JP4900549B2 - A15化合物超伝導線材の製造方法 - Google Patents
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する(文献1)。
(1)ブロンズ法
Cu−Sn合金マトリックス(Tiを含む場合が多い)中に多数のNbフィラメントが埋設された複合線材(超伝導部)の周囲に、Nb、TaまたはVから形成された拡散障壁層を介して安定化Cuが被覆された超伝導前駆線材を熱処理してNb3Sn線材を得てい
る。
(2)内部拡散法
Cuマトリックス中にSn基金属コア(1〜2wt.%程度のTiを含むことが多い)に多数のNbフィラメントが埋設された複合線材(超伝導部)の周囲に、Nb、TaまたはVから形成された拡散障壁層を介して安定化Cuが被覆された超伝導前駆線材を熱処理してNb3Sn線材を得ている。
の製造方法は上記2種類の製造方法の変形である。
物になり、Cu−Sn合金マトリックスはSn濃度が相当薄まったCu−Sn合金マトリックスに変わる。内部拡散法では、低温側の熱処理によりSnがCuマトリックス中に拡散し、ブロンズ法における超伝導前駆線材と同様の構造に変わり、高温側の熱処理によりNbフィラメントの周囲または全部がNb3Sn化合物になる。マトリックスは低濃度の
SnのCu−Sn合金となり、Snコアは完全に消滅する。
"Superconductor Materials Science", Edited by S. Foner and B. B. Schwartz, Plenum Press (New York, 1981)
ことのできるA15化合物超伝導線材の製造方法を提供することを解決しようとする課題としている。
倍にすることができる可能性がきわめて高い。また、拡散障壁層が不要であるため、線材の断面積を大幅に低減することができ、コイル化に必要な線材長も大幅に低減することが可能となる。
Pubrishing Corporation (USA, 1981)(以下、文献2)および「銅及び銅合金の基礎と
工業技術(改訂版)」(日本伸銅協会、1994),p.42(以下、文献3)によれば、Cu2O、SnO2、TiO2の解離圧は、それぞれ、
logPO2(a,T)=-339,000/(2.303×8.3144T)-14.2logT/8.3144+247/(2.303×8.3144) (1a)
logPO2(b,T)=-528,400/(2.303×8.3144T)+231.5/(2.303×8.3144) (1b)
logPO2(c,T)=-910,000/(2.303×8.3144T)+173/(2.303×8.3144) (1c)
で与えられる。図1は、(a)Cu2O、(b)SnO2、(c)TiO2の解離酸素分圧の550℃〜750℃の範囲での温度変化を示している。曲線上で金属と酸化物が共存し、曲線より上側の領域で金属は酸化され、下側の領域で酸化物が還元される。したがって、 (a)Cu2Oの解離圧以下、(b)SnO2の解離圧以上の酸素分圧で、Cuは酸化されず、Snおよ
びTiが酸化されることが理解される。
用いることができる。文献2によれば、後者の場合、高温で2H2O→O2+2H2の反応
により酸素が供給され、
log(PH20/PH2)=log(PO2)/2+492,000/(2×2.303×8.3144T)-109.6/(2×2.303×8.3144)(2)が成り立つから、各(1)式の平衡酸素分圧に対応するH2/H2O比を温度の関数として求
めることができる。Cu、Snについては、図2(a)(b)に示したとおりとなる。
logP(atm)=-2,900/T-4.65logT+19.732 (3)
で与えられる。このことから、所定の温度に加熱した水槽中に、たとえばArをキャリヤガスとしてAr−H2混合ガスを供給・バブリングし、炉芯管内に導入すると同時に、水
の凝集を防ぐために途中に配管を水槽温度以上に保てば、H2/H2O比は、混合ガス中のH2濃度と水槽温度で決まる。
に行われる。この酸化除去は、CuSn(Ti)合金からSn(Ti)を酸化除去することとほとんど等価である。図3(a)に示した初期状態から始まり、表面のSnが酸化除去
されると、CuSn合金に図3(b)に示したようなSnの濃度勾配が生じ、線材内部から
Snの拡散が起こる。これにより、線材全体からSnの酸化除去が可能となる。つまり、Snの酸化除去は、酸化反応+拡散により行われるのである。効果的な酸化除去のためには、外界の酸素分圧が充分高い必要があり、H2/H2O比で言えば、図2に示した曲線(d
)の下側で、かつ曲線(a)の上側の領域の雰囲気が必要である。酸化がある程度進行した場合、図3(b)に示したように、酸化物層中で酸素分圧が低下するなどのため、熱力学的に
はCuが酸化される条件でもSnのみの酸化が行われる。また、Sn等の酸化除去は、690℃以上の温度で行うのが好ましい。690℃未満では酸化速度が遅くなり、必要な酸化時間が長くなる。
直径0.643mmのCu−xwt.%Sn合金線(x=0、0.82、3.29)の抵抗の温度依
存性を図4に示した。
成した。H2/H2O比は、水温とArガスに含まれるH2濃度で制御される。
実験的に決められる。Snの拡散律速である限り、酸化除去に必要な時間は、拡散距離x(mm)の2乗に比例し、Snの拡散係数D(T)に反比例する。すなわち、
t/35.4=(n2+no 2)/(0.822+no 2)(x/0.3216)2(D(1023K)/D(T)) (4)
で目安を立てることができる。ここで、n0 2はt0に比例する。なお、ブロンズ線の様々な
温度、雰囲気での抵抗変化から、図2に示した曲線(d)の下側が拡散律速の領域と推定さ
れた。〜500℃ではCuも酸化される領域であるが、抵抗の減少が認められた。Cuも酸化される場合には抵抗は増加する。ただし、抵抗減少率はきわめて小さく、拡散係数は温度の低下で急に小さくなるためと考えられる。Cuが確実に酸化されない条件も合わせると、690℃以上でのSnの酸化除去が好ましいことが分かる。
酸化除去によりRRR>100と安定化に寄与することのできるレベルに達した。
Snの酸化除去の実証に(株)古河電工製の内部安定化ブロンズ法線材を用いた。その仕様を表2に示した。
0℃で39hrの保持までArガス雰囲気で行い、残りの10hrを参考例と同じ混合ガス雰囲気中でSnの酸化除去を行った。昇温時間は7hrとした。750℃に保持中の試料の抵抗変化をArガス雰囲気中での熱処理における試料の抵抗変化と比較して図7に示した。熱起電力の発生のためデータに乱れがあるが、Arガス雰囲気中での熱処理では抵抗変化に2段階の振る舞いが認められる。初期の抵抗減少は大きく、〜5hrで全体の抵抗減少の〜3/4が完了している。一方、Snの酸化除去を行った試料では、39hrまではArガス雰囲気中での熱処理と同じ振る舞いを示すが、雰囲気を切り替えることにより急激な抵抗変化が短時間で生じ、その後、若干緩やかな減少へと変わっている。ただし、緩やかな抵抗減少でもNb3Sn生成による2種類の抵抗減少であるため、速い変化率
である。Snの酸化除去の振る舞いを詳しく見るため、酸化除去開始後の抵抗変化を図8に示した。
0-2mΩ/sec1/2の抵抗減少率に移行している。これは、主に、フィラメント密集部
のSn濃度の減少に対応していると考えられる。以上の結果から、Snの酸化除去による抵抗変化に比べ、Nb3Snの生成による抵抗変化は無視できる割合であることが確認さ
れる。また、後期のSnの酸化除去による抵抗変化率は、初期の抵抗変化率の0.56倍となっている。
m)/2に線材長を掛けた量で近似することができる。フィラメント密集部での同様の量は、平均周長π*(0.891mm+0.456mm)/2に線材長を掛け、さらにブロンズの体積
率37.3/(37.3+22.0)を掛けた量で近似することができる。したがって、後者は前者の0.45倍となる。一方、後期のSnの酸化除去には外周部のブロンズに拡散したSnも含まれる。外周部、フィラメント密集部の拡散距離は、それぞれ、52μm、217μmであるから、動径方向の全平均断面積/外周部の平均断面積は(217×0.45+52×1)/(217+52)=0.56倍となり、抵抗変化率の比と完全に一致する。
μmより短く、Snの酸化除去に必要な時間は、35.4hr×(269/321.5)2=24.8hrと推定される。ただし、酸化除去開始のブロンズ濃度が、若干残留ブロンズ濃度より高いこと、SnはNb3Snの生成に若干消費されることを考慮する必要がある。
(実施例2)
実施例1と同じ線材を用い、750℃での保持中、14hrをArガス雰囲気、残りの35hrを混合ガス雰囲気とした。図9に750℃に保持時の試料の抵抗の時間変化を示した。
は、Cuの占積率に反比例するとみなせる。すると、実施例2の線材のCu占有率は33.6%と見積もれ、比較例より14.4%増えていることになる。一方、熱処理前のブロンズの占有率は57%で、この内、外周部のブロンズは19.7%であった。このブロンズからSnが除去されると、ブロンズの体積は〜12%減少するから、外周部のブロンズ中のCuは〜17%の占積率に相当する。したがって、外周部のブロンズの大半が安定化Cuに変わったと推測される。酸化除去時間を長時間化することでブロンズマトリックスを全て安定化Cuに変えることができると考えられる。また、線材の縮径により拡散距離を短くすれば、より短時間でのSnの酸化除去が可能になると考えられる。ただし、実際の線材に要する酸化除去時間は、上記(4)式で見積もれる時間を参考に、酸化除去開始時のブロンズの
濃度、フィラメント密集部での実質的な拡散距離等を加味し、実験的に決められる必要がある。
と推測される。
Claims (3)
- 外周部に拡散障壁層と更にその外周部に安定化銅のない超伝導前駆線材の真空または不活性ガス雰囲気での熱処理の後半において、Cuは酸化されないがSn及びTiが酸化される酸素分圧を有する雰囲気に替え、その状態に保持し、マトリックス中のSn及びTiを酸化除去することを特徴とするA15化合物超伝導線材の製造方法。
- Sn及びTiを酸化除去する熱処理の温度が690℃以上であることを特徴とする請求項1記載のA15化合物超伝導線材の製造方法。
- Sn及びTiを酸化除去する雰囲気がH2−H2OもしくはCO−CO2混合ガスまたはそれに不活性ガスが混合されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のA15化合物超伝導線材の製造方法。
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