47(1H, t, J=9Hz,H-3') 、3.49(1H,t, J=9Hz, H-4') 、3.58-3.68(4H, H-5', 2 ”, 3 ”, 5 ”) 、3.86(1H,dd, J=5.5Hz, 11.5Hz, H-6')、3.93(1H,dd, J=2.5Hz, 11.5Hz, H-5”) 、3.95(1H, H-4”) 、4.17(1H, dd, J=2Hz, 11.5Hz, H-6') 、4.41(1H,d, J=7.5Hz, H-1 ”) 、4.55(1H,d, J=8Hz, H-1') 、4.77(1H, d,J=11.5Hz, H-7) 、4.95(1H, d,J=11.5Hz, H-7) 、7.40-7.50(5H, H-2, 3, 4, 5, 6)
13C-NMR δ(ppm) 、重水:68.98(C-5 ”) 、71.17(C-6'), 72.29(C-4')、73.54(C-2”) 、74.36(C-7)、75.10(C-3”) 、75.91(C-2') 、77.81(C-5') 、78.57(C-3') 、104.19(C-1')、106.46(C-1”) 、131.25(C-4) 、131.46(C-2, 6 or C3, 5) 、131.54(C-2, 6 or C3, 5) 、139.56(C-1)
【0020】
【化1】
Figure 0004904477
【0021】
(4)総重量 902g(果肉部重量825g) の生梅30個に水を加えて回転羽根にて破砕し、濾過したロ液を前述の (1) の操作と同様に XAD-2で、吸着、水洗浄後にメタノールで溶離した。このメタノール溶離液を減圧濃縮、凍結乾燥にかけ、褐色の粉末 630mgを得た。
この粉末を前述の(2)と(3)と同様の操作を行い、白色の結晶物、Fr.4A'10mg 、Fr.4B'4.5mgを単離した。
NMR で分析した結果、前者はベンジルビシアノシドであり、後者はベンジルプリメベロシドであることは明らかであった。
【0022】
【試験例】
上記製造例で得られたベンジルビシアノシド及びベンジルプリメベロシド並びにこれらの粗分画 Fr.4 、そしてベンジルラクトシドの血液流動性の改善について試験した。
【0023】
まず、血液流動性を測定する装置 (菊池祐二; 細胞、30(7) 、27〜30(1998)) について説明する。シリコン単結晶基板表面を加工して形成した幅7μm 、深さ 4.5、長さ30μm 、8736本の並列の溝からなるマイクロチップを光学研磨したガラス基板で圧着することにより、疑似毛細血管に相当する流路を形成したMC-FAN (日立原町電子工業製) を用いて20cm水柱の圧力差で試験血液及び対照血液を流し、 100μl の通過時間を求めると同時にテレビモニター観察を行った。 得られた全血通過時間は、直前に測定された生理食塩水100 μl の標準通過時間12秒で補正し、換算した。
また、MC-FANの測定は、血液の採血後、速やかに1時間内に実施した。
【0024】
(イ)製造例(2)で得た粗分画 Fr.1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 をそれぞれの固形分濃度が10ppm になるように、8週齢ラット雌の腹大動脈よりヘパリン5%採血した新鮮血に添加し、調整した全血サンプル 100μlの通過時間を測定した。
未添加のコントロール 122秒に対して、粗分画 Fr.4 添加の試験血液のみ81.8秒と大きな全血通過時間の短縮をみ、大幅な血液流動性の改善が見られた。更に粗分画 Fr.6 添加の試験血液は変わらず、その他の Fr.1, 2, 3, 5, 7 は逆に凝集性、粘性が大きく亢進し、血液流動性は低下した。
【0025】
(ロ)20才代の健常な男性の上腕より静脈血をヘパリン5%採血した新鮮血に製造の具体例(2)で得た粗分画 Fr.3, 4, 5, 6をそれぞれの固形分濃度が 100ppm になるように添加、調整したヒト全血サンプル 100μl の通過時間を測定した。
未添加のコントロール46.0秒に対して、粗分画 Fr.4 添加の試験血液のみ41.5秒と大きな全血通過時間の短縮をみ、大幅な血液流動性の改善が見られ、Fr.3, 5, 6 添加の試験血液は逆に血液流動性、粘着性が大きく亢進し、血液流動性が低下した。
【0026】
(ハ)50才代の健常な男性の上腕より静脈血をヘパリン5%採血した新鮮血に製造例(2)で得られた粗分画 Fr.4 の固形分濃度が10, 30, 100 ppm になるように添加、調整したヒト全血サンプル 100μl の通過時間を測定した。
未添加のコントロール51.0秒に対して、粗分画 Fr.4 の固形分濃度が10, 30, 100 ppm の試験血液はそれぞれ45.6, 47.7, 44.3秒と大きな全血通過時間の短縮をみ、血液流動性の改善が見られた。また、この時の比較に測定した蒸留水0.33%、1.0 %添加の場合、それぞれ52.2秒、54.3秒で、コントロールの51.0秒と比べて若干、全血通過時間は延長した。
【0027】
(ニ)上記製造例(3)で得られた単離精製の結晶物 Fr.4 Aのベンジルビシアノシドの固形分濃度が5, 10, 20 ppm になるように調整したヒト全血サンプル100 μl の通過時間を測定した。
被験者は、健常な女性3人で上腕より、静脈血をヘパリン5%採血した新鮮血を使用した。
比較対照には、未添加のコントロール及び Fr.4 Aのベンジルビシアシドの溶解水である0.85%の生理食塩水を1.0 %添加した全血サンプルを測定に供した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0004904477
【0029】
Fr.4 Aのベンジルビシアノシド添加の全血サンプルは、未添加のコントロールと比較して、被験者3人とも全血通過時間は短縮し、血液流動性の改善が見られた。
なお、生理食塩水の添加による全血通過時間に与える影響は少ない。
以上の結果はベンジルビシアノシドが血液流動性を改善する有効成分であることをインビトロで実証するものであった。
【0030】
(ホ)上記製造例(3)で得られた単離結晶物 Fr.4 Aベンジルビシアノシド、 Fr.4 Bベンジルプリメベロシド、並びにベンジルラクトシドの濃度が10ppm になるように調整したヒト全血サンプル 100μl の通過時間を測定した。被験者は健常な男性6人、女性4人の計10人で上腕より静脈血をヘパリン5%採血した新鮮血を使用した。
なお、比較例として、ベンジルアルコールの一糖配糖体であるベンジルグルコシドを同様に固形分濃度が10ppm になるように調整したヒト全血サンプルを測定に供した。
結果を表2示した。
【0031】
【表2】
Figure 0004904477
【0032】
【試験結果の総括】
1.ベンジルビシアノシドの10ppm の添加により、未添加のコントロールと比較して被験者10人の内7人において、全血通過時間は短縮、血液流動性の改善をみ、2人は延長し、1人は変化なしの結果を得た。
2.ベンジルプリメベロシドの10ppm の添加により、未添加のコントロールと比較して被験者7人の内6人において全血通過時間の短縮、血液流動性の改善をみ、1人は延長した。
3.ベンジルラクトシドの10ppm の添加により、未添加のコントロールと比較して、被験者7人の内5人において全血通過時間の短縮、即ち血液流動性の改善をみ、2人は延長した。
4.比較例として、ベンジルグルコシドの10ppm を添加した場合は、未添加のコントロールと比較して、被験者7人の内1人のみ全血通過時間の短縮を見たものの、6人は延長し、即ち血液流動性は低下した。
【0033】
上記試験結果は、ベンジルアルコールの二糖配糖体であるベンジルグルコピラノシルグリコシドに代表されるベンジルビシアノシド、ベンジルプリメベロシド及びベンジルラクトシドが血液流動性を改善する有効成分であることをin vitroで実証するものである。
未添加のコントロールの全血通過時間が60秒以下、60秒以上をとわず本成分の添加により、血液流動性が改善されている事実は血液中の赤血球変形能の向上に対し、また血小板凝集能の抑制に対しても併わせてその効果を有するものと考えられる。
【0034】
本発明におけるベンジルビシアノシドとベンシジルプリメベロシドは、本発明者らが見出した新規化合物であり、ベンジルラクトシドは公知化合物であって、本発明の実施にあたっての入手方法は何ら限定されるものではない。
医薬品として取り扱うには単離精製する必要があるが、健康食品として取り扱う場合は、分離する必要は全くなく、適宜、自然食品の形態で自由に摂取して何ら問題ない。また、医薬品として取り扱う場合、有効成分の上記化合物の1種又はそれ以上をそのまま患者に投与してもよいが通常はこれらの有効成分を含む医薬組成物を製剤添加物を用いて製造し、医薬組成物の形態で患者に投与することが好適である。また、本発明におけるこれらの有効成分は、極めて高い水溶性を示すので注射薬として、また錠剤や顆粒剤の形状で使用してよいものであり、生体内に皮下、経口投与された後も速やかに吸収され、その血流改善効果がある。
【0035】
医薬組成物の製造に用いられる製剤添加物としては、例えば結合材、賦形剤、崩壊剤、滑剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶剤、溶解助剤、等張剤、PH調節剤、安定剤などを挙げることができる。
また、経口投与に適する製剤の例としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などを挙げることが出来る。また、非経口投与に適する製剤としては、例えば注射剤、点滴剤、坐薬剤などをを挙げることができる。
【0036】
実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。
【実施例1】
製造例で得られたベンジルビシアノシド3g を注射剤製造の常法により、注射用蒸留水1000mlに溶解、塩化ナトリウムで等張化した後アンプルに封入した。本注射剤は1ml中にベンジルビシアノシド3mgを含有する。本注射剤は症状にあわせて1回に2〜10mlを静脈内注射する。
【0037】
【実施例2】
製造例で得られたベンジルビシアノシド20g とベンジルプリメブロシド10g を粉末とし、これに無水乳糖900g、蔗糖脂肪酸エステル50g 及び第三リン酸カルシウム20g を混合し、打錠機にて打錠し、直径10mm、重量 400mgのスラッグ剤を作り、これを破砕後分級して20〜60メッシュの粒状の顆粒剤を得た。本顆粒剤は1g中有効成分30mgを含有し症状に合わせて1回、 0.2〜1.0gを1日3回服用する。
【0038】
【実施例3】
製造例で得られたベンジルプリメベロシド10g を粉末とし、これに無水乳糖250g、蔗糖脂肪酸エステル30g 、微結晶セルロース200g、ステアリン酸マグネシウム10g を混合し、打錠機にて打錠し直径10mm、重量300gの錠剤を製造した。本錠剤は1錠中ベンジルプリメベロシド6mgを含有し、症状に合わせて1回に1〜5錠、1日3回服用する。
【0039】
【実施例4】
製造例で得られたベンジルラクトシド10g を粉末とし、これに無水乳糖490gを混合し、1カプセル当り 500mgを充填、カプセル剤を形成した。本カプセル剤は1カプセル中にベンジルラクトシド5mgを含有し、症状に合わせて1回1〜5カプセル、1日3回服用する。
【0040】
【発明の効果】
本発明の医薬は、血液流動性を改善する作用を有し、特に微小循環部位での血液の流動性を改善するので病態として血液の流動性の低下が認められる各種疾病の予防及び治療に有用である。例えば末梢循環不全症、動脈硬化症、高血圧症、血栓症、高脂血症、糖尿病、虚血性症状などが挙げられるが、適用対象は上記の例に限定されない。
本発明におけるこれらの有効成分は、極めて高い水溶性を示すので注射薬として、また錠剤や顆粒剤の形状で使用してよいものであり、生体内に皮下、経口投与された後も速やかに吸収され、その血流改善効果がある。
また、本発明の医薬の投与量は、特に制限されず、投与形態、年齢、体重、症状に応じて適宜選択する。例えば経口投与の場合には、成人1人当り有効成分量として0.10〜10.0mg/kg 、好ましくは 0.2〜2.0mg/kgを2〜3回に分けて投与すればよい。また、静脈内投与の場合には、成人1人当り有効成分量として0.05〜5.0 mg/kg 、好ましくは 0.1〜1.0mg/kgを投与すれば十分である。

Claims (1)

  1. ベンジルアルコールの二糖配糖体として、ベンジルラクトシドを有効成分として含むことを特徴とする血液流動性が低下する疾患の予防及び治療剤。
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