JP4882316B2 - 生分解性グリース組成物 - Google Patents
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Description
以下に本発明のグリース組成物を構成する各成分について説明する。
本発明の生分解性グリース組成物は、生分解性基油(A)としてポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)を含む。このポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)は、tert−ブチルアルコールを有機配位子の少なくとも一部として有する複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、水酸基を有する開始剤に、環状エステル化合物とアルキレンオキシドとを共重合して得られる。以下にこれらの各原料について説明する。
本発明に用いる、tert−ブチルアルコールを有機配位子の少なくとも一部として有する複合金属シアン化物錯体触媒(以下、DMC(double metal cyanide)触媒と記す。)は、公知の方法で合成することができる(例えば、特開2003−117403号公報参照)。
M1 a[M2 b(CN)c]de(M1 fXg)h(H2O)i(R)・・・式1
式1中、M1は、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)、およびPb(II)から選ばれる金属原子であり、Zn(II)またはFe(II)であることが好ましい。なお金属の原子記号に続くかっこ内のローマ数字は原子価を表し、以下同様である。M2は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、およびV(V)から選ばれる金属原子であり、Co(III)またはFe(III)であることが好ましい。Xはハロゲン原子である。Rは、tert−ブチルアルコールのみであるか、または、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、およびエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルからなる群から選択される1種以上とtert−ブチルアルコールとの組み合わせである有機配位子を表す。a、b、c、d、e、f、g、h、iは、金属原子の原子価や有機配位子の配位数などにより変わる正の数である。本発明において特に好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコール単独か、もしくはtert−ブチルアルコールとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルの組み合わせである。この有機配位子を有するDMC触媒は、上記特定の水酸基含有開始剤に対する環状エステル化合物とアルキレンオキシドとの共重合反応に特に高い重合活性を示し、しかも重合によって得られるポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)の分子量分布を狭くできる。
本発明では、開始剤として、1〜12個の水酸基を有する化合物を使用する。数平均分子量(Mn)は18〜20000であることが好ましい。具体的な化合物としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、2−エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの1価アルコール類;水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの2価アルコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール類;グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖、メチルグルコシドなどの糖類およびその誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール、レゾルシンなどのフェノール系化合物、などが挙げられる。これらの開始剤は1種のみ用いることも、2種以上を併用することもできる。
本発明で用いる環状エステル化合物は、炭素数3〜9の環状エステル化合物、いわゆるラクトン、である。具体的な環状エステル化合物としては、例えば、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチルε−カプロラクトン、α-メチル−β−プロピオラクトン、β-メチル−β−プロピオラクトン、メトキシ−ε−カプロラクトン、およびエトキシε−カプロラクトンを挙げることができ、特にε−カプロラクトンが好ましい。これらの環状エステル化合物は1種類だけを用いることも、2種類以上を併用することもできる。なお、ブチロラクトンなどの5員環の環状エステル化合物は反応性が低いので本発明の方法に用いる環状エステル化合物としてはあまり好ましくない。
本発明で用いるアルキレンオキシドは、炭素数2〜20を有するアルキレンオキシドが好ましい。本発明に用いるアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、シクロペンタンオキシド、シクロヘキセンオキシド、炭素数5〜20のα−オレフィンオキシドなどを挙げることができ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明ではエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、およびオキセタンから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。また、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを少量のテトラヒドロフランとともに用いて重合反応を行うこともできる。本発明ではエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのいずれかを用いるか又は両者を併用することが好ましい。
上記開始剤およびDMC触媒の存在下、反応容器内に上記アルキレンオキシドの1種以上と、上記環状エステル化合物の1種以上とを同時に添加して重合を行い、ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)のランダム共重合体を得ることができる(ランダム共重合体)。また、アルキレンオキシドの1種以上と、環状エステル化合物の1種以上とを順次添加してポリエーテルエステルポリ(モノ)オール(a1)のブロック共重合体を得ることもできる(ブロック共重合体)。さらには、環状エステル化合物およびアルキレンオキシドの添加順序及び添加量などを調節することより、分子内の一部に環状エステルに由来するポリエステル鎖部分および/またはポリオキシアルキレン鎖部分を導入して、ランダム共重合部位とブロック共重合部位が同一分子中に存在するポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)を得ることができる(ランダム・ブロック共重合体)。ポリエステル鎖部分を分子内に均一に導入することにより、ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)を低粘度化でき、かつ生分解性や耐熱性を向上できるため、本発明においてはランダム共重合体、ランダム・ブロック共重合体を用いることが好ましい。
ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)は、上述のとおり、上記開始剤およびDMC触媒の存在下に、環状エステル化合物およびアルキレンオキシドを共重合反応させる。この反応は一般に、耐圧反応容器を用い、容器中に開始剤とDMC触媒を入れ、所定の反応温度に加熱した後、環状エステル化合物とアルキレンオキシドを同時に、または順次に、あるいは両者を組み合わせて反応容器内に導入し、加熱撹拌下で共重合反応させる。環状エステル化合物とアルキレンオキシドの反応容器内への添加は、連続して行うことも、所定量を順次添加することもできる。
上記記載の原料および方法を用いて製造したポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)を基油として用い、さらに必要に応じてその他の添加剤を加えて本発明の生分解性グリース組成物を調製できる。本発明のポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)は、分子内にエステル結合を有し、微生物による生分解を受けやすいという特徴を有する。ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)を基油(A)として用いた本発明の生分解性グリース組成物の生分解性は、欧州規格諮問委員会規格(CEC規格)のL−33−A−93(1993年)のBiodegradability of Two−stroke Cycle Outboard Engine Oils in Water(「水中での2ストロークサイクル船外エンジン用オイルの生分解性試験方法」)に準拠して評価し、生分解率(%)により表わす。自然環境に放出された場合の分解が速いほど環境への負荷が小さくなり、環境保護の観点からは好ましい。したがって、本発明の生分解性グリース組成物は生分解率(%)が高いほうが好ましく、28日試験後の結果が60%以上の生分解率を有することが好ましい。
本発明の生分解性グリース組成物に用いうる増ちょう剤としては、一般にグリース組成物に用いられる公知ものを用いることができ、例えば、各種の金属石鹸(特にリチウム塩およびカルシウム塩)、ウレア、有機化ベントナイト、およびシリカなどが挙げられる。金属石鹸としては、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、リチウムコンプレックスなどが挙げられる。ウレアとしては脂肪族ジウレア、脂環式ジウレア、および芳香族ジウレアなどが挙げられる。有機化ベントナイトとしては、第4級アンモニウム塩で処理したモンモリロナイトなどが挙げられる。シリカとしては超微粒子のシリカ粉またはその表面処理したタイプのものが挙げられる。生分解性グリース組成物へ増ちょう剤を添加する場合、添加量は、通常、生分解性グリース組成物中0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
本発明の生分解性グリース組成物に用いる油性剤としては、界面活性剤、有機脂肪酸化合物、および有機脂肪酸誘導体などを挙げることができる。界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、および両性界面活性剤のいずれを用いることもできる。本発明に用いる具体的な界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、および脂肪酸アミドなどのノニオン系界面活性剤;N−アシルアミノ酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩,アルキルスルホカルボン酸塩,アルキルリン酸又はその塩,ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸又はその塩,および芳香族リン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤;アルキルアンモニウム塩、およびアルキルベンジルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤があげられる。有機脂肪酸化合物としては、オレイン酸、アジピン酸、ナフテン酸、コハク酸、およびアルケニルコハク酸などがあげられる。有機脂肪酸誘導体としては、アルキルコハク酸エステル、およびアルケニルコハク酸エステルなどがあげられる。
本発明の生分解性グリース組成物には必要に応じて油性剤を添加することができるが、添加する場合の添加量は、一般に、生分解性グリース組成物中0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
本発明の生分解性グリース組成物に用いる極圧剤としては、有機リン化合物、イオウ−リン系極圧剤(分子中にイオウとリンを含有する化合物)、塩素系化合物、イオウ系化合物、および有機モリブデン化合物などが挙げられる。有機リン化合物としては、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、正リン酸エステル類、および酸性リン酸エステル類などが挙げられ、具体例にはジチオリン酸亜鉛およびトリクレジルフォスフェイトなどがある。本発明の生分解性グリース組成物に極圧剤を添加する場合は、生分解性グリース組成物中0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
本発明の生分解性グリース組成物に用いる酸化防止剤としては、脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、フェノール系化合物、イオウ系化合物、およびジチオリン酸亜鉛などが挙げられ、具体例にはジオクチルジフェニルアミンなどがある。生分解性グリース組成物に酸化防止剤を添加する場合は、生分解性グリース組成物中、0.001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
本発明の生分解性グリース組成物にはその他の添加剤としてさび止め剤、金属腐食防止剤、および粘度指数向上剤などを任意に添加することもできる。さび止め剤としては石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、およびソルビタンエステルなどが挙げられる。金属腐食防止剤としてはベンゾトリアゾールおよびベンゾチアジアゾールなどが挙げられる。粘度指数向上剤としてはポリメタクリレート、ポリイソブチレン、およびポリスチレンなどが挙げられる。
以下に本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、試験に用いたポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)の組成を表1に示した。また、ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)の水酸基価はJIS K1557 6.4(1970年)に準拠して測定した値(単位はmgKOH/gであり以下では数値のみ示す。)であり、酸価はJIS K1557 6.6に準拠して測定した値である。
基油の酸化安定性は、JIS K2514潤滑油―酸化安定度試験方法(150℃、500h、触媒なし)に準拠して行った。下記の式を用いて、全酸価の増加および粘度比を求めた。
全酸価の増加=試験後酸価(mgKOH/g)−試験前酸価(mgKOH/g)
粘度比=試験後動粘度(mm2/s(40℃))/試験前動粘度(mm2/s(40℃))
潤滑油組成物の生分解率(%)は、欧州規格諮問委員会規格(CEC規格)のL−33−A−93(1993年)のBiodegradability of Two−stroke Cycle Outboard Engine Oils in Water(水中での2ストロークサイクル船外エンジン用オイルの生分解性試験方法)に準じて測定した。
すなわち2本の500mlの三角フラスコ中に、それぞれ同じ潤滑油組成物サンプル7.5μlと、栄養液150mlとを入れる。一方のフラスコには、微生物液として都市下水処理用の活性汚泥1mlを加え(活性汚泥処理サンプル)、他方のフラスコには上記活性汚泥1mlを加えない(対照サンプル)。活性汚泥処理サンプル1つと対照サンプル1つを1組とし、これを2組準備する。1組は初期油量測定用サンプルとする。他方の1組の2つのフラスコの口をフィルタでふさいだ状態で、両フラスコを25℃で14日間、振とう培養法で好気培養する。初期油量測定用サンプルおよび培養試験後のサンプルから油を25mlの有機溶媒で抽出し、赤外線分光光度計を用いて測定したCH3−CH2 結合の量からフラスコ中の油量を求め、下記式により生分解率(%)を計算した。28日間振とう培養した後の生分解率(%)も同様に測定した。
生分解率(%)=
{(活性汚泥処理サンプル初期油量−活性汚泥処理サンプル培養後油量)
−(対照サンプル初期油量−対照サンプル培養後油量)}÷(活性汚泥処理サンプル初期油量)×100
グリース組成物の耐荷重能は、JISK2220 5.16に準拠し、チムケン式極圧試験機により設定の荷重で10分間試験後、試験ブロックの摩耗痕の状態からOK荷重(kg)を求めた。
グリース組成物の混和ちょう度は、JIS K2220 5.3に準拠し、試料を規定混和器で25℃に保ってから、60往復混和した直後に、規定円錐が試料に進入する深さを測定した。数値は、進入深さミリメートルの10倍値である。
グリース組成物の水への溶解性は、ポリエステルエーテルポリ(モノ)オール(a1)をイオン交換水に加え、1質量%の希釈液にした時の溶解性を目視により観察し、その状態を記録した。
500mLのフラスコ中に塩化亜鉛10.2gとイオン交換水10gからなる水溶液を調製する。次に、カリウムヘキサシアノコバルテート(K3[Co(CN)]6)4.2gとイオン交換水75gからなる水溶液を40℃に保温しつつ、毎分300回転で撹拌しながら上記塩化亜鉛水溶液を30分間かけて滴下して加えた。滴下終了後、さらに30分撹拌した後、tert−ブチルアルコール(以下、TBAと記す。)80g、イオン交換水80gおよびジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合して得られた数平均分子量が1000のポリオール(以下、ポリオールXと記す。)0.6gの混合物を添加し、40℃で30分、さらに60℃で60分間撹拌後、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製、No.5C)を用い、0.25MPaの加圧下でろ過を行い、50分ほどで固体を分離した。
次いで、この複合金属シアン化物錯体を含むケーキにTBA36gおよびイオン交換水84gの混合物を添加してから30分撹拌後、15分間加圧ろ過を行った。この結果得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキに、さらにTBA108gおよびイオン交換水12gの混合物を添加して30分撹拌し、複合金属シアン化物錯体を含むTBAのスラリーを得た。
このスラリーにポリオールXを100g添加混合した後、80℃で3時間、更に115℃で4時間減圧乾燥し、TBAを有機配位子として有する複合金属シアン化物錯体触媒(スラリー触媒c)を得た。スラリー触媒c中の複合金属シアン化物錯体の濃度は4.10質量%であった。
撹拌機付きのステンレス製10L耐圧反応器内に、開始剤として数平均分子量(Mn)400のポリエチレングリコール1000gと、スラリー触媒cを6100mg(金属量として25.5mg)を投入した。耐圧反応器内を窒素ガスで置換後、140℃に昇温し、続いて100gのプロピレンオキシドを反応器内に供給して重合反応させた。反応器内の圧力が低下した後、撹拌下、約140℃に反応器内温を保ちながら、1900gのプロピレンオキシドと2000gのε−カプロラクトンをいずれも約250g/hrの速度で同時に反応器内に約8時間にわたって供給し、供給終了後、さらに1時間撹拌を続けて共重合反応を行った。
得られたポリエステルエーテルジオール(p1)の水酸基価は56.0、分子量分布(Mw/Mn)は、1.15であり、外観は常温で微白濁液体であった。
合成例1と同じポリエチレングリコールを200g、エチレンオキシド2400g、およびε−カプロラクトン2400gを用いた以外は、実施例1と同様に共重合反応を行った。この反応によって得られたポリエステルエーテルジオール(p2)の水酸基価は11.5、分子量分布(Mw/Mn)は、1.32であり、外観は、常温で微白濁粘ちょう固体であった。
反応器に合成例1と同じポリエチレングリコール1000gと、スラリー触媒cを6100mg(金属量として25.5mg)投入した。反応器を窒素ガスで置換後、140℃に昇温した。その後、1000gのエチレンオキシドを約125g/hrの速度で、2000gのε−カプロラクトンを約250g/hrの速度で同時に反応器内に供給して約140℃で共重合させた。反応器内の圧力が低下した後、さらに1000gのエチレンオキシドを約125g/hrで供給し、供給後さらに1時間撹拌を続けて反応させた。
この共重合反応によって得られたポリエステルエーテルジオール(p3)の水酸基価は55.8、分子量分布(Mw/Mn)は、1.28であり、外観は、常温で微白濁粘凋状液体であった。
開始剤としてラウリルアルコール1000gを用い、エチレンオキシドとε−カプロラクトンの添加量をいずれも2000gに変更した以外は、合成例2と同様の方法にしたがい、共重合反応を行った。
この反応によって得られたポリエステルエーテルモノオール(p4)の水酸基価は55.9であり、分子量分布(Mw/Mn)は、1.08であり、外観は常温で微白濁粘ちょう状液体であった。
ポリエステルエーテルジオール(p1)82.5質量部を基油として用い、これにリチウム石鹸10質量部とポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル3質量部とを加えて加熱し、撹拌した後、ロールミルを用いて混練処理した。これにさらに表2に記載の添加剤を加えてから、再度撹拌することによりグリース組成物(g1)を調製した。BHTはブチルヒドロキシトルエンである。
このグリース組成物(g1)の生分解率(%)は75%(14日後)、86%(28日後)であり、混和ちょう度は310、耐荷重能は10.9kgであった。また、グリース組成物(g1)の水への溶解試験を行ったところ(イオン交換水に1重量%希釈)、水との混合物はエマルションとなった。
表2に示した基油、添加剤を用いて実施例1と同様の方法にしたがい、グリース組成物(g2)〜(g5)を調製した。これらのグリース組成物(g2)〜(g5)の性状を表2に示す。
ポリエステルエーテルモノオール(p4)20質量部にグリセリンのトリオレエート(動粘度は56mm2/s(40℃)、水酸基価2.6、酸価12)62.5質量部を加えた混合物を基油とした以外は実施例1と同様に添加剤を加え、グリース組成物(g6)を得た。このグリース組成物(g6)の性状を表2に示す。
鉱物油(パラフィン系鉱物油;動粘度は28mm2/s(40℃))、または、菜種油(動粘度36mm2/s(40℃))を基油とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて表2に示した添加剤を加え、グリース組成物(gs1)〜(gs2)を得た。これらのグリース組成物(gs1)〜(gs2)性状を表3に示す。
Claims (8)
- tert−ブチルアルコールを有機配位子の少なくとも一部として有する複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、1〜12個の水酸基を有する1種以上の開始剤の存在下、1種以上の炭素数3〜9の環状エステル化合物と1種以上の炭素数2〜20のアルキレンオキシドとを共重合して得られるポリエステルエーテルポリオールおよび/またはポリエステルエーテルモノオール(a1)を生分解性基油(A)として含む、生分解性グリース組成物。
- 前記生分解性基油(A)とともに増ちょう剤を含む、請求項1記載の生分解性グリース組成物。
- 前記共重合に用いる前記環状エステル化合物と前記アルキレンオキシドの合計質量に対し、前記環状エステル化合物の質量が5〜90%であり、かつ、前記ポリエステルエーテルポリオールおよび/またはポリエステルエーテルモノオール(a1)の分子量分布(Mw/Mn)が1.02〜1.4である、請求項1または2に記載の生分解性グリース組成物。
- 生分解性グリース組成物中に前記ポリエステルエーテルポリオールおよび/またはポリエステルエーテルモノオール(a1)が10質量%以上含まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生分解性グリース組成物。
- 欧州規格諮問委員会規格(CEC規格)のL−33−A−93(1993年)による生分解性試験方法に準拠して測定した生分解率(%)が28日後で60%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生分解性グリース組成物。
- 前記ポリエステルエーテルポリオールおよび/またはポリエステルエーテルモノオール(a1)以外のグリース組成物用基油(a2)をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の生分解性グリース組成物。
- 前記グリース組成物用基油(a2)が、植物由来の基油、多価アルコールとカルボン酸との反応によって得られるポリオールエステル油およびモノオールとカルボン酸との反応によって得られるエステル化合物からなる群から選ばれる、請求項6に記載の生分解性グリース組成物。
- 前記複合金属シアン化物錯体触媒が、tert−ブチルアルコール単独、または、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、およびエチレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテルからなる群から選ばれる1種以上とtert−ブチルアルコールとの組み合わせを有機配位子として含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の生分解性グリース組成物。
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