しかしながら、上述した従来の防振装置では、位置決め部材と上板金具との間にゴム状弾性材が介在する構成であるため、車両への組み付け作業に、上板金具と下板金具との間の相対位置がずれやすいという問題点があった。そのため、防振基体にゆがみが発生した状態のままで防振装置が車両に組み付けられ、そのゆがみに起因して耐久性が低下するという問題点があった。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両への組み付け時における防振基体のゆがみを抑制して、耐久性の向上を図ることができる防振装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の防振装置は、貫通孔が穿設される下側連結部材と、前記下側連結部材と所定間隔を隔てつつ対向して配置される上側連結部材と、前記上側連結部材および下側連結部材の対向面間を連結しゴム状弾性材から構成される一対の防振基体と、前記貫通孔の内周面及び周縁部に配設されゴム状弾性材から構成されるストッパゴム部と、前記上側連結部材に一端側が固定されると共に前記下側連結部材の貫通孔に他端側が挿通配置される軸状部材と、を備え、前記上側連結部材の上面がエンジン側に連結されると共に前記下側連結部材の底面が車体フレーム側に連結されるものであり、前記上側連結部材に前記軸状部材を介して取着される上側取着部材と、前記下側連結部材に取着されると共に前記上側取着部材と所定間隔を隔てつつ対向して配置される下側取着部材と、前記上側取着部材および下側取着部材の対向面間を連結しゴム状弾性材から構成される支持基体と、前記軸状部材の他端側に取着され前記下側連結部材の底面側から突出される円柱状の突設部材と、を備え、前記上側取着部材及び下側取着部材は、車両前後方向に沿って位置すると共に、前記一対の防振基体は、車両左右方向に沿って位置しており、前記軸状部材が前記上側連結部材に固定される固定位置は、前記一対の防振基体の車両前後方向中央を結ぶ仮想線に対し前記支持基体と反対側へずれた位置とされている。
請求項2記載の防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記貫通孔の内周面形状が楕円形状に形成されると共に、前記貫通孔は、前記楕円形状の長軸半径方向が車両前後方向を指向すると共に短軸半径方向が車両左右方向を指向する向きで配置され、前記ストッパゴム部は、前記軸状部材が挿通される内周面の形状と、前記貫通孔の周縁部であって前記上側連結部材に対向する側に配置される部位の外形形状とが前記貫通孔に対応する楕円形状に形成されている。
請求項3記載の防振装置は、請求項1又は2に記載の防振装置において、ゴム状弾性材から構成され前記下側連結部材に覆設されると共に前記一対の防振基体と前記ストッパゴム部とを連結する薄膜状の下側ゴム膜部を備えている。
請求項4記載の防振装置は、請求項3記載の防振装置において、ゴム状弾性材から構成され前記上側連結部材に覆設されると共に前記一対の防振基体を連結する薄膜状の上側ゴム膜部を備えている。
請求項5記載の防振装置は、請求項3又は4に記載の防振装置において、ゴム状弾性材から構成され前記下側ゴム膜部から突設される突条部を備え、前記突条部は、前記一対の防振基体と前記ストッパゴム部とを連結する突条として構成され、前記ストッパゴム部よりも突設高さが低くされている。
請求項1記載の防振装置によれば、車両への組み付け作業に際しては、まず、上側連結部材がエンジン側(トランスミッション)にボルトで締結固定され、次いで、この状態でエンジン側が車体フレーム側へ向けて下降され、下側連結部材が車体フレーム側に締結固定される。この場合、下側連結部材の底面側から突出される円柱状の突設部材が車体フレームに形成された案内部に案内されることで、車体フレームに対して下側連結部材を位置決めすることができる。
ここで、本発明の防振装置によれば、エンジン側に連結される上側連結部材に軸状部材の一端側を固定すると共に、その軸状部材の他端側を下側連結部材の貫通孔に挿通し、その貫通孔から下側連結部材の底面側へ突出された軸状部材の他端側に突設部材を取着する構成であるので、車両への組み付け作業に、上側連結部材と下側連結部材との間の相対位置がずれることを抑制することができる。その結果、車両への組み付け時における防振基体のゆがみを抑制して、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、従来の防振装置では、位置決め部材(突設部材)が下板金具(下側連結部材)に取着され、位置決め部材と上板金具との間にゴム状弾性材が介在する構成である。そのため、例えば、寸法ばらつきや作業誤差など起因して位置決め部材が案内部に対して位置ずれしていると、上板金具をエンジン側に締結固定した状態で、エンジン側を車体フレーム側へ下降させる際に、位置決め部材が案内部材によって水平方向へ案内され、その位置決め部材と共に下側金具が変位することで、上板金具と下板金具との間の相対位置がずれるという問題点があった。その結果、防振基体にゆがみが発生した状態のままで車両に組み付けられ、耐久性の低下を招く。
これに対し、本発明の防振装置によれば、突設部材を、軸状部材を介して、上側連結部材に連結(固定)させる一方、下側連結部材を、防振基体を介して、上側連結部材に連結させる構成であり、上側連結部材を保持した状態で突設部材(軸状部材)に荷重が作用しても、上側連結部材と下側連結部材との間の相対位置に変化は生じない。
よって、上側連結部材をエンジン側に締結固定した状態で、エンジン側を車体フレーム側へ下降させる際に、突設部材が案内部材によって水平方向へ案内されても、その突設部材と共に下側連結部材が変位することを回避することができ、上側連結部材と下側連結部材との間の相対位置を保持することができる。その結果、車両への組み付け時における防振基体のゆがみを抑制して、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
また、本発明の防振装置によれば、上側連結部材に取着される上側取着部材と、下側連結部材に取着される下側取着部材と、これら上側取着部材及び下側取着部材の対向面間を連結する支持基体とを備え、上側取着部材及び下側取着部材(即ち、支持基体)が車両前後方向に沿って位置する構成であるので、車両前後方向の剛性を高めると共に車両左右方向の剛性を適正に調整し、車両の乗り心地の向上と操縦安定性の向上とを図ることができるという効果がある。
併せて、車両前後方向の剛性を高めることで、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、軸状部材が貫通孔の内周面に衝突することを抑制して、打音(異音)の発生を抑制することができるという効果がある。
また、本発明の防振装置によれば、上側取着部材が上側連結部材に軸状部材を介して取着される、即ち、軸状部材がストッパ作用を発揮するための機能と上側取着部材を上側連結部材に取着するための機能とを兼用する構成であるので、その分、部品点数を削減して、組み立てコストの削減と軽量化とを図ることができるという効果がある。
ここで、本発明の防振装置によれば、車両左右方向に沿って位置する一対の防振基体と、車両前後方向に沿って位置する一の支持基体との三片で上側連結部材と下側連結部材とを連結する構成であるところ、軸状部材が上側連結部材に固定される固定位置を、一対の防振基体の車両前後方向中央を結ぶ仮想線に対し支持基体と反対側へずれた位置としたので、第1に防振装置を製造する際の防振基体及び支持基体のゆがみを抑制することができ、第2に車両への組み付け時における防振基体及び支持基体のゆがみを抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、防振装置の製造は、防振基体が加硫接着された上側連結部材及び下側連結部材に対し、支持基体が加硫接着された上側取着部材及び下側取着部材を軸状部材及びナットを介して取着する構成であるところ、軸状部材の固定位置を上述のように支持基体と反対側へずれた位置とすることで、防振基体及び支持基体のゆがみを抑制しつつ、上側連結部材及び下側連結部材へ上側取着部材及び下側取着部材を取着することができる。
更に、防振装置を車両に組み付ける際には、軸状部材の固定位置を上述のように支持基体と反対側へずれた位置とすることで、防振基体及び支持基体のゆがみを抑制しつつ、防振装置を車両へ組み付けることができる。
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、打音(異音)の発生を抑制することができるという効果がある。
ここで、本発明の防振装置によれば、下側連結部材に貫通孔が穿設され、その貫通孔には一端側が上側連結部材に固定された軸状部材の他端側が挿通されている。これにより、例えば、エンジンから車両前後方向の大変位の振動が入力され、上側連結部材と下側連結部材との間に大きな相対変位が生じると、軸状部材が、ストッパゴム部を介して、貫通孔の内周面に受け止められることで、その軸状部材の変位が規制され、ストッパ作用が発揮される。
この場合、本発明の防振装置は、貫通孔の内周面形状を楕円形状に形成し、その楕円形状の長軸半径方向を車両前後方向に指向させる構成であるので、軸状部材と貫通孔との間における隙間を車両前後方向で十分に確保することができる。これにより、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、軸状部材が貫通孔の内周面に衝突することを抑制して、打音(異音)の発生を抑制することができるという効果がある。
一方で、本発明によれば、貫通孔の内周面形状を楕円形状に形成し、その楕円形状の短軸半径方向を車両左右方向に指向させる、即ち、貫通孔の内周面全体を大径化するのではなく、車両左右方向については車両前後方向よりも小径とする構成であるので、エンジンの車両左右方向の変位は確実に規制して、車両の操縦安定性を高めることができるという効果がある。
その結果、操縦安定性を確保するために、防振基体の形状や硬度などを変更する必要がなく、車両上下方向や車両前後方向における防振基体のばね特性が犠牲となることを回避できるので、車両上下方向の振動を減衰させると共に、車両前後方向の剛性を適正に調整して、車両の乗り心地の向上を図ることを、異音の発生防止と併せて達成することができるという効果がある。
ここで、例えば、エンジンから車両上下方向の大変位の振動が入力され、上側連結部材と下側連結部材との間に大きな相対変位が生じると、上側連結部材が、ストッパゴム部を介して、下側連結部材に受け止められることで、その上側連結部材の変位が規制され、ストッパ作用が発揮される。
この場合、本発明の防振装置によれば、ストッパゴム部は、貫通孔の周縁部であって上側連結部材に対向する側に配置される部位の外形形状が貫通孔に対応する楕円形状に形成されているので、上側連結部材と下側連結部材との間で挟持されても、ストッパゴム部の一部が破損等することを抑制して、そのストッパゴム部の耐久性の向上を図ることができるという効果がある。その結果、車両上下方向の振動入力に対する緩衝作用を確実に発揮することができる。
即ち、本発明の防振装置によれば、ストッパゴム部の外形形状を楕円形状に形成すると共に、その楕円形状の長軸半径方向及び短軸半径方向をそれぞれ車両前後方向及び車両左右方向に指向させ、かつ、そのストッパゴム部の楕円形状を貫通孔の楕円形状と相似形とする構成であるので、貫通孔の周縁部において、下側連結金具とストッパゴム部とのラップ代(重なり代)を周方向で均一とすることができる。
その結果、上側及び下側連結部材の間でストッパゴム部が挟持されても、周方向の一部に変形が集中することを抑制して、破損等することや貫通孔から脱落することを抑制することができるので、ストッパゴム部の耐久性の向上を図ることができると共に、ストッパ作用(緩衝作用)を確実に発揮することができる。
また、本発明の防振装置によれば、軸状部材が挿通されるストッパゴム部の内周面の形状(楕円形状)についても、上述した外形形状の場合と同様に、楕円形状の長軸半径方向及び短軸半径方向をそれぞれ車両前後方向及び車両左右方向に指向させ、かつ、そのストッパゴム部の楕円形状を貫通孔の楕円形状と相似形とする構成である。
よって、軸状部材とストッパゴム部の内周面との間における隙間を車両前後方向で十分に確保することができる。これにより、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、軸状部材の変位がストッパゴム部によって阻害され、異音が発生し易くなることを抑制することができるという効果がある。
同時に、貫通孔の内周面に配設されるストッパゴム部の肉厚を周方向で均一とすることができるので、軸状部材と貫通孔の内周面との間でストッパゴム部が挟持されても、周方向の一部が早期に破損等することを抑制することができる。
これにより、ストッパゴム部の耐久性の向上を図ることができるので、軸状部材が貫通孔の内周面に直接に当接される(即ち、ストッパゴム部を介さずに当接される)ことを抑制することでき、その結果、ストッパ作用(緩衝作用)を確実に発揮することができると共に、異音の発生をより確実に抑制することができるという効果がある。
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1又は2に記載の防振装置の奏する効果に加え、ゴム状弾性材から薄膜状に構成され下側連結部材に覆設される下側ゴム膜部を備え、その下側ゴム膜部によって防振基体とストッパゴム部とが連結される構成であるので、防振基体と下側連結部材との間の剥離、及び、ストッパゴム部と下側連結部材との間の剥離を抑制して、その耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
請求項4記載の防振装置によれば、請求項3記載の防振装置の奏する効果に加え、ゴム状弾性材から薄膜状に構成され上側連結部材に覆設される上側ゴム膜部を備え、その上側ゴム膜部によって一対の防振基体が連結される構成であるので、防振基体と上側連結部材との間の剥離を抑制して、その耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
請求項5記載の防振装置によれば、請求項3又は4に記載の防振装置の奏する効果に加え、ゴム状弾性材から構成され下側ゴム膜部から突設される突条部を備え、その突条部によって防振基体とストッパゴム部とが連結される構成であるので、防振基体と下側連結部材との間の剥離、及び、ストッパゴム部と下側連結部材との間の剥離を、下側ゴム膜部のみが設けられている構成と比較して、より確実に抑制して、その耐久性のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
また、突条部の突設高さをストッパゴム部の突設高さよりも低くして段差を設ける構成であるので、車両上下方向の大変位の振動入力に伴って、上側連結部材の変位を下側連結部材により受け止める際には、上記段差の効果により緩衝作用を効果的に発揮して、衝突の際の衝撃を緩やかとすることができるので、その分、異音の発生を抑制することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における防振装置100の上面図である。また、図2は、防振装置100の部分断面図であり、図3は、防振装置100の底面図であり、図4は、防振装置100の側面図である。
なお、図2は、図1のII−II線における断面図に対応する。また、各図中の矢印U−D、矢印L−R及び矢印F−Bは、車両の上下方向、左右方向および前後方向をそれぞれ示している。
防振装置100は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型自動車のエンジンを3点支持(フロント2点及びリア1点で支持)するエンジンマウントの内のリアマウント(トランスミッションTMと車体フレームBFとの間に介装されるリア側のマウント)として構成されるものであり(図2参照)、図1から図4に示すように、上側連結金具10と、下側連結金具20と、防振基体30と、ストッパボルト40と、上側取着金具50と、下側取着金具60と、支持基体70とを主に備えて構成されている。
上側連結金具10は、図2に示すように、エンジン側(トランスミッションTM)にボルト等の締結手段(図示せず)を介して連結される部位であり、上方(図2上側)へ向けて拡開する左右の取付板部11と、それら左右の取付板部11の間に位置する底面板部12及び上面板部13とを備えて構成されている。
左右の取付板部11は、鉄鋼材料からなる長尺状の板材を中心線Lに対して左右対称に折り曲げることで、底面板部12の両側に形成される部位であり、図1、図2及び図4に示すように、上面側(図2上側)にそれぞれ2枚の板材が溶接固定されると共に、それら重ね合わされた部位に挿通孔11aがそれぞれ2箇所ずつ合計4箇所に穿設されている。この挿通孔11aに挿通されたボルト等の締結手段がエンジン側部材(トランスミッションTM)に螺合されることで、上側連結金具10がトランスミッションTMに締結固定される。
また、上面板部13は、後述する上側取着金具50が載置される平板状の部材であり、図1及び図2に示すように、左右の取付板部11の間に架設され溶接固定されると共に、底面板部12に対して平行に配置されている。
上面板部13及び底面板部12には、その幅方向(図2左右方向)の中央に締結孔13a,12aがそれぞれ穿設されている。締結孔13a,12aは、後述するストッパボルト40が締結固定される部位であり、この締結孔13a,12aの内周面には、ストッパボルト40の外周面に刻設されるおねじと螺合可能なめねじが刻設されている。
下側連結金具20は、図2に示すように、車体フレームBFにボルト等の締結手段(図示せず)を介して連結される部位であり、鉄鋼材料からなる長尺状の板材を折り曲げ形成することで、上方(図2上側)へ向けて拡開する左右の連結板部21と、それら左右の連結板部21の間に位置する座面板部22とを備えて構成されている。
左右の連結板部21は、図1、図2及び図4に示すように、上述した上側連結金具10の取付板部11と対向して配置されており、後述する防振基体3を介して、上側連結金具10の取付板部11に連結されている。
座面板部22には、図3に示すように、内周面にめねじを有する締結孔22aが6箇所に穿設されている。座面板部22の一側(図3上側)の4箇所に形成される締結孔22aには、車体フレームBFに挿通されたボルト等の締結手段が座面板部22の底面側(図2下側)から螺合され、これにより、下側連結金具20が車体フレームBFに締結固定される。
一方、座面板部22の他側(図3下側)の2箇所に形成される締結孔22aには、後述する下側取着金具60に挿通されたボルトBが座面板部22の上面側(図4上側)から螺合され、これにより、下側取着金具60が下側連結金具20(座面板部22)に締結固定される。
また、座面板部22には、図1及び図3に示すように、その幅方向(図2左右方向)の中央に貫通孔22bが穿設されている。この貫通孔22bは、後述するストッパボルト40との相互作用により、大変位入力時のストッパ作用を発揮するための部位であり、底面板部12及び上面板部13の締結孔12a,13aと上面視において重なる位置に配置されている。
防振基体30は、図1から図4に示すように、ゴム状弾性材からブロック形状に形成され、上側連結金具10の取付板部11と下側連結金具20の連結板部21との間に所定角度傾斜した状態で配設(加硫接着)され、これら両板部11,21間を連結する。なお、防振基体30は、図2及び図3に示すように、大小2種類の矩形状を組み合わせた断面形状を有し、小さな直方体の側を互いに対向させた状態で配置されている。
防振基体30の内面側上端部には、図2に示すように、底面板部12の底面側(図1下側面)を覆う上側ゴム膜部31が連なっている。上側ゴム膜部31は、底面板部12における締結孔12aの周囲の所定範囲を除きつつ、防振基体30と同じ幅(図3上下方向寸法)で設けられ、左右の防振基体30を互いに連結するように構成されている。
また、防振基体30の内面側下端部には、図2に示すように、座面板部22の上面側(図2上側面)を覆う下側ゴム膜部32が連なっている(図6参照)。下側ゴム膜部32は、座面板部22における締結孔22aの周囲の所定範囲を除きつつ、防振基体30と同じ幅(図3上下方向寸法)で設けられ、左右の防振基体30を互いに連結すると共に、ストッパゴム部33と、突条部34とを備えて構成されている。
ストッパゴム部33は、大変位入力時にストッパボルト40又は底面板部12と座面板部22との間に挟持されてストッパ作用(緩衝作用)を発揮するための部位であり、貫通孔22bの内周部及び周縁部に配設され、座面板部22の上面側及び底面側(図1上側面及び下側面)に突設されると共に、正面視円形の円環状に構成されている。ここで、図5を参照して、ストッパゴム部33の詳細構成について説明する。
図5(a)は、図3のVa−Va線における防振装置100の断面図であり、図5(b)は、図3のVb−Vb線における防振装置100の断面図である。底面板部22の貫通孔22bは、図5に示すように、ストッパボルト40の軸心Oと同心の円形の孔として形成されている。
ストッパゴム部33は、上述したように、貫通孔22bの内周部及び周縁部に配設されており、図5に示すように、ストッパボルト40が挿通される内周面33aと、底面板部12及び位置決め部材80に対向して配置され正面視円形に形成される上端面33b及び下端面33cとを有する円筒形状に構成されている。
内周面33aの軸心Oに直交する断面形状は、ストッパボルト40の軸心Oと同心の円形に形成され、その円形は、ストッパボルト40の外径(直径)よりも大径に構成され、ストッパボルト40の外周面との間に所定の隙間が形成されている(図2参照)。
なお、貫通孔22bは、図5に示すように、鍛造加工により段部が形成された階段状に構成されることで、上端面33b側に位置する大径部と、その大径部よりも小径に形成され下端面33c側に位置する小径部とを内周面に備えて構成されている。
これにより、1W時におけるストッパゴム部33と底面板部12又はフランジ部41との間のクリアランス(隙間)を変更することなく、ストッパゴム部33のゴムボリューム(図5上下方向の厚み寸法)を上端面33b側で厚く、かつ、下端面33c側で薄くすることができる。その結果、車両に対する取付位置や取付スペースから要求される防振装置100の寸法形状(即ち、上側連結部材10と下側連結部材20との離間寸法、防振装置100の高さ寸法など)を変更することなく、ストッパゴム部33のストッパ機能(緩衝機能)を調整することができる。
図1から図4に戻って説明する。突条部34は、ストッパ作用時の緩衝機能の向上と防振基体30の耐久性の向上とを図るための部位であり、図2に示すように、下側ゴム膜部32から突設される突条として構成されている。ここで、図6を参照して、突条部34の詳細構成について説明する。
図6は、図3のVI−VI線における防振装置100の断面図である。突条部34は、図6に示すように、座面板部22に覆設される下側ゴム膜部32から断面円弧状に突出して形成されると共に、下側連結金具20の幅方向(図6紙面垂直方向)に沿って延設され、防振基体30の内側面下端部とストッパゴム部33とを連結する突条として構成されている(図2参照)。
このように、本実施の形態における防振装置100によれば、突条部34によって防振基体30の内側面下端部とストッパゴム部33とが連結される構成であるので、防振基体33と下側連結金具20(連結板部21及び座面板部22)との間の剥離、及び、ストッパゴム部33と下側連結金具20(座面板部22)との間の剥離を、下側ゴム膜部32のみが設けられる構成と比較して、より確実に抑制して、その耐久性のより一層の向上を図ることができる。
ここで、突条部34は、ストッパゴム部33よりも突設高さ(図6上下方向寸法)が低くされている(図2参照)。これにより、車両上下方向(矢印U−D方向)の大変位の振動入力に伴って、上側連結金具10(底面板部12)の変位を下側連結金具20(座面板部22)により受け止める際には、ストッパゴム部33と突条部34との突設高さの段差の効果により、緩衝作用を効果的に発揮して、衝突の際の衝撃を緩やかとすることができるので、その分、異音の発生を抑制することができる。
図1から図4に戻って説明する。ストッパボルト40は、座面板部22の貫通孔22bとの相互作用により、大変位入力時のストッパ作用を発揮するための部位であり、図2に示すように、金属材料から断面円形の軸状体として構成されると共に、締結孔12a,13aのめねじと螺合可能なおねじが外周面に刻設されている。
これにより、ストッパボルト40は、図2に示すように、その外周面のおねじを締結孔12a,13aのめねじに螺合させることで、一端側(図2上側)が上側連結金具10(底面板部12、上面板部13)に締結固定されると共に、他端側(図2下側)が下側連結金具20の貫通孔22bに挿通配置される。
ここで、ストッパボルト40の一端側(図2上側)には、図1及び図2に示すように、ナットNが締結されると共に、拡径加工によるナットNの緩み止めが施されている。なお、ナットNの座面と上面板部13の上面との間には、後述する上側取着金具50が挟持固定されている。
ストッパボルト40の他端側(図2下側)には、図2に示すように、径方向外方へ正面視円形の円盤状に張り出すフランジ部41が設けられている。フランジ部41は、車両上方向(矢印U方向)への大変位入力時において、座面板部22(ストッパゴム部33)との間の相互作用により、ストッパ作用を発揮するための部位である。
なお、図2に示す状態は、製品状態を示しており、この状態では、座面板部22とストッパボルト40のフランジ部41との間でストッパゴム部33が圧縮変形されている。一方、防振装置100が車両に搭載されトランスミッションTRを支持する状態(1W負荷時)では、防振基体30が圧縮変形され、ストッパゴム部33の上端面33b及び下端面33c(図5参照)と底面金具12及びフランジ部41との間に所定の隙間(クリアランス)が形成される。
ストッパボルト40の他端側(図2下側)には、図1から図4に示すように、突設部材80が外嵌されると共に、拡径加工による突設部材80の抜け止めが施されている。これにより、突設部材80は、ストッパボルト40のフランジ部41と被拡径加工部との間で挟持固定されている。
突設部材80は、上側連結部材10をトランスミッションTRに締結固定した後、エンジン側を下降させ、下側連結部材20を車体フレームBFに締結固定する際に、車体フレームBFに対する下側連結部材20(締結孔22a)の位置合わせを行うための部材であり、先端(図2下側)へ向かうほど小径となる先細の円筒状に樹脂材料から構成されている。
防振装置100は、図1から図4に示すように、上側連結金具10、下側連結金具20及び防振基体30から主に構成される第1部品に対して、上側取着金具50、下側取着金具60及び支持基体70から主に構成される第2部品を装着することで組み立てられている。ここで、これら上側取着金具50、下側取着金具60及び支持基体70から構成される第2部品の詳細構成について、図7及び図8を参照して説明する。
図7(a)は、第2部品の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における第2部品の断面図である。また、図8は、図7(b)のVIII−VIII線における第2部品の断面図である。
第2部品は、上述したように、上側取着金具50と、下側取着金具60と、支持基体70とを主に備えて構成されている。上側取着金具50は、上側連結金具10(上面板部13)の上面側にナットN及びストッパボルト40を介して締結固定(取着)される部位であり(図1及び図2参照)、図7に示すように、載置板部51と、その載置板部51から垂下される垂下板部52と、これら各板部51,52の間に位置する湾曲部53とを主に備えて構成されている。
載置板部51は、上側連結金具10(上面板部13)の上面に載置される部位であり(図1及び図2参照)、図7に示すように、平板状に構成されると共に、幅方向(図7(a)上下方向)中央に挿通孔51aが穿設されている。この挿通孔51aにストッパボルト40が挿通され、ナットNが締結されることで、上側取着金具50が上面板部13とナットNとの間で挟持固定される。
垂下板部52は、図7に示すように、後述する支持基体70が連結される部位であり、載置板部51からほぼ垂直方向(図7(b)垂直方向)へ向けて垂下されると共に、載置板部51の幅寸法(図7(a)上下方向寸法)よりも幅広に形成されている。湾曲部53は、上側取着金具50の強度を確保するための部位であり、図8に示すように、円弧状に湾曲して形成されている。
下側取着金具60は、下側連結金具20(座面板部22)の上面側にボルトBを介して締結固定(取着)される部位であり(図1及び図4参照)、図7に示すように、載置板部61と、その載置板部51から立設される立設板部62と、これら各板部61,62を連結する一対のリブ板部63とを主に備えて構成されている。
載置板部61は、下側連結金具20(座面板部22)の上面に載置される部位であり(図1及び図4参照)、図7に示すように、平板状に構成されると共に、幅方向(図7(a)上下方向)中央(中心線L)に対して対称となる2箇所に挿通孔61aが穿設されている。この挿通孔61aに挿通されたボルトBが座面板部22の締結孔22aに締結されることで、下側取着金具60が下側連結金具20に締結固定される。
立設板部62は、図7に示すように、後述する支持基体70が連結される部位であり、載置板部61からほぼ垂直方向(図7(b)垂直方向)へ向けて立設され、垂下板部52に対向配置されている。一対のリブ板部63は、下側取着金具60の強度を確保するための部位であり、このリブ板部63により、載置板部61と立設板部62との端縁部が連結されている。
支持基体70は、図7に示すように、ゴム状弾性材から断面矩形の直方体状に形成され、上側取着金具50の垂下板部52と下側取着金具60の立設板部62との間に所定角度傾斜した状態(垂下板部52から立設板部52へ向けて下降傾斜した状態)で配設(加硫接着)され、これら両板部52,62間を連結する。
なお、防振装置100が車両に搭載されトランスミッションTRを支持する状態(1W負荷時)では、上述したように、防振基体30が圧縮変形されることで、下側取着金具60に対して上側取着金具50が下降され、支持基体70が座面板部22と平行な状態に配置される。これにより、車両前後方向の剛性を高め、車両の乗り心地の向上と操縦安定性の向上とを図ることができる。
次いで、以上のように構成された防振装置100を車両に組み付ける際の組み付け作業について説明する。なお、防振装置100は、第1部品と第2部品とがそれぞれ別工程にて加硫成形され、上述したように、第1部品に第2部品が装着されることで、完成品として組み立てられる。
この防振装置100を車両へ組み付けるに際しては、まず、上側連結金具10をエンジン側(トランスミッションTR)にボルトで締結固定し、次いで、この状態(エンジン側に防振装置100がぶら下がった状態)でエンジン側を車体フレームBFへ向けて下降させ、車体フレームBFの挿通孔に対する下側連結金具20の締結孔22aの位置合わせを行う。
この場合、下側連結金具20の底面側から突出される突設部材80が車体フレームBFに形成された案内部に案内されることで、車体フレームBFに対する下側連結部材20の相対位置を位置決めすることができる。よって、車体フレームBFの挿通孔からボルトを挿通することで、かかるボルトを下側連結金具20の締結孔22aに螺号することができ、これにより、図2に示すように、下側連結金具20を車体フレームBFに締結固定して、防振装置100を車両に組み付けることができる。
ここで、本実施の形態における防振装置100によれば、図2に示すように、エンジン側(トランスミッションTR)に連結される上側連結金具10にストッパボルト40の一端側が固定されると共に、そのストッパボルト40の他端側は、下側連結金具20の貫通孔22bに挿通され、下側連結金具20の底面側から突出されたストッパボルト40の他端側に突設部材80が取着される構成である。
よって、車両への組み付け作業時に、上側連結金具10と下側連結金具20との間の相対位置がずれることを抑制することができ、その結果、車両への組み付け時における防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
即ち、従来の防振装置では、位置決め部材(突設部材)が下側連結金具に取着され、位置決め部材と上側連結金具との間に防振基体が介在する構成である。そのため、例えば、寸法ばらつきや作業誤差など起因して位置決め部材が車体フレームの案内部に対して位置ずれしていると、上側連結金具をエンジン側に締結固定した状態で、エンジン側を車体フレーム側へ下降させる際に、位置決め部材が案内部材によって水平方向へ案内され、その位置決め部材と共に下側連結金具が変位することで、上側連結金具と下側連結金具との間の相対位置がずれるという問題点があった。その結果、防振基体にゆがみが発生した状態のままで車両に組み付けられ、耐久性の低下を招く。
これに対し、本実施の形態における防振装置によれば、図2に示すように、突設部材80を、ストッパボルト40を介して、上側連結金具10に連結(固定)させる一方、下側連結金具20を、防振基体30及び支持基体70を介して、上側連結金具10に連結させる構成であり、上側連結金具10を保持した状態で突設部材80(即ち、ストッパボルト40)に荷重が作用しても、上側連結金具10と下側連結金具20との間の相対位置に変化は生じない。
よって、上側連結金具10をエンジン側(トランスミッションTR)に締結固定した状態で、エンジン側を車体フレームBF側へ下降させる際に、突設部材80が車体フレームBFの案内部材によって水平方向へ案内されても、その突設部材80と共に下側連結金具20が変位することを回避することができ、上側連結金具10と下側連結金具20との間の相対位置を保持することができる。その結果、車両への組み付け時における防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
また、本実施の形態における防振装置100によれば、図1から図4に示すように、上側連結金具10に取着される上側取着部材50と、下側連結金具20に取着される下側取着部材60と、これら上側取着部材50及び下側取着部材60の対向面間を連結する支持基体70とを備え、上側取着部材50及び下側取着部材60(即ち、支持基体70)が車両前後方向(矢印F−B方向)に沿って位置する構成であるので、車両前後方向の剛性を高めると共に車両左右方向(矢印R−L方向)の剛性を適正に調整し、車両の乗り心地の向上と操縦安定性の向上とを図ることができる。
併せて、車両前後方向の剛性を高めることで、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、ストッパボルト40が貫通孔22bの内周面に衝突することを抑制して、打音(異音)の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態における防振装置100によれば、上側取着部材50が上側連結金具10にストッパボルト40を介して取着される、即ち、このストッパボルト40がストッパ作用を発揮するための機能と上側取着部材50を上側連結金具10に取着するための機能とを兼用する構成であるので、その分、部品点数を削減して、組み立てコストの削減と軽量化とを図ることができる。
ここで、本実施の形態における防振装置100によれば、図1から図4に示すように、車両左右方向(矢印R−L方向)に沿って位置する一対の防振基体30と、車両前後方向(矢印F−B方向)に沿って位置する一の支持基体70との三片で上側連結金具10と下側連結金具20とを連結する構成であるところ、ストッパボルト40が上側連結金具10に固定される固定位置を、一対の防振基体30の車両前後方向中央を結ぶ仮想線Xに対し支持基体70と反対側(図1下側)へずれた位置としたので、第1に防振装置100を製造する際の防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制することができ、第2に車両への組み付け時における防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。
即ち、防振装置100の製造は、上述したように、防振基体30が加硫接着された上側連結金具10及び下側連結金具20に対し、支持基体70が加硫接着された上側取着部材50及び下側取着部材60をストッパボルト40及びナットNを介して取着する構成(即ち、第1部品に第2部品を装着する構成)であるところ、図1又は図3に示すように、ストッパボルト40の固定位置を上述のように仮想線Xに対して支持基体70と反対側(図1下側)へずれた位置とすることで、防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制しつつ、上側連結金具10及び下側連結金具20へ上側取着部材50及び下側取着部材70を取着することができる。
更に、防振装置100を車両に組み付ける際には、図1又は図3に示すように、ストッパボルト40の固定位置を上述のように仮想線Xに対して支持基体70と反対側(図1下側)へずれた位置とすることで、防振基体30及び支持基体70のゆがみを抑制しつつ、防振装置100を車両へ組み付けることができる。
次いで、図9を参照して、第2実施の形態について説明する。図9は、第2実施の形態における防振装置200を示す断面図であり、図9(a)及び図9(b)は、それぞれ図5(a)及び図5(b)に対応する。なお、図9では、1W時におけるストッパボルト40の初期位置が2点鎖線を用いて仮想的に図示されている。
第1実施の形態では、座面板部22の貫通孔22b及びストッパゴム部33の内周面33aが正面視円形に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における座面板部222の貫通孔222b及びストッパゴム部233の内周面233aは、楕円形状に構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第2実施の形態における貫通孔222bは、図9に示すように、正面視楕円形状に形成されている。詳細には、貫通孔222bの内周面形状が正面視楕円形状に形成され、この楕円形状の長軸半径方向が、図9(b)に示すように、車両前後方向(矢印F−B方向)を指向すると共に、短軸半径方向が、図9(a)に示すように、車両左右方向(矢印L−R方向)を指向する。
また、ストッパゴム部233は、図9に示すように、ストッパボルト40が挿通される内周面233aの形状と、貫通孔222bの周縁部であって上側連結金具10(底面板部12、図2参照)に対向して配置される上端面233b及びフランジ部41に対向して配置される下端面233cの形状とが貫通孔222bの内周形状に対応する楕円形状に形成されている。
即ち、ストッパゴム部233は、図9に示すように、内周面233a及び上下端面233b,233cを正面視楕円形状に形成すると共に、その楕円形状の長軸半径方向及び短軸半径方向をそれぞれ車両前後方向(矢印F−B方向)及び車両左右方向(矢印L−R方向)に指向させ、かつ、それら内周面233a及び上下端面233b,233cの楕円形状を貫通孔222bの楕円形状と相似形の楕円形状とする構成である。
これにより、図9(b)に示すように、ストッパボルト40と貫通孔222bとの間における車両前後方向(矢印F−B方向)の隙間tF,tBを十分に確保することができるので、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、ストッパボルト40が貫通孔222bの内周面に衝突することを抑制して、打音(異音)の発生を抑制することができる。
なお、上下端面233b,233cは、座面板部222と平行な面として構成されている。また、上端面233bの短軸半径(図9(a)左右方向寸法)は、上側連結金具10の底面板部12における下側平坦面(図2下側面)の幅寸法(図2左右方向寸法)と同じか短い長さに設定され、上端面233bの長軸半径(図9(b)左右方向寸法)は、上側連結金具10の底面板部12における下側平坦面(図2下側面)の奥行き寸法(図2紙面垂直方向寸法)よりも短い長さに設定されている。一方、下端面233cの長軸半径(図9(b)左右方向寸法)は、ストッパボルト40のフランジ部41(図2参照)の直径と同じか短い長さに設定されている。
これにより、ストッパゴム部40のゴム切れなどの破損を防止して、耐久性の向上を図ることができる。併せて、ゴムボリュームを有効に活用して、ストッパ作用時の緩衝作用を十分に発揮できると共に、打音(異音)の発生を抑制することができる。
一方で、本実施の形態における防振装置200によれば、図9に示すように、貫通孔222bの内周面を正面視楕円形状に形成し、その楕円形状の短軸半径方向を車両左右方向(矢印L−R方向)に指向させる、即ち、貫通孔222bの内周面全体を大径化するのではなく、車両左右方向については車両前後方向(矢印F−B方向)よりも小径とする構成であるので(tF,tB<tL,tR)、エンジンの車両左右方向の変位を確実に規制して、車両の操縦安定性を高めることができる。
その結果、車両の操縦安定性を確保するために、防振基体30及び支持基体70の形状や硬度などを変更する必要がなく、車両上下方向(矢印U−D方向)や車両前後方向(矢印F−B方向)における防振基体30及び支持基体70のばね特性が犠牲となることを回避できるので、車両上下方向の振動を減衰させると共に、車両前後方向の剛性を適正に調整して、車両の乗り心地の向上及び操縦安定性の向上を図ることを、異音の発生防止と併せて達成することができる。
また、ストッパゴム部233は、上述したように、上下端面233b,233cの形状が貫通孔222bに対応する楕円形状に形成されているので、貫通孔222bの周縁部において、図9に示すように、座面板部222とストッパゴム部233(上下端面233b,233c)とのラップ代(重なり代)を周方向で均一とすることができる。
その結果、車両上下方向(矢印U−D方向)の大変位入力に伴い、底面板部12又はフランジ部41(図2参照)と座面板部22との間でストッパゴム部233が挟持されても、そのストッパゴム部233の周方向の一部に変形が集中することを抑制することができる。これにより、ストッパゴム部33がゴム切れ等により破損することや貫通孔222bから脱落することを抑制することができるので、その耐久性の向上を図ることができると共に、ストッパ作用(緩衝作用)を確実に発揮させることができる。
更に、本実施の形態における防振装置200によれば、ストッパゴム部233の内周面233aの形状(楕円形状)についても、上端面233bの場合と同様に、貫通孔222bの楕円形状と相似形とする構成であるので、ストッパゴム部233(内周面233a)とストッパボルト40との間の車両前後方向(矢印F−B方向)における隙間を十分に確保することができる。
これにより、車両の発進又は停止に伴い、車両前後方向の大変位の振動が入力された場合でも、ストッパボルト40の変位がストッパゴム部233の内周面233aによって阻害され、異音が発生し易くなることを抑制することができる。
同時に、貫通孔222bの内周面に配設される(内周面を覆う)ストッパゴム部233の肉厚(例えば、図9(a)左右方向寸法)を周方向で均一とすることができるので、ストッパボルト40と貫通孔222bの内周面との間でストッパゴム部233が挟持されても、周方向の一部(即ち、上述した肉厚が薄肉となっている部分)が早期に破損等することを抑制することができる。
これにより、ストッパゴム部233の耐久性の向上を図ることができるので、ストッパボルト40が貫通孔222bの内周面に直接に当接される(即ち、ストッパゴム部233を介さずに当接される)ことを抑制することでき、その結果、ストッパ作用(緩衝作用)を確実に発揮させることができると共に、異音の発生をより確実に抑制できる。
なお、ストッパゴム部233の内周面233aは、図9に示すように、ストッパボルト40の外周面に沿って(即ち、車両上下方向に沿って)直線状に形成されている。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記第2実施の形態では、貫通孔222b及び内周面233aを正面視楕円形状とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形状とすることは当然可能である。即ち、車両前後方向(矢印F−B方向)の隙間tF,tBを、車両左右方向(矢印R−L方向)の隙間tR,tLと比較して、大きくすることができれば足りる趣旨である。よって、他の形状としては、例えば、長円形状や長方形などが例示される。
上記各実施の形態では、突条部34が下側ゴム膜部32のみに設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに加えて又は代えて上側ゴム膜部31に突条部34を設けることは当然可能である。また、突条部34の配設本数は、1本に限られるものではなく、奥行き方向(図2左右方向)に間隔を隔てつつ複数本を配設することは当然可能である。