JP4890760B2 - 発熱体状態モニタ - Google Patents

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Description

本発明は、材料に破損(failure)が生じたことを、または、差し迫った破損が生じそうであることを指示するのに十分な監視された特性の変化を材料がうけているか否か決定するために材料の特性を監視する方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、発熱体(heating element)として使用される材料の破損または部分的な破損があったこと、および/または、発熱体の状態および破損の生じそうな危険を指示するために、上記の発熱体として使用される材料の物理的特性および電気的特性を監視する方法および装置に関する。
多くの工業用途および企業において、様々な製造プロセスにおいて発熱体及び発熱体を含むアセンブリ(例えば炉やオーブン)が使用されている。例えば半導体産業は、この発熱体および発熱体アセンブリを、集積回路製造プロセスで使用されるシリコンウェーハおよび他の基材の加熱に使用している。ウェーハは、マイクロエレクトロニクスのデバイス(例えば集積回路)の製造に使用される材料(一般に半導体)の薄いスライスである。発熱体は、関連の製造プロセスで使用される加熱サイクルにおいて所要の温度を発生させるのに使用される。例えば、普通の工業用途において300〜1400℃の範囲内の温度を利用するのは普通のことである。
低温から高温への、また、高温から低温への温度変化に起因する温度サイクル劣化によって引き起される熱応力のために、発熱体は一般に使用と共に劣化し、場合によっては破損しかねない。破損が不意に、それも都合の悪い時に発生した場合、深刻な結果が生ずることがあり得る。例えば、発熱体の破損は、1バッチ分の半導体などのデバイスが炉内で加熱されている間に発生することもあり得る。このようなプロセスで使用した発熱体の破損の結果生じる事態には、その発熱体破損の時にオーブン内にあった1バッチ分の半導体製品全体の損失が含まれる。破損は、利益の逸失、顧客への出荷の遅れ、そして、製造部品について約束した所期の歩留り率の達成が全面的に不能となるという結果になりかねない。
それゆえ、発熱体を構成する材料が何時破損しそうかを決定または予測することが可能であれば、それは極めて有益であろう。
この問題に対処する1つの方法は、そのような破損をこうむる部材(item)(例えば発熱体)が使用されていた時間の量を監視することによって予防的保守プログラム(preventative maintenance program)を実行することである。所定の時間期間が経過した後、予期した発生の可能性のある破損の前にその部材を取り替えることができる。しかしながら、発熱体の所期の寿命または信頼度を予測することが難しいことが往々にしてある。その上、このような発熱体の使用の数量と質には大きなばらつき(variability)がある可能性があり、また、そのような部材の品質の差も多様である。加えて、材料の本来的または本質的な汚染のような他の要因がそのようなデバイスの有効寿命に悪影響を及ぼすこともあり得る。
従って、上記のことを考慮して、発熱体などの材料の、熱サイクル劣化による潜在的破損(potential failure)を予測または予期し、それで、そのようなデバイスの破損の発生前に適切な是正処置を遂行できるようにするシステムおよび方法を提供することが有益であろう。本発明は、熱サイクルによる劣化を経験する材料を含有し得る発熱体および他のデバイスの状態を監視し、差し迫った破損の可能性の指示を与えることにより、上記目的を達成し、付加的な問題を解決する。本発明は、容易に設置され、既存の装置に直ちに組み込んで改装できる点で有利である。その上、本発明は、侵害性がほとんどないので既存の装置の信頼性を損うことはない。
従って、本発明は、反復的な熱サイクルにさらされる材料を監視するシステムおよび方法によって上記目的を達成する。本発明の例示的方法によれば、熱サイクルで使用される材料(例えば発熱体)の状態は、監視のための材料の少なくとも1つの特性を選択することによって監視される。選択した特性の初期値を初期時点において測定し、基準ベースライン(reference base line)として維持する。次いで、選択した特性を含む材料の特性を、時間中に生じるいかなる変化も決定するように監視し、選択した特性のその後の後続値(subsequent value)を測定、保存する。この選択した特性の後続値を前記の選択した特性の初期値と、または、上記の特性の基準ベースラインと比較し、選択した特性の変化を監視する。ひとたび、選択した特性の変化が所定の閾値レベルを超えると、信号が決定部(decision making authority)に送られ、その信号は上記の選択した特性の変化が所定の閾値レベルを超えたことの通知としての働きをする。本発明の一実施例によれば、監視した特性のうち少なくとも1つは、材料の電気抵抗またはインピーダンスである。しかしながら、当業者であれば分るように、例えば電圧値、瞬時電圧値、電流値、温度値、または、これらを組み合わせたものを含めて、他の特性を監視することもできる。
電流を流す発熱体の状態を監視する別の方法には、材料の初期組成(initial composition)Ciを初期時点Tiにおける基準ベースラインとして測定することが含まれる。初期時点Tiは、例えば、発熱体の設置の直後で、それが何らかの熱サイクルプロセスで使用される前の時点に相当するようにできる。後続時点Tsにおける発熱体の上記の後続組成Csに関するデータを収集する。初期組成Ciのデータと後続組成Csのデータとの間の変化を監視、比較し、組成の変化の所定の閾値レベルになったか否かを決定する。CiからCsへの組成の変化が所定の閾値レベルに達したかそれを超えたことが決定された場合、信号が決定部に送られ、上記の変化が所定の閾値レベルに達したことを知らせる。
本発明の一実施例は、発熱体の状態を監視するシステムを提供する。装置は、発熱体を構成する材料の初期組成Ciの少なくとも1つの成分を初期時点Tiにおいて基準ベースラインとして測定する。初期組成Ciは、例えば、発熱体の設置直後の時点における発熱体の組成に相当するようにすることができる。上記の装置は、後続時点Tsにおける発熱体材料の後続組成Csを反映するデータを収集する手段を包含する。材料の後続組成Csと材料の初期組成Ciの間の変化を比較する手段が設けられる。また、上記の変化が破損の発生し得る状態を示す閾値に達するかそれを超える時に決定部に信号で知らせる手段も、本発明のシステムによって設けられる。
本発明の一実施例によれば、本発明の方法および装置は、鉄(Fe)約72.2重量%、クロミウム(Cr)22.0重量%、およびアルミニウム(Al)5.8重量%の組成を有する合金から作られた発熱体を使用することができる。
本発明の実施例は材料の状態を監視する方法に対するもので、この方法は、材料の少なくとも1つの特性に対する基準ベースラインを決定すること、上記の材料の少なくとも1つの特性を時間および/または温度範囲にわたって監視すること、この監視した特性を上記の基準ベースラインと比較すること、および、上記の監視した特性と基準ベースラインとの差が所定の値を超える時、信号の発生を開始することを包含する。
本発明の追加の実施例が対象とする発熱体の状態を監視する方法は、発熱体の1つの特性を基準ベースラインとして表す第1のグラフ表示を決定すること、その特性に対するグラフ変化(graphical change)の閾値レベルを設定すること、間隔をあけた後の発熱体材料の状態を反映するデータを収集すること、この収集したデータを第2のグラフ表示に変換すること、第1のグラフ表示と第2のグラフ表示との差を上記のグラフ変化の閾値レベルと比較すること、および、その差が閾値レベルに達するかそれを超える時に決定部に信号を送ることを包含する。
本発明の更なる実施例が対象とする材料の状態を監視する装置は、材料の初期組成を初期時点における基準ベースラインとして決定する手段、指定された時間間隔をあけた後の材料の後続組成を反映するデータを収集する手段、上記の初期組成からの後続組成の変化の閾値レベルを設定する手段、上記の時間間隔が過ぎた後の材料の組成変化を監視する手段、および、監視した変化が上記の閾値レベルに達したかそれを超えた時に決定部に信号を送る手段を包含する。
以下で述べる通り、発熱体の合金が破損域(failure zone)に接近または達する時、信号を発生させることができ、この破損域は、本発明の一実施例によれば、アルミニウムのパーセント含有量が合金の組成全体の約2.5%にまで消耗した時に生じると定めたものである。このパーセント値は、合金の抵抗特性の変化から決定することができる。例えば、高温時の合金の抵抗Rhの、低温時の合金の抵抗Rcに対する抵抗比XRの変化は、発熱体を構成する合金のアルミニウムが閾値レベルより下まで消耗した時、及び破損の可能性が内在し得ることに関する有用な指標を提供することができる。この比XRは、方程式(1)により次の通り表される。
Figure 0004890760
ここで、Rhは高温時の合金の抵抗、Rcは低温時の合金の抵抗、またXRは温度に基づいた上記の2つの抵抗の比、または合金に対する抵抗の温度係数である。あるいは代わりに、他の実施例では、合金の正規化抵抗(normalized resistance)を使って発熱体の状態を決定することも可能である。
鉄約72.2重量%、クロミウム22.0重量%およびアルミニウム5.8重量%を含有する合金から発熱体を作る本発明の実施例では、1400℃時の合金の抵抗比XRが約1.044であり、これは、高温時の合金の抵抗が低温時の合金の抵抗より約4.4%大きいことを意味する。しかしながら、加熱と冷却サイクルの間にアルミニウムが合金から消耗するにつれて、低温時の合金内部の抵抗は著しく減少する。例えば、発熱体を構成する合金内に含まれるアルミニウムのパーセンテージ含有量が合金全体の約2.5%にまで消耗した場合、その発熱体の正規化抵抗は1.0から約0.822に減少する。同様に、低温時の合金の抵抗はアルミニウムの消耗(depletion)のために減少するので、抵抗比XRは約1.27に増大し、これは、アルミニウムが消耗した合金内の高温時の抵抗が低温時の抵抗より約27%大きいことを意味する。
抵抗および抵抗比XRは、抵抗測定、電圧測定および/または電流測定など様々な測定によって容易に確かめることができ、ベースライン値からの最大許容偏差(maximum acceptable deviation)に対する閾値を容易に設定でき、その閾値に達するかそれを超えるとその都度信号を発生することができる。従って、そのような場合に発生した通知信号により、熱サイクル劣化の結果として生じる発熱体の合金に対する損傷に起因する破損の発生前に発熱体を取り替えることができる。
以下、本発明の上記の特徴および他の特徴を添付図面に示す本発明の実施例に則して詳細に説明するが、図において、同じ発熱体は同じ参照番号で表す。
発熱体(heating element)を作るために使用することができる材料および合金組成は多く存在する。使用する材料および合金組成のタイプの選択は、発熱体を使用するその特定の用途、設計要求、経済的な側面およびその他の考慮すべき側面に依存しうる。しかしながら、当業者であれば容易に分る通り、ここに述べたものと同様の技術を用いて他の合金を使って同様の結果を得ることができよう。
発熱体を作るために使用されるワイヤ合金(wire alloy)の1つのタイプが、主として鉄(Fe)、クロミウム(Cr)およびアルミニウム(Al)からなる合金であり、それは一般にFe/Cr/Al合金と呼ばれているものである。以下の説明では、限定ではなく図での説明のために、発熱体の製作にFe/Cr/Al合金を使用する一実施例との関連において本発明を説明する。当業者であれば分るように、本発明の精神と範囲を逸脱することなく他の合金および組成を使用できる。更に、当業者であれば分るように、ワイヤ合金発熱体を使用する以外に他の様々な種類の発熱体を本発明に従って使用できる。例えば、電流電圧センサおよび/または温度センサをパターンに集積する絶縁基板上の半導体合金(semiconducting alloy)などのパターン化熱源(patterned heat source)を使って発熱体を作ることができる。このような設計バリエーションは、本発明の精神と範囲内に含ませることができ、ワイヤ合金発熱体の実施例の説明によって本発明から除外されるものではない。
例示的なワイヤ合金発熱体(wire alloy heating element)101を図1に示す。このワイヤ合金発熱体は、Fe/Cr/Al合金コア102から作られ、合金コア102を包囲する保護酸化物層(protective oxide layer)104を有する。一般に、この種のワイヤ発熱体は約1400℃までの有用な動作温度範囲を有し、それにより、広範な工業用途によく適している。図1に示したワイヤ合金発熱体101がそのような高い温度で使用できるのは、合金コア102の表面に生成する保護酸化アルミニウム層(protective aluminum oxide layer)104の助けによる。この層104は、合金が酸素(例えば周囲大気中の)の存在の下で約1000℃より高い温度に加熱される時に生成する。酸化アルミニウム層104は、高温時にFe/Cr合金自体よりはるかに高い強度(すなわち“高温強度(hot strength)”)を持つ外殻を提供する機械的特性を有する。加えて、酸化物層104はまた、コア102中の鉄を、合金102上を包囲する周囲雰囲気の酸化作用から遮る保護バリヤをも提供する。
ワイヤ合金発熱体101は、一般に、発熱体101の多重加熱/冷却サイクルが要求される多様な工業用途において使用される。例えば、ワイヤ合金発熱体101を使って処理すべき材料(すなわち加工製品(work product))を、制御された雰囲気の中で発熱体によって加熱される炉に装着することができる。この加工製品は、例えばプロセスライナ(process liner)の中に収容し、次により低い温度の加熱室の中に置くことができる。加熱室または炉の温度、従ってまた、加工製品の温度は、次に、特定の反応が所望の成果を達成するために生ずる目標温度または目標温度範囲へと徐々に上昇させる。炉の雰囲気は、所望の反応を維持するようにある時間期間の間制御することができ、所望の成果が達成された後、保護雰囲気(protective atmosphere)は元に戻され、温度は、もはや反応を維持しなくなる範囲にまで低下させられる。ひとたび、温度が更なる反応を維持しなくなるレベルに低下したら、加工製品を炉から取り出すことができる。このプロセスは、加工製品の異なるバッチごとに何回も反復することができる。この発熱体101の加熱と冷却を絶え間なく行うと、発熱体自体は相当の応力にさらされる。
熱サイクルのうち温度が高い部分の間、酸化アルミニウム層104と合金のコア材料102との熱膨張特性が異なるので、発熱体は相当の応力にさらされる。例えば、20〜1000℃の範囲(すなわち、標準動作温度の範囲)におけるコア材料102の熱膨張係数の代表値が摂氏1度につき約15×10-6であるのに対し、同じ温度範囲において酸化アルミニウム層104の熱膨張係数は摂氏1度につき約8×10-6である。酸化アルミニウム層104とコア102の熱膨張特性が異なることから、加熱と冷却サイクルの反復は、発熱体ワイヤ101に物理的応力を与えることになる。図2は、発熱体ワイヤ101にかかるこうした熱サイクルと関連した応力の結果の幾つかを示す。
図2を見て分かる通り、発熱体ワイヤ101は、保護酸化アルミニウム層104に様々なクラック206および亀裂(fissure)208(普通、スケール(scale)と呼ばれる)を見せている。クラック206および亀裂208は両方とも発熱体ワイヤ101の全体性能を低下させるが、特に関係するのは亀裂208のような亀裂であり、ここでは、酸化アルミニウム層104全体が突き破られてしまっている。クラック206および亀裂208を介して雰囲気に曝されると、アルミニウム分を含む合金成分を消費し、発熱体ワイヤの冶金的性質および電気的性質の両方を変化させる望ましくない鉄とクロミウム化合物(例えば酸化物、窒化物など)が生じる結果になり得る。これらの望ましくない化合物は、不均一な抵抗、標準以下の性能、そして、早期破損につながる。特に、合金コア102の冶金学的組成が変化するにつれて、コアの導電率は大きく低下し、コア102を通って流れる電流と、これに対応する発熱体101の発熱電力(heating power)の両方が大きく減少し得ることになる。
特に、発熱体ワイヤ101の保護酸化アルミニウム層104にクラック206および亀裂208が生成することは、ワイヤ101を冶金的および物理的に劣化させることになる。冶金的観点から見ると、クラック206および亀裂208を通してワイヤ101の合金コア102が雰囲気に曝されると、酸化アルミニウム層104の損傷部分の再生(rebuilding)が引き起こされ、その結果、コア102からのアルミニウムの消耗が生ずることになる。保護酸化アルミニウム層104の部分を再生するためにアルミニウムがコア102から消耗し、それによって変化した合金102の抵抗が低温時に減少するので、発熱体ワイヤの抵抗比XRが増大するのが見られる。この直接的な関係のために、合金102の抵抗を測定し、この抵抗および/または抵抗比をベースライン抵抗値と比較することによって、合金のアルミニウム含有量のパーセンテージが先に測定されたベースライン基準値から変化したか否かを決定することができる。
発熱体合金102の冶金学的含有量(metallurgical content)の変化によって引き起こされる抵抗の変化は、図9および10に示し、また、以下で詳述するような、温度抵抗曲線グラフを使って表し、また予想することができる。簡単に言えば、図9は、加熱室または炉の中で約20℃から1400℃までの“低温”から“高温”までの温度範囲全体にわたって測定された発熱体101の温度抵抗曲線のグラフ表示900を示し、ここで、発熱体合金のアルミニウム含有量は約5.8重量%である。グラフ線900は、20℃で1.0に正規化された通りの発熱体101の抵抗測定値を表し、発熱体101に対する温度環境が1400℃へと上昇するにつれてこの発熱体の相対抵抗が約4.4%増の1.044へと増大していく。20℃が“室温”に近い温度を表すのに対し、0℃で始まるものを含む他の温度目盛を使用することもできる。図9に示したグラフ表示900は、合金102のアルミニウム含有量が約5.8%である時の発熱体101の温度との関係において表した抵抗(temperature-based resistance)に対する基準ベースラインと見ることができる。
合金コア102からのアルミニウムの、酸化アルミニウム保護層104の部分を再生するための消耗が物理的に生じる結果が、発熱体ワイヤ101の伸び(elongation)である。酸化アルミニウム層104のクラック206および亀裂208によってこの層104に生じた開口が、この層104を広げる影響を有する。これらのクラック206および亀裂208は加熱段階中に酸化アルミニウムで修復されるので、発熱体ワイヤ101は伸ばされる。この伸びがワイヤの電気的特性を変化させることになるが、これは、ワイヤ101を通過する電流の流れる距離、例えば発熱体ワイヤ101の対向端間の距離がより長くなるからである。特に、ワイヤ101の抵抗はこのワイヤの長さに正比例し、従って、ワイヤ101が伸長するにつれて増大する。
合金コア102からのアルミニウムの消耗から生ずる発熱体ワイヤ101に対する更なる物理的変化は、ワイヤ101の横断面直径の減少であり、これは、ワイヤ101のクラック206および亀裂208を埋めるために合金が消費されるからである。横断面積の減少は発熱体ワイヤ101の単位抵抗(unit resistance)を増大させる。これは、発熱体ワイヤ101のような均一の材料組成の所与の導体の場合、導体の電気抵抗はこの導体の横断面積に反比例するからである。よって、横断面積の小さいワイヤは、同じ材料から作られた横断面積の大きいワイヤより抵抗が大きい。それゆえ、合金からのアルミニウムの消耗はワイヤの横断面積を減少させるので、発熱体ワイヤ101の単位抵抗は増大する。
コア102のアルミニウム含有量(aluminum content)が消耗するにつれて合金コア102の抵抗が減少するけれども、低温時の合金102の抵抗を時間全体にわたって単純に測定するだけでは、合金102内部のアルミニウム残留含有量と、対応する発熱体101の状態とを示す正確な指標は得られないであろう。これは、アルミニウム消耗プロセス中、ワイヤ101の伸びとワイヤ101の横断面積の減少との両方によってワイヤ101の抵抗が増大するからである。それゆえ、コア102のアルミニウム含有量の消耗による低温時の抵抗Rcの変化と、ワイヤ101の伸びおよび/または横断面積の減少による任意の温度での抵抗の増大との正味の影響は、アルミニウム消耗だけとした影響とは異なるであろう。しかしながら、本発明の実施例によれば、アルミニウムの消耗の、低温時のコア102の抵抗Rcを減少させることにおける影響は、(伸びの影響による抵抗の変化と無関係の場合でも、それと関係のある場合でも)、コアの初期組成Ciが少ないアルミニウムを有する後続組成Csに変化した後の、ある初期時点Tiにおけるベースライン抵抗または抵抗比XRとある後続時点Tsにおける抵抗または抵抗比XRの後続の測定値と比較することによって測定することができる。
図2Aは、低温抵抗Rc210、高温抵抗Rh212および抵抗比XR214の変化のパーセンテージを示すグラフである。これらの値の各々の測定は、別々の時間間隔で1つの時間期間にわたって行われたものである。図2Aから、抵抗比XRが1つの時間期間にわたって発熱体の特性を指示するために好適な尺度を提供することは明白である。従来の試みと対照的に、本発明の実施例では、抵抗値を頻繁な間隔で監視する。このような頻繁な監視によって首尾一貫した値が確実に得られ、統計的偏差が測定精度をあいまいにすることが回避される。
図2Aに示したテストで使用した発熱体は、鉄(Fe)約72.2%、クロミウム(Cr)22.0%およびアルミニウム(Al)5.8%を含有する前記の好適な合金組成から構成されている。これらの測定において使用した発熱体の直径は8.0mmである。高温抵抗Rhを測定する高温の温度は、図2Aに示した測定では約1000℃である。注目すべきは、抵抗比XRが約1700時間の期間にわたって0%から約7%まで変化することである。この変化は直線的応答に近く、従って、発熱体の実際の破損に先立って発熱体の究極的破損を予測するためのデータ結果の外挿を容易に許容するものである。しかしながら、以下で詳述する通り、単に特定の時点および/または特定の温度におけるワイヤ101の抵抗比XRを測定し、その読みを基準ベースラインの読みと比較するだけでは、ワイヤ101を構成する材料の状態を示す指標として信頼できない。
図2Aに示した例では、(平均で)150時間ごとの頻度で測定を行っているので、時間にわたっての抵抗比XRのほぼ直線的な変化は、発熱体の全寿命を予測するのに外挿するために信頼して使用することができる。これは、従来技術と異なり有益である。というのは、従来技術は、単一の抵抗値を測定するだけ、および(または)本発明の実施例より少ない頻度で値を測定するもので、発熱体の究極的破損を予測するために使用できるだけの高い信頼度の結果が得られなかったからである。しかしながら、抵抗比XRのデータポイントによって近似された線の勾配を推定することにより、発熱体をその有効寿命のほぼ半分の時間使用した時を容易に決定できる。同様に、発熱体がその有効寿命の90%を経過した時についての予測も可能であり、従って、破損発生前に新しい発熱体に交換して、その動作可能時間(up time)を最大化することが可能となる。
図2に則して述べた、酸化アルミニウム層104のクラック206および亀裂208を修復するためのコア102からのアルミニウムの消耗のプロセスは、発熱体の有効動作寿命の間、各温度サイクル中に反復して継続する。この消耗は、合金102中のアルミニウムのレベルが、発熱体ワイヤ101の保護酸化物被覆層104を維持することができるアルミニウムの最小量の閾値レベルより低いレベルになるまで消耗するまで続く。一般に、コア102中のアルミニウム分の最小閾値レベルは、コア102の約2.5%のアルミニウム含有量である。このアルミニウムの最小閾値レベル(すなわち、コアの2.5%アルミニウム含有量)に達するかそれを超えると、様々な破損モードが発生し得る。例えば、十分な酸化アルミニウム層104を有しない合金102内の鉄分は、急速に酸化し、ワイヤを破壊する可能性がある。また、図2に示した亀裂208のように、合金102中の鉄分が簡単に溶解し、酸化アルミニウム層104の亀裂から流れ出る(stream)と、高温で別の破損モードが発生し得る。
それゆえ、上で述べた破損モードに照らして考えると、発熱体の有効寿命の間の発熱体の相対的状態は、発熱体ワイヤ101の合金コア102の中に存在する実際の残存アルミニウムの含有量に関して表すことができる。上述の通り、コア102が熱サイクルと関連した劣化が少しでも生ずる前の代表的アルミニウム含有量は、約5.8%のアルミニウムであろう。1つの時間期間が経過し、多重熱サイクルの応力に耐えた後、残存アルミニウム含有量は、上述のように、合金コア102がほぼ破損点に達したことを示す約2.5%に達するまで、減少し続ける。当業者であれば容易に分るように、本発明によって監視される合金成分の実際のパーセンテージは特定の所望の成果に応じて、また、製品仕様書および/または安全仕様書の指定に応じて変わり得るものである。
本発明の一実施例によれば、ワイヤ101の合金コア102中に存在する残存アルミニウムの含有量パーセンテージは、アルミニウム含有量が消耗するにつれてワイヤがこうむる電気的特性の変化を監視することによって決定される。つまり、合金中に残存するアルミニウムのレベルは、合金の抵抗特性の関数として表すことができる。そこで、上で述べた通り、アルミニウム含有量が変化するにつれて発熱体ワイヤ101に生じる抵抗比XRの変化を測定することによって、残存するアルミニウムの正確な近似を決めることができる。この近似から、発熱体ワイヤ101が合金コア102中の損失アルミニウムにより破損するのにどれだけ近づいているかの決定をすることができる。加えて、他の電気的特性を監視することができ、そのうちの幾つかについて以下で述べる。
本発明の実施例によれば、アルミニウムの消耗が生じている発熱体を使用する炉の内部で起こり得る差し迫った発熱体破損を検出するために抵抗比XRの比較的小さい変化を測定することができる。従って、発熱体の抵抗特性の変化を検出できることから、潜在的な不均一な発熱状況に反応するより前に、それを予期することができる。例えば、多くの炉において、マルチゾーン(multiple zones)で構成された発熱体が使用される。伝統的に、各発熱体ゾーンの全体温度を検出するのに、熱電対などの単一の温度検出装置を使用している。発熱体ゾーンは各々、多重のセグメントまたは回路で作ることができる。その回路は並列構成で接続することができる。それゆえ、多重回路からなる発熱体ゾーンの回路の1つだけが損傷し、適正に発熱しない場合、その発熱体ゾーンの全体温度が、単一の熱電対によって検出できそうな程度にまで低下できないかもしれない。しかしながら、発熱体ゾーンの回路の1つだけが働かなくなるので、その発熱体ゾーンの(従ってまた、炉の)熱分布は均一でなくなり、その結果、プロセス上の潜在的問題が生じ得ることになろう。他方、本発明を使用することによって、各発熱体の多重ゾーンの各々を、そのゾーン内部の破損または不均一な発熱を示すことが可能な抵抗特性の変化について監視することができよう。よって、本発明の実施例によって、上記のゾーン全体にわたっての特性が各ゾーンに対して測定され、破損、すなわち、差し迫った破損が有利に指示され、このような各ゾーン内部(従ってまた、炉内部)の不均一な発熱状況が回避され、それにより、材料、費用および作業時間の損失が回避される。
図2Bには、二つの異った太さ、0.7mmと4mmのワイヤについて時間にわたっての抵抗比XRのパーセンテージ変化が図示されている。図2Bに示したグラフは、両方のワイヤは、太さが異なるけれども、それらの寿命全体にわたって同様の変化をうけることを示している。特に、全体にわたっての抵抗比XRの変化は、両方の太さのワイヤとも20〜25%の範囲内である。それゆえ、このXRの変化の範囲は、これらの直径、またはこれらの直径の中間の直径を有する全てのワイヤにとって安全な動作範囲であると想定することができよう。太いワイヤと細いワイヤの両方のワイヤは長所が異なるので、太さの異なるワイヤがその寿命にわたって同様の変化をうけることに注目するのは有利である。例えば、太いワイヤは、高い電圧と低い電流を使用する細いワイヤによって生成可能な電力と同じ電力を生成するために、低い動作電圧を必要とする一方、より高い電流を必要とする。従って、より低い電流量しか使用できない状況では、より細いワイヤをより高い電圧で使用する方向になろう。加えて、軽量ワイヤ(light gauge wire)ほど物質量も所要電流も少ないので、経済的理由から、受け入れ可能な結果をもたらす可能な限り細いワイヤを使用するのが望ましいと言えよう。図2Bは、ワイヤコアからのアルミニウムの消耗量を指示するために本発明で使用されるモデルが、このような細いワイヤにとっても太いワイヤにとっても有効であることを示す。
合金コア102のアルミニウム含有量と関連した特性を決定することができる方法が、図3Aにフローチャートの形で示されている。図3Aでは、先ず、監視すべき材料の少なくとも1つの特性を決定する(ステップ301)。監視できる材料の幾つかの特性には、例えば、合金成分の物理的属性(physical attribute)と測定量、電気的測定量と性質(behavior)、および化学組成が含まれる。基準ベースラインを確立するために、材料の初期組成Ciの少なくとも1つの特性を初期時点Tiにおいて測定する(ステップ303)。測定した材料の特性を次にステップ305において監視し、時間とともに生じたどのような変化でも決定する。このような変化は次にステップ307において基準ベースラインに対して比較され、監視された特性の変化がその予め定めた閾値のレベルに達したかあるいはそれを超えたかに関して決定がなされる(ステップ309)。閾値に達しなかったかそれを超えなかった場合は、その特性をステップ305において監視し続ける。しかしながら、変化の閾値に達したかそれを超えた場合は、その変化のレベルが所定の閾値レベルに達したかそれを越えたことを知らせる信号が決定部に送られる(ステップ311)。
本発明の代替実施例では、1つの時間範囲および/または温度範囲にわたって確立される基準ベースラインを規定している。図9の温度抵抗曲線900は、アルミニウム含有量約5.8%を有する発熱体ワイヤ101に対する20℃〜1400℃の温度範囲にわたって測定された基準ベースラインとして見ることができる。あるいは代わりに、図9のx軸は、発熱体の温度が相対的に低温の出発点から上昇していくその時間の関数として表すこともできる。上で述べたように、また、以下で詳述するように、時間および/または温度全体にわたって測定されたこのような基準ベースラインは、材料の差し迫った破損の指標となり得るワイヤ材料の組成および/または特性の変化に対する比較のためのベースとして、特定の時点あるいは特定の温度でなされた単一の測定よりもむしろ信頼できる。
本発明による方法の別の実施例が図3Bにフローチャートで示されている。図3Bに示した実施例では、材料組成に関連した1つの特定の特性を監視する。先ず、発熱体を、半導体ウェーハの加熱に使用されるオーブンの中のような1つの物理的場所に設置する(ステップ298)。ステップ300において、発熱体を構成する材料(例えばアルミニウム)の初期組成Ciを初期時点Tiにおいて適当な仕方で決定する。この初期組成Ciに関連した少なくとも1つの特性(例えば材料の電気抵抗)を監視すべき時点Tiでステップ302において選択する。この特性の初期値を測定して、監視中の材料の組成に関係する初期ベースライン状態を確立し、これに対して後続の測定値を比較することができる。この実施例では、時点Tiにおける合金102のアルミニウム含有量のパーセンテージは約5.8%である。当業者であれば分るように、異なる組成、成分およびパーセンテージを本発明の範囲を逸脱することなく使用することができるであろう。
組成データは後の時点Tsで収集される(ステップ304)。時点Tsで収集された情報は、選択された時間期間が初期時点から経過した後(すなわち、Ts−Tiに等しい期間の後)の発熱体101の後続組成Csを反映する。後続時点Tsにおける発熱体ワイヤの後続組成Csを反映する組成データを所定の閾値(たとえば、計算または実験などによって決定することのできた閾値)と比較する。閾値に合ったかそれを超えたか否か(例えば合金のアルミニウム含有量がその合金の2.5%のレベルまで消耗したか否か)を決定をする(ステップ308)。ステップ308の決定が否定である場合は、組成データを収集し続け(ステップ304)、後の時点Tsの値に対して追加測定を行う。しかしながら、ステップ308の決定が肯定である場合は、次に閾値レベルに達した(または、それを超えた)ことをユーザに知らせる信号が提供される(例えば、アラームが鳴らされる)(ステップ310)。
本発明の代替実施例では、合金102内部の組成の変化を様々な技術によって決定することができる。例えば、先に言及した通り、電気抵抗測定は、発熱体合金102内部の組成の変化を測定する1つの技術である。従って、時間にわたっての抵抗値(例えば抵抗比XR)の変化を監視し、その情報を使って、差し迫った破損を予測することができる。特に、上述の通り、合金102からアルミニウムが消耗するにつれて、抵抗比XRは、約1.042の初期値から、破損状態または破損が差し迫っている可能性のある状態を表す約1.250に達するまで絶えず増大し続ける。
図3Cおよび3Dは、Fe/Cr/Al合金で作られた発熱体を示し、ここで、クロミウム(Cr)のパーセンテージは約21%で、アルミニウム(Al)および鉄(Fe)のパーセンテージが変えられている。合金のアルミニウム含有量の種々のパーセンテージに対する幾つかの結果がグラフに示されており、それは、最も低いパーセンテージ(0.87%)のアルミニウム含有量から始まって、最も高いパーセンテージ(7.23%)のアルミニウム含有量で終わっている。鉄(Fe)のパーセンテージ含有量は、発熱体の合金組成の残りの部分を構成するように変えられている。これらの図は、様々なアルミニウム含有量のパーセンテージに対して予期される抵抗比XRの値を示す。図3Cでは、高温抵抗Rhの測定と低温抵抗Rcの測定の間に発熱体の温度は急冷され、他方、図3Dでは、これらの測定の間に発熱体は制御されたペースで徐冷されている。
図3Cに示したように、発熱体を急冷できるようにするプロセスと、図3Dに示したように、発熱体を徐冷できるようにするプロセスとの間で、抵抗測定値の微妙なシフトを観察することができる。しかしながら、両方の場合において、本発明の一実施例と関連したアルミニウム含有量(すなわち、アルミニウム含有量のパーセンテージの最大値5.8%と最小値2.5%とをそれぞれ有する含有量)の範囲に対する抵抗比XRの変化は、約20〜25%である。この値は、アルミニウム含有量のパーセンテージの最大値と最小値に最も近いグラフ表示値(すなわち、それぞれ6.09%と2.38%のグラフ表示値)を観測することによって得られる。加えて、図3Cおよび3Dに示した両方の場合において、測定は、最高の測定精度を与えるために頻繁な時間間隔で行われている。図3Cおよび3Dでは、アルミニウムの最も低い組成(0.87%)を有する発熱体が最も大きな抵抗比XRを有する。
図3Eのグラフは、図3Cに示したデータと図3Dに示したデータとの比較を表す。つまり、図3Eに示したグラフは、急冷された発熱体と徐冷された発熱体の両方について抵抗比XRの変化のパーセンテージを合金のアルミニウムのパーセント含有量に対して表す。図3Eに示したグラフは、合金が急冷されようと徐冷されようと、結果は同様であることを表す。特に、図3Eには、急冷された合金と徐冷された合金の両方とも、約20〜25%の抵抗比XRの変化が現れており、これは、アルミニウムの消耗に対する本発明によるモデルの予期した範囲内に入っていることが示されている。
本発明の一実施例によれば、本発明に従って収集された情報は、関係データ表、例えば図4に示したような関係データ表において表すことができる。特に、図4の関係データ表に収集され、格納された情報は、別々の時間に何回でもサンプリングすることができ、この時間は所定の時間間隔に従って分離することができる。測定が行われる特定の時点T1〜Tnは、関係データ表の欄400に示してある。対応する高温抵抗Rh1〜Rhnおよび低温抵抗Rc1〜Rcnの値は、欄400に示した各時点で取られたもので、欄402と404に示されている。対応する抵抗比XR1〜XRnの値は、データ表の欄406に格納されている。加えて、関係データ表は、残存する合金の量AR1〜ARnに関する情報を含むことができ、これは、図4に示した関係データ表の欄408のような追加欄に格納することができる。その量は、上に示した通り、欄406に示した抵抗比の値のような変数を使用する所定の式によって計算することができる。加えて、当業者であれば分るように、図4の例示的な表に示した変数以外の複数変数(multiple variables)を使って、残存する合金成分のパーセンテージを決定することができる。それゆえ、図4に示した関係データ表は、残存する合金成分の量を決定するのに使用できそうな、監視すべき所望の何らかの値(例えば、電圧あるいは電流測定値、埋め込み型アクティブセンサによる測定値など)を組み入れるように変えることができよう。
図4に示した関係データ表の欄402、404および406内の測定された抵抗特性値は、多様な仕方で変化し得る。例えば、抵抗値は、徐々に変化して発熱体の自然経年変化プロセスを示し得る。この抵抗値は、汚染された領域のような局部的破損点を示し得る急速変化になり得る。それゆえ、関係データ表の中にある測定値の変化は、監視されている発熱体の2つ以上の破損モードを指示し得る。
発熱体として使用するための上で述べた例示的な合金(すなわち、鉄72.2%、クロミウム22.0%およびアルミニウム5.8%を含有する合金)は正の抵抗温度係数を有する。これは、合金において測定された抵抗の値が合金温度の上昇につれて増大することを意味する。そこで、ワイヤ合金の一サンプルの抵抗を約20℃あるいは周囲条件下で測定し、次いで、同サンプルの抵抗をより高い温度で測定すると、抵抗値は、高い温度における方が大きくなる。1つの例は、ワイヤの一サンプルを約20℃から約1300℃に加熱する時に現われるものである。この場合、サンプルのワイヤ合金は、周囲温度での抵抗に対して高温で約4.2%の抵抗の増大を示すことになる。これは、式1で定義した通りの抵抗比XRとして表すことができ、この場合、それは1.042となろう。アルミニウムが合金から消耗するにつれて、そして、ワイヤ合金がその有効寿命の終わりに達する(例えば、約2.5%残存アルミニウム含有量を有する)とき、同じ範囲にわたっての抵抗の増加は約25%となる、すなわち、抵抗比XRが約1.250になるということが分かる。
上で述べた通り、合金の抵抗特性の変化の性質は、高温時の抵抗Rhが相対的に一定に留まるのに対し、低温時の抵抗Rcは、アルミニウムが合金から消耗するにつれて減少するというようなものである。当業者であれば、合金組成の変化は一般に小さく、長期間にわたって徐々に起こることは、容易に理解されるであろう。従って、抵抗比XRは長期間にわたって正確に監視されなければならない。例えば、有効寿命が2〜8年というのは、このようなワイヤ合金発熱体ではまれでない。当業者であれば、合金の抵抗特性(例えば抵抗比XR)の正確な監視に加えて、合金の特性に関するデータを外挿して、合金の将来の状態を予測することができることは容易に理解されるであろう。例えば、このような発熱体の有効寿命の残りを予測するために積分法を使用することができる。
ここで図9〜14について説明すると、ここには、発熱体が破損に近づきつつある時を予期するためにその発熱体における1つ以上の物理的変化および/または冶金的変化を監視することのできる例示的な温度範囲、例えば20℃〜1400℃の範囲にわたって測定された発熱体材料に対する一連の温度抵抗曲線が示されている。この抵抗曲線は、発熱体101に電流を通す間に測定された抵抗値またはその読みからグラフ化することができる。図示された実施例では、発熱体を加熱室または炉のようなその環境から取り出すことなしに、電流を1つ以上の発熱体に流すことができる。このようにして、発熱体の稼働を中断する必要がなく、また、炉の運転を中断または遮断する必要もなく、事実、発熱体が実際の発熱動作状態にある間に測定を行うことができる。電気抵抗の測定は実施例に則して下で述べる通りであるが、電流、電圧または温度のような他の上述の特性を、実施例の特徴を損なうことなく、基準ベースラインとして測定することが可能であろう。
図9は、アルミニウム含有量が約5.8重量%の材料または発熱体について20℃〜1400℃の温度範囲にわたって測定されたベースライン抵抗曲線900で、その始まりで1.0に正規化されている。この曲線900は、材料の抵抗を表す第1のグラフ表示を構成する。この特定の合金は、マイクロチップコンポーネントを加熱する炉において使用される発熱体ワイヤの組成の代表的なものであるので一例として使用したもので、限定するものではない。実施例は、この特定の合金組成だけに決して制限されず、実施例に則してどのような数の代替合金を使って導電性材料の状態を監視することも可能である。図9に示した合金の正規化した抵抗は、1400℃で約1.044に増大し、これは、例示の温度範囲にわたって発熱体の抵抗が約4.4%増大することを表す。
図10について説明すると、ここには、合金102に対して図9に示したのと同じ温度範囲にわたってグラフ化された温度抵抗曲線1000と1002が示されているが、これは、合金のアルミニウム含有量が冶金的劣化によって約2.5%まで消耗した後にグラフ化されたものである。比較のために、図10の抵抗曲線1000は、相対抵抗が約1.044である1400℃の温度で図9のグラフに正規化されたものである。抵抗曲線1000および1002は、上記の材料の抵抗特性を表す第2のグラフ表示を構成する。図10から分かる通り、冶金的に劣化した発熱体101に対する抵抗は、低温時に低くなっており、抵抗曲線1000によって描かれた実施例では約0.822となっている。特に、常温時の電気抵抗は、5.8%アルミニウム合金に対するより2.5%アルミニウム合金に対して低い。従って、ある温度範囲にわたって合金102の抵抗を測定し、グラフ化することにより、合金のアルミニウム含有量が先の基準ベースライン測定から変化したか否か比較することができる。
曲線1002は、消耗したアルミニウムの合金について、20℃で1.0に正規化した抵抗を温度との関係において表したグラフ表示を示す。この抵抗曲線1002に対しては、1400℃における相対抵抗は約1.27で、これは低温から高温までの間に約27%増大する発熱体の抵抗特性の変化を示しており、これは、5.8%アルミニウムからなる合金の場合よりはるかに大きい。正規化された抵抗曲線1000もまた、20℃から1400℃までの範囲にわたって約27%の抵抗の増大を示している。対照的に、図9に示した通り、アルミニウムの消耗のない発熱体の抵抗は、低温から高温までの間に約4.4%しか増大していない。
図9のベースライングラフと図10の選択された抵抗曲線との幾何学的比較(geometric comparison)により、幾何学的な差が所定の閾値を超えたか否かを決定し、それによって、発熱体の劣化および/または差し迫った破損を知らせる信号を発生することができる。ベースラインでない抵抗曲線(すなわち、曲線1000および1002)を作成するために行われた抵抗測定は、測定の試行錯誤によって最初に確立された通り、かなりの回数の加熱と冷却のサイクルの後、発熱体の予期される破損の近くで行われた。これらの測定値の使用により、所定の閾値レベルあるいは、破損に近づきつつあるか、またはその有効寿命または信頼できる寿命(reliable life)を超えた使用された発熱体に対する、ベースライン曲線900と抵抗曲線1000または1200との幾何学的な差の値を確立することができる。基準ベースラインと動作している発熱体の抵抗曲線との間の幾何学的な差を比較することにより、その差が所定の値を超えたか否かを決定することができ、それによって、発熱体が破損しそうになっているか、またはその予期された有効寿命の終わりに達したかを指示することができる。このような指示がなされる場合、発熱体を交換する必要のあることを警告するために信号を開始することができる。上記の幾何学的な比較は、グラフによる比較、アルゴリズムによる比較、数学的解析、またはこれらのどんな組み合わせであってよく、従って、上記の実施例はそのように限定されるものではない。
次に、図11〜13について説明すると、ここには、加熱室または炉において維持された加熱と冷却のサイクルの間に冶金的劣化および/または伸びに帰する様々な度合いの変化をこうむった発熱体に対する温度抵抗のグラフが示されている。各々の図に示した曲線900および曲線1000は、それぞれ、図9に示した同じベースライン曲線と、図10に示した、アルミニウムが消耗した曲線とをそれぞれ表す。先ず図11について説明すると、曲線1100は、上で述べたような加熱と冷却のサイクル中に発熱体に課せられた応力およびクラックのために直線的に膨張したまたは伸びた発熱体に対して20℃から1400℃の温度範囲にわたって測定された抵抗曲線を示す。伸びの曲線1100は、冶金的含有物が劣化した発熱体に対する抵抗曲線1002との比較を提供するために1400℃で1.27の相対抵抗に正規化された。図11から分かる通り、例示的な伸び抵抗曲線(elongation resistance curve)1100は、曲線900で示されたベースライン抵抗から約26%増大する抵抗を示すと共に、低温状態から高温状態までに約6%の同様な横抵抗(lateral resistance)の増大を示す。
曲線1102は、アルミニウムの約2.5%までの冶金的劣化と伸びの複合的影響をこうむった発熱体に対する複合抵抗曲線を表す。曲線1102も、1400℃で1.27に正規化されており、冶金的劣化の影響と伸びの影響がほぼ等しい状態を表す。対照的に、図12および13は、発熱体に対する異なる歪み、劣化および変化が等しい割合で材料に加わらなかった状態を表す。図12の曲線1200は、冶金的劣化に帰すべき発熱体の抵抗変化が発熱体の伸びに帰すべき変化の約2倍である発熱体の抵抗曲線を表す。予期される通り、曲線1200は、純粋に冶金的な変化曲線1000により近い。図13の曲線1300は、伸びから生じる発熱体の抵抗変化が発熱体の冶金的劣化によるものの約2倍である発熱体の抵抗曲線を表す。
図12に戻って説明すると、ここでは、基準ベースライン曲線900が約275℃のところで複合抵抗曲線1200と交差するのを見ることができる。この例は、単に275℃での使用された発熱体の抵抗測定値だけを取ると、抵抗の読みがその温度に対するベースライン値とぴったり合致することになる可能性があり、発熱体が良好な状態にあるかのように誤って指示することを実証している。本発明の実施例は、このような相違に対しては、発熱体101の1つ以上の特性を時間および/または温度の範囲全体にわたって測定し、その測定値を基準ベースラインに対して幾何学的に比較して、発熱体101の状態が破損点に近づきつつあるか否か決定することによって適応することができる。複数の幾何学的モデルを確立することにより、実施例では、発熱体が炉内に留まる間の、発熱体の冶金的変化、伸びおよび横断面変化のどんな組み合わせについても、また、差し迫った破損および/または有効寿命の終わりを指示する閾値状態についても、テストを行うことができる。
次に、図14について説明すると、ここには、炉内の発熱体101の劣化および/または破損と関連した別の物理的現象を明らかに表す詳細な抵抗曲線1400が示されている。この例では、約2000回の加熱/冷却サイクルを受けたことが知られている典型的な発熱体101の低温時の抵抗がほぼ正規化された0.905の値である。最初の270℃のウォームアップ中に、発熱体101の抵抗は、低下の前に約1.121に急上昇してから、ほぼ0.90付近で横這いになる。この正規化抵抗の急変は、最初の印加電力によって発熱体のクラックで材料の加熱が生じ、順次材料のギャップが一時的に膨張することによって引き起こされる。例えば、材料のクラックが開きつつある、および/または、前の溶接したクラックが裂けつつある場合である。ひとたび、発熱体101が十分に熱くなると(この場合では、ワイヤ温度が約400℃に達した場合)、それは膨張し、材料を共に押し戻し、抵抗の読み1400は正常に戻る。これらの測定は、図14の典型的なグラフに示されている通り、運転の最初の400℃において生じた発熱体101のクラッキングおよび膨張の衝撃をもたらすためには、炉をその電力範囲全体または時間の継続期間の範囲全体で運転する必要がないことを示している。グラフのx軸は加熱室の温度を表し、右側の軸はヒートアップするときのワイヤ自体の温度を表す。ワイヤの加熱勾配は、加熱室の温度(x)の上昇につれてのワイヤの相対温度を表す式y=0.8396x+313.36によって与えられる。
抵抗測定の多くが相対的に低い値をもたらすので、この情報を的確に測定し、監視するためには高精度の測定メカニズムを使用しなければならない。例えば、高温炉の発熱体において見られる所与の温度ゾーンの代表的な抵抗値は、0.250から2.000オームのオーダーである。これは、本発明の好ましい実施例によれば、もともとの抵抗値が0.250オームの発熱体の内在する破損を検出するためには、測定装置は低温抵抗の20%の変化、すなわち、約0.05オームの変化を正確に検出しなければならないことを意味する。この測定レベルを正確に達成するためには、通常は発熱体を電源から切り離すことが要求される。電源の接続を切るのは、電源もコンポーネントのどれもが読みの精度に決して影響しないようにするためである。しかしながら、電源を接続したままで抵抗値を測定するために、本発明の他の実施態様、例えば、電流および電圧測定による方法を使用することが可能であり、これは本発明の精神から逸脱するものではない。
図5〜8Cは、材料の状態を監視し、この材料の状態の変化が所定の閾値に達するかそれを超えることを決定してアラーム信号を発するための種々の特定の機能を実行するための例示的な実施例の装置および手段を示す。図5について説明すると、ここには、合金組成の変化を検出するのに必要なレベルの精度でインピーダンスまたは抵抗の変化を監視するのに使用することのできるインピーダンスモニタ500が、ブロック図の形で示されている。インピーダンスモニタ500は、3つの主要コンポーネント、すなわち、インピーダンス計算機502、サンプルホールド回路504および決定回路(decision making circuitry)506で構成される。加えて、インピーダンスモニタ500は、ディスプレイパネル508およびクオリティモジュール(quality module)510もオプションとして使用することもできる。ディスプレイパネル508は、状態などの情報を表示するのに使用される。R-Qualモジュール510は、RhおよびRcの測定値の質(quality)に関する信号を提供する。R-Qualモジュール510からの信号は、RhおよびRcの測定値を、それらが有効な測定値であるとしてサンプリングできることを指示する。当業者であれば分るように、抵抗という用語を本出願全体にわたって使用してきたけれども、リアクティブ要素を考慮に入れるインピーダンスも測定することができ、これも合金中の合金成分のパーセンテージを決定するのに有用であり得る。従って、より総称的な用語であるインピーダンスに関連して、図5においてインピーダンスモニタ500の呼称を使用する。
インピーダンスモニタ500の主要コンポーネントの各々の例示的概略図を図6、7A、7B、8A、8Bおよび8Cに示す。これら概略図は、純粋な抵抗測定(すなわち、いかなるリアクティブインピーダンスコンポーネントもないもの)を用いる本発明の一実施例を示すが、上で述べた通り、当業者であれば分るように、例示的概略図の各々がリアクティブインピーダンスコンポーネントの測定を考慮に入れるように容易に変更し得るものである。これらの各概略図の中に、電圧、電流、抵抗、キャパシタンス等の値が示してある。加えて、可能なところは、普通の熟練者が本発明を使用する上で容易に入手できそうな標準部品番号を示してある。しかしながら、当業者であれば分るように、図に示した値および部品は本発明の精神から逸脱することなしに多少変更し得るものである。加えて、当業者であれば、図6、7A、7B、8A、8Bおよび8Cの概略線図に示したインピーダンスモニタ500および各種回路に電力を提供するために幾らか追加の電力回路が必要とされることを理解するであろう。
図6には、インピーダンスモニタ500のインピーダンス計算機502が概略線図の形で示されている。インピーダンス計算機502は、インピーダンスを決めるためにアイソレーションスケーリング(isolation scaling)とRMS計算を使用する。特に、インピーダンス計算機502は、分析したい発熱体の電圧および電流を誘導(induction)によって測定し、その測定値から発熱体の抵抗を決めることができる。特に、“TUBE XFMR SECONDARY”は、インピーダンス計算機502を使って測定すべき外部発熱体システムを表す。発熱体負荷に結合された変成器によって生成された電流は、サイリスタ整流器(SCR)によって整流され、印加電圧はVinとして表されている。電流は、シグナルコンディショナ(signal conditioner)によって測定され、ノード(Node)Iで出力され、一方出力電圧はノードVでの出力として供給され、割算器(DIVIDER)が、発熱体負荷の抵抗に比例する信号を生成し、この抵抗は、測定された電圧と電流から計算される。この情報は、次に、ノード2によって図7A及び7Bに示したサンプルホールド回路504へと出力され、このサンプルホールド回路は、同図にも示されているノード2によってインピーダンス計算機に接続されている。
図7A及び7Bに示したサンプルホールド回路504は、(ノード2によって受信された)アナログ信号をアナログ/ディジタル変換器(ADC)によって記憶のためのディジタル信号に変換するディジタルサンプルホールド回路である。ディジタル化された発熱体抵抗の値は記憶され、抵抗のアナログバージョンが、ディジタル/アナログ変換器(DAC)によってノード3および4を介して決定回路506へと出力され、このノード3および4は、図8A、8Bおよび8Cにも示されている。瞬時値は、“SCR on”信号がアクティブで、好適なR-Qual信号が入力される時に記憶される(無論、R-Qualモジュールがオプションとして使用されている場合)。
図8A、8Bおよび8Cは、それぞれ決定回路506a、506b、506cの各部分の概略的線図をそれぞれ示す。例えば、図8Aに示した決定回路506aの部分は、図7A及び7Bに示したデュアルディジタルサンプルホールド回路504からノード3を介して高温抵抗Rhの情報を受け取る。Rhの現在値を所定のアラーム閾値に比較するのにデュアルウィンドウコンパレータ(dual window comparator)が使用されており、また、Rhの値が臨界レベルに達した場合にアラームを作動させることができる機構が設けられている。例えば高温抵抗Rhに対する所定の警報状態を決定して、臨界破損モード、あるいは監視回路か監視中の発熱体かに関連する他の問題を指示することができる。
同様に、図8Bに示した決定回路506bの部分は、図7Bからノード4を介して低温抵抗Rcの情報を受け取る。この情報は、所定の警報状態に達したか否か、あるいは、低温抵抗値Rcが所定の閾値を超えたか否か決定するために、図8Bに概略図の形で示したデュアルウィンドウコンパレータによって使用される。そのような警報状態の存在することが、図8Bに示した決定回路506bによって決定された場合、低温抵抗Rcに関してアラームを作動させることができる。
図8Cに示した決定回路506cの部分は、割算器を使って、図7Bからノード3を介して高温抵抗Rhと、そして図7Bからノード4を介して低温抵抗Rcとを入力として受け取り、抵抗比XRを計算する。先に述べた通り、抵抗比XRの許容限度の閾値を予め決定することができ、図8Cに設けられた回路は、この予め定めた閾値を一旦超えるとアラームを作動させることができるようにする。本発明の一実施例によれば、図8Cの概略線図に示した回路は、抵抗比XRに対してその変数に対する上限値を超えた場合に警報状態に達したことを決定する。しかしながら、当業者であれば分るように、図8Aおよび8Bに則して述べた抵抗値を使ってするのと同様に、所望なら、デュアルウィンドウコンパレータを使っても、抵抗比XRに対する警報状態を決定し得る。
図5に示した状態ディスプレイパネル508は、図8A、8Bおよび8Cに則して述べた抵抗値あるいは抵抗比値と関連したいずれの警報状態をも表示するのに使用することができる。この状態ディスプレイパネルは、棒グラフ、円グラフ、数値データ表示などを含むが、これらに限らない様々な形を取り得る読み出し(read out)を表示する、発光ダイオード(LED)のような種々の周知のタイプのディスプレイパネルであっても、あるいはCRTモニタやLCDスクリーンのようなより複雑なディスプレイシステムであってもよい。
インピーダンスモニタ500に対するオプションの追加としての図5に示したR-Qualモジュール510は、温度入力情報を受け取り、高温抵抗Rhおよび低温抵抗Rcの値の品質について、また、これらの値が正確な値として測定でき、記憶することができるか否かについて評価できるような、高温及び低温抵抗値に関する品質情報(quality information)を提供する。例えば、R-Qualモジュール510は、発熱体の温度が安定していることを指示するのに使用することも、また、抵抗値が正確に測定できることを示す他の何らかの条件に合致していることを指示するのに使用することもできる。本発明の一実施例によれば、R-Qual信号は、図示されていないプロセッサによって外部で処理することができる。例えば、温度が安定していることを信号を発生させるための条件として使用する場合は、R-Qual信号は、温度コントローラ内部のプロセッサによって発生させることができよう。しかしながら、当業者であれば分るように、このような処理は多数の適当な場所で行うことができ、R-Qualモジュール510の内部か外部かの単一の場所に制限する必要がない。
当業者であれば、図6、7A、7B、8A、8Bおよび8Cに示した概略線図に則して、インピーダンスモニタ500との関連において図示及び記載した回路は、単に例示的なものでしかなく、様々な本発明の実施例はここに示した回路と大いに異なり得ることを理解されるであろう。例えば、図7A及び7Bに示したサンプルホールド回路504は、データの変換と記憶のための簡単な変換器(すなわち、ADCおよびDAC)を使用している。しかしながら、図7A及び7Bに示したタイプのような簡単な変換器の代わりに、またはそれに加えて、はるかに大きい機能を有するマイクロコントローラをサンプルホールド回路504で使用できることは予想される。加えて、図5に示したインピーダンスモニタ500の大部分または全体の機能をマイクロコントローラに埋め込み、その中の埋め込み型システムとすることも可能であろう。更に、閾値に達したかそれを超えたことを、決定部506によって決定されるように決定部に対して通知を提供するために、発光ダイオード(LED)、電気信号、音響等々の多様なインジケータを使用することができ、状態ディスプレイパネルは、そのような通知のための1つのオプションにすぎない。
上で述べた通り、マイクロコントローラがインピーダンスモニタ500のサンプルホールド回路504の一部を形成し得ることは予想される。このような追加は、マイクロコントローラがデータの計算および外挿を実行できることから、有利であろう。例えば、このようなマイクロコントローラは、電流測定、計算および外挿アルゴリズムに基づいて発熱体の残存有効寿命を予測するのに使用できよう。加えて、確率的アルゴリズム、ヒューリスティックアルゴリズム(heuristic algorithm)など他の計算も考えられ、マイクロコントローラによって実行することができよう。
当業者であれば、実際の場面においては発熱体を低温レベルまたは周囲温度のレベルに冷却することが可能でないかもしれないことを理解するであろう。従って、効率と最大の生産あるいは“アップタイム(uptime)”のために、炉を、従ってまた、発熱体を、発熱体および/または炉に必要なメンテナンスを容易にする温度レベルに冷却しさえすればよいということは予想される。従って、発熱体の合金の構成(make up)次第では、実際に低温抵抗Rcが正確に測定されないことがあるかもしれないが、あらかじめ求められたデータから取り出すことはできる。加えて、発熱体を周囲温度に冷却することを何回も行うことが難しいことから、システム内部で使用する前に発熱体の低温抵抗Rcに対しては、広範なモデリングと測定が必要となるかもしれない。更に、当業者であれば分るように、アルミニウムの消耗を決めるために本発明の実施例によって使用されるモデルにおける精度を高めるために、温度測定値のような追加の測定値(すなわち、最高温度や最低温度など)を使用できる。例えば、発熱体の特徴づけに使用されるモデルを更新するために、その発熱体の瞬時温度および対応する瞬時抵抗値をその寿命全体にわたって定期的に測定することができよう。
ここで開示した実施例は、あらゆる面で例示的であって、限定的でないとみなされる。本発明は、ここで開示されていない他の形で、特許請求の範囲の精神から逸脱することなく実施することができる。本発明の範囲は、前述の説明よりむしろ添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、またそれと等価なものの意味と範囲の中で生じるすべての変更は、その中に含まれるものとする。
発熱体コアを作るために使用されるワイヤ合金の一例を示す図である。 図1に示したタイプのワイヤ合金の、熱サイクル劣化を示す図である。 時間全体にわたっての発熱体の様々な抵抗特性のパーセンテージ変化のグラフを示す図である。 異なる直径の発熱体に対する抵抗比XRのパーセンテージ変化のグラフを示す図である。 本発明の一実施例と関連した1つの例示的な方法を図示するフローチャートを示す図である。 本発明の一実施例と関連した1つの例示的な方法を図示するフローチャートを示す図である。 合金を急冷した場合の様々な温度における抵抗比XRのグラフを示す図である。 合金を徐冷した場合の様々な温度における抵抗比XRのグラフを示す図である。 急冷時と徐冷時とで異なるアルミニウム含有量パーセントを有する合金の抵抗比XRのパーセンテージ変化を比較するグラフを示す図である。 本発明の一実施例に従って変数値を追跡するために使用されるリレーショナルデータベースを示す図である。 本発明の一実施例によるインピーダンスモニタのブロック図である。 本発明の一実施例によるインピーダンス計算機の概略図である。 本発明の一実施例によるディジタルサンプルホールド回路の一部分の概略図である。 本発明の一実施例によるディジタルサンプルホールド回路の一部分の概略図である。 本発明の一実施例による決定回路の一部分の概略図である。 本発明の一実施例による決定回路の一部分の概略図である。 本発明の一実施例による決定回路の一部分の概略図である。 アルミニウム約5.8%を含有する要素に対する、20℃で1.0に正規化された様々な温度における抵抗温度曲線を示す図である。 アルミニウム約2.5%を含有する要素に対する、20℃で1.0に、1400℃で1.044にそれぞれ正規化された様々な温度における抵抗温度曲線を示す図である。 異なる合金組成および異なる長さからなる要素に対する、温度範囲全体にわたっての抵抗温度曲線を示す図である。 異なる合金組成および異なる長さからなり、その組成および伸びの影響が不均等に測定される要素に対する、温度範囲全体にわたっての抵抗温度曲線を示す図である。 異なる合金組成および異なる長さからなり、その組成および伸びの影響が不均等に測定される要素に対する、温度範囲全体にわたっての抵抗温度曲線を示す図である。 要素が温度範囲全体にわたって加熱されるにつれて劣化するその要素の抵抗変化を詳細に示す図である。

Claims (37)

  1. 発熱体に成形される材料の状態監視方法であって、
    材料の少なくとも2つの特性について基準ベースラインを決定することと、
    前記材料の少なくとも2つの特性を時間および/または温度にわたって監視することと、
    前記の監視した少なくとも2つの特性を前記基準ベースラインと比較することと、
    前記の監視した少なくとも2つの特性と基準ベースラインとの間の差が所定の値に達するか該所定の値を超える時に信号を開始することと、
    を包含し、ここで、前記の監視した少なくとも2つの特性と基準ベースラインとの間の差は、前記材料の伸び、材料の組成の冶金的変化および材料の横断面積の減少のうちの1つ以上に起因する差である、状態監視方法。
  2. 前記基準ベースラインは前記材料の状態の幾何学的モデルである請求項1に記載の方法。
  3. 前記監視した特性は前記材料の状態を表すものである請求項1に記載の方法。
  4. 前記特性の1つは前記材料の電気抵抗である請求項1に記載の方法。
  5. 前記特性の1つは電圧値である請求項1に記載の方法。
  6. 前記特性の1つは電流値である請求項1に記載の方法。
  7. 前記特性の1つは温度値である請求項1に記載の方法。
  8. 前記監視を所定の温度範囲にわたって実行する請求項1に記載の方法。
  9. 前記監視を20℃から1400℃の温度範囲にわたって実行する請求項8に記載の方法。
  10. 前記監視を前記材料が置かれた室を閉鎖することなしに実行する請求項1に記載の方法。
  11. 前記材料の特性の監視を前記材料の電気抵抗の測定によって実行する請求項1に記載の方法。
  12. 前記の監視した特性と基準ベースラインとの間の差は前記材料の伸びによって生じる請求項1に記載の方法。
  13. 前記の監視した特性と基準ベースラインとの間の差は前記材料の組成の冶金的変化によって生じる請求項1に記載の方法。
  14. 前記の監視した特性と基準ベースラインとの間の差は前記材料の横断面積の減少によって生じる請求項1に記載の方法。
  15. 前記差が2つ以上の特性の変化によって生じ、ここで、どの特性の変化の度合いも、前記の監視したその他の特性の1つ以上の変化の度合いに等しくない請求項1に記載の方法。
  16. 前記材料は、鉄72.2%、クロミウム22.0%およびアルミニウム5.8%の合金からなるワイヤ発熱体である請求項1に記載の方法。
  17. 前記所定の値は、前記材料の冶金的変化を示し、アルミニウム含有量が前記合金の3.0%より少なくなる変化を含む請求項16に記載の方法。
  18. 前記基準ベースラインと監視した特性とはグラフ表示に変換され、前記監視した特性と基準ベースラインとの間の比較は幾何学的比較である請求項1に記載の方法。
  19. 前記差が所定値に達する時に前記信号が開始される請求項1に記載の方法。
  20. 前記の開始された信号は決定部に送られる請求項1に記載の方法。
  21. 前記の監視された特性の急激な変化に基づいて前記材料の劣化または破損を検出することを含む請求項1に記載の方法。
  22. 発熱体の状態監視方法であって、
    発熱体の材料測定された特性を基準ベースラインとして表す第1のグラフ表示を決定することと、
    前記測定された特性のグラフ変化の閾値レベルを設定することと、
    間隔をおいた後の前記発熱体の材料の特性の状態を反映するデータを収集することと、
    前記の収集したデータを第2のグラフ表示に変換することと、
    前記第1のグラフ表示と第2のグラフ表示との間の差を前記グラフ変化の閾値レベルと比較することと、
    前記差が前記閾値レベルに達するか該閾値レベルを超える時に決定部に信号を送ることと、
    包含し、前記測定された特性は、前記発熱体の抵抗測定値、前記発熱体の温度測定値、前記発熱体の電流測定値、又は前記発熱体の電圧測定値の少なくとも1つである、発熱体の状態監視方法。
  23. 前記発熱体は、鉄72.2%、クロミウム22.0%およびアルミニウム5.8
    %の初期合金組成を有する請求項22に記載の方法。
  24. 前記の収集したデータは前記発熱体の材料の抵抗測定値を包含する請求項22に記載の方法。
  25. 前記の比較を幾何学的比較として行う請求項22に記載の方法。
  26. 発熱体に成形される材料の状態監視装置であって、
    材料の初期組成を初期時点における基準ベースラインとして決定する手段と、
    指定された時間間隔をおいた後の前記材料の後続組成を反映するデータを収集する手段と、
    前記初期組成から前記後続組成までの間の変化の閾値レベルを設定する手段と、
    前記時間間隔が過ぎた後の前記材料の組成変化を監視する手段と、
    前記の監視した変化が前記閾値レベルに達したか該閾値レベルを超えた時に決定部に信号を送る手段と、
    を包含する材料の状態監視装置。
  27. 前記初期組成を設定する手段が、鉄72.2%、クロミウム22.0%およびアルミニウム5.8%を含有する材料に対する抵抗ベースラインを設定する請求項26に記載の装置。
  28. 前記閾値レベルは、アルミニウム2.5%を含有する前記材料の組成に対応するレベルを含有し、前記材料の組成は、5.8%のアルミニウムを初期に包含する前記請求項26に記載の装置。
  29. 前記データを収集する手段はマイクロコントローラを包含する請求項26に記載の装置。
  30. 前記データを収集する手段は発熱体の状態を感知する感知メカニズムを包含する請求項26に記載の装置。
  31. 前記感知メカニズムは発熱体の電気的特性を感知する請求項30に記載の装置。
  32. 前記設定する手段は、20℃から1400℃までの温度範囲にわたって1.0から1.27までの正規化された抵抗曲線に相当する閾値レベルを設定する請求項26に記載の装置。
  33. 前記監視する手段はマイクロコントローラを包含する請求項26に記載の装置。
  34. 更に、ひとたび、前記閾値レベルに達したかそれを超えた場合に前記信号を送る手段に応答する決定部を包含する請求項26に記載の装置。
  35. 前記決定部はマイクロコントローラを包含する請求項34に記載の装置。
  36. 発熱体の特性の監視方法であって、
    材料の少なくとも2つの測定特性について基準ベースラインを決定することと、
    前記材料の前記少なくとも2つの測定特性を時間および/または温度にわたって監視することと、
    前記の監視した測定特性を前記基準ベースラインと比較することと、
    前記の比較が、発熱体特性の変化が前記基準ベースラインから所定の値に達したか、又は該所定の値を超えたことを示す時に信号を開始することと、
    を包含し、前記発熱体特性は、前記材料の伸び、材料の組成の冶金的変化および材料の横断面積の減少のうちの少なくとも1つである、特性の監視方法。
  37. 前記の比較は、前記基準ベースラインと、前記材料の前記の監視される少なくとも2つの測定特性との間の幾何学的相違を決定する請求項36に記載の方法。
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