JP4883312B2 - 樹脂製極細短繊維およびその製造方法 - Google Patents

樹脂製極細短繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂製極細短繊維およびその製造方法に関する。
従来、ナノレベルから20μm以下の繊維状または粒子状物質は数多く知られている。例えば、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなどがその代表例であり、これらは、カーボンの結晶を成長させることで、すなわち、分子を積み重ねることで製造されており、この手法によりナノレベルから20μm以下に制御することが可能となる。
一方、有機高分子は結晶性に乏しいため、カーボンのような結晶を成長させる手法を用いることは困難である。このため、有機高分子においては、長繊維を切断して短繊維を得る手法が一般的に用いられている。
例えば、特許文献1(特開2007−92235号公報)には、溶融紡糸で製造した熱可塑性樹脂製の海島型複合繊維をギロチンカッターで切断した後、海成分を溶解させて得られた短繊維が開示されている。
特許文献2(特開2005−320506号公報)には、溶融紡糸で製造した熱可塑性樹脂製の海島型複合繊維をギロチンカッターで切断した後、海成分を溶解させ、さらに水中で叩解して得られた繊維分散体が開示されている。
上記特許文献1の短繊維の繊維直径は10〜1000nmであり、特許文献2の短繊維分散体の平均繊維径は1〜500nmであり、いずれもナノレベルである。
しかし、特許文献1,2の製造法では、カッターで切断して短繊維を得ているため、最小繊維を十分に短くすることはできない。具体的には、いずれの製造法でも50μm程度までが限界である。
また、いずれの製造法でも溶融紡糸法を用いているため、熱可塑性樹脂しか用いることができないという欠点も有している。
さらに、これらの製造法は、紡糸、未延伸巻取り、温水中延伸、乾燥延伸、カット、および海成分溶解除去という多段階工程が必要であり、操作が極めて複雑であるという問題も有している。
一方、特許文献3(特開2007−154007号公報)には、静電紡糸した後、カッターミルで切断して得られた、平均繊維径150nm、平均繊維長10μmナノカーボン含有樹脂製フィラーが開示されている。
ところで、カラムに充填する担体や、樹脂成型物のフィラーにおいては、担体やフィラーの分散性や均一性を確保するために、寸法がより均一であることが要求される。
しかし、一般的に、繊維径、繊維長のばらつきが大きい有機繊維を、特許文献3のようにカッターミルで粉砕した場合には、繊維長を均一にコントロールすることは困難である。さらに、粉砕後の繊維の長さを、篩等により揃えようとしても、繊維経が細くなればなるほど縦になった繊維が篩を通過してしまうため、分篩は困難になる。
そして、繊維長が均一にコントロールされていない短繊維は、フィラーとして用いた場合、分散安定性に劣るものとなる。
特開2007−92235号公報 特開2005−320506号公報 特開2007−154007号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、繊維長が比較的揃った樹脂製極細短繊維およびその簡便な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、平均繊維径1000μm以下の極細繊維を超音波で処理することで、繊維長が比較的揃った極細短繊維が得られ、この極細短繊維がフィラーとして好適であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 平均繊維径が1000nm以下、かつ、平均繊維長が20μm以下であり、繊維長のCV値が55%以下であることを特徴とする樹脂製極細短繊維、
2. 繊維径のCV値が35%以下である1の樹脂製極細短繊維、
3. 前記樹脂が、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体およびアミノ多糖類から選ばれる少なくとも1種である1または2の樹脂製極細短繊維、
4. 静電紡糸して得られた樹脂製極細繊維を超音波処理してなる1〜3のいずれかの樹脂製極細短繊維、
5. 平均繊維径1000μm以下の樹脂製極細繊維を超音波処理して極細短繊維を得ることを特徴とする樹脂製極細短繊維の製造方法、
6. 前記樹脂製極細繊維が、樹脂を含有する紡糸溶液を調製し、この紡糸溶液を静電紡糸して得られたものである5の樹脂製極細短繊維の製造方法、
7. 前記超音波処理を、液体中で行う5または6の樹脂製極細短繊維の製造方法、
8. 前記超音波処理を、10〜100kHzの周波数の超音波で行う5〜7のいずれかの樹脂製極細短繊維の製造方法
を提供する。
本発明の樹脂製極細短繊維は、繊維長が比較的揃っているため、化粧品のフィラーとして用いた場合に安定に乳化配合できる。その結果、化粧品中で各種配合剤を均一に分散させることができるだけでなく、長期に亘って安定した分散状態を維持することができ、使用した場合の化粧のりも改善される。
また、フィルム等のフィラーとして用いた場合にも、フィルムをより薄く、かつ、よりフラットに成形し得る。
本発明の極細短繊維は、静電紡糸法などによって得られた極細繊維を、超音波処理するという簡便かつ安価な手法により製造することができ、工業的な利用価値が高い。
本発明に係る樹脂製極細短繊維は、平均繊維径が1000nm以下、かつ、平均繊維長が20μm以下であり、繊維長のCV値が55%以下のものである。
本発明において、極細短繊維の平均繊維径は1000nm以下であればよいが、フィラーとして用いた場合の分散安定性などを考慮すると、800nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましい。その下限は特に限定されないが、例えば、静電紡糸法で製造した繊維では10nm程度である。
平均繊維長は、20μm以下であればよく、その下限も特に限定されないが、超音波照射で切断する場合、1μm程度である。
本発明の樹脂製極細短繊維では、繊維長のCV値が55%以下である。このような特性を満たす極細短繊維は、その平均長さの約半分の長さ範囲に大多数の繊維が含まれる、換言すれば、均一な繊維長を有しているため、フィラーとして用いた場合の分散安定性等に優れ、当該用途に好適である。
例えば、平均繊維長5μmでCV値が55%の場合、殆どの繊維が2.25〜7.75μmという非常に狭い範囲に分布することになる。
また、本発明の樹脂製極細繊維では、繊維径のCV値が35%以下であることが好ましい。
繊維長のCV値を上記範囲にすることに加え、繊維径のCV値をこの範囲にコントロールすることで、極細短繊維の均一性がより高まるため、フィラーとして用いた場合の分散安定性がより一層向上することになる。
本発明の極細短繊維を構成する樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体、アミノ多糖類、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は静電紡糸法で紡糸することが可能であるため、静電紡糸から超音波処理という一連の工程で極細短繊維を製造し得る原料である。
ポリアクリル酸系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸に代表されるいわゆる生分解性プラスチックと呼ばれる脂肪族系ポリエステル樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族骨格を有するいわゆるナイロンと称されるもの、芳香族ジアミンとジカルボン酸とを共重合して得られるパラ系芳香族ポリアミドやメタ系芳香族ポリアミド等が挙げられる。
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
セルロース誘導体としては、例えば、セルロース、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類等が挙げられる。
アミノ多糖類としては、例えば、D−グルコサミン単位またはN−アセチル−D−グルコサミン単位を有するアミノ多糖類が挙げられ、具体的には、キチン、キトサン等の天然アミノ多糖類が挙げられる。
本発明の極細短繊維を構成する樹脂としては、上記各種樹脂の中でも、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、アミノ多糖類が好適である。
すなわち、メタクリル酸エステル樹脂などのポリアクリル酸系樹脂は、透明性に優れているため、例えば、透明担体中にメタクリル酸エステル樹脂の極細短繊維を分散させることで、担体の透過光を均一に効率よく分散させることができる。
ポリエステル系樹脂は、塩素ガスを用いる酸化性雰囲気に比較的強いので、PET、PBT等のポリエステル系樹脂の極細短繊維は、水処理用カラムなどの充填材料として有用である。また、ポリエステル系樹脂は、染色性に優れているので、着色したフィラーや、化粧品材料としても有用である。
さらに、ポリ乳酸などの生分解性のポリエステル樹脂からなる極細短繊維は、農業資材のフィルムに混合するフィラー等として用いることで、それが有する生分解性のためにフィルムを廃棄する際の環境負荷を低減し得る。
ポリアミド系樹脂やセルロース誘導体は、耐熱性および剛直性に優れており、これらからなる極細短繊維をフィルムに混合するフィラーとして用いることで、フィルムに耐熱性と剛直性とを付与することができる。
アミノ多糖類は、生体適合性および抗菌性に優れており、化粧料などに適した材料である。
なお、本発明の極細短繊維は、上述の樹脂のみからなるものでもよいが、各種の特性を付与する目的で従来公知の添加剤を、適宜な量で配合してもよい。
添加剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤;ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、セミカルバジド系化合物等の安定剤;硫酸バリウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等の無機微粒子;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、オルガノシロキサン等の粘着防止剤;顔料、光沢剤、染色増強剤、ガス変色防止剤、充填剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、表面処理剤、つや消し剤、着色剤、防カビ剤、軟化剤、離型剤、発泡剤、増量剤、増核剤等が挙げられる。
以上のような特性を有する本発明の極細短繊維は、平均繊維径1000m以下の極細繊維を超音波処理することで製造できる。
この極細繊維の製造法としては、従来公知の各種方法を用いることができるが、繊維径のバラツキが比較的少ない極細繊維を簡便に製造し得る静電紡糸法を用いることが好ましい。
ここで、静電紡糸法は、電界中で、帯電した静電紡糸用ドープ(樹脂溶液)を曳糸しつつ、その電荷の反発力によりドープを破裂させ、樹脂からなる極微細な繊維状物を形成する方法である。
具体的には、樹脂溶液を噴出するノズルを一方の電極とし、コレクタを他方の電極とし、樹脂溶液に数千から数万ボルトの高電圧を印加すると、樹脂溶液がノズルから吐出され、電界中で高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がりや膨張によってナノファイバーになり、コレクタ表面上に平均繊維径1000m以下の極細繊維の集合物(不織布や綿飴状物)として堆積する。
樹脂溶液調製用の溶媒としては、使用する樹脂に応じて、これを溶解し得る溶媒を適宜選択して用いることができ、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル等や蟻酸、乳酸、酢酸等の有機酸などを用いることができる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
樹脂溶液の調製法は任意であり、溶媒中に樹脂を添加しても、樹脂に溶媒を添加してもよく、さらに、溶解を促進するなどの目的で必要に応じて加熱してもよい。
樹脂溶液中の樹脂濃度は、目的とする繊維径等に応じて適宜設定すればよいが、通常は、1〜50質量%程度であり、同一の樹脂であれば、濃度が高い程、得られる繊維の繊維径は太くなる。
なお、多糖類の場合には、曳糸性を向上させる目的で、曳糸性付与剤を添加してもよい。曳糸性付与剤としては、従来用いられているものから適宜選択して用いればよく、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、セルロース系高分子、ポリエチレンイミン、ポリアクリル、熱可塑性ポリウレタンなどを採用できる。これらは単独で、または2種以上混合して用いることができる。
中でも、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールが好ましく、特に、多糖類に高い曳糸性を付与し得るポリエチレンオキサイドが好適である。
その配合量は、特に限定されるものではないが、多糖類10質量部に対して、曳糸性付与剤0.4〜1.2質量部が好適である。
超音波処理に用いられる装置としては、特に限定されるものではなく、従来公知の超音波発生装置の中から適宜選択して用いればよい。
本発明において、超音波処理は、液体中で行うことが好ましい。液体を用いることで、の沸点以上の温度に極細繊維が晒されることがなくなるため、物性の低下などを防止することができる。
この場合、液体としては、特に限定されるものではなく、水や、繊維の溶解能を有しない各種有機溶剤を用いることができるが、非水溶性の樹脂の場合は水が好適である。
液体中の極細繊維の濃度は、特に限定されるものではないが、処理効率などを考慮すると、0.3〜20質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
超音波処理の周波数は、10〜100kHzが好ましく、特に、15〜40kHzが好ましい。周波数が10kHz未満であると、繊維の切断に時間がかかる場合があり、100kHzを超えると、繊維を構成する樹脂分子そのものが切断されてその物性が低下する虞がある。
超音波処理の時間は、周波数や、樹脂濃度などに応じて変動するものであるため一概には規定できないが、通常、1分間から1時間程度である。例えば、繊維径100nmの極細繊維を0.5質量%濃度で含有する水を処理する場合、19kHz、150Wの超音波ホモジナイザーであれば、約5分間で破砕が完了する。
超音波処理後は、適宜乾燥することで、上述した平均繊維径が1000nm以下、かつ、平均繊維長が20μm以下であり、繊維長のCV値が55%以下である樹脂製極細短繊維を得ることができる。
本発明の方法は、静電紡糸法による紡糸等によって得られた極細繊維を、超音波によって切断し、必要に応じて乾燥するという少ない工程で樹脂製極細短繊維を簡便に製造することができるものであり、工業的に優れたものであるといえる。
得られた樹脂製極細短繊維は、繊維長の均一性に優れているため、ファンデーション,フェースカラー,メークアップベース,おしろい,リップスティック等の化粧品に添加するフィラー、フィルム等に添加するフィラーをはじめとする各種添加剤として好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例における評価項目は下記手法にて実施した。
[1]平均繊維径
走査型電子顕微鏡((株)日本電子製,「JSM−6701F」)により撮影倍率5000倍、3000倍、1000倍にて試料表面を撮影して得た写真から、無作為に50本の繊維を選んで繊維径を測定した。これら測定値の相加平均を求めて平均繊維径とした。
[2]平均繊維長
走査型電子顕微鏡((株)日本電子製,「JSM−6701F」)により撮影倍率5000倍、3000倍、1000倍にて試料表面を撮影して得た写真から、無作為に250本の繊維を選んで繊維長さを測定した。これら測定値の相加平均を求めて平均繊維長とした。
[3]変動係数(CV値)
上記[1],[2]にて測定した平均繊維径、平均繊維長、およびこれらの標準偏差σから、繊維径の変動係数(繊維径CV値)と繊維長の変動係数(繊維長CV値)とをそれぞれ求め、平均値の異なる単繊維間の、繊維径ならびに繊維長のバラツキを比較した。
繊維径CV値=(平均繊維径のσ/ 平均繊維径)×100(%)
繊維長CV値=(平均繊維長のσ/ 平均繊維長)×100(%)
[4]沈降時間(分散安定性試験)
底面から高さ8cm、4cmに線を引いた、直径30mm、高さ10cmのサンプル瓶(底面は平ら)を用意し、このサンプル瓶に、繊維含有水を高さ8cmまで入れ、上下に2分間振盪後、大理石テーブル上に静置した。目視で含有水の動きがなくなった時点を開始時間として、上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面が、サンプル瓶の4cmの線まで沈降する時間を7日まで測定した。7日で沈降しないものは>7日と評価した。
[実施例1〜4]メタクリル酸メチル樹脂極細短繊維
メタクリル酸メチル樹脂(Mw:350000、ALDRICH社製)を15質量%(実施例1)、10質量%(実施例2)、8質量%(実施例3)、6質量%(実施例4)の濃度になるように、それぞれオイルバス中80℃でジメチルホルムアミドに溶解し、紡糸溶液を調製した。
これら各紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られたそれぞれの不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布0.05gを水9.95g中に加え、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、US−150T)を用いて19.5kHz±1kHz、150W、粉砕時間5分間の条件で極細繊維不織布を粉砕し、極細短繊維含有水を得た。得られた極細短繊維含有水をガラスシャーレに入れ、乾燥機中70℃にて乾燥させて極細短繊維を得た。
得られた極細短繊維の平均繊維長および繊維長CV値を表2に示す。また極細短繊維の電子顕微鏡写真を図1〜4に示す。
さらに、得られた各極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。4つの極細短繊維のうち、特に繊維長平均が3.5μm以下かつ繊維長CV値が52%以下のものは、上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例5]ポリ乳酸極細短繊維
ポリ乳酸(レイシア(登録商標)H−280、三井化学(株)製)を15質量%の濃度になるようにオイルバス中60℃でジメチルホルムアミドに溶解し、紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布0.05gを水9.95gに加え、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製、US−150T)を用いて19.5kHz±1kHz、150W、粉砕時間5分間の条件で極細繊維不織布を粉砕し、極細短繊維含有水を得た。
得られた極細短繊維含有水をガラスシャーレに入れ、乾燥機中40℃にて乾燥させて極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例6]ポリアミドイミド極細短繊維
ポリアミック酸(ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)を20質量%の濃度になるようにオイルバス中60℃でジメチルホルムアミドに溶解し、紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布0.05gに水9.95gを加え、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製 、US−150T)を用いて19.5kHz±1kHz、150W、粉砕時間5分間の条件で極細繊維不織布を粉砕し、極細短繊維含有水を得た。得られた極細短繊維含有水をガラスシャーレに入れ、乾燥機中70℃にて乾燥させて極細単繊維を得た。その後、350℃にて2時間熱処理をしてポリアミドイミド極細短繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例7]アルギン酸カルシウム極細短繊維
アルギン酸ナトリウム粉末((株)キミカ製)2質量部とポリエチレンオキシド4質量部とを、蒸留水94質量部に室温下で溶解して、アルギン酸ナトリウム濃度2質量%の紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布のカルシウム置換後の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布を実施例1と同様にして粉砕、乾燥して極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例8]ポリスチレン極細短繊維
ポリスチレン(PSジャパン(株)製、SGT−10)を15質量%の濃度になるようにオイルバス中60℃でジメチルホルムアミドに溶解し、紡糸溶液を得た。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布を実施例1と同様にして粉砕、乾燥して極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例9]6ナイロン極細短繊維
6ナイロン(ユニチカ(株)製、A1030BRT)を15質量%の濃度になるようにオイルバス中60℃で蟻酸に溶解し、紡糸溶液を得た。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布を実施例1と同様にして粉砕、乾燥して極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例10]セルロース極細短繊維
セルロース粉末(三木産業(株)販売、ARBOCEL(登録商標)、BE600−10)5質量部を水酸化銅3質量部、28%アンモニア水68質量部、水24質量部の溶液に室温下溶解して、セルロース濃度5質量%の紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布を希塩酸溶液で洗浄して銅を取り除き、セルロース不織布とした。得られたセルロース不織布を実施例1と同様にして粉砕、乾燥して極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[実施例11]キトサン極細短繊維
キトサン粉末((株)キミカ製)1質量部とポリエチレンオキシド1.5質量部とを、蟻酸0.5質量部と蒸留水97質量部に室温下溶解して、キトサン濃度1質量%の紡糸溶液を調製した。
この紡糸溶液を用い、表1に示す印加電圧、吐出圧力、吐出先端内口径の条件で静電紡糸を行い、極細繊維不織布を得た。得られた不織布のポリエチレンオキシドを水で除去後の平均繊維径、および繊維径CV値を表2に示す。
得られた極細繊維不織布を実施例1と同様にして粉砕、乾燥して極細単繊維を得た。極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
さらに、得られた極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、沈降時間を測定した。上澄みと目視できる繊維含有部分との境界面は7日経っても水面から1cmまでにしか下がらなかった。沈降時間の測定結果を表2に示す。
[比較例1]メタクリル酸メチル樹脂ミクロ繊維の粉砕
実施例1で用いたメタクリル酸メチル樹脂を紡糸温度250℃で溶融押し出しして、平均繊維径40μmのメタクリル酸メチル樹脂繊維を得た。この繊維の繊維径CV値を表2に示す。
この繊維に実施例1と同様な粉砕操作を行い、繊維含有水を乾燥して残渣を得た。この残渣を電子顕微鏡にて観察したところ、繊維長測定倍率1000倍において、繊維に切断箇所が見受けられない、あるいは、切断端は発見できてもその観察視野(約120μm×80μm)以内に繊維が収まらず、繊維長の測定が不可能であった。
[比較例2]ポリスチレンミクロ繊維の粉砕
実施例8で用いたポリスチレンを紡糸温度300℃で溶融押し出しして、平均繊維径20μmのポリスチレン樹脂繊維を得た。この繊維の繊維径CV値を表2に示す。
この繊維に実施例1と同様な粉砕操作を行い、繊維含有水を乾燥して残渣を得た。この残渣を電子顕微鏡にて観察したところ、繊維長測定倍率1000倍において、繊維に切断箇所が見受けられない、あるいは、切断端は発見できてもその観察視野(約120μm×80μm)以内に繊維が収まらず、繊維長の測定が不可能であった。
[比較例3]6ナイロンミクロ繊維の粉砕
実施例9で用いた6ナイロンを紡糸温度250℃で溶融押し出しして、平均繊維径10μmの6ナイロン樹脂繊維を得た。この繊維の繊維径CV値を表2に示す。
この繊維に実施例1と同様な粉砕操作を行い、繊維含有水を乾燥して残渣を得た。この残渣を電子顕微鏡にて観察したところ、繊維長測定倍率1000倍において、繊維に切断箇所が見受けられない、あるいは、切断端は発見できてもその観察視野(約120μm×80μm)以内に繊維が収まらず、繊維長の測定が不可能であった。
[比較例4]セルロースミクロ繊維の粉砕
実施例10で用いたセルロース粉末をそのまま用いた。繊維径CV値を表2に示す。
この繊維に実施例1と同様な粉砕操作を行い、繊維含有水を乾燥して残渣を得た。この残渣を電子顕微鏡にて観察したところ、繊維長測定倍率1000倍において、繊維に切断箇所が見受けられない、あるいは、切断端は発見できてもその観察視野(約120μm×80μm)以内に繊維が収まらず、繊維長の測定が不可能であった。
[比較例5〜7]カッターミルでの切断
実施例1,3,4で調製した平均繊維径1000nm、350nm、100nmのメタクリル酸メチル樹脂極細繊維不織布それぞれを、カッティングミル(フリッチュ・ジャパン社製 P−15)を用いて、5分間粉砕し、極細短繊維を得た。得られたそれぞれの極細短繊維の平均繊維長、および繊維長CV値を表2に示す。
また、得られた各極細短繊維を水で薄めて0.01質量%の極細短繊維含有水を調製し、それぞれの沈降時間を測定した。沈降時間の測定結果を表2に示す。
表2に示されるように、静電紡糸で得られた極細繊維を、超音波にて切断した実施例1〜11の極細短繊維は、繊維長のCV値が55%以下であり、繊維長のバラツキが小さく、このため分散安定性が良好であることがわかる。
一方、極細繊維をカッターミルで切断した場合、得られた極細短繊維の繊維長のCV値は74%以上となってバラツキが大きく、このため分散安定性が低下していることがわかる。
また、比較例1〜4の結果から、10000μm以上の太さの繊維は、超音波処理にて短繊維に切断し得ないことがわかる。
実施例1で得られた極細短繊維における、(a)00倍、(b)3000倍での電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた極細短繊維における、(a)1000倍、(b)5000倍での電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた極細短繊維における、(a)3000倍、(b)10000倍での電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた極細短繊維における、(a)5000倍、(b)10000倍での電子顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. 平均繊維径が1000nm以下、かつ、平均繊維長が20μm以下であり、繊維長のCV値が55%以下であることを特徴とする樹脂製極細短繊維。
  2. 繊維径のCV値が35%以下である請求項1記載の樹脂製極細短繊維。
  3. 前記樹脂が、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体およびアミノ多糖類から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の樹脂製極細短繊維。
  4. 静電紡糸して得られた樹脂製極細繊維を超音波処理してなる請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂製極細短繊維。
  5. 平均繊維径1000μm以下の樹脂製極細繊維を超音波処理して極細短繊維を得ることを特徴とする樹脂製極細短繊維の製造方法。
  6. 前記樹脂製極細繊維が、樹脂を含有する紡糸溶液を調製し、この紡糸溶液を静電紡糸して得られたものである請求項5記載の樹脂製極細短繊維の製造方法。
  7. 前記超音波処理を、液体中で行う請求項5または6記載の樹脂製極細短繊維の製造方法。
  8. 前記超音波処理を、10〜100kHzの周波数の超音波で行う請求項5〜7のいずれか1項記載の樹脂製極細短繊維の製造方法。
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