JP4899152B2 - 医療用樹脂組成物とその製造方法および成形体 - Google Patents

医療用樹脂組成物とその製造方法および成形体 Download PDF

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本発明は、医療用樹脂組成物とその製造方法および成形体に関するものである。
医療に使われる材料には生体内吸収性と非吸収性の二種類に大別される。体内で用いられる非吸収性材料は生体機能性に劣り、生体適合性に問題がある場合が多く、実際に体内での応用が限定されている(水頭症用シャント、眼内レンズ、シリコーンインプラント、人工血管、パッチ類、人工関節など)という現状がある。
一方、生体内吸収性材料は生体内で分解し吸収されて消滅してしまうために、長期間の生体適合性は必要とされないという利点がある。生体内に長期間にわたり残る材料は、発ガン、炎症など多くの2次的な疾患を不可避的に引き起こす結果となることが既にわかっており、このようなことから医療用材料では、用いる材料自体が生体内で吸収されて、消失する材料が切望されていた。たとえば、体内の発症部位に対して薬剤を直接投入する医療用製品が必要とされ、このための材料としても不可欠になっている。
さらに、今後、自己修復能力を生かした損傷組織の治癒法がさらに促進すると考えられており、その際、治療初期に補助手段として用いた材料が生体組織の損傷がある程度治癒した段階で体内にて吸収し消滅すれば、不要となった補助手段の材料を再手術によって抜去する必要がなくなる。このように生体吸収性材料は非吸収性材料と比較してより広範囲な用途が見込まれており、材料として大きなニーズが出てきたという背景から、本格的に研究が推進されている。
ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びラクチド―グリコリド共重合体などに代表される脂肪族ポリエステルは、生体適合性を有し、生体内で非酵素的に加水分解され、その分解生成物である乳酸、グリコール酸は代謝経路により最終的には炭酸ガスと水になり対外へ放出される生体吸収性ポリマーである特性を有することから、現在、積極的に研究が進められている。また、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン、ε-カプロラクトンらのラクトン等の重合体またはそれらの共重合体も、生体内で分解され、最終的に炭酸ガスと水になり対外へ放出される特性が注目され、研究が進められている。
特に乳酸は生体内に存在する材料であるから、ポリ乳酸が生体内で問題を起こすことはないと考えられ、生体内に用いる主材料として期待されている。生体吸収性という特性に注目して、生体吸収性ポリマーのうち、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド―ラクチド共重合体等を基材とした縫合糸、ガーゼらの無菌外科手術用品がすでに市場に出ている。しかし、現在、吸収性材料が臨床応用されている例は、これら縫合や止血などに限られているのが現状である。
それは、生体内吸収性材料という特性を有するだけでは生体内で用いる医療材料として充分ではなく、材料として生体適合性や物性面においてもさらに厳しい条件を満たす必要性が求められてきているからである。
生体内利用にあっては、生体との適合性を高めるために、材料を二次的に処理して特性を付加したり、改質したりすることが研究された。その結果、具体的には、ポリ乳酸にイオンビームを照射して経時的に照射部分が剥離すると共に細胞は照射部位に優先的接着させることができる(特許文献1、特許文献2)。また、伸縮性のある材料としてポリエステル系生分解性材料、具体的にはカプロラクトンとラクチド及び/又はグリコリドとの共重合体なども知られている(特許文献3)。
本発明者等は、引張強さ、破断伸度や衝撃強さ等の物理的に良好な特性を有する材料及び変形歪が固定できる材料として、ポリ乳酸らに代表されるポリエステルを主成分にして、外力からのエネルギーを吸収するために低ガラス転移温度を有する生分解性樹脂を添加する方法が有効ではないかと考えた。そこで、本発明者は、ポリ乳酸に生分解性脂肪族―芳香族共重合体を添加して、その両成分を溶融混練して生分解性樹脂組成物を生成した。その結果、主成分として用いたポリ乳酸と比較して得られた生分解性樹脂組成物は破断伸度、衝撃強さ、柔軟性らの機械物性においてはるかに優れている特性を有していることを見出した。さらに得られた組成物は変形歪が固定できるという形状セット性があることを確認した。(特許文献4)
前記の生分解性樹脂組成物は、延性、耐衝撃性、靭性、形状セット性を有する材料が得られた点で評価されている。更に、この組成物と相違する高分子化合物と相違する組成物について研究が進められている。
ラクチドおよび/またはグリコリド(共)重合体とゴム相からなる組み合わせについて以下の発明が知られている。
「マトリックスおよび別個のゴム相とを含むゴム変成された組成物であって、該マトリックスはラクチドおよび/またはグリコリド(共)重合体を基材としている組成物において、別個の相として存在する分解性のゴム相を組成物基準で少なくとも5重量%含んで成り、そのガラス転移温度が高くても10℃程度であり、組成物の破断時の延びが少なくとも120%であることを特徴とするゴム変性された組成物。」(特許文献5)
この特許の特徴は、ゴム変性成分を添加する点であり、その結果、「靭性及び破断延び」の如き機械的性質が改善されたものであり、「破断時の延びが少なくとも120%」とするものである。
この特許文献5では、「ラクチドおよび/またはグリコリド(共)重合体」と「別個の相として存在する分解性のゴム相を少なくとも5wt%含み」とすることから、ミクロ相分離構造を有するゴム相から成る組成物であり、例えば、ゴム相としてブロック共重合体が挙げられる。ミクロ相分離構造を有するものは成分A、B固有のガラス転移温度を示す特性を有しており、これは物性制御の面では非常に不便である。
これを克服するために共重合体の成分A、Bのガラス転移温度間で自由にガラス転移温度を調整できる均一相としたゴム相を有する組成物の出現が望まれる。
「ラクチドおよび/またはグリコリド(共)重合体を基材としている組成物」において、「別個の相として存在する分解性のゴム相を少なくとも5wt%含み、10℃以下のガラス転移温度を有し、さらに破断時の延びが少なくとも120%であるという」材料のガラス転移温度を10℃以上とし、物理的特性を向上させることについて強く要望されている。具体的には、生体内分解性かつ生体吸収性を有することが確認されている材料のみを用いて、耐衝撃性、柔軟性を有し、さらに金属の特徴である延性、形状セット性を付加した生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物の開発が強く求められている。そしてもちろん、体内での分解過程において実質的に無毒性、水溶性の、できれば細胞代謝の可能な成分への分解であることが必要条件となる。
このような究極の材料の開発が特に医療分野にて強く望まれていた。
特開平5−49689号公報 特開2003−82119号公報 特開2003−246851号公報 特願2004−265512(平成16年9月13日出願) 特許3328285号、特表平8−504850号公報
本発明の課題は、新規な組成物である、(1)ラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー及び(2)ラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体から成る組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題について鋭意研究し、以下の知見を得た。
(1)「ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%を基材とし、ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%がゴム相となることを特徴とする樹脂組成物」とし、従来知られていた生分解吸収性共重合体を、ランダム共重合体に変更し、組成物を溶融することにより、ゴム相のガラス転移温度を40℃未満にまで高めることができることを見出した。
(2)そして、すでに生体内での使用の安全性が確かめられている生体内分解性、吸収性樹脂のみを用いて、靭性、柔軟性、耐衝撃性を改善した生分解吸収性素材が得られることができることを見出した。具体的には、前記特定の樹脂からなる組成物を溶融混練すると、主成分である樹脂単体(たとえばポリ乳酸)と本発明で創出した樹脂組成物とを比較すると、脆性から延性(破断伸度が7%から200%以上)に改質され耐衝撃性も向上し、さらに、一定の歪が残る形状セット性も有することを見出した。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
クレームを代入する。
(1)[1]ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び [2]ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含むことを特徴とする樹脂組成物。
(2)(1)記載の [1] ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体からなる生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び [2]ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含んで溶融混練して得られることを特徴とする樹脂組成物。
(3)樹脂組成物の生成に用いられる(1)に記載の[1]ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体からなる生分解吸収性ポリマーと、[2]ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体の数平均分子量がともに1万から100万の範囲にあることを特徴とする(1)または(2)いずれかに記載の樹脂組成物。
(4)樹脂組成物は(1)の [1]ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマーが連続相を、[2] ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体が10ナノメートルから5ミクロンサイズの分散相を構成することを特徴とする(1)から(3)いずれかに記載の樹脂組成物。
(5)樹脂組成物から形成されるフィルムが、500ミクロン厚のフィルムの引張試験で破断伸度が100%以上を示し、延性な特性を有することを特徴とする(1)から(4)いずれかに記載の樹脂組成物。
(6)樹脂組成物から形成されるフィルムは、500ミクロン厚のフィルムの引張試験で引張伸度20%以上では、変形歪の80%以上が固定されることを特徴とする(1)から(5)いずれかに記載の樹脂組成物。
(7)[1] ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び [2] ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含むことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
(8)(1)記載の [1] ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体からなる生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び [2] ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含んで溶融混練して得られることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
(9)(1)〜(8)いずれかに記載の樹脂組成物を成形加工して得られるものであることを特徴とする成形体。
(10)成形加工が射出成形であることを特徴とする(9)記載の成形体。
(11)成形加工がプレス成形であることを特徴とする(9)記載の成形体。
(12)成形加工が押出成形であることを特徴とする(9)記載の成形体。
(13)成形体の形状がフィルム状、シート状又は板状である(9)記載の成形体。
(14)成形体を加工して得られる形状が網状、繊維状、不織布状、織布状、又はフィラメント状である(9)記載の成形体。
(15)成形体の形状が棒状又は異形品である(9)記載の成形体。
(16)成形体の形状がチューブ、管、ボトル、又は円柱状である(9)記載の成形体。
(17)成形体が医療用であることを特徴とする(9)記載の成形体。
(18)成形体が(1)〜(6)、または(9)〜(17)いずれかに記載の医療材料。
(19)医療材料が体内埋込用(インプラント)基材(ステント、プラグ、ネジ、ピンなど)、外科用縫合基材(糸、クリップ、ステープル、外科用ガーゼなど)、接合材や組織置換材料(骨接合剤、歯周病手術時の歯根膜の組織再生を促すための製品、皮膚らの外傷治療用など)、ドラッグデリバリーシステムへの応用の少なくとも一種に相当するものであることを特徴とする(1)〜(6)、または(9)〜(18)いずれかに記載の医療材料。
(20)(19)記載の医療材料は(1)〜(6)、または(9)〜(19)いずれかに記載の生体内消滅型のステント。
本発明により得られる樹脂組成物は、ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体50.0〜99.9重量%とガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%がゴム相となることを特徴とする樹脂組成物である。この樹脂組成物は、靭性、柔軟性、耐衝撃性(耐衝撃強さ)を改善した材料であり、ガラス転移温度または融点が室温以上の生体内分解性かつ生体吸収性ポリマー(例えばポリ乳酸)と比較し、衝撃値が著しく向上し、脆性から延性(破断伸度が7%から200%以上)に改質され、さらに、一定の歪が残る形状セット性を有する材料である。
これに対して従来技術である引用文献5と対比すると、本発明の効果は以下の通りである。
特許文献5におけるミクロ相分離構造を有するゴム相はガラス転移温度をランダム共重合体のように広く変化させることは不可能であり、「ゴム相のガラス転移温度は高くても10℃」と限定している。
しかし、本発明での樹脂組成物はランダム共重合体をゴム相の原料として用いるために、ゴム相のガラス転移温度を広範囲で制御でき、ゴム相のガラス転移温度が及ぼす組成物の特性への影響の検討が可能となった。その結果、新たに本発明の樹脂組成物では「ゴム相のガラス転移温度が10℃以上」で最も良い物理的特性 [ 靭性、延性、耐衝撃性、さらに金属のような形状セット性(所望の形状にして、その形状を維持できないこと)]の向上が得られることを見出し、「ガラス転移温度が40℃未満である生分解吸収性ランダム共重合体から成るゴム相を用いて」さらに優れた生体内分解性、吸収性医療材料を創出することに成功したので、本出願をもって報告する。
特許文献5に記述された材料は技術的に高い評価を受けたが、これまでは「ラクチドおよび/またはグリコリド(共)重合体」と「別個の相として存在する分解性のゴム相を少なくとも5wt%含み」からなる組成物の材料についての物理的特性を向上させることについては全く手がつけられていない状態にあったので、共重合体の構造が樹脂組成物の特性に及ぼす影響を新たに検討し、さらに優れた樹脂組成物を創出したことは非常に有意義が大きい。
医療用製品に用いられる材料に要求される特性は高度化し、生体吸収性という特性だけではなく、引張強さ、破断伸度や衝撃強さ等の物理的に良好な特性を有する材料の登場が期待されていたが、人体に適合し、使用に耐える特性のものが得られていない。また、材料特性として変形歪が固定できる材料が開発される要望が高く、これに成功すれば、このような材料は新たな利用分野が一層開ける。特に、医療分野では、従来開発されてきた金属材料の代替となり得るような延性、形状セット性を有する材料の開発への期待は非常に高いものがある。
特許文献5の材料に改良が加えられ、物理的特性が改善されれば、以上のような材料が得られ、大きな用途が期待できる。体内埋込用(インプラント)基材(ステント、プラグ、ネジ、ピンなど)、外科用縫合基材(糸、クリップ、ステープル、外科用ガーゼなど)、接合材や組織置換材料(骨接合剤、歯周病手術時の歯根膜の組織再生を促すための製品、皮膚らの外傷治療用など)、ドラッグデリバリーシステム、神経導通体、人工血管、整形用移植片などの医療材料への応用において、大きな貢献を果たすことは明白である。
そして、本発明の全体の効果を述べると以下の通りである。
これまで使用されてきた石油由来のプラスチックに置き換わる新規環境素材としても大きなニーズが見込まれるばかりでなく、生分解性プラスチックでありながら金属のような特性も兼ね備えているので、医療用、動物用、農業水産業分野での材料として好適なものである。
特に医療用としては生体適合性や生分解性、生体吸収性も有しているので体内留置物や組織置換材料として使用されれば、従来使用されてきた金属やセラミックスなどのように異物として体内に永久に残存することがないので、除去のための再手術が不要になり二次的な疾患を回避できるという大きな利点がある。これまで、金属器具本体が有する形状セット性、延性などの特性を本発明の組成物自体が有しているために金属基板は不要となり、磁気の影響などを心配する必要もない。これらの優れた点から近年積極的に行われている再生医療への利用も促進されるであろう。
本発明の組成物は、「(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含むことを特徴とする樹脂組成物」(以下第I組成物ともいう)である。
従来知られていた生分解吸収性共重合体について、ランダム共重合体に変更することにより、新規な組成物を得ることができることを見出した。
この組成物を溶融することにより、ガラス転移温度を40℃未満にまで高めることができることを見出した。
前記、「(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー」(以下第II組成物ともいう)は、以下のことを意味する。
(1)ポリ乳酸、
(2)ポリグリコール酸
(3)ラクチド−グリコリド共重合体
(4)ラクチドを成分に含む(3)以外の共重合体
(5)グリコリドを成分に含む(3)以外の共重合体
(3)〜(5)の共重合体の場合、ランダム、ブロックなどの共重合体の種類は問わない。そして、ガラス転移温度が40℃以上を示す成分が含まれていれば、その組成は問わない。
前記、「ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体」(以下第III組成物)は、以下のことを意味する。
(1)ラクチド、又はグリコリド(必須成分)及び
(2)カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、他の生分解性カーボネート類、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含むランダム共重合体である。
具体的には、ラクチド−カプロラクトン、ラクチド−トリメチレンカーボネート、ラクチド−ジオキサノン、ラクチド−ラクトン、グリコリド−カプロラクトン、グリコリド−トリメチレンカーボネート、グリコリド−ジオキサノン、グリコリド−ラクトンなどの2元系だけでなく、ラクチド−グリコリド−カプロラクトン、ラクチド−カプロラクトン−トリメチレンカーボネートなどの他元系の組み合わせも含む。また、これらの異なる2元系や多元系共重合体を混合しても使用可能である。ガラス転移温度が40℃未満であれば組成を問わず、この条件を満たせばこれら全組成のランダム共重合体が対象となる。
このように、40℃未満のガラス転移温度または副転移温度を有する生分解吸収性であるが、1成分のみから成るホモポリマーのみでは特性が限定され物性の最適化が困難となるが、それぞれの繰り返し単位を構造に含むランダム共重合体を生成すれば、ガラス転移温度を広範囲に変化させることも可能である。例えば、ラクチド―εカプロラクトン共重合体ではラクチド成分が多い場合にはガラス転移温度が室温以上になり剛性となるが、カプロラクトン成分が多い場合には10℃以下のガラス転移温度を持ち柔軟な材料となる。つまり同じ化学成分から構成される共重合体でも組成によって性状が広く変化し、当然、加水分解速度もそれにより影響を受けるので、加水分解速度の制御もランダム共重合体では可能となる。
また、ランダム共重合体はブロック共重合体などと比較すると合成が手軽に安価にできるという大きな利点を有する。
さらに40℃未満のガラス転移温度または副転移温度を有する生分解吸収性ポリマーにおいてランダム共重合体を用いた場合、下記の実施例にも示すように飛躍的な機械特性の向上が見られた。しかし、ブロック共重合体の場合は十分な機械特性を発現しない場合が報告されている。(本特許においてランダム性を確認するのにNMRの測定結果から共重合体中の繰り返し単位の「連続鎖長数」を算出して評価を行なった。)
前記第I組成物に関し、第II組成物と第III組成物のランダム共重合体と溶融混練処理をほどこすことによりそれにより得られる樹脂組成物(第I組成物)は第III 組成物由来のガラス転移温度を40℃未満にまで高めても、優れた機械特性を示すことが見出された。
ここで溶融混練処理とは原料(第II組成物と第III 組成物)の融点(結晶性でない場合はガラス転移温度以上)以上に二軸押出成形機またはミキサー混練機により加熱して原料ポリマーを溶融し、均一分散をするように混ぜ合わせることである。
前記第I組成物に関し、このように溶融混練処理をほどこすことにより得ることができ、優れた機械特性を有する生体内分解性、吸収性材料とすることができる。
主成分である樹脂単体(たとえばポリ乳酸)と本発明で創出した樹脂組成物とを比較すると、脆性から延性(破断伸度が7%から200%以上)に改質され、耐衝撃性も向上し、さらに、一定の歪が残る形状セット性(外部から与えられた変形を保持する性質)も有することを見出した。
前記ガラス転移温度とは、高分子化合物を過冷却していくと縦軸を体積またはエンタルピー、横軸を温度にとったプロットが折れ曲がり、高温域では可能であったミクロブラウン運動が束縛されるようになり、膨張係数や比熱が階段状の変化を伴って小さくなる温度が存在する。この体積やエンタルピーが折れ曲がる温度をガラス転移温度と呼ぶ。ガラス転移温度は示差走査熱量計や動的粘弾性測定等の熱分析によって測定される。ガラス転移温度以下では熱運動が自由体積の減少によって抑制されてガラス状態になる。一方、ガラス転移温度以上では高分子の熱運動が激しく、非晶性の場合はゴム状弾性を示す。高分子物質のガラス転移は低分子物質の場合よりはっきりしている。
また前記組成物に関し、ポリマー成分が「ガラス転移温度または副転移温度が40℃未満」とは、ポリマー成分が低温領域に大きな減衰ピーク(α緩和、β緩和、γ緩和など)を有していることを示唆しており、その温度に対応した分子運動が生じやすく、したがって変形も容易であることを意味している。例えば、ポリカーボネートは主分散であるガラス転移温度(α緩和)が約150℃であるが、副分散である副転移温度が低温領域にも(−100℃にγ緩和)出現し、この低温における高分子主鎖の局部的な動的粘弾性運動が室温における大変形での衝撃強さを増加させることが知られている。分子鎖の緩和現象で衝撃エネルギーを吸収することができ、ここに例示したポリカーボネートは耐衝撃性材料としてよく知られている。
ポリマー成分(第I組成物)が「ガラス転移温度40℃以上ということ」は、前記ポリマー成分が40℃において分子運動が束縛されており、硬いガラス状態を維持していることを表現している。
ここで、ガラス転移温度が使用温度(体内で使用の場合は体温)より低い成分が含まれていると、機械特性の向上に非常に有益である。このように樹脂の低温における分子主鎖の局部的な動的粘弾性運動が、使用温度(たとえば室温や体温)における大変形での機械的特性を増加させるのは次のような理由からである。つまり、動的な粘弾性の測定は一般に数Hzの周波数で行なわれている。したがって、低い周波数の低温で現れるこのような損失ピークは、衝撃のような速い負荷速度に対応した高い周波数で測定するならば、もっと高温での損失に対応するということが考えられるからである。
その意味で、本発明の「第III 組成物由来のガラス転移温度を40℃未満にまで高めることができる。」ということは、より広い範囲での負荷速度に対応して機械特性を向上させることができることを示唆しており、非常な重要な意義を持つ。つまり、前記(0027)で述べたように、違う第III 組成物を組み合わせることが可能であるので、極低温領域にガラス転移温度を有するゴム成分と10℃以上にガラス転移温度を有するゴム成分の両者を第II組成物に添加して組み合わせれば、様々な負荷速度を持つ広範囲な外力を吸収できるようになり、より完璧な系を創出することが可能となる。
本発明では、(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体の量はそれぞれ50.0〜99.9重量%、50.0〜0.1重量%の範囲である。
さらに(1)が60.0〜95.0重量%で(2)が40.0〜5.0重量%が好ましく、最も望ましい組成は(1)が75.0〜90.0重量%で(2)が25.0〜10.0重量%である。これらの組成では使用温度の体温では分子鎖運動の束縛された剛性な組成物が得られ、さらに衝撃などの外部からのエネルギーを吸収する成分を副成分として含有していることを意味している。
(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマーが50.0〜0.1重量%で(2)ガラス転移温度または副転移温度が40℃未満にある生分解吸収性ランダム共重合体の量が50.0重量%以上になると(1)が分散相、(2)が連続相を形成することになって軟らかい組成物が生成することになり、前記の形状セット性など達成目標の一つである機械物性は発現しなくなる。
一方、(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体の量が多すぎて、(2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体の量が少なすぎると、外部からのエネルギーを吸収できるゴム相の寄与が十分でなくなり機械特性の向上が発現しなくなる。
本発明の組成物に、前記二成分の生分解性を有し、かつ生体吸収性を有する樹脂組成物の他に、安定化させる媒体となる物質や用途を考慮して添加する物質は、前記二成分の生分解性を有し、かつ生体吸収性を有するポリマー成分を、溶融混練する際に添加することもできる。
前記二成分の生分解性を有し、かつ生体吸収性を有する樹脂組成物には、滑剤のほか、必要に応じて、フィルムとして用いる場合であれば静電ピニング性付与剤としての金属化合物、あるいは難燃剤(有機は炉原型、有機リン系、ホウ酸系、水酸化アルミなど)、消泡剤等の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤(フェノール系、芳香族アミン系、有機イオウ系、有機リン系など)、光安定剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を含有していてもよい。
例えば、医療用の材料として用いる場合の態様としては、これらと共同して用いる材料は以下の通りである。
本発明の材料は、生体内分解性で生体吸収性ポリマーであるという利点を生かして、外科手術用縫合糸や人工皮膚、人工補充物、人工中耳のような軟組織にも好適である。この場合の添加物としてはポリマー分解度を高めるためのラウリン酸または無水ラウリン酸とその誘導体やその他の分解促進剤、コラーゲンおよび不溶性コラーゲン誘導体;ゼラチン;ヒドロキシアパタイトなど、ならびに可溶性固体も用いることができる。
さらに体内外をつなぐカテーテルのような経皮デバイスの表面に本発明の生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物を使用して組織接着性を改善することにも用いることができる。潤滑性改善のためのシリコンオイルやアクリル系樹脂、血液相容性を高めるためのアセチルサリチル酸エステル、接着性改善のためにはフィブリノーゲン、脂肪酸エステル性接着剤、ゼラチン/アルデヒド性接着剤、ヒドロキシアパタイト、またはそれらの組み合わせを使用しても良い。
さらに骨固定材、骨接合材、骨セメントのような硬組織としても用いることができる。固定代替材料はまず機械的な強度に優れ、スムーズな運動性を保持するものでなければならない。材料の弾性率が大きすぎたり、伸びが低すぎると、応力が接合した生体骨に集中するために接合部や間接部に予期せぬ破壊が生じやすい。硬組織代替材料は半永久的に埋入されるものが多く、また一時的な補修をする際にも硬組織は再生に長時間を要するため、埋入期間が永いものでなければならない。この場合、添加剤としてチタンなどの不活性金属;不活性および/もしくは生体吸収性ポリマー、脱灰骨、ヒドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウムなどのリン酸カルシウム類、フェライト、シリカ、生体活性セラミックス、生体不活性セラミックスのほか、造影剤(硫酸バリウム、酸化ジルコニウムなど)らを用いることができる。
このように用途に応じた生物学的生理活性な添加剤を用いることによって各種ニーズに応えることが可能となる。
ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含んで溶融混練することにより得られる樹脂組成物を含む樹脂組成物でもよい。
例えば、外壁にそって、前記添加剤を含んだ層を被覆するような方法でも行われる。これらは用途に沿った製品諸物性と諸機能の向上、外観、生産性の向上に寄与する。前記添加剤の含有方法(分散、包埋、被覆など)や物質また含有場所については使用目的に応じた最適な方法で行なえばよい。
これらの添加剤を加える方法については熱安定性を有する物であれば樹脂混練の際に添加しても良いし、熱安定性がないものであれば混練後、別途塗布、含有、あるいは表面処理で加えることも可能である。これらの添加剤を少量混練する際や主として表面に処理を施す場合は、本発明の樹脂組成物の機械物性は主としてバルクの特性で決定されるので、ここで述べる延性、靭性、柔軟性、耐衝撃性、形状セット性らの特性は保持され、これらを生かした分野で用いることができる。
ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマーの代表格としてポリ乳酸のような脂肪族ポリエステルが挙げられる。ポリ乳酸は乳酸の脱水重縮合で製造されたものでもよいし、またラクチドの開環重合により製造されたものでもよい。
また、ラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL-ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD-ラクチド、D−乳酸とL−乳酸が環状二量化したメソラクチド、およびL−ラクチドとD−ラクチドのラセミ混合物であるDL−ラクチドがあるが、本発明ではこれらのいずれのラクチドを開環重合して得られたポリ乳酸を使用してもよいが、ポリ乳酸のL−乳酸単位とD−乳酸単位の含有比は得られる共重合体の結晶化度に影響を及ぼす。特に、延性、形状セット性である特性を発現するには結晶化度は低い方が好ましいので、DL体のポリ乳酸が、より望ましい。
生分解性ポリマーの体内での生分解速度は分子量や結晶化度にも影響され、高分子量よりも低分子量のものの方が、結晶性よりも非晶性の方が分解速度が高くなる。また、ポリ乳酸の場合、同じ生分解性脂肪族ポリエステルのポリグリコール酸より生分解速度が遅いので、速い分解速度が求められる場合にはポリ乳酸の代わりにラクチド―グリコリド共重合体などを用いて生分解速度を調整することも可能である。
グリコール酸に乳酸を共重合していくと、結晶相の融点は低下し、乳酸が20モル%も共重合されると、非晶性となる。
ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマーとしてポリ乳酸のほかにポリグリコール酸の使用も可能である。また、ラクチドまたはグリコリドの繰り返し単位を構造に有している共重合体でガラス転移温度が40℃以上の成分を含むものも使用可能である。
またガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマーと(2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体間で相容性(compatibility)がある系が望ましい。そのためには、(2)のガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体にラクチドまたはグリコリドの成分を含む共重合体を使用することが非常に有効である。
前記の(1)ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ラクチドまたはグリコリドを含む共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種の生分解吸収性ポリマー量の数平均分子量は、1万から100万の範囲のものが望ましい。この範囲未満のもの、またこの範囲を超えるものは、樹脂組成物としたときに十分な効果を期待できない。前記範囲は、好ましくは、3万から70万、さらに好ましくは5万から50万である。
前記の(2)40℃未満のガラス転移温度または副転移温度を有する生分解吸収性ランダム共重合体の数平均分子量も1万から100万程度のものが望ましい。これ以上の分子量になると溶融混練が困難となり、かつこれ以下の分子量になると物性が不十分となる。
本発明の樹脂組成物は10ナノメートルから5ミクロンサイズの相分離構造を有することを特徴とする。これよりも大きな相分離構造となると、物性が落ち、またポリマーの慣性半径から考えると10ナノメートル以下の相分離構造となることは困難である。
本発明の(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含むことを特徴とする樹脂組成物は主成分の樹脂(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ラクチドまたはグリコリドを含む共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種の生分解吸収性ポリマー)のみの場合と比較して、はるかに高い耐衝撃性を有する。つまり、軟らかい成分を添加することにより、靭性になるということを意味している。例えば、ポリ乳酸だけであると硬くて脆い性質のために応用が非常に限られるという問題点をこの方法により解決できる。
本発明の生体内分解性かつ生体吸収性ポリマーからなる樹脂組成物は延性であり、形状セット性も有する特徴がある。たとえば、ポリ乳酸単体と比較した時、引張破断伸度は7%から200%以上に劇的に上昇して延性な物性を示し、さらに降伏点を越えた引張伸度20%以上では、変形歪の80%以上が固定されることを見出した。その時の残存歪率はどの歪量に対しても一定であることを確認した。
(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含むことを特徴とする樹脂組成物は、前記各原料混合物を溶融状態とし、混練(溶融混練)することにより製造する。溶融混練に際しては、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、ミキサー、各種のニーダー等の混練装置を用いて行う。なかでも、二軸の押出機が好ましい。
溶融混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合した後、混練装置に供給してもよいし、各成分を混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
タンブラー又はヘンシェルミキサー内の温度は通常150℃以上の温度が採用される。ポリ乳酸が主成分の場合、210℃位でよく、280℃以上の高温となるような温度は避けるべきである。
ポリ乳酸を主成分とする場合、溶融混練の温度は、180から250℃程度の範囲が採用される。この温度範囲以下であると樹脂が充分に融解せず、さらにこの温度範囲以上であると原料のポリエステル系樹脂が加水分解を引起しやすくなる。
前記の溶融混練操作で得られた樹脂組成物は、公知の各種成形方法によって所望の形状に成形することにより、各成形体を得ることができる。具体的には、以下の成形方法を挙げることができる。
押出成形、射出成形、回転成形、吹き込み成形、ブロー成形、トランスファー成形、プレス成形、溶液キャスト法等である。
これらの成形方法により得られる成形体を、前記成形方法に対応して、順に、押出成形体、射出成形体、回転成形体、吹込成形体、ブロー成形体、トランスファー成形体、プレス成形体、溶液キャスト法成形体と呼ぶ。
本発明の樹脂組成物を成形してフィルム類を得るには。例えば、上記樹脂組成物を、ダイ(口金)を備えた押出機に供給する方法を使用できる。
フィルム類の製造に用いるダイとしては、Tダイ、円筒スリットのダイが好ましく用いられる。また、キャスト法や熱プレス法なども、フィルム類の製造に適用することができる。
上記成形体がフィルム類である場合、その厚みは特に限定するものではないが、1〜1000μmの範囲が実用上好ましく、1〜500μmの範囲がさらに好ましい。フィルム表面には、必要に応じて表面処理を施すことができる。このような表面処理法としては、例えばα線、β線、γ線あるいは電子線等の照射、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、赤外線処理、スパッタリング処理、溶剤処理、研磨処理などが挙げられる。 これらの処理は、成形加工の過程で行なっても良いし、成形加工後のフィルム、シートに対して行なっても良いが、成形加工の過程、特に巻き取り機の手前でかかる処理を施すのが好ましい。
(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつラクチドまたはグリコリドを含む(共)重合体から成る生分解吸収性ポリマー50.0〜99.9重量%、及び (2)ガラス転移温度40℃未満で、かつラクチド(又はグリコリド)と、カプロラクトン、(トリメチレン)カーボネート、ジオキサノン、ラクトンの少なくとも一種を含む生分解吸収性ランダム共重合体50.0〜0.1重量%を含んで溶融混練して得られる組成物より得られるフィルムは、前記したように靭性、柔軟性、耐衝撃性(耐衝撃強さ)を改善し、脆性から延性(破断伸度が7%から200%以上)を有する特性のものが得られる。さらに、一定の歪が残る形状セット性を有し、また、屈曲性、耐油性および接着性、ヒートシール性に優れるので、それらの特性を生かした食品、医薬品の包装用フィルムやテープ、医療処理で用いるフィルム、生ごみ包装用袋、ラミネート用フィルム、電気・電子部品等のラッピング、記録メディアのシュリンクフィルム、農水産用フィルム等の用途にも好適に使用できる。
本発明の生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物は耐衝撃性に優れ、形状セット性を有する。例えば、500ミクロン厚のポリ乳酸の引張衝撃値(70kJ/m2)より、本発明の樹脂組成物は高い引張衝撃値と破断伸度(7%から200%以上:図1参照)を示し、添加された40℃未満の生分解吸収性ランダム共重合体が靭性かつ延性を有する材料に改質したことが分かる。
樹脂組成物よりホットプレスして得られる薄肉ダンベル型試料片を用いて、引張試験機を一定速度で一定伸度まで伸長した後、引張方向から逆方向に一定速度で戻していくと、荷重の負荷のかからない状態での残存歪量を測定することができる。この状態を測定した図2では、外部から与えられた歪量(この場合、引張伸度=150%)に対しての残存歪量の割合を求めることにより、残存歪率を算出することができる。ここで、外部からの歪量を50%、100%、150%というように変化させて残存歪量との関係を調べていくと、外部からの歪量に拘わらず、その歪量のほとんどが残存歪量(この場合90.1%)として保持されることが図3で示されるように確認することができる。つまり、主成分のポリ乳酸の破断伸度は、およそ10%で脆弱であるのに、本発明のポリ乳酸系生分解性・生体吸収性樹脂組成物は200%の破断伸度を有して大きな変形に耐えるようになり、形状セット性の機能を付加できたことが理解できる。
つまり、組成物の降伏点を越える引張伸度20%以上のどの変形歪量において、変形歪の80%以上が固定され、その形状を固定できる特性を発現するようになったことが分かる。
また、上記の樹脂組成物を成形してフィラメントを得るには、前記樹脂組成物を、押出機によってストランドダイへ溶融押出した後、高速で巻き取る方法を使用できる。
また、上記の樹脂組成物を成形して容器、ボトルなどの中空成形体を得るには、例えば、ブロー成形機を使用して、上記樹脂組成物に、空気、水などの流体圧力を吹き込んで、金型内へ密着させる方法(ブロー成形)を使用できる。また、射出成形も適用可能である。
また、上記の樹脂組成物を成形して管、チューブを得るには、チューブ成形機を使用して、上記樹脂組成物を、押出機からチューブダイへ溶融押出する方法を使用できる。
以上より成形体の形状には、フィルム状、シート状又は板状、網状、繊維状、不織布状、織布状、又はフィラメント状、前記成形体の形状が棒状や異形品、チューブ、管、ボトル、容器などとなる。これらの成形体の形状としてはフィルム状(フィルム、シートら)、板状、円柱状、箱状、フィラメント状、不織布状、織布状、管状、チューブ状、その他の異形品状である。
本発明の樹脂組成物は、医療用材料として使用することができる。
例えば、医療用点滴薬の容器、チューブなどの体外で用いる使い捨て器具だけでなく、生分解性で生体吸収性ポリマーであるという利点を生かして、体内埋込用基材(ステント、プラグ、ネジ、ピンなど)、外科用縫合基材(糸、クリップ、ステープル、外科用ガーゼなど)、接合材や組織置換材料(骨固定材、骨接合材、骨セメントのような硬組織、歯周病手術時の歯根膜の組織再生を促すための製品、皮膚らの外傷治療用など)への応用などが考えられる
フィルムの場合、必要に応じてポリオレフィン等の樹脂の塗布、ラミネートあるいは酸化アルミニウム等金属の蒸着、あるいは酸化珪素、酸化チタン等のコーティング等の表面処理を施す場合もある。これらの処理は、成形加工の過程で行なっても良いし、成形加工後のフィルム、シートに対して行なっても良いが、成形加工の過程、特に巻き取り機の手前でかかる処理を施すのが好ましい。
さらにフィルム製造時や工程通過性をさらによくするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤を、必要量添加して製膜し、フィルム表面にスリップ性を付与することが望ましい。さらに、フィルムの印刷加工性を向上させるため、例えば、帯電防止剤等を含有させることもできる。
固定代替材料はまず機械的な強度に優れ、スムーズな運動性を保持するものでなければならない。現在一部で使われているメタルは表面から徐々に腐食されてイオン化されるので、この点問題視される場合がある。
その点、本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性も高く延性もあり腐食の問題もなく、代謝過程に順応しながら分解吸収されるので、医療用材料としても非常に好適である。
ステントは、経皮的冠動脈形成術において、1987年ごろより使用され始めた。狭心症、心筋梗塞、動脈瘤などの治療で血管を押し広げて固定する器具の一つとしてために使用されている。従来、ステントの材料としてモリブデンを添加したステンレスが使用されることが多いが、ステント留置後に血栓がつき、血管が詰まる再狭窄を生じ、さらに金属製だと生体内で永久に残るので、発ガン、炎症などの二次的な疾患を起こす原因となる。ステントの開発には柔軟性、追従性、生体適合性、拡張性、強い支持力という物性が求められているが、本発明の樹脂組成物は体内で吸収される生分解性である特性を有しつつ、かつ金属のような延性、形状セット性、柔軟性を有し、磁気の影響も受けないので、基本的な材料としては非常に好適である。
血管、胆管、気管、尿道、食道などの管腔内に留置するステントは、その形状、大きさらを目的や適用箇所によって適宜決定すればよい。ステントは自己拡張型でもバルーン拡張型でもよい。金属のような延性、形状セット性を有する本発明の樹脂組成物は従来の金属を用いたステントに代替できるので、医療分野での大きな貢献が望まれる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、本発明の試験は以下の方法による。
(1)引張試験
薄肉ダンベル型試料の試験は約0.5mm厚のフィルムから2号型試験片の1/2の大きさのダンベル型を打ち抜き、JIS K7113に準じて実施した。試験機はOrientec (UCT) Tensilonを用いた。測定は同じ試料について3〜5回繰り返した。
以上の引張試験より引張弾性率、破断伸度を求めた。
(2)残存歪率
薄肉ダンベル型試験片(厚さ約0.5mm、2号型試験片の1/2の大きさのダンベル型)を10mm/minの速度で、試験片の試験部有効長16mmが、32mmまで伸長されたときを、与えた歪量=100%、40mmまで伸長されたときを、与えた歪量=150%、48mmまで伸長されたときを、与えた歪量=200%、として、伸長させた後、圧縮方向に同じ速度で戻し、そのときに荷重ゼロとなる点から残存歪率を求めた。(図3参照)試験機はOrientec (UCT) Tensilonを用いた。
(3)引張衝撃試験
薄肉の試料(約0.5mm厚)を用いてJIS K7160 (ISO 8256)に準じてシャルピー引張衝撃試験を実施した。試験機は東洋精機製のデジタル衝撃試験機を用いた。
実施例及び比較例に用いた原料は以下の通りである。ガラス転移温度と融点は、示差走査熱量計を用いて測定した。また、分子量はゲル浸透クロマトグラフ分析装置で測定した。共重合体の組成と平均連続鎖長は核磁気共鳴分光法(1H−NMR)で測定した。
(A)成分:40℃以上のガラス転移温度を有する生分解吸収性ポリマーとしてポリ乳酸(PLA)を選択した。
(イ)三井化学社製H-280 [190℃、2.16kg荷重におけるMFRは2.5g/10min、数平均分子量Mn=4.4万、重量平均分子量 Mw=13.5万、非晶性、ガラス転移温度=52.0℃](これを以下、PLA-1として略称することがある。)
(ロ)三井化学社製 H-400 [190℃、2.16kg荷重におけるにおけるMFRは3g/10min、数平均分子量Mn=2.9万、重量平均分子量 Mw=10.5万、ガラス転移温度=60.2℃、融点=166℃](以下、PLA-2として略称することがある。)
(B)成分: 40℃未満のガラス転移温度を有する生分解吸収性ランダム共重合体として具体的にはラクチド‐εカプロラクトン共重合体、またはラクチド‐トリメチレンカーボネート共重合体)(以下、カプロラクトンをCL、トリメチレンカーボネートをTMCと略称することがある)を選択した。
(ハ)東洋紡績製バイロエコール BE−910 [ラクチド‐εカプロラクトン共重合体、数平均分子量Mn=2.5万、比重=1.18、ガラス転移温度=−8.6℃、カプロラクトン含量=41.6重量%、カプロラクトン平均連続鎖長=1.6ユニットのランダム共重合体](以下、P−1として略称することがある。)
(ニ)東洋紡績製バイロエコール BE−450 [ラクチド‐εカプロラクトン共重合体、数平均分子量Mn=2.5万、比重=1.24、ガラス転移温度=30.7℃、カプロラクトン含量=10.7重量%、カプロラクトン平均連続鎖長=1.1ユニットのランダム共重合体](以下、P−2として略称することがある。)
(ホ)多木化学製 ラクチド‐εカプロラクトン共重合体 [数平均分子量 Mn=約14万、ガラス転移温度=46.8℃、カプロラクトン含量=7.7重量%、カプロラクトン平均連続鎖長=1.28ユニットのランダム共重合体] (以下、P−3として略称することがある。)
(へ)多木化学製 ラクチド‐εカプロラクトン共重合体 [数平均分子量 Mn=約18万、ガラス転移温度=11.8℃、カプロラクトン含量=30.9重量%、カプロラクトン平均連続鎖長=1.91ユニットのランダム共重合体] (以下、P−4として略称することがある。)
(ト)多木化学製 ラクチド‐εカプロラクトン共重合体 [数平均分子量 Mn=約19万、
平均連続鎖長=3.2ユニットのランダム共重合体] (以下、P−5として略称することがある。)
(チ)多木化学製 ラクチド‐トリメチレンカーボネート共重合体 [数平均分子量 Mn=約18万、ガラス転移温度=53.7℃、トリメチレンカーボネート含量=1.0重量%、トリメチレンカーボネート平均連続鎖長=1ユニットのランダム共重合体] (以下、P−6として略称することがある。)
(リ)多木化学製 ラクチド‐トリメチレンカーボネート共重合体 [数平均分子量 Mn=約19万、ガラス転移温度=6.2℃、トリメチレンカーボネート含量=52.1重量%、トリメチレンカーボネート平均連続鎖長=2.34ユニットのランダム共重合体] (以下、P−7として略称することがある。)
せん断混練装置について説明する。
ポリ乳酸含有組成物の試料調製には、本研究室で開発した小型二軸コニカルスクリュー押出成形機を用いた。(L/D=5、コニカルスクリュー根元径D=20mm、回転数範囲=0〜360rpm、温度範囲=常温〜400℃、バッチ式/フロー式の両モードの使用が可能)
比較例1〜9
樹脂組成物の原料であるランダム共重合体(比較例1〜7)またはポリ乳酸(比較例8、9)単体のみを使用して、ホットプレス上でプレスし、氷水中で急冷して、急冷シートを作成した。その後、試料はダンベル型に打ち抜き、薄肉ダンベル型試料(シートダンベル(0.5mm厚))として引張試験、引張サイクル試験による残存歪率測定、引張衝撃値の試験を実施した。(表Iを参照)

表 I 比較例1〜9:樹脂組成物の原料となるランダム共重合体とPLAの特性
*: 試料に延性がない場合、残存歪率の測定は不可能となる。
次に表IIに示した割合で表Iに示した各原料を混合し、200℃に加熱された、2軸コニカルスクリュー成形機装置内に投入し、100rpmで5分間、溶融混練を行なった。得られた溶融混練物をホットプレス上でプレスして氷水中で急冷して、樹脂組成物の急冷シートを得た。試料はダンベル型に打ち抜き、薄肉ダンベル型試料(シートダンベル(0.5mm厚))として引張試験、引張サイクル試験による残存歪率測定、引張衝撃値の試験を実施した。
引張試験、引張サイクル試験による残存歪率測定、引張衝撃値の試験を実施し、PLA/P−4樹脂組成物の測定結果を表III、PLA/P−1樹脂組成物の測定結果を表IV、PLA/P−7樹脂組成物の測定結果を表V、PLA/P−5樹脂組成物の測定結果を
表VIにまとめた。

ポリ乳酸単体は比較例8と9に見られるように非常に脆弱な物性を示す。しかし、ラクチド―εカプロラクトンランダム共重合体をポリ乳酸に添加し、溶融混練すると表IIIからVIの実施例でも明らかなように、主成分のポリ乳酸よりはるかに高い衝撃値を示した。これにより、脆弱なポリ乳酸が靭性を有する材料に改質されたことが明らかになった。
ポリ乳酸単体の破断伸度は約10%で非常に脆性である(比較例8、9)のに対し、引張試験の結果を示した図1で示したように、本来脆弱なポリ乳酸にラクチド―εカプロラクトンランダム共重合体を添加して本発明の樹脂組成物(実施例5 [(80/20)PLA−1/P−4])を得るとその破断伸度は飛躍的に上昇した。特にポリ乳酸(PLA)とランダム共重合体P―4, P−5, P−7とブレンドした系(それぞれ表III、表V、表VI)でその変化は著しかった。
その中でも、表IIIに示した実施例3〜6で明らかなように、破断伸度を飛躍的に上昇させ、かつ残存歪率を持たせるには、ポリ乳酸に混合するラクチド―εカプロラクトンランダム共重合体のガラス転移温度は「10℃以上」が好ましいことが分かる。原料のランダム共重合体のガラス転移温度が10℃以上であれば、生成した樹脂組成物も10℃以上のガラス転移温度を有することが、確認されている。
これは、生成した樹脂組成物がガラス転移温度40℃未満を有するランダム共重合体独自の相を形成し、相分離構造を有していることを意味している。このような得られた樹脂組成物のモルフォロジーについては後で述べるように図4の透過型電子顕微鏡観察でも確認されている。
これはラクチド―εカプロラクトンランダム共重合体のラクチド含量が高くなるとポリ乳酸連続相との親和性が増加し、界面接着性も上がり、機械特性が向上する効果を生むのではないかと考えられる。ラクチド含量が高くなるということは同時にランダム共重合体のガラス転移温度も上昇することを意味しており、そのためガラス転移温度が10℃以上の温度範囲で最も良い特性が得られたものと推察される。
引張試験機で一定速度にて一定伸度まで伸長した後、引張方向から逆方向に一定速度で戻していくと、荷重の負荷のかからない状態での残存歪量を測定することができる。図2は表III中の実施例11の試料を用いて測定した結果であるが、外部から与えられた歪量(この場合伸度=150%)に対しての残存歪量の割合を求めることにより、残存歪率を算出した。さらに、外部からの歪量を50%、100%、というように変化させて残存歪量との関係を調べていくと図3が得られた。つまり、図2,図3で示されたように降伏点を越えると外部からの歪量に拘わらず、その歪量のほとんど(90.1%)が残存歪量として保持されることが示された。このことにより、脆弱で変形に耐えることのできなかったポリ乳酸単体に形状セット性の機能を付加できたことが明らかになった。このことは本発明のもうひとつの重要な効果である。
図4に実施例3[(80/20)(PLA−1/P−4)]の透過型電子顕微業写真(RuO4で染色)を示す。この図でも明らかなようにランダム共重合体(P-4)がポリ乳酸(PLA-1)のマトリックス中に数百ナノメートルのサイズで均一に分散していることが分かる。
本発明の生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物の引張試験のS-Sカーブを示す図。 実施例11 [(75/25)(PLA−1/P−1)]の試料。 本発明の生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物の引張サイクル試験のS-Sカーブを示す図。 実施例11 [(75/25)(PLA−1/P−1)]の試料。 本発明の生分解性かつ生体吸収性樹脂組成物の外部から与えられた歪量に対する残存歪量を示す図。実施例11[(75/25)(PLA−1/P−1)]の試料。 実施例3[(80/20)(PLA−1/P−4)]の透過型電子顕微業写真(RuO4で染色)

Claims (2)

  1. (1)ガラス転移温度45.6〜58.6℃で、ポリ乳酸から成る生分解吸収性ポリマー60〜95重量%、(2)ガラス転移温度−33.9〜14.1℃で、ラクチドとカプロラクトンの生分解吸収性ランダム共重合体5〜40重量%と、を含む組成物で、且つ該組成物中のカプロラクトンの含有量が1.5〜17.5重量%であり、
    前記(1)及び前記(2)の数平均分子量がともに1万100万の範囲であり
    前記(1)が連続相を、前記(2)が10ナノメートル5ミクロンサイズの分散相を構成し、
    引張弾性率が740〜1700MPa、破断伸度が126〜656%、引張衝撃値が59〜415KJ/m2 の範囲にある組成物を溶融混練して得ることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  2. (1)ガラス転移温度45.6〜58.6℃で、ポリ乳酸から成る生分解吸収性ポリマー60〜95重量%と、(2)ガラス転移温度5.5〜7.0℃で、ラクチドとトリメチレンカーボネートの生分解吸収性ランダム共重合体5〜40重量%と、を含む組成物で、且つ該組成物中のトリメチレンカーボネートの含有量が3.0〜18.2重量%であり、
    前記(1)及び前記(2)の数平均分子量がともに1万〜100万の範囲であり、
    前記(1)が連続相を、前記(2)が10ナノメートル〜5ミクロンサイズの分散相を構成し、
    引張弾性率が1300〜1600MPa、破断伸度が313〜380%、引張衝撃値が98〜223KJ/m 2 の範囲にある組成物を溶融混練して得ることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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