昨今の技術革新に伴い、パーソナル・コンピュータ(PC)やPDA(Personal Digital Assistant)、デジタル・カメラ、ポータブル・メディア・プレーヤなど、テキストや画像、音声などさまざまなメディアからなるコンピュータ・ファイルを扱う各種の情報機器が開発され市販されている。また、この主の情報機器の多くは、メモリ・カードやUSBメモリなどカートリッジ式のメモリ装置を着脱自在に装着するためのカード・スロットやコネクタなどのインターフェースを備えている。ここで、メモリ・カードには、「MEMORYSTICK(登録商標)」や「SD(Secure Digital)カード」など複数の規格があるが、以下では、着脱式のメモリ装置のことを総じて「メモリ・カード」と呼ぶことにする。
例えば、デジタル・カメラにおいては、撮像画像をJPEG(Joint Picture Experts Group)若しくはMPEG(Moving Picture Experts Group)などの所定のファイル・フォーマットに符号化した後、メモリ・カードに保存する。このような場合、比較的小容量の機器内蔵メモリには蓄えきれない、多くの画像を蓄積することができる。また、メモリ・カードが保存データで満杯になったときには、別のメモリ・カードに交換することで、撮像画像を保存するための新たな記憶容量を簡易に得ることができる。
また、デジタル・カメラ上で捕捉した画像ファイルをパーソナル・コンピュータ(PC)などの他の情報機器に移動し、画質調整や再符号化などの画像処理を行なったり、データベース若しくはアルバムなどの形式で画像管理を行なったりすることができる。あるいは、テレビ受像機に転送して撮影画像を大きく表示してみたり、プリンタに画像ファイルを転送してプリントアウトを行なったりすることにより写真として楽しむことができる。
ここで、メモリ・カード上の画像やその他のデータを機器間で移動する方法としては、メモリ・カードを抜き取って、移動先の機器に装着するというのが一般的である。あるいは、メモリ・カードを装着した機器とデータ移動先の機器とを有線インターフェース又は無線インターフェースを利用して、有線若しくは無線の伝送路を経由してデータ伝送を行なうことができる。とりわけ後者の無線通信を利用した場合、データ伝送の度にコネクタの付け替え作業をしてケーブルを引き回す必要がなく、利便性が高い。
図9には、メモリ・カードを装着したモバイル機器から情報機器への、無線による画像データ伝送の例を示している。同図では、モバイル機器としてデジタル・カメラを想定している。デジタル・カメラは、撮った画像を内蔵メモリ又は外部メモリ・カードに画像データとして格納する。そして、無線伝送する際には、目的の画像データを内蔵メモリ又は外部メモリ・カードから読み出し、無線インターフェース経由でPCやテレビ、プリンタなどの画像再生装置に転送する。勿論、PCやテレビ、プリンタなどの受信装置側にも無線インターフェース・モジュールがそれぞれアダプタとして装備されている。無線伝送路による画像データ転送後には、PCでは画像データを表示、格納され、テレビでは画面上で表示出力され、プリンタではプリントアウトされる。
図示のような無線データ伝送を行なうためには、データ送信元であるデジタル・カメラ側に無線インターフェース・モジュールを装備しなければならない。また、送信元が無線インターフェースを内蔵しない機器である場合には、例えば外付けアダプタなどで構成される無線インターフェースを装備する必要がある。また、データ伝送に用いられる無線通信機能としては、Bluetooth通信や、IEEE802.11などの無線LANが想定される。
例えば、無線通信機能を内蔵した外部メモリ・メディアについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。この外部メモリ・メディアは、装着されたホスト機器との間で物理的接続手段を介してデータを授受する有線通信手段と、Bluetooth通信などの近距離無線通信網を介して外部の通信網とデータを送受信する近距離無線通信手段を備えている。したがって、データ送信元となるデジタル・カメラなどのホスト機器は、自身は無線インターフェースを装備していないが、このような外部メモリ・メディアを装着し、このメモリ・メディア内の近距離無線通信手段を駆動して通信網との間でデータの送受信を行なうことができる。
図10には、無線通信機能付きメモリ・カードの構成例を示している。同図において、参照番号100は無線通信機能付きメモリ・カード、参照番号101はデジタル・カメラなどのホスト機器、参照番号102はデータ転送先のプリンタ、あるいはデータ出力先のテレビ・モニタなどの外部機器である。
無線通信機能付きメモリ・カード101には、メモリ・カードとしての基本的な構成要素であるフラッシュ・メモリ106、メモリ制御部107、ホスト機器101とのインターフェース部108が装備されている。そして、例えばBluetooth通信のような無線部104と、通信制御部105がメモリ・カード101に付加されている。通信制御部105は、無線通信の通信プロトコルの制御を行なう。アンテナは、無線通信機能付きメモリ・カード100側には参照番号103として、外部機器102側には参照番号109として実装される。
ホスト機器101は、通常は、インターフェース部108、メモリ制御部107を介して、フラッシュ・メモリ106にデータを書き込んだり、読み出したりするアクセス動作を行なう。フラッシュ・メモリ106内の画像を外部機器102に送る場合には、ホスト機器101は、インターフェース部108、メモリ制御部107を介して、フラッシュ・メモリ106から目的とするデータを読み出す。次いで、インターフェース部108、通信制御部105、無線部104、アンテナ103を経由して、データ転送先である外部機器102に無線伝送を行なう。
ここで、無線通信を実現するには、Bluetooth通信やIEEE802.11といった、所定の通信プロトコルに従った無線通信機能の制御を行なう必要がある。図10に示した例では、無線インターフェース・モジュールを装着するホスト機器側では、当該インターフェース・モジュール内の無線通信機能をプロトコルに従って操作する(すなわち通信制御部105を制御する)ためのドライバ・ソフトウェアをホスト機器にインストールする必要があるため、ユーザにとって面倒である。
また、デジタル・カメラやその他の携帯機器、組み込み型の機器などにおいては、ドライバ・ソフトウェアのインストール操作そのものが不可能な場合がある。この場合、上述したような無線通信機能を搭載した外部メモリ・メディアを使用する場合であっても、無線通信機能を使用することができず、結局のところ、メモリ・カードに格納されたデータを移動するには、メモリ・カードの差し替えや有線接続といった旧来の手法を用いざるを得ない。
また、転送したいファイルの選択といった通信処理に関わる操作を、装着したデジタル・カメラのユーザ・インターフェース上で行なわなければならず、操作が煩雑である。
また、商取引上のメモリ・カードとして考えた場合、フラッシュ・メモリのメモリ・サイズが異なるものや、著作権保護機能の有無など、製造者は数種類の商品ラインアップを用意する必要がある。無線通信機能付きメモリ・カードを市販する場合は、同様にメモリ・サイズや著作権保護機能が相違する複数の商品群を用意しなくてはならなくなり、ラインアップは倍増する。しかしながら、商品のラインアップが増えることは、製造者にとっては煩雑であり、商品を管理する負担が過大となる。
また、ユーザが複数のメモリ・カードを購入する場合、無線通信モジュールがカードに一体となっていると、現実に必要なのはメモリ容量だけであるにも拘らず、全く同じ無線通信モジュールを重ねて購入することになり、割高感を与えることになる。
勿論、メモリ・カードと無線通信モジュールを一体化するのではなく、メモリ・カードを装着するホスト機器側(例えば、デジタル・カメラや携帯電話機など)に無線通信機能を搭載するというデザインも考えられる(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
図11には、無線通信機能モジュール内蔵のデジタル・カメラが出力装置に画像データを無線伝送する画像伝送システムの構成例を示している。
同図において、デジタル・カメラ150は、画像処理ブロック151と、CPU152と、CPU152のプログラムを格納するメモリ153と、外付けのメモリ・カード154と、メモリ・カードを接続するコネクタ155と、無線モジュール156と、アンテナ157で構成される。メモリ・カード154は、例えば、MEMORYSTICK(登録商標)、メモリスティックDuo、SD(Secure Digital)カード、ミニSDカードなどである。
デジタル・カメラ150で撮影された画像は、メモリ・カード154に格納される。このデータを出力装置108側に転送する場合は、画像処理ブロック101内のCPU152は、メモリ・カード・コネクタ155を経由して、メモリ・カード154内のデータを読み出し、無線モジュール156に当該データを渡す。 無線モジュール156は、アンテナ159を介して、当該データを送信する。テレビやプリンタなどの出力装置158は、アンテナ159を通して当該データを受信し、画像出力を行なう。
図11に示したように、ホスト機器に無線通信機能を装備することはユーザにとって、利便性の向上に繋がる。しかしながら、ホスト機器に無線通信機能を内蔵する機器構成を採用する場合、以下のような問題がある。
(1)デジタル・カメラなどのホスト機器には、無線モジュールを実装して配線するためのスペースが必要となる。
(2)ホスト機器には、無線モジュールと接続するためのインターフェースを用意しなければならない。
(3)ホスト機器には、無線モジュールのための特別なドライバ・ソフトウェアをインストールする必要がある。
(4)ホスト機器には、送信するデータの選択などを実施するためのユーザ・インターフェースが必要である。
ホスト機器に無線通信機能を内蔵することで、ユーザにとって利便性が向上するものの、ホスト機器を開発する上では、開発工数の増大や、実装面積の増大、検証工数の増大など、困難度は高まる方向である。
特開2001−77878号公報
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/09/03/10.html
本発明の目的は、無線通信機能を備え、無線通信を介してメモリに記憶したデータを好適に伝送することができる、優れたメモリ・カード用のアダプタ装置及びメモリ装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、情報機器本体でメモリ・カードを受容し、無線通信機能に対応した、メモリ・カード用の優れたコネクタ装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、無線通信機能を備え、メモリ装置に記憶したデータの転送を、メモリ装置を装着したホスト機器上での操作によらず簡易に行なうことができる、メモリ・カード用のアダプタ装置及びメモリ装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、無線通信機能を備え、メモリ装置に記憶したデータの転送を、メモリ装置を装着したホスト機器上での操作によらず簡易に行なうことができる、メモリ・カード用のコネクタ装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、無線通信機能を備え、メモリ装置を装着したホスト機器に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要なく、記憶したデータの無線伝送を行なうことができる、メモリ・カード用のアダプタ装置及びメモリ装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、無線通信機能を備え、メモリ装置を装着したホスト機器に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要なく、記憶したデータの無線伝送を行なうことができる、メモリ・カード用のコネクタ装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、メモリ・カードを受容するアダプタ装置であって、
メモリ・カードを着脱自在に挿入する挿入部と、
ホスト機器に対し着脱自在に接続される有線通信部と、
外部機器と無線伝送路経由で通信動作を行なう無線通信部と、
前記無線通信部による通信動作の制御を行なう通信制御部と、
前記有線通信部に接続されたホスト機器及び前記通信制御部から前記挿入部に挿入中のメモリ・カードに対するアクセス動作を行なうカード・インターフェース部と、
を具備することを特徴とするメモリ・カード用のアダプタ装置である。
また、本発明の第2の側面は、メモリ・カードと、前記メモリ・カードを交換可能に受容するアダプタ装置からなるメモリ装置であって、
前記メモリ・カードは、
データを格納するメモリ部と、
前記メモリ部に対するアクセス動作を制御するメモリ制御部と、
前記アダプタ装置と接続するアダプタ・インターフェース部を備え、
前記アダプタ装置は、
前記メモリ・カードを着脱自在に挿入する挿入部と、
ホスト機器に対し着脱自在に接続される有線通信部と、
外部機器と無線伝送路経由で通信動作を行なう無線通信部と、
前記無線通信部による信動作の制御を行なう通信制御部と、
前記有線通信部に接続されたホスト機器及び前記通信制御部から前記メモリ・カードに対するアクセス動作を行なうカード・インターフェース部を備える、
ことを特徴とするメモリ装置である。
ここで、アダプタ装置の無線通信部は、前記挿入部に挿入中のメモリ・カードから読み出されたデータを無線伝送路経由で外部機器に送信する通信動作を、前記有線通信部に接続されたホスト機器とは独立して行なうことができる。
多くの情報機器においては、メモリ・カードやUSBメモリなどカートリッジ式のメモリ装置を着脱自在に装着するためのカード・スロットやコネクタなどのインターフェースを備えている。この種のメモリ・カードは、近距離無線通信手段を備えることにより、データ伝送の度にコネクタの付け替え作業をしてケーブルを引き回す必要がなく、利便性が高い。ところが、当該モジュール内の無線通信機能をプロトコルに従って操作するためのドライバ・ソフトウェアを情報機器にインストールする必要があるため、面倒である。
また、メモリ・カードは、商品ラインアップとして、メモリ・サイズなどが相違する数種類のものを用意する必要があるが、無線通信機能付きメモリ・カードについてもメモリ・サイズ毎に複数の商品群を用意しなければならず、製造者の負担が過大となる。また、ユーザにとっても、複数のメモリ・カードを購入する場合、全く同じ無線通信モジュールを重ねて購入することになり、割高感を与えることになる。
これに対し、本発明に係るメモリ装置は、メモリ・カードと、メモリ・カードを挿入するアダプタ装置で構成され、無線通信機能はメモリ・カードと同居させず、アダプタ装置内に実装するようにした。そして、この無線通信機能は、アダプタ装置に挿入中のメモリ・カードから読み出されたデータの無線伝送動作を、有線通信部に接続されたホスト機器とは独立して行なうことができる。
PCやテレビ、プリンタなどの外部機器からの無線伝送路を介したデータ要求に対し、アダプタ装置内の通信制御部の制御によってメモリ・カード内のメモリの内容が読み出される。このような場合、デジタル・カメラなどメモリ装置を装着するホスト機器側に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを実装しないで済む。言い換えれば、既存のデジタル・カメラに対しても本発明を適用することができる。
また、メモリ・カードは、無線通信機能と同居しないので、より小型なメモリ・カードとして構成される。例えば、アダプタ装置にメモリ・カードを挿入した状態のメモリ装置は、従来の(無線通信機能付きの)メモリ・カードと同サイズとし、従来製品とのカード・スロット互換を保つことができる。
このようにアダプタ装置に挿入して用いられる小型のメモリ・カードの具体例として、「MEMORYSTICK DUO(登録商標)」や、「ミニSDカード」などを挙げることができる。すなわち、メモリスティックの場合は、メモリスティック・サイズのアダプタに無線通信機能を内蔵させ、メモリ・カードとしてはメモリスティックDuoを用いる。そして、メモリ・カード内のデータをホスト機器とは独立にアダプタ装置内部で読み出しを行ない、無線伝送を行なう。
本発明によれば、メモリ装置としての商品ラインアップは、メモリ・カード部分におけるメモリ・サイズ(並びに著作権保護などの付加機能)で決定され、無線通信部を含むアダプタ装置部分は各ラインアップで共通となることから、製造者の負担が軽減される。
また、ユーザは、必要に応じてメモリ・カードのみを追加購入し、1つの無線通信機能付きアダプタ装置を所持していればいずれのメモリ・カードでも無線通信機能を利用することができるので、コスト負担が軽減される。
また、アダプタ装置が外部機器と行なう無線伝送システムとして、受信電波に対する反射波を変調する反射波伝送方式を採用することができる。すなわち、アダプタ装置内の無線通信部は、前記外部機器からの受信電波に対し伝送データに基づいて変調処理を施した反射波信号のバックスキャッタ送信を行なう。反射波伝送システムによれば、アンテナの負荷インピーダンスを変化させる、あるいは反射波信号路に位相差を与えるなどのスイッチング動作のみにより反射波に変調処理を施すことができるので、他の無線通信システムと比較して圧倒的に低消費電力のデータ伝送路を実現することができる。また、無線通信部のモジュールを小型に構成することができる。
また、前記カード・インターフェース部は、前記無線通信部の接続状態に応じて前記メモリ・カードへのアクセス動作を制御するようにする。すなわち、前記カード・インターフェース部は、アクセスの競合を回避するために、前記有線通信部に接続されたホスト機器又は前記通信制御部を経由した外部機器から前記メモリ・カードへのアクセス動作を択一的に行なう。具体的には、前記カード・インターフェース部は、前記通信制御部から前記メモリ・カードへのアクセス動作が行なわれている間は、前記有線通信部に接続されたホスト機器からのアクセスを禁止するようにする。これによって、前記有線通信部に接続されたホスト機器及び前記通信制御部の双方から前記メモリ・カードへのアクセスの競合に伴う誤動作を回避するとともに、無線通信経由でのメモリ・アクセス要求を円滑に行なうことを保証することができる。勿論、前記ホスト機器から前記メモリ・カードへのデータ転送動作が行なわれている期間は、前記通信制御部から前記メモリ・カードへのアクセス動作が禁止される。
一方、有線通信経由での通信動作とは相違し、無線による通信動作は、処理中の通信が途切れる危険がある。そこで、前記カード・インターフェース部は、メモリの破壊を防止するために、前記通信制御部からは、メモリへの読み出し要求のみを受理し、書き込み要求を許可しないようにしてもよい。
また、本発明の第3の側面は、ホスト機器本体でメモリ・カードを受容するコネクタ装置であって、
メモリ・カードを着脱自在に接続する端子部と、
前記端子部を前記ホスト機器と接続する有線通信部と、
外部機器と無線伝送路経由で通信動作を行なう無線通信部と、
前記無線通信部による通信動作の制御を行なう通信制御部と、
前記有線通信部に接続されたホスト機器及び前記通信制御部から前記端子部に接続中のメモリ・カードに対するアクセス動作を行なうカード・インターフェース部と、
を具備することを特徴とするメモリ・カード用のコネクタ装置である。このコネクタ装置が外部機器と行なう無線伝送システムとして、本発明の第1及び第2の側面と同様に、受信電波に対する反射波を変調する反射波伝送方式を採用することができる。
本発明の第1及び第2の側面では、メモリ・カードをメモリ・カード本体とこれを受容するアダプタ装置の組み合わせとして構成し、アダプタ装置に受容された形態でホスト機器側のメモリ・スロット内に装着され、アダプタ装置内に無線通信機能が搭載されている。
これに対し、本発明の第3の側面では、ホスト機器側においてメモリ・カードを装着するコネクタ装置内に無線通信機能が搭載される。そして、この無線通信機能は、端子部に接続中のメモリ・カードから読み出されたデータの無線伝送動作を、有線通信部に接続されたホスト機器とは独立して行なうことができる。したがって、外部機器からの無線伝送路を介したデータ要求に対し、コネクタ装置内の通信制御部の制御によってメモリ・カード内のメモリの内容を読み出して無線伝送することができるので、ホスト機器側に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを実装する必要はなく、既存のデジタル・カメラに対しても適用することができる。
本発明の第3の側面においても、メモリ装置としての商品ラインアップは、メモリ・カード部分におけるメモリ・サイズ(並びに著作権保護などの付加機能)で決定され、無線通信部を含むコネクタ装置部分は各ラインアップで共通となることから、製造者の負担が軽減される。
また、ユーザは、必要に応じてメモリ・カードのみを追加購入し、無線通信機能付きコネクタ装置を装備したホスト機器を所持していれば、いずれのメモリ・カードでも無線通信機能を利用することができるので、コスト負担が軽減される。
また、前記カード・インターフェース部は、前記無線通信部の接続状態に応じて前記メモリ・カードへのアクセス動作を制御する。具体的には、前記カード・インターフェース部は、前記通信制御部から前記メモリ・カードへのアクセス動作が行なわれている間は、前記有線通信部に接続されたホスト機器からのアクセスを禁止するようにして、前記有線通信部に接続されたホスト機器及び前記通信制御部の双方から前記メモリ・カードへのアクセスの競合に伴う誤動作を回避するとともに、無線通信経由でのメモリ・アクセス要求を円滑に行なうことを保証する。勿論、前記ホスト機器から前記メモリ・カードへのデータ転送動作が行なわれている期間は、前記通信制御部から前記メモリ・カードへのアクセス動作が禁止される。
一方、有線通信経由での通信動作とは相違し、無線による通信動作は処理中の通信が途切れる危険があることから、前記カード・インターフェース部は、メモリの破壊を防止するために、前記通信制御部からは、メモリへの読み出し要求のみを受理し、書き込み要求を許可しないようにする。
本発明によれば、無線通信機能を備え、無線通信を介してメモリに記憶したデータを好適に伝送することができる、メモリ・カード用のアダプタ装置、並びにメモリ・カードとこれを装着したアダプタ装置からなるメモリ装置を提供することができる。
また、本発明によれば、メモリ装置に記憶したデータの転送を、メモリ装置を装着したホスト機器上での操作によらず簡易に行なうことができる、メモリ・カード用のアダプタ装置、並びにメモリ・カードとこれを装着したアダプタ装置からなるメモリ装置を提供することができる。
また、本発明によれば、メモリ装置を装着したホスト機器に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要なく、記憶したデータの無線伝送を好適に行なうことができる、メモリ・カード用のアダプタ装置、並びにメモリ・カードとこれを装着したアダプタ装置からなるメモリ装置を提供することができる。
また、本発明によれば、無線通信機能を装備する際の、複数の商品ラインアップをそろえる製造業者の負担を少なくするとともに、複数の当該商品を購入するユーザの割高感を解消することができる、メモリ・カード用のアダプタ装置、並びにメモリ・カードとこれを装着したアダプタ装置からなるメモリ装置を提供することができる。
本発明に係るメモリ装置は、メモリ・カードと、メモリ・カードを挿入するアダプタ装置で構成され、アダプタ装置内に無線通信機能を備えている。PCやテレビ、プリンタなどの外部機器からの無線伝送路を介したデータ要求に対し、アダプタ装置内の通信制御部の制御によってメモリ・カード内のメモリの内容を読み出して無線伝送することができるので、デジタル・カメラなどメモリ装置を装着するホスト機器側に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを実装しないで済む。これによって、以下のような効果を得ることができる。
(1)デジタル・カメラなどのモバイル機器は、ドライバのインストールなど特別に変更することなく、デジタル・カメラからメモリ・カードに書き込んだ画像データの無線伝送が実現することができる。すなわち、既存のデジタル・カメラに適用可能である。
(2)モバイル機器メーカは、無線通信機能を内蔵する開発をしなくても良くなり、開発スピードを高めることが可能となる。
(3)メモリ装置としての商品ラインアップは、メモリ・カード部分におけるメモリ・サイズなどで決定され、無線通信部を含むアダプタ装置部分はラインアップで共通となることから、製造者の負担が軽減される。
(4)ユーザは、必要に応じてメモリ・カードのみを追加購入し、1つの無線通信機能付きアダプタ装置を所持していればいずれのメモリ・カードでも無線通信機能を利用することができるので、コスト負担が軽減される。
また、外部機器との無線伝送に、受信電波に対する反射波を変調する反射波伝送方式を採用することにより、無線通信部を小型に構成するとともに通信動作に要する消費電力を大幅に削減することができる。
また、本発明によれば、無線通信機能を備え、メモリ装置に記憶したデータの転送を、メモリ装置を装着したホスト機器上での操作によらず簡易に行なうことができる、メモリ・カード用のコネクタ装置を提供することができる。
また、本発明によれば、無線通信機能を備え、メモリ装置を装着したホスト機器に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要なく、記憶したデータの無線伝送を行なうことができる、メモリ・カード用のコネクタ装置を提供することができる。これによって、以下のような効果を得ることができる。
(1) ホスト機器の開発において、単なるメモリ・カード・コネクタを使用するのと同じ感覚で、メモリ・カードの内容を無線伝送する機能を実装することが可能となる。
(2) 無線通信モジュールを新たに実装するより、開発工数や検証工数を少なくすることが可能となる。
(3) 無線通信モジュールを新たに実装するより、実装面積を小さくすることが可能となる。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
第1の実施形態
図1には、本発明の第1の実施形態に係る無線伝送システムの構成例を示している。同図において、参照番号200は、メモリ・カード用のアダプタ装置であり、無線通信機能付きである。また、参照番号201はデジタル・カメラなどのホスト機器であり、メモリ・カード・アダプタ200を交換可能に受容する。また、参照番号202はデータ転送先となるテレビやプリンタなどの外部機器であり、参照番号212は外部機器のアンテナである。
無線通信機能付きのメモリ・カード・アダプタ201には、小型メモリ・カード203を着脱自在に装填することができるスロット(図示しない)が設けられている。また、ホスト機器201には、メモリ・カード203を装填した状態のメモリ・カード・アダプタ201を着脱自在に装填することができるスロット(図示しない)が設けられている。メモリ・カード・アダプタ201は、例えば、小型でない従来のメモリ・カードとスロット互換を備えている。
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ201は、無線通信機能213と、ホスト機器201とデータ通信を行なうインターフェース部210と、小型メモリ・カード203が接続されるコネクタ部211を備えている。コネクタ部211は、例えば、小型のメモリ・カード203を挿入するスロットの最奥部に配設される。無線通信機能213は、無線部208と、通信制御部209を備えている。その他、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ201には、無線部208に接続されるアンテナ207が装備される。アンテナ207は、例えばモノポール・アンテナであり、メモリ・カード・アダプタ201を受容するホスト機器201のスロット(図示しない)の交換口を介して、特定の指向性や偏波を持つ。
無線部208は、無線通信インターフェースとして、例えば無線LANの標準規格であるIEEE802.11やBluetooth通信、反射波伝送などを利用することができる。ここで言う反射波伝送とは、受信電波に対し伝送データに基づいて変調処理を施した反射波信号の送信を行なうバックスキャッタ通信のことである。反射波の変調処理は、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作や、反射信号路における位相差の付与などにより行なうことができる。
無線通信に反射波伝送を用いた場合、無線部208は反射器として構成され、例えばページ単位で要求されるデータを受信電波に対する変調反射波としてバックスキャッタ送信する。このようなデータ伝送動作は、外部機器202側の反射波読取器による制御下で実現することができ、メモリ・カード203を受容するホスト機器201による制御を必要としない。言い換えれば、無線通信機能213付きのアダプタ装置200を装着したデジタル・カメラ201側では、通信プロトコルのバージョン変更などに伴うデバイス・ドライバのインストールやアップデートといった問題から完全に解放される。
小型メモリ・カード203は、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200に挿入され、コネクタ部211で嵌合接続される。図2には、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ201に、小型メモリ・カード203を装着する場合の外観図を示している。無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200側には、無線通信機能213と、アンテナ207が実装されている。
この小型メモリ・カード203は、データを格納するための記憶空間を提供するフラッシュ・メモリ204と、この記憶空間に対してアクセス動作を行なうメモリ制御部205と、受容したメモリ・カード・アダプタ200側とデータ通信を行なうインターフェース部206を備えている。フラッシュ・メモリ204は通常、ページを最小のアクセス単位とし、所定数のページで物理ブロックが構成される。メモリ制御部205は、物理ブロック番号及びページ番号を指定して、所望のデータをアドレスすることができる。
ホスト機器201は、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ201内のインターフェース部201、並びにコネクタ部211を介して、小型メモリ・カード203内のフラッシュ・メモリ204へのアクセス動作を行なうことができる。例えば、ホスト機器201がデジタル・カメラである場合、撮像画像のフラッシュ・メモリ204への書き込みや、フラッシュ・メモリ204に格納した画像データの読み出しを行なうことができる。また、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200は、インターフェース部210経由でデジタル・カメラ201から駆動電力が供給されている。
また、無線部208は、通信制御部209による制御下で無線通信動作を行なうことができ、さらにメモリ・カード・アダプタ201内のインターフェース部201、並びにコネクタ部211を介して、フラッシュ・メモリ114内の画像データへアクセスを行なうことができる。例えば、外部機器202のアンテナ212から、制御信号が無線送信される。これに応答して、デジタル・カメラなどのホスト機器201に装着されている無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200からは、メモリ・カード203から読み取られたJPEG画像データなどの応答信号104が無線送信される。そして、外部機器202は、デジタル・カメラ201側から取得した画像データを、テレビ画面に表示出力したり、プリントアウトしたりすることができる。
インターフェース部210は、ホスト機器201からメモリ・カード203へのアクセスと、無線部208を経由した外部機器202からメモリ・カード203へのアクセスの双方を扱う。アクセスの競合を回避するために、インターフェース部210は、無線部208における無線通信の接続状態に応じてメモリ・カード203へのアクセス動作を制御する。
インターフェース部210は、通常は、ホスト機器201とメモリ・カード203側をスルーで接続しているので、ホスト機器201側からは、無線通信部208は見えない存在となっている。また、無線部208経由で外部機器からメモリ・カード203へのアクセス動作が行なわれている間は、ホスト機器201からのアクセスを禁止して、メモリ・カード203へのアクセス競合に伴う誤動作を回避するとともに、無線通信経由でのメモリ・アクセス要求を円滑に行なうことを保証するようにしている。勿論、ホスト機器201からメモリ・カード203へのデータ転送動作が行なわれている期間は、通信制御部209からメモリ・カード203へのアクセス動作が禁止される。
また、有線通信経由での通信動作とは相違し、無線による通信動作は、処理中の通信が途切れる危険があるので、インターフェース部210は、メモリの破壊を防止するために、通信制御部209からはメモリ・カード203への読み出し要求のみを受理し、書き込み要求を許可しないようにしている。
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200と外部機器202とを接続する無線通信インターフェースとして、例えば無線LANの標準規格であるIEEE802.11や、Bluetooth通信、反射波伝送などを利用することができる。
しかしながら、無線LANは本来コンピュータでの利用を前提として設計・開発されたものであり、モバイル系機器に搭載する場合、その消費電力が問題となる。現在市販されているIEEE802.11bの無線LANカードの多くは、送信時に800mW以上、受信時に600mW以上の消費電力がある。この消費電力は、バッテリ駆動のポータブル機器にとっては、負担が大きい。無線LAN機能を近距離限定で動作させて、その送信電力を小さくしても、消費電力は大幅には低下することができない。特に、デジタル・カメラなどの画像入力装置から画像表示装置側への伝送は、送信比率が通信全体のほとんど占めるような通信形態となるため、なおさら低消費電力の無線伝送手段が求められている。また、Bluetooth通信に関しては、伝送速度が最大でも720kbpsと低速度であり、昨今の高画質化した画像伝送には時間がかかり不便である。
これに対し、反射器が受信電波に対し変調処理を施した反射波信号をバックスキャッタ送信するという反射波通信方式では、とりわけ反射器側からの送信比率が通信のほとんどを占めるような通信形態において、低消費電力化を実現することができる。反射波伝送システムは、変調処理を施した反射波によりデータを送信する反射器と、反射器からの反射波からデータを読み取る反射波読取装置で構成される。データ伝送時には、反射波読取装置が無変調キャリアを送信する。これに対し、反射器は、例えばアンテナの終端のオン/オフなどの負荷インピーダンス操作を用い、無変調キャリアに対し伝送データに応じた変調処理を施すことで、データを送出する。そして、反射波読取装置側では、この反射波を受信し復調・復号処理して伝送データを取得することができる。反射器は、例えば、入射する連続波の電波を反射させるアンテナと、送信データの発生回路と、送信データに対応させてアンテナのインピーダンスを変化させるインピーダンス変化回路で構成される(例えば、特開平01−182782号公報を参照のこと)。
反射波伝送システムでは、アンテナの負荷インピーダンスを変化させる(すなわち、反射波の変調を行なう)ためのアンテナ・スイッチは一般的にガリウム砒素のICで構成され、その消費電力は数10μW以下であり、データ伝送を行なうときの平均電力としては、送達確認方式の場合で10mW以下、一方向伝送では、数10μWでデータ伝送が可能である。これは、一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると、圧倒的な性能差である(例えば、特開2005−64822号公報を参照のこと)。したがって、デジタル・カメラなどのバッテリ駆動のモバイル機器に装着したメモリ・カードに格納したデータを転送する場合であっても、その転送動作時の消費電力を節減することで、バッテリ寿命を大幅に延ばすことができる。
メモリ・カード203と外部機器202間の無線通信機能に反射波伝送を用いた場合、メモリ・カード・アダプタ200内の無線部208は反射器として構成され、外部機器202内の反射波読取器から例えばページ単位で要求されるデータを受信電波に対する変調反射波として返すという単純なデータ送信動作を行なうだけである。このように受信電波に対する反射波を反射器が伝送データに基づいて変調するというバックスキャッタ通信動作は、反射波読取器側から制御下で実現することができ、メモリ・メディア110を収容するホスト機器としてのデジタル・カメラ101の制御が介在しない。
すなわち、メモリ・カード・アダプタ200内に無線通信機能213により、ホスト機器201とは独立して、外部機器202からメモリ・カード203内のフラッシュ・メモリ204を読み取ることができるので、ホスト機器201側では通信プロトコルのバージョン変更などに伴うデバイス・ドライバのインストールやアップデートといった問題から完全に解放される。また、無線部208を構成するモジュール面積は、無線LANを採用する場合と比べると、極端に小さくすることができる。また、メモリ・カードの商品ラインアップ、ユーザのコスト負担といった問題を解決することが可能となる。
続いて、反射波伝送システムを適用した場合における、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200側の無線部208と、外部機器202側の無線部の構成について、詳細に説明する。
図3には、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200内の無線部208の構成を示している。図示のように、無線部208は、アンテナ301と、アンテナ・スイッチ302と、アンテナ負荷303と、バンド・パス・フィルタ(BPF)304と、ASK検波部305とで構成される。本実施形態では、無線電波の周波数としてISMと呼ばれる2.4GHz帯を用いる。
例えばフラッシュ・メモリ204内に保存されている画像データを外部機器202へ転送する場合、無線部208は、メモリ・カード202側のメモリ制御部205によってフラッシュ・メモリ204から読み出された画像データを受け取ると、データのビット・イメージに従ってアンテナ301に接続されたアンテナ・スイッチ302のオン/オフ動作を行なう。例えば、データが1のときはアンテナ・スイッチ302をオンに、データが0のときオフとする。
図示の通り、アンテナ・スイッチ302がオンのときは、アンテナ301は50Ωのアンテナ負荷303で終端され、オフのときは、アンテナ301はオープンとなる。したがって、転送先となる反射波読取装置から到来する電波に対して、オンのときは終端、オフのときは反射の振る舞いをすることから、反射波読取器側では、送信電波の反射を検出することによって画像データを読み取ることができる。すなわち、画像データは、基本的に、アンテナ・スイッチ302のオン/オフ操作に伴うアンテナ負荷インピーダンスの変動によって生じる反射波読取器からの受信電波の反射波としてバックスキャッタ送信されることになる。アンテナ・スイッチ302は一般的にガリウム砒素のICで構成され、その消費電力は数10μW以下であるから、超低消費の無線画像伝送を実現することができる。また、反射器としての無線部208からの反射波信号はASK変調波と等価であるが、それ以外に、PSK又はFSK変調方式を適用することも可能である。
バンド・パス・フィルタ(BPF)304、ASK検波部305は、転送先からASK変調された送達確認信号の受信時に用いるが、この2つのブロックは、伝送の送達確認を行なわない一方向の伝送であれば不要となる。一方、送達確認が行なわれる場合、その制御は通信制御部209で行なわれる。
バンド・パス・フィルタ304は、2.4GHz帯の周波数を通過させ、他の周波数帯を減衰される目的で使用される。送達確認を行なう場合に必要なASK検波部305の消費電力は30mW以下で実現することができる。
したがって、図3に示した無線部208において画像データなどのデータ伝送を行なうときの平均電力としては、送達確認方式の場合で10mW以下、一方向伝送では、数10μWでデータ伝送が可能である。これは、一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると、圧倒的な性能差である。また、無線部208を構成するモジュール面積は、無線LANを採用する場合と比べると、極端に小さくすることができる。
また、図4には、無線通信インターフェースとして反射波伝送を適用した場合における外部機器202側の無線部すなわち反射波読取装置のハードウェア構成を示している。
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202からの画像データは変調反射波で伝送されるため、外部機器202側の反射波読取装置からは反射波を作り出すための無変調のキャリアを送信する必要がある。外部機器202側の反射波読取装置は、2.4GHz帯のアンテナ401と、アンテナ・スイッチ又はこれに代わるサーキュレータ402と、直交検波部404とAGCアンプ405からなる受信部403と、ミキサ408とパワー・アンプ407からなる送信部406と、周波数シンセサイザ409とを備えている。
送信部406から無変調キャリアを送信するためには、通信制御部410からミキサ408に対してある直流電圧を与えることにより実現される。送信する無変調キャリアの周波数は、通信制御部410から制御される周波数シンセサイザ409の周波数で決まる。本実施形態では、ISMと呼ばれる2.4GHz帯を用いている。ミキサ408から出力される無変調キャリアは、パワー・アンプ407にて所定のレベルまで増幅され、サーキュレータ402経由でアンテナ401より送出される。
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202からの反射波は、反射波読取装置から送信される周波数と同じである。この反射波は、アンテナ401で受信され、サーキュレータ402経由で受信部403に入力される。すなわち、直交検波部404には、送信と同じローカル周波数が入力されるため、直交検波部404の出力には、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200側の無線部208で掛けられたASK変調波が現れることになる。 但し、受信した信号はローカル信号と位相が異なるため、I軸信号とQ軸信号には、その位相差に応じた変調信号が現われる。
AGCアンプ部405では、最適値にゲインを制御され、その出力信号は、通信制御部410に渡される。通信制御部410では、I軸及びQ軸の各信号よりデジタル・データへの復調を行ない、正しいデータはJPEGデコーダ411により復号化される。その後、復号データは、例えばさらにアナログ・ビデオ信号(例えばNTSC信号)に変換され、ケーブル経由で外部機器としてのテレビ(図示しない)にビデオ出力される。あるいは、イメージをレンダリングしたデータがプリンタ(図示しない)へ出力され、用紙上にプリントアウトされる。
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202からのデータの送達確認を行なう場合、通信制御部410は、受信したパケット・データが正しければ肯定応答のACK(Acknowledgement)を、誤っていれば否定応答のNACK(Negative Acknowledgement)のデジタル・データをミキサ408に転送し、ASK変調をかける。データの正誤は、画像データ・パケットに付加されたCRC(Cyclic Redundancy Check)符号で判断する。
図5には、図3に示した無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202の無線部208と図4に示した外部機器202の反射波読取装置間で無線伝送を行なうための制御シーケンスを示している。但し、図示の例では、両装置間で送達確認を行なうことを想定する。以下、この制御シーケンスについて説明する。
(ステップ1)
無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202では、外部機器202側の反射波読取装置から制御信号を受信する、あるいはその他の手続きに従って、有線通信モードから無線通信モードに設定される。
(ステップ2)
同様に、外部機器202側の反射波読取装置では、所定の手続きに従って、データ受信待ちモードに設定される。
(ステップ3)
そして、外部機器202側の反射波読取装置は、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202からの反射波信号を受信すべく、無変調キャリアを送信する。
(ステップ4)
無変調キャリアを受信した無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202の無線部208は、反射波を用いて、データ送信動作を開始したいことを伝えるためのデータ送信要求を行なう。
(ステップ5)
データ送信要求を受信した外部機器202側の反射波読取装置は、ASK変調信号により送信許可を送信する。
(ステップ6)
外部機器202側の反射波読取装置は、データ送信要求されたデータ(例えば、画像データや、送信データ・ファイルの一覧データ)を受信すべく、無変調キャリアを送信する。
(ステップ7)
無変調キャリアを受信した無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202の無線部208は、反射波の変調を利用して、パケット化されたデータの送信を行なう。
(ステップ8)
外部機器202側の反射波読取装置は、受信したパケット・データが正しければ、ASK変調で肯定応答のACK(Acknowledgement)を送る。間違っていれば、否定応答のNACK(Negative Acknowledgement)を送信する。ここで、データの正誤は、データ・パケットに付加されたCRC(Cyclic Redundancy Check)符号で判断することができる。
外部機器202側の反射波読取装置がACK又はNACKの送達確認信号を送信する際に、同一信号内に無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202に対するコマンドを含めることも可能である。
以降、目的とするデータの終了まで、ステップ6〜ステップ8の反射波伝送処理は繰り返し実行される。
上述した通信シーケンスでは、画像転送であることから、データの送達確認のため、双方向通信とした。但し、ビデオ・カメラなどのストリーミング・データの転送を行なう際には、一方向の伝送でも構わない。この場合、外部機器202側の反射波読取装置からASK変調された送達確認信号は不要となることから、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202側もその受信が不要となり、さらなる低消費電力化を実現することができる。
図6には、TDD(時分割多重)方式を採用した反射波伝送システムの動作例を示している。本システムでは電波に対する反射波の変調を利用するため、外部機器202の反射波読取装置側は、無変調キャリア送信して反射波を受信する状態と、自ら変調波によりデータ送信する状態を繰り返す。また、反射器(この場合は無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202)側では、無変調キャリアに対する反射波にデータを乗せて返信し、次に反射波読取装置側からの変調波を受信する状態を繰り返す。
反射波伝送システムは、反射器から反射波読読取装置へのアップワードの伝送速度の方が反射波読取装置から反射器へのダウンワードの伝送速度よりも高速であるという非対称の伝送システムである。したがって、上述したように、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ202すなわち反射器側からの送信比率が通信のほとんどを占めるような通信形態において、伝送効率が高まるとともに、低消費電力データ伝送を実現することができる。
ここで、図1に再び戻り、メモリ・カード203と外部機器202間の無線データ伝送について考察する。
従来の構成(例えば特許文献1や図10を参照のこと)では、メモリ・カードを装着したホスト機器が無線通信動作を制御するため、ホスト機器へのデバイス・ドライバ導入の問題がある。これに対し、本実施形態では、小型のメモリ・カード202を装着するメモリ・カード・アダプタ200が反射器としての無線部208を搭載しているので、外部機器202側からの制御下で小型メモリ・カード203内のフラッシュ・メモリ204からのデータ読み出しを行なうことができる。したがって、ホスト機器へのデバイス・ドライバ導入の問題とともに、メモリ・カードの商品ラインアップ、ユーザのコスト負担を解決することができる。
図7には、外部機器202側からの制御で小型メモリ・カード203内のフラッシュ・メモリ204からのデータ読み出しを行なう動作シーケンス例を示している。
まず、ホスト機器201としてのデジタル・カメラに、小型メモリ・カード203を挿入した状態のメモリ・カード・アダプタ200を取り付ける。そして、ホスト機器201を用いて、写真撮影を行なう(701)。
撮影された画像データは、メモリ・カード・アダプタ200のインターフェース210経由で小型メモリ・カード203に転送され、内部のフラッシュ・メモリ204に格納される(702、703)。
ここで、外部機器202としてのテレビ・モニタ(あるいは、PCやPDAなどディスプレイを備えた情報機器)より、撮影した写真画像の表示要求が発生したとする(704)。
このような場合、外部機器202より、データの読み出し要求がアンテナ212より送出される。メモリ・カード・アダプタ200側では、この読み出し要求はアンテナ207で受信され、無線部208経由で通信制御部209に送られる(705)。
通信制御部209は、インターフェース部210及びコネクタ部211で、小型メモリ・カード203に対しデータ要求する。小型メモリ・カード203側では、このデータ要求をインターフェース部206経由で受信すると、メモリ制御部205はフラッシュ・メモリ204内の目的とするデータを読み出し、インターフェース部206経由でメモリ・カード・アダプタ200へ返す(706)。
そして、通信制御部209は、読み出されたデータを、無線部208及びアンテナ207経由で外部機器202に転送する(707)。外部機器202側では、アンテナ212で受信する。
外部機器202側では、目的のデータの読み出しが終了すると、その画像データをデコードし、ディスプレイ画面に表示出力する(708)。
ここで、704から706におけるデータ伝送処理は、外部機器202側でのファイル処理によってファイルの最後まで繰り返される。このデータ伝送処理動作は、外部機器202の反射波読取装置からの無変調キャリアの送信と、反射器としての無線部208による変調反射波の送信とからなるトランザクションで構成される。フラッシュ・メモリ204に対するアクセス動作はページ単位で行なわれることから、要求された画像ファイル分のページに相当する回数だけこのトランザクションが繰り返し(例えば、図5を参照のこと)実行されることになる。
このように、無線通信機能付きメモリ・カード・アダプタ200を用いることにより、ホスト機器201には当該無線通信用のデバイス・ドライバが不要となり、且つ、複数のメモリを用意しなくても小型メモリ・カード203で対応することが可能となり、製造者及びユーザにとって利便性が向上する。
第2の実施形態
本発明の第1の実施形態では、メモリ・カードをメモリ・カード本体とこれを受容するアダプタ装置の組み合わせとして構成し、アダプタ装置に受容された形態でホスト機器側のメモリ・スロット内に装着され、アダプタ装置内に無線通信機能が搭載される。
これに対し、本発明の第2の実施形態として、ホスト機器側でメモリ・カードを装着するコネクタ装置内に無線通信機能を搭載するように構成するデザインも考えられる。
本発明の第2の実施形態においても、同様に、メモリ・カードとしての商品ラインアップは、メモリ・カード部分におけるメモリ・サイズ(並びに著作権保護などの付加機能)で決定され、無線通信部を含むコネクタ装置部分は各ラインアップで共通となることから、製造者の負担が軽減される。また、ユーザは、必要に応じてメモリ・カードのみを追加購入し、無線通信機能付きコネクタ装置を装備したホスト機器を所持していれば、いずれのメモリ・カードでも無線通信機能を利用することができるので、コスト負担が軽減される。
ホスト機器側でメモリ・カード用のコネクタ装置に内蔵された無線通信機能は、メモリ・カードから読み出されたデータの無線伝送動作を、ホスト機器とは独立して行なうことができる。したがって、外部機器からの無線伝送路を介したデータ要求に対し、コネクタ装置内の通信制御部の制御によってメモリ・カード内のメモリの内容を読み出すことができるので、ホスト機器側に通信制御用のドライバ・ソフトウェアを実装する必要はなく、既存のデジタル・カメラに対しても適用することができる。
図12には、本発明の第2の実施形態に係るホスト機器の構成を示している。同図に示すように、ホスト機器としてのデジタル・カメラ250は、撮像画像の処理を行なう画像処理ブロック251と、メモリ・カード253を装着するメモリ・カード・コネクタ252を備えている。
メモリ・カード・コネクタ252は、デジタル・カメラ250内の画像処理ブロック251と有線接続する端子部256と、メモリ・カード253側の端子部258とコンタクトする端子部257と、無線通信部254及びアンテナ端子255を備えている。図示の通り、メモリ・カード・コネクタ252は、メモリ・カード253を奥行き方向に収容するソケット状の構造体であり、その略最奥部には端子部257が配設されており、奥行き方向に挿入されたメモリ・カード253側の端子部258とコンタクトする。
図13には、メモリ・カード・コネクタ252に搭載されている無線通信部254の内部構成をより詳細に示している。同図に示すように、無線通信部254は、無線部259と、アンテナ端子255と、インターフェース部261と、通信制御部260を備えている。
無線部259は、外部機器と無線通信を行なう機能モジュールである。また、インターフェース部261は、ホスト機器側の画像処理ブロック251との有線通信並びにメモリ・カード253へのアクセス動作を行なう。また、通信制御部260は、無線部259及びインターフェース部261における通信動作を制御する。無線通信部254は、インターフェース261経由でホスト機器としてのデジタル・カメラ250から駆動電力が供給されている。
例えば、無線部259は無線部用のICチップとして実装され、通信制御部260とインターフェース部261は1チップのベースバンド制御用LSIとして実装され、これらがベアチップの形で無線通信部モジュール基板上に搭載される。また、この無線通信部モジュール基板の両端には、デジタル・カメラ250内の画像処理ブロック251と有線接続する端子部256と、メモリ・カード253側の端子部258とコンタクトする端子部257がそれぞれ配設される。
また、無線部259から取り出されたアンテナ端子255は、さらにホスト機器250内のアンテナ素子212まで引き出されている。デジタル・カメラ製品の多くは、メモリ・カード用のスロットをバッテリ挿入口の近傍に配置し、単一の電池蓋を用いてメモリ・カードとバッテリの双方を内部に密閉するように構成されている(例えば、特開2002−354303号公報を参照のこと)。このようなデザインの場合、アンテナ素子がメモリ・カード用のコネクタと一体であると、アンテナ素子は電池蓋で機器内部に埋没して十分な感度が得られなくなることから、無線部259から取り出したアンテナ端子255をアンテナ素子262まで引き出すようにしている。
インターフェース部261は、ホスト機器250の画像処理ブロック251からメモリ・カード253へのアクセスと、無線部259を経由した外部機器からメモリ・カード253へのアクセスの双方を扱う。アクセスの競合を回避するために、インターフェース部261は、無線部259における無線通信の接続状態に応じてメモリ・カード253へのアクセス動作を制御する。
インターフェース部261は、通常は、画像処理ブロック251とメモリ・カード253側をスルーで接続しているので、画像処理ブロック251側からは、無線通信部254は見えない存在となっている。また、無線部259経由で外部機器からメモリ・カード253へのアクセス動作が行なわれている間は、画像処理ブロック251からのアクセスを禁止して、メモリ・カード253へのアクセス競合に伴う誤動作を回避するとともに、無線通信経由でのメモリ・アクセス要求を円滑に行なうことを保証するようにしている。勿論、画像処理ブロック251からメモリ・カード253へのデータ転送動作が行なわれている期間は、通信制御部260からメモリ・カード253へのアクセス動作が禁止される。
また、有線通信経由での通信動作とは相違し、無線による通信動作は、処理中の通信が途切れる危険があるので、インターフェース部261は、メモリの破壊を防止するために、通信制御部260からはメモリ・カード253への読み出し要求のみを受理し、書き込み要求を許可しないようにしている。
また、インターフェース部261は、メモリ・カード253へのインターフェース・プロトコルを実現する以外に、ホスト機器250側からの駆動電力を受け取り、無線部259や通信制御部260にも供給する。
本実施形態では、無線通信部254は、無線通信インターフェースとして反射波伝送を利用する。この場合、無線部259は反射器として構成され、例えばページ単位で要求されるデータを受信電波に対する変調反射波として送出する。このようなデータ伝送動作は、外部機器202側の反射波読取器による制御下で実現することができ、ホスト機器201による制御を必要としない。すなわち、メモリ・カード253を装着するホスト機器としてのデジタル・カメラ201側では、通信プロトコルのバージョン変更などに伴うデバイス・ドライバのインストールやアップデートといった問題から完全に解放される。
メモリ・カード・コネクタ252内の無線通信部254がデータ転送先となるテレビやプリンタなどの外部機器との間で反射波伝送を行なう場合、外部機器は本発明の第1の実施形態とほぼ同一な構成でよい。また、反射器並びに反射波読取器はそれぞれ図3及び図4に示したものと同様でよいので、ここではこれ以上説明しない。
図14には、外部機器202側からの制御でメモリ・カード253からのデータ読み出しを行なう動作シーケンス例を示している。
まず、ホスト機器250としてのデジタル・カメラにメモリ・カード253を取り付ける。そして、ホスト機器201を用いて、写真撮影を行なう(1401)。
そして、撮影された画像データは、メモリ・カード・コネクタ252のインターフェース部261経由でメモリ・カード253に転送され、内部のフラッシュ・メモリに格納される(1402、1403)。このとき、インターフェース部261は、通常は、画像処理ブロック251側とメモリ・カード253側をスルーで接続する。
次いで、外部機器上でのユーザ操作(あるいはリモコン操作)により、画像の表示要求が発生する(1404)。例えば、テレビ・モニタ(あるいは、PCやPDAなどディスプレイを備えた情報機器)より、撮影した写真画像の表示要求が発生したとする。
このような場合、外部機器より、データの読み出し要求がアンテナ252及び無線部259経由で、通信制御部260に送られる(1405)。
通信制御部260は、インターフェース部261、端子部257経由で、メモリ・カード253内の目的のデータを読み出す(1406)。このとき、インターフェース部261は、画像処理ブロック201側からのアクセスは禁止する。
次いで、通信制御部260で読み出されたデータは、無線部259及びアンテナ262経由で要求元の外部機器に転送される。(1407)。ここで、上述した1404から1406までの処理は、外部機器側でのファイル・システム処理によってファイルの最後まで繰り返される。
そして、目的のデータの読み出しが終了すると、外部機器側ではその画像データをデコードし、例えばディスプレイ画面に表示出力する(1408)。
このようにして、無線通信機能付きコネクタを用いることにより、メモリ・カードを装備するホスト機器に簡便に無線機能を提供することが可能となる。
多値変調を利用した反射波データ伝送
最後に、多値変調を利用した反射波データ伝送について説明しておく。反射波伝送システムでは、一般に、ASK(Amplitude Shift Keying)などの比較的ビットレートの低い変調方式が採用されている。但し、これらの変調方式では伝送速度の面で問題がある。これに対し、例えば、位相差が異なる複数の反射路を設け、伝送データに応じて反射路をスイッチングすることにより、BPSKやQPSK、8相PSK変調など、より高いビットレートの位相変調方式を実現することができる。
図8には、反射器側において、QPSK変調方式を実現する無線部の構成例を示している。図示の無線部は、アンテナ1001と、アンテナ1001に直列に接続された3つの位相器1002、1003、1004と、アンテナ1001と位相器1002の間、位相器1002と1003の間、及び位相器1003と1004の間にそれぞれ接続された高周波スイッチ1005、1006、1007によって構成される。
位相器1002、1003、1004は、受信電波1008の波長λに対し、λ/8となるようなストリップ・ラインなどの線路によって構成される。このとき、ストリップ・ラインの長さLは、基板の誘電率εを考慮して決定され、下式の通りとなる。但し、εeffは基板の実効誘電率である。
また、基板上での信号の伝送速度Sは下式の通りとなる。但し、C0は光速である。
また、受信電波が各位相器を通過するのに要する時間は下式の通りとなる。但し、Tは受信電波の周期である。
ここで、受信電波1008は、各位相器1002、1003、1004を通過することで360/T×T/8だけ位相が回り、それぞれ片道で45度、往復で90度の相違を得る。各位相器1002、1003、1004は、アンテナ1001から直列的に接続されており、高周波スイッチ1005、1006、1007のオン/オフの組み合わせにより短絡点が設けられる。したがって、到来した受信電波1008は短絡点において反射するが、スイッチのオン/オフに応じて往復する信号路に相違を設けることで、反射波に対して4通りの位相差が与えられる。
高周波スイッチ1005のみがオンとなるとき、受信電波の反射は図中a点で起こる。また、高周波スイッチ1006のみがオンとなるとき、受信電波の反射は図中b点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると、位相器12を経由しているので、位相は90度シフトすることになる。また、高周波スイッチ17のみがオンとなるとき、反射は図中c点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると位相器1002と1003を経由しているので、位相は180度シフトすることになる。また、すべての高周波スイッチ1005〜1007がオフとなるとき、反射は図中d点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると位相器1002と1003、1004を経由しているので、位相は270度シフトすることになる。したがって、高周波スイッチ1005、1006、1007を選択的にオンにすることにより、相互に90度ずつ位相の異なる4つの位相を有する反射波を作ることができる。
データ伝送を行なう場合、伝送データを2ビットずつに区切り、2ビットの0と1の組み合わせに応じた位相を割り当てることにより、QPSK変調を実現する。具体的には、送信データを2ビットずつに区切り、00のときは高周波スイッチ15のみをオンに、01のときは高周波スイッチ1006のみをオンに、11のときは高周波スイッチ1007のみをオンに、10のときはすべての高周波スイッチ15〜17をオフにするように動作する。
このようして、データ2ビットの値に従い、相互に90度ずつ位相の異なる4つの位相を有する反射波を作ることが可能で、信号空間上に(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)の4点を配置することができるので、QPSK変調された反射波を作ることができる。
例えば、本出願人に既に譲渡されているWO 2005/36767号公報には、QPSK変調処理を取り入れたバックスキャッタ方式の通信システムについて開示されている。