JP4903657B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm2)0.5)を、1(cal/cm2)0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
[2]前記(D)工程の前に、前記(C)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3]前記(B)工程の前に、前記(A)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4]透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm2)0.5)を、1(cal/cm2)0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
[5]前記(G)工程の前に、前記(F)工程で得た混合物に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水または触媒を混合して、ゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[4]に記載の光学フィルムの製造方法。
[6]前記溶媒の、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした相対値で表される相対蒸発速度が、0.03〜0.6である、[1]〜[5]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[7]前記透明樹脂は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸である、[1]〜[6]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[8]前記金属酸化物は、珪素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウム元素を含む、[1]〜[7]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[9]前記ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートまたは金属カルボキシレート、もしくはこれらの重縮合物である、[1]〜[8]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[10]前記透明樹脂は、ポリメチルメタクリレートであり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、テトラメトキシシランまたはテトライソプロポキシチタンである、[1]〜[9]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[11]前記透明樹脂は、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の混合樹脂であり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、メチルトリメトキシシランまたはテトラメトキシシランである、[1]〜[10]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[12]前記光学フィルムは、前記透明樹脂の中に分散された前記金属酸化物粒子を含み、
前記光学フィルムの破断面を電子顕微鏡で観察して得た像から得た、総ての金属酸化物粒子の面積の合計Tと、粒径が1μm以上である粒子の面積の合計Sが、下記式(3)の関係を満たす、[1]〜[11]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
S/T≧0.6 ・・・(3)
[13]前記フィルムの厚さは30μm以下である、[1]〜[12]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
本発明で得られる光学フィルムは、後述する製法によって得られ、かつ全光線透過率が70%以上であって、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下という特徴を有する。
(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含む製造方法。
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含む製造方法。
ただし、本発明においては、透明樹脂と金属酸化物が特定の関係を満たすことが必要である。
本発明においては、「無次元SP値」と金属酸化物の「HLB値」が、以下の式(1)の関係を満たすことが必要である。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
本発明の光学フィルムは、良好な光拡散性を有するために、光学フィルム中の金属酸化物粒子の粒径は、数百nm〜十数μm程度に調整される。本発明においては、金属酸化物粒子はゾル−ゲル反応により形成され、反応の進行により金属酸化物の粒子は大きくなる(「成長する」ともいう)、あるいは反応の途中で形成された金属酸化物同士が凝集することによっても金属酸化物粒子は大きくなる。
HLB値=7+「基数の合計」 ・・・(2)
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
ところでHLB値は一般に炭素原子を主骨格とする化合物について用いられる。しかし、本発明では、炭素原子を主骨格とする化合物よりも親水性が高い金属酸化物についてHLB値を用いる。従って、金属酸化物のHLB値を、親水性へシフトさせることが必要と考えられるため、本発明では、「HLB値に1を加えた値」と「無次元SP値」の差により、透明樹脂と金属酸化物の相互作用を規定する。
本発明においては、相互作用パラメータは2.1より大きいことが必要であるが、2.2以上であることが好ましい。さらに、相互作用パラメータは10.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは8.0以下である。
本発明の製造方法は、(A)〜(C)あるいは(E)〜(F)を含む「フィルム用混合物を調製する工程」と、(D)あるいは(G)を含む「製膜工程」に二分される。まず「フィルム用混合物を調製する工程」について説明する。
本発明において、ゾル−ゲル反応とは、金属化合物のアルコキシド基等の有機基を酸またはアルカリ触媒により加水分解し水酸基を生成させる反応(以下「加水分解反応」)と、生成した金属水酸化物の水酸基を脱水重縮合する反応(以下「重縮合反応」)を意味する。
本工程に用いられるゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物とは、ゾル−ゲル反応を起こして、金属酸化物に変化しうる化合物をいう。金属化合物は、金属原子に官能基等の有機基が結合した構造である。以下、当該金属化合物を単に「金属化合物」と呼ぶことがある。
本発明の金属酸化物はゾル−ゲル反応により形成される。ゾル−ゲル反応により金属酸化物を形成する金属化合物(以下単に「金属化合物」ともいう)の例には、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等の金属有機化合物や、金属硝酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物等の金属無機化合物が含まれる(作花済夫著、「ゾル−ゲル法の科学」、アグネ承風社、p17)。
まず、価数が4である金属の酸化物である珪素酸化物を例に説明する。
珪素酸化物は、テトラアルコキシシランを原料とすると、スキーム1で示されるゾル−ゲル反応により生成される。まずテトラアルコキシシランは加水分解されてシラノールが生成される。次にゾル−ゲル反応が25%進行すると、一つの水酸基が他の分子の水酸基と縮合反応し、化合物2が生成される。化合物2の酸素原子は、他の分子の珪素原子と結合しているが、スキームでは省略してある。化合物2は、化学式Si(OH)3(O)0.5で表される。
また、加水分解されてヒドロキシル基(OH基)となる官能基(例えばイソプロポキシ基)のHLB値はヒドロキシル基として計算する。
ジルコニウムアセチルアセトネート[10.60]、チタニウムアセチルアセトネート[10.60]、アルミニウムアセチルアセトネート[9.700]、インジウムアセチルアセトネート[9.700]や亜鉛アセチルアセトネート[8.80]。中でも、金属アセチルアセトネートとしては、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート。
上記反応は、例えば溶媒に予め前記金属化合物を溶解し、必要に応じて触媒を含んでいてもよい水を添加し、室温であるいは所定温度に加熱するなどして行うことができる。この際に前述のとおり二種類以上の金属化合物を用いてもよい。あるいは第一の金属化合物、第二の金属化合物を別個にゾル−ゲル反応させておき、これらを混合してもよい。さらに当該混合物をゾル−ゲル反応させてもよい。
本反応に用いる溶媒は、前記金属化合物を溶解するものであれば限定されない。しかしながら、蒸発速度が比較的遅い溶媒が好ましい。一般に溶媒の蒸発速度は、酢酸ブチルの蒸発速度を1としたときの相対値(「相対蒸発速度」ともいう)で表される。本発明に用いられる溶媒は、相対蒸発速度が0.03〜0.6であることが好ましい。相対蒸発速度が0.6より大きい溶媒を用いると、本工程の後に行う製膜工程において、金属酸化物の粒子があまり大きくならないことがある。これは、ゾル−ゲル反応が進行して金属酸化物の粒子が大きく成長する前に、溶媒が蒸発してフィルムの流動性が低下してしまうので、ゾル−ゲル反応が抑制されるためと考えられる。
一方、相対蒸発速度が0.03より小さい溶媒を用いると、製膜工程において、乾燥に高温または長時間を要するため、金属酸化物が大きくなりすぎることがある。これは、フィルムの流動性が低下しないため、ゾル−ゲル反応が過剰に進行してしまうためと考えられる。
http://www.mko-kikaku.com/1/toryougaido/toryou/1/youzai/youzaiitiran.htm
水、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(0.17)、N−メチル−2−ピロリドン(0.03)、DMSO、シクロペンタノン、シクロヘキサノン(0.23)、メチルセルソルブ(0.47)、エチルセルソルブ(0.32)。
溶媒の相対蒸発速度の測定方法は、ASTM.D3539.76に準じて求めてよい。
また、本工程において用いられる触媒は、前記加水分解、または重縮合反応を促進させる目的で添加される。このような触媒には公知のものを用いることができる(平島碩著、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」、株式会社総合技術センター、p29、または作花済夫著、「ゾル−ゲル法の科学」、アグネ承風社、p154等参照)。これらの例には酸触媒、アルカリ触媒が含まれる。酸触媒の例には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類が含まれる。
本工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径が、数nm程度である場合には、最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物が小さすぎて、十分な光拡散効果が得られないことある。一方、本工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径が、数μmのように、大きくなりすぎると、最終的に得られるフィルムの平滑性が失われてしまうことがある。以上から、本工程後の混合物中の金属酸化物の粒径は1μm以下であることが好ましく、数十nm〜数百nmであることが好ましい。本発明において記号「〜」は、その両端の値を含む。
1)透明樹脂
本発明の(B)工程は透明樹脂を溶質とする溶液(「樹脂溶液」という。)を準備する。透明樹脂とは、膜厚を30μmとした場合、70%以上の平行光線透過率を示す有機重合体(ポリマー)である。本発明に用いる透明樹脂は、水あるいは水と混和可能な溶媒に溶解性を有するものが好ましい。さらに、透明樹脂は「SP値」が、前述の式(1)の関係を満たすように選択されるが、本発明で用いられる透明樹脂のSP値は、8〜14(cal/cm3)0.5が好ましく、9〜13(cal/cm3)0.5がより好ましい。透明樹脂の好ましい例には、以下のものが含まれる。以下の例示において( )内の数字は、SP値(単位:(cal/cm2)0.5)を示す。
これらの樹脂は、2種以上を組合せて用いてもよい。
「プラスチック・データブック」p189〜190(工業調査会)
「ポリイミドは最新ポリイミド〜基礎と応用〜」p278(エヌ・ティー・エヌ) 「考え方合成ゴム基礎講座」p13(大成社)
(B)工程で使用される溶媒は、透明樹脂を溶解できる溶媒であれば限定されないが、前述の(A)工程で述べたものを用いることが好ましい。特に(B)工程で使用される溶媒は前記(A)工程で用いる溶媒と同一か、相溶可能な溶媒であることが好ましい。
本発明の(C)工程は、上記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する。混合の方法は特に限定されないが、(B)工程で得た溶液に(A)工程で得た混合物を注入し攪拌機等で攪拌することにより行うことができる。この際の混合比は特に限定されないが、最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物が所望の量となるように調整することが好ましい。
(E)工程は既に述べた(B)工程と同様に行うことが好ましい。ただし、本(E)工程で用いる溶媒は、次工程の(F)工程に用いる金属化合物を溶解できるものであって、かつ(A)工程で述べたものと同じものであることが好ましい。
本工程では、前(E)工程で得た透明樹脂を溶質とする溶液(樹脂溶液)にゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合し、ゾル−ゲル反応を行う。前述の(A)工程同様、金属化合物がアルコキシド基等の官能基を有する場合は、加水分解して水酸基にしてから重縮合反応することが好ましい。そのため必要に応じて水を添加してもよい。さらに、水は触媒を含んでいてもよい。
上記反応は、例えば(E)工程で得た樹脂溶液に前記金属化合物を溶解し、必要応じて触媒を含んでいてもよい水を添加し、室温であるいは所定温度に加熱するなどして行うことができる。この際に、二種類以上の金属化合物を用いてもよい。
この際に新たに加えられる溶媒は、水、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、DMSO、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、THF、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、メチルセルソルブまたはエチルセルソルブであることが好ましい。前記溶媒は、(E)工程で用いる溶媒と同じであってもよく、異なっていてもよい。
(1) (D)、(G)工程について
本発明の(D)、(G)工程は、前記工程において得られた混合物(前記追加反応工程を行ったものも含む)を、基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱して媒を蒸発させて製膜する。本工程においては、溶媒を蒸発させる際に加熱を行うため、さらにゾル−ゲル反応が進行する。
塗布とは、基板等の上に前記混合物を略一定の厚みに塗りフィルム前駆体を得ることをいう。基板とは、平らな部材のことであり、基板の例にはガラス、石英、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム等の基板、ロール、ベルト等ガラス板、高分子フィルムが含まれる。塗布は公知の方法で行ってよい。塗布方法の例には、流し塗り法、浸漬法、スプレー法が含まれる。その際には、バーコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スピンコーター等の公知の塗工機を使用できる。
さらには前記混合物を透明フィルムの片面あるいは両面に塗布して、コーティングフィルムとして得てもよい。この他に、前記混合物と別種の塗布液を基板に塗工した複層フィルムとしてもよい。複層フィルムとして製膜する場合、フィルム用混合液と別種の塗布液を透明フィルムに塗布する順序は任意としてよい。
既に述べたとおり、製膜工程で金属酸化物を成長させる場合、透明樹脂と金属酸化物との間の相互作用を制御することによって金属酸化物の粒径を調整できる。
例えば、透明樹脂としてポリビニルアルコールやポリアクリル酸、金属酸化物原料としてテトラメトキシシランを用いた場合などは、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基やポリアクリル酸のカルボキシル基とテトラメトキシシランの加水分解物のシラノール基とが水素結合による強い相互作用により、乾燥時の粒子の成長を妨げ、金属酸化物の粒径は小さくなる。
PMMA/TMOSおよびTIPT(TMOS:TIPT=52:48(質量比)、屈折率差0.24、相互作用パラメータ=2.400)。
PVAおよびPAA/MTMOS(屈折率差0.09、相互作用パラメータ=2.375)。
PVAおよびPAA/MTMOSおよびTMOS(TMOS:TIPT=88:12(質量比)、屈折率差0.09、相互作用パラメータ=2.223)。
(1)光学特性
本発明の光学フィルムは、相互作用が比較的弱い透明樹脂と金属酸化物を用いて、前述の方法により得られる。そのため、優れた光拡散能力、および優れた全光線透過性を示す。
「全光線透過率」(%)=(「拡散透過光」+「平行透過光」)/「入射光」×100
上式から明らかなように、全光線透過率が高いということは、拡散された光も含めて光を透過しやすいことを意味する。
「ヘイズ値」(%)={1―(平行透過率/全光線透過率)}×100
これらの光学物性は、光学フィルム中に分散する金属酸化物粒子の粒径が比較的大きく、かつ粒子の数がある程度存在する構造に起因していると推察される。
またすでに述べたように、金属酸化物と透明樹脂の屈折率差も光学特性に大きく影響する。適切な屈折率を有する金属酸化物が得られる金属化合物と透明樹脂を選択すること、本発明の方法によって金属酸化物粒子を成長させることで、全光線透過率が高く、光拡散性が高い光学フィルムが得られる。
本発明における金属酸化物の形状はどのような構造であってもよいが、金属酸化物はゾル−ゲル反応により形成されることから、通常は球状である。ただし、(D)や(G)工程のような製膜工程により金属酸化物は形成される場合、フィルム前駆体から溶媒が蒸発する際に、金属酸化物粒子は、フィルムの厚み方向に押しつぶされるような応力を受けることがある。そのため、金属酸化物粒子は、楕円体であってもよい。
S/T≧0.6 ・・・(3)
すなわち、「粒径が1μm以上である粒子の面積の合計」が、「総ての金属酸化物粒子の面積の合計」の60%以上であることが好ましい。S/Tは、以下のように測定される。
2)当該画像から前述したとおり金属酸化物の円相当径を求め、金属酸化物の粒径とする。
3)粒径が1μm以上の粒子について、それぞれの面積を計算し合計して「粒径が1μm以上の粒子の面積の合計S」を算出する。
4)総ての粒子について、それぞれの体積を計算し合計して「全粒子の面積の合計T」を算出する。
本発明の光学フィルムの好ましい膜厚は、1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜30μmである。本発明の製造方法によれば、膜厚が1〜30μmであって、比較的粒径の大きな金属酸化物が分散されていても、表面平滑性に優れたフィルムが得られる。
前述のとおり、膜厚により本発明の光学フィルムのヘイズ値は変化する。本発明の光学フィルムは、膜厚が16μmで、ヘイズ値が20〜100%であることが好ましく、膜厚が16μmで、ヘイズ値が50〜95%であることがより好ましい。
本発明の光学フィルムは、(A)〜(C)あるいは(E)〜(F)工程、すなわち「フィルム用混合物を調整する工程」において、金属酸化物をある程度の大きさまで成長させ、さらに、(D)または(G)工程、すなわち「製膜工程」で再度金属酸化物を成長させる点に特徴がある。つまり、製膜した状態で、金属酸化物の粒子を大きくするため、金属酸化物粒子がフィルムから突き出しにくく、表面平滑性に優れる。
本発明の光学フィルムは、引張り弾性率、耐擦傷性などの機械的性質や、熱変形温度、熱重量減少、線熱膨張率などの耐熱性、耐薬品性などに優れている。
本発明の光学フィルムは、透明樹脂と金属酸化物以外に添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、紫外線吸収剤、架橋剤、増粘剤、充填剤、増感剤、可塑剤、光
重合開始剤、モノマー、オリゴマー、安定剤、湿潤剤、流動剤、顔料、染料、接着促進剤、反応触媒、脱水剤が含まれる。これらは、本発明の製造方法のいずれの工程で添加してもよいが、製膜工程で添加することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が70%以上かつヘイズ値が20%以上100%未満である。このため全光線透過率が高く、かつ透過光線のうち平行透過光ではなく拡散透過光の割合が高い、すなわち光拡散性が高い(光拡散性に優れる)という特徴を有する。
本発明の光学フィルム、透過光を拡散するタイプ(前方散乱)であってもよく、反射光を拡散するタイプ(後方散乱)であってもよい。また、本発明の光学フィルムは透過光と反射光の両者、もしくはコーティング膜中やフィルム中を伝播する光に対し、拡散を生じさせるタイプのものであってもよい。
もちろん本発明の光学フィルムは、ヘイズ値として70%以下の値が求められる用途に対しても、好適に用いられる。
DMAc:ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
TMOS:テトラメトキシシラン
APTMOS:アミノプロピルトリメトキシシラン
MTMOS:メチルトリメトキシシラン
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PVA:ポリビニルアルコール
PAA:ポリアクリル酸
HCl:塩酸
HNO3:硝酸
DCDA:ジシアノジアミド
NUCシリコーンL−7001:シリコーン系レベリング剤
TIPT:テトライソプロポキシチタン
(光学測定)
紫外/可視分光光度計(UV3100PC/(株)日立製作所製)を用いて、光学フィルムの平行透過率、全光線透過率、および、反射率を測定した。測定は、測定波長:1000〜300nm、波長分解能:1nm、測定モード:中速で行った。また、波長550nmの平行透過率、および全光線透過率を用いて、次式によりヘイズを計算した。
ヘイズ(%)={1―(平行透過率/全光線透過率)}×100
卓上小型プローブ顕微鏡(Nanopics 1000/(株)セイコーインスツルメンツ製)を用いて、光学フィルムの中心線表面粗さRaを測定した。走査範囲200μm角のRaを5回測定し、その平均値を求めた。
3cm角のプリズムシート(五洋紙工(株)社製、PC、50μmピッチ、高さ21μm、頂角100度、シート厚240μm)を、上皿天秤の上にプリズム面が上側になるように向けて静置した。その上に同じ大きさの光学フィルムを、製膜時に空気界面となった面が下側になるようにして載せた。さらに当該フィルムの上に1cm角の板を載せ、その上から10g、20g、50gの荷重をかけながら当該板を、光学フィルム上で2cm往復させて動かした。続いて、プリズムシートを取り出し、目視にてシートの傷つき程度を評価した。全く傷がつかないものを○、目視では確認できないが光学顕微鏡で傷が確認できるものを△、目視で傷が確認できるものを×とした。
(E)工程:PMMA(1.0g)とNMP(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調製した。
(F)工程:(E)工程で得られた20重量%のPMMA/NMP溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られる光学フィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、TMOS(1.0857g)、0.1NのHCl水溶液(0.5136g)を加え、室温で5時間反応させた。0.1NのHCl水溶液は、NMPで50重量%に希釈して加えた。
(G)工程:得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ28μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、フィルム前駆体(「塗布膜」ともいう)を得た。当該フィルム前駆体をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板上に作製した。
透過率91.0%、全光線反射率7.3%、ヘイズ32.5%であり、表面粗さRaを測定したところ、58nmであった。
PMMAの無次元SP値は9.2であり、TMOSから得られる金属酸化物のHLB値は10.6であるため、本例における相互作用パラメータは、|10.6+1−9.2|=2.400であった。
得られる光学フィルム中の金属酸化物含有率が20重量%になるように、TMOS(0.6333g)、0.1NのHCl水溶液(0.2996g)を加えた以外は、実施例1と同様にして膜厚28μmのPMMA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率92.0%、全光線反射率75%、ヘイズ22.8%であり、表面粗さRaを測定したところ、46nmであった。
(A)工程:TMOS(0.3800g)、DMAc(0.3749g)を10mLの反応容器に装入し、1.0NのHCl水溶液(0.1798g)を加え、室温で3時間反応させた。別途、TIPT(0.3559g)を10mLの反応容器に装入し、酢酸(0.3153g)を加え、室温で1時間反応させた。次に、両液を混合して室温で1時間反応させた。
(B)工程:PMMA(1.0g)とNMP(3.0g)を混合し、25重量%のPMMA/NMP溶液4gを調製した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させ、NUCシリコーンL−7001(0.0250g)を加え、室温で10分間攪拌した。NUCシリコーンL−7001は、DMAcで10重量%に希釈して加えた。
(D)工程:得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ20μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、フィルム前駆体を得た。当該フィルム前駆体をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、金属酸化物含有率20重量%、TMOS/TIPT=52重量%/48重量%のPMMA/シリカ/チタニア複合フィルムをガラス基板上に作製した。
PMMAの無次元SP値は9.2であり、TMOS/TIPTから得られる金属酸化物のHLB値は10.6であるため、本例における相互作用パラメータは、|10.6+1−9.2|=2.400であった。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図2に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が15、10重量%になるようにし、膜厚を16μmとした以外は、実施例3と同様にしてPMMA/シリカ/チタニア複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さを表2、3に示す。
(A)工程:MTMOS(1.17g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO3水溶液(0.46g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(1.50g)、20重量%PAA水溶液(3.53g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.95g)、DCDA(0.173g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ24μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を、室温で10分間、送風オーブンを用いて40℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、PVA/PAA=3/7(重量比)、金属酸化物含有率33重量%のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
本例において、PVAの無次元SP値は12.6、PAAの無次元SP値は不明であるため、PVA/PAA=3/7(重量比)の無次元SP値は12.6として計算した。
MTMOSから得られる金属酸化物のHLB値は9.225であるため、PVAのSP値を用いて計算した相互作用パラメータは、|9.225+1−12.6|=2.375となる。PAAの無次元SP値は不明であるが、既に述べたとおり、PVAの12.6より大きいことは明らかである。よって、PVA/PAA混合物を用いた場合の相互作用パラメータは、PVA単独とした場合の2.375より大きくなる。以上から、本発明においては、PVA/PAA混合物の無次元SP値は、PVAの無次元SP値である12.6として計算した。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図3に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25、20、15、10重量%になるように、厚みを表2に示したとおりに変更した以外は実施例6と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性を表2に示す。また、得られたフィルムの表面粗さRaとスクラッチ試験の結果を表3に示す。
(A)工程:MTMOS(1.50g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO3水溶液(0.58g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(3.50g)、20重量%PAA水溶液(1.52g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.86g)、DCDA(0.075g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ16μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、重量比PVA/PAA=7/3、金属酸化物含有率40重量%のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.2%、全光線反射率10.2%、ヘイズ90.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、57nmであった。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30、20、10重量%になるようにした以外は実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%になるようにし、厚みを4、8、12、16、20、24μmに変更した以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
実施例15で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図4に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
(A)工程の反応時間を0.5、3時間とし、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにした以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにし、(D)工程の塗布膜乾燥時間を、「50℃で10分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で10分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で20分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で30分間乾燥」と変更した以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
(A)工程:MTMOS(0.71g)、TMOS(0.028g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO3水溶液(0.29g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(3.50g)、20重量%PAA水溶液(1.52g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.20g)、DCDA(0.075g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ14μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、PVA/PAA=7/3(重量比)、金属酸化物含有率25重量%、金属化合物MTMOS/TMOS=96/4(重量比)のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図5に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
金属化合物を、重量比でMTMOS/TMOS=94/6、88/12用いた以外は実施例27と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。本例における相互作用パラメータは、それぞれ2.299と2.233であった。
(A)工程の反応時間を3時間した以外は、実施例29と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
PMMA(1.0g)とDMAc(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調整した。得られた20重量%のPMMA/DMAc溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、SiO2粒子(0.4285g、宇部日東化成社製、商品名ハイプレシカTS、平均粒径5.0μm)を加え、室温で1時間攪拌し、その後超音波で1時間処理した。得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ14μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/SiO2粒子複合フィルムをガラス基板上に作製した。
PVA(0.3g)、PAA(0.71g)を10mLの反応容器に装入し、純水(1.9g)、DCDA(0.172g)を加え、室温で15分攪拌した。さらに得られるフィルム中の金属酸化物含有率が33重量%になるように、SiO2粒子(0.4975g、宇部日東化成社製、商品名ハイプレシカTS、平均粒径5.0μm)を加え、室温で1時間攪拌し、その後超音波で1時間処理した。得られた溶液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ16μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を室温で10分間、送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、金属酸化物含有率33重量%のPVA/PAA/SiO2粒子複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
(E)工程:PMMA(1.0g)とNMP(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調製した。
(F)工程:(E)工程で得られた20重量%のPMMA/NMP溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、TMOS(1.08g)、0.1NのHNO3水溶液(0.51g)を加え、室温で2時間反応させた。0.1NのHNO3水溶液は、NMPで50重量%に希釈して加えた。次に、APTMOS(0.013g)を加え、室温で2時間反応させた。APTMOSは、NMPで10重量%に希釈して加えた。
得られた溶液を孔径1.0μmのフィルターで濾過しようとしたが、粒子が凝集し濾過できなかった。
(G)工程:得られた溶液を濾過せずに、ガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ15μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、イナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板上に作製した。
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が50重量%になるようにした以外は、実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.5%、全光線反射率9.9%、ヘイズ88.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、370nmであった。
(A)工程の反応時間を5時間とし、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにした以外は実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率88.4%、全光線反射率10.3%、ヘイズ88.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、237nmであった。
金属化合物を重量比でMTMOS/TMOS=55/45用いた以外は実施例29と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.9%、全光線反射率9.8%、ヘイズ2.6%であり、表面粗さRaを測定したところ、14.5nmであった。本例における相互作用パラメータは、1.788であった。
金属化合物を重量比でMTMOS/TMOS=78/22用いた以外は実施例29と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。本例における相互作用パラメータは、2.075であった。
2 金属酸化物の脱落した跡
3 金属酸化物粒子
Claims (13)
- 透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm2)0.5)を、1(cal/cm2)0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
- 前記(D)工程の前に、前記(C)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記(B)工程の前に、前記(A)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm2)0.5)を、1(cal/cm2)0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
- 前記(G)工程の前に、前記(F)工程で得た混合物に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水または触媒を混合して、ゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記溶媒の、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした相対値で表される相対蒸発速度が、0.03〜0.6である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記透明樹脂は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記金属酸化物は、珪素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウム元素を含む、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートまたは金属カルボキシレート、もしくはこれらの重縮合物である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記透明樹脂は、ポリメチルメタクリレートであり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、テトラメトキシシランまたはテトライソプロポキシチタンである、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記透明樹脂は、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の混合樹脂であり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、メチルトリメトキシシランまたはテトラメトキシシランである、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記光学フィルムは、前記透明樹脂の中に分散された前記金属酸化物粒子を含み、
前記光学フィルムの破断面を電子顕微鏡で観察して得た像から得た、総ての金属酸化物粒子の面積の合計Tと、粒径が1μm以上である粒子の面積の合計Sが、下記式(3)の関係を満たす、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
S/T≧0.6 ・・・(3) - 前記フィルムの厚さは30μm以下である、請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。
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