以下に、本発明に係るジャイロモジュールの実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係るジャイロモジュールのブロック図である。3軸のジャイロモジュール10は、3つのジャイロ素子片を有している。これらのジャイロ素子片のうち、第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14は、2つの検出軸(第1検出軸および第2検出軸)を有している。また第4ジャイロ素子片16は、1つの検出軸(第1検出軸)を有している。
そして3つのジャイロ素子片は、第1検出軸を揃えて配置してある。ここで図1に示す場合では、第1検出軸の向きが同じになっているので、第1検出軸回りの角速度に対する検出感度極性が同じになっている。また第1ジャイロ素子片12と第2ジャイロ素子片14は、それぞれの第2検出軸を交差するよう配置してある。ここで本実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10は、互いに直交する3軸における各軸回りの角速度を検出するために、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸が直交している。また第1検出軸と第2検出軸も直交している。したがって各ジャイロ素子片の第1検出軸と、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸とは互いに直交している。なお本実施形態では、各ジャイロ素子片の第1検出軸が3軸ジャイロモジュール10のZ軸、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸が3軸ジャイロモジュール10のY軸、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸が3軸ジャイロモジュール10のX軸と一致している。
このように配置したジャイロ素子片に発振回路(図示せず)が接続している。この発振回路は、ジャイロ素子片を励振させるものである。またジャイロ素子片の出力側に演算部20が接続している。この演算部20は、第4演算回路22および第5演算回路24を備えており、図1に示す場合、第4,5演算回路22,24は減算回路になっている。
そして第4演算回路22は、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16との出力側に接続し、これらのジャイロ素子片12,16から入力した信号を減算(演算)して、この演算結果を出力している。この第4演算回路22の出力が、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のY軸出力となる。また第5演算回路24は、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16との出力側に接続し、これらのジャイロ素子片14,16から入力した信号を減算(演算)して、この演算結果を出力している。この第5演算回路24の出力が、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のX軸出力となる。さらに第4ジャイロ素子片16の出力が、第1検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
なお図1に示す回路図では、ジャイロ素子片と演算回路との接続構成を簡易的に記載したが、3軸ジャイロモジュール10における第1、第2、第4ジャイロ素子片12,14,16の後段回路の具体的構成は、例えば、各ジャイロ素子片の検出電極が検出した検出信号(電荷)を電圧信号に変換する為のチャージアンプ回路を1つの検出腕に対して1つずつ備えたものである(1つのジャイロ素子片に対して2つのチャージアンプ回路を備える)。
さらに3軸ジャイロモジュール10は、前記2つのチャージアンプ回路からの出力信号を増幅する為の差動増幅回路と、差動増幅回路からの出力信号と発振器の出力信号とを同期検波する為の同期検波回路と、同期検波回路の出力から高周波信号を除去する為のローパスフィルタとを備える。
そしてローパスフィルタからの出力信号を演算回路に供給する構成を備え、また第4ジャイロ素子片16の出力に係るローパスフィルタからの出力信号においてはその一部を第一の検出軸出力へと利用する構成を有する。
またジャイロ素子片は次のようになっている。図2は2つの検出軸を備えたジャイロ素子片の概略斜視図である。2つの検出軸を備えたジャイロ素子片(2軸ジャイロ素子片30)、すなわち第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14は、いわゆるダブルT型ジャイロセンサとなっている。この2軸ジャイロ素子片30は水晶を用いており、水晶結晶のx軸(電気軸)およびy軸(機械軸)で形成されるxy平面で切り出されたZカット水晶基板から形成されている。この水晶基板の主面が、2軸ジャイロ素子片30の主面になっている。なおxy平面の垂直方向が水晶結晶のz軸(光学軸)になっている。
そして2軸ジャイロ素子片30は、前記xy平面内において、矩形状の基部32を有している。この基部32には、xy平面内において、y軸に平行な各端辺の中央からx軸に平行な方向に延びた連結腕34が存在する。すなわち基部32には、基部32と一体に形成した+x方向(x軸矢印方向)に延びる連結腕34と、これとは逆の方向の−x方向に延びる連結腕34が存在する。また各連結腕34の先端付近からは、xy平面内において、y軸に平行な方向に延びた駆動腕36が存在する。すなわち各連結腕34の先端(x軸方向の先端)または中間(x軸方向の中間)には、連結腕34と一体に形成した+y方向(y軸矢印方向)に延びる駆動腕36と、連結腕34を中心にして+y方向に延びる駆動腕36と対称となるように−y方向に延びる駆動腕36が存在する。そして各駆動腕36の先端には、この駆動腕36よりもx軸方向の幅を広くした矩形状の錘部38が駆動腕36と一体に存在する。
また基部32には、xy平面内において、x軸に平行な各端辺の中央からy軸に平行な方向に延びた検出腕40が存在する。すなわち基部32には、基部32と一体に形成した+y方向に延びる検出腕40と、−y方向に延びる検出腕40が存在する。そして各検出腕40の先端には、この検出腕40よりもx軸方向の幅を広くした矩形状の錘部42が検出腕40と一体に存在する。この検出腕40の先端に設けた錘部42は、駆動腕36の先端に設けた錘部38のx軸方向の幅よりも大きくしてある。そして検出腕40の先端に設けた錘部42の幅をD、駆動腕36の先端に設けた錘部38の幅をdとすると、5d≦D≦10dの関係を満たすようになっている。すなわち検出腕40の先端に設けた錘部42の幅Dは、駆動腕36の先端に設けた錘部38の幅dの5ないし10倍となるように設計してある。このように検出腕40の先端に設けた錘部42の幅Dを設定するのは、y軸回転系の角速度検出において、検出腕40の捩れ振動を効率よく得るためである。
また駆動腕36および検出腕40のxy平面内に平行する両面には、x軸方向のそれぞれの幅の中央に溝44を設けている。この溝44の内面全体に駆動電極または検出電極用の金属膜を設けることにより、駆動腕36および検出腕40のzy平面に平行する面に形成した駆動電極または検出電極と溝44に設けた電極との間に効率良く電界を発生させることができるので、2軸ジャイロ素子片30の小型化を可能にしている。なお各駆動腕36に駆動電極(図示せず)が設けてあり、各検出腕40には検出電極(図示せず)が設けてある。前記駆動電極および前記検出電極は、基部32の裏面に設けた振動片側マウント電極46(図4を参照)と1対1に接続している。この振動片側マウント電極46は、2軸ジャイロ素子片30がパッケージに収容されたときに、パッケージ側の電極との接続する箇所(中間基板のリードとの接続する箇所)になる。
そして2軸ジャイロ素子片30では、振動片側マウント電極46を介して前記駆動電極に発振回路からの電気信号(ドライブ信号)が供給されると、駆動腕36が対称的に屈曲振動(駆動振動)する。すなわち図2の左側に示す駆動腕36と右側に示す駆動腕36とが、ジャイロ素子片の重心Gを通るy軸に平行な線に対して線対称の振動をする。このような駆動振動を2軸ジャイロ素子片30が行っているときに、z軸回りの角速度が加えられると駆動腕36にはy軸方向のコリオリ力が働くことになる。そして、コリオリ力の影響を受けて検出腕40が屈曲振動(検出振動)するので、電気信号が前記検出電極を介して振動片側マウント電極46から出力する。また2軸ジャイロ素子片30が駆動振動を行っているときに、y軸回りの角速度が加えられると検出腕40が捩れ振動(検出振動)する。この捩れ振動は、コリオリ力によって生じた検出腕40のx方向の屈曲振動と、z方向の屈曲振動とを合成した振動モードである。そしてこの捩れ振動により、電気信号が前記検出電極から出力する。なおx軸回りの回転の場合には、コリオリ力が発生しないので、2軸ジャイロ素子片30から電気信号を出力しない。
このように2軸ジャイロ素子片30を構成しているので、z軸回りの角速度を検出する感度と、y軸回りの角速度を検出する感度の比が1対1になる。
図3は1つの検出軸を備えたジャイロ素子片の概略斜視図である。1つの検出軸を備えたジャイロ素子片(1軸ジャイロ素子片50)、すなわち第4ジャイロ素子片16は、いわゆるダブルT型ジャイロセンサとなっている。そして1軸ジャイロ素子片50は、2軸ジャイロ素子片30と同様の構成になっているが、検出腕52の先端に設けた錘部54のx軸方向の幅が異なっている。すなわち1軸ジャイロ素子片50の検出腕52に設けた錘部54の幅は、2軸ジャイロ素子片30の検出腕40に設けた錘部42の幅よりも狭くなっている。このように1軸ジャイロ素子片50の検出腕52に設けた錘部54の幅を狭く設定するのは、y軸回転系の角速度を検出しないように、検出腕52の捩れ振動を生じさせないためである。そして1軸ジャイロ素子片50は、駆動電極(図示せず)に電気信号が供給されると、駆動腕56が対称的に屈曲振動(駆動振動)する。このときに、z軸回りの角速度が加えられると駆動腕56にはy軸方向のコリオリ力が働くことになる。そしてコリオリの影響を受けて検出腕52が屈曲振動(検出振動)するので、1軸ジャイロ素子片50の検出電極(図示せず)を介して振動片側マウント電極46から電気信号が出力する。なお図3を用いて説明した1軸ジャイロ素子片50は、検出腕52および駆動腕56の先端に錘部54,58を設けているが、実施形態によっては錘部54,58を設けない構成としてもよい。
なお2軸ジャイロ素子片30や1軸ジャイロ素子片50は、フォトリソグラフィ加工技術を用いて製造できるので、小型化することができる。また検出腕40,52や駆動腕36,56に錘部38,42,54,58や溝44,59を設けることによっても小型化することができるとともに、感度を高くすることができる。
そして3軸ジャイロモジュール10は、このような2軸ジャイロ素子片30と1軸ジャイロ素子片50を用いた場合、次のような向きになるよう各ジャイロ素子片12,14,16を配置すればよい。図4は各ジャイロ素子片を配置する向きを説明する概略底面図である。ここで図4の左上に第4ジャイロ素子片16(1軸ジャイロ素子片50)、右上に第1ジャイロ素子片12(2軸ジャイロ素子片30)、右下に第2ジャイロ素子片14(2軸ジャイロ素子片30)を示している。第1ジャイロ素子片12と第2ジャイロ素子片14は水晶の結晶軸方向の関係も含めて同一構成である。そして図面の左上に示す第4ジャイロ素子片16は、+z方向を図面に対して垂直な手前側に向けて配置する。また図面の右上に示す第1ジャイロ素子片12は、+z方向を図面に対して垂直な手前側に向け、+y方向を図面の上側に向け、+x方向を図面の右側に向けて配置する。さらに図面の右下に示す第2ジャイロ素子片14は、+z方向を図面に対して垂直な手前側に向け、+y方向を図面の右側に向け、+x方向を図面の下側に向けて配置する。このように各ジャイロ素子片12,14,16を配置すると、図4の左下に示すように、3軸ジャイロモジュール10のZ軸が図面に対して垂直な手前側に向き、Y軸が図面の上側に向き、X軸が図面の右側に向く。
なお各ジャイロ素子片12,14,16のz軸は完全に揃っていてもよく、また3軸ジャイロモジュール10に必要とされる検出精度に応じて略揃っている状態であってもよい。また第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は、直交していてもよく、また3軸ジャイロモジュール10に必要とされる検出精度に応じて略直交している状態であってもよい。
なおz軸を完全に揃え、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸とを完全に直交させた状態で構成すれば、検出精度の高い3軸ジャイロモジュール10となる。
そして3軸ジャイロモジュール10は、1つのパッケージで構成することができる。図5は1つのパッケージで構成した3軸ジャイロモジュールの説明図である。ここで図5(A)はジャイロ素子の斜視図であり、図5(B)は3軸ジャイロモジュールの概略斜視図である。前述した各ジャイロ素子片12,14,16は、図5(A)に示すように、それぞれパッケージ80に収容してジャイロ素子70にすることができる。このときジャイロ素子片12,14,16は、中間基板72の上方に配設してあればよい(図7(A)参照)。この中間基板72は、中央部にデバイスホール74を備えている。そして中間基板72の下面または中間層に複数のリード76(リード電極)が設けてあり、このリード76の先端側がデバイスホール74内に上方側の金属面を露出した状態となるよう凸出し、且つ、上方に折り曲げられている。このリード76の先端部にジャイロ素子片の基部が接合している。なおリード76の先端部とジャイロ素子片12,14,16に設けた各振動片側マウント電極46とが1対1に接続している。
また図5(A)に示すパッケージ80は、上方に向けて開口した凹陥部84を備えたパッケージベース82と、パッケージベース82の上面に接合して凹陥部84を封止する蓋体(図示せず)を備えている。このパッケージベース82の凹陥部84は、前記発振回路等を備えた集積回路(IC)チップ(図示せず)や、ジャイロ素子片12,14,16を備えた中間基板72を搭載するようになっている。すなわち前記ICチップは、凹陥部84内の底面に搭載すればよい。またジャイロ素子片12,14,16を備えた中間基板72は、ジャイロ素子片12,14,16を上方に向けるとともに、前記ICチップの上方に位置するよう凹陥部84に配設すればよい。これによりジャイロ素子片12,14,16と前記ICチップがパッケージベース82に設けた導体路を介して導通するとともに、パッケージベース82の裏面に設けた外部端子(図示せず)と前記ICチップが導通する。そしてパッケージベース82の上面(表面)に前記蓋体を接合して、ジャイロ素子片12,14,16等を真空封止する。
そして、このようなジャイロ素子70を用いた3軸ジャイロモジュール10の一例は、図5(B)に示す形態になっている。すなわち、この3軸ジャイロモジュール10は絶縁基板86を有しており、第1ジャイロ素子片12を収容したジャイロ素子70、第2ジャイロ素子片14を収容したジャイロ素子70および第4ジャイロ素子片16を収容したジャイロ素子70を絶縁基板86上に配設する。このとき各ジャイロ素子片12,14,16の向きは、図4に示すようになっている。そして各ジャイロ素子片12,14,16は、絶縁基板86上を引き回した配線パターン(図示せず)によって導通することにより、前述した演算部20(第4演算回路22および第5演算回路24)と導通すればよい。なお演算部20は、各ジャイロ素子70に搭載してある前記ICチップのうちのいずれか1つに設けてあってもよく、外付け部品として絶縁基板86上に設けてあってもよい。そして第4ジャイロ素子片16を収容したジャイロ素子70や前記演算部20の各出力端子は、絶縁基板86に引き回された配線パターン(図示せず)を介して、絶縁基板86の裏面に設けた実装端子(図示せず)と導通している。また絶縁基板86の上面には、ジャイロ素子70の周囲を覆うよう樹脂モールド材88を設けている。これにより1つのパッケージ80で構成した3軸ジャイロモジュール10を得る。
次に、3軸ジャイロモジュール10の動作について説明する。まず各ジャイロ素子片は、前記発振回路から駆動電極に電気信号が供給されて、駆動腕36,56が励振している。このとき3軸ジャイロモジュール10のZ軸、Y軸およびX軸の各軸回りの角速度が各ジャイロ素子片12,14,16に加わると、それぞれのジャイロ素子片12,14,16が備えている検出腕40,52が励振し、これを電気信号に変換して出力する。このとき第4ジャイロ素子片16の第1検出軸は、3軸ジャイロモジュール10のZ軸回りの角速度を検出している。このため第4ジャイロ素子片16は、図1に示すように、3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力として、検出した角速度の信号を出力する。
また第1ジャイロ素子片12および第4ジャイロ素子片16が角速度を検出することにより出力した信号は、第4演算回路22(減算回路)に入力する。第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16の各第1検出軸は方向が揃っているので、第1ジャイロ素子片12が出力した信号から第4ジャイロ素子片16が出力した信号を減算すると、第1検出軸の角速度成分が相殺され、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸で検出した角速度成分のみを得る。すなわち、第1ジャイロ素子片12の角速度に係る出力信号がZ軸回りに係る信号成分とY軸回りに係る信号成分とが重畳したものであっても、この減算により、第4ジャイロ素子片16のZ軸回りの角速度に係る信号成分を使って第1ジャイロ素子12の出力信号からZ軸回りの角速度に係る信号成分を除去するので、3軸ジャイロモジュール10のY軸回りの角速度を得る。このため第4演算回路22は、第1ジャイロ素子片12が出力した信号から第4ジャイロ素子片16が出力した信号を減算し、この減算結果を3軸ジャイロモジュール10のY軸出力として、出力している。
また第2ジャイロ素子片14および第4ジャイロ素子片16が角速度を検出することにより出力した信号は、第5演算回路24(減算回路)に入力する。第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16の各第1検出軸は方向が揃っているので、第2ジャイロ素子片14が出力した信号から第4ジャイロ素子片16が出力した信号を減算すると、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸で検出した角速度成分のみを得る。すなわち、第2ジャイロ素子片14の角速度に係る出力信号がZ軸回りに係る信号成分とX軸回りに係る信号成分とが重畳したものであっても、この減算により、第4ジャイロ素子片16のZ軸回りの角速度に係る信号成分を使って第2ジャイロ素子片14の出力信号からZ軸回りの角速度に係る信号成分を除去するので、3軸ジャイロモジュール10のX軸回りの角速度を得る。このため第5演算回路24は、第2ジャイロ素子片14が出力した信号から第4ジャイロ素子片16が出力した信号を減算し、この減算結果を3軸ジャイロモジュール10のX軸出力として、出力している。
このようになっている3軸ジャイロモジュール10では、3軸の各検出軸回りの角速度成分を分離して出力することができる。すなわち3軸ジャイロモジュール10は、X軸回りの角速度の検出、Y軸回りの角速度の検出およびZ軸回りの角速度の検出をそれぞれ行うことができる。
またジャイロ素子片としてダブルT型ジャイロセンサは、主面垂直方向を検出軸回りとした角速度を検出することができるものであるから、ジャイロ素子片12,14,16がパッケージ80に収容されるときは、ジャイロ素子片12,14,16の主面がパッケージ80の底面に沿っている状態とすることができる。このため前述した絶縁基板86にジャイロ素子70を固着するときも、ジャイロ素子片12,14,16の主面が絶縁基板86の上面に沿うことになる。よって3軸ジャイロモジュール10は、従来のようにジャイロ素子片を垂直に立たせて配置する必要がないので、低背化することができ、無駄な空間を生じることもない。すなわちジャイロ素子片12,14,16の厚みサイズを3軸ジャイロモジュール10の厚みサイズに反映させることができ、その結果、3軸ジャイロモジュール10を小型化することができる。
また3軸ジャイロモジュール10を1つのパッケージ(モジュール)で形成しておけば、3軸ジャイロモジュール10を電子機器の実装基板へ容易に搭載することができる。すなわち3軸ジャイロモジュール10を1つのパッケージに形成する際に、各ジャイロ素子片12,14,16の検出軸の向きを予め調整することができる。そして3軸ジャイロモジュール10のユーザは、3軸ジャイロモジュール10を電子機器の実装基板に実装するときに、各ジャイロ素子片12,14,16の検出軸の向きを個別に調整する必要がないので、容易に実装できる。よって1つのパッケージで構成した3軸ジャイロモジュール10は、3軸の角速度の検出を高精度に維持された状態で使用される。
なお前述した図5に示す形態では、1つのジャイロ素子片12,14,16を1つのパッケージ80に収容したジャイロ素子70を3つ用意し、各ジャイロ素子70を絶縁基板86上に配設した構成であるが、3軸ジャイロモジュール10はこの構成に限定されることはない。すなわち、この変形例に係る3軸ジャイロモジュール10は1つのパッケージを備え、このパッケージを構成するパッケージベースにジャイロ素子片12,14,16を備えた中間基板72を3つ収容できる凹陥部を設ける。この凹陥部は、中間基板72を3つ並べて収容できる形態であればよい。またパッケージベースを断面視して方形波状にすることにより3つの凹陥部を形成して、この凹陥部にそれぞれ中間基板72を配設する形態であってもよい。このような凹陥部の形態としても、凹陥部が開口している箇所に蓋体を設けて、ジャイロ素子片12,14,16を真空封止する。このような構成のパッケージであっても、1つのパッケージで3軸ジャイロモジュール10を得る。
そして1つの凹陥部に、ジャイロ素子片12,14,16を備えた中間基板72を平面方向に3つならべて配設する形態のパッケージとすれば、同一面内に各中間基板72を配設することができるので、各ジャイロ素子片12,14,16を搭載する平面精度を良好にすることができる。この場合、仮に、中間基板72を配設する面で構成する前記同一面が、水平方向に対して傾斜していても、各ジャイロ素子片12,14,16の傾斜角度は等しいので、この傾斜角度を調整する作業を簡易なものにすることができる。
なお一枚の中間基板72の同一面内にジャイロ素子片12,14,16を配設し、この中間基板72を1つの凹陥部内に配設して3軸ジャイロモジュール10を構成しても構わない。
次に、第2の実施形態について説明する。図6は第2の実施形態に係る3軸ジャイロモジュールのブロック図である。ここで図6(A)は第2ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図であり、図6(B)は第1ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図である。第2の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10は、第1の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10と同様の構成であるが、第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14のいずれか一方の第1検出軸の検出感度極性を第4ジャイロ素子片16の第1検出軸の検出感度極性に対して反転させている点で異なっている。このため第2の実施形態では、第1の実施形態と構成が異なる箇所について説明する。
図6(A)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第2ジャイロ素子片14の第1検出軸と第1,3ジャイロ素子片12,16の第1検出軸とで軸回りの角速度の変化に対する検出感度極性が反転している。すなわち第2ジャイロ素子片14は、第1,3ジャイロ素子片12,16に対して光学軸の向きが逆向きになっている(同一構成の第1ジャイロ素子片12に対して裏向き)。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。そして第2ジャイロ素子片14における第1検出軸の検出感度極性を反転させるには、図5(A)に示すジャイロ素子70の場合では、例えば中間基板72に搭載された第2のジャイロ素子片14の振動片側マウント電極46がパッケージベース82の凹陥部84の上方を向くよう第2ジャイロ素子片14のみをパッケージベース82に搭載すればよい。
なお第2ジャイロ素子片14の第1検出軸の検出感度極性を反転させるには、図7に示す形態であってもよい。図7は3軸ジャイロモジュールの説明図である。ここで図7(A)は2つのジャイロ素子片を搭載したパッケージの断面図であり、図7(B)は3軸ジャイロモジュールの概略斜視図である。2つのジャイロ素子片を搭載するパッケージ90はパッケージベース92を有しており、上方および下方に向けて開口した凹陥部94がパッケージベース92に設けてある。各凹陥部94の側面は階段状に形成してあり、この階段部96の上面に該当する部分にジャイロ素子片を搭載するためのパッケージ側マウント電極98が設けてある。また各凹陥部94の底面は、ICチップ100を固着する領域となっている。このような凹陥部94には、ICチップ100とパッケージ側マウント電極98とを導通するパターン(図示せず)が設けてある。またパッケージベース92の下面に外部端子102が設けてあり、この外部端子102とICチップ100とを導通するパターン(図示せず)が設けてある。
そしてICチップ100は各凹陥部94の底面に固着しており、その内部または表面に前記発振回路を備えている。また凹陥部94に設けた階段部96の上面に該当する部分に、ジャイロ素子片を備えた中間基板72を配設する。これによりジャイロ素子片とICチップ100が導通するとともに、ICチップ100と外部端子102が導通する。このとき上方に開口した凹陥部94に配設するジャイロ素子片を第4ジャイロ素子片16にするとともに、下方に開口した凹陥部94(外部端子102が存在する側)に配設するジャイロ素子片を第2ジャイロ素子片14にすればよい。これにより第2ジャイロ素子片14の第1検出軸の向きが、第1ジャイロ素子片12や第4ジャイロ素子片16の第1検出軸の向きに対して反転した形態となり、第2ジャイロ素子片14の第1検出軸の検出感度極性が反転する。
また各凹陥部94には、その開口している部分に蓋体104を設けることにより、凹陥部94を封止している。これによりジャイロ素子片14,16等が真空封止される。このような構成にすることにより、2つのジャイロ素子片14,16を1つのパッケージ90に収容することができる。
そして図7(B)に示す形態の3軸ジャイロモジュール10では、図7(A)に示すジャイロ素子106と、図5(A)に示す第1ジャイロ素子片12をパッケージ80に収容したジャイロ素子70とを絶縁基板86上に搭載し、これらの周囲を樹脂モールド材88で覆っている。なお図7(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、図5(B)に示す形態と同様の構成になっている。このような構成にしても、3軸ジャイロモジュール10は、その高さが低くなっており、また平面サイズも小さくなっている。
なお真空封止工程としては、2つの凹陥部94を個別に真空封止しても良い。
また、一度の真空工程で2つの凹陥部94内を真空状態にしても良い。
この工程を実現する為には、例えば、パッケージベース92の内部(例えば、凹陥部の底面)に上下の凹陥部94を連結する為の貫通孔を形成しておけば良い。
これにより、一方の凹陥部94の開口している部分を蓋体104にて覆った後、他方の凹陥部94を封止する前に真空処理することで、一方の凹陥部94内の気体が貫通孔を介して排出されるので、一度の真空処理工程にて2つの凹陥部94内を真空にすることが可能である。
したがって真空工程を簡素化することができる。
また上述した2つ有るICチップ100を1つにまとめた形態とした場合、一方のジャイロ素子片を搭載した中間基板72を凹陥部94の底面に搭載することが可能である。
すなわち、ICチップ100が1つであれば、一方の凹陥部94内にはジャイロ素子片のみを収納すればよいので、リード76の基端部と接続する為のパッケージ側マウント電極98を当該凹陥部94の底面に配設することが可能である。
そしてこれに伴い、当該凹陥部94内部には階段部96が不要となるので3軸ジャイロモジュール10の低背化に有効である。
さらには、Z軸方向における2つのジャイロ素子片12,14間の距離が短くなるとx軸、y軸回転に対する角速度の検知結果(絶対値)の差を小さくすることができる。
なおICチップ100とパッケージベース92側の回路配線との接続にはワイヤボンディングを適用しても良いが、フリップチップボンディング工法などによりICチップ100をパッケージベース92にフェイスダウンボンディングしても良い。
ICチップ100をフェイスダウンボンディングした場合、ワイヤボンディングの場合のようにZ軸方向にはワイヤのループの高さ分のスペースを設ける必要がないので、階段部96の高さをより低く構成することが可能である。
したがって、ICチップ100をワイヤボンディングした場合と比較してZ軸方向における2つのジャイロ素子片の距離を更に短くすることができるので、x軸、y軸回転に対する角速度の検知結果(絶対値)の差を小さくすることができる。
さらに、上述ではパッケージ内にICチップを収容した構成を説明したが、ICチップをパッケージの外部に搭載しても構わない。
この場合、特に図7に示すように2つのジャイロ素子片を重ねた構成においては、外部端子102と検出電極とが導通した構成となり、また2つの中間基板72を凹陥部94の底面に搭載することができる。
したがって、Z軸方向における2つのジャイロ素子片間の距離を更に短くすることができるので、2つのジャイロ素子片のx軸、y軸回転に対する角速度の検知結果(絶対値)の差を小さくすることができる。
このように各ジャイロ素子片12,14,16を配置した3軸ジャイロモジュール10では、ジャイロ素子片12,14,16の後段が図6(A)に示す形態となっていればよい。すなわちジャイロ素子片12,14,16の出力側に演算部20を接続する。この演算部20は、第4演算回路22および第5演算回路24を備えており、図6(A)に示す場合、第4演算回路22が減算回路になり、第5演算回路24が加算回路になっている。そして第4演算回路22は、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16とに接続し、これらのジャイロ素子片12,16から入力した信号を減算(演算)して、この演算結果を出力している。この第4演算回路22の出力が、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸回りの角速度を検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のY軸出力となる。
また第5演算回路24は、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16とに接続し、これらのジャイロ素子片14,16から入力した信号を加算(演算)して、この演算結果を出力している。このとき第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16の各第1検出軸は揃っているが、方向が反転しているので、第2ジャイロ素子片14が出力した信号と第4ジャイロ素子片16が出力した信号を加算すると、第1検出軸の角速度成分が相殺され、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸で検出した角速度成分のみを得る。これにより第5演算回路24の出力が、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のX軸出力となる。
さらに第4ジャイロ素子片16の出力が、第1検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
また図6(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第1ジャイロ素子片12の第1検出軸と第2,3ジャイロ素子片14,16の第1検出軸とで検出感度極性が反転している。すなわち第1ジャイロ素子片12は、第2,3ジャイロ素子片14,16に対して裏向きになっている。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。また3軸ジャイロモジュール10は1つのパッケージで形成することができ、その形態は図5(B)や図7(B)を用いて説明した形態と同様になる。
そして各ジャイロ素子片12,14,16の後段に接続する演算部20では、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続した第4演算回路22が加算回路になり、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続した第5演算回路24が減算回路になっている。これにより第4ジャイロ素子片16の出力が3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力になり、第4演算回路22の出力が3軸ジャイロモジュール10のY軸出力になり、第5演算回路24の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力になる。
このような第2実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第3の実施形態について説明する。図8は第3の実施形態に係る3軸ジャイロモジュールのブロック図である。ここで図8(A)は第4ジャイロ素子片および第1ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図であり、図8(B)は第4ジャイロ素子片および第2ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図である。第3の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10は、第1の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10と同様の構成であるが、第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14のいずれか一方と第4ジャイロ素子片16との第1検出軸の検出感度極性が第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14のいずれか他方に対して反転している点で異なっている。このため第3の実施形態では、第1の実施形態と構成が異なる箇所について説明する。
図8(A)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第2ジャイロ素子片14の第1検出軸と第1,3ジャイロ素子片12,16の第1検出軸回りの角速度の変化に対する検出感度極性が反転している。すなわち第1,3ジャイロ素子片12,16は、第2ジャイロ素子片14に対して光学軸が逆向きになっている。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。
そして第1,3ジャイロ素子片12,16の第1検出軸の検出感度極性を反転させるには、図5(A)に示すジャイロ素子70の場合では、例えば中間基板72に搭載されたジャイロ素子片の振動片側マウント電極46がパッケージベース82の凹陥部84の上方を向くよう第1,3ジャイロ素子片12,16のみをそれぞれパッケージベース82に搭載すればよい。また図7(A)に示すジャイロ素子106の場合では、上方に向けて開口した凹陥部94に第2ジャイロ素子片14を搭載するとともに、下方に向けて開口した凹陥部94に第4ジャイロ素子片16を搭載してもよい。この場合、第1ジャイロ素子片12を裏向きにして、図5(A)に示すパッケージ80に収容しておけばよい。このようにすることにより、3軸ジャイロモジュール10を図5(B)や図7(B)に示すように1体化することができる。
このように各ジャイロ素子片12,14,16を配置した3軸ジャイロモジュール10では、ジャイロ素子片12,14,16の後段が図8(A)に示す形態となっていればよい。すなわちジャイロ素子片12,14,16の出力側に演算部20を接続する。この演算部20は、第4演算回路22、第5演算回路24および極性反転手段26を備えており、図8(A)に示す場合、第4演算回路22が減算回路になり、第5演算回路24が加算回路になっている。
そして第4演算回路22は、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続し、これらのジャイロ素子片12,16から入力した信号を減算(演算)して、この演算結果を出力している。この第4演算回路22の出力が、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のY軸出力となる。また第5演算回路24は、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続し、これらのジャイロ素子片14,16から入力した信号を加算(演算)して、この演算結果を出力している。この第5演算回路24の出力が、第2ジャイロ素子片14の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のX軸出力となる。
さらに極性反転手段26は、第4ジャイロ素子片16に接続し、第4ジャイロ素子片16から入力した信号の極性を反転させている。すなわち第4ジャイロ素子片16の第1検出軸の検出感度極性は反転しているので、これから出力される信号がマイナスの極性になっている。このため極性反転手段26は、信号の極性をプラスに反転させる処理を行うことで、3軸ジャイロモジュール10のZ軸の検出感度方向に合わせている。この極性反転手段26の出力が、3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
また図8(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第1ジャイロ素子片12の第1検出軸と第2,3ジャイロ素子片14,16の第1検出軸とで検出感度極性が反転している。すなわち第2,3ジャイロ素子片14,16は、第1ジャイロ素子片12に対して裏向きになっている。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。また3軸ジャイロモジュール10は1つのパッケージで形成することができ、その形態は図5(B)や図7(B)を用いて説明した形態と同様になる。
そして各ジャイロ素子片12,14,16の後段に接続する演算部20では、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続した第4演算回路22が加算回路になり、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続した第5演算回路24が減算回路になっている。これにより第4演算回路22の出力が3軸ジャイロモジュール10のY軸出力になり、第5演算回路24の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力になる。また第4ジャイロ素子片16の後段に極性反転手段26が接続しており、第4ジャイロ素子片16から入力した信号の極性を反転させている。この極性反転手段26の出力が、3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
このような第3実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第4の実施形態について説明する。図9は第4の実施形態に係る3軸ジャイロモジュールのブロック図である。ここで図9(A)は第1ジャイロ素子片および第2ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図であり、図9(B)は第4ジャイロ素子片の第1検出軸の検出感度極性を反転させたときのブロック図である。第4の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10は、第1の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10と同様の構成であるが、第1,2ジャイロ素子片12,14の第1検出軸と第4ジャイロ素子片16の第1検出軸との検出感度極性を反転させている点で異なっている。このため第3の実施形態では、第1の実施形態と構成が異なる箇所について説明する。
図9(A)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第1,2ジャイロ素子片12,14の第1検出軸と第4ジャイロ素子片16の第1検出軸回りの角速度の変化に対する検出感度極性が反転している。すなわち第1,2ジャイロ素子片12,14は、第4ジャイロ素子片16に対して光学軸方向が逆になっている。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。
そして第1,2ジャイロ素子片12,14の第1検出軸の検出感度極性を反転させるには、図5(A)に示すジャイロ素子70の場合では、例えば中間基板72に搭載されたジャイロ素子片の振動片側マウント電極46がパッケージベース82の凹陥部84の上方を向くよう第1,2ジャイロ素子片12,14のみを下方に向けてパッケージベース82に搭載すればよい。また図7(A)に示すジャイロ素子106の場合では、上方に向けて開口した凹陥部94に第4ジャイロ素子片16を搭載するとともに、下方に向けて開口した凹陥部94に第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14の何れか一方を搭載してもよい。この場合、第1ジャイロ素子片12および第2ジャイロ素子片14のうちの他方を裏向きにして、図5(A)に示すパッケージ80に収容すればよい。このようにすることにより、3軸ジャイロモジュール10を図5(B)や図7(B)に示すように1体化することができる。
そして各ジャイロ素子片12,14,16の後段に接続する演算部20では、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続した第4演算回路22が加算回路になり、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続した第5演算回路24が加算回路になっている。これにより第4ジャイロ素子片16の出力が3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力になり、第4演算回路22の出力が3軸ジャイロモジュール10のY軸出力になり、第5演算回路24の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力になる。
また図9(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸を揃えているが、第1,2ジャイロ素子片12,14の第1検出軸と第4ジャイロ素子片16の第1検出軸との検出感度極性が反転している。すなわち第4ジャイロ素子片16は、第1,2ジャイロ素子片12,14に対して裏向きになっている。なおこの場合でも、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。
そして第4ジャイロ素子片16の第1検出軸の検出感度極性を反転させるには、図5(A)に示すジャイロ素子70の場合では、第4ジャイロ素子片16を下方に向けてパッケージベース82に搭載すればよい。また図7(A)に示すジャイロ素子106の場合では、上方に向けて開口した凹陥部94に第1,2ジャイロ素子片12,14の何れか一方を搭載するとともに、下方に向けて開口した凹陥部94に第4ジャイロ素子片16を搭載すればよい。このようにすることにより、3軸ジャイロモジュール10を図5(B)や図7(B)に示すように1体化することができる。
そして各ジャイロ素子片12,14,16の後段に接続する演算部20では、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続した第4演算回路22が加算回路になり、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続した第5演算回路24が加算回路になっている。これにより第4演算回路22の出力が3軸ジャイロモジュール10のY軸出力になり、第5演算回路24の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力になる。また第4ジャイロ素子片16の後段に極性反転手段26が接続しており、第4ジャイロ素子片16から入力した信号の極性を反転させている。この極性反転手段26の出力が、3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
このような第4実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第5の実施形態について説明する。図10は第5の実施形態に係る3軸ジャイロモジュールのブロック図である。第5の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10は、第1の実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10と同様の構成であるが、全てのジャイロ素子片12,14,16が裏向きに搭載されている点で異なっている。すなわち各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸が揃うとともに、向きも一致している。しかし3軸ジャイロモジュール10のZ軸と、各ジャイロ素子片12,14,16の第1検出軸との向きが反転しているのである。このような3軸ジャイロモジュール10は、図5に示すように、各ジャイロ素子片12,14,16を裏向きにしてパッケージ80にそれぞれ収容し、これらのジャイロ素子70を1体化して形成すればよい。
そして図10に示すように、各ジャイロ素子片12,14,16の後段に接続する演算部20では、第1ジャイロ素子片12と第4ジャイロ素子片16に接続した第4演算回路22が減算回路になり、第2ジャイロ素子片14と第4ジャイロ素子片16に接続した第5演算回路24が減算回路になっている。第4演算回路22の出力が3軸ジャイロモジュール10のY軸出力になり、第5演算回路24の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力になる。また第4ジャイロ素子片16の後段に極性反転手段26が接続しており、第4ジャイロ素子片16から入力した信号の極性を反転させている。この極性反転手段26の出力が、3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
このような第5実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第6の実施形態について説明する。図11は第6の実施形態に係る3軸ジャイロモジュールのブロック図である。第6の実施形態では、全てのジャイロ素子片に2軸ジャイロ素子片30を用いている。すなわち第6の実施形態では、第1ないし5の実施形態で説明した第4ジャイロ素子片16(1軸ジャイロ素子片50)の替わりに、第3ジャイロ素子片110(2軸ジャイロ素子片30)を用いている。
図11(A)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,110の第1検出軸を揃えているが、第2ジャイロ素子片14の第1検出軸と第3ジャイロ素子片110の第1検出軸における軸回りに対する角速度の変化に対する検出感度極性が反転している。すなわち第3ジャイロ素子片110は、第2ジャイロ素子片14に対して裏向きになっている。また第1ジャイロ素子片12は表向きに配置されているので、図11(A)に示す場合では、第1ジャイロ素子片12の第1検出軸と第2ジャイロ素子片14の第1検出軸との向きが反転している。また第2ジャイロ素子片14の第2検出軸と第3ジャイロ素子片110の第2検出軸とは揃っており、向きも一致している。さらに第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。
なお本実施形態では、各ジャイロ素子片12,14,110の第1検出軸と3軸ジャイロモジュール10のZ軸が沿い、第2,3ジャイロ素子片14,110の第2検出軸と3軸ジャイロモジュール10のY軸が沿い、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と3軸ジャイロモジュール10のX軸が沿っている。
そして3軸ジャイロモジュール10は、このように各ジャイロ素子片12,14,110の検出軸を配置した場合であっても、前述した実施形態と同様に、1体化したモジュールを構成することができる。
このように各ジャイロ素子片12,14,110を配置した3軸ジャイロモジュール10では、ジャイロ素子片12,14,110の後段に接続する演算部118が次の構成になっている。すなわち演算部118は、第1演算回路112、第2演算回路114および第3演算回路116を備えている。
第1演算回路112は、入力した信号を減算し、信号レベルを1/2にする回路である。そして第1演算回路112は、第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110に接続して、これらのジャイロ素子片14,110から入力した信号を減算し、減算後の信号レベルを半分にして、これを演算結果として出力している。すなわち第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110の第2検出軸の向きが一致しているので、これらのジャイロ素子片14,110が出力した信号を減算すると第2検出軸の角速度成分が相殺される。また第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110の第1検出軸は揃っているが、向きが反転しているので、これを減算すると信号同士が足され、第1検出軸で検出した角速度成分のみを得る。なお第1演算回路112は、各ジャイロ素子片14,110から入力した信号のレベルをそれぞれ半分にした後に減算をして、これを演算結果として出力してもよい。この第1演算回路112の出力が、第2,3ジャイロ素子片14,110の第1検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のZ軸出力となる。
また第2演算回路114は、入力した信号を加算し、信号レベルを1/2にする回路である。そして第2演算回路114は、第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110に接続して、これらのジャイロ素子片14,110から入力した信号を加算し、加算後の信号レベルを半分にして、これを演算結果として出力している。すなわち第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110の第1検出軸は揃っているが、向きが反転しているので、これを加算すると第1検出軸の角速度成分が相殺され、第2,3ジャイロ素子片14,110の第2検出軸で検出した角速度成分のみを得る。なお第2演算回路114は、各ジャイロ素子片14,110から入力した信号のレベルをそれぞれ半分にした後に加算をして、これを演算結果として出力してもよい。この第2演算回路114の出力が、第2,3ジャイロ素子片14,110の第2検出軸回りの角速度の検出結果、すなわち3軸ジャイロモジュール10のY軸出力となる。
また第3演算回路116は、減算回路になっている。そして第3演算回路116は、第1ジャイロ素子片12と第1演算回路112に接続して、第1ジャイロ素子片12から入力した信号と第1演算回路112から入力した信号とを減算(演算)し、これを演算結果として出力している。すなわち第1ジャイロ素子片12の第1検出軸は、3軸ジャイロモジュール10のZ軸と一致しているので、第1ジャイロ素子片12が出力した信号から第1演算回路112が出力した信号を減算すると第1検出軸の角速度成分が相殺され、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸で検出した角速度成分のみを得る。この第3演算回路116の出力が3軸ジャイロモジュール10のX軸出力となる。
なお図11(A)に示す形態では、第2ジャイロ素子片14と第3ジャイロ素子片110の向きがそれぞれ反転していていればよい。このため第2ジャイロ素子片14が裏向きになっており、第3ジャイロ素子片110が表向きになっていてもよい。この場合でも、第1ジャイロ素子片12は表向きになっている。
また図11(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、各ジャイロ素子片12,14,110の第1検出軸を揃えているが、第2ジャイロ素子片14の第1検出軸と第1,3ジャイロ素子片12,110の第1検出軸との検出感度極性が反転している。すなわち第1,3ジャイロ素子片12,110は、第2ジャイロ素子片14に対して裏向きになっている。また第2ジャイロ素子片14の第2検出軸と第3ジャイロ素子片110の第2検出軸とは揃っており、向きも一致している。さらに第1ジャイロ素子片12の第2検出軸と第2ジャイロ素子片14の第2検出軸は交差しており、本実施形態の場合では直交している。そして3軸ジャイロモジュール10は、このように各ジャイロ素子片12,14,110の検出軸を配置した場合であっても、前述した実施形態と同様に、1体化したモジュールを構成することができる。
このように各ジャイロ素子片12,14,110を配置した3軸ジャイロモジュール10では、ジャイロ素子片12,14,110の後段に接続する演算部118が次の構成になっている。演算部118は、第1演算回路112、第2演算回路114および第3演算回路116を備えている。この第1演算回路112および第2演算回路114は、図11(A)を用いて説明した形態と同じ構成になっている。また第3演算回路116は、図11(A)を用いて説明した形態と同様の構成になっているが、加算回路である点で異なっている。そして第3演算回路116は、第1ジャイロ素子片12から入力した信号と第1演算回路112から入力した信号とを加算(演算)し、これを演算結果として出力している。この第3演算回路116の出力が、第1ジャイロ素子片12の第2検出軸で検出した角速度成分であり、3軸ジャイロモジュール10のX軸出力となる。
このような第6実施形態に係る3軸ジャイロモジュール10でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。
さらに3つのジャイロ素子片12,14,110とも図2に示す構成のジャイロ素子片を使用することができるので、使用する部品の共通化に伴い生産性に優れた3軸ジャイロモジュール10を可能にする。
なお図11(A)に示す3軸ジャイロモジュール10や図11(B)に示す3軸ジャイロモジュール10は、第1演算回路112および第2演算回路114に信号レベルを1/2にする回路を設けた構成であるが、本発明はこの形態に限定されることはない。すなわち第1演算回路112および第2演算回路114には、信号レベルを1/2にする回路を設けなくてもよい。この変形例の場合、第3演算回路116には、第1ジャイロ素子片12から入力した信号レベルを2倍にする回路を設けておけばよい。これにより第3演算回路116では、第1ジャイロ素子片12から入力して信号レベルを2倍にする演算を行い、この2倍にした信号と変形例に係る第1演算回路112から入力した信号との減算または加算(演算)を行うことにより、3軸ジャイロモジュール10のX軸出力を得る。
次に、第7の実施形態について説明する。前述した実施形態では、ジャイロ素子片12,14,16,110にダブルT型ジャイロセンサを用いた構成を説明したが、本発明はこの形態に限定されることはない。すなわちジャイロ素子片は、双音叉振動ジャイロセンサを用いた構成であってもよい。図12は双音叉振動ジャイロセンサの概略平面図である。双音叉振動ジャイロセンサ120は、x軸とy軸で形成されるxy平面で切り出されたZカット水晶基板から形成されている。この水晶基板の主面が、双音叉振動ジャイロセンサ120の主面になっている。なおxy平面の垂直方向がz軸になっている。
そして双音叉振動ジャイロセンサ120は2本の振動腕122を有しており、これらの振動腕122の両端に双音叉支持部124が設けてある。各双音叉支持部124には、振動腕122が接続している側に対して反対の方向に、検出部126を介して支持固定部128が接続している。振動腕122は駆動部になっており、表面に駆動電極(図示せず)が設けてある。この駆動電極に電気信号を供給することにより、各振動腕122が互いに近づいたり離れたりする屈曲振動を行う。また検出部126の表面に検出電極(図示せず)が設けてある。そして双音叉振動ジャイロセンサ120は、角速度が加わるとコリオリ力が働くので、これに応じた屈曲振動が発生する。この屈曲振動の時には検出部126も振動をするので、前記検出電極で検出部126の振動を電気信号に変えて出力する。このような双音叉振動ジャイロセンサ120では、y軸回りの角速度と、z軸周りの角速度を検出することができる。したがって3軸ジャイロモジュール10は、このような双音叉振動ジャイロセンサ120をジャイロ素子片として用いることができる。
なお前述した第1ないし7実施形態の3軸ジャイロモジュール10は、ジャイロ素子片12,14,16,110に水晶を用いた形態であるが、本発明はこれに限定されることはない。すなわちジャイロ素子片は、水晶以外の他の圧電材料を用いて作製したものであってもよく、シリコンの微細加工技術を用いて作製したもの(MEMS:微小電気機械システム)であってもよい。またジャイロ素子片の形状は、図2,3,12に示す形状に限定されることはない。