JP4871783B2 - パターン形成方法 - Google Patents
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Description
微細パターンは、通常、有機材料からなり、例えばリソグラフィー法やナノインプリント法等の技術によって形成される。たとえばリソグラフィー法においては、基板等の支持体の上に、樹脂等の基材成分を含むレジスト組成物からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト組成物をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト組成物をネガ型という。
そして、上記レジストパターンをマスクとして、基板をエッチングにより加工する工程を経て半導体素子等が製造される。
レジスト組成物には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすレジスト組成物として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている(たとえば特許文献1参照)。たとえばポジ型の化学増幅型レジストは、通常、基材成分として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂を含有しており、レジストパターン形成時に、露光によって酸発生剤から酸が発生すると、露光部がアルカリ現像液に対して可溶性となる。
液浸露光によれば、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様の高解像性を達成でき、しかも焦点深度幅の低下もないといわれている。また、液浸露光は、既存の露光装置を応用して行うことができる。そのため、液浸露光は、低コストで、高解像性で、かつ焦点深度幅にも優れるレジストパターンの形成を実現できると予想され、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コスト的にも、解像度等のリソグラフィー特性的にも、半導体産業に多大な効果を与えるものとして大変注目されている。
液浸露光は、あらゆるパターン形状の形成において有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることも可能であるとされている。現在、液浸露光技術としては、主に、ArFエキシマレーザーを光源とする技術が活発に研究されている。また、現在、液浸媒体としては、主に水が検討されている。
すなわち、まず、図2(a)に示すように、基板101と下層膜102とハードマスク103とが積層された積層体を用意する。次に、ハードマスク103上にレジスト膜を設け、該レジスト膜を、図2(b)に示すように、マスク105を介して選択的に露光し、現像することにより、スペース幅d/4のトレンチパターンが複数、ピッチdで配置されたレジストパターン104を形成する。次に、レジストパターン104をマスクとしてハードマスク103のエッチングを行った後、残ったレジストパターン104を除去する。これにより、図2(c)に示すように、レジストパターンが転写されたハードマスク103’が得られる。次に、図2(d)に示すように、マスク105の位置をシフトさせ、また、ハードマスク103’上にレジスト材料を塗布することにより、ハードマスク103’内の空隙を充填する、ハードマスク103’の厚さよりも厚い膜厚のレジスト膜を形成する。そして、該レジスト膜を、シフトさせたマスク105を介して選択的に露光し、現像してレジストパターン106を形成する。次に、レジストパターン106をマスクとしてハードマスク103’のエッチングを行った後、残ったレジストパターン106を除去する。これにより、図2(e)に示すように、スペース幅d/4のトレンチパターンが複数、ピッチd/2で配置されたパターンが転写されたハードマスク103”が得られる。そして、ハードマスク103”をマスクとしてエッチングを行うことにより、下層膜102にハードマスク103”のパターンが転写され、使用したマスク105の1/2のピッチのパターン102’が形成される。
このように、ダブルパターニング法によれば、同じ露光波長の光源を用いても、また、同じレジスト組成物を用いても、より高解像性のレジストパターンを形成することが可能である。また、ダブルパターニング法は、既存の露光装置を用いて行うことができる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ダブルパターニング法における工程数を低減できる新規なパターン形成方法を提供することを目的とする。
[1]化学増幅型レジスト組成物を用いてパターンを形成するパターン形成方法であって、
支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程と、前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、前記第一のレジストパターン表面に、金属酸化物膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程と、前記被覆パターンに対し、200℃以上の温度でベーク処理を施す工程と、前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程と、前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像してパターンを形成する工程とを含み、前記被覆膜を、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が有機溶剤(S’)に溶解してなる金属酸化物膜形成用材料を用いて形成することを特徴とするパターン形成方法。
[2]前記金属化合物(W)が、イソシアネート基を2個以上有するケイ素化合物である[1]記載のパターン形成方法。
また、本明細書において、「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「低級アルキル基」は、炭素数1〜5のアルキル基である。
「脂肪族」とは、当該基または化合物が芳香族性を有さないことを意味する。
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基を意味する。
本発明のパターン形成方法は、支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程(以下、膜形成工程(1)という。)と、前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程(以下、パターニング工程(1)という。)と、前記第一のレジストパターン表面に、金属酸化物膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程(以下、被覆工程という。)と、前記被覆パターンに対し、200℃以上の温度でベーク処理を施す工程(以下、高温ベーク工程という。)と、前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程(以下、膜形成工程(2)という。)と、前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像してパターンを形成する工程(以下、パターニング工程(2)という。)とを含む。
本実施形態においては、まず、図1(a)に示すように、支持体1上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜2を形成する。次に、図1(b)に示すように、第一のレジスト膜2を選択的に露光し、現像して複数のレジストパターン3を形成する。次に、図1(c)に示すように、複数のレジストパターン3の表面に、それぞれ、金属酸化物膜からなる被覆膜4を形成して複数の被覆パターン5を形成する。次に、被覆パターン5に対し、200℃以上の温度でベーク処理を施す。次に、図1(d)に示すように、複数の被覆パターン5が形成された支持体1上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、複数の被覆パターン5間の空隙を充填する第二のレジスト膜6を形成する。次に、図1(e)に示すように、第二のレジスト膜6の、複数の被覆パターン5を形成した位置とは異なる位置を選択的に露光し、現像する。現像により、第二のレジスト膜6の露光部が除去され、結果、複数のレジストパターン7(第二のレジスト膜6の未露光部)と、複数の被覆パターン5とからなるパターン(以下、このように、被覆膜で被覆されていないレジストパターンと被覆パターンとからなるパターンを複合パターンということがある。)が支持体1上に形成される。
このようにして、支持体1上に、パターニング工程(1)で形成したレジストパターン3よりも狭ピッチの複合パターンが形成される。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
支持体1としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体1としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層膜等の有機膜が挙げられる。特に、下層膜が設けられていると、基板上に、高アスペクト比のパターンを形成でき、半導体の製造等において有用であり、好ましい。
有機膜形成用材料については、詳しくは後述する。
有機膜の厚さは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは50〜450nmである。この範囲内とすることにより、高アスペクト比のパターンが形成できる、基板エッチング時に十分な耐エッチング性が確保できる等の効果がある。
第一の化学増幅型レジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。本発明においては、ポジ型レジスト組成物を用いることが好ましい。
具体的には、たとえば第一の化学増幅型レジスト組成物を支持体1上にスピンナー等で塗布し、80〜150℃の温度条件下、ベーク処理(プレベーク)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、有機溶剤を揮発させることにより第一のレジスト膜2を形成できる。
第一のレジスト膜2の厚さは、好ましくは50〜500nm、より好ましくは50〜450nmである。この範囲内とすることにより、レジストパターン3を高解像度で形成できる、エッチングに対する十分な耐性が得られる等の効果がある。
パターニング工程(1)は、従来公知の方法を利用して行うことができる。たとえば、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介して第一のレジスト膜2を選択的に露光し、80〜150℃の温度条件下、ベーク処理(PEB(露光後加熱))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施して施し、例えば0.1〜10質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でアルカリ現像する。
本実施形態では第一の化学増幅型レジスト組成物としてポジ型のものを使用しているため、アルカリ現像を行うと、露光部が除去される一方、未露光部はそのまま支持体1上に残り、ポジ型のレジストパターン(第一のレジストパターン3)が形成される。
なお、第一の化学増幅型レジスト組成物としてネガ型のものを用いる場合は、逆に、未露光部が除去される一方、露光部はそのまま残り、ネガ型のレジストパターンが形成される。
露光に用いる波長は、特に限定されず、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。
液浸露光では、上述したように、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光を行う。
より具体的には、液浸露光は、上記のようにして得られたレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で、所望のマスクパターンを介して露光(浸漬露光)することによって実施できる。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ液浸露光によって露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C3HCl2F5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C5H3F7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられる。フッ素系不活性液体は、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
次に、形成した複数の第一のレジストパターン3の表面に、それぞれ、金属酸化物膜からなる被覆膜4を形成して複数の被覆パターン5を形成する。
被覆膜4の形成方法としては、金属化合物(W)が溶剤(S’)に溶解してなる金属酸化物膜形成用材料を用いる方法が好ましく用いられる。かかる方法によれば、低温(たとえば室温(20〜25℃))で金属酸化物膜が形成できる。
該金属酸化物膜形成用材料については詳しくは後述するが、この金属酸化物膜形成用材料を用いる場合、被覆膜5は、たとえば、当該金属酸化物膜形成用材料をパターンの表面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥することによって形成できる。このとき、塗膜を形成した後、乾燥が完了するまでの間に、空気中の水分により塗膜中の金属化合物(W)が徐々に加水分解して水酸基が生じ、この水酸基が脱水縮合することにより、レジストパターンの表面に、金属酸化物からなる薄膜(被覆膜)が形成される。また、金属酸化物膜形成用材料が、後述するように有機物を含む場合には、形成される被覆膜は、有機物と金属酸化物との複合薄膜となる。
このとき、レジストパターン3が、膜形成用材料に含まれる金属化合物(W)が有する官能基と反応する反応基(好ましくは水酸基またはカルボキシ基)を有すると、この反応基と、金属化合物(W)の官能基とが反応または吸着し、レジストパターン3と被覆膜4との結合が強固になるため好ましい。
なお、被覆膜4を形成する操作は、反応性制御の点から、不活性ガス雰囲気下で処理することが望ましい。このとき、雰囲気中に水分が含まれていない場合には、膜を形成するために、後述する加水処理を行う必要がある。
支持体1上に金属酸化物膜形成用材料を塗布する際の温度(塗布温度)は、用いられる金属化合物(W)の活性によって異なり、一概に限定することはできないが、一般には、0〜100℃の範囲内で決定すればよい。
また、支持体1上に金属酸化物膜形成用材料を塗布してから乾燥するまで(塗布、および必要に応じて行われる洗浄、吸着等の処理等を含む)の時間、すなわち加水分解前の塗膜とパターンとの接触時間と、その間の温度(接触温度)は、用いられる金属化合物(W)の活性によって異なり、一概に限定することはできないが、一般には、数秒から数時間で、上記塗布温度と同様の範囲内で決定すればよい。
前記塗膜は、高温ベーク工程を行う前に乾燥させてもよい。この場合、塗膜の乾燥方法としては、特に制限はなく、公知の方法が使用できる。たとえば200℃未満の温度でベーク処理を行ってもよく、窒素ガス等の乾燥用ガスを用いてもよく、また、スピンナーを用いて金属酸化物膜形成用材料の塗布を行った場合には、そのまま振り切り乾燥を行ってもよい。前記ベーク処理のベーク温度の上限は、好ましくは190℃以下、より好ましくは170℃以下である。該ベーク温度の下限としては、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。
さらに、洗浄を行うことにより、被覆膜4が、膜厚が薄くて均一なものとなる。すなわち、洗浄を行うと、レジストパターン3上の、化学的に吸着していない余分な金属化合物(W)が除去され、一方、化学的吸着等により比較的強くパターン表面に結合した金属化合物(W)はパターン表面に均一に残る。そのため、ナノメーターレベルの金属酸化物の薄膜が、均一な膜厚で、極めて精度良く、かつ高い再現性で形成される。
特に、レジストパターン3上に塗布されることから、有機溶剤(S”)は、当該レジストパターン3を溶解しないものを選択して用いることが好ましい。これにより、当該レジストパターン3表面に有機溶剤(S”)を塗布した際に、レジストパターン3の形状を損ないにくい。
有機溶剤(S”)としては、特に、後述する金属酸化物膜形成用材料おいて溶剤(S’)として挙げるものと同様のものを用いることが好ましい。これにより、上記効果がさらに向上する。
洗浄条件(洗浄時間、有機溶剤(S”)の使用量等)は、洗浄方法、有機溶剤(S”)の種類等を考慮して適宜設定すればよい。
たとえばスピンコート法による洗浄を行う場合、たとえば100〜5000rpm、1〜100秒間程度の範囲内で適宜調節すればよい。
洗浄は、金属酸化物膜形成用材料からなる塗膜中の溶剤(S’)が完全に揮発する前に行うことが好ましい。該溶剤(S’)が完全に揮発していないかどうかは、視認により確認できる。
また、本工程においては、塗膜を形成した後、乾燥させるまでの間に、塗膜と水とを接触させて膜表面の金属化合物(W)を加水分解させ、膜表面に水酸基を生成させる加水処理を行ってもよい。これにより、後述するように複数の塗膜が積層された被覆膜を形成しやすくなり、それによって、被覆膜の厚みを容易に調整することができる。すなわち、塗膜表面に生成した水酸基と、その上に金属酸化物膜形成用材料が塗布されて形成された塗膜中の金属化合物(W)とが反応して強固に密着し、複数の塗膜が積層された被覆膜が得られる。
加水処理の手段は、公知の方法が特に限定されずに使用できる。たとえば、塗膜を水と接触させるゾルゲル法が最も一般的である。より具体的には、塗膜表面に水を塗布する方法や、塗膜を形成した積層体を少量の水を含んだ有機溶媒に浸漬する方法が挙げられる。なお、金属化合物(W)として水との反応性が高いものを含む場合には、大気中に放置することにより、大気中の水蒸気と反応し、加水分解されるため、加水処理を行わなくとも自然に加水分解が進行する。
水としては、不純物等の混入を防止し、高純度の金属酸化物を生成するために、脱イオン水を用いることが好ましい。
また、加水処理において、酸や塩基等の触媒を用いることにより、これらの工程に必要な時間を大幅に短縮することも可能である。
被覆膜4の厚さは、たとえば、金属酸化物膜形成用材料の塗布、洗浄および加水処理の一連の操作を繰り返して行うことにより調整できる。すなわち、金属酸化物膜形成用材料を塗布して塗膜を形成し、洗浄し、必要に応じて放置し、そして加水分解処理を行う一連の操作を繰り返して行うことにより、所望の厚さを有する均一な薄膜を形成することができる。
この様な操作によって、例えば数nmから数十nm、条件によっては数百nmの厚さの被覆膜を精度良く形成できる。
例えば金属化合物(W)として、シリコンテトライソシアネート、チタンブトキシド等の一種類の金属原子を含有する金属アルコキシドを含む膜形成用材料を用いた場合、接触条件により、数オングストロームの厚みの薄膜を逐次積層化することができる。この場合、1サイクルあたりの膜厚の増加は、金属酸化物膜形成用材料の積層回数に対応している。一方、金属化合物(W)として、アルコキシドゲルの微粒子等を用いると、1サイクルあたり、60nm程度の厚みの薄膜を積層化することもできる。また、スピンコート法により金属酸化物膜形成用材料による塗膜を形成する場合は、用いる溶媒や金属化合物(W)の濃度、スピン速度等を変えることにより、膜厚を数nmから200nm程度まで任意に制御することができる。
その際、1サイクル毎に使用する金属化合物(W)の種類を変えることにより、異なる種類の金属酸化物膜が積層された被覆膜4を形成することもできる。
次に、被覆パターン5に対し、200℃以上の温度でベーク処理(高温ベーク)を施す。
本工程におけるベーク温度が200℃以上であることにより、被覆パターン5の溶剤耐性、露光・現像耐性等が向上する。そのため、後の膜形成工程(2)で第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布した際、あるいはパターニング工程(2)において、第二のレジスト膜6に対して露光および現像を行った際に、被覆パターン5が、形状を損なうことなく支持体上に維持され、結果、良好な形状の複合パターンが支持体1上に形成される。
かかる効果が得られる理由は、定かではないが、以下のことが考えられる。すなわち、たとえば金属化合物(W)としてイソシアネート基を2個以上有するケイ素化合物を用いて被覆膜を形成した場合に、当該被覆膜について、ベーク温度を変えてフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により観察すると、高温ベークにおけるベーク温度を上げるに従って、−Si−OHのピークが減少し、−Si−O−Si−のピークが増加する傾向がある。このことから、高温ベークにより、金属化合物(W)の加水分解により生じた複数の水酸基間で、あるいは当該水酸基とレジストパターン3との間での架橋が促進され、レジストパターン表面に、密着性よく、緻密な膜が形成されることが考えられる。また、緻密な膜が形成されることによって、化学増幅型レジスト組成物の溶剤や、現像液の染み込みが抑制されることが考えられる。
高温ベークのベーク温度は、レジストパターン3の耐熱性等を考慮すると、200〜250℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。
ベーク時間は、特に限定されないが、高温ベーク処理による効果、レジストパターン形状の安定性等を考慮すると、通常、10〜180秒間が好ましく、20〜120秒間がより好ましい。
ベーク方法としては、従来公知の方法が使用でき、たとえばベーク炉を使用する方法等が挙げられる。
次に、複数の被覆パターン5が形成された支持体1上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、複数の被覆パターン5間の空隙を充填する第二のレジスト膜6を形成する。
本実施形態においては、第二の化学増幅型レジスト組成物として、ポジ型レジスト組成物を用いる。第一の化学増幅型レジスト組成物と第二の化学増幅型レジスト組成物とは、同じポジ型レジスト組成物を用いてもよく、異なるポジ型レジスト組成物を用いてもよい。
第二のレジスト膜6は、第一のレジスト膜2と同様、従来公知の方法によって形成することができる。
第二のレジスト膜6の膜厚は、少なくとも、被覆パターン5の高さと同じか、それよりも厚いことが好ましい。すなわち、支持体1を第二のレジスト膜6側から見た場合に、その表面が平坦であることが好ましい。
次に、第二のレジスト膜6の、複数の被覆パターン5を形成した位置とは異なる位置を選択的に露光し、現像する。これにより、支持体1上に、複数の被覆パターン5と、第二のレジスト膜6に新たに形成された複数のレジストパターン7とからなる複合パターンが形成される。
ここで、本発明においては、被覆工程で形成した被覆パターンと完全に一致する場合以外はすべて「被覆パターンを形成した位置とは異なる位置」であり、全く重複していない場合、および一部重複している場合を含むものとする。
本発明においては、被覆パターン5を形成した位置と、パターニング工程(2)で選択的に露光する位置とが全く重複しないことが好ましい。これにより、パターニング工程(1)で形成したレジストパターンよりも、パターン間の間隔(ピッチ)が狭い狭ピッチのパターンが形成できる。
このようなマスクパターンの移動は、使用する露光装置のプログラムを調節することにより実施できる。
マスクパターンは、1つの方向に平行移動させてもよく、回転移動させてもよい。たとえば、パターニング工程(1)で、複数のラインが一定のピッチで配置されたラインアンドスペースのマスクパターンを用いてラインアンドスペースのレジストパターンを形成し、パターニング工程(2)で、当該マスクパターンを、ラインの方向に対して垂直方向に平行移動させ、パターニング工程(1)で形成したラインパターンとラインパターンとの中間位置にラインパターンを形成することにより、最初に形成したラインアンドスペースのピッチよりも狭ピッチで、ラインアンドスペースの複合パターンが形成される。
より具体的には、例えば、パターニング工程(1)でライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のラインアンドスペースのレジストパターン(第一のレジストパターン)を形成し、パターニング工程(2)で、マスクパターンを、ラインの方向に対して垂直方向に200nm平行移動させ、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のラインアンドスペースのレジストパターン(第二のレジストパターン)を形成することにより、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:1のラインアンドスペースの複合パターンを形成することができる。
また、パターニング工程(1)で用いたマスクパターンを回転移動させたり、パターニング工程(1)で用いたマスクパターンとは異なるマスクパターンを用いること等により、多様な複合パターンを形成することができる。
マスクパターンを移動させる方法以外の方法としては、露光機中のステージ(基板を載せている台)を移動させる方法を用いることもできる。
すなわち、形成された複合パターン表面に、金属酸化物膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成し、該被覆パターンが形成された前記支持体上に化学増幅型レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成し、該レジスト膜を選択的に露光し、現像して複合パターンを形成する操作を複数回行ってもよい。これにより、さらに狭ピッチのパターンを形成したり、複雑な形状のパターンを形成することができる。
すなわち、支持体1として、基板上に有機膜が設けられているものを用いる場合は、該有機膜のエッチングを行うことができる。これにより、該有機膜に、複合パターンに忠実なパターン(有機膜パターン)を形成できる。さらに、これらのパターン(複合パターンおよび有機膜パターン)をマスクとして基板のエッチングを行うことができる。
支持体1として基板を用いる場合、つまり複合パターンが基板上に直接形成されている場合は、そのまま、複合パターンをマスクとして、基板のエッチングを行うことができる。
このように、基板をエッチングすることにより、半導体デバイス等を製造することができる。
エッチングの方法は、公知の方法が利用でき、たとえば有機膜のエッチングは、ドライエッチングが好ましい。特に、被覆膜のそれらのエッチングに対する耐性が高い点、生産効率の点から、酸素プラズマエッチング、またはCF4ガスもしくはCHF3ガスを用いたエッチングが好ましく、中でも酸素プラズマエッチングが好ましい。
基板のエッチングは、ハロゲンガスを用いたエッチングが好ましく、フッ化炭素系ガスを用いたエッチングが好ましく、特にCF4ガス又はCHF3ガスを用いたエッチングが好ましい。
本発明においては、第一及び二の化学増幅型レジスト組成物の両方がポジ型であることが好ましい。
そのため、該被覆パターンの上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、パターニング工程(2)を行っても、当該第二の化学増幅型レジスト組成物に含まれる有機溶剤によって第一のレジストパターンが溶解したり、露光・現像によって被覆パターンの形状が損なわれる等の不具合が生じるおそれがない。
したがって、従来のダブルパターニング法においては、図2に示すように、基板上に下層膜を設ける必要があり、また、基板上にパターンを形成するためには、レジスト膜のパターニングを少なくとも2回、その下層のハードマスクのエッチングを少なくとも2回行う必要があったが、本発明においては、必ずしも下層膜を設ける必要はなく、また、エッチングを行うことなく基板上にパターンを形成することが可能である。
また、本発明においては、2回のパターニングの両方にポジ型レジスト組成物を用いることができる。すなわち、従来、ポジ型レジスト組成物を用いて形成された第一のレジストパターン上に、被覆膜を形成せずに第二のポジ型レジスト組成物を塗布すると、後で塗布した第二のポジ型レジスト組成物の有機溶剤によって、第一のレジストパターンが溶解してしまう。そのため、これまで、ポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストパターンの上にポジ型レジスト組成物を塗布することは行われていない。しかし、本発明においては、被覆膜を形成することにより、第一のレジストパターンが有機溶剤から保護されるため、ポジ型レジスト組成物同士を組み合わせてパターンを形成することができる。
さらに、本発明のパターン形成方法によれば、既存の露光装置や既存の化学増幅型レジスト組成物を用いても、微細なパターンを形成できる。
本発明のパターン形成方法において、前記第一のレジストパターン表面に、金属酸化物膜からなる被覆膜を形成するためには、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が有機溶剤(S’)に溶解してなる金属酸化物膜形成用材料(以下、単に膜形成用材料ということがある。)が好ましく用いられる。
金属化合物(W)は、加水分解により水酸基を生成し得る化合物である。
かかる金属化合物(W)を含有する膜形成用材料をレジストパターン表面に塗布すると、または塗布後さらに水、好ましくは脱イオン水を塗布すると、低温(たとえば室温程度)であっても、金属化合物(W)が大気中の水分や塗布した水と反応し、加水分解により水酸基を生成する。そして、生成した水酸基同士が脱水縮合し、複数の金属化合物(W)分子同士が結合して、膜密度の高い緻密な金属酸化物膜が形成される。このような緻密な膜は、金属を含有していることから耐エッチング性に優れており、また、低温で被覆可能であることから、被覆されるレジストパターンの形状を損うこともない。
さらに、前記レジストパターンが、その表面にカルボキシ基、水酸基等の反応基を有するものであると、該レジストパターン表面の反応基と、金属酸化物(W)から生成した水酸基とが反応(脱水縮合、吸着等)して、レジストパターン表面に強固に密着した被覆膜が形成される。
該官能基は金属原子に直接結合していることが望ましい。
該官能基の数は、1分子中に2以上であることが好ましい。1分子中に2以上の官能基を有することにより、加水分解によって生成された水酸基どうしが脱水縮合し、複数の金属化合物(W)分子同士が連続的に結合して強固な金属酸化物膜が形成される。
該官能基の数は、特に、金属原子1つに対して2以上であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、特には4であることが望ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、たとえばメトキシ基(−O−Me)、エトキシ基(−O−Et)、n−プロポキシ基(−O−nPr)、イソプロポキシ基(−O−iPr)、n−ブトキシ基(−O−nBu)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。
上記の中で、アルコキシ基、イソシアネート基は、特に、当該膜形成用材料がレジストパターン上に塗布されて金属酸化物膜(被覆膜)が形成される場合に、レジストパターン表面にカルボキシ基、水酸基等の反応基が存在すると、これと縮合反応するため好ましい。これにより、加水分解後に形成される水酸基とレジストパターン表面の反応基とが縮合反応して、被覆膜とレジストパターン表面とが強固に密着する。
上記の中で、カルボニル基、ハロゲン原子は、特に、当該膜形成用材料がレジストパターン上に塗布されて被覆膜が形成される場合に、レジストパターン表面にカルボキシ基、水酸基等の反応基が存在すると、これに吸着するため好ましい。これにより、加水分解後に形成される水酸基と該表面の反応基とが吸着し、被覆膜とレジストパターン表面とが強固に密着する。
これらの中でも、イソシアネート基、ハロゲン原子(特に塩素原子)が、高活性で、加熱処理を特に行わずとも簡便に被覆膜を形成することができるため好ましく、特にイソシアネート基が好ましい。
金属化合物(W)を構成する金属として、好適なものとしては、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、ランタニド、イットリウム、バリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、タンタル等が挙げられ、チタン、ケイ素が好ましく、特にケイ素が好ましい。
また、金属化合物(W)中の金属原子の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。
アルコキシ基を有する金属化合物(以下、「金属アルコキシド類」ということがある)としては、以下のものが挙げられる。
例えば、チタンブトキシド(Ti(O−nBu)4)、ジルコニウムプロポキシド(Zr(O−nPr)4)、アルミニウムブトキシド(Al(O−nBu)3)、ニオブブトキシド(Nb(O−nBu)5)、シリコンテトラメトキシド(Si(O−Me)4)、ホウ素エトキシド(B(O−Et)3)等の希土類金属以外の金属アルコキシド化合物;
ランタニドイソプロポキシド(Ln(O−iPr)3)、イットリウムイソプロポキシド(Y(O−iPr)3)等の希土類金属の金属アルコキシド化合物;
バリウムチタンアルコキシド(BaTi(OR60)x)等のダブルアルコキシド化合物(なお、ここでの「R60」は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Xは2〜4の整数である);
メチルトリメトキシシラン(MeSi(O−Me)3)、ジエチルジエトキシシラン(Et2Si(O−Et)2)等の、2個以上のアルコキシ基を有し、かつアルコキシ基以外の有機基を有する金属アルコキシド化合物;
アセチルアセトン等の配位子を有し、2個以上のアルコキシ基を有する金属アルコキシド化合物等が挙げられる。
さらには、チタンブトキシドテトラマー(C4H9O[Ti(OC4H9)2O]4C4H9)等の、複数個または複数種の金属元素を有する二核またはクラスター型のアルコキシド化合物や、酸素原子を介して一次元に架橋した金属アルコキシド化合物に基づく高分子等も、上記金属アルコキシド類に含まれる。
具体的には、テトライソシアネートシラン(Si(NCO)4)、チタンテトライソシアネート(Ti(NCO)4)、ジルコニウムテトライソシアネート(Zr(NCO)4)、アルミニウムトリイソシアネート(Al(NCO)3)等が挙げられる。
ハロゲン原子を有する化合物は金属錯体であってもよい。
具体的には、テトラクロロチタン(TiCl4)、テトラクロロシラン(SiCl4)等が挙げられる。また、金属錯体として、塩化コバルト(CoCl2)等も挙げられる。
該ケイ素化合物の1分子中のケイ素の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。中でも、以下の一般式(w−1)で表される化合物が好ましい。
SiWa ・・・(w−1)
[式中、aは2〜4の整数、Wはイソシアネート基(NCO基)またはハロゲン原子を示し、複数のWは相互に同じであっても異なっていてもよい。]
Wはイソシアネート基またはハロゲン原子であり、ハロゲン原子については上記と同様であり、塩素原子であることが望ましい。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
溶剤(S’)は、本発明の効果に優れることから、前記金属化合物(W)と反応する官能基を有さない溶剤(S’1)を含有することが好ましい。
溶剤(S’1)としては、金属化合物(W)と反応する官能基を有さず、かつ使用する金属化合物(W)を溶解できるものであればよく、従来公知の有機溶剤から選択して用いることができる。
金属化合物(W)と反応する官能基としては、上述したように、ビニル基等の炭素−炭素二重結合を有する基や、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。溶剤(S’1)がかかる官能基を有さないものであると、金属化合物(W)が溶剤(S’)中において安定に存在するため、膜形成能に優れる。
ここで、本明細書において、「エッチング選択比」とは、金属酸化物膜で被覆されたレジストパターン(被覆パターン)をマスクとして非パターン部基板等のエッチングを行う際の、被覆パターンと非パターン部基板等との間の見かけ上のエッチング速度の差を意味する。
通常、レジストパターン表面に膜形成用材料を塗布した場合、特に基板上に有機BARCなどの有機膜が設けられている場合、被覆選択性が低く、非パターン部基板等の表面も金属酸化物膜で被覆されてしまう。そのため、金属酸化物膜で被覆されたパターン(被覆パターン)をマスクとしてエッチングを行う際に、金属酸化物膜によって非パターン部基板等のエッチングが阻害され、見かけ上、被覆パターンと非パターン部基板等との間で充分なエッチング選択比が得られないという問題がある。
しかし、上記のような溶剤(S’1)を用いることにより、被覆選択性が良好となり、非パターン部分に対するエッチング選択比が良好となる。これは、パターン上に当該溶剤(S’1)を含む膜形成用材料を塗布した後、金属化合物(W)が加水分解して膜になるまでの間に溶剤(S’1)がほとんど揮発することなく残っているためと推測される。すなわち、基板の上に形成されたパターンをマスクとしてエッチングをするプロセスにおいて、レジストパターン上に膜形成用材料を塗布して塗膜を形成した後、該塗膜中の溶剤が、金属化合物(W)が加水分解して膜になる前に揮発してしまうと、金属化合物(W)が、パターン表面だけでなく、非パターン部基板等の表面にも物理的に吸着して金属酸化物膜が形成され、見かけ上のエッチング選択比を低下させるおそれがある。これに対し、沸点が155℃以上の溶剤(S’1)を含有することにより、溶剤(S’)の揮発が抑制され、これらの問題が改善されると推測される。
特に、後述するように、膜形成用材料の塗布後、表面の洗浄(リンス処理)を行うと、非パターン部基板等に対するエッチング選択比がさらに向上する。これは、洗浄を行うまでの間、溶剤(S’1)がほとんど揮発することなく残っているため、化学的吸着等により比較的強く付着しているパターン表面の金属化合物(W)は洗浄してもそのまま残るが、物理的吸着等により比較的弱く付着している非パターン部基板等表面の金属化合物(W)は洗浄により除去され、結果、非パターン部基板等の表面には金属酸化物膜がほとんど形成されないためと推測される。
溶剤(S’1)の沸点は、160℃以上がより好ましく、165℃以上がさらに好ましい。また、沸点の上限は、特に制限はないが、塗布性等を考慮すると、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
脂肪族化合物としては、その構造中に環を含まない鎖式化合物であってもよく、また、その構造中に環を有する環式化合物であってもよく、環式化合物が好ましい。また、環式化合物は、炭化水素であることが好ましく、特に飽和の炭化水素であることが好ましい。このような環式化合物としては、例えば、モノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカン、これらの環にアルキル基等の置換基が結合した化合物などを例示できる。
鎖式化合物としては、たとえば、n−ヘキサン(沸点約69℃)、n−ヘプタン(沸点約98℃)等が挙げられる。
環式化合物としては、たとえば、後述する一般式(s’−1)で表される化合物等が挙げられる。
このような溶剤としては、出発原料が天然物質である溶剤が挙げられる。
出発原料が天然物質である溶剤としては、たとえば植物の精油成分から得られるテルペン系溶剤(たとえば後述するp−メンタン、o−メンタン、m−メンタン等の単環式モノテルペンや、ピナン等の二環式モノテルペンなど)等が挙げられる。
R21〜R23のうちの少なくとも2つのアルキル基は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
本発明においては、R21〜R23の少なくとも1つが分岐状のアルキル基であることが好ましく、特に、少なくとも1つがイソプロピル基であることが好ましい。
化合物(s’−1)は、特に、イソプロピル基およびメチル基の両方を有することが好ましい。
ここで、アルキル基が、「シクロヘキサン環における当該アルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成している」とは、当該アルキル基から水素原子を1つ除いた基(アルキレン基)によって、シクロヘキサン環上の、当該アルキル基が結合した炭素原子と、それ以外の炭素原子との間が架橋されていることを意味する。
本発明においては、特に、本発明の効果に優れることから、溶剤(S’1)がp−メンタンであることが好ましい。
溶剤(S’)中、溶剤(S’1)の割合は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%がより好ましく、最も好ましくは100質量%である。
溶剤(S’2)としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;トルエン、ベンゼン、クメン等の芳香族化合物などを挙げることができ、緻密な膜が形成できる点から、クメン(沸点約152℃)が好ましい。
溶剤(S’2)は1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
膜形成用材料には、金属化合物(W)および溶剤(S’)の他に、任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、たとえば有機化合物が挙げられる。これにより、金属酸化物と有機化合物との複合化膜が形成できる。
有機化合物は、上述した溶剤(S’)に溶解するものであれば、特に制限はない。ここでいう溶解とは、有機化合物単独で溶解する場合に限らず、4−フェニルアゾ安息香酸のように、金属アルコキシド類との複合化によりクロロホルム等の溶媒に溶解する場合も含まれる。
有機化合物の分子量については特に制限はない。
この様な有機化合物として、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸等の水酸基やカルボキシ基を有する高分子化合物;デンプン、グリコゲン、コロミン酸等の多糖類;グルコース、マンノース等の二糖類、単糖類;末端に水酸基やカルボキシ基を持つポルフィリン化合物やデンドリマー等が好ましく用いられる。
カチオン性高分子化合物の具体例として、PDDA(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサン、末端にアミノ基を持つデンドリマー等を挙げることができる。
有機化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
有機化合物を配合する場合、その配合量は、金属化合物(W)100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
すなわち、従来より、SiO2膜等のシリカ系被膜の形成には、化学気相成長法(以下、CVD法ということがある)、SOG(spin−on−glass)法等が用いられている。SOG法とは、一般的に、ケイ素化合物を有機溶剤に溶解した溶液(以下SOG溶液ということもある)を塗布し、加熱処理することによって、SiO2を主成分とする膜(以下SOG被膜ということがある)を形成する方法である(たとえば特開2003−167346号公報、特公平8−3074号公報、特許第2739902号公報、特許第3228714号公報等を参照。)。
このシリカ系被膜のような金属酸化物膜は、優れた耐エッチング性を有するとされているが、このような金属酸化物膜をレジストパターン表面に形成しようとした場合、種々の問題がある。たとえば、耐エッチング性に優れた良質な金属酸化物膜を得るためには、たとえばCVD法やSOG法の場合、400℃以上の高温で焼成し、緻密な金属酸化物膜とする必要があるが、このような高温プロセスは、時間やコストがかかり、製造効率が悪い等の問題がある。また、レジストパターン表面に金属酸化物膜を被覆する際に、上記のような高温処理によって、被覆されるレジストパターンが熱ダレを起こすなど、レジストパターンの形状を保つことが困難である。
これに対し、上述した金属酸化物膜形成用材料によれば、レジストパターンの形状を保持できる程度の比較的低温で金属酸化物膜を形成できる。
したがって、たとえば当該被覆膜で被覆された被覆パターンをマスクとして、基板や、基板上に設けられた有機膜のエッチングを行った際に、被覆パターンの形状を損なうことなく、被覆パターンに忠実なパターンを基板や有機膜に転写することができる。また、有機膜に、被覆パターンに忠実なパターンを転写できることにより、高アスペクト比のパターンを形成することもできる。なお、アスペクト比とは、パターンの下方(基板側)の幅に対するパターンの高さの比で表される。
また、レジストパターン表面に膜厚の均一な金属酸化物膜を形成できるため、該金属酸化物膜で被覆された被覆パターンをマスクとして基板等のエッチングを行って該被覆パターンを転写した際に、基板等に形成されるパターンの形状、解像性等が良好となる。
また、低温処理(加熱処理して被覆膜を形成しても良いし、加熱処理しなくても被覆膜を形成することができる)でレジストパターンの被覆が可能であり、その処理方法も簡便なので、生産効率の向上、コストダウンを図ることができ、種々のレジストパターンの被覆に適用可能である。
本発明のパターン形成方法に用いられる第一の化学増幅型レジスト組成物、第二の化学増幅型レジスト組成物としては、特に制限はなく、それぞれ、これまで化学増幅型レジスト組成物として提案されている多数の化学増幅型レジスト組成物のなかから、使用する露光光源、リソグラフィー特性等に応じて適宜選択して用いることができる。
第一の化学増幅型レジスト組成物、第二の化学増幅型レジスト組成物は、それぞれ、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
本発明においては、第一の化学増幅型レジスト組成物および第二の化学増幅型レジスト組成物の両方がポジ型レジスト組成物であることが好ましい。
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのパターンを形成しやすい。
前記分子量が500以上の有機化合物は、分子量が500以上2000以下の低分子量の有機化合物(以下、低分子化合物という。)と、分子量が2000より大きい高分子量の樹脂(重合体)とに大別される。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。樹脂(重合体)の場合は、「分子量」としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000より大きい樹脂を示すものとする。
(A)成分としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する低分子化合物であってもよく、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂であってもよく、これらの混合物であってもよい。
化学増幅型レジスト組成物の(A)成分としては、親水性基を有するものが好ましい。親水性基を有することによって、該化学増幅型レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した際に、当該レジストパターン上に、均一に、密着性の良好な被覆膜を形成することができる。すなわち、(A)成分が親水性基を有することにより、レジストパターン表面上に親水性基が存在することとなる。そして、該親水性基が、レジストパターン上に形成される金属酸化物膜と強固に結合する官能基(反応基)として機能し、それによってレジストパターン上に、均一に高密度の被覆膜を形成することができる。
(A)成分における親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基(−C(O)−)、エステル基(エステル結合;−C(O)−O−)、アミノ基、アミド基からなる群から選択される1種以上が好ましい。これらの内、水酸基(特にはアルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、カルボキシ基、エステル基がより好ましい。
中でもカルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基がパターン表面上に被覆膜を形成しやすいので特に好ましい。また、ナノレベルでラインエッジラフネス(パターン側壁の凹凸)の小さいパターンを形成でき好ましい。
(A)成分が低分子化合物の場合、(A)成分としては、親水性基を、1分子当たり1〜20当量有するものが好ましく、より好ましくは2〜10当量の範囲である。ここで「1分子当たり1〜20当量の親水性基を有する」とは、1分子中に親水性基が1〜20個存在することを意味する。
(A)成分が樹脂の場合、(A)成分は、親水性基を、0.2当量以上有することが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8当量、さらに好ましくは0.6〜0.75当量の範囲である。これは、当該樹脂が、親水性基を有する構成単位とそれ以外の構成単位からなるとすると、前者の構成単位が20モル%以上、より好ましくは50〜80モル%、さらに好ましくは60モル%〜75モル%であることを意味する。
なお、本明細書において「構成単位」および「単位」は、樹脂(重合体、共重合体)を構成するモノマー単位を意味する。
かかるネガ型レジスト組成物においては、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により(A)成分と架橋剤との間で架橋が起こり、(A)成分がアルカリ現像液に対して可溶性から難溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ネガ型レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。
ネガ型レジスト組成物の(A)成分としては、通常、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂(以下、アルカリ可溶性樹脂という。)が用いられる。
該アルカリ可溶性樹脂としては、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の低級アルキルエステルから選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。なお、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方または両方を示す。
架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤を用いると、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。
架橋剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
かかるポジ型レジスト組成物は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により酸解離性溶解抑制基が解離し、(A)成分がアルカリ現像液に対して可溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して難溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。
・(A−1)成分:親水性基および酸解離性溶解抑制基を有する樹脂。
・(A−2)成分:親水性基および酸解離性溶解抑制基を有する低分子化合物。
以下、(A−1)成分および(A−2)成分の好ましい態様をより具体的に説明する。
(A−1)成分としては、親水性基を有する構成単位と酸解離性溶解抑制基を有する構成単位とを有する樹脂が好ましい。
当該樹脂中の、前記親水性基を有する構成単位の割合は、当該樹脂を構成する全構成単位の合計量に対し、20〜80モル%であることが好ましく、20〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%がさらに好ましい。
当該樹脂中の、前記酸解離性溶解抑制基を有する構成単位の割合は、当該樹脂を構成する全構成単位の合計量に対し、20〜80モル%であることが好ましく、20〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。
好ましくは、前記親水性基を有する構成単位が、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基を有する構成単位であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アルコール性水酸基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステル、ヒドロキシスチレンから誘導される単位である。
なお、本明細書において、「(α−低級アルキル)アクリル酸」とは、アクリル酸(CH2=CH−COOH)およびα−低級アルキルアクリル酸の一方あるいは両方を示す。α−低級アルキルアクリル酸は、アクリル酸におけるカルボニル基が結合している炭素原子に結合した水素原子が、低級アルキル基で置換されたものを示す。「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」は「(α−低級アルキル)アクリル酸」のエステル誘導体であり、アクリル酸エステルおよびα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方あるいは両方を示す。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下(α−低級アルキル)アクリレート構成単位ということがある。「(α−低級アルキル)アクリレート」は、アクリレートおよびα−低級アルキルアクリレートの一方あるいは両方を示す。
「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン又はα―低級アルキルヒドロキシスチレンのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下ヒドロキシスチレン単位ということがある。「α−低級アルキルヒドロキシスチレン」は、フェニル基が結合する炭素原子に低級アルキル基が結合していることを示す。
「α−低級アルキルアクリル酸エステルから誘導される構成単位」及び「α−低級アルキルヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」において、α位に結合している低級アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基であり、直鎖または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
該低級アルキル基は、水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
当該(A−11)成分においては、露光によって酸発生剤から発生する酸の作用によって、構成単位(a2)および/または構成単位(a3)において開裂が生じ、これによって、はじめはアルカリ現像液に対して難溶性であった樹脂において、そのアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。その結果、露光・現像により、化学増幅型のポジ型のパターンを形成することができる。
構成単位(a1)は、フェノール性水酸基を有する単位であって、好ましくは下記一般式(I)で表されるヒドロキシスチレンから誘導される単位である。
−OHのベンゼン環への結合位置は、特に限定されるものではないが、式中に記載の4の位置(パラ位)が好ましい。
構成単位(a1)は、パターンを形成する点からは、(A−11)成分中に40〜80モル%、好ましくは50〜75モル%含まれることが好ましい。40モル%以上とすることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができ、パターン形状の改善効果も得られる。80モル%以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
また、パターン上に被覆膜が形成される点からは、構成単位(a1)は、(A−11)成分中に、50モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。上限は特に限定されないが80モル%以下である。上記の範囲であると、フェノール性水酸基の存在により、パターン上に良好な被覆膜が形成でき、良好な形状のパターンを得ることができる。またパターンと被覆膜との密着性が良好となる。
構成単位(a2)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(II)で表される。
この様な酸解離性溶解抑制基Xは、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
R11、R12、R13が脂肪族環式基を有さない場合には、例えばR11、R12、R13がいずれもメチル基であるものが好ましい。
R11、R12、R13のいずれかが脂肪族環式基を有する場合において、脂肪族環式基が単環の脂肪族環式基である場合は、構成単位(a2)として、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基を有するもの等が好ましい。
脂肪族環式基が多環の脂環式基である場合、構成単位(a2)として好ましいものとしては、例えば下記一般式(IV)で表されるものを挙げることができる。
構成単位(a3)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(VI)で表されるものである。
中でも、tert―ブチルオキシカルボニル基、tert―ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基が好ましい。
酸解離性溶解抑制基X’としては、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
一般式(VI)において、ベンゼン環に結合している基(−OX’)の結合位置は特に限定するものではないが式中に示した4の位置(パラ位)が好ましい。
構成単位(a4)は、アルカリ現像液に対して難溶性の単位であって、下記一般式(VII)で表されるものである。
n’は0または1〜3の整数を示すが、0であることが好ましい。
また、(A−11)成分は、前記構成単位(a1)、(a2)、(a3)、(a4)以外のものを任意に含むことができるが、これらの構成単位の合計の割合が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%が最も好ましい。
特には、第三級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレンと、1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレンとの混合物であることが好ましい。かかる混合を行う場合、各重合体の混合比(質量比)(第三級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレン/1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレン)は、例えば1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2とされ、さらに好ましくは2/8〜5/5である。
(A−12)成分としては、酸解離性溶解抑制基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a5)を有する樹脂が好ましい。α−低級アルキル基については上記と同様である。
構成単位(a5)の酸解離性溶解抑制基は、露光前の(A−12)成分全体をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に(B)成分から発生した酸の作用により解離し、この(A−12)成分全体をアルカリ現像液に対して可溶性へ変化させる基である。
また、(A−12)成分においては、構成単位(a5)における酸解離性溶解抑制基が、(B)成分から発生した酸により解離すると、カルボン酸を生成する。この生成したカルボン酸の存在により、レジストパターン上に形成される被覆膜との密着性が向上する。
ここで、「第3級アルキルエステルを形成する基」とは、アクリル酸のカルボキシ基の水素原子と置換することによりエステルを形成する基である。すなわちアクリル酸エステルのカルボニルオキシ基[−C(O)−O−]の末端の酸素原子に、鎖状または環状の第3級アルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、第3級アルキル基とは、第3級炭素原子を有するアルキル基である。
鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、例えばtert−ブチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
環状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、後述する「脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示するものと同様のものが挙げられる。
このような環状または鎖状のアルコキシアルキル基としては、1−メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−イソプロポキシエチル、1−シクロヘキシルオキシエチル基、2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基等が挙げられる。
脂肪族環式基としては、単環または多環のいずれでもよく、例えばArFレジスト等において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。耐エッチング性の点からは多環の脂環式基が好ましい。また、脂環式基は炭化水素基であることが好ましく、特に飽和の炭化水素基(脂環式基)であることが好ましい。
単環の脂環式基としては、例えば、シクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。多環の脂環式基としては、例えばビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。
具体的には、単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。多環の脂環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
これらの中でもアダマンタンから1個の水素原子を除いたアダマンチル基、ノルボルナンから1個の水素原子を除いたノルボルニル基、トリシクロデカンからの1個の水素原子を除いたトリシクロデカニル基、テトラシクロドデカンから1個の水素原子を除いたテトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
また、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位であって、そのエステル部に上記した環状のアルコキシアルキル基を有する単位、具体的には2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基等の置換基を有していても良い脂肪族多環式アルキルオキシ低級アルキル(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
R1の低級アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基であることが、工業的に入手が容易であることから好ましい。
R2及びR3の低級アルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。中でも、R2およびR3が共にメチル基である場合が工業的に好ましい。具体的には、2−(1−アダマンチル)−2−プロピルアクリレートから誘導される構成単位を挙げることができる。
環状の第3級アルキル基としては、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示したものと同じであり、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基等を挙げることができる。
また、基−COOR4は、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3または4の位置に結合していてよいが、結合位置は特定できない。また、アクリレート構成単位のカルボキシ基残基も同様に式中に示した8または9の位置に結合していてよい。
(A−12)成分中、構成単位(a5)の割合は、(A−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%であることが好ましく、30〜50モル%がより好ましく、35〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによってパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a6)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基または水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。
構成単位(a6)としては、アクリル酸エステルのエステル側鎖部にラクトン環からなる単環式基またはラクトン環を有する多環の環式基が結合した構成単位が挙げられる。なお、このときラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a6)としては、例えば、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた単環式基や、ラクトン環含有ビシクロアルカンから水素原子を1つ除いた多環式基を有するもの等が挙げられる。
構成単位(a6)として、より具体的には、例えば以下の一般式(IV’)〜(VII’)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
構成単位(a6)は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
(A−12)成分中、構成単位(a6)の割合は、(A−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましく、30〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a7)により、(A−12)成分全体の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ現像液に対する溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。また、当該レジスト組成物を用いて形成されるレジストパターンと、該レジストパターン表面に形成される被覆膜との密着性が向上する。
構成単位(a7)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基または水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
多環式基としては、前述の構成単位(a5)である「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。
構成単位(a7)としては、下記一般式(VIII’)〜(IX’)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、nが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
(A−12)成分中、構成単位(a7)の割合は、(A−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましく、20〜35モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a8)としては、上述の構成単位(a5)〜(a7)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではない。
構成単位(a8)としては、例えば多環の脂肪族炭化水素基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等が好ましい。該多環の脂肪族炭化水素基は、例えば、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、イソボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易い等の点で好ましい。構成単位(a8)としては、非酸解離性基であることが最も好ましい。
構成単位(a8)として、具体的には、下記(X’)〜(XII’)の構造のものを例示することができる。
(A−2)成分としては、分子量が500以上2000以下であって、親水性基を有するとともに、上述の(A−1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基XまたはX’を有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基XまたはX’で置換したものが挙げられる。
(A−2)成分は、例えば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
なお、酸解離性溶解抑制基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
(B)成分としては、従来、化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部とされる。上記範囲の下限値以上とすることにより充分なパターン形成が行われ、上記範囲の上限値以下であれば溶液の均一性が得られやすく、良好な保存安定性が得られる。
化学増幅型レジスト組成物には、パターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という。)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り、通常0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
具体例としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの中でも、PGMEA、EL、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
(S)成分の使用量は特に限定されない。通常、化学増幅型レジスト組成物が、支持体上に塗布可能な濃度の液体となる量が用いられる。
上述した膜形成工程(1)において、支持体1として、基板上に有機膜が形成されたものを用いる場合、該有機膜を形成するための有機膜形成用材料としては、半導体素子や液晶表示素子の製造において、一般的に用いられているレジストや樹脂を用いればよい。
なお、有機膜形成用材料には、レジスト膜のような、電子線や光に対する感受性は必ずしも必要とされない。
また、本発明のパターン形成方法により形成される複合パターンを用いて有機膜をエッチングすることにより、該複合パターンを有機膜へ転写し、有機膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機膜を形成できる材料であることが好ましい。
中でも酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機膜を形成できる材料であることが好ましい。
このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、ブリューワサイエンス社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
中でも、上述した様に、エッチング工程において酸素プラズマエッチングを用いる場合、有機膜を、酸素プラズマエッチングによりエッチングしやすく、かつハロゲンガス、具体的にはCF4ガス又はCHF3ガス等のフッ化炭素系ガスに対して耐性が比較的高い材料から構成すると好ましい。
また、上記有機BARCと基板との間に、ノボラック樹脂、アクリル樹脂及び可溶性ポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂成分を含む有機膜を形成しても良い。
これらの材料は、酸素プラズマエッチング等のエッチングを行いやすいと同時に、フッ化炭素系ガスに対する耐性が強く、本発明において好適である。すなわち一般に、基板等のエッチングはフッ化炭素系ガス等のハロゲンガスを用いて行われるので、この様な材料から有機膜を構成することにより、有機膜パターンを形成する際に酸素プラズマエッチングを用いて加工性を向上させるとともに、基板等をエッチングするフッ化炭素系ガス等のハロゲンガスを用いた後工程においては、耐エッチング性を向上させることができる。
これらの樹脂成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ノボラック樹脂としては、ポジ型レジスト組成物に一般的に用いられているものが使用可能であるし、ノボラック樹脂を主成分として含むi線やg線用のポジ型レジストも使用可能である。
フェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸等が使用される。
ノボラック樹脂は、市販されているものを使用することもできる。
Mwが3000以上であると、高温でベークしたときに昇華しにくく、装置等が汚染されにくい。また、Mwを5000以上とすることにより、フッ化炭素系ガス等に対する耐エッチング性が優れるので好ましい。
また、Mwが50000以下であると、微細な凹凸を有する基板に対する良好な埋め込み特性が優れ、特に10000以下であると、ドライエッチングしやすい傾向があり、好ましい。
上記範囲内のMwを有するノボラック樹脂において、分子量500以下の低核体の含有量が1質量%以下であることにより、微細な凹凸を有する基板に対する埋め込み特性が良好になる。低核体の含有量が低減されていることにより埋め込み特性が良好になる理由は明らかではないが、分散度が小さくなるためと推測される。
ここで、「分子量500以下の低核体」とは、ポリスチレンを標準としてGPC法により分析した際に分子量500以下の低分子フラクションとして検出されるものである。「分子量500以下の低核体」には、重合しなかったモノマーや、重合度の低いもの、例えば、分子量によっても異なるが、フェノール類2〜5分子がアルデヒド類と縮合したものなどが含まれる。
分子量500以下の低核体の含有量(質量%)は、このGPC法による分析結果を、横軸にフラクション番号、縦軸に濃度をとってグラフとし、全曲線下面積に対する、分子量500以下の低分子フラクションの曲線下面積の割合(%)を求めることにより測定される。
エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。これらの化合物は単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの一方あるいは両方を示す。
カルボキシ基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシ基及びエステル結合を有する化合物等を例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
可溶性ポリイミドとは、有機溶剤により液状にできるポリイミドである。
有機膜形成用材料は、上述した樹脂成分等の材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。有機溶剤としては、上述した化学増幅型レジスト組成物の(S)成分として例示したものと同様のものを用いることができる。
p−メンタンに、シリコンテトライソシアネート(Si(NCO)4)を50mMとなるよう溶解して金属酸化物膜形成用材料を調製した。
レジスト組成物1:TArF−5a81EM(東京応化工業株式会社製)。
レジスト組成物2:TArF−6016ME(東京応化工業株式会社製)。
以下の手順で、パターンを形成した。
(第一工程)
表面に、ARC29(商品名、ブリューワサイエンス社製)により有機反射防止膜が形成された8インチシリコン基板の上に、レジスト組成物1をスピンコートで均一に塗布し、115℃、90秒の条件でプリベーク(PAB)を行うことにより、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザ露光機NSR−S302(Nikon社製、NA=0.6)を用いて、露光量15mJ/cm2で、マスクを介して選択的に露光した。ついで、120℃、90秒の条件で露光後加熱(PEB)を行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間現像した。その結果、レジスト膜に、ライン幅120nmのラインパターンが等間隔(ピッチ360nm)に配置されたラインアンドスペースのレジストパターン(以下、パターン(1)という。)が形成された。
次に、製造例1で得た金属酸化物膜形成用材料を、前記パターン(1)が形成された基板上にスピンコート(100rpmで10秒間)で均一に塗布した後、p−メンタンで洗浄(500rpmで15秒間)を行い、さらに、2000rpmで10秒間、3000rpmで10秒間の振り切り乾燥を行い、前記ラインパターン表面を金属酸化物膜形成用材料で保護した。続いて、ベーク炉で、200℃、60秒間の高温ベーク処理を行い、乾燥させることにより、前記ラインパターンの表面に被覆膜(シリコン酸化物膜(SiO2))を形成させた。
(溶剤耐性評価)
前記第一工程後の基板の表面に、PGMEAおよびELの混合溶剤(質量比6:4)を均一に塗布し、その後、110℃、60秒間乾燥させた後、被覆ラインパターンの形状を観察した。
その結果、被覆ラインパターンは、溶解することなく、前記混合溶剤をその上に塗布する前の形状を維持していた。これにより、被覆ラインパターンが、溶剤耐性に優れることが確認できた。
前記第一工程後の基板に対し、ArFエキシマレーザ露光機NSR−S302(Nikon社製)を用いて、露光量を5mJ/cm2から20mJ/cm2の範囲で5mJ/cm2ずつ変化させて全面オープン露光を行った。ついで、110℃、60秒の条件で露光後加熱(PEB)を行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間現像した。
基板上の被覆ラインパターンの形状を観察したところ、いずれの露光量においても、被覆ラインパターンは、溶解することなく、露光前の形状を維持していた。これにより、被覆ラインパターンが、露光・現像耐性に優れることが確認できた。
次に、前記第一工程で得た基板(被覆ラインパターンが形成された基板)上に、再度、前記レジスト組成物1を、上記と同様、膜厚150nmとなるように塗布して、PABを行ってレジスト膜を形成した。そして、前記被覆ラインパターンのスペース部分にライン幅120nmのラインパターンが形成されるように、前記第一工程で用いたArFエキシマレーザ露光機のマスクをずらし、前記レジスト膜を、上記第一工程と同じ条件で露光し、現像した。
その結果、前記複数の被覆ラインパターンの間隙に、それぞれ、ライン幅120nmのラインパターンが形成された。
また、このとき、前記被覆ラインパターンは、溶解することなく、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が維持されていた。
実施例1において、レジスト組成物1の代わりに、レジスト組成物2を用いた以外は実施例1と同様に第一工程を行って、基板上に被覆ラインパターンを形成した。
その結果、被覆ラインパターンは、溶解することなく、前記混合溶剤をその上に塗布する前の形状を維持していた。これにより、被覆ラインパターンが、溶剤耐性に優れることが確認できた。
その結果、被覆ラインパターンは、いずれの露光量においても、溶解することなく、露光前の形状を維持していた。これにより、被覆ラインパターンが、露光・現像耐性に優れることが確認できた。
その結果、実施例1と同様、基板上に、前記複数の被覆ラインパターンの間隙に、それぞれ、ライン幅120nmのラインパターンが形成された
また、このとき、前記被覆ラインパターンは、溶解することなく、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が維持されていた。
実施例1の第一工程と同様にして、表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上にパターン(1)を形成した。
次に、該パターン(1)が形成された基板上に、PGMEAおよびELの混合溶剤(質量比6:4)を均一に塗布し、その後、110℃、60秒間乾燥させた。
このとき、基板表面を観察したところ、パターン(1)は溶解しており、前記混合溶剤を塗布する前の形状を維持できなかった。
実施例1の第一工程と同様にして、表面に反射防止膜が形成されたシリコン基板上にパターン(1)を形成した。
次に、製造例1で得た金属酸化物膜形成用材料を、前記パターン(1)が形成された基板上に、スピンコート(100rpmで10秒間)で均一に塗布した後、p−メンタンで洗浄(500rpmで15秒間)を行い、さらに、2000rpmで10秒間、3000rpmで10秒間の振り切り乾燥を行い、前記ラインパターン表面を金属酸化物膜形成用材料で保護した。続いて、ベーク炉で、120℃、60秒間のベーク処理を行い、乾燥させることにより、前記ラインパターンの表面に被覆膜(シリコン酸化物膜(SiO2))を形成させた。
得られた基板(被覆ラインパターンが形成された基板)について、実施例1と同様に、露光・現像耐性評価を行った。
その結果、露光量が5mJ/cm2から20mJ/cm2までのいずれの場合においても、被覆ラインパターンは溶解し、露光前の形状を維持できなかった。
レジスト組成物1の代わりにレジスト組成物2を用いた以外は比較例2と同様にして、被覆ラインパターンが形成された基板を得た。
得られた基板について、実施例2と同様に、露光・現像耐性評価を行った。
その結果、露光量が5mJ/cm2から20mJ/cm2までのいずれの場合においても、被覆ラインパターンは溶解し、露光前の形状を維持できなかった。
実施例1において、高温ベークのベーク温度を130〜190℃の間で10℃毎に変化させ、露光量を18mJ/cm2に変更したこと以外は、実施例1と同様に被覆ラインパターンを形成し、該被覆ラインパターンについて、露光・現像耐性評価を行った。その結果、いずれのベーク温度においても、被覆ラインパターンは溶解し、露光前の形状を維持できなかった。
実施例2において、高温ベークのベーク温度を130〜190℃の間で10℃毎に変化させ、露光量を18mJ/cm2に変更したこと以外は、実施例2と同様に被覆ラインパターンを形成し、該被覆ラインパターンについて、露光・現像耐性評価を行った。その結果、いずれのベーク温度においても、被覆ラインパターンは溶解し、露光前の形状を維持できなかった。
Claims (2)
- 化学増幅型レジスト組成物を用いてパターンを形成するパターン形成方法であって、
支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程と、前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、前記第一のレジストパターン表面に、金属酸化物膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程と、前記被覆パターンに対し、200℃以上の温度でベーク処理を施す工程と、前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程と、前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像してパターンを形成する工程とを含み、前記被覆膜を、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が有機溶剤(S’)に溶解してなる金属酸化物膜形成用材料を用いて形成することを特徴とするパターン形成方法。 - 前記金属化合物(W)が、イソシアネート基を2個以上有するケイ素化合物である請求項1記載のパターン形成方法。
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