JP4883558B2 - 両極性有機電界効果薄層トランジスター及びその製造方法 - Google Patents
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Description
n型有機半導体は、p−nジャンクションをはじめとする有機電子デバイスの実現に非常に重要な物質である。
例えば、絶縁膜として高耐電圧・高誘電率・低リーク電流を有する酸化アルミニウム薄膜を、有機半導体として単結晶を使用することが提案されている(非特許文献1:Appl,Phys.Lett,Vol.85,p3899(2004))。これは、有機半導体として単結晶を用いることで、半導体薄膜におけるグレインやトラップ準位による影響をなくすことができるために、高移動度が得られることが期待できるとしている。しかし、酸化物絶縁体は薄膜化しやすく、誘電率が高いという利点がある反面、酸素欠損が必ず存在し、耐電圧が下がってしまう。
(1)金属/絶縁体/半導体構造(MIS)を有する薄膜電界効果トランジスターにおいて、半導体層を形成する物質が有機化合物であり、絶縁体層を形成する物質が有機溶剤に溶解可能で、かつ強誘電体類似の自発分極を示すシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物であり、この絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物の抗電界以上で耐電圧以下の電圧をソース及びゲート電極間に印加するポーリングを行った場合に、n型のトランジスターの特性を示し、ポーリングを行わない場合には、p型のトランジスター特性を示すことを特徴とする両極性有機電界効果薄層トランジスター。
(2)絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物の重量平均分子量が2,500〜1,000,000であることを特徴とする(1)記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
(3)シアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、シアノエチルプルランである(1)又は(2)記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
(4)絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、耐電圧が1MV/cm以上で、かつ抗電界が50kV/cm以上、自発分極がPr=1.5μC/cm2以上である(1)、(2)又は(3)記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
(5)金属層からなるゲート電極上に、有機溶剤に溶解可能なシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物を有機溶剤に溶解した溶液を塗着、乾燥させて絶縁体層を形成後、半導体層を積層することを特徴とする(1)記載の両極性有機電界効果薄層トランジスターの製造方法。
(6)シアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、シアノエチルプルランである(4)記載の両極性有機電界効果薄層トランジスターの製造方法。
また、半導体層及び絶縁体層を形成する物質が有機化合物であることから、従来の金属/絶縁体/半導体構造の電界効果トランジスター等が金属系半導体及び絶縁体の使用における回路形成技術でフォトレジスト等によるパターン化及びエッチング等の処理を必要とするのに対し、主として溶剤プロセスでの作製が可能となるため、インクジェットをはじめとするプリント技術等により容易に作製することができ、製造コストの低減を図ることもできる。
シアノエチルプルランにより作製した絶縁膜の誘電特性を1mHzで測定すると、図2に示すようにP−E曲線がヒステリシスループを示し、自発分極における電荷量(P)がPr=1.5μC/cm2、抗電界は50kV/cmであった。ヒステリシスループの−10kV/cm〜10kV/cmにおける直線領域では、C=17.7nF/cm2の高い静電容量(C)を持つ。このP−E曲線におけるヒステリシスループは強誘電体類似の特性を示す。従って、例えばシアノエチルプルランをゲート絶縁膜に用い、抗電界以上の電圧(V)を印加してポーリングを行えば、Q=P+CVに従う大きな電荷量(Q)を界面に蓄積することができる。
その後、上記絶縁体層を形成する物質が溶解しない有機溶剤に半導体層を形成する物質を溶解した溶液を、絶縁体層上にスピンコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥するか、真空気化により蒸着して半導体層を作製する。なお、この際に絶縁体層−半導体層間の界面で半導体分子を配向させるために、絶縁体層表面に公知のラビング処理等、物理的処理を行ってもよい。
最後に、半導体層上にソース及びドレイン電極をスパッタリングで形成するか、金属ペーストや導電性高分子等をスクリーン印刷、インクジェット印刷により塗布、乾燥する。
絶縁体層を形成する物質として、シアノエチル基置換率が85.2モル%であるシアノエチルプルラン(CyEPL、信越化学工業(株)製、CR−S、重量平均分子量:49,000)を、半導体層を形成する物質として、銅フタロシアニン(ALDRICH社製)を用いて、下記に示す方法で両極性有機電界効果薄層トランジスターを作製し、評価した。熱酸化シリコン基板上に、室温、背圧10-4Paの条件でRFスパッタ法によりTiを20nm蒸着し、次いでAuを60nm蒸着することでゲート電極を作製した。
次に、ゲート電極Au表面上に、シアノエチルプルランのN−メチル−2−ピロリドン15質量%溶液を0.2μmメンブランフィルターで濾過後、スピンコートして100℃で1時間乾燥し、2μmの絶縁体層を形成した。この絶縁膜の1mHzにおける静電容量は、17.7nF/cm2であった。
次に、基板を−20℃に冷却し、半導体層にメタルマスクを介して、背圧10-5Pa以下の条件でRFスパッタ法により、Auを300nm蒸着した。ソース・ドレイン間の距離と電極幅は、それぞれ38μmの間隔(図1においてL=38μm)、3.9mm幅(図1においてW=3.9mm)であった。
絶縁膜にポーリングを行わないで、電流−電圧(ISD−VSD)特性を室温(25℃)で測定したところ、負のゲート電圧の時には典型的なp型の性質を示した。一方、正のゲート電圧の時には、ゲート電圧の増加と共に、ソース・ドレイン電流は小さくなり、空乏層が形成されていくだけであった。
絶縁体層を形成する物質として、シアノエチル基置換率が85.2モル%であるシアノエチルプルラン(CyEPL、信越化学工業(株)製、CR−S、重量平均分子量:49,000)を、半導体層を形成する物質として、鉄フタロシアニン(ALDRICH社製)を用いて、下記に示す方法で両極性有機電界効果薄層トランジスターを作製し、評価した。熱酸化シリコン基板上に、室温、背圧10-4Paの条件でRFスパッタ法によりTiを20nm蒸着し、次いでAuを60nm蒸着することでゲート電極を作製した。
次に、ゲート電極Au表面上に、シアノエチルプルランのN−メチル−2−ピロリドン15質量%溶液を0.2μmメンブランフィルターで濾過後、スピンコートして100℃で1時間乾燥し、2μmの絶縁体層を形成した。この絶縁膜の1mHzにおける静電容量は、17.7nF/cm2であった。
次に、基板を−20℃に冷却し、半導体層にメタルマスクを介して、背圧10-5Pa以下の条件でRFスパッタ法により、Auを300nm蒸着した。ソース・ドレイン間の距離と電極幅は、それぞれ38μmの間隔(図1においてL=38μm)、3.9mm幅(図1においてW=3.9mm)であった。
絶縁膜にポーリングを行わないで、電流−電圧(ISD−VSD)特性を室温(25℃)で測定したところ、負のゲート電圧の時には典型的なp型の性質を示した。一方、正のゲート電圧の時には、ゲート電圧の増加と共に、ソース・ドレイン電流は小さくなり、空乏層が形成されていくだけであった。
2 金属層(ゲート電極)
3 絶縁体層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
Claims (6)
- 金属/絶縁体/半導体構造(MIS)を有する薄膜電界効果トランジスターにおいて、半導体層を形成する物質が有機化合物であり、絶縁体層を形成する物質が有機溶剤に溶解可能で、かつ強誘電体類似の自発分極を示すシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物であり、この絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物の抗電界以上で耐電圧以下の電圧をソース及びゲート電極間に印加するポーリングを行った場合に、n型のトランジスターの特性を示し、ポーリングを行わない場合には、p型のトランジスター特性を示すことを特徴とする両極性有機電界効果薄層トランジスター。
- 絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物の重量平均分子量が2,500〜1,000,000であることを特徴とする請求項1記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
- シアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、シアノエチルプルランである請求項1又は2記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
- 絶縁体層を形成するシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、耐電圧が1MV/cm以上で、かつ抗電界が50kV/cm以上、自発分極がPr=1.5μC/cm2以上である請求項1、2又は3記載の両極性有機電界効果薄層トランジスター。
- 金属層からなるゲート電極上に、有機溶剤に溶解可能なシアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物を有機溶剤に溶解した溶液を塗着、乾燥させて絶縁体層を形成後、半導体層を積層することを特徴とする請求項1記載の両極性有機電界効果薄層トランジスターの製造方法。
- シアノエチル基を有する絶縁性高分子化合物が、シアノエチルプルランである請求項4記載の両極性有機電界効果薄層トランジスターの製造方法。
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