しかし、上述した従来の射出成形方法では、固定型と可動型間に付設した距離検出器により隙間を直接検出するため、次のような解決すべき課題が存在した。
即ち、金型は、メンテナンスや清掃のため、定期的或いは必要に応じて型開閉装置から取外すとともに、メンテナンス作業や清掃作業の終了により、再度、型開閉装置に取付けているが、金型の再取付けを行った場合、バリが発生するなど、良品を成形できない不具合を生じる問題があった。この問題は、一般的な射出成形を行う金型(射出成形機)では発生しないが、上述した従来の射出成形方法では、金型に距離検出器を付設し、僅かな隙間(設定間隔)を設定して成形を行うため、固有の問題として発生する。
以下、この理由について説明する。メンテナンスや清掃のため、金型を型開閉装置から取外した場合、距離検出器における四つのセンサ部を構成するそれぞれの被検出プレートと近接センサも分解された状態となる。金型は、通常、複数位置(四隅)を締付ボルト等により型開閉装置の可動盤及び固定盤に固定するが、この際、図5に示すように、金型Cを構成する固定型Ccと可動型Cmのパーティング面CcpとCmpを完全な平行面に固定することが困難であり、微小ながらも傾きReを生じる。この傾きReは、締付ボルトの締付度合等によっても影響を受ける。したがって、金型の取外し及び再取付けを行った場合、その前後で傾きReの変動を生じ、成形条件等の他の設定に何の異常もない場合であっても良品を成形できない不具合を生じる。しかも、この不具合が発生した場合、傾きReの度合や方向などの確認が困難となるため、良品を成形できない原因を発見(特定)することができない。結局、生産稼働に入ることができないため、生産効率の低下や生産の遅延を生じる問題があった。なお、この問題は、メンテナンス作業や清掃作業の度に必ず発生するというものではないが、発生した場合、その発生事実を確認できれば、金型を再取付けするなどによって問題が解消される場合も多い。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した成形機のデータ表示方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る成形機のデータ表示方法は、上述した課題を解決するため、金型Cを少なくとも型開閉するトグルリンク式型開閉装置Mcを備える成形機Mの動作に対応して変化する物理量を所定の物理量検出手段により順次検出し、検出した物理量に係わるデータをディスプレイ3にグラフ表示するに際し、型閉工程の実行時に、第一位置検出手段4aにより、金型Cを構成する可動型Cmの位置を直接検出して第一位置データDa…を得るとともに、トグルリンク式型開閉装置Mcのトグルリンク機構Lを駆動する駆動モータ5の回転数を検出するロータリエンコーダ4brを用いた第二位置検出手段4bにより、可動型Cmの位置以外の物理量である前記駆動モータの回転数を検出して可動型Cmの第二位置データDb…を得、第一位置データDa…又は第二位置データDb…における一方のデータDa…(Db…)をディスプレイ3のX軸又はY軸における一方の軸に対応させ、かつ他方のデータDb…(Da…)をX軸又はY軸における他方の軸に対応させたグラフ(型位置グラフ)Ai(Aic)により表示するようにしたことを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、第一位置検出手段4aには、可動型Cmの位置を検出する距離センサ4as又は可動型Cmの移動量を検出するリニアエンコーダ4aeを用いることができる。一方、予め、少なくとも良品成形を行う第一位置データDa…と第二位置データDb…を得、この第一位置データDa…と第二位置データDb…を用いた基準グラフAsを型位置グラフAi(Aic)に対して重ね描き表示することができる。他方、第一位置データDa…から第一単位変位量maを順次求め、かつ第二位置データDb…から第二単位変位量mbを順次求めるとともに、第一単位変位量maと第二単位変位量mbの比率データを求め、少なくとも第一位置データDa…又は比率データの一方をディスプレイ3におけるX軸又はY軸の一方の軸に対応させ、かつ他方をX軸又はY軸における他方の軸に対応させたグラフ(比率グラフ)Biにより表示することができる。この際、比率グラフBiを監視し、当該比率グラフBiが予め設定した閉鎖検出条件を満たしたなら、当該閉鎖検出条件を満たしたときの第一位置データDaを金型閉鎖位置に係わる位置データDcとして用いることができる。
このような手法による本発明に係る成形機のデータ表示方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 第一位置データDa…又は第二位置データDb…における一方のデータをディスプレイ3のX軸又はY軸における一方の軸に対応させ、かつ他方のデータをX軸又はY軸における他方の軸に対応させたグラフ(型位置グラフ)Ai(Aic)により表示するようにしたため、金型Cが閉鎖する前後における可動型Cmの変位に伴う挙動を視覚的かつ誇張的(強調的)に表示することができる。したがって、型開閉装置Mcから金型Cを取外しかつ再取付けした際における前後の挙動変化から型開閉装置Mcに対する金型Cの取付不備又は取付不良等の不具合を容易かつ確実に発見することが可能となり、従来の問題、即ち、当該不具合を発見(特定)できないことに伴う生産効率の低下や生産の遅延を生じる問題を解消できる。
(2) 成形機Mには、金型Cを少なくとも型開閉するトグルリンク式型開閉装置Mcを備える成形機を適用したため、本発明に係るデータ表示方法を、より効果的(有効)に実施できる。
(3) 第二位置検出手段4bに、トグルリンク式型開閉装置Mcのトグルリンク機構Lを駆動する駆動モータ5の回転数を検出するロータリエンコーダ4brを用いたため、可動盤の移動量に対して相対的に移動量の大きいクロスヘッド側の変位量を検出することにより、可動型Cmの位置以外の物理量を間接的に検出する際の検出精度を高めることができ、特に、距離センサ4asと組合わせることにより、本発明に係るデータ表示方法を容易かつ確実に実施できる。
(4) 好適な態様により、第一位置検出手段4aに、可動型Cmの位置を検出する距離センサ4as又は可動型Cmの移動量を検出するリニアエンコーダ4aeを用いれば、可動型Cmの位置を直接検出できるため、距離センサ4as又はリニアエンコーダ4ae以外の誤差要因を排除した正確な位置検出を行うことができ、特に、本発明に係るデータ表示方法を容易かつ確実に実施できる。
(5) 好適な態様により、予め、少なくとも良品成形を行う第一位置データDa…と第二位置データDb…を得、この第一位置データDa…と第二位置データDb…を用いた基準グラフAsを型位置グラフAi(Aic)に対して重ね描き表示するようにすれば、型開閉装置Mcから金型Cを取外しかつ再取付けした際における前後の挙動変化をより明確かつ容易に確認できる。
(6) 好適な態様により、第一位置データDa…から第一単位変位量maを順次求め、かつ第二位置データDb…から第二単位変位量mbを順次求めるとともに、第一単位変位量maと第二単位変位量mbの比率データを求め、少なくとも第一位置データDa…又は比率データの一方をディスプレイ3におけるX軸又はY軸の一方の軸に対応させ、かつ他方をX軸又はY軸における他方の軸に対応させた比率グラフBiにより表示するようにすれば、可動型Cmの変位に伴う挙動、特に発生する変化点を、より明瞭化することができる。
(7) 好適な態様により、比率グラフBiを監視し、当該比率グラフBiが予め設定した閉鎖検出条件を満たしたなら、当該閉鎖検出条件を満たしたときの第一位置データDaを金型閉鎖位置に係わる位置データDcとして用いるようにすれば、より的確な金型閉鎖位置を確実かつ安定に検出することができる。
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係るデータ表示方法を実施できる射出成形機(成形機)Mの構成について、図2〜図6を参照して説明する。
図2中、仮想線で示すMは射出成形機であり、機台Mbと、この機台Mb上に設置された射出装置Mi及びトグルリンク式型開閉装置Mcを備える。射出装置Miは、加熱筒11を備え、この加熱筒11の前端に射出ノズル11n(図3)を有するとともに、加熱筒11の後部には材料を供給するホッパ12を備える。一方、型開閉装置Mcには可動型Cmと固定型Ccからなる金型C(図3)を備える。また、機台Mb上には側面パネル13を起設し、この側面パネル13にカラー液晶ディスプレイ等を用いたディスプレイ3を配設する。このディスプレイ3は、図6に示すように、ディスプレイ本体3dにタッチパネル3tが付設された構成を有し、ディスプレイ3は、機台Mbに内蔵した成形機コントローラ50(図3)に接続する。
図3に、トグルリンク式型開閉装置Mcの具体的構成を示す。この型開閉装置Mcは、離間して配した固定盤21と駆動盤22を備え、固定盤21は機台Mb上に固定されるとともに、駆動盤22は当該機台Mb上に進退変位可能に支持される。また、固定盤21と駆動盤22間には、四本のタイバー23…を架設する。この場合、各タイバー23…の前端は、固定盤21に固定するとともに、各タイバー23…の後端は、駆動盤22に対して挿通させ、かつ後端側に形成したねじ部24…に、駆動盤22に対するストッパを兼ねる調整ナット25…をそれぞれ螺合する。
各調整ナット25…は、駆動盤22の位置を調整する型厚調整機構26を構成する。この型厚調整機構26は、さらに、各調整ナット25…に対して同軸上に一体に設けた小歯車27…と、各小歯車27…に噛合する大歯車28と、この大歯車28に噛合する駆動歯車29と、この駆動歯車29を回転シャフトに設けた型厚調整モータ30と、この型厚調整モータ30の回転数を検出するロータリエンコーダ30eを備えている。この場合、各小歯車27…は、正方形の四隅位置にそれぞれ配され、かつ大歯車28は各小歯車27…に囲まれる位置に配するため、各小歯車27…は、大歯車28に同時に噛合する。これにより、型厚調整モータ30を作動させれば、駆動歯車29の回転が大歯車28に伝達され、各小歯車27…は同時に回転するとともに、一体に回転する各調整ナット25…は、各タイバー23…のねじ部24…に沿って進退移動するため、駆動盤22も進退移動し、その前後方向位置を調整することができる。
一方、タイバー23…には、可動盤31をスライド自在に装填する。この可動盤31は可動型Cmを支持するとともに、固定盤21は固定型Ccを支持し、可動型Cmと固定型Ccは金型Cを構成する。また、金型Cには、固定型Ccと可動型Cm間の距離(隙間)Gsを検出する距離センサ4asを付設する。距離センサ4asは四つのセンサ部33…からなり、各センサ部33…は、金型C(可動型Cm及び固定型Cc)における四つの側面(上下面及び左右面)に取付ける。図4(図5)に、金型Cの上面に配した一つのセンサ部33を示す。センサ部33は、可動型Cmの上面に取付けることにより当該上面から直角に起立する被検出プレート33rと、固定型Ccの上面に取付けることにより被検出プレート33rに対面させて配した近接センサ33sを備える。この場合、可動型Cmの一部を被検出プレートとして利用すれば、例示の被検出プレート33rは省略可能である。図中、Cmp及びCcpは可動型Cm及び固定型Ccのパーティング面をそれぞれ示す。なお、この距離センサ4asは、可動型Cmの位置を直接検出して第一位置データDaを得る第一位置検出手段4aを構成する。このように、可動型Cmの位置を検出する距離センサ4asを用いれば、可動型Cmの位置を直接検出できるため、距離センサ4as以外の誤差要因を排除した正確な位置検出を行うことができ、特に、本実施形態に係るデータ表示方法を容易かつ確実に実施できる利点がある。
他方、駆動盤22と可動盤31間にはトグルリンク機構Lを配設する。トグルリンク機構Lは、駆動盤22に軸支した一対の第一リンクLa,Laと、可動盤31に軸支した一対の出力リンクLc,Lcと、第一リンクLa,Laと出力リンクLc,Lcの支軸に結合した一対の第二リンクLb,Lbを有し、この第二リンクLb,Lbはクロスヘッド32に軸支する。また、駆動盤22とクロスヘッド32間には型開閉用駆動部35を配設する。型開閉用駆動部35は、駆動盤22に回動自在に支持されたボールねじ部37と、このボールねじ部37に螺合し、かつクロスヘッド32に一体に設けたボールナット部38を有するボールねじ機構36を備えるとともに、ボールねじ部37を回転駆動する回転駆動機構部39を備える。回転駆動機構部39は、駆動モータ5を構成する型開閉用サーボモータ5sと、このサーボモータ5sに付設して当該サーボモータ5sの回転数を検出するロータリエンコーダ4brと、サーボモータ5sのシャフトに取付けた駆動ギア41と、ボールねじ部37に取付けた被動ギア42と、この駆動ギア41と被動ギア42間に架け渡したタイミングベルト43を備えている。これにより、サーボモータ5sを作動させれば、駆動ギア41が回転し、駆動ギア41の回転は、タイミングベルト43を介して被動ギア42に伝達され、ボールねじ部37が回転することによりボールナット部38が進退移動する。この結果、ボールナット部38と一体のクロスヘッド32が進退移動し、トグルリンク機構Lが短縮又は拡長し、可動盤31が型開方向(後退方向)又は型閉方向(前進方向)へ進退移動する。
このロータリエンコーダ4brを用いることにより、トグルリンク式型開閉装置Mcのトグルリンク機構Lを駆動するサーボモータ5s(駆動モータ5)の回転数を検出して可動型Cmの位置に係わる第二位置データDbを得ることができる。したがって、ロータリエンコーダ4brは、可動型Cmの位置以外の物理量を間接的に検出して可動型Cmの位置に係わる第二位置データDbを得る第二位置検出手段4bを構成する。このように、射出成形機Mに、金型Cを少なくとも型開閉するトグルリンク式型開閉装置Mcを備える射出成形機を適用すれば、本実施形態に係るデータ表示方法を、より効果的(有効)に実施できるとともに、第二位置検出手段4bに、トグルリンク式型開閉装置Mcのトグルリンク機構Lを駆動するサーボモータ5sの回転数を検出するロータリエンコーダ4brを用いれば、可動盤31の移動量に対して相対的に移動量の大きいクロスヘッド32側の変位量を検出することにより、可動型Cmの位置以外の物理量を間接的に検出する際の検出精度を高めることができ、特に、距離センサ4asと組合わせることにより、本実施形態に係るデータ表示方法を容易かつ確実に実施できる利点がある。
そして、型開閉用サーボモータ5s及び型厚調整モータ30は、成形機コントローラ50に内蔵するサーボアンプ(不図示)に接続するとともに、ロータリエンコーダ4br,30e及び四つのセンサ部33…(距離センサ4as)は、成形機コントローラ50に内蔵するコントローラ本体50m(図6)に接続する。
図6に、コントローラ本体50mの内部のブロック構成を示す。同図中、51はCPUであり、このCPU51には内部バス52を介してチップセット53を接続する。このチップセット53には、PCIバス等のローカルバスを用いたバスライン54を接続してHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)制御系を構成する。このため、バスライン54には、コントローラ本体50mを機能させるRAMや各種データを記憶するデータメモリ(不揮発性メモリ)を含む内部メモリ55及び各種プログラムを格納するROM等を含むプログラムメモリ56を接続するとともに、表示インタフェース57を介して前述したディスプレイ3を接続し、さらに、入出力インターフェイス58を介してメモリカード等の記憶メディア59に対する読出及び書込を行うドライブユニット60を接続する。
一方、チップセット53には、バスライン54と同様のバスライン61を接続してPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)制御系を構成する。このため、バスライン61には、前述したロータリエンコーダ4brからの出力パルスSpをはじめ、各種スイッチやリレー等を含む検出器群62から得るモニタデータ(切換データ等)Di…をCPU51に付与するとともに、CPU51からの制御指令データDo…を対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス63を接続する。また、前述した距離センサ4as(近接センサ33s…)からの出力信号Sdをはじめ、各種センサを含むセンサ群64から得る検出信号Si…を、アナログ−ディジタル変換してCPU51に付与するとともに、CPU51からの制御指令データをディジタル−アナログ変換した制御信号So…を、対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス65を接続する。これにより、所定のフィードバック制御系及びオープンループ制御系が構成される。
したがって、前述したプログラムメモリ56には、PLCプログラムとHMIプログラムを格納するとともに、各種処理プログラムを格納する。なお、PLCプログラムは、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等を実現するためのソフトウェアである。これらのソフトウェアは、成形機コントローラ50を搭載する射出成形機Mの固有アーキテクチャとして構築され、特に、本実施形態に係るデータ表示方法に係わる処理を実行することができる。
次に、このように構成される型開閉装置Mcの動作(機能)を含む本実施形態に係るデータ表示方法について、図2〜図8を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
今、型開閉装置Mcは、型閉工程が開始したものとする(ステップS1)。型閉工程の開始により、型開閉用サーボモータ5sが作動し、クロスヘッド32が前進移動するとともに、可動盤31は型開位置(全開位置)から型閉方向へ前進移動する。この場合、最初に可動盤31が高速で前進移動する高速型閉が行われる。型閉工程では、サーボモータ5sの回転数がロータリエンコーダ4brからの検出パルスSpにより検出され、この検出パルスSpがコントローラ本体50mに付与されることにより可動盤31(可動型Cm)の位置が得られる。即ち、サーボモータ5sの回転数が、予め設定された換算手段(演算式又は換算テーブル)により可動型Cmの位置に換算され、可動型Cmの位置が間接的に検出されることにより可動型Cmの位置に係わる第二位置データDbが得られる(ステップS2)。また、この第二位置データDbは速度検出データに変換され、成形機コントローラ50では、得られた速度検出データと予め設定された速度指令データに基づいて可動盤31の移動速度に対するフィードバック制御が行われるとともに、可動盤31に対する位置制御が行われる。
一方、金型Cに付設した距離センサ4asは、四つのセンサ部33…を備えるため、各センサ部33…(近接センサ33s…)からの検出信号Sdがコントローラ本体50mに付与されることにより可動型Cmの位置が検出される。即ち、可動型Cmの位置が距離センサ4asにより直接検出されることにより第一位置データDaが得られる(ステップS3)。この場合、各センサ部33…から得られる四つのデータを平均して第一位置データDaとすることができる。
そして、第一位置データDaと第二位置データDbは、内部メモリ55に備えるデータメモリ(不揮発性メモリ)に記憶するとともに、ディスプレイ3に型位置グラフAiとしてグラフ表示する(ステップS4)。この場合、型閉工程では、図2に示すような型開閉画面Vcが表示されているため、所定の表示キーをONすることにより、型位置グラフ表示画面Vcsをウィンドウ表示できるようにし、この型位置グラフ表示画面Vcsに、型位置グラフAiを表示することができる。この型位置グラフ表示画面Vcsを図7に示す。型位置グラフ表示画面Vcsにおける型位置グラフAiは次のように表示処理される。まず、型位置グラフ表示画面VcsのX軸(横軸)に、サーボモータ5sに付設したロータリエンコーダ4brから得られる第二位置データDbに係わる位置〔mm〕を対応させるとともに、Y軸(縦軸)に、金型Cに付設した距離センサ4asから得られる第一位置データDaに係わる位置〔mm〕を対応させる。これにより、得られた第一位置データDaと第二位置データDbに対応するドットを、型位置グラフ表示画面Vcs上にプロット表示する。このような第一位置データDaと第二位置データDbは、一定時間間隔(例示は、2.5〔ms〕)毎にサンプリングされるため、得られた第一位置データDa…と第二位置データDb…に対応するドットが順次プロット表示されることにより、図7に示す型位置グラフAiが表示される(ステップS5,S1…)。
さらに、図7中、符号Asは基準データとなる第一位置データDa…と第二位置データDb…を用いた基準グラフを示す。基準データとなる第一位置データDa…と第二位置データDb…には、金型Cの取外し前、望ましくは、型開閉装置Mcに対して金型Cを最初に取付けて成形を行う状態であって、少なくとも正常な良品成形を行うことができる第一位置データDa…と第二位置データDb…を用い、この第一位置データDa…と第二位置データDb…により上述した型位置グラフAiと同様の基準グラフAsを型位置グラフAiに対して重ね描き表示する。したがって、この基準グラフAsに係わるデータ収集は、オペレータが、例えば、型位置グラフ取得モードを選択し、これに基づいてデータ収集を行ってもよいし、或いは、自動取得モードを選択し、生産開始により、自動でデータ収集できるようにしてもよい。そして、収集した第一位置データDa…と第二位置データDb…は、基準データとして登録(記憶)し、型位置グラフ表示画面Vcsには常時表示させる。このように、基準グラフAsを型位置グラフAiに重ね描き表示すれば、型開閉装置Mcから金型Cを取外しかつ再取付けした際における前後の挙動変化をより明確かつ容易に確認できる利点がある。
このような型位置グラフ表示画面Vcsによる型位置グラフAi、更には基準グラフAsの表示は、次のように利用することができる。図7に示す基準グラフAsを見れば、第二位置データDbの0.92〔mm〕付近において、屈曲的に変化する明確な変化点Xsが発生する。この変化点Xsは、図5に示すように、可動型Cmの一部(一点)が最初に固定型Ccに接触した位置と考えられる。したがって、変化点Xsに達した以降は、第二位置データDbが小さくなっても第一位置データDaは僅かに変化する程度の区間が発生するとともに、第二位置データDbの0.60〔mm〕付近におけるXc点から再び変化量が大きくなる現象(挙動)を示し、このXc点が可動型Cmが固定型Ccに全面接触した位置と考えられる。
一方、今、メンテナンスや清掃のため、金型Cを型開閉装置Mcから取外すとともに、メンテナンス作業や清掃作業の終了により、再度、金型Cを型開閉装置Mcに取付けた場合を想定する。そして、この際、成形条件等を含む各種設定において特に異常がないにも拘わらず、成形品にはバリ等の不良が発生したものとする。この場合、金型Cの取付不備又は取付不良等の不具合が考えられるため、上述した型位置グラフ取得モード(又は自動取得モード)を実行させ、型位置グラフ表示画面Vcsに型位置グラフAiを表示させる。図7中のAiは、金型Cの取付不良時における実際に得られた型位置グラフを示しており、この型位置グラフAiでは、変化点Xiが第二位置データDbの0.98〔mm〕付近で発生している。即ち、基準グラフAsの変化点Xsよりも60〔μm〕程度手前で発生しており、このことは、図5における傾きReが金型Cを取外す前の状態よりも大きくなっていることを示している。
したがって、この場合、オペレータは、型位置グラフ表示画面Vcsを見ることにより、金型Cの取付不備又は取付不良等の不具合が発生していることを確認できるため、必要な対策を講じることができる。通常は、金型Cを一旦取外し、異物等が付着していないか点検することにより、再度、取付けることにより解消される場合も多い。なお、何らかの異常、例えば、金型部品の一部に傷や破損がある場合もあり、この場合には、交換等の必要な対策を講じることになる。また、四つのセンサ部44…から得る第一位置データDa…をそれぞれ利用し、色分けした四つの型位置グラフAi…を同時に表示することもできる。この場合には、傾きReの方向を確認できるため、金型Cを取外すことなく、例えば、締付ボルトの締付度合を点検するなどにより解消させることもできる。
よって、第一位置データDa…又は第二位置データDb…における一方のデータをディスプレイ3のX軸又はY軸における一方の軸に対応させ、かつ他方のデータをX軸又はY軸における他方の軸に対応させた型位置グラフAiにより表示するようにしたため、金型Cが閉鎖する前後における可動型Cmの変位に伴う挙動を視覚的かつ誇張的(強調的)に表示することができる。したがって、型開閉装置Mcから金型Cを取外しかつ再取付けした際における前後の挙動変化から型開閉装置Mcに対する金型Cの取付不備又は取付不良等の不具合を容易かつ確実に発見することが可能となり、従来の問題、即ち、当該不具合を発見(特定)できないことに伴う生産効率の低下や生産の遅延を生じる問題を解消できる。
他方、図8には、第一位置データDa…と第二位置データDb…に係わる他のグラフ表示を示す。図8に示す型位置グラフ表示画面Vcseは、X軸(横軸)に、第一位置データDaに係わる位置〔mm〕を対応させるとともに、Y軸(縦軸)に、第二位置データDbに係わる位置〔mm〕を対応させる。これにより、型位置グラフ表示画面Vcseには、図7に示した型位置グラフ表示画面Vcsに対して、第一位置データDa…と第二位置データDb…を入れ替えた型位置データAic(実線)を表示できる。また、Y軸(縦軸)には、単位変位量の比率データを対応させることにより、第一位置データDaに対する
比率グラフBi(点線)を重ね描きすることができる。
以下、この比率グラフBiを表示させる処理について説明する。第一位置データDaと第二位置データDbは、データメモリに記憶されているため、それぞれの単位当たりの変位量を算出する。即ち、第一位置データDa…から第一単位変位量maを演算する(ステップS6)。この場合、一定時間間隔(2.5〔ms〕)毎にサンプリングを行っているため、前後にサンプリングした二つの第一位置データDa…の偏差を算出することにより単位当たりの変位量maが得られる。同様に、第二位置データDb…から第二単位変位量mbを演算する(ステップS7)。この場合も前後にサンプリングした二つの第二位置データDb…の偏差を算出することにより単位当たりの変位量mbが得られる。また、得られた第一単位変位量maと第二単位変位量mbの比率データを、(第二単位変位量/第一単位変位量)=mb/maの演算により求める(ステップS8)。そして、順次得られる比率データを、図8に示すように第一位置データDaに対応する比率グラフBiとしてプロット表示する(ステップS9)。
よって、このような比率グラフBiを表示することにより、可動型Cmの変位に伴う挙動、特に発生する変化点Xicを、図8に示すように、より明瞭化(強調)することができる。即ち、変化点Xicに到達する前は、第一位置データDaと第二位置データDbは、ほぼ1対1で対応するため、単位変位量maとmbの比率もほぼ「1」前後で一定となるが、変化点Xicでは急激に大きくなる。
ところで、この変化点Xicは、前述したように、可動型Cmの一部(一点)が最初に固定型Ccに接触した位置と考えられるため、この比率グラフBiを利用して変化点Xicを検出し、この変化点Xicに対応する第一位置データDaを金型閉鎖位置に係わる位置データDcとして用いることができる。例えば、予め、比率グラフBiに対する閾値を「2」程度に設定し、比率グラフBiを監視すれば、変化点Xicを容易に検出できる(ステップS9,S10)。この場合、設定する閾値が閉鎖検出条件となる。よって、比率グラフBiが閉鎖検出条件を満たしたときの第一位置データDaを取込み、金型閉鎖位置に係わる位置データDcとしてデータメモリに記憶し、金型Cに係わる各種補正や設定等に利用可能である(ステップS11)。このような比率データの変化点Xiから得る位置データDcを利用すれば、より的確な金型閉鎖位置を確実かつ安定に検出できる利点がある。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の手法,構成,数値,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、距離センサ4asとして近接センサ33s…を例示したが、同様の検出を行うことができる光学センサや超音波センサ等の他のセンサを用いてもよい。また、第一位置検出手段4aは、距離センサ4asの代わりに、可動型Cmの移動量を検出するリニアエンコーダを用いてもよい。図9に、可動盤31と固定盤21間に付設したリニアエンコーダ4aeを示す。リニアエンコーダ4aeは、エンコーダ本体71を備え、このエンコーダ本体71の一端部が固定盤21に取付けた固定部72により固定支持されるとともに、中間部位が可動盤31に取付けた検出部73によりスライド自在に支持される。リニアエンコーダ4aeも距離センサ4asと同様に、必要に応じて複数組用いることができる。このようなリニアエンコーダ4aeを用いた場合であっても可動型Cmの位置を直接検出できるため、リニアエンコーダ4ae以外の誤差要因を排除した正確な位置検出を行うことができ、本実施形態に係るデータ表示方法を容易かつ確実に実施できる。
一方、駆動方式は、例示の電動式のみならず油圧式であってもよい。なお、本発明に係るデータ表示方法は、例示の射出成形機Mのみならず、押出成形機等の他の各種成形機にも同様に利用することができる。
3:ディスプレイ,4a:第一位置検出手段,4as:距離センサ,4ae:リニアエンコーダ,4b:第二位置検出手段,4br:ロータリエンコーダ,5:駆動モータ,M:射出成形機(成形機),Mc:トグルリンク式型開閉装置,C:金型,Cm:可動型,Ai:型位置グラフ,Aic:型位置グラフ,As:基準グラフ,Bi:比率グラフ,L:トグルリンク機構