JP4887501B2 - 極細フィラメントからなる不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、地球環境の観点から、資源循環型社会への移行のため、農業用資材、オムツや包装資材等の家庭用・産業資材においても生分解性繊維が強く求められてきている。生分解性繊維は、特に不織布の分野で多くの用途をもち、種々の製造方法が提案されている(例えば、特開2000−273750、特開2001−123371)。それらは、不織布のカバリングパワーや保温性、オムツにおける触感等の観点から、フィラメント径の小さな不織布が求められていた。しかし、紡糸性や延伸性が悪いことから、フィラメント径の小さい不織布を簡便にコスト安く製造することが困難であった。
また、広義の生分解性繊維として、生体内分解吸収性繊維があり(例えば、特開平8−182751号)、医療面から生体内分解吸収性繊維からなる不織布も、縫合補綴材、癒着防止材、人工皮膚、細胞培養基材など種々の分野で使用されており(例えば、特開2000−157622、特開2004−321484)、この分野においても、細くて強度のあるフィラメントからなる不織布が求められている。
また本発明の目的とするところは、安定した紡糸条件で太い生分解性フィラメントを紡糸し、それを元に高度の分子配向性を有す極細生分解性フィラメントからなる長繊維不織布を製造可能とすることにある。さらに他の目的は、生体内分解吸収性フィラメントからなり、縫合補綴材、癒着防止材、人工皮膚、細胞培養基材などに使用される不織布を提供することにある。
本発明の原フィラメントは、ポリエチレンテレフタレートや脂肪族ポリエステルを含むポリエステル、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)を含むポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、フッ素系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオキシメチレン、エーテルエステル系ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなるフィラメントであれば使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)、ポリプロピレンは、延伸性もよく、分子配向性もよく、本発明の極細フィラメントからなる不織布の製造に特に適する。また、アラミド等の高強度、高弾性ポリマーも本発明の赤外線ビームによる延伸性もよく、本発明の極細不織布の製造に特に適する。
本発明は、高度に延伸された生分解性フィラメントからなる不織布を得るのに特に好適な製造手段を提供することができる。生分解性フィラメントは、生分解高分子からなるフィラメントで、生分解高分子(JISK3611)は、自然界の土壌や海水中に生存する微生物や生体酵素によって比較的容易に分解され、その分解生成物が無害である高分子材料とされている。本発明における生分解性フィラメントとは、上記の生分解性高分子からなり、その高分子が熱可塑性高分子であり、例えば、下記の高分子を主成分(30%以上)とするフィラメントを云う。ポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートやそれらの変性ポリマー等からなり、これらを主成分(30%以上)とし、他の成分を含むものもであってもよい。
上記生分解性フィラメントは、地中で12ヶ月経過することにより、強度が、好ましくは1/2以下に、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは、10%以下になるフィラメントである。微生物分解性で、循環型社会に貢献するために、地中での生分解性を要件とするものである。
本発明の生分解性は、広義の生分解性を意味し、生体内分解吸収性を有する場合も含まれる。生体内分解吸収性とは、細胞、血液、結合組織など生体組織内で直接接触して使用され、生体内で分解するが、有害物質とはならず、生体内で吸収されてしまう性質をいう。本発明における生体内分解吸収性フィラメントとは、上記の生体内分解吸収性高分子からなり、例えば、次のような高分子からなるフィラメントを云う。ポリグリコール酸に代表される脂肪族ポリエステルや、ポリラクチド、ポリグルタミン酸、ポリ−p−ジオキ酸、ポリ−α−リンゴ酸、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸やそれらの変性ポリマーからなり、これらを主成分(30%以上)とし、他の成分を含むものであってもよい。
本発明は、原フィラメントが延伸された後不織布を形成する手段を提供するものである。本発明における、原フィラメントとは、既にフィラメントとして製造されて、ボビン等に巻き取られたものであってもよいし、紡糸過程において、溶融または溶解フィラメントが冷却や凝固によりフィラメントとなったものを、紡糸過程に引き続き使用され、本発明の延伸手段の原料となる性フィラメントとして使用してもよい。生分解性樹脂、特にポリ乳酸やポリグリコール酸は、熱分解性が大きいので、あまり高温で紡糸することができないが、本発明の原フィラメントは太くてよいので、分子量の比較的大きなポリ乳酸等であっても比較的低温で紡糸することができる。
本発明の原フィラメントは、既に分子配向している場合であっても、延伸性はあまり損なわれないことを特徴とする。本発明において、赤外線光束によって延伸される延伸開始部において、原フィラメントの径以上の膨張部をもって延伸される場合がある。このような特異な現象は、通常の合成繊維の延伸では観察されていない。この現象も、延伸温度を原生分解性フィラメントの融点前後まで上昇し、狭い領域での延伸を可能にしたことに由来するものと思われる。このように膨張部をもって延伸されることにより、100倍以上、あるいは500倍以上、好適な条件では1,000倍以上の延伸を可能にした。
本発明では、フィラメントを送り出す手段から送り出された原フィラメントについて延伸が行われる。送出手段は、ニップローラや数段の駆動ローラの組み合わせなどによる一定の送出速度で、フィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。
フィラメントの送り出し手段により送り出された原フィラメントは、さらに送風管を通して、送風管中を原フィラメントの走行方向に流れる気体によって送られることが望ましい。本発明においては、延伸張力が非常に小さいため、送り出されてくるフィラメントに、途中の抵抗等で張力のムラが生じると、延伸性に大きく影響する。そのため、このような送風管で、抵抗の少ないように送られてくることが望ましい。なお、この送風管と同様な形状のものは、不織布製造における延伸張力調整手段としても用いられる。この送風管の形状等については、不織布製造手段に記載する。
送風管の出口には、フィラメントの位置を規制する案内具を設けることが好ましい。導かれてきた原フィラメントは、赤外線光束による加熱で延伸されるが、その加熱は、非常に狭い範囲において加熱されることが特徴であり、その狭い範囲の加熱を可能にするため、フィラメントの位置を規制する案内具を設ける。上記の送風管の出口の形状によって、そのような機能を持たすことも可能であるが、送風管はフィラメントを送る気体の通気や、フィラメントの通し易さに重点を置き、その後に簡便な案内具でフィラメントの位置を規制することが好ましい。案内具は、細い管や溝、コーム、細いバーの組み合わせなどが使用できる。
本発明の原フィラメントは、赤外線加熱手段(レーザーを含む)により照射される赤外線光束により延伸適温に加熱される。赤外線は原フィラメントを加熱するが、延伸適温に加熱される範囲が、フィラメントの中心でフィラメントの軸方向に、上下4mm(長さ8mm)以内であることが好ましく、さらに好ましくは上下3mm以下、最も好ましくは上下2mm以下で加熱される。本発明は、狭い領域で急激に延伸することにより、高度の分子配向を伴った延伸を可能にし、しかも超高倍率延伸であっても、延伸切れを少なくすることができた。なお、この赤外線光束が照射されるフィラメントがマルチフィラメントである場合は、上記のフィラメントの中心はマルチフィラメントのフィラメント束の中心を意味する。
本発明の赤外線加熱には、レーザーによる加熱が特に好ましい。中でも、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザーと、1.06μmの波長のYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット系)レーザーが特に好ましい。レーザーは、放射範囲を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。本発明の炭酸ガスレーザーは、パワー密度が10W/cm2以上、好ましくは20W/cm2以上、最も好ましくは、30W/cm2以上である。狭い延伸領域に高パワー密度のエネルギーを集中することによって、本発明の超高倍率延伸が可能となるからである。
なお、この場合の赤外線光束の照射は、複数箇所から照射されることが好ましい。フィラメントの片側のみからの加熱は、そのポリマーの融解温度が高い場合や、溶融が困難な場合、また、もともと延伸が困難なフィラメントの場合は、非対称加熱により延伸が困難になるからである。このような複数箇所からの照射は、複数個の赤外線光束の光源から照射してもよいが、一つの光源からの光束を鏡によって反射させることにより、複数回、原フィラメントの通路に沿って照射させることによって達成することもできる。鏡は、固定型ばかりでなく、ポリゴンミラーのように回転するタイプも使用することができる。
また、複数箇所からの照射の別な手段として、複数光源からの光源を原フィラメントに複数箇所から照射する手段がある。比較的小規模のレーザー光源で安定してコストの安いレーザー発振装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。
一般に、延伸はフィラメント等を延伸適温に加熱して、それに張力が加わることにより行われる。本発明の配向が向上したフィラメントから構成される不織布を製造する際に適応されるフィラメントの延伸張力は非常に小さく、単糸当たり好ましくは10MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下、最も好ましくは0.1MPa以下にすることで延伸される。10MPaを越えると、延伸切れが生じ易くなり、高倍率延伸するためには、このような小さい張力範囲にあることが望ましい。このように小さい延伸張力で、延伸倍率が100倍以上、好ましくは500倍以上、ひいては1,000倍以上という極端に大きな倍率が実現できる。このような超高倍率に延伸できるのは、延伸温度が融点前後と、極端に高い温度を維持しつつ、非常に狭い延伸領域であるため、フィラメントの切断を免れて変形できるものと思われる。合成繊維の通常のローラ間延伸では、10MPaから100MPaという張力で延伸されていることと比較して、大幅に異なる範囲で延伸されていることに特徴がある。
本発明におけるフィラメントの延伸の張力は、送風管中の気体の流れによって発生する張力と、フィラメントの自重により与えられる張力程度で延伸される。これは、一般の延伸が、ローラ間の速度差によって与えられる張力や、巻取による張力によって延伸されることと原理的に異なる。
本発明において、得られた延伸フィラメントの延伸倍率は100倍以上、好ましくは500倍以上、さらに好ましくは1,000倍以上の超高倍率で延伸されることを特徴とする。通常の合成繊維の延伸では、3〜7倍であり、PET繊維のスーパードローイングでも10数倍程度であることを考慮すると、本発明の延伸が100倍以上の超高倍率での延伸を可能にしたところに本発明の特徴がある。このように超高倍率の延伸を可能にしたのは、非常に狭い領域での延伸を可能にしたことにより、その間の延伸温度を原フィラメントの融点前後まで上昇することができ、そのために延伸張力が小さくなるが、その小さい延伸張力と超高倍率をコントロールする手段を見いだしたことに本発明の特徴がある。このように超高倍率延伸を可能にしたことにより、繊維径が10μm以下、さらには5μm以下、さらに3μm以下といった超極細フィラメントの製造を可能にしたばかりでなく、フィラメント製造の生産速度を数百倍に高めたことにもなり、生産性の面からも意義がある。
なお、本発明における原フィラメントの複屈折で測定した配向度fは、下式により示される。なお、この式では、密度の補正が必要であるが、煩雑になるので無視して計算する。
f(%)=(Δn/Δnc)×100
ここで、Δnは実測で得た複屈折で、Δncは、それぞれのポリマーの結晶の複屈折で、理論値等から求められており、それらの値は必ずしも一致しないが、一般に多く用いられる値として、ポリエチレンテレフタレートでは、0.24であり、ナイロン6または66では、0.096であり、アイソタクチックポリプロピレンでは、0.042である。ポリ乳酸やポリLグリコール酸の結晶の複屈折値は、0.033程度と云われている。本発明における複屈折の測定法は、レターデーション法によった。
また、本発明における延伸倍率λは、原フィラメントの径doと延伸後のフィラメントの径dより、下記の式で表される。この場合、フィラメントの密度は一定として計算する。繊維径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、原フィラメントは350倍、延伸フィラメントは1000倍での撮影写真に基づき、10点の平均値で行う。
λ=(do/d)2
なお、本発明におけるフィラメントのX線配向度fは、下式のX線半価幅法により示される。
f(%)=[(90−H/2)/90]×100
ここで、Hは、ポリマーの結晶の主ピークを有する面のデバイ環に沿っての強度分布の半価を示す。
本発明人は、本発明の先願発明において、延伸されたフィラメントを、走行するコンベア上に集積することによって、延伸されたフィラメントからなる不織布を製造することができた(特開2004−107851)。その不織布は、極細フィラメントで高度に分子配向したフィラメントからなる不織布を簡便に製造できることに意義がある。本発明は、この不織布を構成するフィラメントの配向度をさらに向上させる手段に関する。本発明において、不織布を構成するフィラメントの分子配向を向上させる手段として、延伸後に送風管を設けることを特徴とする。原フィラメントが赤外線ビームで加熱されて送風管内に通され、その送風管内のエアーの速度により張力制御されて一定倍率に得されたフィラメントとしてコンベアベルト上に集積される。従来の不織布の製法としてスパンボンド法があり、そこでも紡糸直後に送風管(エアーサッカーと呼ばれることが多い)が採用されている。しかし、本発明における送風管は、スパンボンド法におけるエアーサッカーとはその機能を異にする。スパンボンド法におけるエアーサッカーでは、紡糸直後における溶融ポリマーからのドラフト倍率をアップさせるために使用され、そのために使用される風速は、大きいほど良いとされている。しかし、風速には音速の壁があり、その壁をいかに克服するかがスパンボンド法の現在の課題である。それに対して、本発明における送風管は、紡糸における溶融樹脂からのドラフト倍率を上げるためではなく、いったん成形されたフィラメントを、延伸するための張力を付与する手段として用いられ、しかも、10MPa以下という非常に小さい延伸張力に調整されるための手段として用いられる。したがって、一定の風速範囲が最も適することとなる。
本発明における送風管によって発生する送風速度は、実測した風速ではなく、送風管内を流れる風量から計算した計算上の風速を用いる。狭い管内における風速は、壁の影響もあり、また狭い空間での風速を測定すると、測定機器が風速に与える影響もあり、逆に厳密ではないからである。本発明における送風管内の風速は、1.5m/sec以上であって10m/sec以下であることが好ましく、さらに好ましくは2m/sec以上であって7m/sec以下であり、3m/sec以上であって6m/sec以下であることが最も好ましい。この値は、音速の331m/secに比較して、2桁程度小さい値である。このような範囲の風速にすることにより、フィラメントの分子配向が向上し、超高倍率延伸によりフィラメントの径も小さくなる。すなわち、これらの範囲にすることにより、フィラメントの延伸効果が最もよくなるからである。従来のスパンボンド法による不織布では、音速に近い風速を使用しながら、フィラメントの分子配向が本発明に比較して小さく、また、本発明では簡単に実現できるフィラメント径が10ミクロン以下の不織布にすることは、スパンボンド法では困難である。本発明では、10μm以下のフィラメント径の不織布が簡単に得られ、5μm以下、3μm以下といったフィラメントからなる不織布とすることができる。なお、送風管を流れる気体は、通常、室温の気体が使用されるが、延伸されたフィラメントを加熱したい場合(例えば熱処理効果をもたらすため)には、加熱エアーが使用される。また、原フィラメントが、酸化されるのを防ぐ場合は、窒素ガス等の不活性ガスが使用され、水分の飛散を防ぐ場合は水蒸気や水分を含む気体が使用される。
本発明における送風管は、必ずしも筒状である必要がなく、溝状であってもよく、それらの中を気体とともに原フィラメントが流れればよい。複数本同時に流す場合は、長方形や他の形状も用いられる。1本のフィラメントを流す場合の管の断面は、円が好ましいが、矩形でもその他の形状でもよい。管を流れる気体は、枝分かれした管の一方より供給してもよく、管が2重になっており、外側の管から内側の管へ、孔などによって供給してもよい。合成繊維のインターレース紡糸やタスラン加工に使用されるフィラメントの空気交絡ノズルも本発明の送風管として使用される。また、スパンボンド不織布のエアーサッカーとして使用される多数本同時吸引方式も本発明では使用することができるが、スパンボンドほど多量高速のエアーは必要ないので、構造も簡便なものでよい。
本発明によるフィラメントからなる不織布は、コンベアに集積された後、熱処理されることが望ましい。しかし、本発明における延伸されたフィラメントは、高度に分子配向しており、しかも超高速でコンベア上に集積されるため、熱処理が不十分である。したがって、コンベア上で熱処理されるが、通常の不織布の熱処理のように、単にコンベア上での熱風や赤外線による加熱では、コンベア上でのフィラメントの集積体が全体として収縮し、幅が狭くなるばかりでなく、分子配向が低下し、また全体として形状が乱れることや、不織布の粗密が拡大するなどの不都合が生じる場合がある。
本発明における不織布の熱処理手段として、コンベア上に集積されたフィラメントの集合体の両耳端を把持して、熱処理適温で加熱処理されることが望ましい。このようにフィラメントの集積体の両耳端部を把持して加熱処理されることで、フィラメントの集積体は、平面状の不織布となる。市販のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布の製造法においては、エンボス加工や、熱プレス加工で平面化されて不織布とされるが、そのような加工では、不織布が硬くなり、風合いを損ねる。それに対して、本発明の熱処理手段では、平面に対してプレス作用が働かないので、柔らかく風合いが良いばかりでなく、不織布における空隙率を大きく取ることができ、フィルター特性もよい。この風合いを損なわないことは、本発明の不織布が極細フィラメントからなる不織布であることより、せっかく極細フィラメントが有している風合いの良さを、熱処理で減失しないためにも、非常に重要である。
本発明における不織布の他の熱処理手段として、コンベア上に集積されたフィラメントの集合体を、前後のニップローラで把持し、しかもその把持間隔を小さくした状態で、熱処理適温で加熱処理されることによっても実現できる。この把持間隔として、好ましくはフィラメント集積体の幅の1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、1/5以下であることが最も好ましい。このように狭い範囲での前後のニップローラで把持により、両耳端把持の場合と同様の形態安定性のある不織布とすることができた。熱処理することにより、出来た製品の熱による形態安定性、引張強度アップなど物性が向上する。なお、この両耳端把持法と前後ニップロール把持法の両方を併用することもできる。
本発明における不織布製造時における加熱処理温度は、通常の熱可塑性合成繊維における熱処理温度である。本発明における熱処理の加熱手段としては、コンベア上から熱風を吹き付けることや、赤外線ヒータによる加熱、またそれらの併用も可能である。本発明のコンベアとして、網状コンベアの代わりに熱シリンダを用いることや、網状コンベアから熱シリンダからなるコンベアに移し、熱シリンダ上で、前記の把持手段を用いることによって装置が簡便になる。
本発明のフィラメントの配向が向上された不織布において、不織布を構成するフィラメントが、ポリエチレンテレフタレートである場合、複屈折が20×10−3以上で、好ましくは30×10−3以上であって、繊維径が8ミクロンメータ以下、好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下であることを特徴とする、高度に分子配向された極細ポリエステルフィラメントからなる不織布とすることができる。ポリエステルはコストも安く、耐熱性も大きく、強度、ヤング率を大きくできることから、衣料ばかりでなく、種々の産業用途において使用されており、高度に分子配向した極細フィラメントとすることで、さらに高度な用途において展開が期待される。
本発明の不織布を構成するフィラメントが、ポリグリコール酸又はポリL乳酸からなる広義の生分解性ポリマーである場合、複屈折が12×10−3以上で、好ましくは15×10−3以上であって、繊維径が7ミクロンメータ以下、好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下であることを特徴とする、高度に分子配向された極細生分解性ポリマーフィラメントからなる不織布とすることができる。生分解性ポリマーも繊維径を小さくすることで、柔軟性が増し、カバリングパワーを大きくし、また分解性をよくすることができる。また、配向度を向上させることで、強度、ヤング率を大きくできることから、種々の用途において使用適正を増すことができた。
また、本発明の極細フィラメントからなる不織布が、ポリエチレンテレフタレート系のフィラメントにより構成されている場合、極細不織布として、白血球を除去するためのフィルターなど、メディカル用不織布としての適正も有する。
さらに本発明は、生分解性ポリマーや生体内分解吸収性ポリマーの極細フィラメントからなる不織布を提供する。フィラメント径が細いので、単位面積当たりのフィラメント数が非常に多くなり(繊維径の2乗の逆数に比例)、カバリングパワーが増す。また本発明の生分解極細フィラメントからなる不織布は、ダマがないこと、フィラメント径が揃っていること、フィラメントの強度が大きいことなどの特徴もある。生分解性ポリマーからなる不織布の用途として、農業用マルチやオムツ用不織布などに使用される。本発明の生体内分解吸収性フィラメントからなる不織布は、縫合補綴材、癒着防止材、人工皮膚、細胞培養基材など広い用途に適合する。
第2図は、本発明に使用される送風管の概念図。
第3図は、本発明の原フィラメントに赤外線光束を複数箇所から照射するための鏡の配置の例を示し、A図は平面図、B図は側面図である。
第4図は、本発明の原フィラメントに赤外線光束を複数箇所から照射する他の例で、複数の光源を有する場合について平面図で示す。
第5図は、原フィラメントとしてポリエチレンテレフタレートを使用して不織布製造した場合の実験結果を示す図表。
第6図は、第5図とは別の条件下で行った場合の実験結果の図表。
第7図は、本発明で得られた極細不織布の電子顕微鏡写真(倍率500)。
第8図は、本発明で得られた極細不織布の電子顕微鏡写真(倍率1500)。
第9図は、市販メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真(倍率3,500)。
第10図は、原フィラメントとしてポリL乳酸ポリマーを使用して不織布製造した場合における実験結果の図表。
第11図は、原フィラメントとしてポリグリコール酸ポリマーを使用して不織布製造した場合における実験結果の図表。
第12図は、第11図で示した実験結果により得られた極細不織布の電子顕微鏡写真(倍率、aは1,000倍、bは1,500倍)。
本発明は、原フィラメント1が赤外線放射装置15により加熱されて、延伸されたフィラメント17となった後、送風管12を通過させることによって、一定の張力が与えられることにより、配向された極細フィラメントからなる不織布となることに特徴がある。この送風管内で、延伸されたフィラメント17は、一定の風速範囲となるエアーが与えられる。この一定の風速により、フィラメントは最も配向性が高まり、もっとも延伸倍率が向上した状態でコンベア18上に集積される。
第2図に、本発明で使用される送風管の例を示す。図Aは、延伸されたフィラメント17が通過する主管22に、矢印aより導入された空気が枝管23を通じて主管22と合流する。図Bは、二重管24で、内部が空洞になっており、矢印bより導入された空気は、二重管内壁に設けられた多数の孔25により、フィラメントの通路へ導かれる。図Cは、インターレース紡糸に使用される空気交絡ノズル26として使用されているノズルの例で、両サイドc1、c2から空気が吹き込まれる。図Dに、フィラメントが多数本同時に送風される送風管27の例を一部断面が表示される概念図で示す。フィラメントの走行方向Fのフィラメントの入り口28に導き入れられ、Aの方向から導かれたエアーは、エアーの入り口29から積極的に空気が送り込まれる。また、図Cのノズルは、本発明の延伸後のインターレース巻取に際しても使用できる。なお、第1図の送風管は、閉鎖型のものの例を示したが、一部が解放されて、溝状のものも使用することができる。
第3図に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の例を示す。図Aは平面図であり、図Bは側面図である。赤外線照射器より照射された赤外線光束31aは、原フィラメント1の通る領域P(図の点線内)を通って、鏡32に達し、鏡32で反射された赤外線光束31bとなり、鏡33で反射されて赤外線光束31cとなる。赤外線光束31cは、領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置から120度後から、原フィラメントを照射する。領域Pを通過した赤外線光束31cは、鏡34で反射されて、赤外線光束31dとなり、鏡35で反射されて、赤外線光束31eとなる。赤外線光束31eは領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置に、赤外線光束31cとは逆の120度後から原フィラメント1を照射する。このように、原フィラメント1は、3つの赤外線光束31a、31c、31eにより、120度ずつ対称の位置から均等に原フィラメント1を加熱することができる。
第4図に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の他の例で、複数の光源を使用する例を平面図で示す。赤外線放射装置から放射された赤外線光束37aは、原フィラメント1へ放射される。また、別の赤外線放射装置から放射された赤外線光束37bも、原フィラメント1へ放射される。さらに別の赤外線放射装置から放射された赤外線光束37cも、原フィラメント1へ放射される。このように、複数の光源からの放射は、比較的小規模の光源で安定したコストの安いレーザー発信装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。なお、図では光源が3個の場合を示したが、2個でもよいし、4個以上も使用できる。複数本延伸では、このような複数光源による延伸が特に有効である。
Claims (3)
- フィラメントの送出手段により原フィラメントが送り出される工程と、
送り出されてきた該原フィラメントが、赤外線光束により原フィラメントの軸方向に沿って上下4mm以内に加熱される工程と、
加熱された原フィラメントが送風管に送られ、該送風管内のエアー風速が1.5m/秒以上であり10m/秒以下であることにより、該原フィラメントが100倍以上に延伸される工程と、
延伸されたフィラメントがコンベア上に集積される工程と
を含む、極細フィラメントからなる不織布の製造方法。 - 前記不織布の製造方法において、製造された該不織布の両端を拘束して加熱処理される工程を含む、請求項1の前記不織布の熱処理方法。
- 前記不織布の製造方法において、製造された該不織布の前後を、該不織布幅の1/2以下で拘束して加熱処理される工程を含む、請求項1の前記不織布の熱処理方法。
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