以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
第一実施形態
以下、本発明の第一実施形態を図1と図2と図3Aと図3Bに基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図1は、本発明の第一実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図1には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。図2は、図1における標本周りの抽出図である。図3Aは、図1の右側に示されたセンサヘッドの上面図である。図3Bは、図3Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
まず、顕微鏡部の構成、作用に関して説明する。
顕微鏡部は、標本となる細胞103を乗せたカバーガラス104が載置されるXYステージ129と、XYステージ129の下方に配置された対物レンズ105と、対物レンズ105を介して細胞103を観察するためのCCD136と、CCD136と対物レンズ105とを光学的に結合する光路切り換えプリズム121とを有している。顕微鏡部は、さらに、細胞を眼で観察するための接眼レンズ110と、接眼レンズ110と対物レンズ105とを光学的に結合するミラー122と、ミラー122と接眼レンズ110の間に配置されたリレーレンズ109とを有している。顕微鏡部は、さらに、光源111とコンデンサレンズ113とを含む透過照明光学系と、水銀ランプ114と落射蛍光投光管115と蛍光フィルタカセット119とを含む落射蛍光照明系とを有している。
透過照明用の光源111からの照明光は、透過照明支柱112に設けられた透過照明用の光学要素、コンデンサレンズ113を介して、標本となる細胞103とカバーガラス104を照明する。
また、落射蛍光照明用の水銀ランプ114からの照明光は、落射蛍光投光管115を介して蛍光フィルタカセット119に配された励起フィルタ116により細胞103に染色された蛍光色素を効率的に励起できる波長のみに選択的に透過され励起光となり、ダイクロイックミラー117により観察光軸108と同軸的に導光すると共に対物レンズ105へ向けて反射され、対物レンズ105を介して細胞103に染色された蛍光色素を励起する。ここで、蛍光用フィルタである、励起フィルタ116、ダイクロイックミラー117、吸収フィルタ118は蛍光フィルタカセット119にそれぞれ四種類装着されており、ターレット式等の公知の切り換え機構により、使用する蛍光色素に合わせて光路上に挿脱、切り換えできるようになっている。
一方、カバーガラス104に乗せた細胞103はXYステージ129に積載されており、図示しないXYハンドルにより細胞103の観察したい位置に移動できるようになっている。細胞103の下には細胞103の像を無限遠に投影する為の対物レンズ105がレボルバ106にねじ込まれている。図中には対物レンズ105は一本しか装着されていないが、レボルバは五本の対物レンズが装着可能になっており、入力手段172に配された図示しないボタン等で押すと、制御部138によりモータ174を介してその外周を回す事で所望の対物レンズに切り換えられるようになっている。また、図示していないが、センサによりレボルバ106の回転位置を検出し、光路に入ってる対物レンズを制御部138で認識できるようにもなっている。さらに、レボルバ106はビス止めされたレボルバ嵩上げ部材126を介して上下ガイド125に保持されておりモータ123により上下させる事で細胞103にピントを合わせられるようになっている。なお、モータ123は制御部138から制御されるが、焦準ハンドル124を回転させる事でレボルバを上下させる事もできるようになっている。
対物レンズ105から出射された無限遠に投影される平行光は、結像レンズ120により対物レンズ一次像面130a、130bへ結像される。ここで、蛍光観察の場合は細胞103から発した蛍光が対物レンズ105から出射され、ダイクロイックミラー117を透過し、吸収フィルタ118により観察に必要な波長に選択的に透過され結像レンズ120へと導かれ対物レンズ一次像面130a、130bへと結像する。
光路切り換えプリズム121は、観察光軸108上に挿脱可能に保持されている。136で観察する場合は、光路切り換えプリズム121が観察光軸108上に挿入され、対物レンズ一次像130bは光路切り換えプリズム121で反射され、CCD136で観察できるようになっている。一方、眼で観察する場合は、光路切り換えプリズム121が観察光軸108から外され、対物レンズ一次像面133aはミラー122により接眼レンズ110へ向けて反射される。さらに対物レンズ一次像面はリレーレンズ109によりリレーされ、接眼レンズ110により眼で観察できるようになっている。
透過照明観察の場合も、蛍光フィルタを光路から外して観察を行う事以外は蛍光観察と同様である。
次に顕微鏡フォーカス維持装置に関して構成、作用を説明する。
顕微鏡フォーカス維持装置は、大きく分けて、レーザー光ビームによりフォーカス検出を行うセンサヘッド137と、センサヘッド137と対物レンズ105とを光学的に結合する顕微鏡側の光路切り換え部とで構成されている。まず、顕微鏡側の光路切り換え部から説明する。
光路切り換え部は、ダイクロイックミラー134と、ダイクロイックミラー134を固定ガイド131に対して移動可能に保持している可動ガイド132とを含んでいる。
ダイクロイックミラー134は、センサヘッド137からの800nmのレーザー光のみを反射し、観察に必要な可視光は全て透過する特性となっており、センサヘッド137のセンサヘッド光軸170から出射されるレーザー光ビームを観察光軸108へ同軸的に導くと共に対物レンズ105へ向けて反射させる。このダイクロイックミラー134は可動ガイド132に接着またはバネ等で固定されている。また、可動ガイド132には観察光軸108上のダイクロイックミラー134の下にIRカットフィルタが接着固定されている。このIRカットフィルタは眼にレーザー光が入る事を防止する為に800nmのレーザー光をカットし観察に必要な可視光のみを透過させるようになっている。
可動ガイド132はそのガイド部132aを介して固定ガイド131のガイド部131aに対して図1左図中の矢印の方向(検鏡者に対して前後方向)に移動可能になっており、操作レバー133を前後に動かす事でダイクロイックミラー134、IRカットフィルタ135を観察光軸108から挿脱できるようになっている。さらに可動ガイド132には遮光板171が固定されており、図1中の左図のようにダイクロイックミラー134が光路から外れた場合に遮光板171がセンサヘッド光軸170上に挿入され、レーザー光ビームが顕微鏡本体169の右側に出射されないようになっているので、検鏡者に有害なレーザー光が照射される心配がないようになっている。
なお、固定ガイド131は下前側ステージ嵩上げ部材127aと下奥側ステージ嵩上げ部材127bにビス止め固定されて顕微鏡本体169に保持されると共に、センサヘッド137をセンサヘッド137の勘合部150aを介して保持固定している。
このようにレボルバ106と蛍光フィルタカセット119の間にダイクロイックミラー134の切り換え機構とセンサヘッド137のマウントを配置しているので、このスペースを確保する為に、前述したようにレボルバ106をレボルバ嵩上げ部材126で嵩上げすると共に、XYステージ129、透過照明支柱も嵩上げしている。XYステージ129は顕微鏡本体169にネジ固定された下側ステージ嵩上げ部材127a、127bと、下側ステージ嵩上げ部材127a、127bにネジ固定された上側ステージ嵩上げ部材128a、128bにより嵩上げされており、XYステージ129は上側ステージ嵩上げ部材128a、128bにビス固定されている。
ここで嵩上げ部材が二体化されているのは、もともとXYステージ129を顕微鏡本体169に固定していたネジを利用して嵩上げをしようとすると、嵩上げ部材をXYステージ129と共締めしなくてはならず、そうするとXYステージ129を外しただけで嵩上げ部材も固定されなくなってしまい、さらには嵩上げ部材に固定されている固定ガイド131、センサヘッド137までもが固定されなくなり、センサヘッド137と顕微鏡本体169との光学的な心がずれる事で安定してフォーカス維持できなくなる為である。
次にセンサヘッド137に関して主に図3Aと図3Bに基づき説明する。
センサヘッド137は、レーザーダイオード(LD)145と、LD145からのレーザー光ビームの径を規制するビーム径規制シボリ144と、ビーム径規制シボリ144からの円形ビームを半円形ビームに変える瞳分割シボリ142と、レーザー光ビームを偏向するミラー140と、レーザー光ビームをコリメートする結像レンズ139とを有している。センサヘッド137は、さらに、出射光と戻り光とを分離するビームスプリッタ141と、ビームスプリッタ141からの戻り光ビームを偏向するミラー148と、戻り光を検出するフォトダイオード(PD)149とを有している。センサヘッド137は、さらに、高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143と、これを光路上に適宜配置するためのモータ175とを有している。
レーザーダイオード145から発振した800nmのレーザー光ビーム146aはその中心に円形の開口が設けられたビーム径規制シボリ144により必要なビーム角度に規制され、さらに瞳分割シボリ142により円形ビームが半円形ビームに規制され、ビームスプリッタ141を透過し、ミラー140を反射して、結像レンズ139によりレーザー光ビームがコリメートされる。図3A中、参照符号146bがレーザー投射側の光ビームを表している。ここで、ビーム径規制シボリ144はLD145から出射するレーザー光ビームのうちの必要ない光ビームを規制する事でフレアー等によるフォーカス検出の誤作動を防いでいる。
センサヘッド137から出射したコリメートされたレーザー光ビームはダイクロイックミラー134で反射され対物レンズ105で集光され、図2の矢印のようにカバーガラス104と細胞103の境界面で反射され、再び対物レンズ105、ダイクロイックミラー134を介してセンサヘッド137に戻ってくる。図3A中、参照符号146cは標本で反射して戻ってきたレーザー光ビームを表しており、検出側の光路になっている。
センサヘッド137に戻ってきたレーザー光は、ミラー140、ビームスプリッタ141、ミラー148で反射されると共に、結像レンズ139で光電変換機能をもった受光素子であるフォトダイオード149上へ集光されて入射する。ここで検出側の光路に瞳分割シボリ147が配置してあるが、これは途中の光路で発生したフレアーなどのフォーカス検出に有害なレーザー光ビームをカットする目的で配置されている。
これまでの説明から分かるように、本実施形態の顕微鏡フォーカス維持装置では、フォーカス検出光路は、蛍光観察装置すなわち蛍光フィルタカセット119よりも対物レンズ105の側から導光されている。ここで、フォーカス検出光路は、対物レンズ105からダイクロイックミラー134を経由してセンサヘッド137に至る光路である。レーザー光ビームの導光は、レーザー光と観察光の一方を反射し他方を透過するダイクロイックミラーによって行われる。レーザー光の波長は蛍光観察に使用する波長と異なっている。
次に以上の構成によるフォーカス検出方法の簡単な概要を説明する。
PD149は、瞳分割シボリ142、127による瞳分割方向に垂直な方向で瞳分割面
を境界としてA相とB相の二つの領域にその出力が分かれた二分割のフォトダイオードであり、PD149に入射したレーザー光ビームはPD149で光電変換され、そのPD149の出力がフォーカス位置の変動と共に図15のような変化をする。図15は、二分割のフォトダイオードのそれぞれの出力をA相、B相として縦軸に、標本側でフォーカスの光軸方向の移動を横軸にとったグラフである。図中のA+BはA相の出力とB相の出力を加算した値である。
PD149の出力に対しては制御部138で様々な所定の演算が施され、また、同時に制御部138ではフォーカス駆動の為のモータ123も制御することで、最終的には図15中のA相の出力とB相の出力が同一になったフォーカス位置を合焦位置と判断する事でフォーカスの検出を行う。
より詳しくは、まず、このA+Bの値に対して対物レンズの種類や標本の反射率ごとにある適正なスレッシュホールドの値を予め設定しておく。次に、フォーカスを移動させながらA+Bがこのスレッシュホールドを超えているかどうかを監視する。そして、A+Bがスレッシュホールドを超えた所で初めてフォーカス検出の為の演算、例えば(A−B)/(A+B)がゼロになったかどうかの演算を行う。
ここでA+Bがスレッシュホールドを超えるフォーカスの範囲をフォーカス補足範囲と呼ぶ。スレッシュホールドが低く過ぎるとフォーカス補足範囲が広くなるのでフォーカス検出の為の演算を行う範囲も広くなり、演算する時間が増えてしまうのでフォーカス検出に時間がかかってしまう。また、大きくデフォーカスされた状態のレベルの低いフォーカス信号(受光素子の出力)をも演算しなくてはならないので相対的にノイズ成分の影響を受けやすく誤作動を起し易くなる。
一方、スレッシュホールドが高すぎる場合にはフォーカス補足範囲は狭くなるが、あまりにフォーカス補足範囲が狭くなってしまうと、フォーカスを移動させながらA+Bがこのスレッシュホールドを超えているかどうかを監視(以降フォーカスサーチと呼ぶ)する際に、フォーカス補足範囲を取り逃がさないようにフォーカス方向の送りステップを細かくしなくてはならず、やはりトータルでのフォーカス検出に時間がかかってしまう。このようにフォーカス補足範囲は狭すぎても広すぎても都合が悪く、適正なフォーカス補足範囲に設定しておく必要がある。
対物レンズ105の倍率やNA、WDによって実際にはフォーカス検出の為に様々なパラメータがある。例えば図15に基づいて説明したPD149のA相とB相の出力の合計A+Bの値に対する「スレッシュホールド値」、スレッシュホールド値から決定される「フォーカス補足範囲」、A+Bがスレッシュホールドを超えたかどうか監視(フォーカスサーチ)する際の「フォーカス送りステップ」、さらに、フォーカスサーチを行う「フォーカスサーチ範囲」、図15にも記載のように、最後に合焦と判定する際の「合焦許容範囲」、PD149に入射するレーザーパワーに応じて変更するPD149の「積分時間」などがある。
本実施形態では対物レンズ105の瞳面(結像レンズ139と対物レンズ105の間)でのレーザー光ビームは直径11mm程度に設定しているが、例えば10倍の対物レンズであれば瞳径は直径14mm程度、100倍の対物レンズであれば瞳径は直径5mm程度であり、10倍の対物レンズであればレーザー光ビームは瞳径よりも小さいので対物レンズの枠でけられる事なく全て対物レンズに入射するが、100倍の対物レンズではレーザー光ビームの径が瞳径よりも大きいので対物レンズの枠でけられてしまい、最終的にPD149に入射するレーザーパワーは10倍の対物レンズと100倍の対物レンズでは異なる。よってPD149の出力であるA+Bの値も異なり、当然、前記「スレッシュホールド値」、「フォーカス補足範囲」、「積分時間」を対物レンズごとに変更しなくてはならない。
また、対物レンズのNAと倍率によって標本側の焦点深度が異なるので、当然、「合焦許容範囲」、「フォーカス送りステップ」を対物レンズごとに変更しなくてはならない。「フォーカスサーチ範囲」も例えば対物レンズのWDが異なれば、標本と対物レンズ先端が衝突する危険性も異なるので、対物レンズごとに適正に設定する必要がある。
これらのフォーカス検出の為のパラメータは、レボルバ106により検出された光路中の対物レンズの種類から、制御部138によりその対物レンズに適正の値に自動的に設定されるようになっている。つまり、フォーカス検出光路と観察光路の変倍に合わせて、フォーカス検出パラメータを変更可能となっている。ここで、観察光路は、対物レンズ105から光路切り換えプリズム121を経由してCCD136に至る光路である。
なお、これらのフォーカス検出の為のパラメータは対物レンズ以外に標本の反射率によってのその適正値が異なってくるが、本実施形態ではカバーガラス104と細胞103の境界面で反射したレーザー光を検出しているので、標本によって大きく反射率が異なることはなく、フォーカス検出パラメータを変更していないが、反射率の大きく異なる標本を観察する場合は別途、適正値に変更、設定しなくてはならない。
次に高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143に関して説明する。
フォーカス検出は前述のようにカバーガラス104と細胞103との境界面でのレーザー光の反射を利用しているが、細胞の屈折率よりも大きいNAのレーザー光ビームは、カバーガラス104と細胞103との境界面で全反射してしまう。これは細胞の屈折率より小さいNAのレーザー光の反射率に比べ数百倍の反射率となる。例えば、60倍や100倍程度のオイル対物レンズはNAが1.45程度あるが、細胞や培養液は屈折率が1.33〜1.38程度であり、NAが1.38から1.45の間のレーザー光は全て、カバーガラス104(やカバーガラス)と細胞103の境界面で全反射してしまう。特にこの範囲のNAのレーザー光は、対物レンズの瞳の周辺の領域、つまり対物レンズ内の枠に近い所を透過するため、枠による散乱などで特に迷光となり易い。発生した迷光は、フォーカス精度に悪影響を与える。
そこで、レボルバ106で光路中に挿入された対物レンズを検出し、それが細胞の屈折率よりも大きいNAの対物レンズだった場合は、制御部138によりモータ175を介して高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143を光路に挿入する。つまり、レーザー光ビーム径を細胞や培養液の屈折率よりも小さいNAに相当するレーザー光ビーム径としている。より詳しくは、対物レンズ105のNAが細胞や培養液の屈折率より大きい場合にのみ、細胞や培養液の屈折率より小さいレーザー光ビーム径となるようにレーザー光ビーム径を可変にしている。この高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143はちょうど細胞の屈折率よりも大きいNAの光ビームだけを規制するので、フレアー等が発生しなくなりフォーカス精度へ悪影響を除去できる。
ここで、細胞の屈折率に相当するNAが同じであっても、対物レンズの倍率が異なると対物レンズの瞳径が異なるので、異なるシボリ径の高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143を用意しなくてはならない。そこで、図3A中では高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143が一種類しかないが、必要に応じて複数のシボリ径の高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリを用意して光路に挿脱できるようにしてもよい。
次に、フォーカスを維持する際の温度変化による影響の説明を行う。
LD145から出射したレーザー光ビームをコリメートし、かつPD149へレーザー光ビームを集光させる結像レンズ139は、顕微鏡本体169内の結像レンズ120と同じ曲率、肉厚、硝材の全く同じレンズを使用している。従って、LD145の発光点とPD149は対物レンズ一次像面130a、130bとは光学的に全く共役な位置になっている。つまり、レンズの温度変化に起因する焦点距離の変化から対物レンズ一次像面が光軸方向に移動(デフォーカス)しても、それはフォーカス検出光路も、観察光路も同じ量だけ対物レンズ一次像面が移動するので、顕微鏡フォーカス維持装置が正常に作動すればフォーカス検出光路と観察光路の相対的なフォーカスズレはなく、室温変化や顕微鏡の光源、電源の熱による温度変化が生じてもフォーカスを維持可能となっている。なお、ここでの観察光路とは、対物レンズ一次像面で観察をしているCCD136側の光路に適用される。
すなわち、フォーカス検出光路と観察光路の温度変化に対するフォーカスドリフトは同一となっている。また、フォーカス検出光路と観察光路は同一の部材で構成されている。さらに、フォーカス検出光路と観察光路は共に対物レンズ一次像の結像光学系を構成している。
次に、本実施形態の装置において、検鏡者が生きた細胞のタイムラプス観察を行う手順を説明する。
予め、蛍光観察の場合は蛍光照明用の光源である水銀ランプ114を、透過照明観察の場合は光源111を点灯させておき、所望の対物レンズ105、蛍光観察の場合は細胞103に染色された蛍光色素に合った蛍光フィルタ、フォーカス検出の為のレーザー光ビームを導くダイクロイックミラー134は光路に入れておく。もちろん制御部138がレボルバ106で検出した対物レンズの種類に応じてフォーカス検出の為のパラメータを自動的に認識し、必要に応じて高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143は自動的に挿脱される。光路切り換えプリズム121は、初めは観察光軸108から外して眼で観察できる状態にしておく。
検鏡者はカバーガラス104に乗せた細胞103をXYステージ129にセッティングし、焦準ハンドル124を回転させる事でフォーカスを合わせると共にXYステージ129を動かして観察したい場所を探す。ここで、一般に眼で観察したほうがCCD136より広い範囲を観察できるので、眼で観察したい場所を探しているが、CCD136で探しても問題ない。次に、光路切り換えプリズム121を観察光軸108に挿入し、CCD136の光路に切り換え、制御部138への入力手段172に配されたフォーカス維持ボタンを押す事でフォーカス維持機能が作動し、細胞103とカバーガラス104の境界面に正確に合焦し、図示しないCCD136のモニタ上に細胞103の顕微鏡画像が表示される。そして観察したい詳細の場所をXYステージ129でモニタの中心にもってくる。
次に、細胞103の画像を取得したい時間の間隔やタイムラプス実験の総時間を入力手段172で設定し、同じく入力手段172に配されたタイムラプス実験開始ボタンを押すと、設定した時間間隔ごとにフォーカス維持機能が作動し、その後、CCD136の露出を行い、その画像をメモリ173に自動的に保存する。これらの連携は制御部138によって制御されている。
なお、本実施形態ではXYステージ129は手動であるが、これも電動化し、異なる場所の細胞の位置を記憶させておけば、上記のタイムラプス観察を多くの細胞や多くの部位で行う事もできる。
以上のような構成、作用によれば、検鏡者が常に顕微鏡の前に居なくても自動的にフォーカスの合った顕微鏡の画像が一定時間間隔ごとに取得、保存できるので、検鏡者の負担を大きく軽減できる。また、フォーカス検出に使用しているレーザー光は800nmで、蛍光観察や透過照明観察に使用する波長と異なるので、観察光に迷光となる心配がなく、また、フォーカス検出に使用するレーザー光ビームを観察光軸に導く際に、レーザー光の波長を反射して、観察光の可視光を透過するダイクロイックミラーを使用しているので、レーザー光、観察光ともにロスすることなく、明るく観察できると共に、安定してフォーカスを維持できる。さらに、レーザー光ビームを蛍光フィルタよりも対物レンズ側から導光しているので、レーザー光が蛍光フィルタを透過する事がなく、やはりロスがないので、より安定してフォーカスを維持できる。
ここで、本実施形態では、フォーカス検出光路と観察光路で全く同じレンズを使用しているが、光学的なフォーカスドリフトが全く同じレンズを使用すれば、レンズ自体が同じでなくても良い。また、本実施形態では、LD145、PD149を対物レンズ一次像面に配置し、CCD136で対物一次像を観察しているが、必ずしも対物レンズ一次像である必要はなく、フォーカス検出光路と観察光路で全く同じレンズを使用したり、光学的なフォーカスドリフトが全く同じレンズを使用したりすれば、同様の効果が得られる。
さらに、眼での観察光路も同様にしておけば、CCD136による観察だけでなく、眼での観察でも同様にフォーカスを維持することができる。また、図には示していないが、眼での観察と同様にすれば、観察光路はディスクスキャン式のコンフォーカル光学系、レーザー顕微鏡の検出光学系であっても同様の効果が得られる。
なお、レーザー顕微鏡の検出光学系の場合は、例えば落射蛍光照明装置やCCD136の代わりに装着されることが多いが、この場合、本実施形態のように対物レンズを嵩上げしてしまうと、レーザー光ビームをスキャンするガルバノミラー等と対物レンズの瞳の位置が共役でなくなってしまい周辺光量不足などの問題が発生する。しかし、ガルバノミラーを対物レンズの瞳に投影する瞳投影レンズを光軸方向に動かしたり、ガルバノミラーを光軸方向に動かしたりできるようにしておけば、この問題は解決する。
また、光学的なフォーカスドリフト以外にも、光学素子の保持部材などの熱膨張に起因するフォーカスドリフトもあり、これらの影響を除去する為に、フォーカス検出光路中と観察光路中の光学素子の保持部材の材質を同一にする事でさらにフォーカス維持精度を上げる事もできる。
さらに、本実施形態では瞳分割レーザー投射式の顕微鏡フォーカス維持装置に関して説明したが、像面にピンホールを配置してその透過光量が最大になるフォーカス位置を検出するコンフォーカル方式など、フォーカス検出光路と観察光路が独立した光路を有する場合には同様の作用、効果を有する。
第二実施形態
次に本発明の第二実施形態を図4Aと図4Bに基づき説明する。本実施形態は、第一実施形態のセンサヘッドに代替可能なセンサヘッドに向けられている。図4Aは、本発明の第二実施形態のセンサヘッドの上面図である。図4Bは、図4Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
第一実施形態と図1に示す顕微鏡部、顕微鏡フォーカス維持装置の顕微鏡側の光路切り換え部は同じであり、センサヘッド137もその一部のみが異なるので、その異なる部分に関してのみ説明を行い、その他の構成に関しては同一の符号を付け詳細な説明は省略する。
本実施形態のセンサヘッド137には第一実施形態の高NA対物レンズ専用ビーム径規制シボリ143はなく、代わりに複数の異なるシボリ径のビーム径規制シボリ144a、144bがLD145の直後に配置されている。この複数のシボリ径のビーム径規制シボリ144は、そのシボリ径が組み合わせる対物レンズの瞳をちょうど満たす径になっており、レボルバ106で検出した光路中の対物レンズの種類の情報から、制御部138はモータ175を介して光路中の対物レンズの瞳径と同じシボリ径のビーム径規制シボリ144を光路に挿入するようになっている。さらに、ビーム径規制シボリ144のシボリ径つまりは対物レンズの瞳径が大きい場合はLD145の元のパワーを落とし、シボリ径が小さい場合はLD145の元もパワーを上げる事で、対物レンズ105に入射するレーザーパワーが一定になるように制御部138で制御している。
つまり、本実施形態のセンサヘッド137は、組み合わせる対物レンズ105の瞳径に合わせてレーザー光ビーム径とLD145のレーザーパワーを変更可能にしている。さらに、レーザー光ビームを対物レンズ105の瞳径と同一にしている。また、レーザー光ビーム径を変更しても対物レンズ105に入射するレーザーパワーが変わらないようにLD145のレーザーパワーを変更している。
以上の本実施形態の構成、作用によれば、対物レンズの種類、つまりは瞳径によらず対物レンズに入射するレーザーパワーが一定となるので、例えば第一実施形態のようにレーザー光ビーム径を比較的瞳径の大きい対物レンズに合わせて設定した場合に比べ、瞳径の小さい対物レンズでもレーザー光ビームが対物レンズの枠でけられる事がない。このため、より大きなレーザーパワーをフォーカス検出の為に利用でき、安定してフォーカス維持ができる。
また、ビーム径を一定に保ったまま、レーザーパワーだけを対物レンズの瞳径に合わせて変えることで対物レンズに入射するレーザーパワーを一定にする方法も考えられるが、この方法の場合にはレボルバ106の対物レンズ取り付けネジ穴から出射するレーザーパワーは一定ではないので、もし仮にレーザーパワーが高い状態の時に対物レンズを誤って外してしまうと、そのレーザーパワーによっては人体に障害を与える可能性もある。しかし、本実施形態では対物レンズを外してもそこから出射されるレーザーパワーは常に一定であるので、あらかじめ人体に安全なパワーに設定しておけば危険が少ない。
なお、本実施形態では複数のシボリ径のビーム径規制シボリ144を光路に選択、挿脱する事でビーム径を規制しているが、シボリ径が可変のビーム径規制シボリを使用しても同様の作用と効果を有する。
さらに、本実施形態では、対物レンズに入射するレーザーパワーを一定にする為に、複数のシボリ径でビーム径を規制しているが、第一実施形態と同様に、光路中に配された対物レンズの種類を認識し、必要に応じてカバーガラス104と細胞103の境界面での全反射を防ぐようなビーム径にも設定しても良い。その際も本実施形態と同様に対物レンズに入射するレーザーパワーを一定に保つようにすれば、同様の効果も得られる。
第二実施形態の変形例
次に第二実施形態の変形例に関して説明する。
第三実施形態ではビーム径規制シボリのシボリ径を対物レンズの瞳径に合わせて変更できるようにしたが、本変形例では、組み合わせる対物レンズのうち最も瞳径の小さい対物レンズにビーム径規制シボリのシボリ径を合わせたものである。つまり、レーザー光ビームを対物レンズ105の瞳径と同一にしている。
その結果、対物レンズの瞳径によらず、対物レンズに入射するレーザーパワーは一定で、第二実施形態と同様の効果を有すると共に、対物レンズを外してもレーザーパワーは一定で、かつビーム径規制シボリの変更やLD145の元のパワーの変更がないので、より信頼性が高く、人体に安全である。瞳径の大きい低倍の対物レンズの場合にはレーザー光ビームが瞳を満たさなくなるので、焦点深度が深くなり多少フォーカスの検出精度が悪くなるが、低倍対物レンズでは室温変化によるフォーカスドリフトはもともと少なく、また、タイムラプス観察では高倍の瞳径の小さい対物レンズが主に使用されるので実質的に問題はない。
第三実施形態
次に本発明の第三実施形態を主に図5Aと図5Bに基づき説明する。本実施形態は、第一実施形態のセンサヘッドに代替可能なセンサヘッドに向けられている。図5Aは、本発明の第二実施形態のセンサヘッドの上面図である。図5Bは、図5Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
第一実施形態と図1に示す顕微鏡部、顕微鏡フォーカス維持装置の顕微鏡側の光路切り換え部は同じであり、センサヘッド137のみが異なるので、センサヘッド137に関してのみ説明を行い、その他の構成に関しては同一の符号を付け詳細な説明は省略する。
本実施形態のセンサヘッド137は、第一実施形態と第二実施形態のレーザー投射式の顕微鏡フォーカス維持装置とは異なり、像のコントラストを検出して合焦させる方式である。図5中、結像レンズ139は第一実施形態と同様、顕微鏡に内蔵の結像レンズ120と同じものである。
対物レンズ105から出射した透過照明観察または蛍光観察の光線の内、ダイクロイックミラー134で反射された800nm以上の波長の光線は、結像レンズ139で集光されると共に、ミラー151で反射され、ビームスプリッタ152でその一部が透過し、CCDラインセンサ154よりも少し離れた位置に対物レンズ一次像155aを形成する。一方、ビームスプリッタ152で反射された光線は、ミラー153で反射し、CCDラインセンサ154よりも少し手前で対物レンズ一次像155bを形成する。
このような構成において、フォーカス検出方法を簡単に説明する。詳しくは特開平6−78112号公報の「画像取込装置」に記載があるので参照されたい。
CCDラインセンサ154は対物レンズ一次像155aの光軸と155bの光軸の間の中心を境目にして大きく二つの領域に分かれており、対物レンズ一次像155a側を前ピン、155b側を後ピンと呼ぶ。そしてCCDラインセンサ154の前ピン、後ピンの各領域で、その互いに隣り合った画素同士の輝度の差分を取るなどして制御部138によりコントラストを演算できるようになっている。
対物レンズ一次像155aと155bはCCDラインセンサ154に対してちょうど同じ距離に形成されているので前ピン、後ピンのコントラストが等しくなった位置を合焦位置と判断してフォーカス検出を行っている。実際には第一実施形態と同様に制御部138がこのセンサヘッド137とモータ123によるフォーカス駆動を制御し、CCD136によりフォーカスの合ったタイムラプス画像を撮像、保存できるようになる。
なお、蛍光観察の場合で観察波長が800nmよりも短い波長の場合は、透過照明観察光によりフォーカス検出を行い合焦した時点で、蛍光フィルタを光路に入れることで蛍光観察に切り換えてCCD136等で撮像してもよい。また、蛍光観察で800nm以上の
波長で観察している場合でも、細胞103のダメージを少なくする為に励起光を照射したくない場合は前述と同様にしても良い。
以上の構成、作用により光路差コントラスト方式でも第一実施形態と同様の効果を得ることができる。コントラストが高い位置を合焦位置と判断したほうが都合のよい標本や実験の場合には有効な組み合わせとなる。
第四実施形態
次に本発明の第四実施形態を図6と図7Aと図7Bに基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図6は、本発明の第四実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図6には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。図7Aは、図6の右側に示されたセンサヘッドの上面図である。図7Bは、図7Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
第一実施形態と図6に示す顕微鏡フォーカス維持装置の顕微鏡側の光路切り換え部は同じであり、顕微鏡部も透過照明観察を微分干渉観察に限定しただけである。また、センサヘッド137もその一部のみが異なるだけで、その異なる部分に関してのみ説明を行い、その他の構成に関しては同一の符号を付け詳細な説明は省略する。
まず図6に基づき微分干渉観察の構成、作用に関して説明する。
第一実施形態で記載の構成に加え、透過照明光軸101上にはコンデンサレンズ113の上にポラライザ156、コンデンサレンズ113の中には照明側DICプリズム157が、観察光軸108上にはレボルバGの中に観察側DICプリズム158、ポラライザ156とその振動方向が直交したアナライザ159が配置されている。また、観察側のDICプリズム158は、レボルバ106により観察光軸108から挿脱可能に保持されると共に、コントラスト調整つまみ160を回転させる事で観察光軸108に垂直な方向に移動可能になっており、これによりレタデーションを変化させてDIC像のコントラストを調整できるようになっている。さらに、観察側DICプリズム158の観察光軸108からの挿脱と、コントラスト調整ツマミ160によるレタデーションの変化はセンサ161とセンサ162により検出され、制御部138で認識できるようになっている。
このような構成において、透過照明支柱112の光源111から出射した照明光はポラライザ156で直線偏光に変換され、照明DICプリズム158により所定のレタデーションを発生させられると共に常光線と異常光線に分けられ、細胞103とカバーガラス104を照明する。そして細胞103からの像は対物レンズ105により無限遠に投影され、観察側DICプリズム158により所定のレタデーションを発生させられると共に、再び常光と異常光が合成され、アナライザ159を透過し、以降、第一実施形態の透過照明観察と同様にCCD136、眼等で観察可能となっている。
次にセンサヘッド137の構成に関して図7Aと図7Bに基づき説明する。
第一実施形態と異なる点は、簡略化の為にビーム径規制シボリ144を固定した事、ビームスプリッタ141を偏光ビームスプリッタ(PBS)141bにした事、λ/4板163をPBS141bより結像レンズ側に配置した事である。λ/4板はモータ164で制御部138から回転制御可能になっている。また、PBS141bは図7A中の紙面に平行な矢印方向の直線偏光を透過し、紙面に垂直な方向の直線偏光を反射する特性となっている。
このようなセンサヘッドの構成において、まず微分干渉観察でない場合の作用に関して説明をする。
LD145から出射したレーザー光ビームは図7Aの矢印で示す方向の直線偏光になっており、ビーム径規制シボリ144、瞳分割シボリ142、PBS141bを透過し、ミラー140で反射され、λ/4板163を透過する事で円偏光となって、結像レンズ139でコリメートされ対物レンズ105へと出射される。ここで、微分干渉観察でない場合は、制御部138がセンサ162により観察側DICプリズム158が光路に入っていない事を認識し、モータ164によりλ/4板163を予めLD145の偏光方向に対してその光学軸が45°傾いた位置にセットする。
対物レンズ105から戻ってきたレーザー光ビームは再び結像レンズ139で集光されると共に、λ/4板163を透過し、円偏光がLD145の偏光方向と直交した直線偏光に変換される。そして、PBS141bで反射され、瞳分割シボリ147を透過してPD149に入射し、第一実施形態と同様にフォーカス検出を行い合焦位置を判定する。このように微分干渉観察でない場合は、レーザー投射光路と検出光路が偏光分離されているので、PBS141bによりどちらの光路もロスなく透過、反射レーザーパワーの利用効率が良い。
次に、微分干渉観察の場合の作用に関して説明する。
センサヘッド137内はλ/4板163の回転方向以外は微分干渉観察以外の場合と全く同じ為説明は省略する。センサヘッド137から出射したレーザー光ビーム146bはダイクロイックミラー134で反射され、観察側DICプリズム158を透過し、対物レンズ105で細胞103に集光され、カバーガラス104と細胞103の境界面で反射されて再び対物レンズ105で無限遠に投影されると共に、観察側DICプリズム158を透過し、センサヘッド137に戻ってくる。
この際、観察側DICプリズム158を二回透過するので、ここでもレタデーションが発生し、λ/4板163の光学軸がPBS141bを出射した直線偏光に対して45°のままでは、PBS141bを出射した直線偏光のレーザー光ビームが、λ/4板163と観察側DICプリズムをそれぞれ二回透過してPBS141bに戻ってきても、PBS141bを出射した直線偏光に直交した偏光状態にはならず、PBS141bで反射する際にレーザーパワーをロスしてしまう。
そこで、制御部138はコントラスト調整つまみ160のセンサ161で検出した観察側DICプリズム158のレタデーション量を打ち消すようなレタデーションをモータ164でλ/4板163を回転させる事で発生させ、結果的にはPBS141bに戻ってくるレーザー光ビームがPBS141bを出射した直線偏光に直交した偏光となり、PBS141bをロスなく反射してPD149へと導かれる。もちろん微分干渉観察の場合は、予め制御部138がセンサ162により観察側DICプリズム158が光路に入っている事を認識したうえで前述の動作を実行している。
このように、本実施形態では、コントラストの調整に伴って発生するレタデーションを打ち消すレタデーションを発生させるために、偏光ビームスプリッタ141bと標本との間にλ/4板163を回転可能に設けている。さらに、発生したレタデーション量を検出するセンサ161とセンサ162を有しており、センサ161とセンサ162で検出されたレタデーション量に基づいてλ/4板163で発生させるレタデーションを自動的に補正している。
以上の構成、作用によれば、DICプリズムの挿脱や、コントラストの調整によらずPD上でのレーザーパワーをロスする事がないので安定してフォーカス維持が可能となる。
なお、本実施形態ではもともと入っていたλ/4板を回転させる事でレタデーションを打ち消しているが、別のλ/4板やレタデーション発生素子を使用しても良い。
また、本実施形態ではコントラスト調整つまみ160のセンサ161から観察側DICプリズム158のレタデーションを検出して、それを打ち消すようなレタデーションを発生させているが、PD149の出力が最大になるようにレタデーションを発生させるようにしても良い。これでも結果的には観察側DICプリズム158のレタデーションを打ち消すレタデーションを発生させている事になる。
さらに、本実施形態ではPD149に入射するレーザーパワーが観察側DICプリズムによって変動しないようにしているが、観察側DICプリズムの挿脱やレタデーションによって変化するPDへの入射レーザーパワーに応じて、スレッシュホールドなどのフォーカス検出の為のパラメータを変更するようにしても良い。
第五実施形態
次に本発明の第五実施形態を図8と図9Aと図9Bに基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図8は、本発明の第五実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図8には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。図9Aは、図8の右側に示されたセンサヘッドの上面図である。図9Bは、図9Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
第一実施形態と図8に示す顕微鏡部、顕微鏡フォーカス維持装置の顕微鏡側の光路切り換え部はほとんど同じであり、センサヘッド137のみが異なり、また、センサヘッド137もその一部のみが異なるだけで、その異なる部分に関してのみ説明を行い、その他の構成に関しては同一の符号を付け詳細な説明は省略する。
第一実施形態ではCCD136による観察光路もフォーカス検出光路も結像レンズによる対物レンズの一次像を利用していたが、これでは観察光路の倍率も対物レンズを交換しない限り変倍はできない。
本実施形態では、図9Aに示すように、センサヘッド内に結像レンズ139以外に変倍レンズ165を光路から挿脱可能にしている。この点において、第一実施形態と相違している。なお、説明の簡略化の為にビーム径規制シボリ144を固定してある。図8に示すように、CCD136の対物レンズ側にはセンサヘッド137内と同じ変倍レンズ165が予め装着されている。つまり、フォーカス検出光路と観察光路のそれぞれで同一の倍率で変倍できるようにしている。
センサヘッド137内の変倍レンズ165は光路から挿脱してもLD145、PD149は像面と共役な位置に保たれるようになっているので、その他の構成、作用は第一実施形態とほとんど同じである。ただ、変倍レンズ165の挿脱によって、PD149上でのレーザー光ビームのNAが変り、また、総合倍率も変わるので、フォーカス検出の為のパラメータは変更する必要がある。よって、制御部138がモータ177で変倍レンズ165を挿脱し、図示しないセンサでその挿脱の状態を検出する事で、自動的に最適なフォーカス検出のパラメータに設定するようになっている。
以上の構成、作用によれば、対物レンズを変更する事なく観察倍率を変更でき、かつ安
定してフォーカスを維持できる。
第六実施形態
次に本発明の第六実施形態を図10と図11Aと図11Bに基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図10は、本発明の第六実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図10には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。図11Aは、図10の右側に示されたセンサヘッドの上面図である。図11Bは、図11Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
図10において顕微鏡部分は第一実施形態からレボルバ、ステージ、透過照明支柱の嵩上げ部材を取り除き、ダイクロイックミラーの切り替え部を除いた構成となっており、その他の構成、作用はほとんど同じである。
ただ、CCD136が顕微鏡本体に直接装着されていなく、センサヘッド137を介して装着されている点が異なる。
本実施形態のセンサヘッド137は、次の点で第一実施形態と相違している。センサヘッド自体が顕微鏡に内蔵の結像レンズ120より像側の光路から導光しているので、この結像レンズ120がレーザー光ビームのコリメートの機能も共有しており、センサヘッド137内には結像レンズが存在しない。また、センサヘッド光軸170上にCCD136が装着されており、ミラー140bは、センサヘッド側のレーザー光を反射し、観察光をCCD136へ向けて透過するダイクロイックミラーとなっている。なお、説明の簡略化の為にビーム径規制シボリ144を固定してある。これ以外の構成、作用は第一実施形態と全く同じである。
以上の構成、作用によれば、ステージ等の嵩上げ部材が不要で結像レンズもフォーカス検出用と観察用で共用しているので安価に容易に構成でき、顕微鏡にあとから簡単に装着できる。
第七実施形態
次に本発明の第七実施形態を図12に基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図12は、本発明の第七実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図12には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。
本実施形態は、図12に示される顕微鏡部分において、次の点で第六実施形態と相違している。蛍光フィルタカセット119がモータ168で切り換えられるようになっている。また、センサヘッド137が蛍光フィルタカセット119と結像レンズ120の間のダイクロイックミラー166で右側から導光されている。さらに、ダイクロイックミラー166がモータ167で電動で切り換えできるようになっている。加えて、CCD136が顕微鏡本体169に直接装着されている。その他の構成、作用は第六実施形態と全く同じである。なお、センサヘッド137は図3Aと図3Bの第一実施形態と全く同じである。
以上のような構成において、制御部138はフォーカス検出時にはダイクロイックミラー166を光路に入れ、蛍光フィルタは光路から外し、CCD136の露出時には逆にダイクロイックミラー166を光路から外し、観察に必要な蛍光フィルタを光路へ挿入するようになっている。
このように、本実施形態では、フォーカス検出光路は無限遠対物レンズ105と結像レ
ンズ120の間から導光されている。本実施形態でも、レーザー光ビームの導光は、レーザー光と観察光の一方を反射し他方を透過するダイクロイックミラー166によって行われる。レーザー光の波長は蛍光観察に使用する波長と異なっている。
フォーカス検出時のみダイクロイックミラー166を光路に入れている。好ましくは、フォーカス検出時のみダイクロイックミラー166を光路に入れる動作を有効・無効と選択できるとよい。より好ましくは、組み合わせる対物レンズの種類と検鏡法に応じてダイクロイックミラー166を光路に入れる動作を有効か無効に設定できると共に、対物レンズ105の切り換えと検鏡法の切り換えに連動して自動設定されるとよい。
以上のような構成、作用によれば、ダイクロイックミラー166がCCD露出時に光路から外れるので、ダイクロイックミラーのわずかな観察光のロスも防ぐ事ができる。また、800nm以上のIR光を観察したい場合にもダイクロイックミラーで反射されることなく観察できる。さらに、フォーカス検出時には蛍光フィルタが光路から外れるので、蛍光フィルタによるレーザー光のロスも最小限に押さえられる。また、IR蛍光観察用のフィルタやバンドパスのバリアフィルタなどで800nmのレーザー光を透過しないフィルタを使用している場合にも、蛍光フィルタが光路から外れるので、レーザー光がカットされる心配がない。
なお、本実施形態における落射蛍光投光管115の代わりにレーザー顕微鏡装置やディスクスキャン装置を装着した場合は蛍光フィルタの代わりにミラーが装着されるが、このような場合にも蛍光フィルタと同様の作用により同様の効果が得られる。また、CCD136が装着されている部分にレーザー顕微鏡装置を装着して例えばツーフォトン励起をする場合などは励起光が800nm〜1100nm程度になるが、レーザー顕微鏡で画像取得する際のレーザー光ビームのスキャン中は、CCD136の露出中と同様にダイクロイックミラー166を光路から外しておけば、励起光がダイクロイックミラー166でカットされる心配がない。
第八実施形態
次に本発明の第八実施形態を図13と図14Aと図14Bに基づき説明する。本実施形態は、顕微鏡フォーカス維持装置を備えた顕微鏡に向けられている。図13は、本発明の第八実施形態の顕微鏡全体の構成を示している。図13には、左側に顕微鏡の側面が描かれており、右側に顕微鏡の対物レンズ周辺部分が一緒に描かれている。図14Aは、図13の右側に示されたセンサヘッドの側面図である。図14Bは、図14Aに示されたセンサヘッドの正面図である。
本実施形態は、図13に示される顕微鏡部分において、次の点で第七実施形態と相違している。センサヘッド137を蛍光フィルタと結像レンズの間から導光していたのを、観察光軸108上のミラー122の下の底面ボートに装着している。このため、蛍光フィルタと結像レンズの間のダイクロイックミラーとその切り換え機構がなくなっている。代わりに、ミラー122が図示しないモータ駆動によりセンサヘッド137側の光路と眼での観察光路に切り換えられるようになっている。なお、蛍光ミラーカセットは説明の簡略化の為に電動から手動になっている。図14Aと図14Bに示されるように、センサヘッド137は第六実施形態からCCD136を外し、ミラー140bがダイクロイックミラーだったのを通常のミラー140に変更した点のみ異なり、その他は第六実施形態と全く同じである。
以上の構成、作用によれば、センサヘッド137を底面ボートに装着したので、他の実施形態のようにセンサヘッドが邪魔にならず、他の顕微鏡の周辺装置を自由に配置できる。
以上、第一実施形態から第八実施形態まで倒立型顕微鏡をベースに説明したが、可能な構成は正立型顕微鏡に適用してもよい。
まとめ
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置における光学的なフォーカスドリフトの発生に起因する性能低下の改善に向けられている。
特開平6−3578号公報の「焦点検出装置」のように、レーザー投射式のフォーカス検出装置では、フォーカス検出光路には対物レンズ以外のレンズを含む光学系が配置されている。これらのレンズに温度変化による光学的なフォーカスドリフトが発生すると、観察光学系とフォーカスドリフト量が異なってしまい、フォーカスを維持する事ができなくなってしまう。
他の従来例として、観察用のCCDカメラ等のビデオ信号を利用してコントラストの高い位置を検出する事でフォーカス検出を行ういわゆるビデオフォーカス式と呼ばれる方法が一般に知られている。この方法によれば観察光路とフォーカス検出光路が全く同じ為、レンズの温度変化による光学的なフォーカスドリフトの問題は解決される。しかし、大量なビデオ信号の情報を演算処理する為にフォーカス検出スピードが遅い、フォーカス検出精度が低いといった問題がある。
本発明は、ひとつには、光学的なフォーカスドリフトの発生に起因する性能低下が改善された顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項に記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
1. 本発明の顕微鏡フォーカス維持装置は、対物レンズを介したフォーカス検出光路と対物レンズを介した観察光路を独立に備えた顕微鏡において、フォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトを同一にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、室温が変化してもフォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトの差が発生しない。これにより、室温が変化する長時間のタイムラプス観察において安定してフォーカスを維持できる。また、フォーカス検出光学系も観察光学系も共に対物レンズを介しているので対物レンズ自身にフォーカスドリフトが発生しても、フォーカス検出光学系も観察光学系も同一のドリフトとなるので、異なる対物レンズに交換しても安定してフォーカスを維持できる。
2. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第1項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光学系と観察光学系を同一の部材で構成した事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトの差が発生しない。これにより、確実で容易にフォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトを同一にでき、安定してフォーカスを維持できる。
3. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第2項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光学系と観察光学系を共に対物レンズ一次像の結像光学系とした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトの差が発生しない。これにより、安価に省スペースでフォ
ーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトを同一にでき、安定してフォーカスを維持できる。
4. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第1項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光路と観察光路のそれぞれで同一の倍率で変倍できるようにした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出光学系と観察光学系の温度変化によるフォーカスドリフトの差が発生せず、かつ所望の観察倍率に変更できる。これにより、安定してフォーカスを維持できると共に所望の観察倍率に変更できる。
5. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第4項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光路と観察光路の変倍に合わせて、フォーカス検出パラメータ(フォーカス補足範囲、フォーカス送りステップ、合焦と判定する許容フォーカス範囲)を変更可能にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、所望の観察倍率に変更しても最適なフォーカス検出が可能になる。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置におけるレーザーパワーの不足の改善に向けられている。
特開平6−3578号公報の記載の「焦点検出装置」のレーザー投射式のフォーカス検出方式の場合、対物レンズの瞳径によらずレーザー光ビーム径やレーザーパワーは一定である。金属標本のように十分な反射率がありレーザー検出用の受光素子に入射するレーザーパワーが十分に高い場合は問題ないが、生物標本のようにカバーガラス、スライドガラス等の細胞が接着している面からのレーザー反射光を検出しようとした場合、反射率が低く、レーザー検出用の受光素子に入射するレーザーパワーが不十分な場合がある。特に瞳径の小さい対物レンズを使用する場合、投射されたレーザー光ビームの一部しか対物レンズに入らない為に標本に照射されるレーザーパワーが小さくなってしまい、フォーカス検出が難しくなる。
もとの光源となるレーザー自身の出力自体を上げてしまえばこの問題は解決するが、レーザーパワーを上げると標本である生きた細胞へのダメージが増えるだけでなく、レーザー光による観察者への皮膚や眼に対する障害の危険度も増す。また、それを回避する為の安全装置などが必要になり装置が大型で高価なものになってしまう。なお、前述のようにレーザー検出用の受光素子に入射するレーザーパワーが小さくなってしまう瞳径の小さい対物レンズに合わせてもとの光源となるレーザー自身のパワーを上げてしまうと、瞳径の大きい対物レンズに交換した場合や、対物レンズ自体を外した際に、標本上にはさらに大きなパワーのレーザー光が照射される事になり、ますます細胞へのダメージや観察者への障害の危険が増してしまう。
本発明は、ひとつには、レーザーパワーの不足が改善された顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
6. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、レーザー投射方式のフォーカス検出光路を備えた顕微鏡において、組み合わせる対物レンズの瞳径に合わせてレーザー光ビーム径と光源のレーザーパワーを変更可能にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、細胞や検鏡者に照射される可能性のあるレ
ーザーパワーを最小限に抑えつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持できる。つまり、細胞へのダメージを最小限に押さえ、検鏡者へのレーザー障害を回避しつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持する事ができる。これにより、安全に安定してフォーカス維持ができる。
7. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第6項の顕微鏡フォーカス維持装置において、レーザー光ビームを対物レンズの瞳径と同一にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、対物レンズによらず投射されたレーザー光ビームは全て対物レンズを透過し、対物レンズでけられる事がないので、枠反射等で発生するフレアーによりフォーカス信号にノイズが乗る事を防げる。これにより、安定してフォーカスを維持できる。
8. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第6項の顕微鏡フォーカス維持装置において、レーザー光ビーム径を変更しても対物レンズに入射するレーザーパワーが変わらないようにした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、対物レンズに入射するレーザーパワーが変わらないように元のレーザー光源のパワーをレーザー光ビーム径に合わせて自動的に変更するようにしたので、対物レンズによらず標本上でのレーザーパワーを一定にでき、細胞や検鏡者に照射される可能性のあるレーザーパワーを最小限に抑えつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持できる。つまり、細胞へのダメージを最小限に押さえ、検鏡者へのレーザー障害を回避しつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持する事ができる。これにより、安全に安定してフォーカス維持ができる。
9. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第7項の顕微鏡フォーカス維持装置において、レーザー光ビーム径を変更しても対物レンズに入射するレーザーパワーが変わらないようにした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、対物レンズに入射するレーザーパワーが変わらないように元のレーザー光源のパワーをレーザー光ビーム径に合わせて自動的に変更するようにしたので、対物レンズによらず標本上でのレーザーパワーを一定にでき、細胞や検鏡者に照射される可能性のあるレーザーパワーを最小限に抑えつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持できる。つまり、細胞へのダメージを最小限に押さえ、検鏡者へのレーザー障害を回避しつつ、フォーカス検出可能なレーザーパワーを維持する事ができる。これにより、安全に安定してフォーカス維持ができる。さらに、レーザー光ビーム径を対物レンズの瞳径に同一にしたので、投射されたレーザー光ビームは全て対物レンズを透過し、対物レンズでけられる事がないので、枠反射等で発生するフレアーによりフォーカス信号にノイズが乗る事を防げる。また、対物レンズを外しても出射するレーザーパワーは一定なので検鏡者にとってより安全である。
10. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、レーザー投射方式のフォーカス検出光路を備えた顕微鏡において、組み合わせる対物レンズの最も小さい瞳径とレーザー光ビーム径とを同一にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、光源の元のレーザーパワーが一定でも対物レンズによらず標本に照射されるレーザーパワーを一定に保てる。これにより、対物レンズを外しても出射するレーザーパワーは一定でかつ、レーザー光ビーム径や元の光源のレーザーパワーを変更する必要がないので、より信頼性が高く検鏡者にとってより安全である。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置における全反射に起因する迷光による性能低下の改善に向けられている。
特開平6−3578号公報に記載の「焦点検出装置」のレーザー投射式のフォーカス検出方式の場合、対物レンズの瞳径によらずレーザー光ビーム径やレーザーパワーは一定である。しかしながら、生物標本のようにカバーガラス、スライドガラス等の細胞が接着している面からのレーザー反射光を検出しようとした場合、細胞の屈折率よりも大きいNAの対物レンズを使用すると、細胞の屈折率よりも大きいNAのレーザー光は接着面で全反射してしまう。これは細胞の屈折率より小さいNAのレーザー光の反射率に比べ数百倍の反射率となり、それが迷光となってフォーカス精度に悪影響を与えてしまう。
本発明は、ひとつには、全反射に起因する迷光による性能低下が改善された顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
11. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、レーザー投射方式のフォーカス検出光路を備えた顕微鏡において、カバーガラスやスライドガラスと細胞や培養液との境界面からのレーザー反射光を利用してフォーカス検出する場合、レーザー光ビーム径を細胞や培養液の屈折率よりも小さいNAに相当するレーザー光ビーム径とした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、カバーガラス、スライドガラスと細胞、培養液との境界面で全反射する事がなく迷光が発生しにくい。つまり、レーザー光ビームに起因する迷光が最小限に押さえられる。これにより、フォーカス信号へのノイズを軽減できるのでより安定してフォーカスを維持できる。
12. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第11項の顕微鏡フォーカス維持装置において、対物レンズのNAが細胞や培養液の屈折率より大きい場合にのみ、細胞や培養液の屈折率より小さいレーザー光ビーム径となるようにレーザー光ビーム径を可変にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、細胞、培養液の屈折率よりNAが小さく瞳径が大きい対物レンズを使用する時は瞳径に合わせて大きいレーザー光ビームを確保でき、フォーカス検出に十分なレーザーパワーを標本に照射する事ができる。これにより、安定してフォーカスを維持できる。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置において蛍光観察装置との組み合わせにおけるフォーカス検出光の確保に向けられている。
従来の光学的なTTL方式のフォーカス維持装置はそのフォーカス検出光路を蛍光照明装置よりも像側から導光している。この為、蛍光観察する場合はフォーカス検出に使用する波長が蛍光観察用フィルタであるダイクロイックミラー(以下DM)、バリアフィルタを透過する事になるが、DM、バリアフィルタの透過波長特性によっては、フォーカス検出に使用する波長を透過しない場合があり、その場合にはフォーカス検出が不可能となる。フォーカス検出時に蛍光観察用フィルタを光路から外せばよいが、そうすると時間のロスが発生し、標本内の多くの場所の情報を得たい場合や、短い時間間隔でタイムラプス画像を得たい場合には特にスループットの低下につながる。
また、特開平11−72715号公報の「倒立顕微鏡」にはレーザー光学系や光センサ光学系を蛍光照明装置よりも対物レンズ側から導光する方法が考案されているが、これは
フォーカス検出光路に限定しているものではない。フォーカス検出に使用する波長は観察光への迷光とならないように一般に観察には使用しない不可視光が多い。一方、蛍光用フィルタは蛍光観察に必要な波長以外は透過しない特性が一般的である。この為に、前述のような問題が発生する。これは蛍光観察装置とフォーカス維持装置の組み合わせ特有の問題である。
本発明は、ひとつには、蛍光観察装置との組み合わせにおいてもフォーカス検出光が確保される顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
13. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、フォーカス検出光路と観察光路を独立に備えた顕微鏡において、フォーカス検出光路を蛍光観察装置よりも対物レンズ側から導光するようにした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出に使用する光線が蛍光フィルタを透過する事がないので、フォーカス検出の為の受光素子へ入射するフォーカス検出光量のロスが少ない。これにより、安定してフォーカスを維持できる。
14. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第13項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出に使用する光の波長は、蛍光観察に使用する光の波長と異なっている事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の為の波長が蛍光観察光に迷光となって入ってくる心配がない。これにより、コントラスト良い蛍光観察が可能となる。
15. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第14項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光路の導光手段は、フォーカス検出に使用する光と蛍光観察に使用する光の一方を反射し他方を透過するダイクロイックミラーである事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の光線も観察用の光線もロスを最小限に押さえられる。これにより、安定してフォーカスを維持できると共に、明るい観察像が得られる。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置における対物レンズの一次像のリレーに起因する性能低下の改善に向けられている。
特開平11−72715号公報の「倒立顕微鏡」にはレーザー光学系や光センサ光学系を対物レンズと結像レンズの間から導光する事が示唆されているが、やはりフォーカス検出光路に限定しているものではない。また、正立型顕微鏡ではフォーカス検出光路を対物レンズと結像レンズの間から導光している方法が一般には知られているが倒立型顕微鏡では公知となっていない。
倒立型顕微鏡において結像レンズより像側からフォーカス検出光路を導光しようとすると、例えば特開平6−78112号公報に記載の「画像取込装置」の光路差コントラスト検出方式の場合には、主光線が像面に垂直なテレセントリック光学系になっていないと正確にフォーカス検出ができない。一方、結像レンズによる対物レンズの一次像はテレセントリック光学系になっていない。この為、テレセントリック光学系になるようにフォーカス検出の為の受光素子近傍まで対物レンズ一次像をリレーする必要がある。リレー光学系
を構成するには新たなスペースが必要になるが、倒立型顕微鏡の場合は顕微鏡本体の周辺に撮像装置や細胞を操作する為のマニピュレータ、レーザー刺激装置などの様々な装置が配されており、限られたスペースでフォーカス維持装置を構成する事は難しい。
また、特開平6−3578号公報に記載の「焦点検出装置」のレーザー投射式のフォーカス検出方式の場合には、前述の光路差コントラスト検出方式と異なり、対物レンズ一次像面にフォーカス検出の為の受光素子が配されていてもよい。しかし、結像レンズから像面までの距離は180〜200mm程度の決められた寸法になっている。その寸法の内の多くの部分は倒立型顕微鏡本体の内部に入っている為に、正立型顕微鏡とは異なり、倒立型顕微鏡本体の外側でフォーカス維持装置を構成することはスペース的に難しい。対物レンズ一次像をリレーすればこの問題は解決するが、前述の光路差コントラスト検出方式の場合と同様に、今度は倒立型顕微鏡周辺の様々な装置との干渉を避けた限られたスペースでフォーカス維持装置を構成する事は難しい。
また、前記二つのどちらのフォーカス検出方式にしてもリレーする事で観察光学系とのレンズの温度変化による光学的なフォーカスドリフトを同一にする事が難しくなる。
本発明は、ひとつには、対物レンズの一次像のリレーを必要としない顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
16. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、フォーカス検出光路と観察光路を独立に備え、無限遠対物レンズと無限遠対物レンズの像を結像させる結像レンズを有した倒立型顕微鏡において、無限遠対物レンズと結像レンズの間からフォーカス検出光路を導光した事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、例えば光路差コントラスト検出方式の場合、対物レンズ一次像をリレーする必要がない。また、例えばレーザー投射式のフォーカス検出方式の場合、フォーカス検出の為の受光素子の配置に合わせてフォーカス検出光路の結像レンズを配置するだけで対物レンズ一次像をリレーする必要がない。また、結像レンズの配置を自由にできるので、つまりは受光素子の配置をも自由にでき、倒立型顕微鏡本体周辺の様々な装置と干渉する心配が少ない。
17. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第16項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出に使用する波長は、観察に使用する波長以外の波長を使用した事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の為の波長が観察光に迷光となって入ってくる心配がない。これにより、コントラスト良い観察が可能となる。
18. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第17項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出光路の導光手段は、フォーカス検出に使用する波長と蛍光観察に使用する波長のどちらか一方を反射し、どちらか一方を透過するダイクロイックミラーである事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の光線も観察用の光線もロスを最小限に押さえられる。これにより、安定してフォーカスを維持できると共に、明るい観察像が得られる。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置における観察光のロスの改善に向けられている。
従来、フォーカス検出光路と観察光路を独立に備えた顕微鏡のフォーカス維持装置は、観察光路へのフォーカス検出光路の導光手段であるハーフミラー、ダイクロイックミラー等が常に光路に入っている。しかし、フォーカス検出時以外は必要ないにも関わらず導光手段が常時光路に入っている為、観察光のロスとなっている。特に蛍光観察の場合は観察光が微弱であり、少しでもコントラスト良く観察する為には僅かな観察光のロスも避けたい。また、CCD等による蛍光撮影を行う場合には、観察光のロスはCCDの露出時間を長くしてしまい、蛍光色素の退色が早まるばかりでなく、生きた細胞の場合には細胞へのダメージも大きくなる。
本発明は、ひとつには、観察光のロスが改善された顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
19. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、フォーカス検出光路と観察光路を独立に備え、フォーカス検出光路の観察光路への導光手段を有した顕微鏡において、フォーカス検出時のみ前記導光手段を光路に入れた事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、観察光線のロスがない。これにより、明るくコントラスト良く観察ができる。
20. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第19項の顕微鏡フォーカス維持装置において、フォーカス検出時のみ前記導光手段を光路に入れる動作を有効、無効と選択できるようにした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、導光手段の挿脱による振動や、時間のロスと、前記導光手段による観察光のロスとどちらを犠牲にするか選択できる。これにより、実験の目的によって使い分けることができる。
21. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第20項の顕微鏡フォーカス維持装置において、組み合わせる対物レンズの種類と検鏡法に応じて前記導光手段を光路に入れる動作を有効か無効に設定でき、かつ対物レンズの切り換えと検鏡法の切り換えに連動して自動設定可能とした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、対物レンズや検鏡法ごとに導光手段の挿脱による振動や、時間のロスと、導光手段による観察光のロスとどちらを犠牲にするかを自動的に選択できる。例えば、高倍対物レンズで透過観察を行う場合には、観察画像の明るさは十分なので、時間のロスや振動による画像の劣化への影響を除去する事を優先させたり、低倍対物レンズで蛍光観察する場合は、低倍なので振動の影響は少なく、観察画像が暗いので、蛍光のロスを最小限に抑える事を優先させたりと、実験の目的に合わせて自動設定できる。これにより、実験中にわざわざ設定を変更する必要がなく実験の省力化ができる。
本発明は、ひとつには、顕微鏡フォーカス維持装置におけるレタデーションの発生に起因する性能低下の改善に向けられている。
前述の特開平6−3578号公報に記載の「焦点検出装置」のように、レーザー投射式のフォーカス検出方式の場合、直線偏光のレーザー光源とλ/4板を組み合わせて投射側のレーザー光ビームと受光側のレーザー光ビームを偏光ビームスプリッタ(PBS)により偏光分離してレーザーパワーのロスを防いでいる事が多い。しかし、微分干渉検鏡時には対物レンズとλ/4板の間に微分干渉プリズムが挿入されるので、微分干渉プリズムに
よりレタデーションが発生し、レーザー光の偏光面が回転する為、フォーカス検出の為の受光素子へ入射するレーザーパワーがダウンしてしまう。このため、レーザーパワーに余裕がない場合は安定してフォーカス検出ができなくなってしまう。
また、微分干渉観察の場合標本に合わせてコントラストを変更できるようになっているが、このコントラスト変更の一つの手段として、微分干渉プリズムを光軸に垂直な方向に移動させる事でレタデーションを変更させて行っている。他の手段として、セナルモン式といわれる偏光板とλ/4板(フォーカス検出光路中のλ/4板とは異なる)を組み合わせて偏光板を光軸を中心に回転させる事でレタデーションを変更してコントラストを変更している方法もある。いずれの手段もフォーカス検出光路中のλ/4板と対物レンズの間に挿入されており、フォーカス検出用のレーザー光ビームが透過する光路中にあるのでコントラストの変更つまりはレタデーションの変更によってレーザー光の偏光面が回転してしまい、フォーカス検出の為の受光素子へ入射するレーザーパワーが変動してしまう。
フォーカス検出の為の受光素子へ入射するレーザーパワーが変動してしまうという事は、例えば図15におけるA+Bのスレッシュホールドを一定にしておいてもフォーカス補足範囲が変わってしまう事になる。その結果、適正なフォーカス補足範囲にならず、フォーカス検出に時間がかかったり、ノイズにより安定してフォーカス検出ができなくなったりする。
本発明は、ひとつには、レタデーションの発生に起因する性能低下が改善された顕微鏡フォーカス維持装置であり、下記の各項の記す顕微鏡フォーカス維持装置を含んでいる。
22. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、直線偏光のレーザー光源を備え、レーザー光源を対物レンズを介して標本に投射するレーザー投射光路と、
レーザー検出光路と、
レーザー投射光路をレーザー検出光路へ同軸的に導光する偏光ビームスプリッタと、
偏光ビームスプリッタと標本の間に配した直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板と、
を備えたフォーカス検出装置を有する顕微鏡において、
1/4波長板と標本の間に、微分干渉観察時に使用するレタデーション変更手段を有しており、 偏光ビームスプリッタと標本の間に前記レタデーション変更手段で発生したレタデーションを打ち消すレタデーションを発生させるレタデーション補正手段を設けた事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の為の受光素子に入射するレーザーパワーのロスを防ぐ事ができる。これにより、安定してフォーカスを維持できる。
23. 本発明の別の顕微鏡フォーカス維持装置は、第22項の顕微鏡フォーカス維持装置において、前記レタデーション変更手段によるレタデーション量を検出するレタデーション検出手段を有しており、レタデーション検出手段で検出されたレタデーション量に基づきレタデーション補正手段のレタデーションを自動的に補正可能にした事を特徴とする。
この顕微鏡フォーカス維持装置においては、フォーカス検出の為の受光素子に入射するレーザーパワーのロスを防ぐと共に、レーザーパワーの変動も防ぐ事ができ、フォーカス補足範囲を適正に維持する事が可能となる。これにより、安定してフォーカスを維持できる。