JP4877151B2 - 玉軸受 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、クランク軸に固定され、エンジンルーム内で使用される複列の転がり軸受が開示されている。クランク軸の端部にはボルトが固定されているため、転がり軸受は断続的に不均一な荷重を受ける場合が多い。
そこで、本発明は前述のような従来技術が有する問題点を解決し、自動車のエンジンルーム内において高温環境下で使用されても寸法変化が生じにくく長寿命な玉軸受を提供することを課題とする。
自動車の走行中には信号待ち等の理由により一時的に停車する場合があるが、停車中はエンジンをアイドリングさせていることが多い。しかしながら、燃料消費の節約や二酸化炭素を含む排気ガスの削減などを考えると、停車中はエンジンを停止させることが好ましい。このような事情から、走行中における一時的な停車時にはエンジンの運転を自動的に停止させ、発進時には運転者の始動要求に応じてエンジンの運転を再開させる、いわゆるアイドリングストップシステムを備える自動車が提案されている。
また、アイドリングストップシステムはエンジンルーム内のエンジン近傍に配されているため、アイドリングストップシステムに組み込まれている転がり軸受は、常時130℃程度の高温環境下で使用される。よって、アイドリングストップシステムに組み込まれる転がり軸受は、高温により寸法変化が生じやすく、寿命低下を起こしやすいので、この点を考慮した構成とする必要があった。
以下に、一方向クラッチとリングギヤと転がり玉軸受とを備えるアイドリングストップシステムの構造について、図1を参照しながら詳細に説明する。
エンジンが運転を開始することで、その出力によって、クランク軸11に連動するアウターレース支持部材34の回転がリングギヤ12の回転よりも速くなると、一方向クラッチ13は解放状態となる。このことにより、ピニオンギヤ14とリングギヤ12の歯部12aとが常時噛み合った状態でも、クランク軸11の回転はスタータモータ側に伝達されないので、エンジン始動後のスタータモータの過回転を防止することができる。なお、玉軸受1及び一方向クラッチ13には潤滑のためにエンジンオイルが供給される。
ここで、大径とは、玉軸受1のPCDと玉4の直径dとの比(PCD/玉4の直径d)が17以上24以下であり、且つ、玉軸受1のPCDと2列の玉4の中心間距離aとの比(PCD/2列の玉4の中心間距離a)が12以上24以下であることを意味する。また、幅狭とは、軸受幅bと玉4の直径dとの比(軸受幅b/玉4の直径d)が2.8以上3.2以下であることを意味する。さらに、薄肉とは、玉軸受1のPCDと内外輪2,3の径方向の幅(厚さ)ti ,to との比(PCD/内外輪2,3の径方向の幅ti ,to )が25以上35以下であることを意味する。
そして、この玉軸受1においては、内輪2,外輪3,及び玉4はSUJ2等の鋼で構成されているが、内輪2,外輪3,及び玉4の平均残留オーステナイト量の合計は25体積%以下とされている。
さらに、冠形保持器5の素材は特に限定されるものではないが、樹脂材料が好ましい。冠形保持器5の素材を樹脂材料とすれば、玉軸受1がエンジンの近傍に配され130℃程度の高温環境下で常時使用されても、安定した軸受性能を長期間にわたって維持することが可能である。また、玉軸受1は断続的に不均一な荷重を受けるが、冠形保持器5が金属と比べて柔軟性の高い樹脂材料で構成されているので、前記荷重を受けても問題なく使用することが可能である。なお、保持器の種類は冠形に限定されるものではないが、冠形保持器が最も好ましい。
汎用エンジニアリングプラスチックの場合は、ガラス繊維で強化した樹脂組成物とすることが好ましい。そうすれば、耐熱性及び寸法安定性が向上する。その場合には、ガラス繊維の含有量は樹脂組成物全体の25質量%以上とすることが好ましい。なお、ガラス繊維とともに、炭素繊維や各種ウィスカーを用いても差し支えない。
しかも、ポケット5aの個数を玉4の個数よりも多くすると、玉4が組み込まれていないポケット5aを通ってエンジンオイルが玉軸受1の内部を軸方向に通過することができるので、玉軸受1の潤滑のために供給されたエンジンオイルが一方向クラッチ13に供給されやすくなり、一方向クラッチ13の潤滑性がより確保されやすいという効果が併せて得られることとなる。玉軸受1の内部を通過するエンジンオイルの量を十分に確保するためには、例えばポケット1つおきに玉4を組み込む等、ポケット5aの個数を玉4の個数の2倍以上とすることが好ましい。この場合には、所定のポケット5aに玉4が組み込まれているかを、チェッカーを用いて確認するとよい。
さらに、本実施形態の玉軸受1は、冠形保持器5の径方向の幅に対して冠形保持器5の直径が大きいので、冠形保持器5の強度を十分に確保するためには、冠形保持器5の径方向の幅はできるだけ大きくする必要がある。しかしながら、この径方向の幅を大きくすると、前記隙間が小さくなってエンジンオイルの通過量が不十分となるおそれがあるとともに、冠形保持器5と内外輪2,3とが干渉しやすくなるおそれがある。よって、これらの問題が生じないようにしつつ径方向の幅をできるだけ大きくするためには、冠形保持器5の真円度を高くすることが好ましい。そのためには、冠形保持器5の真円度を0.30mm以下とすることが好ましく、0.20mm以下とすることがより好ましい。
さらに、本実施形態の玉軸受1においては、組み込む玉4の数を通常の軸受よりも少なくすることが好ましい。例えば15個が好ましい。玉4の数を通常の軸受よりも少なくすることにより、玉軸受1の低トルク化が可能であるとともに、玉軸受1の空転時の摩擦抵抗が低くなる。さらに、保持器5の設計が容易となる。
また、内輪2,外輪3,玉4の材質は特に限定されるものではなく、SUJ2の他、種々の鋼材を使用することが可能である。
さらに、本実施形態においては転動体は2列であったが、単列でもよいし3列以上でもよい。さらに、この玉軸受1は、3点接触軸受でもよいし、4点接触軸受でもよい。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。呼び番号6206の深溝玉軸受を、以下のようにして製造した。まず、SUJ2製の素材を所定の形状に成形し、840〜860℃で0.5〜1時間保持した後に急冷することにより焼入れを施し、さらに160〜320℃のいずれかの温度で1〜2時間焼戻しを行って、内輪,外輪,及び転動体を得た。焼戻し温度を種々変更することにより、平均残留オーステナイト量が異なる内輪,外輪,及び転動体を製造した。
荷重 :P/C(P:動等価荷重、C:基本動定格荷重) =0.46
回転速度 :3000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68であるオイル
雰囲気温度:110℃
内輪,外輪,及び転動体のそれぞれについて、焼戻し温度,硬さHRC,及び平均残留オーステナイト量を表1に示す。また、内輪,外輪,及び転動体の平均残留オーステナイト量の合計値及び軸受の寿命を、表1及び図7のグラフに併せて示す。なお、表1及び図7のグラフにおける寿命の数値は、比較例1の軸受の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 冠形保持器
5a ポケット
5b ツノ
6 止め輪
11 クランク軸
12 リングギヤ
Claims (2)
- 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の玉と、を備え、自動車のエンジンルーム内で使用される玉軸受において、以下の12の条件A〜Lを満足することを特徴とする玉軸受。
条件A:アイドリングストップシステムに組み込まれ、エンジンオイルによって潤滑される。
条件B:2列の前記玉を備える複列玉軸受である。
条件C:前記複列玉軸受のPCDと前記玉の直径dとの比PCD/dが17以上24以下であり、前記複列玉軸受のPCDと前記2列の玉の中心間距離aとの比PCD/aが12以上24以下であり、軸受幅bと前記玉の直径dとの比b/dが2.8以上3.2以下であり、前記複列玉軸受のPCDと前記内輪,前記外輪の径方向の幅ti ,to との比PCD/ti ,PCD/to がそれぞれ25以上35以下である。
条件D:前記内輪及び前記玉の少なくとも一方は、焼入れが施された後に210℃以上290℃以下で焼戻しが施されていて、前記内輪,前記外輪,及び前記玉の平均残留オーステナイト量の合計が25体積%以下である。
条件E:前記内輪,前記外輪,及び前記玉の硬さがそれぞれHRC57以上である。 条件F:ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルエーテルケトンで構成された冠形保持器を備える。
条件G:前記冠形保持器のポケットのPCDと径方向の幅tとの比PCD/tが36以上60以下である。
条件H:前記冠形保持器の真円度が0.30mm以下である。
条件I:2列の軌道面及び該2列の軌道面に挟まれた部分を含む前記内輪及び前記外輪の全周面に研磨が施されており、肩の角部が滑らかな断面曲線状とされている。
条件J:前記冠形保持器のポケットの直径とツノの先端の間隔Yとの比が0.85以上0.95以下である。
条件K:前記冠形保持器のポケットとポケットとの間の部分であるリム部の軸方向両端面のうち前記玉の側を向く端面に沿う線に、前記玉の中心の軸方向位置と前記ツノの先端の軸方向位置とが同位置にある時の玉が接することがないように、前記リム部の軸方向長さが設定されている。
条件L:前記リム部の軸方向両端面のうち前記玉の側を向く端面の軸方向位置は、前記ポケット内に収容されている時の玉の中心の軸方向位置よりも、前記ポケットの底部寄りにある。 - 前記内輪,前記外輪,及び前記玉はSUJ2製であり、前記焼入れは、840℃以上860℃以下で0.5時間以上1時間以下保持した後に急冷するという条件であり、前記焼戻しは、210℃以上290℃以下で1時間以上2時間以下保持するという条件であることを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
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