JP4894454B2 - 衛生洗浄装置 - Google Patents

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Description

本発明は、人体を洗浄する衛生洗浄装置およびその洗浄ノズルの洗浄方法に関するものである。
人体の局部を衛生的に洗浄する衛生洗浄装置は、洗浄水を温水化装置によって加熱して40℃前後に沸き上げ、洗浄ノズルから温水を局部に向けて噴出することで洗浄するものである。
この種の衛生洗浄装置では、洗浄時に洗浄ノズルを人体局部近傍に進出させて洗浄水を噴出させることで洗浄するので、洗浄時の洗浄ノズルに汚水が付着しやすく、ノズル先端部を洗浄水でノズル洗浄することが一般的に行われている。このようなノズル洗浄は、人体局部洗浄の前もしくは後に局部洗浄用の洗浄水を利用し、洗浄ノズルに吹き付けて汚水や汚物を洗い流すものである(例えば特許文献1参照)。
しかしながらノズル洗浄後の水膜面には空中に浮遊する細菌群や真菌類が付着しやすく、近年の住宅の高気密、高断熱化に伴い、これら細菌や真菌の増殖しやすい環境となっており、長期使用により洗浄ノズル表面部で増殖することが考えられる。ノズル表面での細菌群や真菌類の増殖を抑えるため、ノズルもしくはノズル先端部に抗菌成分を練りこんだ樹脂を用いる方法(特許文献2参照)や、ノズル洗浄に薬剤を適用するというものが提案されている(特許文献2、3参照)。
図7は前記文献2に記載された衛生洗浄装置を示したものである。同図において、1は洗浄ノズルであり、噴出孔2および洗浄ノズル1の収納位置において噴出孔2からの洗浄水を跳ね返らせてノズル洗浄を行うためのクリーニングキャップ3を有している。4は薬液タンクであり、薬注ポンプ5によって薬剤供給路6に供給され、元電磁弁7および洗浄水供給路8を経てきた洗浄水と混合されて洗浄ノズル1に流入し、噴出孔2から噴出することで洗浄ノズルが薬液によって洗浄されるというものである。
また同特許文献2には、薬液として水を電気分解することによって生成される、次亜塩素酸をノズル洗浄に適用すること、また特許文献3には、除菌成分として洗浄水に電解によって溶出した銀イオンを含み、銀イオンによりノズルを洗浄除菌することが開示されている。
実開昭61−155478号公報 特許第3487447号公報 特開2001−279780号公報
しかしながら上記従来の衛生洗浄装置では、樹脂材料は、細菌群や真菌類などの栄養となる有機物が付着しやすく、付着した有機物をえさとして細菌群や真菌類が増殖しやすくなる環境であると共に、抗菌成分で細菌群や真菌類の増殖を抑えることはできても、時間が経過しバイオフィルム状になったものに対しては抗菌効果を発揮することはできないという課題があった。また、樹脂材料は表面エネルギーが小さいためいったん付着した汚れ
は、樹脂表面に強固に結合し、洗浄水によって洗い流しにくいという課題があった。
また薬液を用いる方法では、薬液タンクの薬液が消費されると当然のことながら薬液を補填する必要があり、薬液の補充が面倒であるとともに、使用者が薬液の補充を忘れるとノズルを衛生的に保てなくなる恐れがあった。また、薬液の消費状態は通常の使用状態では使用者に分からないので、薬液の交換、補填時期を報知するための構成が必要になるなど、装置の複雑化や高コスト化につながるという課題があった。
一方、水を電気分解し次亜塩素酸を生成する構成では、薬液を補給する必要は無くなるものの、電気分解によって塩素が発生するため、塩素による機器の腐食や臭気対策などが必要となり、構成がさらに複雑化するとともに装置の大型化につながるという課題があった。また、低濃度で優れた抗菌性を示す無機系抗菌剤として知られる銀イオンを洗浄水に含むノズル洗浄においても、銀イオンを低濃度で使用する場合は長時間の洗浄が必要になり、短時間で洗浄を行うためには、高濃度の銀イオンが必要になるという課題があった。銀は高価な貴金属であるため、ノズルを洗浄するために、高価な金属を溶出させ都度排出するのは不経済であり、また高コスト化につながる。
本発明において解決すべき技術課題は、薬剤を用いることなく効果的にノズル洗浄が行えるとともに、より一層衛生的に使用できる衛生洗浄装置を提供することである。
上記課題を解決するために本発明は、便座と、表面を平滑処理した金属で構成されたノズル外装部材を有して人体の洗浄を行う複数の人体洗浄ノズルと、前記人体洗浄ノズルを洗浄する洗浄水を噴出する洗浄手段と、前記人体洗浄ノズルの少なくとも一部を覆い、前記人体洗浄ノズルに洗浄水を噴出する噴出開口を有したノズルカバーと、前記人体洗浄ノズルを収納するノズル収納部と、前記人体洗浄ノズルを前記収納部から人体洗浄位置まで進退駆動させる駆動手段を備え、前記人体洗浄ノズルと前記ノズルカバーおよび前記ノズル収納部の間に洗浄水の流路を形成し、前記洗浄手段による前記人体洗浄ノズルの洗浄時には、前記複数の人体洗浄ノズルを交互に繰り返し進退駆動させることを特徴とするものである。
複数の人体洗浄ノズルを交互に進退駆動させながら洗浄するので、人体洗浄ノズルのノズルカバーから突出した部分にかかった有機物や最近を含んだ跳ね返り水を全周囲からくまなく洗い流すことが可能となり、人体洗浄ノズル全体を洗浄することが出来る。
本発明の衛生洗浄装置は、複数の人体洗浄ノズルを交互に繰り返し進退駆動させて、人体洗浄ノズルを清潔に保つことが出来るとともに、薬剤の補給等も不要なため、経済的な負担も少なく衛生的に使用できる衛生洗浄装置を提供することが出来る。
第1の発明における衛生洗浄装置は、便座と、表面を平滑処理した金属で構成されたノズル外装部材を有して人体の洗浄を行う複数の人体洗浄ノズルと、前記人体洗浄ノズルを洗浄する洗浄水を噴出する洗浄手段と、前記人体洗浄ノズルの少なくとも一部を覆い、前記人体洗浄ノズルに洗浄水を噴出する噴出開口を有したノズルカバーと、前記人体洗浄ノズルを収納するノズル収納部と、前記人体洗浄ノズルを前記収納部から人体洗浄位置まで進退駆動させる駆動手段を備え、前記人体洗浄ノズルと前記ノズルカバーおよび前記ノズル収納部の間に洗浄水の流路を形成し、前記洗浄手段による前記人体洗浄ノズルの洗浄時には、前記複数の人体洗浄ノズルを交互に繰り返し進退駆動させることを特徴としたものである。
この構成により、ノズル外装部材の金属を表面平滑処理することで、細菌群や真菌類そのものの付着や、その栄養となる有機物の付着を抑制することが可能なため、人体洗浄ノズルが汚れたり、細菌群や真菌類が繁殖したりすることを防止できるとともに、一般的に金属材料は表面エネルギーが大きく、さらに表面を平滑処理してあるので、付着した汚れも剥離しやすくなり、薬剤を用いたりすることなく、洗浄手段から噴出する水流の物理的な力だけで付着した有機物などの汚れや細菌群、真菌類を洗い流すことができ、結果として人体洗浄ノズルを常に清潔に保つことが可能であるとともに、経済的な負担や手間も少なく衛生的に使用できる衛生洗浄装置を得ることが出来る。また、複数の人体洗浄ノズルを交互に進退駆動させながら洗浄するので、人体洗浄ノズルのノズルカバーから突出した部分にかかった有機物や最近を含んだ跳ね返り水を全周囲からくまなく洗い流すことが可能となり、人体洗浄ノズル全体を洗浄することが出来る。
第2の発明における衛生洗浄装置は、便座に使用者が着座したことを検知する着座センサを備え、
前記着座センサが使用者が便座から立ち上がったことを検知すると、前記洗浄手段による複数の人体洗浄ノズルの洗浄を行うものである。
この構成により、ノズル洗浄を行っている間は、時間的な制約を受けることなく、確実に念入りな洗浄を実現できる。
第3の発明における衛生洗浄装置は、所定の時間間隔ごとに洗浄手段から洗浄水を噴出させ自動的に人体洗浄ノズルの洗浄を行うものである。
この構成により、長期間または長時間にわたって便座を使用しない場合においても、ノズル洗浄動作が行われ、常に清潔に保つことが出来る。
第4の発明における衛生洗浄装置は、室温により洗浄手段による人体洗浄ノズルの洗浄の時間間隔を異ならせるものである。
この構成によって、室温により異なる最近の繁殖速度に応じて確実に最近の繁殖を抑制することが出来る。
5の発明における衛生洗浄装置は、人体洗浄ノズルを洗浄する洗浄水を加熱する加熱手段をさらに備えた構成としたものである。
この構成によって、洗浄手段から噴出させる洗浄水を加熱手段により加熱することで、洗浄効果をさらに高めることが出来る。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。各実施の形態において、同じ形態および同じ動作を行う部分については同一符号を付与し、詳細な説明も同一なものとして扱う。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示すもので、図1において、衛生洗浄装置としての温水洗浄便座10は便器11上に設置され、温水洗浄便座10の本体12、便蓋13、使用者が座るための便座14等から構成されており、また水道から洗浄水の供給を受けるための給水配管(図示せず)および壁面のコンセントから電源供給を受けるための電気ケーブル15が備えてある。温水洗浄便座10の内部には使用者が肛門の洗浄を行うためのおしり洗浄機能、小用後の女性局部を洗浄するビデ洗浄機能、洗浄後の人体局部を乾燥するための乾燥機能、寒冷時にトイレ空間を暖房する部屋暖房機能等
が備えてあり、各々の操作は壁面に取り付けたリモートコントローラ16(以下、リモコンと略す)によってなされる。また、便座14には使用者の存在を検知する検知手段としての着座センサ17を備えている。なお、この着座センサ17は、赤外線を用いて使用者の便座14への着座の有無を検知するものであるが、方式としては便座の静電容量を検知する方式や、さらには赤外線や超音波等を用いて使用者の便座への着座を検知する、もしくはトイレルームに入室、退室したことを検知する方式、さらには例えばトイレの照明に連動して使用者の存在を検知する方式等でも検知手段としての応用が可能である。18はおしり洗浄ノズルが、使用者の肛門洗浄を行うために便器11上方に突出した様子を表したものであり、このおしり洗浄ノズル18と並列にビデ洗浄ノズル21が設けられ、人体洗浄ノズルを構成している。
図2、図3は人体洗浄ノズルおよび洗浄手段の断面図を示すものである。図2は人体洗浄ノズル収納状態での断面図を示し、図3は図2におけるA−A’断面を示している。図4は本実施の形態における温水洗浄便座10の水回路を示すブロック図である。
図2、図3において、おしり洗浄ノズル18は樹脂材料で成形したおしりノズル本体19とおしりノズル本体19を覆う金属材料で形成したおしりノズル外装部材20で構成され、同じくビデ洗浄ノズル21は樹脂材料で成型したビデノズル本体22とビデノズル本体22を覆う金属材料で形成したビデノズル外装部材23で構成されている。おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21は、内部におしり洗浄水およびビデ洗浄水を人体局部に噴出するためのおしり洗浄水流路24、ビデ洗浄水流路25を形成し、おしり洗浄水流路24、ビデ洗浄水流路25の元部分には、洗浄水を供給する洗浄水供給口26、27が設置してあり、洗浄水供給手段とホース(図示せず)を介して連通してある。また、おしりノズル本体19の下面にはその先端部を除き、おしり洗浄に必要な駆動距離に応じて、歯型状のラック28が形成してあり、同様にビデノズル本体22の下面にもその先端部を除き、ビデ洗浄に必要な駆動距離に応じて、歯型状のラックが形成してある(図示せず)。おしり洗浄水流路24、ビデ洗浄水流路25を通った洗浄水はおしり噴出孔29、ビデ噴出孔30から人体局部に噴出される。
おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23はステンレスの薄板を円筒状に絞り加工で形成したものであり、先端面を閉塞面、後端面を開放面とし、後端面よりおしりノズル本体19およびビデノズル本体22を挿入可能な形状としてある。このように絞り加工によっておしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を形成し、さらに先端面を閉塞面とすることで、人体局部を洗浄した際の有機物や細菌を含んだ跳ね返り水がかかりやすい先端部の凹凸やつなぎ目を極力少なくすることができ、これら有機物や細菌の付着を防止したり、付着したこれらの有機物や細菌を洗い流しやすくしたりすることが可能となる。
また、おしりノズル本体19およびビデノズル本体22の下面に形成した歯形状のラック28は、その先端部には形成せず、さらに図2に示すようにおしりノズル外装部材20またはビデノズル外装部材23の円筒外周面よりも内側に形成してあるので、もし仮におしりノズル外装部材20またはビデノズル外装部材23の上面に付着した有機物や細菌が洗浄水で洗い流される過程で下側に回りこんだとしても、この歯形状のラック28部分には付着しにくいよう配慮してある。
さらに、おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を形成するステンレス鋼板の表面は、絞り加工をおこなった後、バフ研磨加工や電解研磨加工により平滑加工を施した構成としており、絞り加工によって大きな凹凸なく仕上げられたおしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を形成するステンレス鋼板の表面をさらに、表面粗さが1μm以下になるように平滑処理してある。
絞り加工は金属鋼板をつなぎ目なく円筒状に加工する手段として非常に有効であるが、金属鋼板の材質や絞り形状によっては、成形時に傷が生じたり、ミクロの亀裂が入ることもあり、このようなバフ研磨加工や電解研磨加工などの平滑加工を施すことで、さらに跳ね返り水に含まれる有機物や細菌の付着を防止したり、付着した有機物や細菌を洗い流しやすくしたりすることが可能となる。なお、バフ研磨加工や電解研磨加工は金属の表面粗さを1μm程度まで平滑処理することが可能で、表面粗さ1μm程度まで平滑処理された金属表面は、付着した汚れが水をかけるだけで、確実に洗い流せることを明らかにした文献も見受けられ、特に人体の敏感な部分を洗浄するノズルの衛生を保つために、非常に有効な手段であることは記述するまでもない。
なお、おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を形成するステンレス鋼板としては、特に表面電荷密度の小さいSUS304やSUS316Lなどを用いると効果的で、表面がプラスに帯電した細菌群や真菌類などの栄養となる有機物や細菌群そのものの付着が抑えられることから、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21における細菌の繁殖を抑制することができ、これらを清潔に保つことができる。
さらに、このおしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を形成するステンレス鋼板に硝酸処理やオゾン処理などの表面改質処理を行えば、その表面の電荷密度をマイナス側にまで減少させることができる。このような表面改質処理を行うことで、おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23の表面電荷密度を極限まで下げることが可能となり、結果的に表面がプラスに帯電した細菌群や真菌類などの栄養となる有機物や細菌群そのもの付着が抑えられ、人体洗浄ノズルへの汚れの付着を抑制でき、常に衛生的に保つことが可能となる。
このように人体洗浄ノズルを衛生的に保つことができれば、使用者の清潔意識から来る不安感を払拭することができるのはもちろんのこと、特に配慮をすべき女性の局部洗浄も衛生的に行うことが可能となる。また、ステンレス鋼板でおしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を形成し、バフ研磨や電解研磨等の平滑処理を施すと、さらにその光沢度が増すことから、ステンレスの「清潔そう」という一般的なイメージがさらに増長し、使用者の視覚的な安心感にもつながる。
おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21は、下部に開口部を有し樹脂材料で成型されたノズル収納部31に収納され、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の上部はノズルカバー32で覆われ、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21とノズルカバー32およびノズル収納部31の間にノズル洗浄水の流路33が形成されている。
ノズルカバー32には、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄するノズル洗浄水を噴出する噴出開口34が設けてあり、ノズルカバー32内部には洗浄水の流路35が設けられ、洗浄水流路35の元部分には洗浄水を供給する洗浄水供給口36が設置してあり、洗浄水供給手段とホース(図示せず)を介して連通してある。噴出開口34から噴出したノズル洗浄水は、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21とノズルカバー32およびノズル収納部31の間に形成されたノズル洗浄水の流路33を通って、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄し、便器11内に排出される。
また、ノズルカバー32の先端開口上部には上下に回動自在なノズルシャッタ37が設けてあり、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21をノズル収納部31に収納した状態でノズルカバー32の先端開口を閉塞することができる。ノズルシャッタ37はおしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21が洗浄位置に進出するときは、おしり洗浄
ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の先端で押進することにより上方に開成し、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を収納位置に収納したときはノズルシャッタ37の自重で下方に回動し閉塞する構成である。
なお、本実施の形態においては、シャッタ37は抗菌剤を練りこんだ樹脂で構成したが、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23と同様に、面電荷密度の小さいSUS304やSUS316Lを用い、さらにバフ研磨や電解研磨などの平滑処理を施したり、硝酸処理やオゾン処理などの表面改質処理により、その表面の電荷密度をさらに小さくしたものを用いたりすることで、結果的に表面がプラスに帯電した細菌群や真菌類などの栄養となる有機物や細菌群そのもの付着が抑えられ、シャッタ37そのものへの汚れの付着を抑制でき、常に衛生的に保つことが可能となる。このように、シャッタ37を光沢のあるステンレス鋼板で形成し、さらに平滑処理等でその光沢度を上げて、汚れにくくすることは、シャッタ37が日常使用者の目に触れる部分で、しかも汚れの付着しやすい部分であるだけに、使用者に対して衛生的な安心感を与える上で重要であることは記述するまでもない。さらに、シャッタ37を、面電荷密度の小さいSUS304やSUS316Lを用い、さらにバフ研磨や電解研磨などの平滑処理を施したり、硝酸処理やオゾン処理などの表面改質処理により、その表面の電荷密度をさらに小さくしたものを用いて構成すれば、もし仮に汚れが付着しても、軽くこするかもしくは水で洗い流すだけで汚れを洗い流すことができ、掃除性も格段に向上する。
また、ノズル収納部31の下部には、おしり洗浄ノズル18を前後に進退駆動するためのおしりノズル駆動手段38が設置してあり、おしりノズル駆動手段38は駆動モータ39と、駆動モータ39の回転をラック28に伝えるピニオンギア40、41をはじめとする複数の減速ギア(図示せず)を備えてあり、さらに駆動モータ39の後部には駆動モータ39の回転数を検知する回転検知センサ42が設置してある。また、図には示していないが、ビデ洗浄ノズル21を進退駆動するため、同様のビデノズル駆動手段が設けられている。
図4において、まず、水源である水道配管43からの分岐流れが、給水管45によって温水洗浄便座10の本体12内に備えた加熱手段48へと導かれる。この給水管45上には、汚水が水道配管43に逆流することを防止する逆止弁44、水道配管43からの分岐流れの量を制限する定流量弁47、止水手段としての電磁弁46、洗浄水の流量を計測する流量センサ49などが備えてある。
加熱手段48は約1200Wの容量を持つ板状のセラミックヒータとその両面に設けた蛇行する内部流路から構成されており、加熱手段48の入口に供給された常温の洗浄水は、この蛇行する内部流路を流れながらセラミックヒータから熱を受け取り、加熱手段48の出口に至るまでの間に適温に加熱される、いわゆる瞬間型のものを用いている。そのため、必要な時に必要なだけ適温の温水を供給可能であり、使用時に備えて温水を保温貯溜しておく必要性がないため、非常に省エネで効率的な加熱手段となっている。また、このいわゆる瞬間型の過熱手段48を用いれば、連続して適温の温水を得ることができるため、例えばおしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄するためにお湯を使ったとしても、湯切れが発生することがなく、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄動作直後に使用者がおしり洗浄などの動作を行っても確実に適温のお湯が供給され、使い勝手が向上する。なお、本実施の形態においては、ヒータは熱密度に優れた板状のセラミックヒータを用いたが、シーズヒータやマイカヒータ、さらには板材に抵抗体を設けたプリントヒータなど様々なヒータ応用が考えられることは言うまでもない。
さらにその下流側には温水管50を介して切替弁51が接続されており、この切替弁51は前述の温水管50が接続される入口流路52と第1出口流路53、第2出口流路54
、第3出口流路55がモータ56によって選択的に連通される構成となっている。
第1出口流路53はホースを介して(図示せず)おしり洗浄ノズル18に洗浄水を供給する洗浄水供給口26と、第2出口流路54はホースを介して(図示せず)ビデ洗浄ノズル21に洗浄水を供給する洗浄水供給口27と、第3出口流路55はホースを介して、洗浄水供給口36と接続している。
以上のように構成された温水洗浄便座10についてその作用、動作について説明する。
温水洗浄便座10は、使用者が便座12に着座し、リモコン16の各操作スイッチを操作することで局部洗浄、乾燥機能等が実行される。
使用者がおしり洗浄を選択した場合、制御手段(図示せず)が制御を開始し、駆動モータ39の回転がピニオンギア40、41に伝えられることにより、ピニオンギア41と噛み合ったラック28を有するおしりノズル本体19を前方に押し出す力が作用する。そして制御手段は、おしり洗浄ノズル18をおしり洗浄に適した位置まで移動させた後、駆動モータ39を停止せしめる。その際、モータ56が切替弁51を駆動して、温水管50が接続される入口流路52と第1出口流路53を連通させるとともに、電磁弁46が開成され、加熱手段48で適温に加熱された温水がおしり洗浄水流路24に供給され、おしり噴出孔29から人体局部に噴出される。
おしり洗浄の停止を操作すると、制御手段は、まず電磁弁46を閉止させ、さらに駆動モータ39を逆回転せしめるため、おしり洗浄ノズル18は後方へ移動し、元の収納状態に戻る。その際、モータ56が切替弁51を駆動して、温水管50が接続される入口流路52と第3出口流路55を連通させ、さらに再度電磁弁46を開成せしめることで、洗浄水が洗浄水供給口36に供給され、結果的として洗浄水は洗浄水流路33を通って、噴出開口34から勢いよく噴出し、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21とノズルカバー32およびノズル収納部31の間に形成されたノズル洗浄水の流路33を通過しながら、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の表面を洗浄し、便器11内に排出される。
ここでは、おしり洗浄の後、おしり洗浄ノズル18が元の収納状態に戻ってからノズル洗浄を行う構成で説明をしたが、使用者によっておしり洗浄の停止が指示されたタイミングで、電磁弁46は開成したまま、もしくは一瞬だけ閉止状態にして、モータ56が切替弁51を駆動して温水管50が接続される入口流路52と第3出口流路55を連通させることも考えられる。こうすれば、おしり洗浄ノズル18を突出したままで、洗浄水が洗浄水供給口36に供給され、結果的として洗浄水は洗浄水流路33を通って、噴出開口34から勢いよく噴出し、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21とノズルカバー32およびノズル収納部31の間に形成されたノズル洗浄水の流路33を通過しながら、おしり洗浄ノズル18の後端表面およびビデ洗浄ノズル21の先端表面を洗浄し、便器11内に排出されるが、この状態で、駆動モータ39を逆回転せしめ、おしり洗浄ノズル18を収納動作に移行させれば、おしり洗浄ノズル18を全体にわたって洗浄することが可能となる。一方で、先の例であれば、特に汚れが付着しやすく、使用者が気にする先端部分を丹念に洗浄することが可能となる。いずれも一長一短があり、ノズルの構成や、時間的な制約などによって具体的な仕様を決めるのが望ましい。なお、ここで説明した一連の動作や効果は、ビデ洗浄が行われた際の、ビデ洗浄ノズル21の動作やここで得られる効果と同様である。
このようにおしり洗浄やビデ洗浄を停止するたびにおしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄することで、付着してしまった汚れのこびりつきが防止でき、常におしり
洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を清潔に保つことができる。さらに、使ったあとは必ず洗う、ということに対する使用者の安心感につながり、また、例えばおしり洗浄を繰り返して行う際や、おしり洗浄とビデ洗浄を続けて行う場合にも、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21は常に清潔に保つことができる。
また、本実施の形態において、おしり洗浄やビデ洗浄を停止した直後に行う、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄は、加熱手段48から温水を供給して行うこととしたが、このときの洗浄水の温度は、もし万が一着座したままの使用者臀部にその洗浄水がかかっても安全なように、最高で約40℃の設定としてある。このように約40℃の温水で、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄を行うことで、常温の水と比べて当然のことながら付着した汚れを洗い落とす効果が上がり、さらに安全性も確保できるといった効果も得られる。さらに本実施の形態で用いたいわゆる瞬間型の加熱手段48の場合、温水を供給している状態で、突然水の流れを停止させると、加熱手段48そのものや内設してあるヒータ等の熱容量により、中に残っている温水の温度が設定温度よりも上昇してしまい、機器の信頼性を損なう原因になりかねないが、このようにおしり洗浄やビデ洗浄が終わった後、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄するよう動作させれば、このいわゆる後沸きの温水を加熱手段48から排出することも可能となり、機器の信頼性向上にも寄与する。ちなみに本実施の形態では、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄を行う際には最初の1.5秒間は加熱手段48によって温水を供給し、あとの0.5秒は加熱手段48に内設されたヒータへの通電を停止し、後沸きした温水を確実に排出できるよう構成してある。
人体局部の洗浄を行う際、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21に、有機物や細菌を含んだ跳ね返り水がかかることを防止することは非常に困難で、この有機物や細菌を含んだ跳ね返り水が付着した状態で収納されて洗い流されずに放置されると、細菌類が繁殖したり、汚れがこびりついてとれなくなったりする。
しかしながら、本実施の形態では、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23をステンレス鋼板を絞り加工によって成形することで凹凸やつなぎ目をなくし、さらにバフ研磨加工や電解研磨加工等の平滑処理を施してあるので、おしり洗浄やビデ洗浄が終わった直後に、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄するだけで、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の表面に付着した有機物や細菌を含んだ跳ね返り水のほとんどを洗い流すことが可能となり、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を常に清潔に保つことができる。
また一般的に細菌は、物体表面にある凹凸の凹部にまず付着し、そこで増殖してバイオフィルムを形成するが、この凹部をなくすことで、細菌の増殖を確実に抑制することができる。つまり、本実施の形態では、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の表面にバフ研磨加工や電解研磨加工等の平滑処理を施し、表面粗さを1μm程度まで平滑化し、ミクロレベルの凹凸をもなくしているので、細菌群や真菌類などの増殖を確実に抑えることができ、結果としておしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を長期間にわたって清潔に保つことができる。
さらに、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗うための洗浄水が洗浄水供給口36に供給されると、その洗浄水は洗浄水流路33を通って、噴出開口34から勢いよく噴出し、さらにおしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21とノズルカバー32およびノズル収納部31の間に形成されたノズル洗浄水の流路33を通過しながら、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の表面を洗浄するよう構成し、さらに加熱手段48から温水を供給しておしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄するので、付着した有機物や細菌を含んだ跳ね返り水をさらに確実に洗い流すことができる。
さらにまた、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を、表面電荷密度の小さい金属、例えばSUS304やSUS316Lなどで構成したので、表面がプラスに帯電した細菌群や真菌類などの栄養となる有機物や細菌群そのものの付着を抑えられ、結果としておしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21における細菌の繁殖を抑制することができ、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を長期間にわたって清潔に保つことができる。
なお本実施の形態では、加熱手段48としていわゆる瞬間型のものを用いたので、頻繁におしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄を温水で行ったとしても、温水が出なくなることはなく、おしり洗浄やビデ洗浄を行う際に洗浄水の温度が低下して使用者が不快な思いをするといったことが回避できる。一方で、加熱手段48が低容量のヒータしか備えず、適温にまで加熱した温水を貯溜しておいて使ういわゆる貯湯式の場合であれば、いわゆる湯切れを回避するために、タンクを大きくして貯湯量を増やす、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21の洗浄を給水管45から直接分岐し水道水で洗う、等の対策が必要となるが、おしり洗浄やビデ洗浄が終わった直後に、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を洗浄することは付着した汚れを洗い流すという動作は、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を清潔に保つという点において非常に効果的であり、しかもこれまでに詳細を説明した、いくつかの加工・処理を施したおしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23を備えることで、樹脂製のノズルと比較すると格段の効果が得られることは確実で、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を清潔に保ち、このことにより使用者に安心感を与えることができる。
次に使用者が温水洗浄便座10の使用を終え、便座から立ち上がった場合の動作について説明する。使用者が温水洗浄便座10の使用を終え、便座から立ち上がると、便座14に設けた着座センサ17により使用者が便座から立ち上がったことが検知され、制御手段からの信号によって、モータ56が切替弁51を駆動し、温水管50が接続される入口流路52と第3出口流路55が連通され、さらに電磁弁46を開成させる。すると給水管45から供給された洗浄水は、加熱手段48で適温にまで加熱され、洗浄水供給口36へと供給される。洗浄水供給口36に供給された適温のノズル洗浄水は、洗浄水流路33を通って、噴出開口34から勢いよく噴出し、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21と、ノズルカバー32およびノズル収納部31の間に形成されたノズル洗浄水の流路33内を勢いよく通過することで、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄し、便器11内に排出される。なおこの動作は本実施の形態では5秒間継続し、自動的に停止する構成としてある。
なお、このとき、加熱手段48から供給される、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄するための温水温度は、人体洗浄を行うときよりも高めの50℃設定としてある。これは洗浄水の温度が高ければ洗浄の効率が上がることに起因しており、使用者が便座14から離れたことを検知して、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄するので、使用者に対して不安全動作にはならないことから、このような構成としてある。ただし、本実施の形態のように瞬間型の加熱手段を採用すると、水道水の温度が低下する厳冬期などは加熱能力が不足し、50℃までノズル洗浄水を昇温させようとすると、その流量が不足してしまうので、低めの設定温度にしてノズル洗浄水の流量を増やし、水の物理的な勢いによっておしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を洗浄することも有効である。
なおまた、この際も先に記述した、おしり洗浄やビデ洗浄が終わった直後と同様に、おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23は、ステンレス鋼板を円筒状に絞り加工で形成されており、さらに表面の細かな凹凸を平面粗さで1μmレベルまで平滑処
理してあるため、万が一汚れが付着していた場合でも、繰り返し洗浄を行うことで洗い流せる確率が大きく向上する。
一般的に細菌は物体表面の凹部に付着して増殖し、バイオフィルムを形成することは先に述べたとおりであるが、ちなみに細菌の大きさは、およそ1〜数μmであり、この凹部をなくせば、細菌群の増殖を確実に抑制することができる。つまり、おしりノズル外装部材20およびビデノズル外装部材23にバフ研磨加工や電解研磨加工を施し、その表面粗さを1μm以下にすることで、細菌がおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の凹部に付着し、増殖することを抑えることが可能となる。
細菌の培養液中にステンレス製のおしりノズル外装部材20を備えたおしり洗浄ノズル18を浸漬し、さらに38℃度雰囲気で培養した際の、おしりノズル外装部材20表面への細菌群の付着状態を比較した顕微鏡写真を図5、図6に示す。
図5は、ステンレス鋼板を深絞り加工で成形したおしりノズル外装部材20の表面を、図6はステンレス鋼板を深絞り加工で成形し、さらにバフ研磨加工によって表面粗さを1〜数μmまで平滑加工したおしりノズル外装部材20の表面を示している。図5で示す深絞り加工で成形したおしりノズル外装部材20の表面には、深絞り加工の際に生じた数μmから十μmレベルの凹凸が観察され、さらにこの凹凸を中心に白丸で示した場所には細菌群が繁殖していることがわかる。一方、図6で示すバフ研磨加工で表面粗さを1〜数μmまで平滑処理したおしりノズル外装部材20の表面には、細菌群の繁殖は観察できない。つまり、おしりノズル外装部材20を、ステンレス鋼板を深絞り加工で成形し、さらにバフ研磨加工によって表面粗さを1〜数μmまで平滑加工することで、おしりノズル外装部材20表面への細菌の付着およびその繁殖を抑制できることが確認できた。なお、ここではおしり洗浄ノズル18およびおしりノズル外装部材20を例に挙げたが、同様の構成としてあるビデ洗浄ノズル21およびビデノズル外装部材23でも同様の効果が得られる。
さらに、この使用者が温水洗浄便座10の使用を終えた後の動作においては、制御手段は、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21をそれぞれ進退駆動させるための駆動モータ39を各々繰り返し正逆回転駆動させ、おしり洗浄ノズル18とビデ洗浄ノズル21が、交互に所定位置まで突出し、収納される、という動作を繰り返す。ここでの所定位置とは、図2において、おしり洗浄ノズル18がおしり洗浄のために突出した際に、ノズルカバー32の先端(図面右端)と同位置に来る部分が、ノズルカバー32後端(ノズルカバー32の図面左端)に位置するまで、おしり洗浄ノズルを突出させるよう構成してある。このように構成することで、ノズルカバー32から突出し、おしり洗浄ノズル18のいわゆる顔をのぞかせる部分にかかった有機物や細菌を含んだ跳ね返り水をくまなく洗い流すことが可能となり、おしり洗浄やビデ洗浄が終わった直後のノズル洗浄では洗い落とせなかった有機物や細菌を含んだ跳ね返り水も確実に洗い流すことが可能となり、有機物のこびりつきや、これに伴う細菌の繁殖によって清潔さが損なわれることを防止できる。この所定位置は、ビデ洗浄ノズル21でも同様の設定としてあるので、当然のことながら同様の動作を行い、同様の効果が期待できる。
なお、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら、念入りにノズル洗浄動作を行うことは、おしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を清潔に保つために非常に有効な方法であるが、使用者が温水洗浄便座10を使用している際には、使用者によっておしり洗浄の直後にビデ洗浄が指示されたり、繰り返しおしり洗浄が指示されたりするので、時間的な制約が多く実現が困難である。しかしながら、本実施の形態においては、使用者が温水洗浄便座10の使用を終えたことを検知してこの動作を行うため、時間的な制約を受けることが少なく、確実に念入りなノズル洗浄を実現できる。この
ことにより、温水洗浄便座10が使用されるたびに、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の確実な洗浄が実現でき、有機物のこびりつきといった短期的な汚れに対しても、付着した有機物に対する細菌の繁殖といった長期的な汚れに対しても、非常に効果的で、清潔さを維持することができる。
さらに、使用者が温水洗浄便座10の使用を終え便座14から立ち上がったことを検知して、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りにノズル洗浄動作を行うので、この様子はトイレを出ようとする使用者が直接目にすることになる。これは、次の使用者に対して自分の汚れは残したくない、という使用者の心理に対して、大きな安心感を与えることにもつながる。加えて、前の使用者が使用した後にも、同様のノズル洗浄動作が行われていたことがわかり、ここでも使用者が抱くノズルの衛生についての不安感を払拭することができる。
また、本実施の形態では、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を、ステンレス鋼板を絞り加工によって成形することで凹凸やつなぎ目をなくし、さらにバフ研磨加工や電解研磨加工等の平滑処理を施してあるので、おしり洗浄やビデ洗浄が終わった直後のノズル洗浄動作と、このおしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りに行うノズル洗浄動作によって、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の表面に付着した有機物や細菌を含んだ跳ね返り水のほとんどを洗い流すことができ、常に清潔に保つことが可能である。さらに、平滑処理を施したおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23は、非常に光沢感に優れており、さらにステンレスのような金属の光沢には清潔さをイメージさせる効果もあるため、温水洗浄便座10の使用直後におしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら、ノズル洗浄を行えば、自ずと使用者がノズルの清潔さを視覚で確認することになり、結果として衛生面での大きな安心感につながる。
なお、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りにノズル洗浄動作を行う際、ノズルを洗浄している様子を強調して使用者に見せることも有効である。つまり、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21の近傍に例えば青色のLED等を設け、ノズル洗浄の動作中にこのLEDを発光させれば、きちんと洗浄されたおしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21がはっきりと視覚で確認できるようになるとともに、光沢感に優れたステンレス製のおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の清潔感に加え、青色LEDから照射される青色光の清潔イメージが相乗効果を生み、さらに使用者の安心感を引き出すことも考えられる。
なお、これまでに述べてきた説明では、使用者が温水洗浄便座の使用を終えたことを検知して、自動的におしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りにノズル洗浄動作を行う構成としたが、さらに、この念入りに行うノズル洗浄を使用者が任意に選択できるよう構成することも考えられる。つまり、この念入りに行うノズル洗浄の選択スイッチを、リモコン16もしくは温水洗浄便座10の本体12のいずれかに設け、この選択スイッチを使用者が選択押下することによって、使用者が温水洗浄便座10の使用を終えた際と同様のノズル洗浄動作を行う。このように構成することで、使用者がノズルの衛生に不安を抱いた際、任意にノズルの洗浄を行うことができるため、ノズルの衛生に関してさらに使用者に安心感を与えることができる。この場合、このノズル洗浄動作は自動的に停止するように設定することも可能であるが、使用者が任意に停止できるよう構成することも可能である。このように、ノズル洗浄動作の停止を使用者が任意に行えるよう構成すれば、使用者が納得するまでノズル洗浄動作を継続することも可能となり、さらにノズルの衛生に関して使用者の安心レベルを高めることができる。
なおまた、使用者が温水洗浄便座10の使用を終えたことを検知して、自動的におしり
洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りにノズル洗浄動作を行う構成や、これを使用者が任意に選択できる構成以外もしくはこれらに加えて、所定の時間間隔毎に自動的に同様な念入りなノズル洗浄動作を行う構成にすることも可能である。具体的には、温水洗浄便座10の使用・非使用にかかわらず、例えば1日に1回、温水洗浄便座10の使われる可能性の低い深夜等に、自動的におしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21を進退駆動させながら念入りにノズル洗浄動作を行う。このような構成にすることにより、長期間または長時間にわたって温水洗浄便座10を使用しない場合においても、ノズル洗浄動作が行われ、おしり洗浄ノズル18およびビデ洗浄ノズル21は常に衛生的で清潔に保つことができる。
これは、細菌類が時間とともに繁殖し、長い時間が経過すると、次第にバイオフィルムを形成するなどして、洗い流しにくくなることに対する措置である。また、おしり洗浄やビデ洗浄の際に付着した有機物や細菌が含まれている跳ね返り水は洗い流せたとしても、トイレ空間中に浮遊している細菌類がおしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21に付着して繁殖することも考えられることから、付着した細菌が繁殖する前に洗い流すという点で、所定の時間間隔毎に自動的にノズル洗浄動作を行うことは非常に効果的である。
ここでは、温水洗浄便座10の使われる可能性の低い深夜を例に挙げたが、1日の決まった時刻にこの動作を行う必要性はなく、制御手段に備えた計時機能を利用して所定時間が経過した段階で、このノズル洗浄動作を行ってもよい。このように時刻を限定しなければ、制御手段が特別に時計機能を供える必要性がなくなり、単なるマイクロコンピュータの計時機能だけですむため、機器のコストアップを避けることができる。細菌の繁殖を抑制する意味では、絶対時刻は特に重要ではなく、ほぼ所定の間隔ごとにノズル洗浄動作が実行されればよい。
ただし、室温の高い夏季と室温の低い冬季では細菌の繁殖速度が異なってくるため、温水洗浄便座10が備えている気温や水温を検知する手段からの信号を元に季節を推定するなどして、ノズル洗浄動作を行う間隔を夏季は短めに、冬季は長めに設定することも可能である。このような設定にすることで、室温の高い夏季は確実に細菌の繁殖を抑制し、冬季はノズル洗浄に用いる洗浄水や電気代を節約することも可能となる。
なお、本実施の形態では、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の表面を平滑化する処理方法として、バフ研磨加工や電解研磨加工等、表面を研磨し凸をけずることで凹凸をなくす方法を示したが、鍍金や塗装により表面の凹部を埋め、表面の凹凸をなくす方法を用いることも考えられる。このような方法を用いて、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の表面を平滑化すれば、これまでに述べてきたものと同様の作用・効果が得られることはもちろんのこと、一度に数多くの平滑化処理を施すことが可能であるため、生産コストを下げることもできる。
なお、本実施の形態では、おしりノズル本体19やビデノズル本体22を樹脂材料で成型し、さらに別部材として、ステンレス鋼板を用いて成形したおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23をかぶせる構成としたが、このような構成にすることによって、衛生洗浄装置に適した洗浄噴流の提供を容易にできるとともに、これまでの述べてきたおしり洗浄ノズル18やビデ洗浄ノズル21を清潔に保つことが可能となる。つまり、衛生洗浄装置の噴流は、肛門や女性の局部など敏感な粘膜部位を洗浄するため、比較的やわらかな体感でありながら、汚物をしっかりと洗い流せるだけの高い洗浄力が求められ、さらに洗浄すべき範囲が狭いため、飛び散りは極力抑えなければならないなど、数多くの制約があるが、樹脂成型で作成されたノズルを用いることで、噴出口の複雑な形状も容易に形成でき、所望の噴流が得やすく、さらにその周囲を、ステンレス鋼板を用いて成形した外装部材をかぶせる構成とすることで、清潔さを維持することが可能となる。例えばおし
り外装部材20に直接噴出口を設け、ここからおしり洗浄のための噴流を噴出させる場合、噴出口形状は加工コストの面から単純な丸穴にならざるを得ない場合が多く、このような構成にした場合、噴流の飛び散りを抑えるのが非常に困難になる。
なお、本実施の形態では、おしりノズル本体19やビデノズル本体22とおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を別部材として構成したが、例えば樹脂材料で成型したおしりノズル本体19やビデノズル本体22と、ステンレス鋼板を用いて成形したおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を一体に構成することも考えられる。具体的には、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を、ステンレス鋼板を絞り加工等にて成形し、さらにここに樹脂材料をインサート成型することで、おしりノズル本体19やビデノズル本体22を構成したり、樹脂成型品のおしりノズル本体19やビデノズル本体22に金属鍍金処理を施したりすればよい。このような構成にすることで、これまでに述べてきたものと同様の作用・効果が得られることはもちろんであるが、さらに、おしりノズル本体19やビデノズル本体22とおしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の間にできる隙間を完全になくすことができるので、さらにノズルの清潔度を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態では、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23を、ステンレスを材料として構成したが、ステンレスのような金属は一般的な樹脂材料と比較すると、格段に表面硬度が高いため、特に衛生洗浄装置のように、使用するたびにノズルが進退駆動される場合でも、おしりノズル外装部材20やビデノズル外装部材23の摺動部をはじめとする全体に傷がつきにくく、つまり表面の平滑度が変化しないため、長年にわたって汚れたり細菌が繁殖したりすることがなく、さらにその光沢が続き、使用者に衛生的なイメージを与え続けられるという効果も得られる。
なお、これまでに述べてきた内容は、衛生洗浄装置が元来、おしり洗浄、ビデ洗浄、ノズル洗浄のいずれにおいても、多くとも1L/min程度の洗浄水しか噴出できない構成になっていることから、この構成を大きく変更することなく、この少流量の洗浄水でノズルの衛生を保つ意味で非常に効果的である。
以上のように、本発明の衛生洗浄装置は薬剤を用いることなく効果的にノズル洗浄が行えるため、局部洗浄以外のあらゆる洗浄装置などの用途にも適用できる。
本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観斜視図 同実施の形態1における人体洗浄ノズルおよび洗浄手段の断面図 同実施の形態1における人体洗浄ノズルの部分断面図 同実施の形態1における衛生洗浄装置の水回路構成のブロック図 従来のノズルの顕微鏡写真 本実施の形態におけるノズルの顕微鏡写真 従来の衛生洗浄装置の側面断面図
10 温水洗浄便座
18 おしり洗浄ノズル
19 おしりノズル本体
20 おしりノズル外装部材
31 ノズル収納部
32 ノズルカバー

Claims (5)

  1. 便座と、
    表面を平滑処理した金属で構成されたノズル外装部材を有して人体の洗浄を行う複数の人体洗浄ノズルと、
    前記人体洗浄ノズルを洗浄する洗浄水を噴出する洗浄手段と、
    前記人体洗浄ノズルの少なくとも一部を覆い、前記人体洗浄ノズルに洗浄水を噴出する噴出開口を有したノズルカバーと、
    前記人体洗浄ノズルを収納するノズル収納部と、
    前記人体洗浄ノズルを前記収納部から人体洗浄位置まで進退駆動させる駆動手段を備え、前記人体洗浄ノズルと前記ノズルカバーおよび前記ノズル収納部の間に洗浄水の流路を形成し、
    前記洗浄手段による前記人体洗浄ノズルの洗浄時には、
    前記複数の人体洗浄ノズルを交互に繰り返し進退駆動させることを特徴とする衛生洗浄装置。
  2. 便座に使用者が着座したことを検知する着座センサを備え、
    前記着座センサが使用者が便座から立ち上がったことを検知すると、前記洗浄手段による複数の人体洗浄ノズルの洗浄を行う請求項1記載の衛生洗浄装置。
  3. 所定の時間間隔ごとに洗浄手段から洗浄水を噴出させ自動的に人体洗浄ノズルの洗浄を行う請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
  4. 室温により洗浄手段による人体洗浄ノズルの洗浄の時間間隔を異ならせる請求項1から3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
  5. 人体洗浄ノズルを洗浄する洗浄水を加熱する加熱手段をさらに備え、洗浄手段から噴出させる洗浄水を加熱する構成とした請求項1から4のいずれか1項記載の衛生洗浄装置。
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