JP4895980B2 - セグメントの継手構造 - Google Patents
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Description
しかし阪神淡路大震災以降は、設計に関する基本的な考え方が変わり、シールドトンネルにも耐震性能が求められるようになっている。
耐震性能を向上させる手段として、たとえば特許文献1にしめすように、シールドトンネルを構成するセグメント間の継手部に複数のバネを介在させ、地震力を吸収するような構造が開発されている。
また、本発明は、鋼殻の内部にコンクリートを打設したセグメントにおいて、ひとつのセグメントと、他のセグメントをトンネルや立坑の軸方向に接続する構造であって、ひとつのセグメントの端面から突出させた雄部材と、他のセグメントの端面に凹設した雌部材とにより構成し、雄部材と雌部材は、鋼殻に取り付け、雄部材と雌部材は、コンクリートと絶縁した状態に配置してあり、雄部材と雌部材の両側にはアンカーが位置し、一端を鋼殻に取り付けたアンカーの自由端がコンクリートの内部に埋設してあり、アンカーの間では鋼殻、雄部材および雌部材と、その周囲のコンクリートとが離れることが可能に構成してあることを特徴とするセグメントの継手構造である。
<1> 機構が簡単で安価であり、セグメントリングとセグメントとの取り付け作業も短時間で簡単に行うことができる。
<2> 地震時のセグメントの変位に十分追従することができ、地震のエネルギーを吸収して継手部材の破壊を防止し、その結果、シールドトンネルの破壊を防止することができる。
<3> シールドトンネルに限らず、鉛直方向にセグメントを組み立ててゆく立坑においても同様に利用することができる。
<4> リング継手部材の変形性能が向上している。そのため、急曲線施工時にセグメントがジャッキ推力を受けた際、コンクリートセグメントの場合にはセグメントのひび割れ発生とコンクリートの破壊および継手部材の破断を防止することができる。また、鋼殻の内部にコンクリートを打設したセグメントにおいても、内部コンクリートのひび割れ発生とコンクリートの破壊および継手部材の破断を防止することができる。
<5> セグメントとセグメントを連結する、いわゆるワンタッチ継手は各種のものが開発されているが、たとえばマルチブレード継手と称されるような公知の継手をひろく採用することができる。
本発明は、図1に示すように、シールドトンネルや立坑の構築に使用するセグメントAAの継手構造Bに関するものである。
セグメントAは、円弧状の鋼殻の内部にコンクリートを打設したセグメントAを使用する。
セグメントAの継手構造Bは、ひとつのセグメントAと、他のセグメントAをトンネルや立坑の軸方向に接続するための継手として採用する。
そしてこの継手構造Bは、ひとつのセグメントAの端面から突出させた雄部材1と、他のセグメントAの端面に凹設した雌部材2とによって構成する。
雄部材1と雌部材2の組み合わせは、特許文献1に挙げたような公知の組み合わせを利用することができるが、本発明を構成する雄部材1と雌部材2の組み合わせの一実施例を説明する。
図の実施例の雄部材1は、鋼殻の内側に取り付けたナット筒11と、ナット筒11および割り筒13にネジ込むネジ棒12と、ネジ棒12と同軸上に取り付けた割り筒13と、割り筒13の内部に挿入した円錐棒14とより構成する。
セグメントAリング間に位置する鋼殻Cに、開口部15を設け、この開口部15の裏側、すなわちコンクリートD側にナット筒11を位置させる。
ナット筒11と割り筒13とは、ネジ棒12を介して接続する。
割り筒13には、筒の軸方向に切断線13aを刻設してあり、切断線13aの一端はネジ棒12とは反対側の端に開放している。
円錐棒14は、円錐台形の棒状体であり、直径が小径部から徐徐に大径部に拡大している。
割り筒13の内部に、円錐棒14を、その小径部端から強く挿入すると、割り筒13内の切断線13aの幅が広がり、その結果、割り筒13の自由端側の外径は末広状に拡大することになる。
雄部材1は周囲のコンクリートDとは絶縁した状態に配置する。
そのために雄部材1のナット筒11の周囲を絶縁筒16で包囲する。
絶縁筒16の外周にはコンクリートDが位置しているが、絶縁筒16の内径は、ナット筒11の外径より大きいので、両者の間には空間があり、その結果、ナット筒11はコンクリートDと絶縁状態にある。
雌部材2は、鋼殻Cの内側に取り付けた受け筒21によって構成する。
この受け筒21は、底板22を備え、他端を開放した筒体である。
この受け筒21を、鋼殻Cに開口した挿入孔の裏側、すなわちコンクリートD側に取り付ける。
この受け筒21の内径は、拡大した割り筒13の外径より小さく構成する。
したがって受け筒21の内部に位置した割り筒13が、その外径を拡大すると、強力に受け筒21の内周面に接触して、引き抜き力に抵抗することになる。
なお、抵抗力を大きくするために、受け筒21の内面に凹凸を形成しておくこともできる。
雌部材2は周囲のコンクリートDとは絶縁した状態に配置する。
そのために雌部材2の受け筒21の周囲を絶縁筒23で包囲する。
この絶縁筒23の外周にはコンクリートDが位置しているが、絶縁筒23の内径は、受け筒21の外径より大きいので、両者の間には空間があり、その結果、受け筒21はコンクリートDと絶縁状態にある。
雌部材2の受け筒21は鋼殻Cの内面に直接溶接などで取り付けてはいない。
受け筒21は、絶縁筒23の内部に位置して、鋼殻Cの内面に接触した状態のまま、内面に沿って移動が可能であるように構成する。
そのために、たとえば受け筒21の鋼殻C接触面には、その周囲に鍔板24を突設する。
一方、鋼殻Cの内面には、鍔板24の周囲に、断面L型の棚板25を配置する。
この棚板25と鋼殻C内面との間隔を、鍔板24の厚さとほぼ等しく構成しておき、かつ鍔板24の外周と棚板25の内面との間に空間を介在させておけば、鍔板24は鋼殻Cの内面から離れず、かつ鋼殻Cの面に沿った移動が可能となる。
雄部材1も、雌部材2も、円周方向に一定の距離だけ離れた位置にアンカー3を設ける。
このアンカー3は、鋼板と鋼棒とを組み合わせる構成(図3左側)、あるいは鋼棒だけによる構成(図3右側)などが採用できる。
それらの鋼板や鋼棒の一端を鋼殻Cの裏面、すなわちコンクリートD側に取り付ける。
するとアンカー3の自由端はコンクリートDの内部に埋設されることになる。
このように構成する結果、継手構造Bによって連結したセグメントA間に引っ張り力が生じた場合に、ひとつのセグメントAにおけるアンカー3とアンカー3の間では鋼殻CとコンクリートDが離れることが可能となる。
次にセグメントAとセグメントAとの連結動作について説明する。
一方のセグメントAの端面から雄部材1を突設させる。
そのためにまず、ナット筒11の内部にネジ棒12をねじ込み、このネジ棒12に割り筒13をねじ込んで取り付ける。
次に割り筒13の開放端側から、円錐台状の円錐棒14を挿入する。
その状態では割り筒13の切断線13aは広がっていない。
雄部材1の突設位置と、雌部材2の取り付け位置は、トンネル軸上で一致した線上に設けてある。
端面から雄部材1を突設させたセグメントAを、雌部材2を取り付けてあるセグメントAに向けて強い力で押し付ける。
すると、雄部材1は雌部材2の内部に侵入する。
そして、雄部材1の円錐棒14の先端が、雌部材2の受け筒21の底板22に当たり、それ以上のセグメントAの接近によって円錐棒14の小径側が割り筒13の内部に侵入してゆく。
その結果、割り筒13の切断線13aが広がり、割り筒13が末広がりの円錐筒として変形する。
拡大した割り筒13の外径は、受け筒21の内径よりも大きく構成してあるから、両者は強固に一体となる。
地震時にはセグメントAとセグメントAとが離れる方向に外力が作用する場合がある。
あるいは急曲線部のセグメントAにはシールド掘進機の推進力が作用して同様に変形する場合がある。
その際に、雄部材1も雌部材2もコンクリートDから絶縁状態にある。
そのために雄部材1と雌部材2とは結合状態を維持したまま、各々のセグメントAのコンクリートDから離れることができる。
しかしセグメントA間の距離が拡大するために、雄部材1、雌部材2の周囲の鋼殻CがコンクリートDから離れる方向に変形する。
ただし、雄部材1、雌部材2から一定距離はなれた位置では、鋼殻Cの内面にアンカー3が固定してあり、そのために鋼殻CとコンクリートDは強固に一体となっている。
したがって、鋼殻Cはアンカー3の位置まで変形してセグメントAとセグメントAが離れる方向に移動しても継手構造Bの破損を吸収することができる。
セグメント組立時には、真円に組み立てるよう慎重に行うが、既組立セグメントは土圧、水圧、裏込注入圧などの外荷重を受けて変形する可能性がある。
また、施工誤差によりセグメントが理想どおり組み立てることができない場合もある。
これらの場合、雄部材を雌部材に嵌合する際、既定の位置に雌部材が設置されず、雄部材を嵌合できなくなる可能性がある。
その際には前記したように受け筒21の鋼殻C接触面には、その周囲に鍔板24を突設してあり、一方、鋼殻Cの内面には、鍔板24の周囲に、断面L型の棚板25を配置してあり、この棚板25と鋼殻C内面との間隔を、鍔板24の厚さとほぼ等しく構成してある。
そして鍔板24の外周と棚板25の内面との間に空間を介在させてあるから、鍔板24は鋼殻Cの内面から離れず、かつ鋼殻Cの面に沿った移動が可能となる。
このように雌部材がスライド移動可能になることにより雄部材を雌部材に嵌合できるようになる。
以上の説明は、割り筒13がその外径を拡大して雌部材2の受け筒21の内面に強固に接合する継手構造Bの実施例を説明した。
しかし前記したように特許文献1、その他に開示されるような継手構造Bであっても同様に利用することができる。
以上の実施例では周囲を鋼殻で包囲し、その内部にコンクリートを打設した合成セグメントについて説明した。
しかし一般の鉄筋コンクリート製のセグメントにおいても同様に利用することができる。
ただし、一般の鉄筋コンクリート製のセグメントでは、端面に「鋼殻」に相当する鋼材が存在しない。
そこで図8、図9に示すように、コンクリート製のセグメントEの端面に鋼板Fを取り付ける。
その際に鋼板Fとコンクリートの端面は同一平面を形成しており、鋼板Fだけが突出していることはない。
そしてその鋼板Fの裏面に、例えば前記したマルチブレード継手のような雄部材、あるいは雌部材、および一定の距離だけ離した位置にアンカー3を取り付ける。
この鋼板Fは、一方のアンカー3から他方のアンカー3の間だけは、コンクリートと離れることが可能に構成してある。
したがって鋼板に溶接してある雄部材および雌部材も、絶縁筒16および23に包囲されているため、同様に、その周囲のコンクリートから離れる。
コンクリートとの剥離を容易にするには、鋼板Fの裏面とコンクリートの間に剥離紙4を介在させるなどの方法を採用すればよい。
以上のような構成によって、セグメント間に離れる方向の力が作用した場合に、前記の実施例と同様の変形を行い、継手の破損を避けるという機能を期待することができる。
B:継手構造
C:鋼殻
D:コンクリート
1:雄部材
2:雌部材
3:アンカー
Claims (4)
- 鉄筋コンクリート製のセグメントにおいて、
ひとつのセグメントと、他のセグメントをトンネルや立坑の軸方向に接続する構造であって、
ひとつのセグメントの端面から突出させた雄部材と、
他のセグメントの端面に凹設した雌部材とにより構成し、
雄部材と雌部材はそれぞれ鋼板に取り付け、
雄部材と雌部材は、コンクリートと絶縁した状態に配置してあり、
雄部材と雌部材を取り付けた鋼板の両側にはアンカーが位置し、
一端を鋼板に取り付けたアンカーの自由端がコンクリートの内部に埋設してあり、
アンカーの間では鋼板と雄部材および雌部材と、その周囲のコンクリートとが離れることが可能に構成してあることを特徴とする、
セグメントの継手構造。
- 鋼殻の内部にコンクリートを打設したセグメントにおいて、
ひとつのセグメントと、他のセグメントをトンネルや立坑の軸方向に接続する構造であって、
ひとつのセグメントの端面から突出させた雄部材と、
他のセグメントの端面に凹設した雌部材とにより構成し、
雄部材と雌部材は、鋼殻に取り付け、
雄部材と雌部材は、コンクリートと絶縁した状態に配置してあり、
雄部材と雌部材の両側にはアンカーが位置し、
一端を鋼殻に取り付けたアンカーの自由端がコンクリートの内部に埋設してあり、
アンカーの間では鋼殻、雄部材および雌部材と、その周囲のコンクリートとが離れることが可能に構成してあることを特徴とする、
セグメントの継手構造。
- 雄部材は、
鋼板、鋼殻の内側に取り付けたナット筒と、
ナット筒にネジ込むネジ棒と、
ネジ棒と同軸上に取り付けた割り筒と、
割り筒の内部に挿入した円錐棒とより構成してあり、
雌部材は、
鋼板、鋼殻の内側に取り付けた筒体である受け筒で構成してあり、
雄部材のナット筒と、
雌部材の受け筒とは、
その周囲を絶縁筒で包囲して、
コンクリートと絶縁してある、
請求項1または2記載のセグメントの継手構造。
- 雄部材は、
鋼板、鋼殻の内側に取り付けたナット筒と、
ナット筒にネジ込むネジ棒と、
ネジ棒と同軸上に取り付けた割り筒と、
割り筒の内部に挿入した円錐棒とより構成してあり、
雌部材は、
鋼板、鋼殻の内側に取り付けた筒体である受け筒で構成してあり、
雌部材の受け筒は、
絶縁筒の内部に位置して、
鋼板または鋼殻の内面に沿って移動が可能であるように構成した、
請求項1または2記載のセグメントの継手構造。
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