[0015] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射または何らかの他の適当な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、あるパラメータに正確に従ってパターニングデバイスを位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたパターニングデバイスサポートまたはサポート構造(例えばマスクテーブル)MTとを含む。この装置は、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、あるパラメータに正確に従って基板を位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTまたは「基板サポート」も含む。この装置は、基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数ダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば屈折性の投影レンズシステム)PSも含む。
[0016] この照明システムは、放射を導くか、形作るか、または制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気など様々なタイプの光学コンポーネント、または他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組合せを含んでよい。
[0017] パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および、例えばパターニングデバイスが真空環境中で保持されるかどうかなど他の条件に左右される形でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気、または他のクランプ技法を用いることができる。パターニングデバイスサポートは、例えばフレームまたはテーブルでよく、必要に応じて固定式または可動式でよい。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスが、例えば投影システムに対して確実に所望位置にあるようにすることができる。本明細書における用語「レチクル」または「マスク」のどんな使用も、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義と見なされ得る。
[0018] 本明細書に使用される用語「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分内にパターンを作成するように、放射ビームにその断面内にパターンを与えるために使用することができるあらゆるデバイスを指すものと広義に解釈されたい。例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含むと、放射ビームに与えられたパターンが、基板のターゲット部分内の所望のパターンと正確に一致しない可能性があることに留意されたい。一般に、放射ビームに与えられたパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイス内の特定の機能の層に対応するはずである。
[0019] パターニングデバイスは透過性または反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、マスクタイプとして、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのほかに様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、入ってくる放射ビームを様々な方向に反射するように個々に傾斜させることができる小さなミラーのマトリクス配置を使用する。傾けられたミラーが、ミラーマトリクスによって反射される放射ビーム内にパターンを与える。
[0020] 本明細書に使用される用語「投影システム」は、屈折システム、反射システム、反射屈折システム、磁気システム、電磁気システム、および静電気光学システムあるいはそれらの任意の組合せを含むあらゆるタイプの投影システムを包含し、使用される露光放射あるいは液浸液の使用または真空の使用など他の要因に適切なものとして、広義に解釈されたい。本明細書における用語「投影レンズ」のどんな使用も、より一般的な用語「投影システム」と同義と見なされてよい。
[0021] ここで記述されるように、装置は透過タイプ(例えば透過性マスクを使用するタイプ)である。あるいは、装置は反射タイプ(例えば上記で言及されたプログラマブルミラーアレイを使用するタイプまたは反射性マスクを使用するタイプ)でよい。
[0022] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)またはそれ以上の基板テーブルまたは「基板サポート」(および/または複数のマスクテーブルまたは「マスクサポート」)を有するタイプでよい。そのような「マルチステージ」マシンでは、追加のテーブルまたはサポートが並行して使用され得るか、あるいは1つまたは複数のテーブルまたはサポートが露光に使用されている間に、1つまたは複数の他のテーブルまたはサポート上で準備ステップが行われ得る。
[0023] リソグラフィ装置は、投影システムと基板の間のスペースを充填するように、基板の少なくとも一部分が比較的高屈折率を有する液体、例えば水によって包まれ得るタイプでもよい。リソグラフィ装置内の他のスペース、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)と投影システムとの間にも液浸液が適用されてよい。投影システムの開口数を増加させるために液浸技術を用いることができる。本明細書に使用される用語「液浸」は、液体に基板などの構造体を沈めなければならないことを意味するのではなく、むしろ、露光の間投影システムと基板の間に液体が配置されることを意味するだけである。
[0024] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えばこの放射源がエキシマレーザであるとき、放射源とリソグラフィ装置は別個の実体でよい。そのような例では、放射源がリソグラフィ装置の一部を形成するとは見なされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILまで、例えば適当な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを用いて通される。他の例では、例えば放射源が水銀灯であるとき、放射源はリソグラフィ装置の一体型部品でよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDも一緒に、放射システムと呼ばれてよい。
[0025] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含んでよい。一般に、少なくともイルミネータの瞳面内輝度分布の外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)は調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなど様々な他のコンポーネントを含んでよい。イルミネータは、放射ビームがその横断面内の所望の均一性および輝度分布を有するように調節するのに使用されてよい。
[0026] 放射ビームBは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MT上に保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを横切って、基板Wのターゲット部分C上にビームを集中させる投影システムPSを通過する。基板テーブルWTは、第2の位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路内へ個別のターゲット部分Cを位置決めするように正確に移動させることができる。同様に、第1の位置決めデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリからの機械的検索の後、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めするのに使用することができる。一般に、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTの動作は、第1の位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の動作は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合には(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTがショートストロークアクチュエータのみに接続されてよく、あるいは固定されてよい。パターニングデバイス(例えばマスク)MAおよび基板Wは、パターニングデバイスのアライメントマークM1、M2および基板のアライメントマークP1、P2を使用して整列させることができる。図示された基板アライメントマーク(スクライブラインアライメントマークとして既知である)は専用ターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MA上に複数のダイが与えられる状況では、マスクアライメントマークはダイ間に配置されてよい。
[0027] 図示された装置は、以下のモードのうち少なくとも1つで使用され得る。
[0028] 1.ステップモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTならびに基板テーブルWTまたは「基板サポート」は基本的に静止状態に保たれ、一方、放射ビームに与えられたパターン全体がターゲット部分C上に一度に投影される(すなわち単一静的露光)。次いで、別のターゲット部分Cが露光され得るように、基板テーブルWTまたは「基板サポート」がXおよび/またはY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大寸法が、単一静的露光で結像されたターゲット部分Cの寸法を制限する。
[0029] 2.スキャンモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTと基板テーブルWTまたは「基板サポート」が同期してスキャンされ、一方、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される(すなわち単一動的露光)。パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTまたは「基板サポート」の速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性および像反転特性によって決定され得る。スキャンモードでは、露光フィールドの最大寸法が単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限するのに対して、スキャン運動の長さがターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
[0030] 3.別のモードでは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に保たれ、基板テーブルWTまたは「基板サポート」が移動またはスキャンされ、その一方で放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される。このモードでは、一般にパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の各動作後に、またはスキャン中連続した放射パルスの間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上記で言及されたタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
[0031] 前述の使用モードまたは全く異なった使用モードの組合せおよび/または変形形態も用いられてよい。
[0032] 一般に、制振システム(広義には「ダンパ」とも称される)は、投影システムまたはその部品の振動を制振するために設けられる。それに対して、多くの形式で知られている制振システムを設けることができる。制振システムは、投影システムの少なくとも一部分の振動を吸収するためのインターフェース制振マス、ならびにインターフェース制振マスの少なくとも一部分の振動を制振するためのアクティブ制振サブシステムを含んでよい。インターフェース制振マスは、一般に投影システムに接続される。本明細書では、アクティブ制振システムという用語は、振動の影響を検出するためのセンサ(例えば位置センサ、速度センサ、加速度センサなど)ならびに制振されるべき構造体またはその一部分に作用するアクチュエータを含み、アクチュエータが、センサによって供給される信号によって、例えばコントローラによって駆動される制振システムとして理解されたい。センサによって供給された信号によってアクチュエータを駆動することにより、投影システムおよび/またはそれに接続されたインターフェース制振マスに対する振動の影響が、ある程度まで低減され、あるいは相殺され得る。そのようなアクティブ制振システムの一実施例をフィードバックループによって与えることができ、センサは、インターフェース制振マスまたはその一部分の位置、速度、加速度、ジャークなどの位置量を供給し、コントローラは、位置量を与えられ、かつコントローラ出力信号を生成してアクチュエータを駆動し、その結果として、アクチュエータがインターフェース制振マスまたはその一部分に作用し、その結果フィードバックループがもたらされる。コントローラは任意のタイプのコントローラによって形成されてよく、また、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または任意の他のプログラマブルデバイスによって実行されるソフトウェアで実施されてよく、あるいは専用ハードウェアによって実施されてよい。
[0033] アクチュエータは、アクティブ制振サブシステムの反作用マスとインターフェース制振マスとの間に接続されてよい。リソグラフィ装置の基部フレームなど任意の他の反作用物体または他の基準も、アクチュエータがその対向力を作用させるのに使用されてよいことが注目される。アクチュエータは、圧電式電動アクチュエータ、モータなど、任意の適当なタイプのアクチュエータを含んでよい。好ましくは、ローレンツアクチュエータなどの電磁アクチュエータを使用することにより、ローレンツアクチュエータが反作用マスおよびインターフェース制振マスのそれぞれに接続されたそれぞれの部品に対して非接触で力を与えることができるので、反作用マスとインターフェース制振マスとの間に機械的接触のない非接触のアクチュエータを設けることができる。反作用マスは通常インターフェース制振マスに対して低周波数結合される。
[0034] アクチュエータによって生成され、インターフェース制振マスを介して投影システムに実際に作用する力は、インターフェース制振マスに対する反作用マスの低周波数結合によって影響され、これは反作用マスが振動し始める反作用マスの共振周波数によって特徴づけられる。共振周波数を上回る周波数でのみ力を加えることができるが、その理由は、共振周波数未満の周波数については、反作用マスが、インターフェース制振マスを介して投影システムに実際に作用する力を生成するのでなく動くからである。
[0035] 共振周波数では反作用マスが振動し始め、それによって投影システムに対して減衰されていない力をもたらし、また、反作用マスが振動しているので、その必要とされる運動は比較的大きい。これを回避するために、次の2つの対策を取ることができる。(1)固有振動数の励振を回避するためにフィードバックループがハイパスフィルタを含む、および(2)共振周波数を十分に高く保ち、その結果反作用マスの運動範囲を限定する。しかし、どちらの対策にも、制振システムが投影システムを制振することができる最低周波数が比較的高く、したがって内部共振を防止する帯域幅が制限されるという影響がある。アクティブ制振システムが高帯域幅であれば、そのような高帯域幅内で振動を抑制することが可能になるので、アクティブ制振システムは高帯域幅であることが望ましい。
[0036] 図2は、本発明の一実施形態による制振システム(広義には「ダンパ」とも称される)を含む投影組立体PAの概略図を示す。投影組立体PAは投影システムPSを含み、PSは、基板(図示せず。例えば図1を参照されたい)のターゲット部分上にパターン付き放射ビームを投影するように構成される。投影システムPSは、例えば剛体の台、弾性のある台などを含む任意の適当なデバイスによってメトロロジーフレーム内に保持されてよい。投影組立体PAは、インターフェース制振マスIDMも含み、IDMは、任意の対象物、好ましくは剛体のマスおよびアクティブ制振サブシステムも含んでよい。インターフェース制振マスIDMは投影システムPSに接続され、センサおよびアクチュエータなどアクティブ制振サブシステムの部品は、インターフェース制振マスIDMに接続され得る。
[0037] 投影システムPSの振動は、インターフェース制振マスIDMの振動をもたらす。インターフェース制振マスIDMのそのような振動はアクティブ制振サブシステムのセンサSENSによって検知されるが、SENSは、位置測定センサ、速度測定センサ、加速度測定センサなど任意のタイプの振動センサを含んでよい。インターフェース制振マスIDMに作用する、アクティブ制振サブシステムの電磁アクチュエータACTが設けられる。この実施形態では、アクチュエータは、アクティブ制振サブシステムの反作用マスRMとインターフェース制振マスIDMとの間に接続される。好ましくは、ローレンツアクチュエータを使用することにより、ローレンツアクチュエータが反作用マスRMおよびインターフェース制振マスIDMのそれぞれに接続されたそれぞれの部品に対して非接触で力を与えることができるので、反作用マスRMとインターフェース制振マスIDMとの間に機械的接触のない非接触のアクチュエータを設けることができる。しかし、鉄心アクチュエータまたは磁気抵抗アクチュエータなど他の電磁アクチュエータも使用することができる。
[0038] アクチュエータACTは、センサSENSによって供給される信号によって(例えば適当な制御システムCSを用いて)駆動される。制御システムすなわちコントローラCSは、コントローラCONTを含み、センサSENSの出力信号がコントローラCONTに入力信号をもたらす。コントローラCONTは、コントローラ出力信号を生成して電源PWRに入力信号を供給する。電源PWRは、コントローラ出力信号に基づいて駆動信号を供給してアクチュエータACTを駆動する。その結果として、アクチュエータACTがインターフェース制振マスIDMまたはその一部分に対して力Fを作用させ、その結果フィードバックループFLがもたらされる。コントローラCONTは任意のタイプのコントローラによって形成されてよく、また、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または任意の他のプログラマブルデバイスによって実行されるソフトウェアで実施されてよく、あるいは専用ハードウェアによって実施されてよい。
[0039] アクチュエータACTからセンサSENSに対して観測される周波数挙動は、インターフェース制振マスIDMによって支配される。少なくともアクティブ制振システムの周波数帯域内ではインターフェース制振マスIDMが剛体マスを形成することが好ましく、そのことによって、センサSENSおよびアクチュエータACTは、実質的に剛体マスに相当する伝達関数を結果的に観測することになる。効果的には、センサSENSおよびアクチュエータACTから見たとき、投影システムPSの共振挙動が、一方ではセンサSENSとアクチュエータACTとの間に効果的に介在し他方ではセンサSENSと投影システムPSとの間に効果的に介在するインターフェース制振マスIDMの存在によって効果的にマスクされる。結果として、その周波数での伝達関数の位相は、より不変の挙動を示すことになり、それによってセンサSENSおよびアクチュエータACTを含むアクティブ制振システムの安定した挙動を最大限に促進する。
[0040] インターフェース制振マスIDMは、例えば制振されたばねなどのばねを含む弾性のある接続を介して投影システムPSに接続されてよい。好ましくは、インターフェース制振マスIDMは投影システムPSに対して約1〜2kHzで結合される。それによって、投影システムPSの部品の振動および共振の効果的な減結合がもたらされ得る。
[0041] 透過性投影システムの実際的な実装形態では、インターフェース制振マスIDMは、投影システムPSの任意の関連する部品に接続されてよく、制振マスはレンズ台(すなわち投影システムPSの複数のレンズ素子用の台)に接続されてよい。反射性投影システムの場合には、インターフェース制振マスIDMは、例えば1つまたは複数のミラーを保持するフレームに接続されてよい。それによって、インターフェース制振マスをレンズ台またはフレームに接続すると(また、それによってアクティブ制振システムをレンズ台またはフレームに間接的に接続すると)、投影システムの、例えばレンズ素子、ミラーなど複数の構成部品に対して効果があるので(というのは、これら構成素子がすべて結果としてレンズ台または基準フレームに接続されるため)、投影システムPSおよびその構成部品は効果的に制振され得る。代替実施形態では、アクティブ制振サブシステムを投影システムに直接接続することも可能であり、それによってインターフェース制振マスの使用を排除する。システムにとって利用可能な空間がほとんどないとき、これは有益であり得る。
[0042] インターフェース制振マスIDMの質量は、好ましくは投影システムPSの質量の約0.001倍と約0.1倍との間に、より好ましくは投影システムPSの質量の0.001倍と0.01倍との間に選択され、それによって、インターフェース制振マスIDMの周波数が、アクティブ制振システムの所望の帯域幅の周波数範囲内に与えられ得るので、その結果、アクティブ制振システムの安定した閉ループ動作が促進される。
[0043] 反作用マスRMは、インターフェース制振マスIDMに対してばねを介して低周波数結合される。この低周波数結合は、反作用マスRMの共振周波数によって特徴づけられる。反作用マスRMの共振周波数より高い周波数では、アクチュエータACTを駆動するとき反作用マスRMは実質的に静止するようになり、したがって投影システムPSに対して力を作用させることが可能になる。
[0044] 図3は、反作用マスRMがどのようにインターフェース制振マスIDMに低周波数結合され得るかという実施例の概要を示す。反作用マスをインターフェース制振マスIDMに対して並進方向へ導くために、反作用マスRMとインターフェース制振マスIDMとの間に4つの板ばねLSが設けられる。並進方向は、アクチュエータACTが力Fを作用させる方向と実質的にほぼ同等である。板ばねLSの利益は、反作用マスRMに対して実質的に摩擦のないベアリングが与えられることである。板ばねLSと反作用マスRMの組合せは、並進方向に反作用マスRMの剛体共振周波数を規定する。その他の低周波数結合方式も可能である。
[0045] 図2で、制御システムCSは、第1の周波数範囲において実質的にアクチュエータACTの電圧制御をもたらし、かつ第2の周波数範囲において実質的にアクチュエータACTの電流制御をもたらすように構成され、第1の周波数範囲は反作用マスの共振周波数を含む。アクチュエータACTの電圧制御によって、インターフェース制振マスIDMに対する反作用マスRMの相対運動中にアクチュエータACTに誘起された逆起電力の電圧から制振電流を生成することができる。制振電流は、インターフェース制振マスIDMに対する反作用マスRMの運動を減衰し、それによって反作用マスRMの共振周波数を減衰する。結果として、コントローラCONTは、共振周波数の減衰のためにさらなるハイパスフィルタを含む必要がなく、あるいは現行のハイパスフィルタの遮断周波数を最低限に設定することができる。これに加えて、反作用マスRMの共振周波数を低下させることができる。ここで、制振システムが投影システムPSを制振することができる最低周波数を低下させることが可能になり、したがって制振システムの帯域幅を増大することができ、この帯域幅では、内部共振の防止と共に、ある程度まで振動の低減または相殺が可能である。
[0046] 好ましくは、第2の周波数範囲は第1の周波数範囲と重ならない。一実施形態では、第1の周波数範囲は0Hzから共振周波数を上回る周波数の範囲を含み、第2の周波数範囲は第1の周波数範囲に隣接する。このようにして、2つの制御タイプの間の移行域は1つだけとなる。好ましくは、少なくともアクチュエータACTの電気的時定数を上回る周波数範囲では電流制御が適用されるが、その理由は、電圧制御と比較して電流制御の方がこの周波数範囲での位相特性が優れているためである。
[0047] 図4は、本発明の別の実施形態による制振システム(広義には「ダンパ」とも称される)を含む投影組立体PA1を示す。投影組立体PA1は、投影システムPS1、インターフェース制振マスIDM1、および図2の実施形態に類似のアクティブ制振サブシステムを含む。インターフェース制振マスIDM1は投影システムPS1に接続され、アクティブ制振サブシステムの部品は、インターフェース制振マスIDM1に接続され得る。
[0048] 投影システムPS1の振動は、インターフェース制振マスIDM1の振動をもたらす。インターフェース制振マスIDM1のそのような振動はアクティブ制振サブシステムの第1のセンサSENS1によって検知されるが、SENS1は、位置測定センサ、速度測定センサ、加速度測定センサなど任意のタイプの振動センサを含んでよい。インターフェース制振マスIDM1に作用する、アクティブ制振サブシステムの電磁アクチュエータACT1が設けられる。この実施形態では、アクチュエータACT1は、アクティブ制振サブシステムの反作用マスRM1とインターフェース制振マスIDM1との間に接続される。好ましくは、アクチュエータACT1はローレンツアクチュエータである。
[0049] アクチュエータACT1は制御システムCS1によって駆動される。制御システムすなわちコントローラCS1はコントローラCONT1を含み、CONT1は、第1のセンサSENS1によって供給されたセンサ出力S1から基準信号VRを導出するように構成される。好ましくは、基準信号VRは、制御システムCS1がインターフェース制振マスIDM1に対して作用させようとする力F1についての測定値である。制御システムCS1は第1の制御ユニットすなわちコントローラCU1をさらに含み、CU1は、基準信号VRに基づいて第1の制御信号VP1を導出するように構成される。第1の制御信号VP1は、加算デバイスすなわち加算器ADに供給される。加算デバイスADの出力は電源PWR1に供給され、電源PWR1はアクチュエータACT1に駆動信号VDを印加するように構成される。その結果として、アクチュエータACT1がインターフェース制振マスIDM1に作用し、その結果第1のフィードバックループFL1がもたらされる。
[0050] 制御システムCS1は、インターフェース制振マスIDM1に加えられる実際の力F1についての測定値であってアクチュエータACT1を通って流れる電流I1を測定するために、第2のセンサSENS2をさらに含む。第2のセンサSENS2のセンサ出力S2は、好ましくは電流I1に比例する。制御システムCS1は、センサ出力S2を基準信号VRと比較し、かつセンサ出力S2と基準信号VRとの間の差に基づいて第2の制御信号VP2を導出するように構成された第2の制御ユニットすなわちコントローラCU2も含む。第2の制御信号VP2は、加算デバイスADに供給されて第1の制御信号VP1と組み合わされる。加算デバイスADの出力は電源PWR1に供給され、それによって、電源PWR1は第1の制御信号VP1と第2の制御信号VP2との組合せに基づいてアクチュエータACT1に駆動信号VDを供給し、その結果、第2のフィードバックループFL2がもたらされる。第2のフィードバックループFL2の目的は、基準信号VRによって表される所望の力に実質的に相当する実際の力F1を与えることである。
[0051] 駆動信号VDは、好ましくは電圧信号である。第2のフィードバックループFL2がない状態では、アクチュエータACT1は完全に電圧制御される。反作用マスRM1とインターフェース制振マスIDM1との間の相対運動が、アクチュエータACT1内の電圧を誘起し得る。第1のフィードバックループFL1が誘導電圧を補償しないことになるので、電圧制御によって、誘導電圧による制振電流が流れることができ、それによって反作用マスRM1とインターフェース制振マスIDM1との間の相対運動が減衰する。
[0052] 第2のフィードバックループFL2はアクチュエータACT1を通る電流I1を供給するように構成されるが、これは実質的に基準信号VRに対応する。したがって、アクチュエータACT1内の誘導電圧は、適切な第2の制御信号VP2を印加することにより第2のフィードバックループFL2によって主に補償されることになるが、VP2は第1の制御信号VP1と組み合わされて所望の電流I1をもたらすことになる。したがって、電流制御では、誘導電圧のために制振電流が流れることができず、したがって反作用マスRM1とインターフェース制振マスIDM1との間の相対運動は減衰されないことになる。
[0053] 原理的には、組み合わせたとき、電流制御が電圧制御を支配する。したがって、第2の制御ユニットCU2は、第1の周波数範囲では第2のフィードバックループFL2の影響が低減されるように構成され、その結果アクチュエータACT1は主として電圧制御される。したがって、この実施形態では、第2の制御ユニットCU2は、基準信号VRとセンサ出力S2との間の差をフィルタリングするためのハイパスフィルタ(図示せず)を含み、それによって、第1の周波数範囲において基準信号VRとセンサ出力S2との間の差を減衰する。
[0054] この実施形態の利益は、コントローラCONT1は、共振周波数の減衰のためにさらなるハイパスフィルタを含む必要がなく、あるいは現行のハイパスフィルタの遮断周波数を最低限に設定することができるように、第1の周波数範囲にある反作用マスRM1の共振周波数が減衰することである。これに加えて、反作用マスRM1の共振周波数を低下させることができる。ここで、制振システムが投影システムPS1を制振することができる最低周波数を低下させることが可能になり、したがって制振システムの帯域幅を増大することができ、この帯域幅では、内部共振の防止と共に、ある程度まで振動の低減または相殺が可能である。
[0055] 図5は、図4による制御システムすなわちコントローラCS1の部分の可能なハードウェア実装形態を示す。簡単にするために、類似部品は類似の参照数字を有する。ここで、アクチュエータACT1は、アクチュエータACT1のインダクタンスLAとアクチュエータACT1の抵抗RAとによる直列で表される。第2のセンサとして、SENS2は、アクチュエータACT1と直列に測定抵抗MRが与えられる。好ましくは、アクチュエータACT1のインピーダンスと比較して測定抵抗MRは小さいものであり、それによって、回路内に測定抵抗MRが存在することによる測定誤差を最小化する。アクチュエータACT1を通って流れる電流I1の大部分が、好ましくは電流I1のすべてが測定抵抗MRを通って流れることになり、それによって電流I1に実質的に比例するセンサ出力S2をもたらす。この場合、センサ出力S2は電圧である。
[0056] 第1の制御ユニットCU1は、この実施例では電圧である基準信号VR1を第1の制御信号VP1で表される電流に変換する抵抗R1を含む。
[0057] センサ出力VS2は、フィルタFILおよび抵抗R2を含む制御ユニットCU2によって基準電圧VRと比較される。この実施例では、フィルタFILは、抵抗、コンデンサ、およびインダクタなどのフィルタコンポーネントを有する演算増幅器であり、これらのフィルタコンポーネントは、話を簡単にするためにこの図には示されていない。第2の制御ユニットCU2は、ここでは抵抗R2を通る電流として第2の制御信号VP2をもたらす。当業者なら、演算増幅器を含むフィルタに十分に精通している。
[0058] 第1の制御信号VP1および第2の制御信号VP2は、点ADで組み合わされ、2つの電流の組合せは、電力演算増幅器AMおよび抵抗R3を含む電源PWR1に供給される。電源PWR1は、アクチュエータACT1を通って適正な電流I1が流れるように、この実施例では電圧である駆動信号VDをもたらす。
[0059] この実施例では、主要なコンポーネントは抵抗および演算増幅器であるが、トランジスタ、コンデンサ、インダクタ、およびマイクロコントローラなど、他のハードウェアコンポーネントも使用することができる。好ましくは、抵抗R2とR3は実質的に等しく、また、抵抗R1はR3をRAで割ったものと等しい。
[0060] フィルタFILは、好ましくは第1の周波数範囲で基準信号VRとセンサ出力S2との間の差をフィルタリングするためのハイパスフィルタであり、それによって、低周波数に関して基準信号VRとセンサ出力S2との間の差を減衰する。そのとき、電源PWR1の駆動信号VDは主として基準信号VRに基づく低周波数向けであり、そのとき、第1の周波数範囲における第2のフィードバックループFL2の影響が大幅に低減される。これは、第1の周波数範囲におけるアクチュエータの電圧制御をもたらす。
[0061] フィルタは、好ましくは第1の周波数範囲と隣接する第2の周波数範囲において、基準信号VRとセンサ出力S2との間の差を減衰しない、あるいは部分的にしか減衰しないことになる。そのとき、駆動信号VDは、主として第1の制御信号と第2の制御信号との組合せに基づくものとなり、それによってアクチュエータACT1を通る電流の制御が可能になる。そのとき、アクチュエータACT1は、第2の周波数範囲において主に電流制御される。
[0062] 前述のシステムは、投影システムの振動を減衰するためだけに限定されるものではないことが注目される。本発明の一実施形態による制振システムすなわちダンパは、メトロロジーフレーム、基部フレーム、または投影システムを含む任意の他の部品など、少なくともリソグラフィ装置の一部分の振動を減衰するのにも使用することができる。その場合、制振システムはリソグラフィ装置の少なくとも一部分に接続される。制振システムは、リソグラフィ装置の少なくとも一部分の位置量を測定するための第1のセンサ、リソグラフィ装置の少なくとも一部分に力を作用させるための電磁アクチュエータ、および第1のセンサによって供給された信号によって電磁アクチュエータを駆動するための制御システムの組合せを含む。制振システムは、第1のセンサによって供給された信号によって対向力を作用させるための、電磁アクチュエータに対する反作用マスをさらに含む。制御システムは、第1の周波数範囲において実質的に電磁アクチュエータの電圧制御をもたらし、かつ第2の周波数範囲において実質的に電磁アクチュエータの電流制御をもたらすように構成され、第1の周波数範囲は反作用マスの共振周波数を含む。
[0063] ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に対して本説明に特定の参照がなされてもよいが、本明細書に説明されたリソグラフィ装置が、磁気ドメインメモリ、平面パネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなど向けの集積光学システム、誘導パターンおよび検出パターンの製造など他の用途を有し得ることを理解されたい。熟練工なら、そのような代替用途の文脈では、本明細書における用語「ウェーハ」または「ダイ」のどんな使用も、それぞれ、より一般的な用語「基板」または「ターゲット部分」と同義なものと見なしてよいことを理解するはずである。本明細書で言及する基板は、露光前または露光後に、例えばトラック(一般に基板にレジストの層を与え、露出したレジストを現像するツール)、メトロロジーツールおよび/またはインスペクションツール内で処理されてよい。適用可能であれば、本開示は、そのようなものおよび他の基板処理ツールに適用されてよい。その上、基板は、例えば多層ICを作成するために複数回処理されてよく、そのため、本明細書に用いられる用語の基板は、既に複数の処理層を含む基板も意味してよい。
[0064] 本発明の実施形態の使用に対して、光リソグラフィの文脈において上記で特定の参照がなされていても、本発明は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィおよび状況が許すところで使用されてよく、光リソグラフィに限定されないことが理解されよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内の微細構成が、基板上に作成されるパターンを画定する。パターニングデバイスの微細構成は、基板に与えられたレジストの層へ押しつけられてよく、その後、レジストは、電磁放射、熱、圧力またはそれらの組合せを与えることによって硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化された後、レジスト中にパターンを残してレジストから離される。
[0065] 本明細書に使用される用語「放射」および「ビーム」は、イオンビームまたは電子ビームなどの粒子線と同様に紫外線(UV)放射(例えば365、248、193、157または126nmの、またはそのくらいの波長を有する)および超紫外線(EUV)放射(例えば5〜20nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射を包含する。
[0066] 用語「レンズ」は、文脈上可能であれば、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電気の光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントの任意のものまたはその組合せを意味してよい。
[0067] 本発明の特定の実施形態が上記に説明されてきたが、本発明は、説明された以外の方法で実施され得ることが理解されよう。例えば、本発明は、上記に開示された方法を記述した機械可読命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式、またはそのようなコンピュータプログラムが格納されているデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形式をとってよい。
[0068] 上記の記述は、説明を意図したものであり、限定するものではない。したがって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された本発明に対して変更形態が作成され得ることが当業者には明白であろう。