JP2011043339A - 水路トンネルに作用する外力推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水路トンネルの内側の覆工コンクリートの応力状態、変形状態を高い精度で推定し、覆工コンクリートの寿命予測を高い精度で行う外力推定方法を提供する。
【解決手段】実測された実測線距離と、共役勾配法により算出される仮想測線距離との残差を評価関数により算出し、前記評価関数から算出される残差が最小となる仮想測線距離を満足する覆工コンクリートに作用する外力を算出し、寿命予測を行うことを特徴とする水路トンネルに作用する外力推定方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、水路トンネルの覆工コンクリートに作用する外力を推定する方法に関する発明であり、特に、水路トンネルの抜水点検時における内空変位測定の測定値を利用し、水路トンネルの内面に覆工されたコンクリートに作用する外力を高い精度で推定可能な方法に関する発明である。
従来、水路トンネルの覆工コンクリートに作用する外力を推定する方法としては、縮小模型を製作し、縮小模型の覆工コンクリートに作用する荷重及び覆工コンクリートに発生したひび割れパターンを実測することにより、実際の水路トンネルの覆工コンクリートの残存耐力を推定する方法があった。(非特許文献1)
しかし、上記推定方法にあっては、簡易に概略的な残留耐力を推定できるという利点を有するものの、実際に施行された水路トンネルの覆工コンクリートの形状、地山等の物性値とは異なることから、精度が高い残留耐力を推定することは困難であった。
また、水路トンネルの覆工コンクリートのひび割れが発生した箇所に、ひび割れを発生させる荷重分布を算出する既設トンネルの健全性診断方法が提案されている。(特許文献1)
しかし、上記健全性診断方法にあっては、ひび割れを発生する種々の荷重分布の中から実際の水路トンネルの覆工コンクリートに作用している荷重分布を選択するのは困難であった。また、上記健全性診断方法にあっては、ひび割れを発生している部位に作用する荷重分布を測定できるが、ひび割れを発生していない部位に作用している荷重分布については推定できず水路トンネルの覆工コンクリートの寿命予測を行うには限界があった。
特開2004−294261号
「こうえいフォーラム第9号」 日本工営出版、2001年1月
本発明が解決しようとする課題は、水路トンネルの内側に覆工されたコンクリート内の応力状態、覆工コンクリートの変形状態を高い精度で推定し、覆工コンクリートの寿命予測を的確に行うことにある。
[請求項1記載の発明]
水路トンネルの内面に覆工されたコンクリート及び水路トンネルの地山の初期物性値を実測または推定により設定し、
前記水路トンネルの内空変位を計測し、
前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出する解析モデルを作成し、
実測された実測線距離と、共役勾配法により算出される仮想測線距離との残差を評価関数とし、
前記評価関数から算出される残差が最小となる作用外力に基づき、前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出し、
算出された前記コンクリートの圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントと、コンクリートの許容圧縮荷重、許容せん断荷重、許容曲げモーメントを比較し、前記コンクリートの寿命予測を行う
ことを特徴とする水路トンネルに作用する外力推定方法。
[作用効果]
発明者の知見によれば、水路トンネルの内空変位を計測すれば、覆工コンクリートに発生した変形状態、すなわち歪み、たわみを精度良く推定できる。
本発明は、内空変位により実測された実測線距離と、仮想測線距離との残差を評価関数とし、前記評価関数の残差を最小とする仮想測線距離を満足する覆工コンクリートに作用する外力を共役勾配法、準ニュートン法により求めることにより、容易に実測できる内空変位を用い実際に覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを高い精度で推定することができる。
すなわち、前述した内空変位により、覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを計測することは論理的には可能である。しかし、内空変位により、覆工コンクリートの測定には、時間的、経済的、空間的な制限があることから、覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを実測することは現実的には困難である。
また、本発明にあっては、覆工コンクリートからコアを採取し、前記覆工コンクリートの初期物性値、すなわち弾性係数、断面二次モーメント、断面積、反発係数を実測し、それらの初期物性値に基づき共役勾配法、準ニュートン法を用いて前記評価関数を最小にする覆工コンクリートに作用する外力を推定し、実際に覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを高い精度で推定することができる。
本発明は、前述した評価関数により算出される残差を最小とする作用外力を解析モデルに代入し、覆工コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントを算出することから、覆工コンクリートの各箇所に作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントを高い精度で求めることができ、覆工コンクリートに使用されたコンクリートの許容圧縮荷重、許容せん断荷重、許容曲げモーメントを比較・検討し、覆工コンクリートの寿命予測を的確に行うことができる。
[請求項2記載の発明]
前記評価関数が、前記仮想測線距離と前記実測線距離との残差二乗和であり、共役勾配法、準ニュートン法により前記評価関数を最小にする請求項1記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
[作用効果]
請求項2記載の発明にあっては、評価関数が、仮想測線距離と実測線距離との残差二乗和からなる関数であり、共役勾配法、準ニュートン法により評価関数が最小となる覆工コンクリートに作用する外力を算出することからより高い精度で覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを推定できる。
[請求項3記載の発明]
複数の前記実測線距離がそれぞれ連続する測線である請求項1または2記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
[作用効果]
請求項3記載の発明にあっては、内空変位により実測された複数の実測線距離がそれぞれ連続し相互に関係を有し、各実測線距離が長いことからより高い精度で覆工コンクリートの各箇所に発生する歪み、たわみを推定できる。
[請求項4記載の発明]
前記解析モデルが、前記コンクリートを平面はり、前記水路トンネルの地山をばね支承モデルと近似し、前記平面はりの中間部と両連結とにそれぞれ対応する個別の解析モデルを作成する請求項1乃至3記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
[作用効果]
請求項4記載の発明にあっては、覆工コンクリートを平面はりに近似し、平面はりには作用する圧縮応力、せん断応力、曲げモーメントを算出することから覆工コンクリートの寿命予測を的確に行うことができる。
また、水路トンネルの地山を2方向のばね支承モデルに近似し、垂直応力、水平応力を算出することから水路トンネルの地山から覆工コンクリートに作用する垂直応力、水平応力を的確に把握することができる。
本発明は、水路トンネルの内側の覆工コンクリート内の応力状態、変形状態を高い精度で推定し、覆工コンクリートの寿命予測を高い精度で行うことができる。
本発明の実施形態を説明するフローチャートである。 覆工コンクリートに作用する外力の推定方法を説明する模式図である。 覆工コンクリートを平面はりに近似した模式図である。 水路トンネルの地山を支承ばねに近似した模式図である。 測線距離の模式図である。 断面1の実施結果である。 断面2の実施結果である。
以下、図面に基づいて、本発明の水路トンネルに作用する外力推定方法の実施形態について説明する。
水路トンネルに作用する外力推定方法は、図1のフローチャートに示す、水路トンネルの内面に覆工されたコンクリートからコアを採取し、前記コンクリートに作用する初期物性値を実測により、または推定により定める工程1と、前記水路トンネルのコンクリートに生じた変形による内空変位を実測する工程2と、前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出する解析モデルを作成する工程3と、実測された実測線距離と、前記評価関数との残差を最小にする覆工コンクリートに作用する外力を共役勾配法、準ニュートン法により算出する工程4と、前記評価関数から算出される残差が最小となる推定外力作用時の前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出する工程5と、算出された前記コンクリートの圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントと、コンクリートの許容圧縮荷重、許容せん断荷重、許容曲げモーメントを比較し、前記コンクリートの寿命予測を行う工程6を有する。
なお、図1のフローチャートには、前述した工程1、工程2、工程3の順番に記載しているが、工程1〜工程3の順番は任意の順番で行うことができる。
[工程1:初期物性値の実測]
工程1の初期物性値とは、覆工コンクリートの弾性係数(E)、断面二次モーメント(I)、断面積(A)、水路トンネルの地山2の法線方向反発係数(kx)、せん断方向反発係数(ky)をいう。
覆工コンクリートの弾性係数(E)、断面二次モーメント(I)、断面積(A)は、後述する覆工コンクリートの解析モデルに用いる係数であり、弾性係数は、ボーリングコアから求める他、超音波端子法等の非破壊調査結果から現地でも推定でき、断面2次モーメント、断面積は施工図面から算出できる。
また、水路トンネル1の地山2の法線方向反発係数(kx)、せん断方向反発係数(ky)は、後述する水路トンネルの地山2の解析モデルに用いる係数であり、法線方向反発係数、せん断方向反発係数は、水路トンネル施行時に行うボーリング調査等の調査結果から推定できる。
[工程2:内空変位の実測]
覆工コンクリート4の内空変位を実測する。
一般的な内空変位を実測にあっては、覆工コンクリート4のスプリングライン(SL)を測定するが、スプリングライン(SL)は比較的短く測定誤差の影響を受けやすいことから、本実施形態にあっては、図2に示すとおり覆工コンクリート4の左右対称位置で、且つ、それぞれの測定箇所が連続する実測線距離(ML1〜ML4)を測定した。
実測線距離(ML1)と実測線距離(ML4)、実測線距離(ML4)と実測線距離(ML3)、実測線距離(ML3)と実測線距離(ML2)が、それぞれ連続していることから測定箇所相互の関係が評価関数(J(p))に反映できる点で好適である。
[工程3:解析モデルの作成]
本実施形態の図2に示した例にあっては、覆工コンクリート4と水路トンネル1の地山2との間には隙間がなく一体物と近似し、また、水路トンネル1の地山2から覆工コンクリート4に作用する外力は、図2に示すとおり覆工コンクリート4の左下部に荷重P1、左上部に荷重P2、右上部に荷重P3、右下部に荷重P4と設定した。
解析モデルについては、荷重は任意の数に近似することが可能であり、覆工コンクリート4にひび割れが生じている場合、ひび割れ位置にジョイント要素を用いることで、適切な解析モデルを作成することができる。
また、解析モデルには特に制約条件はなく、外力推定を行うトンネル断面の状態に合わせた任意の形状、拘束条件で作成でき、特殊な種々の条件に合わせ任意に設定することができる。
本実施形態にあっては、図3に示すとおり、覆工コンクリート4を平面はりと近似し、平面はりに作用する圧縮荷重(Na、Nb)、せん断荷重(Qa、Qb)、曲げモーメント(Ma、Mb)と歪み(μa、μb)、たわみ(νa、νb)、たわみ角(θa、θb)との関係を数1の近似式で算出し、平面はりのa端点を数2の近似式で算出し、平面はりのb端点を数3の近似式で算出する。
なお、数1〜数3の近似式中のEは覆工コンクリート4の弾性係数[tf/m2]、Iは覆工コンクリート4の断面二次モーメント[m4]、Aは覆工コンクリート4の縦断面積[m2]、lは平面はりの長さ[m]、wは平面はりに作用する荷重[tf]である。なお、wはそれぞれの部位における荷重P1〜P4と同値である。
Figure 2011043339
Figure 2011043339
Figure 2011043339
本実施形態にあっては、図4に示すとおり、水路トンネル1の地山2を2方向のばね支承モデルに近似し、垂直荷重(Xa、Xb)、水平荷重(Ya、Yb)と歪み(μa、μb)、たわみ(νa、νb)との関係を数4の近似式で算出する。
なお、kxは法線方向反発係数、kyはせん断方向反発係数である。
Figure 2011043339
[工程4:評価関数]
本実施形態にあっては、図5に内空変位の実測で得られた実測線距離(l*)と、外力(p)の関数から算出される仮想測線距離(l)の残差の二乗和からなる数5、数6で示す評価関数(J(p))が最小となる、すなわち、内空変位の実測で得られた実測線距離(l*)と仮想測線距離(l)の残差の二乗和が最小となるような外力(p)を共役勾配法、準ニュートン法を用いて求める。
そして、算出された外力(p)を解析モデルに代入し、歪み(μa、μb)、たわみ(νa、νb)を前述した数1〜数4に代入して覆工コンクリート4に作用する圧縮荷重(Na、Nb)、せん断荷重(Qa、Qb)、曲げモーメント(Ma、Mb)、水路トンネル1の地山2に作用する垂直荷重(Xa、Xb)、水平荷重(Ya、Yb)を算出する。
なお、数1〜数3のたわみ角(θa、θb)は、たわみ(νa、νb)を微分することにより得られる。
Figure 2011043339
Figure 2011043339
本実施形態において数5、数6で示す評価関数(J(p))が最小となるような外力(p)をFletcher-Reevees法により求める場合に必要となる感度方程式は数7に示したとおりになる。
なお、数7のKは覆工コンクリート4の剛性マトリックス、Γは覆工コンクリート4に作用する合成力である。
Figure 2011043339
本実施形態にあっては、前述した数6で示される評価関数(J(p))の最小値を求めるアルゴリズムとして共役勾配法の一種であるFletcher-Reevees法とBFGS公式による準ニュートン法を使用した。
Fletcher-Reevees法を用いる際の評価関数の勾配は数8のようになる。また、繰り返し計算のステップ幅の初期値は数9のようになり、2回目以降のステップ(β)は数10であり、評価関数(J(p)が任意に定めた収束判定定数εJ以下になるまで繰り返し計算を行う。
なお、Fletcher-Reevees法を用いた場合にあっては、他の方法に比較し上述した勾配、感度方程式の計算が容易であることから、繰り返し計算のに係る時間が短くすることができる。
Figure 2011043339
Figure 2011043339
Figure 2011043339
[工程5:覆工コンクリートの外力算出]
前述した方法によって、評価関数(J(p))が最小値を示す、すなわち、評価関数(J(p))の計算値が収束判定定数εJ以下となる外力(p)の値を、数1〜数4に代入し、覆工コンクリート4に作用する圧縮荷重(Na、Nb)、せん断荷重(Qa、Qb)、曲げモーメント(Ma、Mb)及び水路トンネル1の地山2に作用する垂直荷重(Xa、Xb)、水平荷重(Ya、Yb)を算出する。
[工程6:覆工コンクリートの寿命予測]
算出された覆工コンクリート4に作用する圧縮荷重(Na、Nb)、せん断荷重(Qa、Qb)、曲げモーメント(Ma、Mb)と覆工コンクリート4に用いられた材料の許容圧縮荷重、許容せん断荷重、許容曲げモーメントを対比し寿命予測、あるいは次回の点検時期を定める。
本発明の水路トンネルに作用する外力推定方法を用い、内空高さ2.24m、コンクリート厚さ50cmの無圧水路トンネルの寿命予測を行った。
表1にコンクリート、水路トンネルの地山の初期条件を示す、表1の数値は1年前にコンクリート、水路トンネルの地山を実測した値である。
Figure 2011043339
水路トンネルの断面1、2について、図6,7に示すとおり内空変位で測線1〜測線4を計測した。
次に、コンクリートに作用する外力をP1〜P4の分布荷重と推定し、繰り返し計算によって求めた評価関数(J(p))が最小となる作用外力による測線の計算値と、測線の実測による測定値を表2に、断面1のコンクリートに作用する分布荷重及びコンクリートの変位を図6に、断面2のコンクリートに作用する分布荷重及びコンクリートの変位を図7に示す。
Figure 2011043339
表2から明らかなように、本発明の評価関数(J(p))により繰返し計算を行うことにより、内空変位の各測線の測定値と、評価関数(J(p))を最小とする計算から得られる各測線の計算値とが最大差異9.62×10-7mmとなり、各測線の測定値を極めて近似する作用外力を求められることが判った。
また、図6,7のコンクリートに作用する外力、コンクリートの変位を経過観察することにより水路トンネルの内側の覆工コンクリートの寿命予測が可能であることが判った。
本発明は、道路トンネル、鉄道トンネル、電力系の水路トンネルの内側の覆工コンクリートに作用する応力状態、変形状態を高い精度で推定し、覆工コンクリートの寿命予測に利用できる。
1…水路トンネル
2…地山
3…覆工コンクリート
4…測線

Claims (4)

  1. 水路トンネルの内面に覆工されたコンクリート及び水路トンネルの地山の初期物性値を実測または推定により設定し、
    前記水路トンネルの内空変位を計測し、
    前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出する解析モデルを作成し、
    実測された実測線距離と、共役勾配法により算出される仮想測線距離との残差を評価関数とし、
    前記評価関数から算出される残差が最小となる作用外力に基づき、前記コンクリートに作用する圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントの値を算出し、
    算出された前記コンクリートの圧縮荷重、せん断荷重、曲げモーメントと、コンクリートの許容圧縮荷重、許容せん断荷重、許容曲げモーメントを比較し、前記コンクリートの寿命予測を行う
    ことを特徴とする水路トンネルに作用する外力推定方法。
  2. 前記評価関数が、前記仮想測線距離と前記実測線距離との二乗和であり、共役勾配法、準ニュートン法により前記評価関数を最小にする請求項1記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
  3. 複数の前記実測線距離がそれぞれ連続する測線である請求項1または2記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
  4. 前記解析モデルが、前記コンクリートを平面はり、前記水路トンネルの地山をばね支承モデルと近似した請求項1乃至3記載の水路トンネルに作用する外力推定方法。
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