JP4883963B2 - 燃料ガス製造システム - Google Patents

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Description

本発明は、下水汚泥などの有機廃棄物を高温高圧の亜臨界条件下で水熱分解及び酸化分解して燃料ガスを製造するシステムに関するものである。
下水汚泥その他の有機廃棄物を高温高圧条件下で酸化分解し、固形残渣量を減少させる技術については、特許文献1〜3に示されるように既に多くの提案がなされている。これらの先行技術は、含水有機廃棄物を高温高圧の亜臨界条件下で酸素等の酸化剤と接触させて酸化分解し、窒素、二酸化炭素、水蒸気等のガスとすることにより、埋設処分する必要のある固形残渣量をできるだけ減少させることを目的としている。
ところが最近、バイオマスからのエネルギー回収が注目されており、有機廃棄物を完全に酸化分解するのではなく、有機廃棄物を原料としてメタンや水素などの燃料ガスを製造することが試みられている。そのための手段として、有機廃棄物を高温高圧条件下で酸化分解する技術の応用も検討されているが、特許文献1〜3に示されたような完全酸化を目的とするシステムはもちろんそのまま使用することはできない。
そこで酸化剤の供給量を絞って(酸素比を1未満として)有機廃棄物を水熱分解し、燃料ガスを製造することとなるが、亜臨界条件下(200〜650℃)では酸素比を抑えると難分解性のチャーが生成されてしまい、固形残渣発生量が増大するという問題を生ずる。またこの問題を回避しようとして酸素比を増加させると、酸化剤は発生した燃料ガスの一部を燃焼させてしまう。この結果、燃料ガス成分が低下し、低カロリーで使い道の限られた燃料ガスしか得られないこととなる。
このように、有機廃棄物を亜臨界条件下で酸化分解する技術を応用した場合、有機廃棄物に含まれるカーボンを効率よく燃料ガスに変換して固形残渣となる難分解性のチャーの生成を抑制し、しかも高カロリーの燃料ガスを製造することはできなかった。
特許第3405295号公報 特開2004−290819号公報 特開2004−313965号公報
本発明は上記した従来の問題点を解決し、有機廃棄物を亜臨界条件下で水熱分解及び酸化分解し、固形残渣の発生量を抑制しつつ、高カロリーの燃料ガスを製造することができるシステムを提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの高温高圧条件下で水熱分解して燃料ガスを製造するシステムであって、内部に搬送機構を有する管型の燃料ガス生成反応器を備え、その出口に近い側に酸化剤投入口を設け、原料投入口に近い側に燃料ガス取出口を設けることにより、原料搬送方向と酸化剤流動方向とを逆向きとしたことを特徴とするものである。
また同一の課題を解決するためになされた請求項2の発明は、原料である有機廃棄物を、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの高温高圧条件下で水熱分解して燃料ガスを製造するシステムであって、内部に搬送機構を有する管型の燃料ガス生成反応器を備え、この燃料ガス生成反応器が、燃料ガス取出口を有する燃料ガス生成部と、その原料進行方向の後段に配置された酸化剤投入口を有する酸化部とから構成され、それらの間が二重ダンパーまたはバルブにより区画されていることを特徴とするものである。この請求項2の発明においては、酸化部から取り出された排ガスの保有熱を、燃料ガス生成部の加熱に利用することが好ましい。
請求項2の発明においては、酸化部における酸化剤投入口を、原料と接触する下面側あるいは原料表面から50mm以内の位置に設けることが好ましい。酸化部における酸化剤投入口は、複数に分割した構造とすることができ、酸化剤が、酸素、空気、過酸化酸素水から選択されたものであることが好ましい。また酸化剤の投入量は、原料中の炭素、水素、窒素を完全に酸化させるに必要な量の5〜80%とすることが好ましい。
請求項1の発明の燃料ガス製造システムによれば、原料である有機廃棄物を高温高圧の管型の燃料ガス生成反応器内に投入し、搬送機構によりその内部で搬送しながら、出口に近い側から酸化剤を投入し、原料投入口に近い側から燃料ガスを取り出す。このように原料搬送方向と酸化剤流動方向とを逆向きとしたため、有機廃棄物は酸化剤濃度の低い入口側の部分(燃料ガス生成部)で水熱分解されてメタンや水素などの燃料ガスとなり、直ちに燃料ガス取出口から取り出される。このため高カロリーの燃料ガスを製造することができる。また有機廃棄物のうち燃料ガス化しにくいものはチャーなどの固体となって酸化剤濃度の高い出口側の部分(酸化部)に搬送され、酸化分解されて炭酸ガスとなる。このため固形残渣の排出量が減少する。
請求項2の発明の燃料ガス製造システムも、有機廃棄物は入口側の燃料ガス生成部で水熱分解されてメタンや水素などの燃料ガスとなり、直ちに燃料ガス取出口から取り出される。このため高カロリーの燃料ガスを製造することができる。また有機廃棄物のうち燃料ガス化しにくいものは酸化部に搬送され、酸化分解されて炭酸ガスとなる。このため固形残渣の排出量が減少する。このように請求項2の発明の作用効果は基本的には請求項1の発明と同様であるが、燃料ガス取出口を有する燃料ガス生成部と、酸化剤投入口を有する酸化部との間が二重ダンパーまたはバルブにより区画されているため、酸化剤が燃料ガス生成部に流入して燃料ガスの一部を燃焼させてしまうことをより確実に防止でき、より高カロリーの燃料ガスを製造することが可能となる。
図1は請求項1の発明の実施形態を示すもので、1は高温高圧の燃料ガス生成反応器である。この実施形態では、燃料ガス生成反応器1は燃料ガス生成部2と酸化部3とからなり、それらの間は連結部4により連通されている。しかし燃料ガス生成部2と酸化部3とを直結することも可能である。燃料ガス生成部2と酸化部3は何れも管状のもので、それぞれの内部に搬送機構5、6を備えている。搬送機構5、6としては軸部のシールが容易なスクリュー式のものが好ましい。燃料ガス生成反応器1の全体は、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの高温高圧条件下に置かれている。より好ましくは、温度が450〜650℃、圧力が4〜20MPaの亜臨界条件とする。
燃料ガス生成部2の端部には原料投入口7が設けられ、原料である有機廃棄物が加圧されて投入される。有機廃棄物は下水汚泥に代表される含水有機廃棄物であるが、生ゴミや畜産廃棄物のような含水有機廃棄物であってもよい。図示のように燃料ガス生成部2は酸化部3よりも大径で上部にガス流通が可能な空間を有し、原料投入口7に近い側に燃料ガス取出口8が設けられている。
燃料ガス生成部2の原料進行方向の後段に接続された酸化部3は、その後端に出口9を備えている。また酸化部3には、酸化剤投入口10が設けられている。酸化剤投入口10から、酸素、空気、過酸化酸素水から選択された酸化剤が供給され、燃料ガス生成部2で燃料ガス化できなかったチャー等の固形分を酸化分解する。このように本発明では燃料ガス生成反応器1の出口9に近い側に酸化剤投入口10を設け、原料投入口7に近い側に燃料ガス取出口8を設けることにより、原料搬送方向と酸化剤流動方向とを逆向きとし、カウンターフロー型の反応器を構成している。
本発明では酸化部3に供給された酸化剤を固形分とすばやく接触させて固形分を優先的に燃焼させるため、酸化部3における酸化剤投入口10を、図示のように原料と接触する下面側に設ける。あるいは酸化部3の管径を小さくし、酸化剤投入口10が原料表面から50mm以内となるようにすれば、上面や側面から供給してもよい。酸化剤と固形分との接触が不十分であると、固形残渣の発生量が増加するとともに、燃料ガス生成部2に流入した酸化剤が燃料ガスを燃焼させてしまうので好ましくない。
なお、酸化剤投入口10は単一とすると局部高温が発生するため、図示のように複数に分割することが好ましく、その数は2〜50個、好ましくは5〜15個である。また酸化剤の投入量は、原料中の炭素、水素、窒素を完全に酸化させるに必要な量の5〜80%とすることが好ましい。
このように構成された請求項1の燃料ガス製造システムでは、原料投入口7から高温高圧の燃料ガス生成部2に有機廃棄物を投入し、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの条件下で有機物を水熱分解し、メタンや水素などの燃料ガスを生成させる。この燃料ガス生成部2における酸化剤濃度は低いので、生成された燃料ガスは燃焼することなく、原料投入口7に近い側に設けられた燃料ガス取出口8から高カロリーの燃料ガスとして取り出される。
原料は搬送機構5により燃料ガス生成部2内を搬送されながら水熱分解されて行くが、水熱分解されなかった固形分は酸化部3に入り、酸化剤投入口10から投入される酸化剤と接触して高温高圧下で酸化分解される。前記したように酸化剤投入口10は固形分と接触するか、あるいはその近傍から供給されるので、固形分は酸化されて炭酸ガス等の燃焼ガスとなる。このとき多量の酸化熱が発生して燃焼ガスは高温になるが、これを燃料ガス生成部2に導入することによって燃料ガス生成部2を高温に維持する熱源として利用することができる。酸化できなかった固形残渣は出口9から排出されるが、その量はごく微量であり、有機廃棄物重量の15%以下となる。
上記したように、請求項1の燃料ガス製造システムによれば、有機廃棄物から高カロリーの燃料ガスを製造することができ、固形残渣の発生量も微量とすることができる。
図2は請求項2の発明の実施形態を示すもので、燃料ガス生成反応器1が、燃料ガス取出口8を有する燃料ガス生成部2と、酸化剤投入口10を有する酸化部3とから構成されていることは請求項1と同様であるが、それらの間が、連結部4に設けられた二重ダンパーまたはバルブ11により区画されている点で基本的に相違する。
このように燃料ガス生成部2と酸化部3とを遮断可能としたので、燃料ガス取出口8を燃料ガス生成部2の後端付近に設けることができる。また酸化部3で発生した燃焼ガスは燃焼ガス取出口12から取り出され、燃料ガス生成部2の熱交換用2重ジャケット13に供給されて燃料ガス生成部2を加熱するために利用される。なお、温度や圧力等の条件を含め、その他の点は請求項1と同様であるので、対応する部分に同一の番号を付して説明を省略する。
このように構成された請求項2の燃料ガス製造システムにおいても、原料投入口7から投入された有機廃棄物は燃料ガス生成部2で水熱分解され、生成されたメタンや水素などの燃料ガスは燃料ガス取出口8から取り出される。請求項2の燃料ガス製造システムでは酸化部3からの酸化剤の流入がないので、生成された燃料ガスは燃焼することなく高カロリーの燃料ガスとして取り出される。
水熱分解されなかった固形分は、二重ダンパーまたはバルブ11を開くことにより酸化部3に落下し、酸化剤により高温高圧下で酸化される。このため出口9から排出される固形残渣の量を請求項1と同様、微量とすることができる。またこの酸化に伴い発生した高温の燃焼ガスは、燃料ガス生成部2の熱交換用2重ジャケット13に供給されて燃料ガス生成部2を加熱するために有効利用される。
図1に示した請求項1のシステムを用い、下水汚泥を原料として燃料ガスを製造する実験を行った。燃料ガス生成反応器内部の温度は520℃、圧力を15MPaとした。酸素比(原料中の炭素、水素、窒素を完全に酸化させるに必要な酸素量を1とする)を0.5とした場合と0.7とした場合につき、燃料ガス取出口から取り出されたガス中のメタン、エタン、水素の体積%を表1に示す。
Figure 0004883963
図2に示した請求項2のシステムを用い、実施例1と同一条件で下水汚泥を原料として燃料ガスを製造する実験を行った。その結果を表2に示す。実施例1、2とも、高カロリーの燃料ガスを得ることができた。
Figure 0004883963
請求項1の発明の実施形態を示す断面図である。 請求項2の発明の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1 燃料ガス生成反応器
2 燃料ガス生成部
3 酸化部
4 連結部
5 搬送機構
6 搬送機構
7 原料投入口
8 燃料ガス取出口
9 出口
10 酸化剤投入口
11 二重ダンパーまたはバルブ
12 燃焼ガス取出口
13 熱交換用2重ジャケット

Claims (7)

  1. 原料である有機廃棄物を、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの高温高圧条件下で水熱分解して燃料ガスを製造するシステムであって、内部に搬送機構を有する管型の燃料ガス生成反応器を備え、その出口に近い側に酸化剤投入口を設け、原料投入口に近い側に燃料ガス取出口を設けることにより、原料搬送方向と酸化剤流動方向とを逆向きとしたことを特徴とする燃料ガス製造システム。
  2. 原料である有機廃棄物を、温度が200〜650℃、圧力が0.1〜22.1MPaの高温高圧条件下で水熱分解して燃料ガスを製造するシステムであって、内部に搬送機構を有する管型の燃料ガス生成反応器を備え、この燃料ガス生成反応器が、燃料ガス取出口を有する燃料ガス生成部と、その原料進行方向の後段に配置された酸化剤投入口を有する酸化部とから構成され、それらの間が二重ダンパーまたはバルブにより区画されていることを特徴とする燃料ガス製造システム。
  3. 酸化部から取り出された排ガスの保有熱を、燃料ガス生成部の加熱に利用することを特徴とする請求項2に記載の燃料ガス製造システム。
  4. 酸化部における酸化剤投入口を、原料と接触する下面側あるいは原料表面から50mm以内の位置に設けたことを特徴とする請求項2に記載の燃料ガス製造システム。
  5. 酸化部における酸化剤投入口を、複数に分割したことを特徴とする請求項2に記載の燃料ガス製造システム。
  6. 酸化剤が、酸素、空気、過酸化酸素水から選択されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ガス製造システム。
  7. 酸化剤の投入量が、原料中の炭素、水素、窒素を完全に酸化させるに必要な量の5〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ガス製造システム。
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