以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る楽器の外観斜視図である。本実施の形態の楽器は、例えば、演奏操作子である複数鍵から成る鍵盤を備えたアップライトピアノ型の鍵盤楽器として構成される。図2は、本楽器の右側面図である。以降、本楽器からみて奏者側を「前方」、楽器正面視における右方を「右方」と呼称する。
本楽器は、楽器本体10と、鍵盤KBと、該鍵盤KB用の蓋体20とを有する。また、鍵盤KBの後方において、楽器本体10には、上方に立ち上がった立ち上がり部10aが形成されている。楽器本体10の下半部において、左右両側部には、各々メインスピーカ12が収容される主音響発生部11、11が設けられる(同図に示す微小斑点部分)。楽器本体10の上下方向略中間部から前方に延びた部分は、棚板上において鍵盤KBが載置される部分であって、その部分の先端部が口棒部13となっている。鍵盤KBの左右両側には拍子木14が設けられる(図2参照)。
立ち上がり部10aの前面10aaには、下から順に、名板15(15L、15R)、それぞれ多数の操作子から成る各種操作子群16(16L、16M、16R)及び副音響発生部17(17L、17R)が配設される。副音響発生部17には、モニタ用スピーカ17aが収容されている。各種操作子群16のうち、各種操作子群16Mは、演奏時にあまり操作を必要としない操作子である。一方、各種操作子群16L、16Rは、楽音パラメータ設定操作子、レジストレーションスイッチ等、演奏中の操作が比較的必要とされる操作子の集合である。
また、立ち上がり部10aの上面10abの前部には、名板18が立設されている。名板15、18には、ブランド名、機種名、シリーズ名等のロゴが刻設されている。名板15は特に、厚みを有して立ち上がり部10aの前面10aaよりも前方に突出している。
蓋体20は、上板21と上板21の先端部21aに取り付けられた蓋前部材22とから構成される。立ち上がり部10aの前部には、左右方向に沿って回動軸19が設けられている。この回動軸19は、不図示の蝶番を有して構成されるが、その蝶番の左右方向の長さは蓋体20全長に亘る単一のものであってもよいし、比較的短い蝶番を複数箇所に設けることで回動軸19を構成してもよい。上板21は、その先端部21aが回動軸19を中心に上下方向に回動自在に構成され、これにより、蓋体20が、手動操作により閉蓋状態から開蓋状態まで開閉自在になっている。なお、本楽器には不図示のダンパ機構が設けられており、蓋体20がゆっくり閉じるようになっている。
蓋体20は、開蓋状態においては、図2に実線で示すように、上板21が名板15に当接することで位置決めされ、立ち上がり部10aの前面10aaに近接して斜め後方に傾いた状態で起立する。名板15は弾性を有し、開蓋時における上板21との当接の衝撃を吸収する。なお、上板21表面において、名板15との当接部分には、経年変化による変色等が目立たないようにするための処理(例えば粗目処理)を施すのが望ましい。一方、蓋体20は、閉蓋状態においては、図2に仮想線で示すように、上板21が鍵盤KBを上方から覆う。
図3は、閉蓋状態における蓋体20の上板21の先端部21a近傍の部分側面図である。
蓋前部材22は、取り付け部22a、目隠し部22b及び口棒部当接部22cから成り、アルミニウム等の材料で押し出し成形等によって一体に形成される。蓋前部材22は、取り付け部22aが上板21の先端部21aに、例えば図3においてネジ23を斜め上後方に向けて、ネジ23で螺着することで、上板21に対して固定される。
閉蓋状態においては、同図に示すように、目隠し部22bが、取り付け部22aの後半部から斜め前下方に垂下し、この垂下した目隠し部22bの下端部から、口棒部当接部22cが前方に延びている。目隠し部22bと口棒部当接部22cとを合わせて「鍵盤隠し部C1」と呼称する。口棒部当接部22cの下部には、蓋前部材22の全幅に亘って設けられた溝に嵌合されたゴム等の緩衝材22dが設けられている。鍵盤隠し部C1は、側面視略L字状を呈している。閉蓋状態においては、口棒部当接部22cが口棒部13に当接して蓋体20の位置決め機能を果たすと共に、目隠し部22bが鍵盤KBを前方から目隠しする。蓋前部材22は、閉蓋状態における前面側が、側面視で略コ字状の袋状に形成され、取り付け部22aの目隠し部22bに対向する面は、開蓋操作を行う際に指24を掛けるための指掛け部22aaとして機能する。
一方、開蓋状態においては、図2に示すように、蓋前部材22が譜面25の下端25aを下方から支持する。より詳細には、図3に仮想線で示すように、目隠し部22bが譜面25の下端25aを直接支持する。また、名板18と、立ち上がり部10aの前面10aaとが、譜面25の背面25bを後方から支持する。なお、図2では、譜面25は側面視で撓みのない状態で示されているが、実際には多少の撓みが生じることもあるため、譜面25の背面25bは、名板18及び立ち上がり部10aの前面10aaのいずれかまたは双方によって支持される。
このように、開蓋状態では、目隠し部22bと、名板18及び/又は立ち上がり部10aの前面10aaとが協働して譜面台機能を果たすようになっている。さらに、開蓋状態における譜面保持状態において、蓋前部材22の口棒部当接部22cが、譜面25の下端25aの前方への脱落を防止するストッパ機能を果たす。目隠し部22b、口棒部当接部22c、名板18はそれぞれ、譜面台機能以外の本来の機能である、鍵盤目隠し機能、閉蓋時の位置決め機能、ロゴ表示機能を有し、また、立ち上がり部10aの前面10aaは、アップライトピアノ型楽器において通常設けられる部分である。すなわち、立ち上がり部10aは、アップライトピアノ型のアコースティック楽器においてはアクション機構を、電子楽器においては回路部品や音響部品等を収容するために必要であることから、前面10aaを有することになる。このことから、譜面台専用の機構を別途設けることなく譜面台機能が実現され、構成が簡単で済む。
また、特に、名板18に譜面台機能を果たさせるべく、名板18が譜面25で隠れるような低い位置に配置されることになるので、譜面25の上端位置より高い位置に名板を設ける場合に比し、名板18を含む楽器高さを低く抑えることができる。
また、各種操作子群16(主に楽音パラメータ設定操作子群)については、一般には鍵盤の後方に配設されることが多いが、本実施の形態では、各種操作子群16を前面10aaに設けた結果、鍵盤KBの後方に設けなくてよい。そのため、鍵盤KBの前後方向全長のうち見えがかり部(全長8〜10mm程度)を覆うように蓋体20を構成する際、蓋体20の前後方向の長さを短く設定することができる。例えば、蓋体20の全長は10〜18mm程度で足りる。そして、このような短い蓋体20を起立させたとき、蓋体20の上端位置が低くて済むことから、立ち上がり部10aの上面10abの位置を低く設定することができる。このことからも、楽器高さを低く抑えることが容易であるといえる。
各種操作子群16及び副音響発生部17はいずれも、開蓋状態における蓋体20の上端位置より上方に位置する。しかも、各種操作子群16のうち各種操作子群16L、16Rと、副音響発生部17L、17Rとは、立ち上がり部10aの前面10aaのうち譜面25の背面25aを後方から支持する部分の左方及び右方に配置されている(図1参照)。従って、開蓋時における譜面25の載置時、さらには載置した譜面を用いた演奏時において、副音響発生部17からの音響の発生、及び各種操作子群16L、16Rの操作に支障を与えることがない。なお、開蓋時において譜面25を載置していないときは、各種操作子群16Mについても操作の支障がない。
本実施の形態によれば、目隠し部22bが鍵盤目隠し機能と譜面25の下端25aの支持機能とを兼ね、名板18が、ロゴ表示機能と譜面25の背面25bの支持機能とを兼ね、通常設けられる立ち上がり部10aの前面10aaが譜面25の背面25bの支持機能を果たすので、簡単な構成で譜面台機能を実現することができる。また、口棒部当接部22cが閉蓋時における蓋体20の位置決め機能と、譜面25の載置時における譜面25のストッパ機能とを兼ねるので、簡単な構成で譜面脱落防止機能を実現することができる。
また、各種操作子群16L、16R、及び副音響発生部17L、17Rを、開蓋状態で譜面25を載置したときでも蓋体20または譜面25によって隠れず露出するように配置したので、音響の発生または楽音パラメータ設定操作に支障を与えることがない。
しかも、蓋前部材22の取り付け部22aが、開蓋動作の際の指掛け部22aaとして機能することから、結局、蓋前部材22が、鍵盤目隠し機能、譜面下端支持機能、及び指掛け機能の3機能を兼ねる。よって、構成を複雑化することなく開蓋動作のための指掛け機能を実現することができる。
なお、図2に仮想線で示されるように、立ち上がり部10aの前面10aaの下部において、凹部10dを設け、開蓋時において蓋体20の上板21が凹部10d内にちょうど収容されるように構成してもよい。このようにすれば、蓋前部材22に譜面25を載置したとき、譜面25の背面25bを前面10aa全体で支持することができ、譜面25の姿勢が一層安定する。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る楽器の右側面図である。図5は、開蓋状態における本楽器の上半部を示す正面図である。本実施の形態の楽器は、アップライトピアノ型の鍵盤楽器として構成され、第1の実施の形態に対して蓋体の構成が大きく異なり、楽器本体の基本的構成は同様である。本楽器は、楽器本体110と、鍵盤KBと、該鍵盤KB用の蓋体120とを有する。
楽器本体110の下半部の構成は、図示はしないが第1の実施の形態における楽器本体10と同様である。楽器本体110の立ち上がり部110aの構成は第1の実施の形態における立ち上がり部10aと同様であり、名板15、18、各種操作子群16、副音響発生部17が同様に設けられる。鍵盤KBの前後方向の長さは、第1の実施の形態に比し長い。鍵盤KBの左右両側には蓋保持部材9が、蓋保持部材9の前方には拍子木114が設けられる。
なお、各種操作子群16は、両蓋保持部材9間において、鍵盤KBの後方に設けるようにしてもよい。これと併せて、主音響発生部11、11を廃止すると共に、モニタ用スピーカ17aを大型に構成し、これを主音響発生部11、11に代えて主音響発生部として用いるようにしてもよい。
蓋体120は、第1上板121と、第2上板122と、第2上板122の先端部に取り付けられた蓋前部材123と、添え板126とから構成される。第1上板121と第2上板122とは、連結部CONにて、屈伸自在、すなわち、延設状態から折り畳み状態まで回動可能に連結されている。第1上板121は、回動軸19を中心に上下方向に回動自在に構成されている。
図6(a)は、蓋体120の折り畳み状態における連結部CONの右側面図である。図6(b)は、折り畳み状態における蓋体120を右斜め上後方からみた斜視図である。図5に示すように、連結部CON(CON(L)、CON(R))は、左右対称位置に2カ所設けられる。
図6(a)、(b)に示すように、第1上板121の連結側端部121aと、第2上板122の連結側端部122aとは、平行蝶番H1(H1L、H1R)で回動自在に連結されている。すなわち、平行蝶番H1は、軸部128、第1蝶番片129、第2蝶番片130を有し、第1蝶番片129が第1上板121の連結側端部121aにネジ124で固定されると共に、第2蝶番片130が第2上板122の連結側端部122aにネジ125で固定されている。これにより、蓋体120は、折り畳み状態では、第1上板121の連結側端部121aが第2上板122の連結側端部122aより高く、段付き部が生じるクランク構造となっている。
蓋体120は、開蓋状態においては、図4に実線で示すように、前側の第1上板121と後側の第2上板122とが折り畳み状態となって、且つ、第2上板122が名板15に当接することで位置決めされ、立ち上がり部110aの前面110aaに近接して斜め後方に傾いた状態で起立する。一方、閉蓋状態においては、図4に仮想線で示すように、蓋体120は、延設状態となって、左右の蓋保持部材9によって第2上板122が保持される。この閉蓋状態においては、第1、第2上板121、122が鍵盤KBを上方から覆い、蓋前部材123が口棒部113に当接して蓋体120の位置決め機能を果たすと共に鍵盤KBを前方から目隠しする。
また、図6(a)に示すように、第2上板122の、閉蓋時に鍵盤KBに対向する側の面に添え板126が固着されている。添え板126は、閉蓋状態において第1上板121に対してオーバーラップするように、連結側端部122aから突出して設けられる。添え板126は、第2上板122が、連結部CONにおいて、第1上板121に対して延設状態よりさらに図4の反時計方向に回動すること(いわゆる逆折れ)を規制する役割を果たす。
一方、開蓋状態においては、図4、図6(a)に示すように、平行蝶番H1の第2蝶番片130が譜面25の下端25aを下方から支持する。すなわち、第2上板122の連結側端部122aが実質的に譜面25の下端25aを支持する。また、第1の実施の形態と同様に、譜面25に撓みがある場合を考慮すると、名板18と立ち上がり部110aの前面110aaとが、譜面25の背面25bを後方から支持することになる。
さらに、開蓋状態における譜面保持状態において、第1上板121の連結側端部121a乃至平行蝶番H1の軸部128が、譜面25の下端25aの前方への脱落を防止するストッパ機能を果たす。この状態ではまた、上記添え板126が、譜面25の下端25aの後方への脱落を防止するストッパ機能を果たす。
また、図5に示すように、連結部CON(L)、CON(R)間において、載置される譜面25に対向し得る位置に、平行蝶番H2(H2L、H2R)及び可動板127(127L、127R)が設けられる。図6(b)に示すように、平行蝶番H2Rは、軸部131、第1、第2蝶番片132、133から成る。可動板127Rは、第1上板121とは別部材で構成される。可動板127Rに第1蝶番片132が固定されると共に第2上板122に第2蝶番片133が固定されて、可動板127Rが、第1上板121とは独立して第2上板122に対して回動自在になっている。また、平行蝶番H2Rは、可動板127Rを手動で回動させ得る範囲で適当な摩擦力を発揮するように構成されている。平行蝶番H2L、可動板127Lの構成は、平行蝶番H2R、可動板127Rと同様である。
開蓋状態における譜面保持状態において、可動板127を後方に回動させて譜面25を前方から押さえつけると、平行蝶番H2の摩擦力によって、可動板127が譜面押さえの機能を果たすことができる。その一方、閉蓋動作の際、すなわち、譜面25を除去して第2上板122を第1上板121に対して延設状態となる方向に回動させるとき、第2上板122が可動板127を同方向に自動的に駆動することになるので、可動板127を第1上板121に対して平行に戻す動作をあえて行う必要がない。これにより、可動板127に起因する閉蓋作業の煩雑さが回避される。
図5に示すように、各種操作子群16及び副音響発生部17はいずれも、開蓋状態における蓋体120の上端位置(本実施の形態では添え板126の上端位置)より上方に位置する。また、各種操作子群16L、16R、及び副音響発生部17L、17Rを、開蓋状態で譜面25を載置したときでも蓋体120または譜面25によって隠れず露出するように配置した点は、第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態によれば、連結部CONが、譜面25の下端25aの支持機能を果たし、名板18が、ロゴ表示機能と譜面25の背面25bの支持機能とを兼ね、通常設けられる立ち上がり部110aの前面110aaも譜面25の背面25bの支持機能を果たすので、譜面台専用の機構を別途設ける場合に比し構成が簡単で済み、簡単な構成で譜面台機能を実現することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、鍵盤KBの蓋機能を有する第1上板121の連結側端部121aと、第2上板122の逆折れ規制機能を有する添え板126とが、譜面25の下端25aの前後方向のストッパ機能を果たすので、構成を複雑化することなく譜面脱落防止機能を実現することができる。
また、可動板127によって、譜面押さえの機能を果たすことができる。しかも、可動板127の回動軸が、連結部CONに沿った位置に位置するので、構成が簡単で、出っ張りも少なく、譜面めくり時にもひっかかることも少なくて済み安全である。さらには、閉蓋時においては可動板127が第1上板121及び第2上板122の下方に隠れるので、見栄えがよく、破損もしにくい。
しかも、蓋体120は、開蓋時には折り畳み状態となるので、高さが低くて済み、低くて見やすい位置に譜面25を載置することが容易になる。すなわち、例えば、各種操作子群を、図4に示す位置でなく鍵盤KBの後方に配設した場合や、鍵盤KBの長さが比較的長い場合等、立ち上がり部110a(の特に回動軸19)から鍵盤KBの先端位置までが遠いような機種であっても、開蓋状態において譜面25を保持する連結部CONの位置を低く設定できるので、譜面25の位置を相対的に低くすることができる。従って、回動軸19から鍵盤KBの先端までの距離が短ければ、それに応じて譜面位置を下げることができる。
また、各種操作子群16L、16R、及び副音響発生部17L、17Rの上記配置により、音響の発生または楽音パラメータ設定操作に支障を与えないことに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、第1、第2の実施の形態において、各種操作子群16L、16R、及び副音響発生部17L、17Rは左右対称位置にそれぞれ2つ設けたが、いずれか片方にのみ設けてもよい。
なお、第1、第2の実施の形態において、名板18と、立ち上がり部の前面10aa、110aaとが協働して、譜面25の背面25bを後方から支持するように構成したが、譜面保持機能を簡単な構成で実現する観点からは、これに限るものでなく、例えば、常に名板18のみ、または立ち上がり部の前面のみで譜面25の背面25bを支持するように、名板18の配置及び立ち上がり部の前面との位置関係を設定してもよい。なお、譜面25の背面25bを後方から支持するものは、名板18に限定されず、例えば、左右方向に沿って配設される突条状の部材乃至部分であってもよい。
なお、名板15の少なくとも一部を磁石で構成し、蓋体20、120の、名板15と当接する部位に、鉄等の磁性体で成るプレートを貼着してもよい。このようにすれば、開蓋状態において、名板15が蓋体20、120を吸着しているので、載置される譜面25の重量が大きい場合であっても、蓋体20、120の閉蓋動作が誘発されにくい。これにより、立ち上がり部10a、110aの前面10aa、110aaの傾斜をさらに急勾配に構成しても、蓋体20、120の開蓋状態を安定して維持することが容易になる。
なお、第1、第2の実施の形態では、各種操作子群16を立ち上がり部10a、110aに配設した構成を例示したが、開蓋状態の蓋体の上部に譜面が載置される構成に鑑みれば、各種操作子群16を蓋体20の閉蓋時における裏面(下面)(第2の実施の形態にあっては蓋体120の第1上板121の閉蓋時における裏面)に配設することで、さらに次のような別の効果を奏することができる。
例えば、蓋体20の閉蓋時における裏面(下面)に各種操作子群16や液晶表示部を配設することで、譜面載置時においても操作子操作や表示に何ら支障が生じないばかりか、各種操作子群16が、立ち上がり部10aに配設される場合に比し奏者に近くなるので、操作及び視認が容易になる。また、立ち上がり部10aに各種操作子群16を配設しなくてよいことから、弦を必要としない電子鍵盤楽器に適用すれば、立ち上がり部10aの高さを低くでき、演奏時の圧迫感が少なくなると共に、奏者の顔を楽器後方から見ることができるようになる。
(第3の実施の形態)
図7(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る楽器の上半部の右側面図である。図7(a)は、同図(b)のA部の拡大図である。
本実施の形態の楽器は、立ち上がり部に相当する部分を有さないが、楽器本体のその他の基本的構成は第2の実施の形態と同様である。また、蓋体220の構成は、第2の実施の形態における蓋体120に対し、添え板126より長い添え板226を有している点が異なり、その他の構成は同様である。図7(a)、(b)において、第2の実施の形態と同様の構成要素には同一符号が付してある。
蓋体220は、蓋前部材123が楽器本体の天面210に当接することで起立する。添え板226によって譜面25の背面25bが後方から支持される。譜面25の左右方向の幅は、上記蓋保持部材9に相当する左右の蓋保持部材209の間の範囲において、譜面25の幅より大きく、例えば、楽器本体全幅の1/3程度である。そして、図7(a)に示すように、譜面25を載置した状態で、可動板127を同図時計方向に回動させることで、第2の実施の形態と同様に、可動板127が譜面25を前方から押さえつけ、譜面押さえの機能を果たす。
本実施の形態によれば、添え板226が、蓋体220の上記逆折れ防止機能と、譜面25の背面25bの支持機能とを果たすので、譜面台専用の機構を別途設ける場合に比し構成が簡単で済み、簡単な構成で譜面台機能を実現することに関し、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、可動板127によって、簡単な構成で譜面押さえ機能を実現することに関し、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第1上板121と添え板226とによる譜面脱落防止機能の実現に関し、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
(第4の実施の形態)
図7(d)は、本発明の第4の実施の形態に係る楽器の上半部の右側面図である。図7(c)は、同図(d)のB部の拡大図である。
本実施の形態の楽器は、楽器本体のその他の基本的構成が第3の実施の形態と同様である。また、蓋体320の構成は、第3の実施の形態における蓋体220に対し、添え板226を有していない点が異なり、その他の構成は同様である。図7(c)、(d)において、第3の実施の形態と同様の構成要素には同一符号が付してある。
図7(d)に示すように、起立状態の蓋体320の後方において、蓋体320に近接した位置に、譜面台装置230が設けられる。譜面台装置230は、左右一対の支柱231と、正面視コ字(下方に開いたコ字)状の譜面背もたれ部232とを有する。また、図7(c)に示すように、両支柱231の上端部間に亘って、ステイ233及び受け部235が設けられ、ステイ233が両支柱231の上端部に固定されている。受け部235は、回動軸234を中心としてステイ233に対して上下方向に回動自在になっている。通常、譜面台装置230の非使用時には受け部235をステイ233に略平行にし、使用時には受け部235を前方に倒す。
支柱231の間隔乃至譜面背もたれ部232の左右方向の幅は、譜面25の幅よりやや大きい程度あれば十分である。両支柱231は、実公平1−34225号公報で例示されるのと同様に、楽器本体の天面210に対して、プッシュオン/オフで立設固定/横倒が可能に構成される。譜面背もたれ部232は、それらの下端部が両支柱231に挿入されて、ロッドアンテナのように上下方向にスライド自在で、任意の位置で固定できるようになっている。
かかる構成において、譜面25を載置する際には、蓋体320を起立させ、受け部235を図7(c)に示すように前方に倒し、受け部235の上に譜面25を載置する。そのとき、譜面25の背面25bは、背もたれ部232によって支持される。そして、図7(c)に示すように、譜面25を載置した状態で、可動板127を同図時計方向に回動させることで、第2の実施の形態と同様に、可動板127が譜面25を前方から押さえつけ、譜面押さえの機能を果たす。なお、背もたれ部232に板状部材を固定して、該板状部材全体で譜面25を受けるように構成してもよい。
本実施の形態によれば、可動板127によって、簡単な構成で譜面押さえ機能を実現することに関し、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、本発明の適用対象は、鍵盤楽器に限定されるものでなく、演奏操作子を覆う蓋体を有して、譜面を載置することが求められるような楽器に広く本発明を適用可能である。