JP4891858B2 - 表面性状評価方法およびコンクリート表面診断方法 - Google Patents

表面性状評価方法およびコンクリート表面診断方法 Download PDF

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本発明は、コンクリート等の表面を簡易に評価または診断する表面性状評価方法およびコンクリート表面診断方法に関する。
現在、わが国における主要な農業用排水路(以下、「農業用水路」と呼称する)は、総延長が約45,000kmであり、膨大な社会資本を形成している。これらの水路に関しては、高度成長期以降に集中して整備されたものが多く、築造から数十年経過しているため、今後短期間に集中して更新時期を迎えることが予想されている。このことから、今後農業用水路の機能を効率的に維持・発展させるためには適時、適切な補修・補強を実施する必要がある。
農業用水路の多くはコンクリート構造物である。農業用水路以外のコンクリート構造物に関しては、これまでにさまざまな補修技術の開発が進められており、これらの補修技術を農業水利分野に活用することが有効と考えられる。例えば、特開2006−234383号公報には、コンクリート構造物の劣化診断方法が開示されている。このコンクリート構造物の劣化診断方法では、被検査面となるコンクリート構造物の表面をデジタルカメラで撮影し、このデジタル写真画像から三次元写真画像を作成する。また、同様に赤外線カメラで撮影し、これを異なる時間に複数回繰り返して撮影して複数枚の三次元赤外線画像を作成する。次に、低い温度状態で撮影した画像と、高い温度状態で撮影した画像と比較して赤外線温度差画像を作成し、これと前記三次元写真画像とを合成して合成三次元写真画像を作成する。この画像から劣化部分を診断し、劣化部分を表示した正面図および断面図を作成する。
特開2006−234383号公報
しかしながら、他分野の補修技術は、農業用水路特有の機能、すなわち水利的機能の確保や水理的機能および構造的機能の回復・向上などの目的に対して十分に検証されていない。また、農業用水路の変状には、破損、断面の変形、ひび割れ、土砂堆積、水苔、磨耗・洗掘、湧水などがある。この中で、磨耗現象については、構造物の通水表面の平滑性を著しく損ね、粗度係数を大きくするため、水理性能に悪影響を及ぼすと言われている。しかし、磨耗現象および水理性能の判定基準については明確になっておらず、効率的な補修を実施するためには診断技術の確立が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水利的機能の確保や水理的機能および構造的機能の回復・向上などの目的に対応した効率的な補修を実施するための表面性状評価方法およびコンクリート表面診断方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の表面性状評価方法は、物体表面の凹凸の程度を評価する表面性状評価方法であって、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となる物体表面の型取りを行なう工程と、前記型取り後の型取り材の表面形状を測定する工程と、前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程と、前記算出した評価指標値に基づいて、前記物体表面の性状を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
このように、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となる物体表面の型取りを行なうので、型取りを行なった型取り材を表面形状測定装置がある場所まで運び、測定を行なうことが可能となる。これにより、測定場所へ大掛かりな装置を設ける必要がなく、測定場所で簡易に表面のサンプルを採取することが可能となる。また、型取り後の型取り材の表面形状を測定し、その測定結果を用いて評価指標値を算出し、評価指標値に基づいて、物体表面の性状を推定するので、表面の性状変化の判定基準を明らかにすることができる。
(2)また、本発明のコンクリート表面診断方法は、コンクリート表面の劣化状態を診断するコンクリート表面診断方法であって、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となるコンクリート表面の型取りを行なう工程と、前記型取り後の型取り材の表面形状を測定する工程と、前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程と、前記算出した評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の劣化状態を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
このように、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となるコンクリート表面の型取りを行なうので、型取りを行なった型取り材を表面形状測定装置がある場所まで運び、測定を行なうことが可能となる。これにより、測定場所へ大掛かりな装置を設ける必要がなく、測定場所で簡易に表面のサンプルを採取することが可能となる。また、型取り後の型取り材の表面形状を測定し、その測定結果を用いて評価指標値を算出し、評価指標値に基づいて、コンクリート表面の劣化状態を推定するので、コンクリート表面の磨耗現象および水理性能の判定基準を明らかにすることができる。
(3)また、本発明のコンクリート表面診断方法において、前記コンクリート表面の劣化状態を推定する工程では、前記算出した評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の粗度係数を推定することを特徴としている。
このように、評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の粗度係数を推定するので、コンクリート表面の磨耗現象および水理性能の判定基準を明らかにすることができる。粗度係数は、河川や水路における水の流量・流速、断面積、勾配などの関係を示すマニングの公式において、水路の表面粗さを表す係数のことである。本発明者らは、評価指標値と粗度係数との間に相関関係があることを見出した。測定結果を用いて評価指標値を算出することにより、粗度係数を推定することができ、コンクリート表面の劣化状態を推定することが可能となる。
(4)また、本発明のコンクリート表面診断方法において、前記型取りした型取り材の表面形状を測定する工程では、前記型取り材表面と実質的に直交する方向の前記型取り材表面の変位を測定し、前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程では、前記型取り材表面と実質的に直交する方向の変位についての標準偏差、または算術平均粗さのいずれかを算出することを特徴としている。
このように、型取り材表面と実質的に直交する方向の前記型取り材表面の変位を測定するので、特別な測定装置を用意する必要はなく、既存の測定装置、例えば、レーザ変位計を用いて測定を行なうことができる。また、評価指標値として、型取り材表面と実質的に直交する方向の変位についての標準偏差、または算術平均粗さのいずれかを算出するので、簡易かつ客観的に評価指標値を算出することが可能となる。
本発明によれば、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となる物体表面、例えば、コンクリート表面の型取りを行なうので、型取りを行なった型取り材を表面形状測定装置がある場所まで運び、測定を行なうことが可能となる。これにより、測定場所へ大掛かりな装置を設ける必要がなく、測定場所で簡易に表面のサンプルを採取することが可能となる。また、型取り後の型取り材の表面形状を測定し、その測定結果を用いて評価指標値を算出し、評価指標値に基づいて、物体表面、例えば、コンクリート表面の劣化状態を推定するので、表面の磨耗現象および水理性能の判定基準を明らかにすることができる。本発明を、農業用水路に適用することにより、水路の通水性を評価し、補修の必要性を定量的に、かつ簡易に判断することができるので、効率的な水路維持管理を実現することが可能となる。
本発明者らは、従来、農業用水路の水利的機能の確保、水理的機能および構造的機能の回復・向上などについて十分に検証されていなかったことに着目し、型取り材を用いて通水面の凹凸の状況を写し取り、型取り後の型取り材の表面をレーザ変位計で測定し、測定データを解析し、性能指標値から水路の粗度係数を求め、求めた粗度係数と計画粗度係数とを比較して、水路の通水性を評価することによって、簡易に水路通水面の劣化程度を測定し、補修の必要性の有無を判断することができることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、コンクリート表面の劣化状態を診断するコンクリート表面診断方法であって、塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する型取り材を用いて、評価対象となるコンクリート表面の型取りを行なう工程と、前記型取り後の型取り材の表面形状を測定する工程と、前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程と、前記算出した評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の劣化状態を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
これにより、本発明者らは、測定場所へ大掛かりな装置を設けることなく、測定場所で簡易に表面のサンプルを採取することを可能とした。また、型取り後の型取り材の表面形状を測定し、その測定結果を用いて評価指標値を算出し、評価指標値に基づいて、コンクリート表面の劣化状態を推定することにより、コンクリート表面の磨耗現象および水理性能の判定基準を明らかにすることを可能とした。以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態では、農業用水路の磨耗現象診断方法および磨耗現象が水理機能に及ぼす影響を調べる方法の確立に向けた基礎的検討として、農業用水路内面の表面形状を簡易的に測定する方法および農業用水路内面の表面形状と粗度係数の関係について説明する。
[水路表面の形状測定方法]
水路の表面形状を測定する方法としては、対象物の形状を機器等により直接測定する方法と、対象物の形状を一旦試料に写し取り(型取り)、試料の形状を機器等により測定する方法の2種類に大別される。本実施形態では、実施者が特別な技術を要したり、特別な装置を用意したりすることなく測定できること、および既存の機器を使用することを想定した。このため、測定対象物の表面形状を一旦試料に写し取った後に、その形状を解析する手法を採用した。
測定対象物の表面形状測定に用いる型取り材(試料)に必要な性質は表1に示す通りである。具体的には粘土、石膏、シリコーン、パラフィンなどが挙げられる。本実施形態では、(a)入手の容易さ、(b)現場での作業のしやすさ、(c)取扱いの安全性を考慮して、「粘土」を使用した。なお、粘土を用いる場合、硬化性に劣るため運搬中の物理的な衝撃により変形しやすいという不都合が想定される。このため、運搬時に、試料をタッパーウェアなどの蓋を固定できる容器の底部に、試料の型取り面を上にして収納し、試料の周囲と容器の間の隙間を余剰の粘土で埋めて試料を固定するのが望ましい。このとき、試料の周囲の上面にスペーサーを置き、スペーサーの上に中蓋を置いて試料の型取り面の上に空間を確保して、中蓋を固定するようにすればさらに望ましい。さらに、試料の型取り面にラッカーなどの樹脂を噴霧して型取り面の補強を行っても良い。ただし、樹脂を噴霧し過ぎると表面の凹凸が小さくなり、後工程での測定に人為的な誤差を生じさせるので、注意を要する。
Figure 0004891858
また、粘土には、表2に示すような数種類があるが、本実施形態では、「油粘土」を使用した。ただし、本発明は、油粘土に限定されるわけではない。
Figure 0004891858
試料の表面形状測定には、既存の表面形状測定装置(レーザ変位計)を使用した。なお、測定はX軸方向およびY軸方向ともに0.5mm間隔で行ない、データの解析においては粘土端部の形状が変形しやすいことを考慮して中心部分(5cm×5cm)を対象とした。
[測定の手順]
表面形状の測定は次の手順で行なった。
手順1:測定対象物に直径10〜12cm程度の粘土を貼り付け、表面形状を写し取る。
手順2:対象物の表面形状を写し取った粘土を運搬し、レーザ変位計により数値化する。
手順3:測定データより粘土端部のデータを除去し、後述する方法により評価指標値を算出する。
[測定対象物]
本実施形態では、コンクリート等の表面形状を測定する方法および測定結果から測定対象物の劣化状況を明らかにできるかどうかを検討することを目的としている。このため、既存の5種類(6試料)の材料を対象とした(表3参照)。なお、コンクリートに関しては、2種類のコンクリート供試体を対象とした。
Figure 0004891858
[測定結果の評価方法]
測定対象物の表面性状を評価するために、レーザ変位計で測定したデータを、評価指標値に変換する。本実施形態では、表面性状の評価指標値として、データの標準偏差、凹凸曲線長さ、および固体の表面性状評価における代表的なパラメータである算術平均粗さの3種類を適用した。また、算出した評価指標値を粗度係数の文献値と比較し、それぞれの適用性を評価した。ここで、「粗度係数」とは、河川や水路における水の流量・流速、断面積、勾配などの関係を示すマニングの公式において、水路の表面粗さを表す係数のことである。粗度係数は、値が大きいほど表面が粗いことを示す数値である。
[評価指標値の算出方法]
(1)標準偏差による評価
(社)日本道路協会の「舗装試験法便覧」に規定されている舗装路面の平坦性測定方法を参考に、レーザ変位計で測定した全データの標準偏差を求め、評価指標値とした。
(2)凹凸曲線長さによる評価
凹凸曲線長さによる評価指標値の基本的な概念を図1に示す。凹凸曲線長さによる評価では、レーザ変位計による測定データより求めた測定対象物表面の凹凸曲線長さ(図中L)の測定基準長さ(図中Ls)に対する比(L/Ls)を評価指標値とした。以下に算出手順を示す。
手順1:X軸およびY軸のそれぞれについて凹凸曲線長さの和を三平方の定理を用いて求める。すなわち、凹凸曲線長さLxおよびLyを算出する。
手順2:各軸の凹凸曲線長さLxおよびLyの各測定基準長さ(LxsおよびLys)に対する比を求める。すなわち、Lx/LxsおよびLy/Lysを算出する。
手順3:Lx/LxsとLy/Lysの平均値を求め評価指標値とする。
(3)算術平均粗さによる評価
算術平均粗さの算定式を数式1に、概念図を図2に示す。算術平均粗さとは、物質の表面性状評価における代表的なパラメータのことである。本実施形態では、全測定結果の平均値と各測定結果の偏差の絶対値を合計し、測定長さ(走査距離)で除した値を評価指標値とした。
Figure 0004891858
[マニングの公式と測定対象物の粗度係数文献値]
マニングの公式を数式2および数式3に、測定対象物の粗度係数文献値を表4に示す。本実施形態では、上記の手法によって算出した評価指標値と文献に記載されている粗度係数の値を比較し、農業用水路の表面形状から農業用水路の水理機能を予測することができるかどうかを検討した。
Figure 0004891858

Figure 0004891858

ここで、
n:粗度係数
R:径深〔m〕
I:動水勾配(等流のときは水路の縦断勾配と一致)
A:通水断面積〔m
P:潤辺〔m〕
とする。
Figure 0004891858
[測定結果]
上記の油粘土を用いて、測定対象物の表面形状の型取りを行なった。また、レーザ変位計によって、型取りを行なった油粘土の表面形状を測定した。
[表面形状の評価]
測定対象物の評価指標値の算定結果を表5に、各測定指標値と粗度係数の関係を図3および図4にそれぞれ示す。図3に示すように、評価指標値として標準偏差を用いた場合、標準偏差が大きくなると粗度係数も大きくなり、両者に相関関係があることが認められる。また、図4に示すように、評価指標値として算術平均粗さを用いた場合、算術平均粗さが大きくなると粗度係数も大きくなり、両者に相関関係があることが認められる。従って、これらの評価指標値を用いることによって、粗度係数の推定が可能となり、水路等の磨耗状況を評価することができる。さらに、推定した粗度係数と前述のマニングの公式から現状の水理的特性(流速、流量や水位などの関係)を推定することが可能である。その結果、水理的機能や水利的機能を考慮して、農業用水路の補修の要否を判断することができる。農業用水路の補修の要否判断については、例えば、農業用水路の設計流量・設計水位などの当初計画に基づき、水利的状況に応じて粗度係数の値に閾値を設定することにより行なうことが可能である。なお、凹凸曲線長さについては、標準偏差および算術平均粗さのような粗度係数との相関は認められなかったため、ここでは記載していない。
Figure 0004891858
以上説明したように、本実施形態によれば、油粘土を用いて、評価対象となる物体表面、例えば、コンクリート表面の型取りを行なうので、型取りを行なった粘土を表面形状測定装置がある場所まで運び、測定を行なうことが可能となる。これにより、測定場所へ大掛かりな装置を設ける必要がなく、測定場所で簡易に表面のサンプルを採取することが可能となる。また、型取りした粘土の表面形状を測定し、その測定結果を用いて評価指標値を算出し、評価指標値に基づいて、物体表面、例えば、コンクリート表面の劣化状態を推定するので、表面の磨耗現象および水理性能の判定基準を明らかにすることができる。
凹凸曲線長さによる評価指標値の基本的な概念を示す図である。 算術平均粗さの概念を示す図である。 標準偏差と粗度係数との関係を示す図である。 算術平均粗さと粗度係数との関係を示す図である。
符号の説明
L 凹凸曲線長さ
測定基準長さ
l 測定長さ
y(n) 測定値

Claims (3)

  1. コンクリート表面の劣化状態を診断するコンクリート表面診断方法であって、
    塑性を有すると共に一定時間特定の形状を保持する油粘土を用いて、評価対象となるコンクリート表面の型取りを行なう工程と、
    前記型取り後の油粘土の表面に二次元座標で定義される複数の測定点を定め、変位計を用いて前記測定点の凹凸を測定する工程と、
    前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程と、
    前記算出した評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の劣化状態を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴とするコンクリート表面診断方法。
  2. 前記コンクリート表面の劣化状態を推定する工程では、前記算出した評価指標値に基づいて、前記コンクリート表面の粗度係数を推定することを特徴とする請求項1記載のコンクリート表面診断方法。
  3. 前記測定結果を用いて評価指標値を算出する工程では、前記測定点の凹凸についての標準偏差、または算術平均粗さのいずれかを算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンクリート表面診断方法。
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