以下、図面を参照して本発明の多気筒内燃機関の気筒間空燃比インバランス判定装置の実施形態について説明する。図1は本発明の気筒間空燃比インバランス判定装置が適用された火花点火式多気筒内燃機関の全体図である。以下で説明する火花点火式多気筒内燃機関は吸気行程、圧縮行程、膨張行程、および、排気行程を順に行ういわゆる4サイクル内燃機関である。
図1において、10が火花点火式多気筒内燃機関(以下単に「内燃機関」という)を示している。また、内燃機関10は本体20を有する。本体20はシリンダブロックとシリンダヘッドとを有する。また、本体20はピストンの頂面とシリンダボアの内壁面とシリンダヘッドの下壁面とによって形成される4つの燃焼室21を有する。図1において、♯1は最も下側に図示されている燃焼室21を示しており、以下、この燃焼室を第1気筒とも称し、♯2は第1気筒♯1の直ぐ上側に図示されている燃焼室21を示しており、以下、この燃焼室を第2気筒とも称し、♯3は第2気筒♯2の直ぐ上側に図示されている燃焼室21を示しており、以下、この燃焼室を第3気筒とも称し、♯4は第3気筒♯3の直ぐ上側に図示されている燃焼室21を示しており、以下、この燃焼室を第4気筒とも称す。
また、シリンダヘッドには、各燃焼室21に連通する吸気ポート22が形成されている。この吸気ポート22を介して燃焼室21に空気が吸入される。吸気ポート22は吸気弁(図示せず)によって開閉される。さらに、シリンダヘッドには、各燃焼室21に連通する排気ポート23が形成されている。この排気ポート23に燃焼室21から排気ガスが排出される。排気ポート23は排気弁(図示せず)によって開閉される。
また、シリンダヘッドには、各燃焼室21に対応して点火栓24が配置されている。各点火栓24は燃焼室21に形成される燃料と空気との混合気に点火することができるように燃焼室21内に露出するようにシリンダヘッドに配置されている。さらに、シリンダヘッドには、各吸気ポート22に対応して燃料噴射弁25が配置されている。各燃料噴射弁25は吸気ポート22内に燃料を噴射することができるように吸気ポート22内に露出するようにシリンダヘッドに配置されている。
吸気ポート22には、吸気枝管31が接続されている。吸気枝管31は吸気ポート22にそれぞれ接続される枝部とこれら枝部が集合するサージタンク部とを有する。また、吸気枝管31のサージタンク部には、吸気管32が接続されている。本実施形態(以下「第1実施形態」という)では、これら吸気ポート22と吸気枝管31と吸気管32とによって吸気通路30が形成されている。また、吸気管32には、エアフィルタ33が配置されている。さらに、エアフィルタ33と吸気枝管31との間の吸気管32には、スロットル弁34が回動可能に配置されている。スロットル弁34には、該スロットル弁34を駆動するアクチュエータ34aが接続されている。スロットル34がアクチュエータ34aによって回動せしめられることによって吸気管31内部の流路面積が変更せしめられ、これによって、燃焼室21に吸入される空気の量が制御せしめられる。
一方、排気ポート23には、排気枝管41が接続されている。排気枝管41は排気ポート23にそれぞれ接続される枝部41aとこれら枝部が集合する排気集合部41bとを有する。また、排気枝管41の排気集合部41bには、排気管42が接続されている。第1実施形態では、これら排気ポート23と排気枝管41と排気管42とによって排気通路40が形成されている。また、排気管42には、排気ガス中の特定成分を浄化する排気浄化触媒(以下この排気浄化触媒を「上流側触媒」という)43が配置されている。さらに、この上流側触媒43の下流の排気管42には、同じく排気ガス中の特定成分を浄化する排気浄化触媒(以下この排気浄化触媒を「下流側触媒」という)44が配置されている。
上流側触媒43はいわゆる三元触媒であり、図2に示されているように、その温度が或る温度(いわゆる、活性温度)よりも高く且つそこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍の領域X内にあるときに排気ガス中の窒素酸化物(以下「NOx」と表記する)と、一酸化炭素(以下「CO」と表記する)と、炭化水素(以下「HC」と表記する)とを同時に高い浄化率でもって浄化することができる。一方、上流側触媒43はそこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときに排気ガス中の酸素を吸蔵し、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときにそこに吸蔵されている酸素を放出する酸素吸蔵・放出能力を有する。したがって、この酸素吸蔵・放出能力が正常に機能している限り、上流側触媒43に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであっても理論空燃比よりもリッチであっても、上流側触媒43の内部雰囲気が略理論空燃比近傍に維持されることから、上流側触媒43において排気ガス中のNOx、CO、および、HCが同時に高い浄化率で浄化される。
下流側触媒44もいわゆる三元触媒であり、上流側触媒43と同じく、NOxとCOとHCとを同時に高い浄化率でもって浄化することができると共に、酸素吸蔵・放出能力を有する。
また、吸気管32には、吸気管32内を流れる空気の量、すなわち、燃焼室21に吸入される空気の量(以下この空気の量を「吸気量」という)を検出するエアフローメータ51が配置されている。
また、内燃機関10の本体20には、クランクシャフト(図示せず)の回転位相を検出するクランクポジションセンサ53が配置されている。クランクポジションセンサ53はクランクシャフトが10°回転する毎に幅狭のパルスを出力すると共に、クランクシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを出力する。これらパルスに基づいてクランクシャフトの回転数、すなわち、機関回転数が算出される。また、アクセル開度センサ57はアクセルペダルAPの踏込量を検出する。
また、上流側触媒43の上流の排気管42には、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ(以下この空燃比センサを「上流側空燃比センサ」という)55が配置されている。さらに、上流側触媒43と下流側触媒44との間の排気管42には、同じく排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ(以下この空燃比センサを「下流側空燃比センサ」という)56が配置されている。
上流側空燃比センサ55は、図3(A)に示されているように、検出される排気ガスの空燃比がリッチであるほど小さい出力値Iを出力し、一方、検出される排気ガスの空燃比がリーンであるほど大きい出力値Iを出力するいわゆる限界電流式の酸素濃度センサである。
一方、下流側空燃比センサ56は、図3(B)に示されているように、検出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときに比較的大きい一定の出力値Vgを出力し、検出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときに比較的小さい一定の出力値Vsを出力し、検出される排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときに上記比較的大きい一定の出力値Vgと上記比較的小さい一定の出力値Vsとの中間の出力値Vmを出力するいわゆる起電力式の酸素濃度センサである。
電気制御装置(ECU)60はマイクロコンピュータからなり、双方向性バスによって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)61と、ROM(リードオンリメモリ)62と、RAM(ランダムアクセスメモリ)63と、バックアップRAM64と、AD変換器を含むインターフェース65とを有する。インターフェース65は点火栓24、燃料噴射弁25、および、スロットル弁34用のアクチュエータ34aに接続されている。また、エアフローメータ51、クランクポジションセンサ53、上流側空燃比センサ55、下流側空燃比センサ56、および、アクセル開度センサ57もインターフェース65に接続されている。
ところで、第1実施形態では、内燃機関10の運転状態、特に、機関回転数と機関負荷とに応じて燃焼室21に形成される混合気(以下単に「混合気」という)の空燃比として目標とすべき空燃比(以下この空燃比を「目標空燃比」という)TA/Fが図4に示されているように機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形で予め電子制御装置60に記憶されている。そして、内燃機関の運転中(以下「機関運転中」という)、図4のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに応じた目標空燃比TA/Fが読み込まれ、混合気の空燃比が目標空燃比になるように吸気量に応じて各燃料噴射弁25から噴射される燃料の量(以下この量を「燃料噴射量」という)が制御される。なお、吸気量は、機関回転数と機関負荷とに応じて内燃機関が要求されている出力を出力することができる吸気量に制御される。
ここで、目標空燃比が理論空燃比であり、混合気の空燃比を理論空燃比に制御する場合の燃料噴射量の制御について説明する。
上流側空燃比センサ55において、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであることが検出されたとき、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンになっていることになる。そこで、このとき、第1実施形態では、混合気の空燃比が理論空燃比に近づくように、燃料噴射量が徐々に増量せしめられる。一方、上流側空燃比センサ55において、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであることが検出されたとき、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになっていることになる。そこで、このとき、第1実施形態では、混合気の空燃比が理論空燃比に近づくように、燃料噴射量が徐々に減量せしめられる。このように燃料噴射量が制御されることによって混合気の空燃比は全体として理論空燃比に制御されることになる。
ところで、上述したように燃料噴射量が制御される場合、混合気の空燃比は理論空燃比を跨いで理論空燃比よりもリッチになったり理論空燃比よりもリーンになったりする。別の云い方をすれば、混合気の空燃比は理論空燃比を跨いで振幅する。ここで、混合気の空燃比を理論空燃比に制御するという観点では、理論空燃比を跨いだ混合気の空燃比の振幅が小さいことが望ましい。すなわち、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき、混合気の空燃比を可能な限り迅速に理論空燃比に近づけ、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであるとき、混合気の空燃比を可能な限り迅速に理論空燃比に近づけることが望ましい。
そこで、第1実施形態では、上流側空燃比センサ55において混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転したことが検出されたとき、燃料噴射量がスキップ的に比較的大きく減量せしめられる。これによれば、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転したとき、混合気の空燃比が比較的大きく理論空燃比に近づけられる。一方、上流側空燃比センサ55において混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転したことが検出されたとき、燃料噴射量がスキップ的に比較的大きく増量せしめられる。これによれば、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転したとき、混合気の空燃比が比較的大きく理論空燃比に近づけられる。斯くして、理論空燃比を跨いだ混合気の空燃比の振幅が小さくなる。
ところで、混合気の空燃比をさらに迅速に理論空燃比に近づけるためには、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転したときに燃料噴射量をスキップ的に減量する量(以下この量を「スキップ減量値」という)を、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転したときの混合気の空燃比と理論空燃比との差が大きいほど大きくすると共に、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転したときに燃料噴射量をスキップ的に増量する量(以下この量を「スキップ増量値」という)を、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転したときの混合気の空燃比と理論空燃比との差が大きいほど大きくすることが望ましい。
そこで、第1実施形態では、これらスキップ減量値およびスキップ増量値が以下のように制御される。
すなわち、下流側空燃比センサ56において、理論空燃比よりもリーンである排気ガスの空燃比が検出されている期間(以下この期間を「リーン期間」という)が長いほど、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリーンな空燃比になっていると言える。すなわち、上流側触媒43から流出する排気ガスの空燃比は上流側触媒43の酸素吸蔵・放出能力によって理論空燃比になるはずである。しかしながら、それでもなお、リーン期間が長い場合とは、上流側触媒43が吸蔵することができないほど多量の酸素が上流側触媒43に流入している場合、すなわち、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリーンな空燃比になっている場合であると言える。そこで、第1実施形態では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転したとき、リーン期間が長いほど、スキップ増量値が大きくされる。
一方、下流側空燃比センサ56において、理論空燃比よりもリッチである排気ガスの空燃比が検出されている期間(以下この期間を「リッチ期間」という)が長いほど、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリッチな空燃比になっていると言える。すなわち、上流側触媒43から流出する排気ガスの空燃比は上流側触媒43の酸素吸蔵・放出能力によって理論空燃比になるはずである。しかしながら、それでもなお、リッチ期間が長い場合とは、上流側触媒43に吸蔵されている全ての酸素が放出されてしまうほど上流側触媒43に流入する酸素の量が少ない場合、すなわち、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリッチな空燃比になっている場合であると言える。そこで、第1実施形態では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転したとき、リッチ期間が長いほど、スキップ減量値が大きくされる。
このように燃料噴射量が制御されることによって混合気の空燃比が全体として精度良く理論空燃比に制御されることになる。
次に、第1実施形態に従った燃料噴射量の制御を実行するフローチャートの一例について説明する。第1実施形態に従った燃料噴射量の制御を実行するフローチャートとして、図5〜図7に示されているフローチャートが利用される。
図5は燃料噴射弁から燃料を噴射する時間を算出するフローチャートである。図5のルーチンが開始されると、始めに、ステップ10において、機関回転数Nに対する吸気量Gaの割合Ga/Nが算出される。次いで、ステップ11において、ステップ10で算出された割合Ga/Nに定数αを掛けた値Ga/N・αが基本燃料噴射時間TAUPに入力される。次いで、ステップ12において、ステップ11で算出された基本燃料噴射時間TAUPに空燃比補正係数(図6のルーチンによって算出される係数であって、その詳細は後述する)FAFと内燃機関の運転状態に応じて定まる定数βおよび定数γを掛けた値TAUP・FAF・β・γが燃料噴射時間TAUに入力され、ルーチンが終了する。第1実施形態では、ステップ12で算出された燃料噴射時間TAUだけ燃料噴射弁から燃料が噴射される。
図6は図5のステップ12で用いられる空燃比補正係数FAFを算出するフローチャートである。図6のルーチンが開始されると、始めに、ステップ20において、上流側空燃比センサ55によって検出される排気ガスの空燃比A/Fが理論空燃比A/Fstよりも大きい(A/F>A/Fst)か否か、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるか否かが判別される。ここで、A/F>A/Fstであると判別されたときには、ルーチンはステップ21以降のステップに進む。一方、A/F≦A/Fstであると判別されたときには、ルーチンはステップ25以降のステップに進む。
ステップ20においてA/F>A/Fstであると判別され、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判別され、ルーチンがステップ21に進むと、上流側空燃比センサ55によって検出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転した直後であるか否かが判別される。ここで、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転した直後であると判別されたときには、ルーチンはステップ22に進み、前回、図6のルーチンが実行されたときに算出された空燃比補正係数FAFにスキップ増量値(図7のルーチンによって算出される値であって、その詳細は後述する)RSRを加えた値FAF+RSRが新たな空燃比補正係数FAFとされる。次いで、ステップ23において、ステップ22で算出された空燃比補正係数FAFが許容範囲内の値になるようにガードされ、ルーチンが終了する。一方、ステップ21において、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチからリーンに反転した直後ではないと判別されたときには、ルーチンはステップ24に進み、前回、図6のルーチンが実行されたときに算出された空燃比補正係数FAFに一定値KIRを加えた値FAF+KIRが新たな空燃比補正係数FAFとされる。次いで、ステップ23において、ステップ24で算出された空燃比補正係数FAFが許容範囲内の値になるようにガードされ、ルーチンが終了する。
一方、ステップ20においてA/F≦A/Fstであると判別され、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判別され、ルーチンがステップ25に進むと、上流側空燃比センサ55によって検出される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転した直後であるか否かが判別される。ここで、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転した直後であると判別されたときには、ルーチンはステップ26に進み、前回、図6のルーチンが実行されたときに算出された空燃比補正係数FAFからスキップ減量値(図7のルーチンによって算出される値であって、その詳細は後述する)RSLを引いた値FAF−RSLが新たな空燃比補正係数FAFとされる。次いで、ステップ23において、ステップ26で算出された空燃比補正係数FAFが許容範囲内の値になるようにガードされ、ルーチンが終了する。一方、ステップ25において、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンからリッチに反転した直後ではないと判別されたときには、ルーチンはステップ27に進み、前回、図6のルーチンが実行されたときに算出された空燃比補正係数FAFから一定値KILを引いた値FAF−KILが新たな空燃比補正係数FAFとされる。次いで、ステップ23において、ステップ27で算出された空燃比補正係数FAFが許容範囲内の値になるようにガードされ、ルーチンが終了する。
図7は図6のステップ22で用いられるスキップ増量値RSRおよび図6のステップ26で用いられるスキップ減量値RSLを算出するフローチャートである。図7のルーチンが開始されると、始めに、ステップ30において、下流側空燃比センサ56によって検出される排気ガスの空燃比A/Fが理論空燃比A/Fstよりも大きい(A/F>A/Fst)か否か、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるか否かが判別される。ここで、A/F>A/Fstであると判別されたときには、ルーチンはステップ31に進む。一方、A/F≦A/Fstであると判別されたときには、ルーチンはステップ34に進む。
ステップ30においてA/F>A/Fstであると判別され、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判別され、ルーチンがステップ31に進むと、前回、図7のルーチンが実行されたときに算出されたスキップ増量値RSRに所定量ΔRSを加えた値RSR+ΔRSが新たなスキップ増量値RSRとされる。次いで、ステップ32において、ステップ31で算出されたスキップ増量値RSRが許容範囲内の値になるようにガードされる。次いで、ステップ33において、ステップ32でガードされたスキップ増量値RSRを定数Rから引いた値が新たなスキップ減量値RSLとされ、ルーチンが終了する。
一方、ステップ30においてA/F≦A/Fstであると判別され、すなわち、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判別され、ルーチンがステップ34に進むと、前回、図7のルーチンが実行されたときに算出されたスキップ増量値RSRから所定量ΔRSを引いた値RSR−ΔRSが新たなスキップ増量値RSRとされる。次いで、ステップ32において、ステップ34で算出されたスキップ増量値RSRが許容範囲内の値になるようにガードされる。次いで、ステップ33において、ステップ32でガードされたスキップ増量値RSRを定数Rから引いた値が新たなスキップ増量値RSLとされ、ルーチンが終了する。
ところで、内燃機関10は4つの燃料噴射弁25を有する。そして、これら燃料噴射弁のうち、例えば、1つの燃料噴射弁に不具合があると、以下のような現象が生じる。
すなわち、第1実施形態では、空燃比センサ55、56によって検出される排気ガスの空燃比に基づいて混合気の空燃比が目標空燃比になるように各燃料噴射弁から噴射される燃料の量が制御される。すなわち、空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比に基づいて混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判断されたときには、各燃料噴射弁において燃料噴射量が増量され、空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比に基づいて混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判断されたときには、各燃料噴射弁において燃料噴射量が減量される。云い方を換えれば、第1実施形態では、空燃比センサが各燃焼室毎に配置されているのではなく各燃焼室に共通して配置されていることから、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判断されたとき、全ての燃焼室において混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判断されることになるし、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判断されたとき、全ての燃焼室において混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判断されることになる。このため、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判断されたとき、全ての燃料噴射弁において燃料噴射量が増量され、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判断されたとき、全ての燃料噴射弁において燃料噴射量が減量されることになる。
ここで、例えば、全ての燃料噴射弁25において同じ量の燃料が噴射されるように電子制御装置60から各燃料噴射弁に指令が発せられたときに、1つの燃料噴射弁に不具合があって(以下この不具合のある燃料噴射弁を「異常のある燃料噴射弁」という)、該異常のある燃料噴射弁において電子制御装置から指令された量(以下この量を「指令燃料噴射量」という)の燃料よりも多い量の燃料が噴射されてしまう場合、残りの燃料噴射弁(以下これら燃料噴射弁を「正常な燃料噴射弁」という)において指令燃料噴射量の燃料が噴射されて対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比になるとしても、異常のある燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比は理論空燃比よりもリッチになってしまう。したがって、このとき、異常のある燃料噴射弁に対応する燃焼室から排出される排気ガスのエミッションが悪化してしまう。
そして、異常のある燃料噴射弁25に対応する燃焼室21から排出された排気ガスが上流側空燃比センサ55に到達すると、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判断され、全ての燃料噴射弁において燃料噴射量が減量されることから、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンになってしまう。したがって、このとき、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室から排出される排気ガスのエミッションも悪化してしまう。
もちろん、異常のある燃料噴射弁25に対応する燃焼室21に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになったり、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンになったりしたとしても、第1実施形態の空燃比制御によれば、各燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比になるように各燃料噴射弁における燃料噴射量が制御されるのであるから、混合気の空燃比は、全体として見れば、理論空燃比に制御されているとも言えなくもない。しかしながら、混合気の空燃比が全体として見れば理論空燃比に制御されていると言えたとしても、各燃焼室に形成される混合気の空燃比を個別に見てみると、第1実施形態の空燃比制御が実行されている間、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリッチになったり、大幅に理論空燃比よりもリーンになったりしているので、いずれにしても、各燃焼室から排出される排気ガスのエミッションが悪化していることになる。
一方、全ての燃料噴射弁25において同じ量の燃料が噴射されるように電子制御装置60から指令が各燃料噴射弁に発せられたときに、1つの燃料噴射弁に不具合があって(以下この不具合のある燃料噴射弁も「異常のある燃料噴射弁」という)、該異常のある燃料噴射弁おいて指令燃料噴射量の燃料よりも少ない燃料しか噴射されない場合、残りの正常な燃料噴射弁において指令燃料噴射量の燃料が噴射されて対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比になっているとしても、異常のある燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比は理論空燃比よりもリーンになってしまう。したがって、このとき、異常のある燃料噴射弁に対応する燃焼室から排出される排気ガスのエミッションが悪化してしまう。
そして、異常のある燃料噴射弁25に対応する燃焼室21から排出された排気ガスが上流側空燃比センサ55に到達すると、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判断され、全ての燃料噴射弁において燃料噴射量が増量させることから、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになってしまう。したがって、このとき、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室から排出される排気ガスのエミッションも悪化してしまう。
もちろん、異常のある燃料噴射弁25に対応する燃焼室21に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンになったり、正常な燃料噴射弁に対応する燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになったりしたとしても、第1実施形態の空燃比制御によれば、各燃焼室に形成される混合気の空燃比が理論空燃比になるように各燃料噴射弁における燃料噴射量が制御されるのであるから、混合気の空燃比は、全体として見れば、理論空燃比に制御されているとも言えなくもない。しかしながら、混合気の空燃比が全体として見れば理論空燃比に制御されていると言えたとしても、各燃焼室に形成される混合気の空燃比を個別に見てみると、第1実施形態の空燃比制御が実行されている間、混合気の空燃比が大幅に理論空燃比よりもリーンになったり、大幅に理論空燃比よりもリッチになったりしているので、いずれにしても、各燃焼室から排出される排気ガスのエミッションが悪化していることになる。
このように、指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう不具合が或る特定の燃料噴射弁25にある場合であっても、指令燃料噴射量よりも少ない量の燃料しか噴射されない不具合が或る特定の燃料噴射弁にある場合であっても、燃焼室から排出される排気ガスのエミッションが悪化することになる。
こうした事情に鑑みると、特定の燃料噴射弁に不具合があって、該燃料噴射弁において指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう状態や指令燃料噴射量よりも少ない量の燃料しか噴射されない状態、すなわち、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間にバラツキが生じている状態(以下この状態を「気筒間空燃比インバランス状態」という)が生じていることを知ることは、排気ガスのエミッションの状態を知り、排気ガスのエミッションの悪化を改善する対策を講じる上で極めて重要である。
そこで、第1実施形態では、以下のようにして気筒間空燃比インバランス状態が生じているか否か、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定される。
すなわち、クランクシャフトの回転角度をクランク角度と称したとき、内燃機関10では、各燃焼室21においてクランク角度180°ずつずれたタイミングで第1気筒♯1、第4気筒♯4、第3気筒♯3、第2気筒♯2の順に排気行程が順次行われるようになっている。したがって、各燃焼室21から排気ガスがクランク角度180°ずつずれて順次排出され、これら排気ガスが上流側空燃比センサ55に順次到達することになる。したがって、上流側空燃比センサは、概ね、第1気筒から排出された排気ガスの空燃比、第4気筒から排出された排気ガスの空燃比、第3気筒から排出された排気ガスの空燃比、そして、第2気筒から排出された排気ガスの空燃比を順次検出することになる。
ここで、全ての燃料噴射弁25が正常である場合、上流側空燃比センサ55に到達した排気ガスの空燃比に対応して該上流側空燃比センサが出力する出力値は図8(A)に示されているように推移する。すなわち、上述したように、第1実施形態の空燃比制御によれば、各燃焼室21に形成される混合気の空燃比は理論空燃比よりもリッチにされたり理論空燃比よりもリーンにされたりすることによって全体として理論空燃比に制御される。そして、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであることが上流側空燃比センサによって検出されたときには可能な限り迅速に混合気の空燃比が理論空燃比に達するように各燃料噴射弁における燃料噴射量に対する増量値が設定され、一方、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであることが上流側空燃比センサによって検出されたときには可能な限り迅速に混合気の空燃比が理論空燃比に達するように各燃料噴射弁における燃料噴射量に対する減量値が設定される工夫がなされている。このため、全ての燃料噴射弁が正常であれば、図8(A)に示されているように、上流側空燃比センサの出力値(以下この出力値を「センサ出力値」という)は理論空燃比に対応する出力値を跨いで比較的小さい幅で上下動を繰り返すことになる。
一方、第1気筒♯1に対応する燃料噴射弁25に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう不具合があって、残りの気筒♯2〜♯4に対応する燃料噴射弁が正常である場合、センサ出力値は図8(B)に示されているように推移する。すなわち、異常のある燃料噴射弁に対応する第1気筒♯1に形成される混合気の空燃比は理論空燃比よりも大幅にリッチになっていることから、第1気筒から排出される排気ガスの空燃比も理論空燃比よりも大幅にリッチになっている。このため、第1気筒から排出された排気ガスが上流側空燃比センサ55に到達したとき、センサ出力値は第1気筒から排出された排気ガスの空燃比、すなわち、理論空燃比よりも大幅にリッチな空燃比に対応する出力値に向かって一気に小さくなる。そして、第1実施形態の空燃比制御によれば、センサ出力値が理論空燃比よりも大幅にリッチな空燃比に対応する出力値を出力したとき、すなわち、上流側空燃比センサが理論空燃比よりも大幅にリッチな空燃比を検出したとき、全ての燃料噴射弁における燃料噴射量が大幅に減量せしめられ、第4気筒♯4、第3気筒♯3、および、第2気筒♯2に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりも大幅にリーンになる。このため、これら第4気筒〜第2気筒から排出された排気ガスが上流側空燃比センサに到達したとき、センサ出力値はこれら気筒から排出された排気ガスの空燃比、すなわち、理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比に対応する出力値に向かって一気に大きくなる。そして、第1実施形態の空燃比制御によれば、センサ出力値が理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力したとき、すなわち、上流側空燃比センサが理論空燃比よりもリーンな空燃比を検出したとき、全ての燃料噴射弁における燃料噴射量が増量せしめられ、再び、第1気筒に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりも大幅にリッチになる。このため、或る特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう不具合がある場合、図8(B)に示されているように、センサ出力値は理論空燃比に対応する出力値を跨いで比較的大きい幅で上下動を繰り返すことになる。
一方、第1気筒♯1に対応する燃料噴射弁25に指令燃料噴射量よりも少ない量の燃料しか噴射されない不具合があって、残りの気筒♯2〜♯4に対応する燃料噴射弁が正常である場合、センサ出力値は図8(C)に示されているように推移する。すなわち、異常のある燃料噴射弁に対応する第1気筒♯1に形成される混合気の空燃比は理論空燃比よりも大幅にリーンになっていることから、第1気筒から排出される排気ガスの空燃比も理論空燃比よりも大幅にリーンになっている。このため、第1気筒から排出された排気ガスが上流側空燃比センサ55に到達したとき、センサ出力値は第1気筒から排出された排気ガスの空燃比、すなわち、理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比に対応する出力値に向かって一気に大きくなる。そして、第1実施形態の空燃比制御によれば、センサ出力値が理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比に対応する出力値を出力したとき、すなわち、上流側空燃比センサが理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比を検出したとき、全ての燃料噴射弁における燃料噴射量が大幅に増量せしめられ、第4気筒♯4、第3気筒♯3、および、第2気筒♯2に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりも大幅にリッチになる。このため、これら第4気筒〜第2気筒から排出された排気ガスが上流側空燃比センサに到達したとき、センサ出力値はこれら気筒から排出された排気ガスの空燃比、すなわち、理論空燃比よりも大幅にリッチな空燃比に対応する出力値に向かって一気に小さくなる。そして、第1実施形態の空燃比制御よれば、センサ出力値が理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力したとき、すなわち、上流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比を検出したとき、全ての燃料噴射弁における燃料噴射量が減量せしめられ、再び、第1気筒に形成される混合気の空燃比が理論空燃比よりも大幅にリーンになる。このため、或る特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量よりも少ない量の燃料が噴射されてしまう不具合がある場合、図8(C)に示されているように、センサ出力値は理論空燃比に対応する出力値を跨いで比較的大きい幅で上下動を繰り返すことになる。
このように、或る特定の燃料噴射弁に異常がある場合のセンサ出力値の推移は全ての燃料噴射弁が正常である場合のセンサ出力値の推移とは大きく異なる。
特に、全ての燃料噴射弁が正常である場合、図8(A)に示されているように、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリッチ側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が小さくなるときに、センサ出力値が辿るラインの平均の傾き(以下この平均の傾きを単に「傾き」という)は比較的小さい傾きα1である。一方、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリーン側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が大きくなるときに、センサ出力値が辿るラインの平均の傾き(以下この平均の傾きも単に「傾き」という)は比較的小さい傾きα2である。そして、この場合、これら傾きα1の絶対値と傾きα2の絶対値とは略等しい。
一方、或る特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう異常がある場合、図8(B)に示されているように、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリッチ側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が小さくなるときに、センサ出力値が辿るラインの傾きは比較的大きい傾きα3である。一方、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリーン側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が大きくなるときに、センサ出力値が辿るラインの傾きは比較的大きい傾きα4である。そして、この場合、センサ出力値が小さくなるときにセンサ出力値が辿るラインの傾きα3の絶対値はセンサ出力値が大きくなるときにセンサ出力値が辿るラインの傾きα4の絶対値よりも若干大きい。
一方、或る特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量よりも少ない量の燃料しか噴射されない異常がある場合、図8(C)に示されているように、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリーン側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が大きくなるときに、センサ出力値が辿るラインの傾きは比較的大きい値α5である。一方、上流側空燃比センサに到達する排気ガスの空燃比がリッチ側に向かって変化するのに伴ってセンサ出力値が小さくなるときに、センサ出力値が辿るラインの傾きは比較的大きい傾きα6である。そして、この場合、センサ出力値が大きくなるときにセンサ出力値が辿るラインの傾きα5の絶対値はセンサ出力値が小さくなるときにセンサ出力値が辿るラインの傾きα6の絶対値よりも若干大きい。
このように、センサ出力値が辿るラインの傾きは、全ての燃料噴射弁が正常である場合、特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料を噴射してしまう異常がある場合、そして、特定の燃料噴射弁に指令燃料噴射量の燃料よりも少ない燃料しか噴射しない異常がある場合において、それぞれ、特有の値をとる。したがって、この傾きを利用すれば、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することができる。すなわち、特定の燃料噴射弁に異常がある場合にセンサ出力値が辿るラインの傾きは、基本的には、全ての燃料噴射弁が正常である場合にセンサ出力値が辿るラインの傾きよりも大きい。したがって、全ての燃料噴射弁が正常である場合にセンサ出力値が辿るラインがとり得る傾きを閾値として設定し、或いは、その傾きよりも大きい値を閾値として設定しておき、機関運転中、センサ出力値が辿るラインの傾きがこの閾値よりも大きいとき、気筒間空燃比インバランス状態が生じているものと判定することができる。
第1実施形態では、基本的には、この考え方に基づいて気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定される。しかしながら、第1実施形態では、気筒間空燃比インバランス状態の有無をより精度良く判定するべく、気筒間空燃比インバランス状態の有無の判定が以下のように行われる。
すなわち、本願の発明者の研究により、センサ出力値が辿るラインの傾きが機関回転数には無関係なパラメータであるが吸気量に応じて変わるパラメータであることが判明した。
すなわち、上流側空燃比センサ55は、図9および図10に示されているように、空燃比検出素子55aと、外側保護カバー55bと、内側保護カバー55cとを有する。保護カバー55b、55cは空燃比検出素子55aを覆うように該空燃比検出素子55aをその内部に収容する。また、保護カバー55b、55cは上流側空燃比センサ55に到達した排気ガスを排気管42からその内部に流入させて空燃比検出素子55aに到達させるための流入孔55b1、55c1と、その内部に流入した排気ガスを排気管42に流出させるための流出孔55b2、55c2とを有する。
そして、上流側空燃比センサ55は排気管42内に保護カバー55b、55cが露出するように排気管42に配置される。したがって、排気管42を流れる排気ガスEXは、図9および図10に矢印Ar1で示されているように、外側保護カバー55bの流入孔55b1を通って該外側保護カバー55bと内側保護カバー55cとの間の空間に流入する。次いで、排気ガスは、矢印Ar2で示されているように、内側保護カバー55cの流入孔55c1を通って該内側保護カバー55cの内部空間に流入し、空燃比検出素子55aに到達する。その後、排気ガスは、矢印Ar3に示されているように、内側保護カバー55cの流出孔55c2および外側保護カバー55bの流出孔55b2を通って排気管42に流出する。上流側空燃比センサ55に到達した排気ガスが上流側空燃比センサ内をこのように流れることから、上流側空燃比センサに到達した排気ガスは外側保護カバー55bの流出孔55b2近傍を流れる排気ガスの流れによって外側保護カバー55bの流入孔55b1に吸い込まれることになる。
このため、保護カバー55b、55c内における排気ガスの流速は外側保護カバー55bの流出孔55b2近傍を流れる排気ガスの流速、すなわち、単位時間当たりの吸気量に応じて変化する。云い換えれば、外側保護カバー55bの流入孔55b1に排気ガスが到達してから該排気ガスが空燃比検出素子55aに到達するまでにかかる時間は吸気量に依存するが機関回転数には依存しない。このことは内側保護カバーのみを有する空燃比センサにも等しく当てはまる。
したがって、第1気筒♯1に対応する燃料噴射弁25に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう異常があって、残りの燃料噴射弁が正常であって、機関回転数が或る一定値である場合を例にとると、センサ出力値は吸気量に応じて図11に示されているように推移する。
すなわち、図11において、線LBは外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達する排気ガスの空燃比の推移を示しており、図11に示されている例では、時刻t1において第1気筒♯1から排出された排気ガスが外側保護カバーの流入孔に到達し、時刻t3において第4気筒♯4から排出された排気ガスが外側保護カバーの流入孔に到達し、時刻t5において第3気筒♯3から排出された排気ガスが外側保護カバーの流入孔に到達し、時刻t6において第2気筒♯2から排出された排気ガスが外側保護カバーの流入孔に到達する。
また、図11において、線LLは空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比の推移であって、吸気量が比較的大きい場合の推移を示しており、線LMは空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比の推移であって、吸気量が中程度である場合の推移を示しており、線LSは空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比の推移であって、吸気量が比較的小さい場合の推移を示している。
図11において、線LBで示されているように、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にずれている第1気筒♯1から排出された排気ガスが時刻t1において外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達すると、該排気ガスはその流入孔を通って空燃比検出素子55aに到達する。このとき、上述したように、保護カバー55b、55cの内部空間を流れる排気ガスの流速は排気管42を流れる排気ガスの流速に依存するので、流入孔に流入した排気ガスは、吸気量が比較的大きい場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が比較的大きい場合)には、線LLで示されているように、時刻t1直後の時刻t21において空燃比検出素子に到達し、吸気量が中程度である場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が中程度である場合)には、線LMで示されているように、時刻t1から僅かに遅れた時刻であって上記時刻t21よりも遅い時刻t22において空燃比検出素子に到達し、吸気量が比較的小さい場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が比較的小さい場合)には、線LSで示されているように、時刻t1から比較的大きく遅れた時刻であって上記時刻t22よりも遅い時刻t23において空燃比検出素子に到達する。すなわち、外側保護カバーの流入孔に到達した排気ガスは吸気量が大きいほど時刻t1に近い時点で空燃比検出素子に到達する。
ここで、空燃比検出素子55aに接触する排気ガスは空燃比検出素子に新たに到達した排気ガスと空燃比検出素子近傍に既に存在していた排気ガスとが混ざり合った排気ガスである。したがって、第1気筒♯1から排出された理論空燃比よりも大幅にリッチな排気ガスが空燃比検出素子に到達したとしても、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比は、第1気筒から排出された排気ガスの空燃比に即座には一致せずに、第1気筒から排出された排気ガスの空燃比に向かって徐々に小さくなるように変化する。そして、斯くして空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比が変化するときに辿るラインの平均の傾きは吸気量が大きいほど大きい。
そして、第1気筒♯1から排出された排気ガスが空燃比検出素子に到達した後、図11において、線LBで示されているように、混合気の空燃比が理論空燃比に制御されている第4気筒♯4から排出された排気ガスが時刻t3において外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達すると、該排気ガスはその流入孔を通って空燃比検出素子55aに到達する。このとき、流入孔に流入した排気ガスは、吸気量が比較的大きい場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が比較的大きい場合)には、線LLで示されているように、時刻t3直後の時刻t41において空燃比検出素子に到達し、吸気量が中程度である場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が中程度である場合)には、線LMで示されているように、時刻t3から僅かに遅れた時刻であって上記時刻t41よりも遅い時刻th42において空燃比検出素子に到達し、吸気量が比較的小さい場合(すなわち、排気管を流れる排気ガスの流速が比較的小さい場合)には、線LSで示されているように、時刻t3から比較的大きく遅れた時刻であって上記時刻t42よりも遅い時刻t43において空燃比検出素子に到達する。
そして、第1気筒♯1から排出された排気ガスが空燃比検出素子55aに到達した場合に関連して説明した理由と同じ理由から、第4気筒♯4から排出された理論空燃比に制御されている排気ガスが空燃比検出素子に到達したとき、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比は、第4気筒から排出された排気ガスの空燃比には即座には一致せずに、第4気筒から排出された排気ガスの空燃比に向かって徐々に大きくなるように変化する。そして、斯くして空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比が変化するときに辿るラインの平均の傾きも吸気量が大きいほど大きい。
なお、線LMで示されている吸気量が中程度である場合、および、線LSで示されている吸気量が比較的小さい場合、空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比が第1気筒♯1から排出された排気ガスの空燃比に一致する前に、第1気筒♯1の次に排気行程が行われる第4気筒♯4から排出された排気ガスが空燃比検出素子に到達する。このため、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比は第1気筒から排出された排気ガスの空燃比に一致する前に大きくなる。
また、センサ出力値は空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比の変化に僅かに遅れて該変化に追従して変化する。このため、第1気筒♯1に対応する燃料噴射弁25に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう異常があって、残りの燃料噴射弁が正常であって、吸気量が中程度である場合を例にとると、図12に示されているように、外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達する排気ガスの空燃比が線LBで示されているように推移したとき、空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比が線LMで示されているように推移し、センサ出力値は線SMで示されているように推移する。
一方、第1気筒♯1に対応する燃料噴射弁25に指令燃料噴射量よりも多い量の燃料が噴射されてしまう異常があって、残りの燃料噴射弁が正常であって、吸気量が中程度である場合を例にとると、機関回転数が或る一定値N1であるとき、外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達する排気ガスの空燃比は図13(A)に線LBで示されているように推移し、空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比は図13(A)に線LMで示されているように推移し、センサ出力値は図13(A)に線SMで示されているように推移する。一方、機関回転数が上記一定値N1の2倍の値N2であるとき、外側保護カバーの流入孔に到達した排気ガスの空燃比は図13(B)に線LBで示されているように推移し、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比は図13(B)に線LMで示されているように推移し、センサ出力値は図13(B)に線SMで示されているように推移する。
そして、これら図13(A)および図13(B)から判るように、異常のある燃料噴射弁25に対応する第1気筒♯1から排出された排気ガスが空燃比検出素子55aに到達し、該空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比がリッチ側へと小さくなるときに該排気ガスの空燃比が辿るラインの平均の傾きは、線LMで示されているように、図13(A)の場合であっても、図13(B)の場合であっても、すなわち、機関回転数が異なったとしても、同じ値である。また、第1気筒から排出された排気ガスに続いて、正常な燃料噴射弁に対応する第4気筒♯4から排出された排気ガスが空燃比検出素子に到達し、該空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比がリーン側へと大きくなるときに該排気ガスの空燃比が辿るラインの平均の傾きも、線LMで示されているように、図13(A)の場合であっても、図13(B)の場合であっても、すなわち、機関回転数が異なったとしても、同じ値である。
すなわち、機関回転数が異なったとしても、吸気量が同じであれば、単位時間当たりに各燃焼室から排出される排気ガスの量も同じである。したがって、この場合、排気管42を流れる排気ガスの流速も同じである。このため、上流側空燃比センサ55の外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達した排気ガスが上流側空燃比センサの内部空間で拡散し、空燃比検出素子55aに到達するまでの該排気ガスの流速も同じである。すなわち、機関回転数が異なったとしても、吸気量が同じであれば、上流側空燃比センサに到達した排気ガスはその内部空間で同じ流速で拡散する。こうした理由から、機関回転数が異なったとしても、吸気量が同じであれば、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比がリッチ側に向かって小さくなるときに該排気ガスの空燃比が辿るラインの平均の傾きは同じ値になるし、空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比がリーン側に向かって大きくなるときに該排気ガスの空燃比が辿るラインの平均の傾きも同じ値になるのである。
なお、図13(A)および図13(B)に示されているように、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にずれている第1気筒♯1から排出された排気ガスが外側保護カバー55bの流入孔55b1に到達した時点t1から該排気ガスが空燃比検出素子に到達する時点t22までの時間は機関回転数が変化したとしても一定の時間Tdである。また、同じく、図13(A)および図13(B)に示されているように、混合気の空燃比が理論空燃比に制御されている第4気筒♯4から排出された排気ガスが外側保護カバーの流入孔に到達した時点t3から該排気ガスが空燃比検出素子に到達する時点t42までの時間も機関回転数が変化したとしても同じ一定の時間Tdである。また、図13(A)および図13(B)から判るように、センサ出力値が変化する幅Wは機関回転数が大きいほど小さい。
いずれにしても、空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比が変化するときに辿るラインの平均の傾きは機関回転数に無関係のパラメータであって吸気量が大きいほど大きくなるパラメータであると言える。
第1実施形態では、このことを考慮して気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定される。すなわち、上流側空燃比センサ55の空燃比検出素子55aに接触する排気ガスの空燃比の単位時間当たりの変化量を「単位空燃比変化量」と称したとき、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が補正係数として電子制御装置60に記憶される。さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が次式1に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(1)
上式1において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(以下この単位空燃比変化量を「補正単位空燃比変化量」という)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は電子制御装置に記憶されている補正係数(すなわち、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式から求められた単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量)であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は機関運転中に単位空燃比変化量が算出されたときにエアフローメータ51によって検出される吸気量、厳密には、機関運転中の単位空燃比変化量の算出に用いられた出力値を上流側空燃比センサが出力したときにエアフローメータによって検出される吸気量(以下この吸気量を単に「単位空燃比変化量の算出時の吸気量」ともいう)である。
そして、上式1に従って算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換され、この変換された単位空燃比変化量(すなわち、補正単位空燃比変化量)と、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とが比較される。
すなわち、全ての燃料噴射弁が正常である場合、吸気量と単位空燃比変化量との関係は図14(A)に線Lnで示されている関係にある。一方、特定の燃料噴射弁に異常がある場合、吸気量と単位空燃比変化量との関係は図14(A)に線Lmで示されている関係にある。図14(A)から判るように、全ての燃料噴射弁が正常である場合であっても、特定の燃料噴射弁に異常がある場合であっても、吸気量が多くなるほど単位空燃比変化量が大きくなる傾向にある。そして、吸気量が同じであれば、単位空燃比変化量は、全ての燃料噴射弁が正常である場合よりも、特定の燃料噴射弁に異常がある場合のほうが大きい。
ここで、図14(A)に示されているように、判定値ΔA/Fthとして、吸気量に関係なく、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と特定の燃料噴射弁に異常がある場合の単位空燃比変化量との間の値が設定されていれば、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と判定値ΔA/Fthとを比較し、単位空燃比変化量が判定値ΔA/Fth以下であるときに気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定し、単位空燃比変化量が判定値ΔA/Fthよりも大きいときに気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定したとしても、気筒間空燃比インバランス状態の有無は正確に判定されるはずである。
しかしながら、図14(A)に示されているように、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が極めて少ない量Gasである場合の単位空燃比変化量と判定値ΔA/Fthとの差D1は小さい。このため、判定値が比較的大きい値に設定されていると、吸気量が極めて少ない量Gasであるとき、特定の燃料噴射弁に異常があるにも係わらず、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が判定値以下になってしまう可能性がある。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも小さい値として算出されてしまうと、吸気量が極めて少ない量Gasであるとき、特定の燃料噴射弁に異常があるにも係わらず、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が判定値以下になってしまう可能性がある。そして、いずれの場合にも、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されてしまうのであるから、到底、気筒間空燃比インバランス状態の有無の判定精度が良いとは言えない。
同様に、図14(A)に示されているように、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が極めて多い量Gagである場合の単位空燃比変化量と判定値ΔA/Fthとの差D2も小さい。このため、判定値が比較的小さい値に設定されていると、吸気量が極めて多い量Gagであるとき、全ての燃料噴射弁が正常であるにも係わらず、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなってしまう可能性がある。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも大きい値として算出されてしまうと、吸気量が極めて多い量Gagであるとき、全ての燃料噴射弁が正常であるにも係わらず、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなってしまう可能性がある。そして、いずれの場合にも、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されてしまうのであるから、到底、気筒間空燃比インバランス状態の有無の判定精度が良いとは言えない。
いずれにせよ、吸気量を考慮せずに、機関運転中に算出される単位空燃比変化量をそのまま利用して気筒間空燃比インバランス状態の有無を精度良く判定しようとすれば、判定値を極めて慎重に設定する必要がある。
一方、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が上式1に従って補正されると、全ての燃料噴射弁が正常である場合の吸気量と補正単位空燃比変化量との関係は図14(B)に線Lncで示されている関係に変わることになる。すなわち、この場合、基準吸気量Gabよりも少ない吸気量に対応する単位空燃比変化量は上式1によって大きくなるように補正される。一方、基準吸気量Gabよりも多い吸気量に対応する単位空燃比変化量は上式1によって小さくなるように補正される。そして、その結果、単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が小さくなり、特に、この場合、単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が零になる。したがって、図14(B)の線Lncの傾きが図14(A)の線Lnの傾きよりも小さくなるのである。
一方、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が上式1に従って補正されると、特定の燃料噴射弁に異常がある場合の吸気量と補正単位空燃比変化量との関係は図14(B)に線Lmcで示されている関係に変わることになる。すなわち、この場合も、基準吸気量Gabよりも少ない吸気量に対応する単位空燃比変化量は上式1によって大きくなるように補正される。一方、基準吸気量Gabよりも多い吸気量に対応する単位空燃比変化量は上式1によって小さくなるように補正される。そして、その結果、単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が小さくなる。したがって、図14(B)の線Lmcの傾きが図14(A)の線Lmよりも小さくなるのである。
そして、斯くして上式1によって単位空燃比変化量が補正された場合、図14(B)に示されているように、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が極めて少ない量Gasである場合の補正単位空燃比変化量と判定値ΔA/Fthとの差D3は図14(A)に示されている差D1よりも大きい。このため、判定値が比較的大きい値に設定されていたとしても、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が極めて少ない量Gasであるときの補正単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は低い。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも小さい値として算出されてしまったとしても、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が極めて少ない量Gasであるときの補正単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は低い。
そして、判定値が必要以上に大きい値に設定されていなければ、特定の燃料噴射弁に異常がある場合に、吸気量が極めて少ない量Gasであったとしても、補正単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は極めて低い。
同様に、図14(B)に示されているように、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が極めて多い量Gagである場合の補正単位空燃比変化量と判定値ΔA/Fthとの差D4は図14(A)に示されているD2よりも大きい。このため、判定値が比較的小さい値に設定されていたとしても、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が極めて多い量Gagであるときの補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は低い。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも大きい値として算出されてしまったとしても、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が極めて多い量Gagであるときの補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は低い。
そして、判定値が必要以上に小さい値に設定されていなければ、全ての燃料噴射弁が正常である場合に、吸気量が極めて多い量Gagであったとしても、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は極めて低い。
このように、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、判定値が必要以上に大きい値にも小さい値にも設定されておらず、適切な値に設定されている限り、特定の燃料噴射弁に異常があるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値以下となることがなく、また、全ての燃料噴射弁が正常であるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなることがない。このため、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。
別の見方をすれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定が採用されるのであれば、判定値が比較的大きい値に設定されたとしても比較的小さい値に設定されたとしても、特定の燃料噴射弁に異常があるときに機関運転中に算出される補正単位空燃比変化量が判定値以下となる可能性が低く、また、全ての燃料噴射弁が正常であるときに機関運転中に算出される補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性が低い。このため、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定を採用することによって、気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値の設定自由度が大きくなると言える。
また、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、単位空燃比変化量が上式1に従って補正されると、単位空燃比変化量は、吸気量が基準吸気量であるときの単位空燃比変化量を上限として吸気量が基準吸気量よりも少ないほど大きい値に補正され、一方、吸気量が基準吸気量であるときの単位空燃比変化量を下限として吸気量が基準吸気量よりも多いほど小さい値に補正される。したがって、基準吸気量として如何なる量が選択されたとしても、結局のところ、基準吸気量を基準として単位空燃比変化量の補正も判定値の設定も行われるのであるから、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。
なお、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値は、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量に設定されている。ここで、予め定められた値は、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が最も少ない量であるときの単位空燃比変化量よりも判定値が大きく、且つ、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が最も多い量であるときの単位空燃比変化量よりも判定値が小さくなるように設定されることが好ましい。しかしながら、気筒間空燃比インバランス判定の精度の多少の低下を許容することができるのであれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量がそのまま判定値として用いられてもよい。
また、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が判定値の設定に用いられる。ここで、この判定値の設定に用いられる単位空燃比変化量は、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量のうち最大の単位空燃比変化量であることが好ましい。しかしながら、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量の平均値が判定値の設定に用いられてもよい。
また、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、上式1に入力される単位空燃比変化量は、一定期間に算出される複数の単位空燃比変化量の平均値であることが好ましい。そして、この場合、上式1に入力される吸気量も、上記一定期間における吸気量の平均値であることが好ましい。
しかしながら、上式1に入力される単位空燃比変化量は、一定の期間に算出される複数の単位空燃比変化量のうちの最大の単位空燃比変化量であってもよい。そして、この場合、上式1に入力される吸気量は、上記最大の単位空燃比変化量に対応する吸気量であってもよいし、上記一定期間における吸気量の平均値であってもよい。
また、上式1に入力される単位空燃比変化量は、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち正の値をとる変化率の絶対値であってもよいし、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち負の値をとる変化率の絶対値であってもよい。
また、上式1に入力される単位空燃比変化量は、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間の間に算出される複数の単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち正の値をとる変化率の絶対値の平均値であってもよいし、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間に算出される複数の単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち負の値をとる変化率の絶対値の平均値であってもよい。そして、これらの場合、上式1に入力される吸気量は、上記一定期間における吸気量の平均値であることが好ましい。
また、上式1に入力される単位空燃比変化量は、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間の間に算出される複数の単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち正の値をとる変化率の絶対値のうちの最大値であってもよいし、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間に算出される複数の単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち負の値をとる変化率の絶対値のうちの最大値であってもよい。そして、これらの場合、上式1に入力される吸気量は、上記最大値に対応する吸気量であってもよいし、上記一定期間における吸気量の平均値であってもよい。
また、上式1に入力される単位空燃比変化量は、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間に算出される単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち正の値をとる変化率の絶対値のうちの最大値と該単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち負の値をとる変化率の絶対値のうちの最大値とのうち大きいほうの最大値であってもよい。そして、この場合、上式1に入力される吸気量は、上記大きいほうの最大値に対応する吸気量であってもよいし、上記一定期間における吸気量の平均値であってもよい。
また、上式1に入力される単位空燃比変化量は、上流側空燃比センサの出力値に基づいて一定期間に算出される単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち正の値をとる変化率の絶対値の平均値と該単位時間当たりの排気ガスの空燃比の変化率のうち負の値をとる変化率の絶対値の平均値とのうちの大きいほうの平均値であってもよい。そして、この場合、上式1に入力される吸気量は、上記一定期間における吸気量の平均値であることが好ましい。
また、吸気量が極めて少ないとき、或いは、吸気量が極めて多いとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差に対応した値にならないことがある。したがって、第1実施形態において、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるときにのみ、気筒間空燃比インバランス判定が行われることが好ましい。これによれば、気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定されたときの判定結果が信頼性の高い判定結果となる。
また、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において機関運転中に算出される単位空燃比変化量は上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される。ここで、上流側空燃比センサの出力値は上流側空燃比センサの空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比に対応する。したがって、機関運転中に算出される単位空燃比変化量は上流側空燃比センサの出力値の単位時間当たりの変化量であるとも言える。別の云い方をすれば、第1実施形態において、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することは、上流側空燃比センサの出力値の単位時間当たりの変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することと同義であると言える。
また、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値は、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量に設定されている。ここで、全ての燃料噴射弁が正常であるときとは、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下であるときと言える。したがって、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値は、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下であるときの単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量であると言える。
また、上述したように、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、基準吸気量として如何なる量が選択されたとしても、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。したがって、第1実施形態において、基準吸気量は、或る特定の吸気量であるとも言える。
また、第1実施形態において、特定の燃料噴射弁に異常がある場合、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が予め定められた許容可能な空燃比差よりも大きくなっており、一方、全ての燃料噴射弁が正常である場合、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下になっている。したがって、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差よりも大きいときとは、特定の燃料噴射弁に異常があって、気筒間空燃比インバランス状態が生じているときを意味し、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下であるときとは、全ての燃料噴射弁が正常であって、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないときを意味する。
なお、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図15および図16に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図15のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ101以降のステップに進む。
ステップ100において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ101に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/Fが算出される。次いで、ステップ102において、現在の吸気量Gaがエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ103において、前回の図15のルーチンの実行時にステップ103で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ101で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F|が加算されることによって、今回の図15のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ104において、前回の図15のルーチンの実行時にステップ104で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ102で取得された吸気量Gaが加算されることによって、今回の図15のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ105において、ステップ103で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算されている単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ104で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算されている吸気量の数も表している。
次いで、ステップ106において、ステップ105でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ107以降のステップに進む。
ステップ106においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ107に進むと、ステップ103で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ105でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ108において、ステップ104で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ105でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ109において、ステップ107で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、基準吸気量Gabと、ステップ108で算出される吸気量の平均値Gaaveとが次式2(上式1と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(2)
次いで、図16のステップ110において、図15のステップ109で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ111に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ112に進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ112に進む。
ステップ110においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ111においてアラームが作動され或いはステップ110でΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ112に進むと、図15のステップ103で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ113において、ステップ104で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ114において、ステップ105でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
次に、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定においても、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様に、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式が電子制御装置60に記憶される。ここで、前記関係式は、単位空燃比変化量を「ΔA/F」とし、吸気量を「Ga」としたとき、次式3で表される。
ΔA/F=a×Ga+b …(3)
上式3において、「a」は傾きであり、「b」は切片である。
さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が次式4に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(4)
上式4において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「ΔA/Fb」は基準吸気量を上式3に入力して算出される単位空燃比変化量(以下この単位空燃比変化量を「基準単位空燃比変化量」という)であり、「ΔA/Fa」は機関運転中に単位空燃比変化量が算出されたときの吸気量を上式3に入力して算出される単位空燃比変化量(以下この単位空燃比変化量を「暫定単位空燃比変化量」という)である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正する上式4から判るように、全ての燃料噴射弁が正常である場合に、単位空燃比変化量の算出時の吸気量においてとるであろう単位空燃比変化量ΔA/Faに対する、基準吸気量においてとるであろう単位空燃比変化量ΔA/Fbの比ΔA/Fb/ΔA/Faによって、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が補正される。
これによれば、単位空燃比変化量の算出時の吸気量が基準吸気量よりも小さいほど、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が大きい値に補正される。そして、機関運転中に算出される単位空燃比変化量がこのように補正されると、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に関連して図14(B)を参照して説明したように、特定の燃料噴射弁に異常があって吸気量が極めて少ない量である場合、補正された単位空燃比変化量と判定値との差は、補正されていない単位空燃比変化量と判定値との差よりも大きくなる。このため、判定値が比較的大きい値に設定されていたとしても、特定の燃料噴射弁に異常がある場合に、吸気量が極めて少ない量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は低い。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも小さい値として算出されてしまったとしても、特定の燃料噴射弁に異常がある場合に、吸気量が極めて少ない量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は低い。
そして、判定値が必要以上に大きい値に設定されていなければ、特定の燃料噴射弁に異常がある場合に、吸気量が極めて少ない量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値以下になる可能性は極めて低い。
一方、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、単位空燃比変化量の算出時の吸気量が基準吸気量よりも大きいほど、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が小さい値に補正される。そして、機関運転中に算出される単位空燃比変化量がこのように補正されると、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に関連して図14(B)を参照して説明したように、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が極めて多い量である場合、補正された単位空燃比変化量と判定値との差は、補正されていない単位空燃比変化量と判定値との差よりも大きくなる。このため、判定値が比較的小さい値に設定されていたとしても、全ての燃料噴射弁が正常である場合に、吸気量が極めて多い量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は低い。また、単位空燃比変化量が外乱によって本来の値よりも大きい値として算出されてしまったとしても、全ての燃料噴射弁が正常である場合に、吸気量が極めて多い量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は低い。
そして、判定値が必要以上に小さい値に設定されていなければ、全ての燃料噴射弁が正常である場合に、吸気量が極めて多い量であったとしても、補正された単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性は極めて低い。
このように、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、判定値が必要以上に大きい値にも小さい値にも設定されておらず、適切な値に設定されている限り、特定の燃料噴射弁に異常があるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値以下となることがなく、また、全ての燃料噴射弁が正常であるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなることがない。このため、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。
また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定が採用されるのであれば、判定値が比較的大きい値に設定されたとしても比較的小さい値に設定されたとしても、特定の燃料噴射弁に異常があるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値以下となる可能性が低く、また、全ての燃料噴射弁が正常であるときに算出される補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きくなる可能性が低い。このため、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定を採用することによって、気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値の設定自由度が大きくなると言える。
また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、単位空燃比変化量が上式4に従って補正されると、単位空燃比変化量は、吸気量が基準吸気量であるときの単位空燃比変化量を上限として吸気量が基準吸気量よりも少ないほど大きい値に補正され、一方、吸気量が基準吸気量であるときの単位空燃比変化量を下限として吸気量が基準吸気量よりも多いほど小さい値に補正される。したがって、基準吸気量として如何なる量が選択されたとしても、結局のところ、基準吸気量を基準として単位空燃比変化量の補正も判定値の設定も行われるのであるから、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。
なお、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定に用いられる判定値と同様に設定される。
また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、上式4に入力される単位空燃比変化量は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、上式1に入力される単位空燃比変化量と同様に算出される。また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、上式3に入力される単位空燃比変化量の算出時の吸気量は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、上式1に入力される吸気量と同様に算出される。
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるときにのみ、気筒間空燃比インバランス判定が行われることが好ましい。これによれば、気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定されたときの判定結果が信頼性の高い判定結果となる。
また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において機関運転中に算出される単位空燃比変化量は上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される。ここで、上流側空燃比センサの出力値は上流側空燃比センサの空燃比検出素子に接触する排気ガスの空燃比に対応する。したがって、機関運転中に算出される単位空燃比変化量は上流側空燃比センサの出力値の単位時間当たりの変化量であるとも言える。別の云い方をすれば、第2実施形態において、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することは、上流側空燃比センサの出力値の単位時間当たりの変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することと同義であると言える。
また、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において機関運転中に算出される単位空燃比変化量も、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において機関運転中に算出される単位空燃比変化量と同じく、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される。したがって、第2実施形態においても、上流側空燃比センサの出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することは、上流側空燃比センサの出力値の単位時間当たりの変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定することと同義であると言える。
また、上述したように、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、基準吸気量として如何なる量が選択されたとしても、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定されることになる。したがって、第2実施形態において、基準吸気量は、或る特定の吸気量であるとも言える。
また、第2実施形態において、特定の燃料噴射弁に異常がある場合、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が予め定められた許容可能な空燃比差よりも大きくなっており、一方、全ての燃料噴射弁が正常である場合、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下になっている。したがって、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差よりも大きいときとは、特定の燃料噴射弁に異常があって、気筒間空燃比インバランス状態が生じているときを意味し、各燃焼室に形成される混合気の空燃比の間の差が許容可能な空燃比差以下であるときとは、全ての燃料噴射弁が正常であって、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないときを意味する。
なお、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図17および図18に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。なお、図17のステップ200〜ステップ206は、それぞれ、図15のステップ100〜ステップ106と同じであるので、その説明は省略する。また、図18のステップ212〜ステップ214は、それぞれ、図16のステップ112〜ステップ114と同じであるので、その説明は省略する。
図17のステップ206においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ207に進むと、ステップ203で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣA/Fをステップ205でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ208において、ステップ204で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ205でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ208Aにおいて、基準吸気量Gabを下式5(上式3と同じ式である)の「Ga」に入力することによって基準単位空燃比変化量ΔA/Fbが算出される。
ΔA/Fb=a×Ga+b …(5)
次いで、ステップ208Bにおいて、ステップ208で算出された吸気量の平均値Gaaveを上式5の「Ga」に入力することによって暫定単位空燃比変化量ΔA/Faが算出される。
次いで、ステップ209において、ステップ208で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、ステップ208Aで算出された基準単位空燃比変化量ΔA/Fbと、ステップ208Bで算出された暫定単位空燃比変化量ΔA/Faとが次式6(上式4と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(6)
次いで、図18のステップ210において、図17のステップ209で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ211に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ212に進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ212に進む。
ところで、第1実施形態では、気筒間空燃比インバランス判定において、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数として、予め実験等によって求められた補正係数が用いられている。しかしながら、これに代えて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数として、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて算出される補正係数が用いられてもよい。次に、この実施形態(以下「第3実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第3実施形態では、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
一方、機関運転中に単位空燃比変化量が算出される度に単位空燃比変化量が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量積算値」という)が電子制御装置60に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量の二乗の値が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量二乗積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量との積が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量・吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。
そして、斯くして電子制御装置に記憶された積算値のデータ数がそれぞれ予め定められた数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)に達したとき、次式7に従って補正係数(以下この補正係数を「変動補正係数」という)が算出され、この算出された変動補正係数が単位空燃比変化量を補正するための補正係数として利用される(この利用の形態については後述する)。
K=(Σ(ΔA/F×Ga)×N−ΣGa×ΣΔA/F)/(Σ(Ga×Ga)×N−ΣGa×ΣGa) …(7)
上式7において、「K」が変動補正係数であり、「Σ(ΔA/F×Ga)」は単位空燃比変化量・吸気量積算値であり、「ΣGa」は吸気量積算値であり、「ΣΔA/F」は単位空燃比変化量積算値であり、「Σ(Ga×Ga)」は吸気量二乗積算値であり、「N」は各積算値のデータ数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)である。
そして、変動補正係数Kが算出されると、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量が次式8に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(8)
上式8において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は上式7によって算出される変動補正係数であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は単位空燃比変化量の算出時の吸気量である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量(すなわち、補正単位空燃比変化量)と、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とが比較される。この点で、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第3実施形態によれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数を予め実験等によって求める場合、膨大な数の吸気量と単位空燃比変化量との組合せのデータが必要となる。しかしながら、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数が算出されるので、補正係数を予め実験等によって求める必要がない。
また、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数を予め実験等によって求める場合、一般的には、典型的な1つの内燃機関において実験が行われ、補正係数が求められることになる。しかしながら、内燃機関の特性は、個々の内燃機関で異なることがあり、典型的な1つの内燃機関において行われた実験によって求められた補正係数が個々の内燃機関における気筒間空燃比インバランス判定に用いられる補正係数として必ずしも最適な補正係数ではないことがある。しかしながら、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定によれば、個々の内燃機関の運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数が算出されるので、算出された補正係数は個々の内燃機関における気筒間空燃比インバランス判定に用いられる補正係数として最適な補正係数である。
なお、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図19および図20に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図19のルーチンが開始されると、始めに、ステップ300において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ301以降のステップに進む。
ステップ300において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ301に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/F(k)が算出される。次いで、ステップ302において、現在の吸気量Ga(k)がエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ303において、前回の図19のルーチンの実行時にステップ303で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ301で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|が加算されることによって、今回の図19のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ304において、前回の図19のルーチンの実行時にステップ304で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ302で取得された吸気量Ga(k)が加算されることによって、今回の図19のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ304Aにおいて、前回の図19のルーチンの実行時にステップ304Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga(k−1)×Ga(k−1))にステップ302で取得された吸気量Ga(k)の二乗の値Ga(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図19のルーチンの実行時の吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、吸気量二乗積算値が更新される)。次いで、ステップ304Bにおいて、前回の図19のルーチンの実行時にステップ304Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k−1)×Ga(k−1))にステップ301で算出された単位空燃比変化量ΔA/F(k)とステップ302で取得された吸気量Ga(k)との積ΔA/F(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図19のルーチンの実行時の単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、単位空燃比変化量・吸気量積算値が更新される)。次いで、ステップ305において、ステップ303で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ304で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算された吸気量の数、ステップ304Aで算出される吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))に加算された吸気量の二乗の値の数、および、ステップ304Bで算出される単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k)×Ga(k))に加算された単位空燃比変化量と吸気量との積の数も表している。
次いで、ステップ306において、ステップ305でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ306A以降のステップに進む。
ステップ306においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ306Aに進むと、ステップ303で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fと、ステップ304で算出された吸気量の積算値ΣGaと、ステップ304Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)と、ステップ304Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F×Ga)と、ステップ305でインクリメントされたデータ数カウンタCと同じ数であるデータ数Nとに基づいて、次式9(上式7と同じ式である)に従って変動補正係数Kが算出される。
K=(Σ(ΔA/F×Ga)×N−ΣGa×ΣΔA/F)/(Σ(Ga×Ga)×N−ΣGa×ΣGa) …(9)
次いで、ステップ309において、ステップ307で算出された平均単位空燃比変化量ΔA/Faveと、ステップ308で算出された平均吸気量Gaaveと、ステップ306Aで算出された補正係数K、すなわち、変動補正係数と、基準吸気量Gabとに基づいて、次式10(上式8と同じ式である)に従って補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンは図20のステップ310に進む。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(10)
次いで、図20のステップ310において、図19のステップ309で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ311に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ312に進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ312に進む。
ステップ310においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ311においてアラームが作動され或いはステップ310でΔA/Fave≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ312に進むと、図19のステップ303で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ313において、ステップ304で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ313Aにおいて、ステップ304Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ313Bにおいて、ステップ304Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ314において、ステップ305でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
ところで、第3実施形態では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とを用いて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数が算出される。しかしながら、これに代えて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とを用いて単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数として用いられてもよい。次に、この実施形態(以下「第4実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置60に記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータ51から取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に記憶される。そして、斯くして電子制御装置に記憶された単位空燃比変化量のデータ数と吸気量のデータ数とがそれぞれ予め定められた数に達したとき、これら単位空燃比変化量および吸気量のデータに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められる。そして、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が補正係数として電子制御装置に記憶される。そして、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量のデータと吸気量のデータとが消去され、その後も、上流側空燃比センサの出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置に新たに記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータから取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に新たに記憶される。そして、斯くして新たに電子制御装置に記憶された単位空燃比変化量のデータ数と吸気量のデータ数とがそれぞれ上記予め定められた数に達したとき、これら単位空燃比変化量および吸気量のデータに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が新たに求められる。そして、この新たに求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が新たに求められ、この新たに求められた変化量が新たな補正係数として電子制御装置に記憶されると共に、既に電子制御装置に記憶されている補正係数が消去される。このように、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量および吸気量のデータ数が予め定められた数に達する度に補正係数が新たに求められ、この新たに求められた補正係数が電子制御装置に既に記憶されている補正係数に取って代って電子制御装置に記憶される。
一方、いったん補正係数が求められ、この求められた補正係数が電子制御装置60に記憶された後は、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量が、上述したように、電子制御装置に記憶されると共に、次式11に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(11)
上式11において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は電子制御装置60に記憶されている上記補正係数であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は単位空燃比変化量の算出時の吸気量である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量(すなわち、補正単位空燃比変化量)と、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とが比較される。この点で、第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第4実施形態によれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数が機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて求められる。この点で、第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第4実施形態によれば、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
なお、第4実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図21および図22に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図21のルーチンが開始されると、始めに、ステップ400において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ401以降のステップに進む。
ステップ400において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ401に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/F(k)が算出される。次いで、ステップ402において、現在の吸気量Ga(k)がエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ402Aにおいて、ステップ401で算出された単位空燃比変化量ΔA/F(k)が電子制御装置60に記憶される。次いで、ステップ402Bにおいて、ステップ402で取得された吸気量Ga(k)が電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ403において、前回の図21および図22のルーチンの実行時にステップ403で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ401で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|が加算されることによって、今回の図21および図22のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ404において、前回の図21および図22のルーチンの実行時にステップ404で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ402で取得された吸気量Ga(k)が加算されることによって、今回の図21および図22のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ405において、ステップ403で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ404で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算された吸気量の数、ステップ402Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)のデータ数、および、ステップ402Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)のデータ数も表している。
次いで、ステップ406において、ステップ405でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ406A以降のステップに進む。
ステップ406においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ406Aに進むと、ステップ402Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)と、ステップ402Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)とに基づいて、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められる。次いで、ステップ406Bにおいて、ステップ406Aで算出された関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が補正係数Kとして算出され、電子制御装置に既に記憶されている補正係数がこの算出された補正係数Kに更新され、或いは、電子制御装置に既に記憶されている補正係数がない場合には、この算出された補正係数Kが電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ407において、ステップ403で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ405でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ408において、ステップ404で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ405でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ409において、ステップ407で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、基準吸気量Gabと、ステップ408で算出される吸気量の平均値Gaaveとが次式12(上式11と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(12)
なお、上式12において、「K」はステップ406Bで電子制御装置60に記憶された補正係数である。
次いで、図22のステップ410において、ステップ409で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ411に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ411Aに進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ411Aに進む。
ステップ410においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ411においてアラームが作動され或いはステップ410でΔA/Fave≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ411Aに進むと、電子制御装置60に記憶されている単位空燃比変化量ΔA/Fのデータが消去される。次いで、ステップ411Bにおいて、電子制御装置に記憶されている吸気量Gaのデータが消去される。次いで、ステップ412において、図22のステップ403で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ413において、ステップ404で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ414において、ステップ405でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
ところで、第2実施形態では、気筒間空燃比インバランス判定において、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式として、予め実験等によって求められた関係式が用いられている。しかしながら、これに代えて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式として、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて算出される単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が用いられてもよい。次に、この実施形態(以下「第5実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第5実施形態では、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置60に記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータ51から取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に記憶される。そして、斯くして電子制御装置に記憶された単位空燃比変化量のデータ数と吸気量のデータ数とがそれぞれ予め定められた数に達したとき、これら単位空燃比変化量および吸気量のデータに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、この求められた関係式が電子制御装置に記憶される。そして、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量のデータと吸気量のデータとが消去され、その後も、上流側空燃比センサの出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置に新たに記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータから取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に新たに記憶される。そして、斯くして新たに電子制御装置に記憶された単位空燃比変化量のデータ数と吸気量のデータ数とがそれぞれ上記予め定められた数に達したとき、これら単位空燃比変化量および吸気量のデータに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が新たに求められ、この新たに求められた関係式が電子制御装置に記憶されると共に、既に電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が消去される。このように、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量および吸気量のデータ数が予め定められた数に達する度に単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が新たに求められ、この新たに求められた関係式が電子制御装置に既に記憶されている関係式に取って代って電子制御装置に記憶される。
なお、上述したようにして求められる単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式は次式13である。
ΔA/F=a×Ga+b …(13)
上式13において、「a」は傾きであり、「b」は切片である。
一方、いったん単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、この求められた関係式が電子制御装置60に記憶された後は、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量が電子制御装置に記憶されると共に、次式14に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(14)
上式14において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「ΔA/Fb」は基準吸気量を上式13に入力して算出される単位空燃比変化量(基準単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fa」は単位空燃比変化量の算出時の吸気量を上式13に入力して算出される単位空燃比変化量(暫定単位空燃比変化量)である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第5実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、単位空燃比変化量の算出時の吸気量が基準吸気量よりも小さいほど、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が大きい値に補正され、一方、単位空燃比変化量の算出時の吸気量が基準吸気量よりも大きいほど、機関運転中に算出される単位空燃比変化量が小さい値に補正される。この点で、第5実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第5実施形態によれば、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第5実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて求められる。この点で、第5実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第5実施形態によれば、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
なお、第5実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図23および図24に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。なお、図23のステップ500〜ステップ506は、それぞれ、図21のステップ400〜ステップ406と同じであるので、その説明は省略する。また、図24のステップ511A〜ステップ514は、それぞれ、図22のステップ411A〜ステップ414と同じであるので、その説明は省略する。
図23のステップ506においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ506Aに進むと、ステップ502Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)と、ステップ502Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)とに基づいて、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、電子制御装置に既に記憶されている単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式がこの求められた関係式に更新され、或いは、電子制御装置に既に記憶されている単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式がない場合には、この求められた関係式が電子制御装置に記憶される。
なお、ステップ502Bで求められる単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式は次式15(上式13と同じ式である)である。
ΔA/F=a×Ga+b …(15)
次いで、ステップ507において、ステップ503で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ505でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ508において、ステップ504で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ505でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ508Aにおいて、基準吸気量Gabを上式15の「Ga」に入力することによって基準単位空燃比変化量ΔA/Fbが算出される。次いで、ステップ508Bにおいて、ステップ508で算出された吸気量の平均値Gaaveを上式15の「Ga」に入力することによって暫定単位空燃比変化量ΔA/Faが算出される。次いで、ステップ509において、ステップ507で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、ステップ508Aで算出された基準単位空燃比変化量ΔA/Fbと、ステップ508Bで算出された暫定単位空燃比変化量ΔA/Faとが次式16(上式14と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(16)
次いで、図24のステップ510において、図23のステップ509で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ511に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ511Aに進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ511Aに進む。
ところで、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するときに用いられる補正係数が算出される。ところが、この場合において、補正係数の算出に用いるために取得されている吸気量の値が狭い範囲の値に集中していると、これら吸気量を用いて補正係数を算出したとしても、算出された補正係数が単位空燃比変化量を補正するときに用いられるものとして適切ではない可能性がある。そこで、機関運転中に取得される吸気量の分散度合に応じて、第3実施形態の気筒間空燃比インバランス判定が実行されたり、これとは別の気筒間空燃比インバランス判定が実行されたりしてもよい。次に、この実施形態(以下「第6実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第6実施形態では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が補正係数(以下この補正係数を「固定補正係数」という)として電子制御装置60に記憶される。さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
一方、機関運転中に単位空燃比変化量が算出される度に単位空燃比変化量が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量積算値」という)が電子制御装置60に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量の二乗の値が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量二乗積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量との積が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量・吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。
そして、斯くして電子制御装置に記憶された積算値のデータ数がそれぞれ予め定められた数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)に達したとき、これら積算値のデータに基づいて、例えば、次式17に従って吸気量のデータの分散度合を表す係数(以下この係数を「分散係数」という)が算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(17)
上式17において、「V」が分散係数であり、「Σ(Ga×Ga)」は吸気量二乗積算値であり、「ΣGa」は吸気量積算値であり、「N」は各積算値のデータ数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)である。
そして、斯くして算出された分散係数Vが予め定められた値以下であるとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的小さいときには、電子制御装置60に記憶されている固定補正係数が単位空燃比変化量を補正するための補正係数として利用される(この利用の形態については後述する)。一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的大きいときには、次式18に従って補正係数(以下この補正係数を「変動補正係数」という)が算出され、この算出された変動補正係数が単位空燃比変化量を補正するための補正係数として利用される(この利用の形態については後述する)。
K=(Σ(ΔA/F×Ga)×N−ΣGa×ΣΔA/F)/(Σ(Ga×Ga)×N−ΣGa×ΣGa) …(18)
上式18において、「K」が変動補正係数であり、「Σ(ΔA/F×Ga)」は単位空燃比変化量・吸気量積算値であり、「ΣGa」は吸気量積算値であり、「ΣΔA/F」は単位空燃比変化量積算値であり、「Σ(Ga×Ga)」は吸気量二乗積算値であり、「N」は各積算値のデータ数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)である。
そして、補正係数として固定補正係数を利用するのか或いは変動補正係数を利用するのかが分散係数Vに応じて決定されると、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量が次式19に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(19)
上式19において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は補正係数、すなわち、分散係数Vが予め定められた値以下であるときには固定補正係数であり、一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいときには変動補正係数であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は単位空燃比変化量の算出時の吸気量である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量(すなわち、補正単位空燃比変化量)と、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とが比較される。この点で、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第6実施形態によれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて補正係数を算出しようとしたときに、補正係数の算出に用いるために取得されている吸気量の値が狭い範囲の値に集中しており、これら吸気量を用いて補正係数を算出したとしても、算出された補正係数が単位空燃比変化量を補正するものとして適切ではないとき、すなわち、分散係数が予め定められた値以下であるときには、予め実験等によって求められた補正係数が単位空燃比変化量の補正に用いられる。したがって、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、取得されている吸気量の値が広い範囲の値に分散しており、これら吸気量を用いて算出された補正係数が単位空燃比変化量を補正するものとして適切であるとき、すなわち、分散係数が予め定められた値よりも大きいときにのみ、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて補正係数が算出され、この算出された補正係数が単位空燃比変化量の補正に用いられる。したがって、第6実施形態によれば、機関運転中に取得されている吸気量の分散度合に係わらず、気筒間空燃比インバランス状態の有無が精度良く判定される。
なお、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を固定補正係数として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量の補正に、電子制御装置に記憶されている固定補正係数を用いている。しかしながら、既に、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて変動補正係数が算出されているのであれば、分散係数が予め定められた値以下であるときに、この既に算出されている変動補正係数を用いてもよい。これによれば、予め実験等によって補正係数を求める必要がなくなる。
また、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を固定補正係数として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、電子制御装置に記憶されている固定補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いている。しかしながら、これに代えて、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式を固定関係式として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるときに、第2実施形態と同様にして、電子制御装置に記憶されている固定関係式を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いるようにしてもよい。
また、上述したように、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるとき、固定補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、分散係数が予め定められた値よりも大きいとき、変動補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正している。ここで、上記予め定められた値は、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正するのに適切な変動補正係数が算出される程度の分散度合に対応する値に設定される。
なお、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図25および図26に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図25のルーチンが開始されると、始めに、ステップ600において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ601以降のステップに進む。
ステップ600において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ601に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/F(k)が算出される。次いで、ステップ602において、現在の吸気量Ga(k)がエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ603において、前回の図25のルーチンの実行時にステップ603で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ601で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|が加算されることによって、今回の図25のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ604において、前回の図25のルーチンの実行時にステップ604で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ602で取得された吸気量Ga(k)が加算されることによって、今回の図25のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ604Aにおいて、前回の図25のルーチンの実行時にステップ604Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga(k−1)×Ga(k−1))にステップ602で取得された吸気量Ga(k)の二乗の値Ga(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図25のルーチンの実行時の吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、吸気量二乗積算値が更新される)。次いで、ステップ604Bにおいて、前回の図25のルーチンの実行時にステップ604Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k−1)×Ga(k−1))にステップ601で算出された単位空燃比変化量ΔA/F(k)とステップ602で取得された吸気量Ga(k)との積ΔA/F(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図25のルーチンの実行時の単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、単位空燃比変化量・吸気量積算値が更新される)。次いで、ステップ605において、ステップ603で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ604で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算された吸気量の数、ステップ604Aで算出される吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))に加算された吸気量の二乗の値の数、および、ステップ604Bで算出される単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k)×Ga(k))に加算された単位空燃比変化量と吸気量との積の数も表している。
次いで、ステップ606において、ステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ607以降のステップに進む。
ステップ606においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ607に進むと、ステップ603で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ608において、ステップ604で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ608Aにおいて、ステップ604で算出された吸気量の積算値ΣGaと、ステップ604Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)と、ステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCと同じ数であるデータ数Nとに基づいて、次式20(上式17と同じ式である)に従って分散係数Vが算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(20)
次いで、図26のステップ608Bにおいて、ステップ608Aで算出された分散係数Vが予め定められた値Vthよりも大きい(V>Vth)か否かが判別される。ここで、V>Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ608Cに進む。一方、V≦Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ609Aに進む。
ステップ608BにおいてV>Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的大きいと判断され、ルーチンがステップ608Cに進むと、ステップ603で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fと、ステップ604で算出された吸気量の積算値ΣGaと、ステップ604Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)と、ステップ604Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F×Ga)と、ステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCと同じ数であるデータ数Nとに基づいて、次式21(上式18と同じ式である)に従って変動補正係数Kが算出される。
K=(Σ(ΔA/F×Ga)×N−ΣGa×ΣΔA/F)/(Σ(Ga×Ga)×N−ΣGa×ΣGa) …(21)
次いで、ステップ609において、ステップ607で算出された平均単位空燃比変化量ΔA/Faveと、ステップ608で算出された平均吸気量Gaaveと、ステップ608Cで算出された補正係数K、すなわち、変動補正係数と、基準吸気量Gabとに基づいて、次式22(上式19と同じ式である)に従って補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンはステップ610に進む。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(22)
一方、ステップ608BにおいてV≦Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的小さいと判別され、ルーチンがステップ609Aに進むと、ステップ607で算出された平均単位空燃比変化量ΔA/Faveと、ステップ608で算出された平均吸気量Gaaveと、電子制御装置60に記憶されている補正係数K、すなわち、固定補正係数と、基準吸気量Gabとに基づいて、上式22に従って補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンはステップ610に進む。
次いで、ステップ610において、ステップ609またはステップ609Aで算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ611に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ612に進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ612に進む。
ステップ610においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ611においてアラームが作動され或いはステップ610でΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ612に進むと、図25のステップ603で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ613において、ステップ604で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ613Aにおいて、ステップ604Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ613Bにおいて、ステップ604Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ614において、ステップ605でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
ところで、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量のデータと該単位空燃比変化量の算出時に取得される吸気量のデータとに基づいて上式18を用いて変動補正係数を求め、この求められた変動補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いている。しかしながら、これに代えて、分散係数が予め定められた値以下であるときに、機関運転中に算出される単位空燃比変化量のデータと該単位空燃比変化量の算出時に取得される吸気量のデータとに基づいて最小二乗法を用いて単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を補正係数として利用して機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いてもよい。次に、この実施形態(以下「第7実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第7実施形態では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が補正係数(以下この補正係数を「固定補正係数」という)として電子制御装置60に記憶される。さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
一方、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置60に記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータ51から取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に記憶される。さらに、機関運転中に単位空燃比変化量が算出される度に単位空燃比変化量が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量積算値」という)が電子制御装置60に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量の二乗の値が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量二乗積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量との積が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量・吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。
そして、斯くして電子制御装置に記憶された積算値のデータ数がそれぞれ予め定められた数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)に達したとき、これら積算値のデータに基づいて、例えば、次式23に従って吸気量のデータの分散度合を表す係数(以下この係数を「分散係数」という)が算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(23)
上式23において、「V」が分散係数であり、「Σ(Ga×Ga)」は吸気量二乗積算値であり、「ΣGa」は吸気量積算値であり、「N」は各積算値のデータ数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)である。
そして、斯くして算出された分散係数Vが予め定められた値以下であるとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的小さいときには、電子制御装置60に記憶されている固定補正係数が単位空燃比変化量を補正するための補正係数として利用される(この利用の形態については後述する)。一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的大きいときには、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量のデータと吸気量のデータとに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が単位空燃比変化量を補正するための補正係数(変動補正係数)として利用される(この利用の形態については後述する)。なお、このとき、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量のデータと吸気量のデータとが消去され、その後も、上流側空燃比センサの出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が電子制御装置に新たに記憶されると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量がエアフローメータから取得され、この取得された吸気量が電子制御装置に新たに記憶される。
そして、補正係数として固定補正係数を利用するのか或いは変動補正係数を利用するのかが分散係数Vに応じて決定されると、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて算出される単位空燃比変化量が次式24に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(24)
上式24において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は補正係数、すなわち、分散係数Vが予め定められた値以下であるときには固定補正係数であり、一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいときには変動補正係数であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は単位空燃比変化量の算出時の吸気量である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量と、吸気量が基準吸気量であって全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量を基準にして該単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とを比較するようにしている。この点では、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第7実施形態によれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるときには、予め実験等によって求められた補正係数が単位空燃比変化量の補正に用いられ、分散係数が予め定められた値よりも大きいときには、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて算出される補正係数が単位空燃比変化量の補正に用いられる。この点で、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第6実施形態の気筒間空燃比変化量インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第7実施形態によれば、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果が得られる。
なお、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を固定補正係数として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量の補正に、電子制御装置に記憶されている固定補正係数を用いている。しかしながら、既に、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて変動補正係数が算出されているのであれば、分散係数が予め定められた値以下であるときに、この既に算出されている変動補正係数を用いてもよい。これによれば、予め実験等によって補正係数を求める必要がなくなる。
また、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を固定補正係数として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、電子制御装置に記憶されている固定補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いている。しかしながら、これに代えて、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式を固定関係式として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるときに、第2実施形態と同様にして、電子制御装置に記憶されている固定関係式を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いるようにしてもよい。
なお、第7実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図27および図28に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図27のルーチンが開始されると、始めに、ステップ700において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ701以降のステップに進む。
ステップ700において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ701に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/F(k)が算出される。次いで、ステップ702において、現在の吸気量Ga(k)がエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ702Aにおいて、ステップ701で算出された単位空燃比変化量ΔA/F(k)が電子制御装置60に記憶される。次いで、ステップ702Bにおいて、ステップ702で取得された吸気量Ga(k)が電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ703において、前回の図27のルーチンの実行時にステップ703で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ701で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|が加算されることによって、今回の図27のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ704において、前回の図27のルーチンの実行時にステップ704で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ702で取得された吸気量Ga(k)が加算されることによって、今回の図27のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ704Aにおいて、前回の図27のルーチンの実行時にステップ704Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga(k−1)×Ga(k−1))にステップ702で取得された吸気量Ga(k)の二乗の値Ga(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図27のルーチンの実行時の吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、吸気量二乗積算値が更新される)。次いで、ステップ705において、ステップ703で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ704で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算された吸気量の数、ステップ704Aで算出される吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))に加算された吸気量の二乗の値の数、および、ステップ704Bで算出される単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F(k)×Ga(k))に加算された単位空燃比変化量と吸気量との積の数も表している。
次いで、ステップ706において、ステップ705でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ707以降のステップに進む。
ステップ706においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ707に進むと、ステップ703で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ705でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ708において、ステップ704で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ705でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ708Aにおいて、ステップ704で算出された吸気量の積算値ΣGaと、ステップ704Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)と、ステップ705でインクリメントされたデータ数カウンタCと同じ数であるデータ数Nとに基づいて、次式25(上式23と同じ式である)に従って分散係数Vが算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(25)
次いで、図28のステップ708Bにおいて、ステップ708Aで算出された分散係数Vが予め定められた値Vthよりも大きい(V>Vth)か否かが判別される。ここで、V>Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ708Cに進む。一方、V≦Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ709Aに進む。
ステップ708BにおいてV>Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的大きいと判断され、ルーチンがステップ708Cに進むと、ステップ702Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)と、ステップ702Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)とに基づいて、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められる。次いで、ステップ708Dにおいて、ステップ708Cで算出された関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が補正係数(変動補正係数)Kとして算出される。
次いで、ステップ709において、ステップ707で算出された平均単位空燃比変化量ΔA/Faveと、ステップ708で算出された平均吸気量Gaaveと、ステップ708Dで算出された補正係数K、すなわち、変動補正係数と、基準吸気量Gabとに基づいて、次式26(上式24と同じ式である)に従って補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンはステップ710に進む。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(26)
一方、ステップ708BにおいてV≦Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的小さいと判別され、ルーチンがステップ709Aに進むと、ステップ707で算出された平均単位空燃比変化量ΔA/Faveと、ステップ708で算出された平均吸気量Gaaveと、電子制御装置60に記憶されている補正係数K、すなわち、固定補正係数と、基準吸気量Gabとに基づいて、上式26に従って補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンはステップ710に進む。
次いで、ステップ710において、ステップ709またはステップ709Aで算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ711に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ711Aに進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ711Aに進む。
ステップ710においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ711においてアラームが作動され或いはステップ710でΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ711Aに進むと、電子制御装置60に記憶されている単位空燃比変化量ΔA/Fのデータが消去される。次いで、ステップ711Bにおいて、電子制御装置に記憶されている吸気量Gaのデータが消去される。次いで、ステップ712において、図27のステップ703で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ713において、ステップ704で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ713Aにおいて、ステップ704Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ713Bにおいて、ステップ704Bで算出された単位空燃比変化量・吸気量積算値Σ(ΔA/F×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ714において、ステップ705でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
ところで、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量のデータと該単位空燃比変化量の算出時に取得される吸気量のデータとに基づいて上式18を用いて変動補正係数を求め、この求められた変動補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いている。しかしながら、これに代えて、分散係数が予め定められた値以下であるときに、機関運転中に算出される単位空燃比変化量のデータと該単位空燃比変化量の算出時に取得される吸気量のデータとに基づいて最小二乗法を用いて単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を求め、この求められた関係式を利用して機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いてもよい。次に、この実施形態(以下「第8実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式(以下この関係式を「固定関係式」という)が電子制御装置60に記憶される。ここで、単位空燃比変化量を「ΔA/F」とし、吸気量を「Ga」としたとき、上記固定関係式は次式27(上式3と同じ式である)で表される。
ΔA/F=a×Ga+b …(27)
上式27において、「a」は傾きであり、「b」は切片である。
さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量が予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
一方、機関運転中に単位空燃比変化量が算出される度に単位空燃比変化量が積算され、この積算値(以下この積算値を「単位空燃比変化量積算値」という)が電子制御装置60に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量積算値」という)が電子制御装置に記憶される。さらに、単位空燃比変化量が算出される度に該単位空燃比変化量の算出時の吸気量の二乗の値が積算され、この積算値(以下この積算値を「吸気量二乗積算値」という)が電子制御装置に記憶される。
そして、斯くして電子制御装置に記憶された積算値のデータ数がそれぞれ予め定められた数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)に達したとき、これら積算値のデータに基づいて、例えば、次式28(上式17と同じ式である)に従って吸気量のデータの分散度合を表す係数(以下この係数を「分散係数」という)が算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(28)
上式28において、「V」が分散係数であり、「Σ(Ga×Ga)」は吸気量二乗積算値であり、「ΣGa」は吸気量積算値であり、「N」は各積算値のデータ数(当然のことながら、各積算値のデータ数は同じである)である。
そして、斯くして算出された分散係数Vが予め定められた値以下であるとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的小さいときには、電子制御装置60に記憶されている単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式(上式27)が単位空燃比変化量の補正に利用される(この利用の形態については後述する)。一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいとき、すなわち、吸気量のデータの分散度合が比較的大きいときには、電子制御装置60に記憶されている単位空燃比変化量および吸気量のデータに基づいて、例えば、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が求められ、この求められた関係式(以下この関係式を「変動関係式」という)が単位空燃比変化量の補正に利用される(この利用の形態については後述する)。なお、変動関係式は次式29(上式3と同じ式である)で表される。
ΔA/F=a×Ga+b …(29)
上式29において、「a」は傾きであり、「b」は切片である。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出され、この算出された単位空燃比変化量が次式30(上式4と同じ式である)に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(30)
上式30において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(補正単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量である。
そして、分散係数Vが予め定められた値以下であるときには、上式30において、「ΔA/Fb」は、電子制御装置60に記憶されている固定関係式(上式27)に、基準吸気量を入力して算出される単位空燃比変化量(基準単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fa」は、上記固定関係式(上式27)に、単位空燃比変化量の算出時の吸気量を入力して算出される単位空燃比変化量(暫定単位空燃比変化量)である。
一方、分散係数Vが上記予め定められた値よりも大きいときには、上式30において、「ΔA/Fb」は、上記変動関係式(上式29)に基準吸気量を入力して算出される単位空燃比変化量(基準単位空燃比変化量)であり、「ΔA/Fa」は、上記変動関係式(上式29)に、単位空燃比変化量の算出時の吸気量を入力して算出される単位空燃比変化量(暫定単位空燃比変化量)である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量と、吸気量が基準吸気量であって全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量を基準にして該単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とを比較するようにしている。この点では、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第8実施形態によれば、第2実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるときには、予め実験等によって求められた単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が単位空燃比変化量の補正に用いられ、分散係数が予め定められた値よりも大きいときには、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて算出される単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が単位空燃比変化量の補正に用いられる。この点で、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第6実施形態の気筒間空燃比変化量インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第8実施形態によれば、第6実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果が得られる。
なお、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、分散係数が予め定められた値以下であるとき、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式を電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、機関運転中に算出される単位空燃比変化量の補正に、電子制御装置に記憶されている単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を用いている。しかしながら、既に、機関運転中に算出される単位空燃比変化量と該単位空燃比変化量の算出時の吸気量とに基づいて変動関係式が算出されているのであれば、分散係数が予め定められた値以下であるときに、この既に算出されている変動関係式を用いてもよい。これによれば、予め実験等によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を求める必要がなくなる。
また、第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式を固定関係式として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるとき、電子制御装置に記憶されている固定関係式を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いている。しかしながら、これに代えて、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を予め実験等によって求め、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量を求め、この求められた変化量を固定補正係数として電子制御装置に記憶させておき、分散係数が予め定められた値以下であるときに、電子制御装置に記憶されている固定補正係数を用いて機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を気筒間空燃比インバランス判定に用いるようにしてもよい。
なお、第8実施形態に従った気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図29〜図31に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。
図29のルーチンが開始されると、始めに、ステップ800において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ801以降のステップに進む。
ステップ800において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ801に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/F(k)が算出される。次いで、ステップ802において、現在の吸気量Ga(k)がエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ802Aにおいて、ステップ801で算出された単位空燃比変化量ΔA/F(k)が電子制御装置60に記憶される。次いで、ステップ802Bにおいて、ステップ802で取得された吸気量Ga(k)が電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ803において、前回の図29のルーチンの実行時にステップ803で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ801で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|が加算されることによって、今回の図29のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ804において、前回の図29のルーチンの実行時にステップ804で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)にステップ802で取得された吸気量Ga(k)が加算されることによって、今回の図29のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。次いで、ステップ804Aにおいて、前回の図29のルーチンの実行時にステップ804Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga(k−1)×Ga(k−1))にステップ802で取得された吸気量Ga(k)の二乗の値Ga(k)×Ga(k)が加算されることによって、今回の図29のルーチンの実行時の吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))が算出される(すなわち、吸気量二乗積算値が更新される)。次いで、ステップ805において、ステップ803で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F(k)|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ804で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算された吸気量の数、ステップ802Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)のデータ数、ステップ802Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)のデータ数、および、ステップ604A804Aで算出される吸気量二乗積算値Σ(Ga(k)×Ga(k))に加算された吸気量の二乗の値の数も表している。
次いで、ステップ806において、ステップ805でインクリメントされたデータ数カウンタCが予め定められた値Cthに達した(C=Cth)か否かが判別される。ここで、C≠Cthであると判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、C=Cthであると判別されたときには、ルーチンはステップ807以降のステップに進む。
ステップ806においてC=Cthであると判別され、ルーチンがステップ807に進むと、ステップ803で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ805でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出される。次いで、ステップ808において、ステップ804で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ805でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。次いで、ステップ808Aにおいて、ステップ804で算出された吸気量の積算値ΣGaと、ステップ804Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)と、ステップ805でインクリメントされたデータ数カウンタCと同じ数であるデータ数Nとに基づいて、次式31(上式28と同じ式である)に従って分散係数Vが算出される。
V=(Σ(Ga×Ga)−ΣGa×ΣGa/N)/(N−1) …(31)
次いで、図30のステップ808Bにおいて、図29のステップ808Aで算出された分散係数Vが予め定められた値Vthよりも大きい(V>Vth)か否かが判別される。ここで、V>Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ808Cに進む。一方、V≦Vthであると判別されたときには、ルーチンはステップ808Fに進む。
ステップ808BにおいてV>Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的大きいと判断され、ルーチンがステップ808Cに進むと、ステップ802Aで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている単位空燃比変化量ΔA/F(k)と、ステップ802Bで電子制御装置に記憶されて現時点で電子制御装置に残されている吸気量Ga(k)とに基づいて、最小二乗法によって単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式(変動関係式)が求められる。なお、ステップ802Bで求められる関係式は次式32(上式29と同じ式である)である。
ΔA/F=a×Ga+b …(32)
次いで、ステップ808Dにおいて、基準吸気量Gabを上式32(変動関係式)の「Ga」に入力することによって基準単位空燃比変化量ΔA/Fbが算出される。次いで、ステップ808Eにおいて、ステップ808で算出された吸気量の平均値Gaaveを上式32の「Ga」に入力することによって暫定単位空燃比変化量ΔA/Faが算出される。次いで、ステップ809において、ステップ807で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、ステップ808Dで算出された基準単位空燃比変化量ΔA/Fbと、ステップ808Eで算出された暫定単位空燃比変化量ΔA/Faとが次式33(上式30と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンは図31のステップ810に進む。
ΔA/Favec=ΔA/Fave×(ΔA/Fb/ΔA/Fa) …(33)
一方、ステップ808BにおいてV≦Vthであると判別され、すなわち、吸気量データの分散度合が比較的小さいと判断され、ルーチンがステップ808Fに進むと、ステップ808Fにおいて、基準吸気量Gabを上式27(固定関係式)の「Ga」に入力することによって基準単位空燃比変化量ΔA/Fbが算出される。次いで、ステップ808Gにおいて、ステップ808で算出された吸気量の平均値Gaaveを上式27の「Ga」に入力することによって暫定単位空燃比変化量ΔA/Faが算出される。次いで、ステップ809Aにおいて、ステップ807で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、ステップ808Fで算出された基準単位空燃比変化量ΔA/Fbと、ステップ808Gで算出された暫定単位空燃比変化量ΔA/Faとが上式33に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出され、ルーチンは図31のステップ810に進む。
図31のステップ810では、ステップ809またはステップ809Aで算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ811に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ811Aに進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ811Aに進む。
ステップ810においてΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別された後にステップ811においてアラームが作動され或いはステップ810でΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別され、ルーチンがステップ811Aに進むと、電子制御装置60に記憶されている単位空燃比変化量ΔA/Fのデータが消去される。次いで、ステップ811Bにおいて、電子制御装置に記憶されている吸気量Gaのデータが消去される。次いで、ステップ812において、図29のステップ803で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fがクリアされる。次いで、ステップ813において、ステップ804で算出された吸気量の積算値ΣGaがクリアされる。次いで、ステップ813Aにおいて、ステップ804Aで算出された吸気量二乗積算値Σ(Ga×Ga)がクリアされる。次いで、ステップ814において、ステップ805でインクリメントされたデータ数カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
ところで、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に単位空燃比変化量を算出すると共に、この単位空燃比変化量が算出されたときの吸気量をエアフローメータ51から読み込み、この読み込まれた吸気量を用いて上記算出された単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定している。すなわち、単位空燃比変化量が吸気量に応じて変動することを考慮し、単位空燃比変化量に対応する吸気量を用いて該単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定している。
ところが、エアフローメータ51を通過した空気が上流側空燃比センサ55の空燃比検出素子55aに到達するまでには、一定の時間がかかる。したがって、上流側空燃比センサの出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出されたときにエアフローメータによって検出される吸気量は、厳密には、単位空燃比変化量が算出されたときに上流側空燃比センサの空燃比検出素子に到達している排気ガスの量ではないことになる。したがって、上流側空燃比センサの出力値に基づいて単位空燃比変化量を算出したとき、この算出された単位空燃比変化量に厳密に対応する吸気量は、エアフローメータを通過した空気が上流側空燃比センサの空燃比検出素子に到達するのにかかる時間だけ前にエアフローメータによって検出された吸気量になる。
そこで、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定において、エアフローメータを通過した空気が上流側空燃比センサの空燃比検出素子に到達するまでにかかる時間を考慮して、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、この補正された単位空燃比変化量を用いて気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するようにしてもよい。次に、この実施形態(以下「第9実施形態」という)の気筒間空燃比インバランス判定について説明する。
第9実施形態では、エアフローメータ51を通過した空気が上流側空燃比センサ55の空燃比検出素子55aに到達するまでにかかる時間が予め実験等によって機関回転数毎に求められ、この時間が輸送遅れ時間Tmとして図32に示されているように機関回転数Nの関数のマップの形で電子制御装置60に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式が予め実験等によって求められ、この求められた関係式から単位吸気量当たりの単位空燃比変化量の変化量が求められ、この求められた変化量が補正係数として電子制御装置60に記憶される。もちろん、この補正係数を求めるときに利用される吸気量は、対応する単位空燃比変化量が算出された時点から、機関回転数に応じた輸送遅れ時間だけ前にエアフローメータによって検出された吸気量である。
さらに、気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定するときに基準とする吸気量も予め選択され、この選択された吸気量が基準吸気量として電子制御装置に記憶される。さらに、全ての燃料噴射弁が正常であって吸気量が基準吸気量である場合の単位空燃比変化量が予め実験等によって求められ、この求められた単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい単位空燃比変化量が気筒間空燃比インバランス状態の有無を判定する判定値として設定され、この設定された判定値が電子制御装置に記憶される。
そして、機関運転中に上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量が算出される。さらに、単位空燃比変化量が算出された時点の機関回転数Nに基づいて図32のマップから輸送遅れ時間Tmが求められる。そして、単位空燃比変化量が算出された時点から上記求められた輸送遅れ時間Tmだけ前の時点の吸気量が読み込まれる。そして、上記算出された単位空燃比変化量が次式34(上式1と同じ式である)に従って補正される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(34)
上式34において、「ΔA/Favec」が補正後の単位空燃比変化量(以下この単位空燃比変化量を「補正単位空燃比変化量」という)であり、「ΔA/Fave」は機関運転中に算出される単位空燃比変化量であり、「K」は電子制御装置60に記憶されている上記補正係数であり、「Gab」は基準吸気量であり、「Gaave」は上記単位空燃比変化量が算出された時点から上記求められた輸送遅れ時間Tmだけ前の時点の吸気量である。
そして、斯くして算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが電子制御装置60に記憶されている上記判定値と比較され、補正単位空燃比変化量が判定値以下であるときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定される。一方、補正単位空燃比変化量が判定値よりも大きいときには、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定される。
すなわち、第9実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を吸気量が基準吸気量であるとした場合の単位空燃比変化量に変換し、この変換された単位空燃比変化量と、吸気量が基準吸気量であって全ての燃料噴射弁が正常である場合の単位空燃比変化量を基準にして該単位空燃比変化量よりも予め定められた値だけ大きい値に設定された判定値とを比較するようにしている。この点では、第9実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様であると言える。したがって、この点から、第9実施形態によれば、第1実施形態の気筒間空燃比インバランス判定により得られる効果と同様の効果が得られる。
また、第9実施形態の気筒間空燃比インバランス判定では、機関運転中に算出される単位空燃比変化量に厳密に対応する吸気量を用いて当該単位空燃比変化量が補正され、この補正された単位空燃比変化量に基づいて気筒間空燃比インバランス状態の有無が判定される。このため、気筒間空燃比インバランス状態の有無がより正確に判定される。
なお、第9実施形態の気筒間空燃比インバランス判定は、例えば、図33および図34に示されているフローチャートに従って実行される。次に、このフローチャートについて説明する。なお、図33のステップ905〜ステップ909は、それぞれ、図15のステップ105〜ステップ109と同じであるので、その説明は省略する。また、図34のステップ910〜ステップ914は、それぞれ、図16のステップ110〜ステップ114と同じであるので、その説明は省略する。
図33のルーチンが開始されると、始めに、ステップ900において、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立しているか否か、例えば、吸気量が予め定められた範囲内の吸気量であるか否かが判別される。ここで、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。一方、気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別されたときには、ルーチンはステップ901以降のステップに進む。
ステップ900において気筒間空燃比インバランス判定を実行する条件が成立していると判別され、ルーチンがステップ901に進むと、上流側空燃比センサ55の出力値に基づいて単位空燃比変化量ΔA/Fが算出される。次いで、ステップ902において、現在の吸気量Gaがエアフローメータ51から取得される。次いで、ステップ902Bにおいて、ステップ902で取得された吸気量Ga(k)が現時点における吸気量として電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ903において、前回の図33のルーチンの実行時にステップ903で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k−1)にステップ901で算出された単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F|が加算されることによって、今回の図33のルーチンの実行時の単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/F(k)が算出される(すなわち、単位空燃比変化量の積算値が更新される)。次いで、ステップ903Aにおいて、図32のマップから機関回転数Nに応じた輸送遅れ時間Tmが算出される。次いで、ステップ904において、前回の図33のルーチンの実行時にステップ904で算出された吸気量の積算値ΣGa(k−1)に、ステップ902で取得されて電子制御装置に記憶されている吸気量のうち現時点からステップ903Aで算出された輸送遅れ時間Tmだけ前の吸気量Ga(k−Tm)が加算されることによって、今回の図33のルーチンの実行時の吸気量の積算値ΣGa(k)が算出される(すなわち、吸気量の積算値が更新される)。すなわち、ステップ904で算出される吸気量の積算値ΣGaは、ステップ903で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算されたそれぞれの単位空燃比変化量を算出するときに用いられた上流側空燃比センサ55の出力値に対応する空燃比の排気ガスに対応する空気がエアフローメータ51を通過したときの吸気量が積算されることによって算出されている。
次いで、ステップ905において、ステップ903で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算されている単位空燃比変化量の絶対値|ΔA/F|の数を表すデータ数カウンタCがインクリメントされる。当然のことながら、このデータ数カウンタCは、ステップ904で算出される吸気量の積算値ΣGaに加算されている吸気量の数も表している。
そして、ステップ906において=Cthであると判別され、ルーチンがステップ907に進むと、ステップ903で算出された単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fをステップ905でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveが算出され、次いで、ステップ908において、ステップ904で算出された吸気量の積算値ΣGaをステップ905でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって吸気量の平均値Gaaveが算出される。ここで、上述したように、ステップ904で算出される吸気量の積算値ΣGaは、ステップ903で算出される単位空燃比変化量の積算値ΣΔA/Fに加算されたそれぞれの単位空燃比変化量を算出するときに用いられた上流側空燃比センサ55の出力値に対応する空燃比の排気ガスに対応する空気がエアフローメータ51を通過したときの吸気量の積算値である。したがって、この吸気量の積算値をステップ905でインクリメントされたデータ数カウンタCで割ることによって算出される吸気量の平均値Gaaveは、ステップ907で算出される単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveに対応する空燃比の排気ガスの量に正確に対応していることになる。
そして、ステップ909において、ステップ907で算出された単位空燃比変化量の平均値ΔA/Faveと、基準吸気量Gabと、ステップ908で算出される吸気量の平均値Gaaveとが次式35(上式34と同じ式である)に入力されることによって単位空燃比変化量の平均値が補正され、補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが算出される。
ΔA/Favec=ΔA/Fave+K×(Gab−Gaave) …(35)
次いで、図34のステップ910において、ステップ909で算出された補正単位空燃比変化量ΔA/Favecが判定値ΔA/Fthよりも大きい(ΔA/Favec>ΔA/Fth)か否かが判別される。ここで、ΔA/Favec>ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていると判定されたときには、ルーチンはステップ911に進み、気筒間空燃比インバランス状態が生じていることを知らせるアラームが作動され、ルーチンはステップ912に進む。一方、ΔA/Favec≦ΔA/Fthであると判別されたとき、すなわち、気筒間空燃比インバランス状態が生じていないと判定されたときには、ルーチンはそのままステップ912に進む。
なお、第2実施形態〜第8実施形態の気筒間空燃比インバランス判定においても、機関運転中に単位空燃比変化量を算出すると共に、この単位空燃比変化量の算出時の吸気量をエアフローメータ51から取得し、この取得された吸気量を用いて、第2実施形態では、暫定単位空燃比変化量を算出し、第3実施形態では、補正係数(変動補正係数)を算出し、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、第4実施形態では、単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を算出し、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、第5実施形態では、単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を算出し、暫定単位空燃比変化量を算出し、第6実施形態では、分散係数を算出し、補正係数(変動補正係数)を算出し、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、第7実施形態では、分散係数を算出し、単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を算出し、機関運転中に算出される単位空燃比変化量を補正し、第8実施形態では、分散係数を算出し、単位空燃比変化量と吸気量との間の関係式を算出し、暫定単位空燃比変化量を算出している。したがって、これら各パラメータの算出に用いられる吸気量として、第9実施形態の気筒間空燃比インバランス判定と同様に、エアフローメータを通過した空気が上流側空燃比センサの空燃比検出素子に到達するまでにかかる時間を考慮した吸気量を用いてもよい。
また、上述した実施形態は本発明の気筒間空燃比インバランス判定装置を火花点火式多気筒内燃機関に適用したものである。しかしながら、本発明の気筒間空燃比インバランス判定装置は圧縮自着火式多気筒内燃機関にも不整合のない範囲で適用可能である。