以下、本発明に係る画素駆動装置、発光装置及びその駆動制御方法、並びに、電子機器について、実施形態を示して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明に係る画素駆動装置を備えた発光装置の概略構成について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る発光装置を表示装置として適用した場合について説明する。
(表示装置)
図1は、本発明に係る発光装置を適用した表示装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置(発光装置)100は、概略、表示パネル(発光パネル)110と、選択ドライバ(走査駆動回路)120と、電源ドライバ130と、データドライバ140と、コントローラ150と、を備えている。ここで、選択ドライバ120と電源ドライバ130とデータドライバ140とコントローラ150は、本発明における画素駆動装置又は駆動回路に対応する。
表示パネル110は、図1に示すように、行方向(図面左右方向)及び列方向(図面上下方向)に2次元配列(例えばp行×q列;p、qは正の整数)された複数の画素PIXと、各々行方向に配列された画素PIXに接続するように配設された複数の選択ライン(走査線)Ls及び複数の電源ラインLaと、全画素PIXに共通に設けられた共通電極Ecと、列方向に配列された画素PIXに接続するように配設された複数のデータライン(データ線)Ldと、を有している。ここで、各画素PIXは、後述するように、発光駆動回路と発光素子とを有している。
選択ドライバ120は、上記の表示パネル110に配設された各選択ラインLsに接続されている。選択ドライバ120は、後述するコントローラ150から供給される選択制御信号(例えば走査クロック信号及び走査スタート信号)に基づいて、各行の選択ラインLsに所定のタイミングで所定の電圧レベル(選択レベル;Vgh又は非選択レベル;Vgl)の選択信号Sselを順次印加する。
なお、選択ドライバ120についての詳細な構成の図示は省略するが、例えば、コントローラ150から供給される選択制御信号に基づいて、各行の選択ラインLsに対応するシフト信号を順次出力するシフトレジスタと、該シフト信号を所定の信号レベル(選択レベル;例えばハイレベル)に変換して、各行の選択ラインLsに選択信号Sselとして順次出力する出力バッファと、を備えたものを適用することができる。
電源ドライバ130は、表示パネル110に配設された各電源ラインLaに接続されている。電源ドライバ130は、後述するコントローラ150から供給される電源制御信号(例えば出力制御信号)に基づいて、各行の電源ラインLaに所定のタイミングで所定の電圧レベル(発光レベル;ELVDD又は非発光レベル;DVSS)の電源電圧Vsaを印加する。
データドライバ140は、表示パネル110の各データラインLdに接続され、後述するコントローラ150から供給されるデータ制御信号に基づいて、少なくとも表示動作(発光動作)時に、画像データに応じた階調信号(階調電圧Vdata)を生成して、各データラインLdを介して画素PIXへ供給する。また、データドライバ140は、後述する特性パラメータ取得動作時には、特定の電圧値の検出用電圧(第1の電圧)Vdacを、各データラインLdを介して特性パラメータ取得動作の対象になっている画素PIXに印加し、所定の自然緩和時間tの経過後のデータラインLdの電圧Vdをデータライン検出電圧Vmeas(t)として取り込んで検出データnmeas(t)に変換して出力する。
ここで、データドライバ140は、データドライバ機能と電圧検出機能の両方を備え、後述するコントローラ150から供給されるデータ制御信号に基づいて、これらの機能を切り換えるように構成されている。データドライバ機能は、コントローラ150を介して供給されるデジタルデータからなる画像データをアナログ信号電圧に変換して、データラインLdに階調信号(階調電圧Vdata)として出力する動作を実行する。また、電圧検出機能は、データラインLdのアナログ信号電圧Vdをデータライン検出電圧Vmeas(t)として取り込みデジタルデータに変換して、検出データnmeas(t)としてコントローラ150に出力する動作を実行する。
図2は、本実施形態に係る表示装置に適用されるデータドライバの一例を示す概略ブロック図である。また、図3は、図2に示すデータドライバの要部構成例を示す概略回路構成図である。ここでは、表示パネル110に配列された画素PIXの列数(q)のうち、一部のみを示して図示を簡略化する。以下の説明では、j列目(jは1≦j≦qとなる正の整数)のデータラインLdに設けられるデータドライバ140内部の構成について詳しく説明する。また、図3においては、シフトレジスタ回路とデータレジスタ回路を簡略化して図示する。
データドライバ140は、例えば図2に示すように、大別して、シフトレジスタ回路141と、データレジスタ回路142と、データラッチ回路143と、DAC/ADC回路144と、出力回路145と、を備えている。ここで、シフトレジスタ回路141とデータレジスタ回路142とデータラッチ回路143を含む内部回路140Aは、ロジック電源146から供給される電源電圧LVSS及びLVDDに基づいて、後述する画像データの取込動作及び検出データの送出動作を実行する。また、DAC/ADC回路144と出力回路145を含む内部回路140Bは、アナログ電源147から供給される電源電圧DVSS及びVEEに基づいて、後述する階調信号の生成出力動作及びデータライン電圧の検出動作を実行する。
シフトレジスタ回路141は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(スタートパルス信号SP)に基づいて、シフト信号を生成し、データレジスタ回路142に順次出力する。データレジスタ回路142は、上述した表示パネル110に配列された画素PIXの列数(q)分のレジスタ(図示を省略)を備え、シフトレジスタ回路141から供給されるシフト信号の入力タイミングに基づいて、1行分の画像データDin(1)〜Din(q)を順次取り込む。ここで、画像データDin(1)〜Din(q)はデジタル信号からなるシリアルデータである。
データラッチ回路143は、表示動作時(画像データの取込動作、及び、階調信号の生成出力動作)においては、データ制御信号(データラッチパルス信号LP)に基づいて、データレジスタ回路142に取り込まれた1行分の画像データDin(1)〜Din(q)を、各列ごとに保持した後、所定のタイミングで当該画像データDin(1)〜Din(q)を後述するDAC/ADC回路144に送出する。また、データラッチ回路143は、特性パラメータ取得動作時(検出データの送出動作、及び、データライン電圧の検出動作)においては、後述するDAC/ADC回路144を介して取り込まれる各データライン電圧Vmeas(t)に応じた検出データnmeas(t)を保持した後、所定のタイミングで当該検出データnmeas(t)をシリアルデータとして出力し、図示を省略した外部メモリに記憶する。
データラッチ回路143は、具体的には、図3に示すように、各列に対応して設けられたデータラッチ41(j)と、接続切換用のスイッチSW4(j)、SW5(j)と、データ出力用のスイッチSW3と、を備えている。データラッチ41(j)は、データラッチパルス信号LPの立ち上がりタイミングで、スイッチSW5(j)を介して供給されるデジタルデータを保持(ラッチ)する。
スイッチSW5(j)は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(切換制御信号S5)に基づいて、接点Na側のデータレジスタ回路142、又は、接点Nb側のDAC/ADC回路144のADC43(j)、又は、接点Nc側の隣接する列(j+1)のデータラッチ41(j+1)のいずれかを、データラッチ41(j)に選択的に接続するように切換制御される。これにより、スイッチSW5(j)が接点Na側に接続設定されている場合には、データレジスタ回路142から供給される画像データDin(j)がデータラッチ41(j)に保持される。また、スイッチSW5(j)が接点Nb側に接続設定されている場合には、データラインLd(j)からDAC/ADC回路144のADC43(j)に取り込まれたデータライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))に応じた検出データnmeas(t)がデータラッチ41(j)に保持される。また、スイッチSW5(j)が接点Nc側に接続設定されている場合には、隣接する列(j+1)のスイッチSW4(j+1)を介してデータラッチ41(j+1)に保持されている検出データnmeas(t)がデータラッチ41(j)に保持される。なお、最終列(q)に設けられるスイッチSW5(q)は、接点Ncにロジック電源146の電源電圧LVSSが接続されている。
スイッチSW4(j)は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(切換制御信号S4)に基づいて、接点Na側のDAC/ADC回路144のDAC42(j)、又は、接点Nb側のスイッチSW3(又は、隣接する列(j−1)のスイッチSW5(j−1);図示を省略)のいずれかを、データラッチ41(j)に選択的に接続するように切換制御される。これにより、スイッチSW4(j)が接点Na側に接続設定されている場合には、データラッチ41(j)に保持された画像データDin(j)がDAC/ADC回路144のDAC42(j)に供給される。また、スイッチSW4(j)が接点Nb側に接続設定されている場合には、データラッチ41(j)に保持されたデータライン検出電圧Vmeas(t)に応じた検出データnmeas(t)がスイッチSW3を介して外部メモリに出力される。
スイッチSW3は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(切換制御信号S4、S5)に基づいて、データラッチ回路143のスイッチSW4(j)、SW5(j)が切換制御されて、隣接する列のデータラッチ41(1)〜41(q)が相互に直列に接続された状態で、データ制御信号(切換制御信号S3、データラッチパルス信号LP)に基づいて、導通状態となるように制御される。これにより、各列のデータラッチ41(1)〜41(q)に保持されたデータライン電圧Vmeas(t)に応じた検出データnmeas(t)が、スイッチSW3を介してシリアルデータとして順次取り出されて、外部メモリに出力される。
図4は、本実施形態に係るデータドライバに適用されるデジタル−アナログ変換回路(DAC)及びアナログ−デジタル変換回路(ADC)の入出力特性を示す図である。図4(a)は、本実施形態に適用されるDACの入出力特性を示す図であり、図4(b)は、本実施形態に適用されるADCの入出力特性を示す図である。ここでは、デジタル信号の入出力ビット数を10ビットとした場合の、デジタル−アナログ変換回路及びアナログ−デジタル変換回路の入出力特性の一例を示す。
DAC/ADC回路144は、図3に示すように、各列に対応してリニア電圧デジタル−アナログ変換回路(DAC;電圧印加回路)42(j)と、アナログ−デジタル変換回路(ADC;検出データ取得回路)43(j)を備えている。DAC42(j)は、上記データラッチ回路143に保持されたデジタルデータからなる画像データDin(j)をアナログ信号電圧Vpixに変換して出力回路145に出力する。
ここで、各列に設けられるDAC42(j)は、図4(a)に示すように、入力されるデジタルデータに対する、出力されるアナログ信号電圧の変換特性(入出力特性)が線形性を有している。すなわち、DAC42(j)は、例えば図4(a)に示すように、10ビット(すなわち1024階調)のデジタルデータ(0、1、・・・1023)を、線形性を有して設定されたアナログ信号電圧(V0、V1、・・・V1023)に変換する。このアナログ信号電圧(V0〜V1023)は、後述するアナログ電源147から供給される電源電圧DVSS〜VEEの範囲内で設定され、例えば、入力されるデジタルデータの値が“0”(0階調)のときに変換されるアナログ信号電圧値V0が高電位側の電源電圧DVSSとなるように設定され、デジタルデータの値が“1023”(1023階調;最大階調)のときに変換されるアナログ信号電圧値V1023が低電位側の電源電圧VEEよりも高く、かつ、該電源電圧VEE近傍の電圧値になるように設定されている。
また、ADC43(j)は、データラインLd(j)から取り込まれたアナログ信号電圧からなるデータライン電圧Vmeas(t)を、デジタルデータからなる検出データnmeas(t)に変換してデータラッチ41(j)に送出する。ここで、各列に設けられるADC43(j)は、図4(b)に示すように、入力されるアナログ信号電圧に対する、出力されるデジタルデータの変換特性(入出力特性)が線形性を有している。また、ADC43(j)は、電圧変換時のデジタルデータのビット幅が上述したDAC42(j)と同一になるように設定されている。すなわち、ADC43(j)は、最小単位ビット(1LSB;アナログ分解能)に対応する電圧幅がDAC42(j)と同一に設定されている。
ADC43(j)は、例えば図4(b)に示すように、電源電圧DVSS〜VEEの範囲内で設定されたアナログ信号電圧(V0、V1、・・・V1023)を、線形性を有して設定された10ビット(1024階調)のデジタルデータ(0、1、・・・1023)に変換する。ADC43(j)は、例えば、入力されるアナログ信号電圧の電圧値がV0(=DVSS)のときにデジタルデータの値が“0”(0階調)に変換されるように設定され、アナログ信号電圧の電圧値が電源電圧VEEよりも高く、かつ、該電源電圧VEE近傍の電圧値であるアナログ信号電圧V1023のときにデジタル信号値“1023”(1023階調;最大階調)に変換されるように設定されている。
なお、本実施形態においては、シフトレジスタ回路141、データレジスタ回路142及びデータラッチ回路143を含む内部回路140Aを低耐圧回路として構成し、DAC/ADC回路144及び後述する出力回路145を含む内部回路140Bを高耐圧回路として構成している。そのため、データラッチ回路143(スイッチSW4(j))とDAC/ADC回路144のDAC42(j)との間に、低耐圧の内部回路140Aから高耐圧の内部回路140Bへの電圧調整回路としてレベルシフタLS1(j)が設けられている。また、DAC/ADC回路144のADC43(j)とデータラッチ回路143(スイッチSW5(j))との間に、高耐圧の内部回路140Bから低耐圧の内部回路140Aへの電圧調整回路としてレベルシフタLS2(j)が設けられている。
出力回路145は、図3に示すように、各列ごとにデータラインLd(j)に階調信号を出力するためのバッファ44(j)及びスイッチSW1(j)(接続切換回路)と、データライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))を取り込むためのスイッチSW2(j)及びバッファ45(j)と、を備えている。
バッファ44(j)は、上記DAC42(j)により画像データDin(j)をアナログ変換して生成されたアナログ信号電圧Vpix(j)を、所定の信号レベルに増幅して階調電圧Vdata(j)を生成する。スイッチSW1(j)は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(切換制御信号S1)に基づいて、データラインLd(j)への上記階調電圧Vdata(j)の印加を制御する。
また、スイッチSW2(j)は、コントローラ150から供給されるデータ制御信号(切換制御信号S2)に基づいて、データライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))の取り込みを制御する。バッファ45(j)は、スイッチSW2(j)を介して取り込まれたデータライン電圧Vmeas(t)を所定の信号レベルに増幅してADC43(j)に送出する。
ロジック電源146は、データドライバ140のシフトレジスタ回路141、データレジスタ回路142及びデータラッチ回路143を含む内部回路140Aを駆動するための、ロジック電圧からなる低電位側の電源電圧LVSS及び高電位側の電源電圧LVDDを供給する。アナログ電源147は、DAC/ADC回路144のDAC42(j)及びADC43(j)、出力回路145のバッファ44(j)、45(j)を含む内部回路140Bを駆動するための、アナログ電圧からなる高電位側の電源電圧DVSS及び低電位側の電源電圧VEEを供給する。
なお、図2、図3に示したデータドライバ140においては、図示の都合上、各部の動作を制御するための制御信号が、j列目(図中では1列目に相当する)のデータラインLd(j)に対応して設けられたデータラッチ41、及び、スイッチSW1〜SW5に入力された構成を示した。本実施形態においては、各列ごとの構成にこれらの制御信号が共通して入力されていることはいうまでもない。
図5は、本実施形態に係る表示装置に適用されるコントローラの機能を示す機能ブロック図である。なお、図5においては、図示の都合上、各機能ブロック間のデータの流れを全て実線の矢印で示した。実際には、後述するように、コントローラの動作状態に応じてこれらのいずれかのデータの流れが有効になる。
コントローラ150は、少なくとも上述した選択ドライバ120及び電源ドライバ130、データドライバ140の動作状態を制御して、表示パネル110における所定の駆動制御動作を実行するための選択制御信号及び電源制御信号、データ制御信号を生成して出力する。
特に、本実施形態においては、コントローラ150は、選択制御信号及び電源制御信号、データ制御信号を供給することにより、選択ドライバ120及び電源ドライバ130、データドライバ140の各々を所定のタイミングで動作させて、表示パネル110の各画素PIXの特性パラメータを取得する動作(特性パラメータ取得動作)、及び、各画素PIXの特性パラメータに基づいて補正された画像データに応じた画像情報を表示パネル110に表示する動作(表示動作)を制御する。
コントローラ150は、特性パラメータ取得動作において、上記データドライバ140を介して検出した各画素PIXの特性変化に関連する検出データ(詳しくは後述する)、及び、各画素PIXについて検出された輝度データ(詳しくは後述する)に基づいて、各種の補正データを取得する。また、コントローラ150は、表示動作において、外部から供給される画像データを、特性パラメータ取得動作において取得した補正データに基づいて補正し、補正画像データとしてデータドライバ140に供給する。
コントローラ(画像データ補正回路)150は、具体的には、例えば図5に示すように、概略、参照テーブル(LUT;固有パラメータ設定回路)151を備えた電圧振幅設定機能回路(画像データ補正回路)152と、乗算機能回路(画像データ補正回路)153、157a、157bと、加算機能回路(画像データ補正回路)154と、メモリ(記憶回路)155と、補正データ取得機能回路(第1の特性パラメータ取得回路、第2の特性パラメータ取得回路)156と、Kパラメータ設定回路(固有パラメータ設定回路)158と、を有している。
電圧振幅設定機能回路152は、外部から供給されるデジタルデータからなる画像データに対して、参照テーブル151を参照することにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する電圧振幅を変換する。電圧振幅設定機能回路152により変換された画像データの電圧振幅の最大値は、上述したDAC42における入力範囲の最大値から、各画素の特性パラメータに基づく補正量を減算した値以下に設定される。ここで、電圧振幅設定機能回路152により参照される参照テーブル151は、後述するように、各画素PIXに設けられる駆動トランジスタに付加される寄生容量(容量成分)に起因する発光電圧の変動を補正するように変換テーブル(ガンマテーブル)が予め設定されている。なお、参照テーブル151に設定される変換テーブルについては、詳しく後述する。また、電圧振幅設定機能回路152は、入力されたデジタルデータをそのまま出力する、スルー機能あるいは迂回経路を有している。そして、後述するオートゼロ法を適用した特性パラメータ取得動作時には、入力されたデジタルデータに対して参照テーブル151を用いた電圧振幅の変換処理を行わず、そのまま出力するように設定される。
乗算機能回路153は、各画素PIXの特性変化に関連する検出データに基づいて取得された電流増幅率βの補正データΔβ、又は、各画素PIXについて検出された輝度データLvに基づく発光電流効率ηの補正成分Δηを含む上記電流増幅率βの補正データΔβηと、各画素PIXの駆動トランジスタに付加される寄生容量に基づいて定義される発光電圧Velの変動を補正するためのパラメータKとを、画像データに乗算する。
乗算機能回路157aは、各画素PIXの特性変化に関連する検出データに、各画素PIXの有機EL素子OELにおける発光電圧Velの変動を補正するためのパラメータKを乗算する。また、乗算機能回路157bは、各画素PIXの特性変化に関連する検出データに基づいて取得された、駆動トランジスタのしきい値電圧Vthの補償電圧成分(オフセット電圧)に、各画素PIXにおけるパラメータKを乗算する。
加算機能回路154は、上記乗算機能回路153において、補正データΔβ、又は、Δβηが乗算された画像データに、上記乗算機能回路157a、157bにおいて、パラメータKが乗算された、各画素PIXの特性変化に関連する検出データ及びしきい値電圧Vthの補償電圧成分(オフセット電圧)を加算して補正する。そして、この補正した画像データを補正画像データとしてデータドライバ140に供給する。
補正データ取得機能回路156は、各画素PIXの特性変化に関連する検出データ、及び、各画素PIXについて検出された輝度データに基づいて、電流増幅率β、発光電流効率η及びしきい値電圧Vthの補正データを取得する。ここで、各画素PIXの輝度データは、例えば表示パネル110を所定の輝度階調の画像データに基づいて発光動作させたときの各画素PIXの発光輝度が輝度計やCCDカメラ(輝度測定回路)160を用いて測定される。なお、輝度データの具体的な測定方法については後述する。
メモリ155は、上述したデータドライバ140から送出された各画素PIXの検出データを、各画素PIXに対応して記憶し、上記加算機能回路154における加算処理の際、及び、補正データ取得機能回路156における補正データ取得処理の際に、検出データを読み出して出力する。また、メモリ155は、補正データ取得機能回路156において取得された補正データを、各画素PIXに対応して記憶し、上記乗算機能回路153における乗算処理の際、及び、加算機能回路154における加算処理の際に、補正データを読み出して出力する。
Kパラメータ設定回路158は、各画素PIXに設けられる駆動トランジスタに付加される寄生容量(容量成分)に起因する発光電圧の変動を補正するためのパラメータKについて、コントローラ150の動作状態に応じて所定の定数を設定する。Kパラメータ設定回路158は、後述するオートゼロ法を適用した特性パラメータ取得動作時には、パラメータKを1.0に設定する。これにより、乗算機能回路153及び加算機能回路154において、実質的にパラメータKによる補正を加味しない状態で、画像データ(又はデジタルデータ)に対して乗算補正及び加算補正を実行する。また、Kパラメータ設定回路158は、画像データに基づく画像情報の表示動作時には、パラメータKを例えば1.1に設定する。これにより、乗算機能回路153及び加算機能回路154において、画像データ(又はデジタルデータ)に対して、上記寄生容量の影響を加味した乗算補正及び加算補正を実行する。ここで、Kパラメータ設定回路158により設定されるパラメータKの値は、表示パネル110や各画素PIXの設計段階で、駆動トランジスタに付加される寄生容量に基づいて、予め算出しておくことができ、コントローラ150の動作状態に応じて適宜切換設定される。なお、パラメータKの算出方法については後述する。
なお、図5に示したコントローラ150において、補正データ取得機能回路156はコントローラ150の外部に設けられた演算装置であってもよい。また、図5に示したコントローラ150において、メモリ155は各画素PIXに関連付けて、検出データ及び補正データが記憶されているものであれば、別個のメモリであってもよい。また、これらのメモリ155は、コントローラ150の外部に設けられた記憶装置であってもよい。また、コントローラ150に供給される画像データは、例えば映像信号から輝度階調信号成分を抽出し、表示パネル110の1行分ごとに、該輝度階調信号成分をデジタル信号からなるシリアルデータとして形成されたものである。
(画素)
次に、本実施形態に係る表示パネルに配列される画素の構成について具体的に説明する。
図6は、本実施形態に係る表示パネルに適用される画素(発光駆動回路及び発光素子)の一実施形態を示す回路構成図である。
本実施形態に係る表示パネル110に適用される画素PIXは、図6に示すように、選択ドライバ120に接続された選択ラインLsとデータドライバ140に接続されたデータラインLdとの各交点近傍に配置されている。各画素PIXは、電流駆動型の発光素子である有機EL素子OELと、該有機EL素子OELを発光駆動するための電流を生成する発光駆動回路DCと、を備えている。
図6に示す発光駆動回路DCは、概略、トランジスタTr11〜Tr13と、キャパシタ(ストレージ容量)Csと、を備えた回路構成を有している。トランジスタ(第2のトランジスタ)Tr11は、ゲート端子が接点N14を介して選択ラインLsに接続され、また、ドレイン端子が接点N13を介して電源ラインLaに接続され、また、ソース端子が接点N11に接続されている。トランジスタTr12は、ゲート端子が接点N14を介して選択ラインLsに接続され、また、ソース端子がデータラインLdに接続され、また、ドレイン端子が接点N12に接続されている。トランジスタ(駆動制御素子、第1のトランジスタ)Tr13は、ゲート端子が接点N11に接続され、ドレイン端子が接点N13を介して電源ラインLaに接続され、ソース端子が接点N12に接続されている。また、キャパシタ(容量素子)Csは、トランジスタTr13のゲート端子(接点N11)及びソース端子(接点N12)間に接続されている。キャパシタCsは、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間に形成される寄生容量であってもよいし、該寄生容量に加えて接点N11及び接点N12間に別個の容量素子を並列に接続したものであってもよい。
また、有機EL素子OELは、アノード(アノード電極)が上記発光駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード(カソード電極)が共通電極Ecに接続されている。共通電極Ecは、図示を省略した定電圧源に接続され、所定の電圧ELVSS(例えば接地電位GND)が印加されている。なお、図6に示す画素PIXにおいては、キャパシタCs以外に、有機EL素子OELに画素容量Celが存在し、データラインLdに配線寄生容量Cpが存在している。
ここで、本実施形態に係る画素PIXにおいて、上述した電源ドライバ130から電源ラインLaに印加される電源電圧Vsa(ELVDD、DVSS)と、共通電極Ecに印加される電圧ELVSSと、アナログ電源147からデータドライバ140に供給される電源電圧VEEとの関係は、例えば、次のような条件を満たすように設定されている。
なお、図6に示した画素PIXにおいて、トランジスタTr11〜Tr13については、例えば同一のチャネル型を有する薄膜トランジスタ(TFT)を適用することができる。トランジスタTr11〜Tr13は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタであってもよいし、ポリシリコン薄膜トランジスタであってもよい。
特に、図6に示すように、トランジスタTr11〜Tr13としてnチャネル型の薄膜トランジスタを適用し、かつ、トランジスタTr11〜Tr13としてアモルファスシリコン薄膜トランジスタを適用した場合には、すでに確立されたアモルファスシリコン製造技術を適用して、多結晶型や単結晶型のシリコン薄膜トランジスタに比較して、簡易な製造プロセスで動作特性(電子移動度等)が均一で安定したトランジスタを実現することができる。
また、上述した画素PIXにおいては、発光駆動回路DCとして3個のトランジスタTr11〜Tr13を備え、また、発光素子として有機EL素子OELを適用した回路構成を示した。本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、3個以上のトランジスタを備えた他の回路構成を有するものであってもよい。また、発光駆動回路DCにより発光駆動される発光素子は、電流駆動型の発光素子であればよく、例えば発光ダイオード等の他の発光素子であってもよい。
(表示装置の駆動制御方法)
次に、本実施形態に係る表示装置における駆動制御方法について説明する。
本実施形態に係る表示装置100の駆動制御動作は、大別して、特性パラメータ取得動作と表示動作とからなる。
特性パラメータ取得動作においては、表示パネル110に配列された各画素PIXにおける発光特性の変動を補償するためのパラメータを取得する。特性パラメータ取得動作は、より具体的には、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタ(駆動トランジスタ)Tr13のしきい値電圧Vthの変動を補正するためのパラメータと、各画素PIXにおける電流増幅率βのばらつきを補正するためのパラメータと、各画素PIXにおける有機EL素子OELの発光電流効率ηのばらつきを補正するためのパラメータと、を取得する動作を実行する。さらに、本実施形態においては、この特性パラメータ取得動作に加え、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタ(駆動トランジスタ)Tr13に対する寄生容量の影響を補正するためのパラメータを、表示パネル110や各画素PIXの発光駆動回路DCの各種設計データに基づいて予め算出する。
表示動作においては、上述した特性パラメータ取得動作により画素PIXごとに取得した補正パラメータに基づいて、デジタルデータからなる画像データを補正した補正画像データを生成し、該補正画像データに対応する階調電圧Vdataを生成して各画素PIXに書き込む。これにより、各画素PIXにおける発光特性(トランジスタTr13のしきい値電圧Vth、電流増幅率β、有機EL素子OELの発光電流効率η)の変動やばらつき、トランジスタTr13に対する寄生容量の影響を補償した、画像データに応じた本来の輝度階調で各画素PIX(有機EL素子OEL)が発光する。
以下、各動作について具体的に説明する。
(特性パラメータ取得動作)
ここでは、最初に本実施形態に係る特性パラメータ取得動作において適用される特有の手法について説明したのち、当該手法を用いて各画素PIXのしきい値電圧Vth及び電流増幅率βを補償するための特性パラメータを取得する動作を説明する。次いで、各画素PIXにおける寄生容量の影響を補償するための特性パラメータの算出方法について説明し、その後、発光電流効率ηを補償するための特性パラメータを取得する動作について説明する。
まず、図6に示した発光駆動回路DCを有する画素PIXにおいて、データドライバ140からデータラインLdを介して画像データを書き込む(画像データに対応した階調電圧Vdataを印加する)場合の、発光駆動回路DCの電圧−電流(V−I)特性について説明する。
図7は、本実施形態に係る発光駆動回路を適用した画素における画像データの書込時の動作状態図であり、図8は、本実施形態に係る発光駆動回路を適用した画素における書込動作時の電圧−電流特性を示す図である。
本実施形態に係る画素PIXへの画像データの書込動作においては、図7に示すように、選択ドライバ120から選択ラインLsを介して選択レベル(ハイレベル;Vgh)の選択信号Sselを印加することにより、画素PIXが選択状態に設定される。このとき、発光駆動回路DCのトランジスタTr11、Tr12がオン動作することにより、トランジスタTr13は、ゲート・ドレイン端子間が短絡してダイオード接続状態に設定される。また、この選択状態においては、電源ドライバ130から電源ラインLaを介して画素PIXに非発光レベルの電源電圧Vsa(=DVSS)を印加する。
そして、データドライバ140からデータラインLdに対して画像データに応じた電圧値の階調電圧Vdataを印加する。ここで、階調電圧Vdataは、電源ドライバ130から印加される電源電圧DVSSよりも低い電圧値に設定されている。したがって、電源電圧DVSSが0V(接地電位GND)に設定されている場合には、階調電圧Vdataは負の電圧値に設定される。
これにより、図7に示すように、電源ドライバ130から電源ラインLa、画素PIX(発光駆動回路DC)のトランジスタTr13、Tr12を介して、データラインLd方向に上記階調電圧Vdataに応じたドレイン電流Idが流れる。ここで、有機EL素子OELのカソード(カソード電極)に印加される電圧ELVSSと上記電源電圧DVSSは、上述した(1)の条件に示したように、同一の電圧値に設定され、ともに0V(接地電位GND)であるので、有機EL素子OELには逆バイアスが印加されることになり、発光動作は行われない。
この場合の発光駆動回路DCにおける回路特性について検証する。発光駆動回路DCにおいて、駆動トランジスタであるトランジスタTr13のしきい値電圧Vthの変動が生じておらず、かつ、発光駆動回路DCにおける電流増幅率βにばらつきがない初期状態の、トランジスタTr13のしきい値電圧をVth0とし、電流増幅率をβとしたとき、図7に示したドレイン電流Idの電流値は、次式(2)で表すことができる。
Id=β(V0−Vdata−Vth0)2
・・・(2)
ここで、発光駆動回路DCにおける設計値又は標準値(Typical)の電流増幅率β、及び、トランジスタTr13の初期しきい値電圧Vth0は、いずれも定数である。また、V0は電源ドライバ130から印加される非発光レベルの電源電圧Vsa(=DVSS)であって、電圧(V0−Vdata)は、駆動トランジスタTr13及びTr12の電流路が直列接続された回路構成に印加される電位差に相当する。このときの発光駆動回路DCに印加される電圧(V0−Vdata)の値と、発光駆動回路DCに流れるドレイン電流Idの電流値との関係(V−I特性)は、図8中に、特性線SP1として表される。
そして、経時変化によりトランジスタTr13の素子特性に変動(しきい値電圧シフト;変動量をΔVthとする)が生じた後のしきい値電圧をVth(=Vth0+ΔVth)としたとき、発光駆動回路DCの回路特性は、次式(3)のように変化する。ここで、Vthは定数である。このときの発光駆動回路DCの電圧−電流(V−I)特性は、図8中に、特性線SP2として表される。
Id=β(V0−Vdata−Vth)2 ・・・(3)
また、上式(2)に示した初期状態において、電流増幅率βにばらつきが生じた場合の電流増幅率をβ′としたとき、発光駆動回路DCの回路特性は、次式(4)で表すことができる。
Id=β′(V0−Vdata−Vth0)2
・・・(4)
ここで、β′は定数である。このときの発光駆動回路DCの電圧−電流(V−I)特性は、図8中に、特性線SP3として表される。なお、図8中に示した特性線SP3は、上式(4)における電流増幅率β′が上式(2)に示した電流増幅率βよりも小さい場合の発光駆動回路DCの電圧−電流(V−I)特性を示している。
上記式(2)、(4)において、設計値又は標準値(Typical)の電流増幅率をβtypとした場合、電流増幅率β′がその値になるように補正するためのパラメータ(補正データ)をΔβとする。このとき、電流増幅率β′と補正データΔβとの乗算値が設計値の電流増幅率βtypとなるように(すなわち、β′×Δβ→βtypになるように)、それぞれの発光駆動回路DCに対して補正データΔβが与えられる。
そして、本実施形態においては、上述した発光駆動回路DCの電圧−電流特性(式(2)〜(4)及び図8)に基づいて、以下のような特有の手法でトランジスタTr13のしきい値電圧Vth、及び、電流増幅率β′を補正するための特性パラメータを取得する。なお、本明細書においては以下に示す手法を、便宜的に「オートゼロ法」と呼称する。
本実施形態における特性パラメータ取得動作に適用される手法(オートゼロ法)は、図6に示した発光駆動回路DCを有する画素PIXにおいて、まず、選択状態で上述したデータドライバ140のデータドライバ機能を用いて、データラインLdに所定の検出用電圧Vdacを印加する。その後、データラインLdをハイインピーダンス(HZ)状態にして、データラインLdの電位を自然緩和させる。そして、この自然緩和を一定時間(緩和時間t)行った後のデータラインLdの電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))を、データドライバ140の電圧検出機能を用いて取り込み、デジタルデータからなる検出データnmeas(t)に変換する。ここで、本実施形態においては、この緩和時間tを異なる時間(タイミング;t0、t1、t2、t3)に設定して、データライン検出電圧Vmeas(t)の取り込み及び検出データnmeas(t)への変換を複数回実行する。
図9は、本実施形態に係る特性パラメータ取得動作に適用される手法(オートゼロ法)におけるデータライン電圧の変化を示す図(過渡曲線)である。
オートゼロ法を用いた特性パラメータ取得動作は、具体的には、まず、画素PIXを選択状態に設定した状態で、発光駆動回路DCのトランジスタTr13のゲート・ソース端子間(接点N11とN12間)に、当該トランジスタTr13のしきい値電圧を超える電圧が印加されるように、データドライバ140からデータラインLdに対して検出用電圧Vdacを印加する。
このとき、画素PIXへの書込動作においては、電源ドライバ130から電源ラインLaに対して、非発光レベルの電源電圧DVSS(=V0;接地電位GND)が印加されるので、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間には、(V0−Vdac)の電位差が印加される。したがって、検出用電圧Vdacは、V0−Vdac>Vthの条件を満たす電圧に設定される。加えて、検出用電圧Vdacは、電源電圧DVSSよりも低い電圧値であって、かつ、有機EL素子OELのカソードに接続される共通電極Ecに印加される電源電圧ELVSS(接地電位GND)に対して負極性を有する電圧値に設定される。
これにより、電源ドライバ130から電源ラインLa、トランジスタTr13、Tr12を介して、データラインLd方向に検出用電圧Vdacに応じたドレイン電流Idが流れる。このとき、トランジスタTr13のゲート・ソース間(接点N11とN12間)に接続されたキャパシタCsに上記検出用電圧Vdacに対応した電圧が充電される。
次いで、データラインLdのデータ入力側(データドライバ140側)をハイインピーダンス(HZ)状態に設定する。ここで、データラインLdをハイインピーダンス状態に設定した直後においては、キャパシタCsに充電された電圧は検出用電圧Vdacに応じた電圧に保持される。そのため、トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧VgsはキャパシタCsに充電された電圧に保持される。
これにより、データラインLdがハイインピーダンス状態に設定された直後においては、トランジスタTr13はオン状態を維持して、トランジスタTr13のドレイン・ソース間にドレイン電流Idが流れる。ここで、トランジスタTr13のソース端子(接点N12)の電位は、時間の経過に応じてドレイン端子側の電位に近づくように徐々に上昇して、トランジスタTr13のドレイン・ソース間に流れるドレイン電流Idの電流値が減少していく。
これに伴って、キャパシタCsに蓄積された電荷の一部が放電されていくことにより、キャパシタCsの両端間電圧(トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs)が徐々に低下する。これにより、データラインLdの電圧Vdは、図9に示すように、時間の経過とともに検出用電圧Vdacから徐々に上昇して、トランジスタTr13のドレイン端子側の電圧(電源ラインLaの電源電圧DVSS(=V0))からトランジスタTr13のしきい値電圧Vth分を差し引いた電圧(V0−Vth)に収束するように徐々に上昇する(自然緩和)。
そして、このような自然緩和が十分に進行すると、最終的にトランジスタTr13のドレイン・ソース間にドレイン電流Idが流れなくなり、キャパシタCsに蓄積された電荷の放電が停止する。このときのトランジスタTr13のゲート電圧(ゲート・ソース間電圧Vgs)がトランジスタTr13のしきい値電圧Vthになる。
ここで、発光駆動回路DCのトランジスタTr13のドレイン・ソース間にドレイン電流Idが流れない状態では、トランジスタTr12のドレイン・ソース間電圧はほぼ0Vになるので、上記自然緩和の終了時にはデータライン電圧VdはトランジスタTr13のしきい値電圧Vthにほぼ等しくなる。
なお、図9に示した過渡曲線において、データライン電圧Vdは時間(緩和時間t)の経過とともに、トランジスタTr13のしきい値電圧Vth(=|V0−Vth|;V0=0V)に収束していく。ここで、データライン電圧Vdは、上記しきい値電圧Vthに限りなく漸近していくものの、理論的には緩和時間tを十分長く設定したとしても、しきい値電圧Vthに完全に等しくはならない。
このような過渡曲線(自然緩和によるデータライン電圧Vdの挙動)は、次の(11)式で表すことができる。
上記(11)式において、Cは図6に示した画素PIXの回路構成におけるデータラインLdに付加される容量成分の総和であり、C=Cel+Cs+Cp(Cel;画素容量、Cs;キャパシタ容量、Cp;配線寄生容量)で表される。なお、検出用電圧Vdacは次の(12)式の条件を満たす電圧値と定義する。
上記(12)式において、Vth_maxはトランジスタTr13のしきい値電圧Vthの補償限界値を表す。ここで、ndはデータドライバ140のDAC/ADC回路144において、DAC42に入力される初期のデジタルデータ(検出用電圧Vdacを規定するためのデジタルデータ)と定義し、当該デジタルデータndが10ビットの場合、dは1〜1023のうち上記(12)式の条件を満たす任意の値を選択する。また、ΔVはデジタルデータのビット幅(1ビットに対応する電圧幅)と定義し、上記デジタルデータndが10ビットの場合、次の(13)式のように表される。
そして、上記(11)式において、データライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))、該データライン電圧Vdの収束値V0−Vth、及び、電流増幅率βと容量成分の総和Cからなるパラメータβ/Cを、それぞれ次の(14)、(15)式のように定義する。ここで、緩和時間tにおけるデータライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))に対するADC43のデジタル出力(検出データ)をnmeas(t)と定義し、しきい値電圧Vthのデジタルデータをnthと定義する。
そして、(14)、(15)式に示した定義に基づいて、上記(11)式を、データドライバ140のDAC/ADC回路144において、DAC42に入力される実際のデジタルデータ(画像データ)ndと、ADC43によりアナログ−デジタル変換されて実際に出力されるデジタルデータ(検出データ)nmeas(t)との関係に置き換えると、次の(16)式のように表すことができる。
上記(15)、(16)式において、ξはアナログ値におけるパラメータβ/Cのデジタル表現であり、ξ・tは無次元になる。ここで、トランジスタTr13のしきい値電圧Vthに変動(Vthシフト)が生じていない初期のしきい値電圧Vth0を1V程度とする。このとき、ξ・t・(nd−nth)≫1の条件を満たすように、異なる2つの緩和時間t=t1、t2を設定することにより、トランジスタTr13のしきい値電圧変動に応じた補償電圧成分(オフセット電圧)Voffset(t0)は、次の(17)式のように表すことができる。
上記(17)式において、n1、n2は、各々(16)式において緩和時間tをt1、t2に設定した場合に、ADC43から出力されるデジタルデータ(検出データ)nmeas(t1)、nmeas(t2)である。そして、上記(16)、(17)式に基づいて、トランジスタTr13のしきい値電圧Vthのデジタルデータnthは、緩和時間t=t0においてADC43から出力されるデジタルデータnmeas(t0)を用いて、次の(18)式のように表すことできる。また、オフセット電圧Voffsetのデジタルデータdigital Voffsetは、次の(19)式のように表すことができる。(18)、(19)式において、<ξ>は、パラメータβ/Cのデジタル値であるξの全画素平均値である。ここで、<ξ>は、小数点以下を考慮しないこととする。
したがって、上記(18)式によれば、しきい値電圧Vthを補正するためのデジタルデータ(補正データ)であるnthを全画素分求めることができる。
また、電流増幅率βのばらつきは、図9に示した過渡曲線において、緩和時間tをt3に設定した場合にADC43から出力されるデジタルデータ(検出データ)nmeas(t3)に基づいて、上記(16)式をξについて解くことにより、次の(20)式のように表すことができる。ここで、t3は上記(17)、(18)式において用いられるt0、t1、t2に比較して十分短い時間に設定される。
上記(20)式において、ξについて着目して、各データラインLdの容量成分の総和Cが同等になるように表示パネル(発光パネル)を設計し、さらに、上記(13)式に示したように、デジタルデータのビット幅ΔVを予め決定しておくことにより、ξを定義する(15)式のΔV及びCは定数となる。
そして、ξ及びβの所望の設定値を、それぞれξtyp及びβtypとすると、表示パネル110内の各画素PIXの発光駆動回路DCのξのばらつきを補正するための乗算補正値Δξ、すなわち、電流増幅率βのばらつきを補正するためのデジタルデータ(補正データ)Δβは、ばらつきの2乗項を無視すれば、次の(21)式のように定義することができる。
したがって、各画素PIXにおけるトランジスタTr13のしきい値電圧Vthの変動を補正するための補正データnth(第1の特性パラメータ)、及び、電流増幅率βのばらつきを補正するための補正データΔβ(第2の特性パラメータ)は、上記(18)、(21)式に基づいて、上述した一連のオートゼロ法における緩和時間tを変えてデータライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))を複数回検出することによって求めることができる。なお、上述したような補正データnth、Δβの取得処理は、図5に示したようなコントローラ150の補正データ取得機能回路156において実行される。
次に、図6に示した発光駆動回路DCを有する画素PIXにおいて、上述したような画像データを書き込んだ後、有機EL素子OELを発光させる場合における、有機EL素子OELのアノード・カソード間電圧(有機EL素子OELの両端電圧;発光電圧Vel)と、発光駆動回路DCから有機EL素子OELに流れる電流(発光駆動電流Iel)との関係について説明する。
図10は、本実施形態に係る発光駆動回路を適用した画素における有機EL素子の発光時の動作状態図であり、図11は、本実施形態に係る画素における発光動作時の有機EL素子の発光電圧と発光駆動電流との関係を示す特性図である。
本実施形態に係る画素PIXの有機EL素子OELの発光動作においては、図10に示すように、選択ドライバ120から選択ラインLsを介して非選択レベル(ローレベル;Vgl)の選択信号Sselを印加することにより、画素PIXが非選択状態に設定される。このとき、発光駆動回路DCのトランジスタTr11、Tr12がオフ動作することにより、トランジスタTr13は、ゲート・ドレイン端子間が電気的に遮断されるとともに、ソース端子(接点N12)がデータラインLdから電気的に遮断される。また、この非選択状態においては、電源ドライバ130から電源ラインLaを介して画素PIXに発光レベルの電源電圧Vsa(=ELVDD)を印加する。
これにより、上述した画像データ(階調電圧Vdata)の書き込みよりキャパシタCsに充電された電圧(トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs)が保持され、かつ、トランジスタTr13のドレイン端子(接点N13)にソース端子(接点N12)よりも高電位の電源電圧ELVDDが印加される。したがって、図10に示すように、電源ドライバ130から電源ラインLa、トランジスタTr13を介して、有機EL素子OELにトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgsに応じた発光駆動電流Ielが流れる。
この場合の画素PIX(発光駆動回路DC及び有機EL素子OEL)における回路特性について検証する。上述したように、図7に示した画像データ(階調電圧)の書込動作時においては、発光駆動回路DCの接点N11−N12間電圧(すなわち、トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs、キャパシタCsの両端電圧)に基づいて、トランジスタTr13のドレイン・ソース間を流れるドレイン電流(すなわち、書込電流)Idの電流値が決定される。この接点N11−N12間電圧は、書込動作終了後の発光動作時において、キャパシタCsに保持されるのが理想的である。
しかしながら、本実施形態に係る発光駆動回路DCが適用された画素PIXにおいては、書込動作から発光動作に移行する際に、選択ラインLsに印加される選択信号Sselや電源ラインLaに印加される電源電圧Vsaが電位変化(Vgh→Vgl、DVSS→ELVDD)するように駆動制御される。そのため、接点N11−N12間電圧が、発光駆動回路DC内に存在する寄生容量を介して、この電位変化の影響を受ける場合がある。また、本実施形態に係る画素PIX(発光駆動回路DC)においては、書込動作から発光動作に移行する際に、トランジスタTr12がオフ動作して接点N12(トランジスタTr13のソース端子)への階調電圧Vdataの印加が遮断され、さらに、発光動作時には発光駆動電流Ielが接点N12を介して有機EL素子OELに流れる。そのため、接点N12の電位が変動すると、接点N11−N12間電圧は、この影響も受けることになる。
このようなトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs(接点N11−N12間電圧)の変動は、トランジスタTr13のドレイン・ソース間を介して有機EL素子OELに流れる発光駆動電流Ielを変動させることを意味している。換言すれば、発光駆動電流Ielの電流値は、接点N12の電位に関連する、有機EL素子OELの両端電圧(発光電圧Vel)の値に影響される場合があることを意味している。
なお、発光駆動回路DCにおいて、発光動作時に接点N12の電位に変動が生じた場合であっても、トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs(接点N11−N12間電圧)が必ずしも変動するとは限らない。上述したようなトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgsの変動は、接点N11(ゲート端子)に付加される寄生容量の影響を受けた場合に限り、有機EL素子OELの両端電圧Velの影響を受けるものである。本実施形態に係る発光駆動回路DCは、原理的に、発光動作時にトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs(接点N11−N12間電圧)が変化する駆動制御方法を採用するものではないことは付記しておく。
ここで、上述したような状況により、有機EL素子OELに流れる発光駆動電流Ielが有機EL素子OELの発光電圧Velに依存する場合における補正方法について説明する。まず、トランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgsを変動させる寄生容量の影響を表すパラメータ(各画素に固有のパラメータ)Kを次の(22)式のように定義する。
上記(22)式において、CN11-N12はトランジスタTr13のゲート・ソース間に接続されたキャパシタCsに相当し、CN11-N13はトランジスタTr13のゲート・ドレイン間に接続されるトランジスタTr11のゲート容量に相当し、CN11-N14はトランジスタTr13のゲートに接続されるトランジスタTr11のゲート・ソース間容量に相当する。
また、図10に示した発光動作状態にある画素PIXにおける有機EL素子の発光電圧Velと発光駆動電流Ielが、図11に示すような関係を有しているものとする。図11において、Vstは、発光開始電圧であり、Vel_max及びIel_maxはそれぞれ、画素PIXの最大輝度発光時の発光電圧及び発光駆動電流である。図11に示すように、発光駆動電流Ielの電流値は、発光電圧Velの電圧値が発光開始電圧Vstを超えると、発光電圧Velの上昇に伴って、略線形的に増加する特性を示す。
そして、本実施形態においては、上述したような定義((22)式)、及び、発光電圧Velと発光駆動電流Ielの関係(図11)を有するとき、図5に示したコントローラ150の構成において、電圧振幅設定機能回路152は、参照テーブル(LUT)151を参照することにより、外部から入力されるデジタルデータからなる画像データndに対して、パラメータKを加味したデータ変換を行う。
図12は、本実施形態に係るコントローラに適用される参照テーブルにおけるデータ変換処理を説明するための図である。
本実施形態に適用される参照テーブルは、図12に示すように、入力されるデジタルデータ(画像データ)ndに対する変換データ(出力データ)ndoutが線形性を有するように設定されている。ここで、図12において、SD1は寄生容量の影響によるトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgs(すなわち有機EL素子OELの発光電圧Vel)の変動に対する補正を行わない場合の変換特性を示す特性線である。また、SD2は寄生容量の影響による有機EL素子OELの発光電圧Velの変動分に対応する変換データの補正成分を示す特性線である。また、SD3は寄生容量の影響による有機EL素子OELの発光電圧Velの変動に対する補正を行った場合の変換特性を示す特性線である。ここで、SD3はSD1に示す変換データに、SD2に示す補正成分を加味したデータ値を有するように補正される。具体的には、入力されたデジタルデータndは、次の(23)式に示すようなパラメータKを補正データとして加味したデータ変換処理が施されて、変換データndoutとして出力される。
また、本実施形態においては、上述した電圧振幅設定機能回路152による画像データndに対する、パラメータKを加味したデータ変換処理に加え、図5に示したコントローラ150の乗算機能回路153及び加算機能回路154において、パラメータKを加味した補正処理を行う。ここで、これらのデータ変換処理及び補正処理に用いられるパラメータKは、上述したオートゼロ法を適用した特性パラメータ(補正データnth、Δβ)の取得時には、K=1に設定される。また、後述する発光電流効率ηを補償するための特性パラメータ取得動作時、及び、一連の特性パラメータ取得動作後に実行される画像データに応じた画像情報の表示動作時には、パラメータKは、例えばK≒1.1に設定される。
次に、上述した特性パラメータ取得動作により取得した補正データnth、Δβ、及び、発光動作時における寄生容量の影響を補償するパラメータKを用いて、各画素PIXの有機EL素子OELにおける発光電流効率ηを補償するための特性パラメータを取得する動作を実行する。
まず、図5に示したコントローラ150において、外部から供給される特定の画像データ(ここでは、便宜的に「輝度測定用のデジタルデータ」と記す;第1の画像データ)ndに対して、上記(18)、(21)式により算出された補正データnth、Δβ、及び、(22)式により定義付けられたパラメータKに基づいて、以下に示す一連の演算処理を施して輝度測定用の画像データnd_ brtを生成し、データドライバ140に入力して表示パネル110(画素PIX)を電圧駆動する。
輝度測定用の画像データnd_
brtの生成方法は、具体的には、輝度測定用のデジタルデータndに対して、画素PIXの発光時における寄生容量成分の影響を加味して、電圧振幅の設定、電流増幅率βのばらつき補正(Δβ乗算補正)、及び、しきい値電圧Vthの変動補正(nth加算補正)を実行する。
まず、コントローラ150の電圧振幅設定機能回路152において、図12に示したような変換特性を有する参照テーブル151を参照して、デジタルデータndに対して、上記(23)式に示したようなデータ変換処理を行い、変換データndoutを生成する。次いで、乗算機能回路153において、電圧振幅が設定されたデジタルデータ(変換データ)ndoutに対して、寄生容量成分の影響を補正するためのパラメータK、及び、電流増幅率βのばらつきを補正するための補正データΔβを乗算する(K×ndout×Δβ)。次いで、加算機能回路154において、乗算処理されたデジタルデータ(K×ndout×Δβ)に対して、寄生容量成分の影響を補正するためのパラメータKが乗算された、しきい値電圧Vthの変動を補正するための補正データK×nth(=K×nmeas(t)−K×Voffset)を加算する(K×(ndout×Δβ+nth))。
なお、この輝度測定用の画像データnd_ brtや、後述する表示動作時の補正画像データnd_ compの生成方法においては、電圧振幅設定機能回路152においてパラメータKに基づいて、画素PIX内の寄生容量成分の影響を加味して、有機EL素子OELの両端電圧である発光電圧Velを補正するように、デジタルデータ(画像データ)ndをデータ変換した後に、乗算機能回路153において、電流増幅率βのばらつき補正(Δβ乗算補正)を行っている。この場合、Vel補正に用いられるパラメータKそのものがΔβ乗算補正を受けている。しかしながら、図12に示したデータ変換処理の説明図において、画素PIX内の寄生容量成分の影響を加味しない場合(Vel補正を行わない場合の変換特性;特性線SD1)におけるβ補正後のデジタルデータと、寄生容量成分の影響を加味した場合(Vel補正を行った場合の変換特性;特性線SD3)におけるβ補正後のデジタルデータを比較すると、Vel補正によるβ補正への影響は実質的に無視することができる。
そして、これらの補正処理が施されたデジタルデータ(K×(ndout×Δβ+nth))を、輝度測定用の画像データnd_brtとして、データドライバ140のデータレジスタ回路142に供給する。データドライバ140は、データレジスタ回路142に取り込まれた輝度測定用の画像データnd_brtを、DAC/ADC回路144のDAC42により、アナログ信号電圧に変換する。ここで、図4に示したように、DAC42とADC43の入出力特性(変換特性)は同一になるように設定されているので、DAC42により生成される輝度測定用の階調電圧(第2の電圧)Vbrtは、上記(14)式に示した定義に基づいて、次の(24)式のように定義される。この階調電圧Vbrtは、データラインLdを介して画素PIXに供給される。
Vbrt=V1−ΔV(nd_brt−1)) ・・・(24)
このように、特定の画像データに対する一連の補正処理を実行して輝度測定用の階調電圧Vbrtを生成し、表示パネル110に書き込むことにより、各画素PIXの発光駆動回路DCから有機EL素子OELに流れる発光駆動電流Ielの電流値を、電流増幅率βのばらつきや駆動トランジスタのしきい値電圧Vthの変動の影響、さらには、発光駆動回路DCの駆動時の寄生容量成分の影響を受けることなく、一定に設定することができる。そして、このような状態で、表示パネル110を発光動作させて各画素PIXの発光輝度Lv(cd/m2)を測定する。
ここで、画素PIXごとの輝度測定方法については、例えば次のような手法を適用することができる。すなわち、画素PIXごとの輝度測定方法の一例は、まず、表示パネル110に配列された各画素PIXを、上記の輝度測定用の階調電圧Vbrtに応じた輝度階調で一斉に発光動作させる。次いで、図5に示したように、表示パネル110の視野側に配置された輝度計やCCDカメラ160により、表示パネル110を撮像する。ここで、輝度計やCCDカメラ160は、表示パネル110に配列された各画素PIXの大きさよりも解像度が高いものを使用する。そして、取得した画像信号から各画素PIXに対応する領域ごとに、輝度計やCCDカメラ160から出力される輝度データを関連付ける。各画素PIXごとの複数の輝度データのうち、高輝度側から所定数の輝度データを抽出して、その輝度値の平均値を算出することで、各画素PIXにおける発光輝度(輝度値)Lvを決定する。
ここで、有機EL素子OELの発光電流効率をηとした場合、η=(輝度)÷(電流密度)と表すことができるので、各画素PIXに流れる発光駆動電流の電流値が一定であれば、表示パネル110内の発光輝度Lvのばらつきは、すなわち発光電流効率ηのばらつきとみなすことができる。そして、発光輝度Lv及び発光電流効率ηの所望の設定値を、それぞれLvtyp及びηtypとすると、表示パネル110内の各画素PIXの発光輝度Lvのばらつきを補正するための乗算補正値ΔLv、すなわち、発光電流効率ηのばらつきを補正するためのデジタルデータ(補正データ;第3の特性パラメータ)Δηは、ばらつきの2乗項を無視すれば、次の(25)式のように定義することができる。したがって、上述したように各画素PIXについて測定された発光輝度Lvに基づいて、発光電流効率ηの補正データΔηを求めることができる。ここで、(25)式に示す発光輝度Lvのばらつきを補正するための補正データΔηの演算処理は、上記(21)式に示した電流増幅率βのばらつきを補正するための補正データΔβの演算処理と同一のシーケンスにより実行される。
そして、上記(21)、(25)式から得られる補正データΔβとΔηを乗算することにより、次の(26)式のように、電流増幅率βと発光電流効率ηの両方のばらつきを補正するための補正データ(第4の特性パラメータ)Δβηを定義する。
以上のようにして、(18)、(26)式により算出された補正データnth及びΔβη、並びに、(22)式により定義付けられたパラメータKが、取得又は生成される。これらの補正データnth、Δβη及びパラメータKは、後述する表示動作において、本実施形態に係る表示装置100の外部から入力される画像データndに対して、電圧振幅の設定((23)式のデータ変換)と、電流増幅率βのばらつき補正(Δβ乗算補正)と、発光電流効率ηのばらつき補正(Δη乗算補正)と、しきい値電圧Vthの変動補正(nth加算補正)と、画素PIX内の寄生容量成分による発光電圧Velの変動補正(K乗算補正)を施して補正画像データnd_compを生成する際に用いられる。これにより、データドライバ140から補正画像データnd_compに応じたアナログ電圧値の階調電圧VdataがデータラインLdを介して各画素PIXに供給されるので、各画素PIXの有機EL素子OELを、電流増幅率βや発光電流効率ηのばらつき、駆動トランジスタのしきい値電圧Vthや発光電圧Velの変動の影響を受けることなく、所望の輝度階調で発光動作することができ、良好かつ均一な発光状態を実現することができる。
次に、上述したオートゼロ法を適用した特性パラメータ取得動作について、本実施形態に係る装置構成と関連付けて説明する。なお、以下の説明において、上述した特性パラメータ取得動作と同等の動作についてはその説明を簡略化又は省略する。
まず、各画素PIXの駆動トランジスタにおけるしきい値電圧Vthの変動を補正するための補正データnthと、各画素PIXにおける電流増幅率βのばらつきを補正するための補正データΔβを取得する。
図13は、本実施形態に係る表示装置における特性パラメータ取得動作を示すタイミングチャート(その1)である。図14は、本実施形態に係る表示装置における検出用電圧印加動作を示す動作概念図であり、図15は、本実施形態に係る表示装置における自然緩和動作を示す動作概念図であり、図16は、本実施形態に係る表示装置におけるデータライン電圧検出動作を示す動作概念図であり、図17は、本実施形態に係る表示装置における検出データ送出動作を示す動作概念図である。ここで、図14〜図17おいては、データドライバ140の構成として、図示の都合上、シフトレジスタ回路141を省略して示す。また、図18は、本実施形態に係る表示装置における補正データ算出動作を示す機能ブロック図(その1)である。
本実施形態に係る特性パラメータ(補正データnth、Δβ)取得動作においては、図13に示すように、所定の特性パラメータ取得期間Tcrp内に、各行の画素PIXごとに、検出用電圧印加期間T101と、自然緩和期間T102と、データライン電圧検出期間T103と、検出データ送出期間T104と、を含むように設定されている。ここで、自然緩和期間T102は、上述した緩和時間tに対応し、図13においては、図示の都合上、緩和時間tを特定の時間に設定した場合について示した。しかしながら、上述したように、本実施形態においては、緩和時間tを異ならせて、データライン電圧Vd(データライン検出電圧Vmeas(t))を複数回検出するものである。したがって、実際には、自然緩和期間T102内の異なる緩和時間t(=t0、t1、t2、t3)ごとに、データライン電圧検出動作(データライン電圧検出期間T103)及び検出データ送出動作(検出データ送出期間T104)が繰り返し実行される。
まず、検出用電圧印加期間T101においては、図13、図14に示すように、特性パラメータ取得動作の対象となっている画素PIX(図では1行目の画素PIX)が選択状態に設定される。すなわち、当該画像PIXが接続された選択ラインLsに対して、選択ドライバ120から選択レベル(ハイレベル;Vgh)の選択信号Sselが印加されるとともに、電源ラインLaに対して、電源ドライバ130からローレベル(非発光レベル;DVSS=接地電位GND)の電源電圧Vsaが印加される。この選択状態において、コントローラ150から供給される切換制御信号S1に基づいて、データドライバ140の出力回路145に設けられたスイッチSW1がオン動作することにより、データラインLd(j)とDAC/ADC144のDAC42(j)が接続される。また、コントローラ150から供給される切換制御信号S2、S3に基づいて、出力回路145に設けられたスイッチSW2がオフ動作するとともに、スイッチSW4の接点Nbに接続されたスイッチSW3がオフ動作する。また、コントローラ150から供給される切換制御信号S4に基づいて、データラッチ回路143に設けられたスイッチSW4は接点Naに接続設定され、切換制御信号S5に基づいて、スイッチSW5は接点Naに接続設定される。
そして、データドライバ140の外部から、所定の電圧値の検出用電圧Vdacを生成するためのデジタルデータndがデータレジスタ回路142に順次取り込まれ、各列ごとにスイッチSW5を介してデータラッチ41(j)に保持される。その後、データラッチ41(j)に保持されたデジタルデータndはスイッチSW4を介してDAC/ADC回路144のDAC42(j)に入力されてアナログ変換され、検出用電圧Vdacとして各列のデータラインLd(j)に印加される。
ここで、検出用電圧Vdacは、上述したように、上記(12)式の条件を満たす電圧値に設定される。本実施形態においては、電源ドライバ130から印加される電源電圧DVSSが接地電位GNDに設定されていることから、検出用電圧Vdacは負の電圧値に設定される。
また、検出用電圧Vdacを生成するためデジタルデータndは、上述したコントローラ150において、外部から入力されるパラメータ取得用の特定のデジタルデータ(画像データ)に対して、電圧振幅設定機能回路152、乗算機能回路153及び加算機能回路154により、データ変換及び補正処理を施して生成される。この場合、参照テーブル151におけるデータ変換処理、及び、乗算機能回路153及び加算機能回路154における補正処理に用いられるパラメータKは、Kパラメータ設定回路158によりK=1.0に設定されている。したがって、参照テーブル151を参照して電圧振幅設定機能回路152により実行されるデータ変換処理は、上記(23)式により入力されたデジタルデータがそのまま出力されることから、実質的に電圧振幅設定機能回路152をスルー又は迂回した状態と同等になる。また、乗算機能回路153及び加算機能回路154における補正処理に用いられる補正データΔβ、nthは未だ取得されていないため、これらは初期値に設定されているか、あるいは、乗算機能回路153及び加算機能回路154は例えばスルー状態に設定されている。したがって、電圧振幅設定機能回路152から出力されたデジタルデータは、そのまま検出用電圧Vdac設定用のデジタルデータndとしてデータドライバ140に供給される。
これにより、画素PIXを構成する発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11及びTr12がオン動作して、ローレベルの電源電圧Vsa(=GND)がトランジスタTr11を介してトランジスタTr13のゲート端子及びキャパシタCsの一端側(接点N11)に印加される。また、データラインLd(j)に印加された上記検出用電圧Vdacが、トランジスタTr12を介してトランジスタTr13のソース端子及びキャパシタCsの他端側(接点N12)に印加される。
このように、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間(すなわち、キャパシタCsの両端)に、トランジスタTr13のしきい値電圧Vthよりも大きな電位差が印加されることにより、トランジスタTr13がオン動作して、この電位差(ゲート・ソース間電圧Vgs)に応じたドレイン電流Idが流れる。このとき、トランジスタTr13のドレイン端子の電位(接地電位GND)に対してソース端子の電位(検出用電圧Vdac)は低く設定されているので、ドレインIdは電源電圧ラインLaからトランジスタTr13、接点N12、トランジスタTr12及びデータラインLd(j)を介して、データドライバ140方向に流れる。また、これによりトランジスタのTr13のゲート・ソース間に接続されたキャパシタCsの両端には当該ドレイン電流Idに基づく電位差に対応する電圧が充電される。
このとき、有機EL素子OELのアノード(接点N12)には、カソード(共通電極Ec)に印加される電圧ELVSS(=GND)よりも低い電圧が印加されているので、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作しない。
次いで、上記検出用電圧印加期間T101終了後の自然緩和期間T102においては、図13、図15に示すように、画素PIXを選択状態に保持した状態で、コントローラ150から供給される切換制御信号S1に基づいて、データドライバ140のスイッチSW1をオフ動作させることにより、データラインLd(j)をデータドライバ140から切り離すとともに、DAC42(j)からの検出用電圧Vdacの出力を停止する。また、上述した検出用電圧印加期間T101と同様に、スイッチSW2、SW3はオフ動作し、スイッチSW4は接点Nbに接続設定され、スイッチSW5は接点Nbに接続設定される。
これにより、トランジスタTr11、Tr12はオン状態を保持するため、画素PIX(発光駆動回路DC)は、データラインLd(j)との電気的な接続状態は保持されるものの、当該データラインLd(j)への電圧の印加が遮断されるので、キャパシタCsの他端側(接点N12)はハイインピーダンス状態に設定される。
この自然緩和期間T102においては、上述した検出用電圧印加期間T101においてキャパシタCs(トランジスタTr13のゲート・ソース間)に充電された電圧によりトランジスタTr13はオン状態を保持することによりドレイン電流Idが流れ続ける。そして、トランジスタTr13のソース端子側(接点N12;キャパシタCsの他端側)の電位がトランジスタTr13のしきい値電圧Vthに近づくように徐々に上昇していく。これにより、図9に示したように、データラインLd(j)の電位もトランジスタTr13のしきい値電圧Vthに収束するように変化する。
なお、この自然緩和期間T102においても、有機EL素子OELのアノード(接点N12)の電位は、カソード(共通電極Ec)に印加される電圧ELVSS(=GND)よりも低い電圧が印加されるので、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作しない。
次いで、データライン電圧検出期間T103においては、上記自然緩和期間T102において所定の緩和時間tが経過した時点で、図13、図16に示すように、画素PIXを選択状態に保持した状態で、コントローラ150から供給される切換制御信号S2に基づいて、データドライバ140のスイッチSW2をオン動作させる。このとき、スイッチSW1、SW3はオフ動作し、スイッチSW4は接点Nbに接続設定され、スイッチSW5は接点Nbに接続設定される。
これにより、データラインLd(j)とDAC/ADC144のADC43(j)が接続されて、自然緩和期間T102において所定の緩和時間tが経過した時点のデータライン電圧Vdが、スイッチSW2及びバッファ45(j)を介して、ADC43(j)に取り込まれる。ここで、ADC43(j)に取り込まれた、このときのデータライン電圧Vdは、上記(11)式に示したデータライン検出電圧Vmeas(t)に相当する。
そして、ADC43(j)に取り込まれた、アナログ信号電圧からなるデータライン検出電圧Vmeas(t)は、上記(14)式に基づいて、ADC43(j)においてデジタルデータからなる検出データnmeas(t)に変換されて、スイッチSW5を介してデータラッチ41(j)に保持される。
次いで、検出データ送出期間T104においては、図13、図17に示すように、画素PIXを非選択状態に設定する。すなわち、選択ラインLsに対して、選択ドライバ120から非選択レベル(ローレベル;Vgl)の選択信号Sselが印加される。この非選択状態において、コントローラ150から供給される切換制御信号S4、S5に基づいて、データドライバ140のデータラッチ41(j)の入力段に設けられたスイッチSW5は接点Ncに接続設定され、データラッチ41(j)の出力段に設けられたスイッチSW4は接点Nbに接続設定される。また、切換制御信号S3に基づいて、スイッチSW3をオン動作させる。このとき、スイッチSW1、S2は切換制御信号S1、S2に基づいてオフ動作する。
これにより、相互に隣接する列のデータラッチ41(j)がスイッチSW4、SW5を介して直列に接続され、スイッチSW3を介して外部メモリ(コントローラ150に設けられたメモリ155)に接続される。そして、コントローラ150から供給されるデータラッチパルス信号LPに基づいて、各列のデータラッチ41(j+1)(図3参照)に保持された検出データnmeas(t)が順次隣接するデータラッチ41(j)に転送される。これにより、1行分の画素PIXの検出データnmeas(t)がシリアルデータとして出力され、図18に示すように、コントローラ150に設けられたメモリ155の所定の記憶領域に各画素PIXごとに記憶される。ここで、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr13のしきい値電圧Vthは、各画素PIXにおける駆動履歴(発光履歴)等により変動量が異なり、また、電流増幅率βも各画素PIXごとにばらつきがあるため、メモリ155には、各画素PIXに固有の検出データnmeas(t)が記憶されることになる。
本実施形態においては、上述した一連の動作において、データライン電圧検出動作及び検出データ送出動作を、異なる緩和時間t(=t0、t1、t2、t3)に設定して、各画素PIXに対して複数回実行する。ここで、異なる緩和時間tでデータライン電圧を検出する動作は、上述したように、1回のみ検出用電圧を印加して自然緩和が継続している期間中に、データライン電圧検出動作及び検出データ送出動作を、異なるタイミング(緩和時間t=t0、t1、t2、t3)で複数回実行するものであってもよいし、検出用電圧印加、自然緩和、データライン電圧検出及び検出データ送出の一連の動作を、緩和時間tを異ならせて複数回実行するものであってもよい。
以上のような各行の画素PIXに対する特性パラメータ取得動作を繰り返して、表示パネル110に配列された全画素PIXについて複数回分の検出データnmeas(t)がコントローラ150のメモリ155に記憶される。
次いで、各画素PIXの検出データnmeas(t)に基づいて、各画素PIXのトランジスタ(駆動トランジスタ)Tr13のしきい値電圧Vthを補正するための補正データnth、及び、電流増幅率βを補正するための補正データΔβの算出動作を実行する。
具体的には、図18に示すように、まず、コントローラ150に設けられた補正データ取得機能回路156に、メモリ155に記憶された各画素PIXごとの検出データnmeas(t)が読み出される。そして、補正データ取得機能回路156において、上述したオートゼロ法を用いた特性パラメータ取得動作にしたがい、上記(15)〜(21)式に基づいて、補正データnth(具体的には、補正データnthを規定する検出データnmeas(t0)及びオフセット電圧(−Voffset=−1/ξ・t0))、及び、補正データΔβを算出する。算出された補正データnth及びΔβは、メモリ155の所定の記憶領域に各画素PIXごとに記憶される。
次に、上記補正データnth、Δβ、及び、パラメータKを用いて、各画素PIXにおける発光電流効率ηのばらつきを補正するための補正データΔηを取得する。
図19は、本実施形態に係る表示装置における特性パラメータ取得動作を示すタイミングチャート(その2)である。図20は、本実施形態に係る表示装置における輝度測定用の画像データの生成動作を示す機能ブロック図であり、図21は、本実施形態に係る表示装置における輝度測定用の画像データの書込動作を示す動作概念図であり、図22は、本実施形態に係る表示装置における輝度測定用の発光動作を示す動作概念図であり、図23は、本実施形態に係る補正データ算出動作を示す機能ブロック図(その2)である。ここで、図21、図22おいては、データドライバ140の構成として、図示の都合上、シフトレジスタ回路141を省略して示す。
本実施形態に係る特性パラメータ(補正データΔη)取得動作においては、図19に示すように、各行の画素PIXごとに輝度測定用の画像データを生成して書き込む輝度測定用画像データ書込期間T201と、輝度測定用の画像データに応じた輝度階調で各画素PIXを発光動作させる輝度測定用発光期間T202と、各画素ごとの発光輝度を測定する発光輝度測定期間T203と、を含むように設定されている。ここで、発光輝度の測定動作は、輝度測定用発光期間T202中に実行される。
輝度測定用画像データ書込期間T201においては、輝度測定用の画像データの生成動作と、各画素PIXへの輝度測定用画像データの書込動作と、が実行される。輝度測定用画像データの生成動作は、コントローラ150において、所定の輝度測定用のデジタルデータndに対して、上述した特性パラメータ取得動作により取得した補正データΔβ及びnth、並びに、表示パネル110や各画素PIXの各種設計データに基づいて予め算出されたパラメータKを用いて、データ変換及び補正を行い、輝度測定用の画像データnd_brtを生成する。
具体的には、図20に示すように、まず、コントローラ150の電圧振幅設定機能回路152において参照テーブル151を参照することにより、外部から入力された輝度測定用のデジタルデータndに対して、上記(23)式に示したようなデータ変換処理を行い、変換データndoutを生成する。次いで、メモリ155に記憶された各画素ごとの補正データΔβが読み出される。また、Kパラメータ設定回路158によりパラメータKの値が設定される。ここで、パラメータKは、例えばK≒1.1に設定される。そして、乗算機能回路153において、上記電圧振幅設定機能回路152から出力されたデジタルデータ(変換データ)ndoutに対して、補正データΔβ及びパラメータKが乗算処理される(K×ndout×Δβ)。次いで、メモリ155に記憶された補正データnthを規定する検出データnmeas(t0)及びオフセット電圧(−Voffset=−1/ξ・t0)が読み出され、乗算機能回路157a及び157bにおいて、パラメータKが乗算処理される(K×nmeas(t0)、K×Voffset)。次いで、加算機能回路154において、上記乗算機能回路153からのデジタルデータ(K×ndout×Δβ)に対して、パラメータKが乗算された検出データnmeas(t0)及びオフセット電圧(−Voffset)が加算処理される(K×(ndout×Δβ+nth))。以上の補正処理を実行することにより、輝度測定用の画像データnd_brtが生成されてデータドライバ140に供給される。
また、各画素PIXへの輝度測定用画像データの書込動作は、上述した検出用電圧印加動作(検出用電圧印加期間T101)と同様に、書込み対象となっている画素PIXを選択状態に設定した状態で、上記輝度測定用の画像データnd_brtに応じた輝度測定用の階調電圧VbrtをデータラインLd(j)を介して書き込む。
具体的には、図19、図21に示すように、まず、当該画像PIXが接続された選択ラインLsに対して、選択レベル(ハイレベル;Vgh)の選択信号Sselが印加されるとともに、電源ラインLaに対して、ローレベル(非発光レベル;DVSS=接地電位GND)の電源電圧Vsaが印加される。この選択状態において、スイッチSW1をオン動作させ、スイッチSW4及びSW5を接点Nbに接続設定することにより、コントローラ150から供給される輝度測定用の画像データnd_brtが順次データレジスタ回路142に取り込まれ、各列ごとのデータラッチ41(j)に保持される。保持された画像データnd_brtは、DAC42(j)によりアナログ変換され、輝度測定用の階調電圧Vbrtとして各列のデータラインLd(j)に印加される。ここで、輝度測定用の階調電圧Vbrtは、上述したように、上記(24)式の条件を満たす電圧値に設定される。
これにより、画素PIXを構成する発光駆動回路DCにおいて、トランジスタTr13のゲート端子及びキャパシタCsの一端側(接点N11)にローレベルの電源電圧Vsa(=GND)が印加され、また、トランジスタTr13のソース端子及びキャパシタCsの他端側(接点N12)に上記輝度測定用の階調電圧Vbrtが印加される。
したがって、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間に生じた電位差(ゲート・ソース間電圧Vgs)に応じたドレイン電流Idが流れ、キャパシタCsの両端には当該ドレイン電流Idに基づく電位差に対応する電圧(≒Vbrt)が充電される。このとき、有機EL素子OELのアノード(接点N12)には、カソード(共通電極Ec)よりも低い電圧が印加されているので、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作しない。
次いで、輝度測定用発光期間T202においては、図19に示すように、各行の画素PIXを非選択状態に設定した状態で、各画素PIXを一斉に発光動作させる。具体的には、図22に示すように、表示パネル110に配列された全画像PIXに接続された選択ラインLsに対して、非選択レベル(ローレベル;Vgl)の選択信号Sselが印加されるとともに、電源ラインLaに対して、ハイレベル(発光レベル;ELVDD>GND)の電源電圧Vsaが印加される。
これにより、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11、Tr12がオフ動作して、トランジスタTr13のゲート・ソース間に接続されたキャパシタCsに充電された電圧が保持される。したがって、キャパシタCsに充電された電圧(≒Vbrt)によりトランジスタTr13のゲート・ソース間電圧Vgsが保持されて、トランジスタTr13がオン動作してドレイン電流Idが流れ、トランジスタTr13のソース端子(接点N12)の電位が上昇する。そして、トランジスタTr13のソース端子(接点N12)の電位が、有機EL素子OELのカソード(共通電極Ec)に印加される電圧ELVSS(=GND)よりも上昇して有機EL素子OELに順バイアスが印加されると、電源ラインLaからトランジスタTr13、接点N12、有機EL素子OELを介して、共通電極Ec方向に発光駆動電流Ielが流れる。この発光駆動電流Ielは、上記輝度測定用画像データの書込動作において画素PIXに書き込まれ、トランジスタTr13のゲート・ソース間に保持された電圧(≒Vbrt)の電圧値に基づいて規定されるので、有機EL素子OELは、輝度測定用画像データnd_brtに応じた輝度階調で発光動作する。
ここで、輝度測定用画像データnd_brtは、上述した特性パラメータ取得動作において、各画素ごとに取得又は生成された補正データΔβ、nth及びパラメータKに基づいて、電圧振幅の設定と、電流増幅率βのばらつき補正と、駆動トランジスタのしきい値電圧Vthの変動補正と、画素PIX内の寄生容量成分による発光電圧Velの変動補正が施されている。したがって、各画素PIXに同一の輝度階調値の輝度測定用画像データnd_brtを書き込むことにより、各画素PIXの発光駆動回路DCから有機EL素子OELに流れる発光駆動電流Ielは、電流増幅率βのばらつきや駆動トランジスタのしきい値電圧Vthの変動、画素PIX内の寄生容量成分の影響を受けることなく、略一定に設定される。
次いで、輝度測定用発光期間T202中に設定される発光輝度測定期間T203おいては、各画素PIXの発光輝度の測定動作と、各画素PIXの発光電流効率ηを補正するための補正データΔηの算出動作を実行する。発光輝度の測定動作は、図19、図23に示すように、表示パネル110の各画素PIXにおいて、略同一の発光駆動電流Ielが有機EL素子OELに流れるように設定して発光動作させた状態で、表示パネル110の視野側に設けられた輝度計やCCDカメラ160により、各画素PIXの発光輝度Lvがデジタルデータとして測定される。測定された発光輝度Lvは、コントローラ150の補正データ取得機能回路156に送出される。
補正データΔηの算出動作は、まず、コントローラ150に設けられた補正データ取得機能回路156において、上記(25)、(26)式に基づいて、補正データΔηを算出すし、さらに、上述した補正データΔβに補正データΔηを加味した補正データΔβηを算出する。ここで、上記(25)式に示す補正データΔηの演算処理は、上記(21)式に示した補正データΔβの演算処理と同一のシーケンスにより実行される。算出された補正データΔβηは、上述した検出データnmeas(t)や補正データnthと同様に、メモリ155の所定の記憶領域に各画素PIXごとに記憶される。
(表示動作)
次に、本実施形態に係る表示装置の表示動作(発光動作)においては、上記補正データnth、Δβη、及び、パラメータKを用いて、画像データを補正し、各画素PIXを所望の輝度階調で発光動作させる。
図24は、本実施形態に係る表示装置における発光動作を示すタイミングチャートである。図25は、本実施形態に係る表示装置における画像データの補正動作を示す機能ブロック図であり、図26は、本実施形態に係る表示装置における補正後の画像データの書込動作を示す動作概念図であり、図27は、本実施形態に係る表示装置における発光動作を示す動作概念図である。ここで、図26、図27においては、データドライバ140の構成として、図示の都合上、シフトレジスタ回路141を省略して示す。
本実施形態に係る表示動作においては、図24に示すように、各行の画素PIXごとに所望の画像データを生成して書き込む画像データ書込期間T301と、当該画像データに応じた輝度階調で各画素PIXを発光動作させる画素発光期間T302と、を含むように設定されている。
画像データ書込期間T301においては、補正画像データの生成動作と、各画素PIXへの補正画像データの書込動作と、が実行される。補正画像データの生成動作は、コントローラ150において、デジタルデータからなる所定の画像データndに対して、上述した特性パラメータ取得動作により取得した補正データΔβ、Δη及びnth、並びに、表示パネル110の各種設計データに基づいて予め算出されたパラメータKを用いて、データ変換及び補正を行い、補正処理した画像データ(補正画像データ)nd_compをデータドライバ140に供給する。
具体的には、図25に示すように、コントローラ150の外部から供給される、RGB各色の輝度階調値を含む画像データ(第2の画像データ)ndに対して、電圧振幅設定機能回路152において参照テーブル151を参照することにより、RGBの各色成分ごとに上記(23)式に示したようなデータ変換処理を行い、変換データndoutを生成する。次いで、メモリ155に記憶された各画素ごとの補正データΔβηが読み出される。また、Kパラメータ設定回路158によりパラメータKの値が設定される。ここで、パラメータKは、例えばK≒1.1に設定される。そして、乗算機能回路153において、上記電圧振幅設定機能回路152から出力されたデジタルデータ(変換データ)ndoutに対して、読み出した補正データΔβη及びパラメータKが乗算処理される(K×ndout×Δβ)。次いで、メモリ155に記憶された補正データnthを規定する検出データnmeas(t0)及びオフセット電圧(−Voffset=−1/ξ・t0)が読み出され、乗算機能回路157a及び157bにおいて、パラメータKが乗算処理される(K×nmeas(t0)、K×Voffset)。次いで、加算機能回路154において、上記乗算機能回路153からのデジタルデータ(K×ndout×Δβη)に対して、パラメータKが乗算された検出データnmeas(t0)及びオフセット電圧(−Voffset)が加算処理される(K×(ndout×Δβ+nth))。以上の一連の補正処理を実行することにより、補正画像データnd_compが生成されてデータドライバ140に供給される。
また、各画素PIXへの補正画像データの書込動作は、書込み対象となっている画素PIXを選択状態に設定した状態で、上記補正画像データnd_compに応じた階調電圧VdataをデータラインLd(j)を介して書き込む。具体的には、図24、図26に示すように、まず、画像PIXが接続された選択ラインLsに対して、選択レベル(ハイレベル;Vgh)の選択信号Sselが印加されるとともに、電源ラインLaに対して、ローレベル(非発光レベル;DVSS=接地電位GND)の電源電圧Vsaが印加される。この選択状態において、スイッチSW1をオン動作させ、スイッチSW4及びSW5を接点Nbに接続設定することにより、コントローラ150から供給される補正画像データnd_compが順次データレジスタ回路142に取り込まれ、各列ごとのデータラッチ41(j)に保持される。保持された画像データnd_compは、DAC42(j)によりアナログ変換され、階調電圧(第3の電圧)Vdataとして各列のデータラインLd(j)に印加される。ここで、階調電圧Vdataは、上記(14)式に示した定義に基づいて、次の(27)式のように定義される。
Vdata=V1−ΔV(nd_comp−1)) ・・・(27)
これにより、画素PIXを構成する発光駆動回路DCにおいて、トランジスタTr13のゲート端子及びキャパシタCsの一端側(接点N11)にローレベルの電源電圧Vsa(=GND)が印加され、また、トランジスタTr13のソース端子及びキャパシタCsの他端側(接点N12)に上記補正画像データnd_compに対応した階調電圧Vdataが印加される。
したがって、トランジスタTr13のゲート・ソース端子間に生じた電位差(ゲート・ソース間電圧Vgs)に応じたドレイン電流Idが流れ、キャパシタCsの両端には当該ドレイン電流Idに基づく電位差に対応する電圧(≒Vdata)が充電される。このとき、有機EL素子OELのアノード(接点N12)には、カソード(共通電極Ec)よりも低い電圧が印加されているので、有機EL素子OELには電流が流れず発光動作しない。
次いで、画素発光期間T302においては、図24に示すように、各行の画素PIXを非選択状態に設定した状態で、各画素PIXを一斉に発光動作させる。具体的には、図27に示すように、表示パネル110に配列された全画像PIXに接続された選択ラインLsに対して、非選択レベル(ローレベル;Vgl)の選択信号Sselが印加されるとともに、電源ラインLaに対して、ハイレベル(発光レベル;ELVDD>GND)の電源電圧Vsaが印加される。
これにより、各画素PIXの発光駆動回路DCに設けられたトランジスタTr11、Tr12がオフ動作して、トランジスタTr13のゲート・ソース間に接続されたキャパシタCsに充電された電圧(≒Vdata;ゲート・ソース間電圧Vgs)が保持される。したがって、トランジスタTr13がオン動作してドレイン電流Idが流れ、トランジスタTr13のソース端子(接点N12)の電位が、有機EL素子OELのカソード(共通電極Ec)に印加される電圧ELVSS(=GND)よりも上昇すると、発光駆動回路DCから有機EL素子OELに発光駆動電流Ielが流れる。この発光駆動電流Ielは、上記補正画像データの書込動作においてトランジスタTr13のゲート・ソース間に保持された電圧(≒Vdata)の電圧値に基づいて規定されるので、有機EL素子OELは、輝度測定用画像データnd_compに応じた輝度階調で発光動作する。
なお、上述した実施形態においては、図19、図24に示したように、補正データΔηを取得するための動作、及び、表示動作において、特定の行(例えば1行目)の画素PIXへの輝度測定用画像データ又は補正画像データの書込動作の終了後、他の行(2行目以降)の画素PIXへの画像データの書込動作が終了するまでの間、当該行の画素PIXは保持状態に設定される。ここで、保持状態においては、当該行の選択ラインLsに非選択レベルの選択信号Sselを印加して画素PIXを非選択状態にするとともに、電源ラインLaに非発光レベルの電源電圧Vsaを印加して非発光状態に設定される。この保持状態は、図19、図24に示したように、行ごとに設定時間が異なる。また、各行の画素PIXへの輝度測定用画像データ又は補正画像データの書込動作の終了後、直ちに画素PIXを発光動作させる駆動制御を行う場合には、上記保持状態を設定しないものであってもよい。
このように、本実施形態に係る表示装置(画素駆動装置を含む発光装置)及びその駆動制御方法においては、本発明に特有のオートゼロ法を適用し、データライン電圧を取り込み、デジタルデータからなる検出データに変換する一連の特性パラメータ取得動作を、異なるタイミング(緩和時間)で複数回実行する手法を有している。これにより、本実施形態によれば、各画素の駆動トランジスタのしきい値電圧の変動、及び、各画素間の電流増幅率のばらつきを補正するパラメータを取得することができる。
また、本実施形態においては、各画素に設けられる駆動トランジスタに付加される寄生容量に起因する発光電圧の変動を補正するためのパラメータKを、表示パネルや各画素の設計段階で、駆動トランジスタに付加される寄生容量に基づいて予め算出しておき、表示装置の動作状態に応じてパラメータKの値を適宜設定する手法を有している。これにより、本実施形態によれば、各画素に書き込まれる画像データに対して、各画素のしきい値電圧の変動、電流増幅率のばらつき、及び、各画素内の寄生容量に起因する発光電圧の変動を補償する補正処理を施すことができる。
さらに、本実施形態においては、上記のしきい値電圧の変動及び各画素間の電流増幅率のばらつきを補正する補正データ、並びに、各画素の発光電圧の変動を補償するパラメータに基づいて、各画素に均一な発光駆動電流が流れるように設定した状態で、各画素の発光輝度を測定する手法を有している。これにより、本実施形態によれば、各画素間の発光電流効率のばらつきを補正するパラメータを取得することができる。
したがって、本実施形態によれば、画像データの書込時に、各画素に書き込まれる画像データに対して、各画素のしきい値電圧の変動、各画素間の電流増幅率及び発光電流効率のばらつき、並びに、各画素の発光電圧の変動を補償する補正処理を施すことができる。よって、本実施形態によれば、各画素の特性変化や特性のばらつきの状態に関わらず、画像データに応じた本来の輝度階調で発光素子(有機EL素子)を発光動作させることができ、良好な発光特性及び均一な画質を有するアクティブ有機EL駆動システムを実現することができる。
また、本実施形態においては、発光電流効率を含む電流増幅率のばらつきを補正する補正データを算出する処理と、駆動トランジスタのしきい値電圧の変動を補償する補正データを算出する処理を、単一の補正データ生成機能回路156を備えたコントローラ150における一連のシーケンスにより実行することができる。
したがって、本実施形態によれば、補正データの算出処理の内容に応じて個別の構成(機能回路)を設ける必要がなく、また、参照テーブルを備え、各色ごとの変換テーブル(ガンマテーブル)上で各画素の発光電圧の変動を補償する補正処理を施すことができるので、表示装置(発光装置)の装置構成を簡素化することができる。
<第2の実施形態>
次に、上述した第1の実施形態における表示装置を電子機器に適用した、第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
上述した第1の実施形態に示したように、有機EL素子OELからなる発光素子を各画素PIXに有する表示パネル110を備える表示装置100は、デジタルカメラ、モバイル型のパーソナルコンピュータ、携帯電話等、種々の電子機器に適用できるものである。
図28は、第1の実施形態に係る表示装置(発光装置)を適用したデジタルカメラの構成例を示す斜視図であり、図29は、第1の実施形態に係る表示装置(発光装置)を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成例を示す斜視図であり、図30は、第1の実施形態に係る表示装置(発光装置)を適用した携帯電話の構成例を示す斜視図である。
図28において、デジタルカメラ200は、本体部201と、レンズ部202と、操作部203と、本実施形態の表示パネル110を備える表示装置100からなる表示部204と、シャッターボタン205とを備えている。この場合、表示部204において、表示パネル110の各画素の発光素子が画像データに応じた適切な輝度階調で発光動作して、良好かつ均質な画質を実現することができる。
また、図29において、パーソナルコンピュータ210は、本体部211と、キーボード212と、本実施形態の表示パネル110を備える表示装置100からなる表示部213とを備えている。この場合でも、表示部213において、表示パネル110の各画素の発光素子が画像データに応じた適切な輝度階調で発光動作して、良好かつ均質な画質を実現することができる。
また、図30において、携帯電話220は、操作部221と、受話口222と、送話口223と、本実施形態の表示パネル110を備える表示装置100からなる表示部224とを備えている。この場合でも、表示部224において、表示パネル110の各画素の発光素子が画像データに応じた適切な輝度階調で発光動作して、良好かつ均質な画質を実現することができる。
なお、上記実施形態においては、本発明を有機EL素子OELからなる発光素子を各画素PIXに有する表示パネル110を備える表示装置(発光装置)100に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。本発明は、例えば、有機EL素子OELからなる発光素子を有する複数の画素が一方向に配列された発光素子アレイを備え、感光体ドラムに画像データに応じて発光素子アレイから出射した光を照射して露光する露光装置に適用してもよい。この場合、発光素子アレイの各画素の発光素子を画像データに応じた適切な輝度で発光動作させることができて、良好な露光状態を得ることができる。