JP4900806B2 - 成形機用シリンダ - Google Patents

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本発明は、主としてプラスチックの成形機に用いられ、中空円筒形状のシリンダ母材の内面にライニング層を形成した複合構造のシリンダに関するものである。
プラスチック製品等の成形に用いられる成形機用シリンダは、加熱成形中の樹脂または樹脂に加えられた添加剤による腐食および摩耗を抑制するために、主に鋼からなる中空円筒状のシリンダ母材の内面に、耐摩耗性と耐腐食性を有する合金(以下、耐摩耗耐腐食性合金と称す)からなるライニング層を形成している。シリンダ母材の内面に耐摩耗耐腐食性合金からなるライニング層を形成する方法としては、遠心鋳造法、熱間静水圧焼結法、焼き嵌め法等が採用されている。
ライニング層を形成する耐摩耗耐腐食性合金としては、ニッケル基合金、コバルト基合金などが用いられている。また、これらの耐摩耗耐腐食性合金に硬質粒子である炭化タングステン(WC)、ニオブ炭化物(NbC)、チタン炭化物(TiC)などを遠心鋳造法により分散させることにより、耐摩耗性をさらに向上させたライニング層も提案されている。
特許文献1には、重量%で、炭化タングステン:30〜45%、ニッケル+コバルト(合計量):35〜50%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、珪素:1〜3%、マンガン:2%以下、鉄:8〜25%、炭素:1%以下を含有する遠心鋳造用炭化タングステン複合ライニング材が開示されている。また、炭化タングステンは平均粒径が6〜12μmの球状粉末からなり、ライニング層中の炭化タングステンの体積率は25〜45%、炭化タングステンの粒子間隔が平均自由工程として8〜20μmであることが記載されている。さらに、炭化タングステンの形状を球状にすることで、金属摩擦において相手材を傷つけることを防止することが記載されている。また、炭化タングステン粒子を細粒にし、その粒子間隔を調整することで、加工時間を従来のNi基合金ライニング材と同等にすることが述べられている。
特許文献2には、ASTM 193B−16炭素鋼およびデユプレックス不錆鋼から成る群から選択された鋼から作られ、かつ炭化物および硼化物含有合金から成る耐食・耐摩性ニッケル合金ライナーを有する射出成形機用高温耐食性バイメタル・シリンダが開示されている。前記シリンダの合金ライナーは次の組成を有する。
成分 重量%
炭素 1.5 乃至 4.5
珪素 1.5 乃至 3.5
硼素 1.0 乃至 3.0
コバルト 1.0 乃至 6.0
タングステン 30.0乃至 60.0
ニッケル 残余
また、前記合金ライナー中に、7.0重量%以下のクロムを含有する、さらに、15.0重量%以下の鉄を含有する高温耐食性バイメタル・シリンダが記載されている。
特許文献3には、
成分 重量パーセント
炭化タングステン 30〜45
ニッケル 22〜61
コバルト 37以下
クローム 12以下
硼素 1.3〜3.0
珪素 0.7〜3.3
マンガン 1.0以下
鉄 3.3以下
炭素 0.6以下
からなる合金を遠心鋳造により一体に溶融せしめてなる内張層を有するシリンダが開示されている。また、炭化タングステンは内張層厚さ方向における濃度を40〜80容量%の範囲において異にし、内張層の基質の近傍の層における炭化タングステンの濃度は遠近の層における濃度より大にして両層間に炭化タングステンの濃度差を有してなる内張層が記載されている。さらに、使用される炭化タングステン粒子は、100メッシ以下の比較的小さい粒子が好ましいことが述べられている。
特開平7−290186号公報 特開平6−15708号公報 特公昭54−32413号公報
ガラス繊維などを多量に添加した樹脂などを成形する射出成形機に装着されるシリンダには高い耐摩耗性が要求される。そのため、成形機用シリンダのライニング層として、炭化タングステンなどの硬質粒子を分散させたシリンダが使用されている。しかしながら、耐摩耗性を向上させるため、ライニング層中に硬質粒子を多量に含有させると、被削性が著しく劣る。そのため、ライニング層の機械加工時間が増大し、生産性の低下、製造コストの増加といった問題が発生する。
特許文献1には、炭化タングステン粒子は平均粒径6〜12μmであり、粒子間隔を8〜20μmとすることで切削性を向上させることが記載されている。しかしながら、このような比較的小さい粒径の炭化タングステンは、実際の製造において加熱溶融時に容易に溶融分解し、シリンダのライニング層に含ませることは困難である。
特許文献2には、射出成型機用高温耐食性バイメタル・シリンダにおいて、タングステンを30〜60重量%含有する合金ライナーが開示されているが、被削性については考慮されてない。また、特許文献3には、エクストルーダ等のシリンダにおいて、炭化タングステンを30〜45重量%含有する非鉄合金内張層が開示されているが、被削性については考慮されてない。
本発明は、前記事情を背景としてなされたものであり、本発明の成形機用シリンダは、耐摩耗性に優れ、かつ被削性に優れるシリンダを安価に提供すること目的とする。
前記目的に鑑み、ニッケルを含む基地中に種々の硬質粒子を含有させたライニング層の耐摩耗性、被削性の評価および、遠心鋳造法による製造条件を鋭意研究した結果、本発明者らは、下記の知見を得て本発明に想到した。
1.ライニング層として耐食性に優れるニッケル基地中に、金属タングステン中に炭化タングステンを分散した硬質粒子を添加することで、ライニング層の被削性を大きく損なうことなく耐摩耗性を向上できる。
2.前記本発明の硬質粒子に、さらに硼化タングステンを晶出または析出させることにより、硬質粒子同士の間隔が適度に分散し、耐摩耗性を維持したまま被削性をより一層向上させることができる。
中空円筒状の鋼製外筒の内面に耐摩耗耐腐食性合金を含有したライニング層を形成した成形機用シリンダにおいて、前記ライニング層がニッケルを含む基地と、金属タングステン中に炭化タングステンが分散した硬質粒子とにより構成されていることを特徴とする。
前記硬質粒子中の炭化タングステンの含有量が面積率で20〜80%であることを特徴とする。
前記ライニング層に占める前記硬質粒子の含有量が面積率で20〜80%であることを特徴とする。
前記硬質粒子の最大長さが250μm以下であることを特徴とする。
前記ライニング層にさらに硼化タングステンを面積率で5〜20%含むことを特徴とする。
前記ライニング層の成分が質量%で、C:1.5〜3.5%、Si:0.1〜3.0%、B:0.5〜3.0%、W:40.0〜60.0%および残部実質上Niからなる組成を有することを特徴とする。
前記ライニング層は、さらに質量%で、Cr:1.0〜10.0%またはFe:1.0〜15.0%の元素のうち少なくとも一種を含有することを特徴とする。
前記ライニング層は、さらに質量%で、Mn:2.0%以下およびCu:5.0%以下の元素のうち少なくとも一種を含有することを特徴とする。
前記ライニング層は、さらに質量%で、Co:1.0〜10.0%を含有することを特徴とする。
前記ライニング層を遠心鋳造法により形成したことを特徴とする。
本発明の成形機用シリンダについて以下に詳述する。
[1]ライニング層の組織
(1)本発明のシリンダは、ニッケルを主体とした耐摩耗耐腐食性合金に、金属タングステン中に炭化タングステンが分散した硬質粒子を分散させたライニング層を有することを最大の特徴とする。炭化タングステンはHv2000〜3000と高硬度であり、耐摩耗性向上に寄与する。一方、金属タングステンの硬さはHv360程度である。炭化タングステンを金属タングステンに含ませることで、硬質粒子全体としての硬さを調整し、耐摩耗性と被削性とを調整することが可能である。なお、炭化タングステンは金属タングステン中にラメラー状もしくは球状で、実質上均一に分散していることが好ましい。
(2)硬質粒子中の炭化タングステンの含有量が面積率で20〜80%
硬質粒子に含まれる炭化タングステンの量は、面積率で20〜80%であり、さらに好ましくは30〜70%である。硬質粒子に含まれる炭化タングステンが面積率で20%未満では、耐摩耗性向上効果が不十分である。一方、その面積率が80%を超えると過度に硬質になり、被削性が著しく低下し好ましくない。
(4)ライニング層に含まれる硬質粒子の含有量が面積率で20〜80%
ライニング層に含まれる硬質粒子の量は、面積率で20〜80%であり、さらに好ましくは30〜70%である。ライニング層に含まれる硬質粒子が面積率で20%未満では、耐摩耗性向上効果が不十分である。一方、その面積率が80%を超えると過度に硬質となり、被削性が著しく低下し好ましくない。
(3)硬質粒子の最大長さが250μm以下
ライニング層に含まれる硬質粒子の最大長さが250μmより長いと、ミクロ的な組織の均一性が損なわれ、シリンダ内面においてミクロ的に不均一に摩耗または腐食等により損耗することに加え、使用時に硬質粒子の欠け落ちや脱落が発生しやすくなるので好ましくない。
(5)ライニング層に含まれる硼化タングステンが面積率で5〜20%
本発明のライニング層は硼化タングステンを面積率で5〜20%分散させてもよい。これは、基地の硬さを高め、耐摩耗性向上に寄与し好ましい。また、遠心鋳造法で製造する場合、硼化タングステンは、前記硬質粒子とともに遠心分離し、ライニング層に含まれる硬質粒子の間隔を適度に分散させ、被削性向上に寄与する。硼化タングステンの面積率が5%未満では前記効果が十分に得られない。一方、硼化タングステンが面積率で20%を超えると、硼化タングステンの量が過多となり、抗折力などの機械的性質が低下し好ましくない。
[1]ライニング層の組成(質量%)
(1)必須成分
(a)C:1.5〜3.5%
Cは主にWと結合し、炭化タングステンを形成することにより耐摩耗性を向上させる。また、一部のCは、基地中の合金元素と結合し炭化物を形成する。Cが1.5%未満では炭化タングステンの量が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが3.5%を超えると、炭化タングステンの量が過多となり、被削性が低下するとともに抗折力などの機械特性が低下する。C含有量は好ましくは2.0〜3.0%である。
(b)Si:0.1〜3.0%
Siは、合金の融点を下げる作用があり、遠心鋳造法で製造する場合、合金溶湯の流動性を高めることにより、シリンダの円周方向ならびに軸方向での合金の均質分布性向上に寄与する。また、Siは、基地に固溶する他、一部はNi等の合金元素と結合し珪化物を晶出または析出し、耐摩耗性向上に寄与する。Siが0.1%未満ではこの効果が十分に得られない。一方、Siが3.0%を超えると、珪化物の量が過剰となり、抗折力などの機械特性が低下し好ましくない。Siの含有量は好ましくは1.0〜2.5%である。
(c)B:0.5〜3.0%
Bは、前述のSiと同様に合金の融点を下げる作用があり、遠心鋳造法で製造する場合、合金溶湯の流動性を高めることにより、シリンダの円周方向ならびに軸方向での合金の均質分布性向上に寄与する。また、Bは、NiやWの合金元素と結合し硼化物を晶出または析出し、耐摩耗性向上に寄与する。遠心鋳造法で製造する場合、硼化タングステンは、前記W粒子とともに遠心分離し、硬質粒子の粒子間隔を分散させ被削性向上に寄与する。Bが0.5%未満ではこの効果が十分に得られない。一方、Bが3.0%を超えると、硼化物の量が過剰となり、合金溶湯の流動性が低下し、かえって前記効果が得られなくなり、抗折力などの機械特性が低下し好ましくない。Bの含有量は好ましくは1.0〜2.0%である。
(d)W:40.0〜60.0%
Wは主に、本発明の硬質粒子を形成する主要元素であり、金属タングステンと炭化タングステンよりなる硬質粒子により耐摩耗性を向上させる。さらに、一部のWは、基地中のBと結合し硼化タングステンを晶出または析出し、耐摩耗性向上および硬質粒子の均質な分散に寄与する。すなわち、前記硬質粒子同士の間に硼化タングステンが存在することで、優れた耐摩耗性を有しながら、被削性に優れる。Wが40.0%未満では硬質粒子や硼化タングステンの量が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Wが60.0%を超えると、硬質粒子および硼化タングステンの量が過多となり、被削性が低下するとともに抗折力などの機械特性が低下する。
(e)残部Ni
Niは硬質粒子を保持する基地を形成する主要元素である。Niは主に金属状態で存在し、一部はBなどと結合し硼化物となり、基地を強化する。Niは耐食性に優れ、Bを適切に制御することで他の金属元素、例えばFeに比べその合金が低融点となる特徴をもつ。また、本発明のライニング層の残部は実質上Niであればよく、例えば窒素、酸素および水素といったガス成分や、製造上不可避的に混入する不純物が含まれても構わない。
[2]任意成分
シリンダの用途及び使用方法に応じて、ライニング層は以下の元素を適宜含有しても良い。
(a)Cr:1.0〜10.0%
Crは、主にBと結合し硼化物を形成し、一部はCと結合し炭化物を形成し耐摩耗性を向上させる。また、残りは基地に固溶し、耐腐食性を向上させるため、添加することが好ましい。Crが1.0%未満では、前記の効果が不十分である。一方、Crが10.0%を超えると、硼化物の量が過多となり、被削性が低下するとともに抗折力などの機械特性が低下する。また、融点の上昇に伴い、溶湯の流動性が低下し好ましくない。
(b)Fe:1.0〜15.0%
Feは、遠心鋳造法の鋳造の際、主にライニング層を形成せしめるライニング材溶融時に母材を侵食することにより、母材に含まれるFeから不可避的に混入する。また、FeはSiおよびBとは反対の溶湯の流動性を低下させる作用があり、溶湯の流動性調整のため、添加させてもかまわない。Feが1%未満では、前記の作用が不十分である。一方、Feが15%を超えると、耐食性が低下するとともに抗折力などの機械特性が低下し好ましくない。
(c)Mn:2.0%以下
Mnは溶湯の脱酸作用を有する。またMnは、遠心鋳造の際、主にライニング材溶融時に母材を侵食することにより母材に含まれるMnから混入する。前記作用はMnが2.0%あれば十分である。Mnの含有量は好ましくは0.1〜0.6%である。
(d)Cu:5.0%以下
Cuは基地に固溶し、合金の耐食性向上に有用な元素である。Cuが5.0%を超えて加えてもこの効果が飽和する。また、Cuは極めて高価な元素であるため、溶湯の融点を上昇させる作用があり、経済性及び使用条件を考慮し、その含有量を決定するのが望ましい。
(e)Co:10.0%以下
CoはNiと同等の作用があり、特に合金の靭性および硫酸ガスに対する耐食性向上に有用な元素である。また、Coは極めて高価な元素である他、シリンダ用途のうちフッ化水素酸が発生する環境下では著しく耐食性が低下する。したがって、経済性及び使用条件を考慮し、その含有量を決定するのが望ましい。
本発明の成形機用シリンダは、ライニング層に炭化タングステンを含有しており、耐摩耗性に優れる。また、本発明の成形機用シリンダは、金属タングステンを含むことにより被削性向上させることができる。さらに、硼化タングステンが前記硬質粒子の分散を制御することでより一層被削性を向上させることができる。
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
外筒として、外径φ100mm、長さ800mmの機械構造用鋼の軸方向に内径φ34mmの貫通孔を設けたものを準備した。また、ライニング層を形成せしめる粉末として、基地となる合金粉末にあらかじめ準備しておいた本発明の硬質粒子を所定量混合した混合粉末を準備した。ここで硬質粒子は、炭化タングステンの含有量が異なるものを数種類使用した。また、硬質粒子は粒径が異なるものを数種類使用した。
まず、前記外筒の貫通孔内に前記混合粉末を装入し、貫通孔の両端を金属製の蓋で封止した。これを加熱炉中で所定の温度まで加熱し、混合粉末を溶融させた後、遠心鋳造機上にセットした。これを遠心鋳造機で所定の回転数で回転させ、シリンダ外筒の貫通孔内面に5mm厚さ程度のライニング層を形成させることにより、シリンダ素材を作製した。これを冷却後、両端の蓋を加工除去し、外径φ100mm、長さ760mmのシリンダ材とした。
前記シリンダ材の片側端面から50mmを切断し、外径φ100mm、長さ50mmの供試材を採取した。ライニング層の内径φ30mm位置(製品内径相当位置)近傍より化学成分測定用の試験片を採取し、各供試材の化学成分を測定した。表1にその結果を示す。
表1中の供試材No.1〜6は本発明の実施例であり、ライニング層がニッケルを含む基地と、金属タングステン中に炭化タングステンが分散した硬質粒子とにより構成されているものである。
供試材No.7は比較例であり、ライニング層がニッケルを含む基地と、金属タングステン粒子とにより構成されているものである。
供試材No.8は従来例であり、ライニング層が耐食性を有するニッケル合金により構成されているものである。
供試材No.9は従来例であり、ライニング層がニッケルを含む基地と、炭化タングステン粒子により構成されているものである。
また、供試材No.1〜6において、製品内径相当位置における硬質粒子の面積率と最大長を、光学顕微鏡および画像解析装置を用いて測定した。さらに、走査電子顕微鏡(SEM)と画像解析装置を用い、硬質粒子に占める炭化タングステンの面積率および硼化タングステンの面積率を求めた。
同様に、供試材No.7における金属タングステン粒子の面積率、最大長さおよび硼化タングステンの面積率を測定した。また、供試材No.9における炭化タングステン粒子の面積率、最大長さおよび硼化タングステンの面積率を測定した。
さらに、各供試材のライニング層を含む外径φ10mm×長さ15mmの摩耗試験片を採取し、ライニング層のアブレッシブ摩耗試験を行って耐摩耗性を評価した。アブレッシブ摩耗試験は、各試験片のライニング層形成面を150rpmで回転するSiC砥粒サンドペーパー(#400)に90Nの圧力で一定時間押圧することで行った。その際、試験前と試験後の重量を測定し、両者の差分を摩耗減量とし、耐摩耗性の評価を行った。評価は、従来例の供試材No.8の摩耗減量を100とし、他供試材の摩耗減量の相対比較で行った。
図1にアブレッシブ摩耗試験の概略図を示す。図1においてロは試験片のライニング層部分、イは試験片の外筒部分である。aはSiC砥粒サンドペーパー(#400)、Pは圧力である。
また、各供試材のライニング層より、製品内径相当位置より5mm×1.5mm×40mmの抗折試験片を採取し、4点曲げ試験を行い抗折力の測定を行った。
各供試材採取後のシリンダ材(外径φ100mm×長さ710mm)の内径をBTA加工機にて内径φ30mmにライニング層の加工を行った。その際、加工に要する時間を測定した。被削性の評価は従来例の供試材No.8の加工時間を1.0とし、他供試材の加工時間の相対比較で行った。
表2に前述の試験結果および評価結果を示す。すなわち、硬質粒子面積%、(炭化タングステン/硬質粒子)の面積率、硬質粒子最大長さ(μm)、硼化タングステン面積%、摩耗減量、被削性、抗折力(MPa)を示す。
図2に本発明の前記シリンダ材の断面模式図を示す。図2中のイ部は外筒、ロ部は硬質粒子が分散した層、ハ部は硬質粒子が乏しい層、ニは中空部である。加熱炉で溶融した前記混合粉末は、遠心鋳造法により外筒(イ部)と溶着する。また、溶融した混合粉末中の硬質粒子は比重が大きいため遠心鋳造時に外筒側に凝集し、硬質粒子が分散した層(ロ部)を形成する。比重の小さい残部は中空部(ニ部)側に硬質粒子が乏しい層(ハ部)を形成する。本発明の成形機用シリンダは、前記ハ部およびロ部の一部を加工除去し、前記ロ部を露出させてライニング層として使用する。
図3は、図2に示すA部の光学顕微鏡による金属組織写真である。また、図3は発明例の供試材No.1の金属組織写真を示す。図3のロ部中の白色粒子(例えば2)が本発明の硬質粒子である。11は硬質粒子が分散した層(ロ部)と硬質粒子が乏しい層(ハ部)の境界である。12は、製品内径相当位置を示す。シリンダ材を、図3に示す製品内径相当位置(12)まで内径加工して本発明の成形機用シリンダを得る。
図4に本発明のライニング層の模式図を示す。図4において、1は基地、2は本発明の硬質粒子、3は硼化タングステン、dは硬質粒子2の最大長さを示す。
図5は本発明例No.1のライニング層の走査電子顕微鏡写真である。図5において、灰色の部分が基地1、20〜100μmの比較的大きい塊状灰白色部分が本発明の硬質粒子2、1〜5μmの比較的小さい白色粒状部分が硼化タングステン3である。本発明のライニング層は硬質粒子2の間に硼化タングステン3が分散していることがわかる。
図6は本発明の硬質粒子の模式図を示す。図6において、4は炭化タングステン、5は金属タングステンを示す。
本発明の供試材No.1〜6の摩耗減量は9〜17であり、従来例No.8に比べて耐摩耗性が極めて良好である。一方、本発明の供試材No.1〜6の被削性は1.2〜3.2であり、従来例No.8に比べて遜色は無い。即ち、本発明の供試材No.1〜6は優れた耐摩耗性と良好な被削性を兼ね備えている。また、本発明の供試材No.1〜6の抗折力は502〜669MPaであり充分な強度を持つ。
なお、供試材No.6は硼化タングステン含有量が2%と少ないので、硬質粒子同士の間隔が狭くなり、硬質粒子が密集する。そのため耐摩耗性は向上するが、被削性は若干劣る。
比較例の供試材No.7はライニング層がニッケルを含む基地と、金属タングステン粒子とにより構成されているものである。即ち、供試材No.7はライニング層中に炭化タングステンを含有しておらず金属タングステンのみで構成されている。硬質の炭化タングステンを含有しないため、被削性は1.7と良好であるが、摩耗減量は92と耐摩耗性に著しく劣る。
従来例の供試材No.8は、公知のニッケル基シリンダである。硬質粒子を含有していないため、被削性は良いものの耐摩耗性に著しく劣る。
従来例の供試材No.9は、ライニング層がニッケルを含む基地と、炭化タングステン粒子により構成されているものである。即ち、ライニング層中に金属タングステンは含有されておらず、本発明の範囲外である。供試材No.9は金属タングステンを含有していないため、耐摩耗性は向上するが、被削性に著しく劣る。
本発明の供試材No.1と同様な方法で、外径φ90mm×内径φ30mm×全長500mmの成形機用シリンダを製造した。その際、内径のライニング層の加工時間は従来のニッケル基シリンダ同等であり、加工コストも同等であった。また、この成形機用シリンダを実際の射出成形に供したところ、従来のニッケル基シリンダの10倍以上の耐摩耗性を示した。
本発明の成形機用シリンダは、プラスチックの成形全般で優れた耐摩耗性を発揮する。特にガラス繊維等を多量に含有した樹脂において極めて優れた耐摩耗性を発揮し、プラスチック成型向上の生産性向上に寄与する。また、本発明の成型機用シリンダは被削性に優れるため、シリンダ製造時のライニング層の加工コストが低減され、耐摩耗性に優れるシリンダを安価に提供することができる。
アブレッシブ摩耗試験の概略図である。 本発明の成型機用シリンダの断面模式図である。 本発明の供試材No.1の光学顕微鏡による金属組織写真である。 本発明のライニング層の模式図である。 本発明の供試材No.1のライニング層の走査電子顕微鏡写真である。 本発明の硬質粒子の模式図である。
符号の説明
a SiC砥粒サンドペーパー、 P 圧力、
1 ライニング層基地、 2 本発明の硬質粒子、 3 硼化タングステン、
4 炭化タングステン、 5 金属タングステン、
イ 母材、 ロ 硬質粒子が分散した層、 ハ 硬質粒子が乏しい層、 ニ 中空部、
d 硬質粒子の最大長さ、
11 硬質粒子が分散した層と硬質粒子が乏しい層の境界、
12 製品内径相当位置

Claims (10)

  1. 中空円筒状の鋼製外筒の内面に耐摩耗耐腐食性合金を含有したライニング層を形成した成形機用シリンダにおいて、前記ライニング層がニッケルを含む基地と、金属タングステン中に炭化タングステンが分散した硬質粒子とにより構成されていることを特徴とする成形機用シリンダ。
  2. 前記硬質粒子中の炭化タングステンの含有量が面積率で20〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の成形機用シリンダ。
  3. 前記ライニング層に占める前記硬質粒子の含有量が面積率で20〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形機用シリンダ。
  4. 前記硬質粒子の最大長さが250μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形機用シリンダ。
  5. 前記ライニング層にさらに硼化タングステンを面積率で5〜20%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形機用シリンダ。
  6. 前記ライニング層の成分が質量%で、C:1.5〜3.5%、Si:0.1〜3.0%、B:0.5〜3.0%、W:40.0〜60.0%および残部実質上Niからなる組成を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形機用シリンダ。
  7. 前記ライニング層は、さらに質量%で、Cr:1.0〜10.0%またはFe:1.0〜15.0%の元素のうち少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項6に記載の成形機用シリンダ。
  8. 前記ライニング層は、さらに質量%で、Mn:2.0%以下およびCu:5.0%以下の元素のうち少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項6または7に記載の成形機用シリンダ。
  9. 前記ライニング層は、さらに質量%で、Co:1.0〜10.0%を含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の成形機用シリンダ。
  10. 前記ライニング層を遠心鋳造法により形成したことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の成形機用シリンダ。
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