JP4869834B2 - 抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する多型、およびその利用 - Google Patents
抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する多型、およびその利用 Download PDFInfo
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Description
また、HACA以外にインフリキシマブの有効・無効を予測する因子として、クローン病の診断にも利用されるマーカーである抗好中球細胞質抗体(pANCA)および抗saccharomyces cerevisiae抗体が挙げられる(非特許文献13)。
遺伝的なマーカーとしては、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遺伝子の-308位(非特許文献14)をはじめ、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)受容体遺伝子1(TNFR1 )の36位A/G変異および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)受容体遺伝子2(TNFR2 )の587位T/G変異(非特許文献15)、Fasリガンドの-843位のCC/CT遺伝子型(非特許文献16)、IBD5遺伝子上のクローン病の疾患感受性と関連する多型(非特許文献17)、IgGFc受容体IIIa型の158位のアミノ酸V/F多型(非特許文献18)等を挙げることができる。
また、クローン病の治療のために、初回投与より15ヶ月後に2回目のインフリキシマブ投与を受け、1週間以内に呼吸困難、発熱等の遅延型のinfusion reactionを起こした患者の血中に高濃度のHACAが検出されたという報告(非特許文献19)、クローン病および潰瘍性大腸炎患者においてHACAの産生が認められた患者ではinfusion reactionの発現率が高くインフリキシマブの効果持続時間も短いこと(非特許文献20、非特許文献21)などが知られている。
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その結果、HACAの産生に関わる遺伝子としてCD28および腫瘍壊死因子αinduced protein2(TNFAIP2)を同定した。また、インフリキシマブの残存に関わる遺伝子として腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13B)を同定した。
〔1〕被検者について、下記(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査する方法。
(1)CD28、(2)TNFAIP2、(3)TNFSF13B
〔2〕変異が、下記(1)または(2)に記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する抗体(HACA)の産生によるものである、〔1〕に記載の方法。
(1)CD28、(2)TNFAIP2
〔3〕変異が、(3)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下によるものである、〔1〕に記載の方法。
〔4〕抗ヒトTNFαキメラ抗体が、抗ヒトTNFαキメラ型モノクローナル抗体である、〔1〕に記載の方法。
〔5〕変異が、一塩基多型変異である、〔1〕に記載の方法。
〔6〕以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法。
(a)被検者における〔1〕に記載の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定する工程
(b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する工程
〔7〕多型部位が、それぞれ以下の(1a)〜(3a)に記載の多型部位である、〔6〕に記載の方法。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
〔8〕〔7〕に記載の(1a)〜(3a)の多型部位における塩基種の変異が、それぞれ以下の(1b)〜(3b)である場合に、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する、〔6〕に記載の方法。
(1b)CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTに変異
(2b)TNFAIP2遺伝子領域上の部位において、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の塩基種がAからTに変異
(3b)TNFSF13B遺伝子領域上の部位において、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからTに変異
〔9〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
〔10〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
〔11〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
本発明者らによって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子および多型が同定された。抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症する患者においては、有意にこれら遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において変異が見出されることから、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異の有無を調べることにより、被検者に抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与した場合に副作用が起こるか否かの判定を行うことが可能である。
キメラ抗体には、ヒト抗体定常領域が使用される。ヒト抗体定常領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体定常領域を修飾してもよい。
投与中または投与初期における過敏反応(infusion reaction)としては、アナフィラキシー反応が例として挙げられ、具体的な症状としては、呼吸困難、気管支痙攣、血圧上昇、血圧低下、血管浮腫、チアノーゼ、低酸素症、熱関係副作用(ほてり、高熱、発赤等)、皮膚関係副作用(皮膚紅斑、皮膚発疹、皮膚蕁麻疹、皮膚掻痒感等)、消化器嘔吐等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。投与後における抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下の例としては、HACAによる抗ヒトTNFαキメラ抗体の中和反応が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明において、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が投与初期におこるとは、抗体投与中〜6時間、好ましくは2〜3時間以内に副作用が発症することをいう。また、投与後に起こるとは、投与後1日〜4週、好ましくは投与後1〜2週に副作用が起こることをいう。
さらに、本発明の副作用は、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を一回投与することにより起こってもよいし、投与中断後に投与を再開した際に起こっても良いし、また、連続して投与することによって起こっても良い。
(1)CD28(2q33-q34)NM_006139.1
(2)TNFAIP2:腫瘍壊死因子αinduced protein2 (14q32) NM_006291.2
(3)TNFSF13B:腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13(13q32-q34) NM_006573.3
また、(3)TNFSF13B遺伝子は、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下に関連することが見出された。
上記の知見に基づき、本発明は、被検者について、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法を提供する。
また、(3)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出された場合には、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度が低下することにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こる、あるいは抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる素因を有すると判定される。
本発明の方法により、未だ抗ヒトTNFαキメラ抗体を投与していない被検者であっても、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定することができる。また既に抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症している被検者の場合は、副作用が進行する可能性が高いか低いかを判定することができ、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与することによる、疾患の治療方針の決定等に利用する事ができる。
前後10kbすなわち20kb以内の範囲にある多型は、Gabrielらの報告の通り、連鎖している可能性が高い(Gabriel SB, Schaffner SF, Nguyen H et al. The structure of haplotype blocks in the human genome. Science 296, 2225-9. 2002)。
本発明の好ましい態様においては、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における多型変異(多型部位における塩基種)を検出することを特徴とする、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かを検査する方法である。
本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かを検査する方法における「多型部位」は、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域に存在する多型であれば、特に制限されない。具体的には、本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査方法に利用可能な多型部位として、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域に存在する、以下の(1a)〜(3a)に記載の多型部位を挙げることができる。(なお、本明細書においては、これらの多型部位を単に『本発明の多型部位』と記載する場合がある)。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
なお、後述する実施例においては、配列番号:1に記載の各配列に対する相補鎖を用いて試験を行なっているものもある。
(1b)CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTに変異
(2b)TNFAIP2遺伝子領域上の部位において、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の塩基種がAからTに変異
(3b)TNFSF13B遺伝子領域上の部位において、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからTに変異
以上のように、本発明により、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子上の領域が明らかになったことにより、当業者に過度の負担を強いることなく、該副作用が起こるか否かについて検査を行うことができる。
本発明の検査方法に供する被検試料は、通常、予め被検者から取得された生体試料であることが好ましい。生体試料としては、例えばDNA試料を挙げることができる。本発明におけるDNA試料は、例えば被検者の血液、皮膚、口腔粘膜、手術により採取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液等から抽出した染色体DNA、あるいはRNAを基に調製することができる。
当業者においては、公知の技術を用いて、適宜、生体試料の調製を行うことができる。例えば、DNA試料は、本発明の多型部位を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、染色体DNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって調製することができる。
本発明の多型部位は、通常、その部位の塩基種のバリエーションが既に明らかになっている。本発明における「塩基種の決定」とは、必ずしもその多型部位についてA、G、T、Cのいずれかの塩基種であるかを判別することを意味するものではない。例えば、ある多型部位について塩基種のバリエーションがAまたはGであることが判明している場合には、その部位の塩基種が「Aでない」もしくは「Gでない」ことが判明すれば充分である。
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。TaqMan PCR法は、アリルを含む領域を増幅することができるプライマーセットと、TaqManプローブを利用した解析方法である。TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるアリルを含む領域にハイブリダイズするように設計される。
TaqManプローブのTmに近い条件で標的塩基配列にハイブリダイズさせれば、1塩基の相違によってTaqManプローブのハイブリダイズ効率は著しく低下する。TaqManプローブの存在下でPCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリダイズしたTaqManプローブに到達する。このときDNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性によって、TaqManプローブはその5'末端から分解される。TaqManプローブをレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、TaqManプローブの分解を、蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、TaqManプローブの分解が起きれば、レポーター色素が遊離してクエンチャーとの距離が離れることによって蛍光シグナルが生成する。1塩基の相違のためにTaqManプローブのハイブリダイズが低下すればTaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
PCR法を利用した塩基種を決定する方法として、AcycloPrime法も実用化されている。AcycloPrime法では、ゲノム増幅用のプライマー1組と、多型検出用の1つのプライマーを用いる。まず、ゲノムの多型部位を含む領域をPCRで増幅する。この工程は、通常のゲノムPCRと同じである。次に、得られたPCR産物に対して、SNPs検出用のプライマーをアニールさせ、伸長反応を行う。SNPs検出用のプライマーは、検出対象となっている多型部位に隣接する領域にアニールするようにデザインされている。
このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、かつ3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体(ターミネータ)を用いる。その結果、多型部位に相当する位置の塩基に相補的な塩基が1塩基だけ取りこまれて伸長反応が停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍光偏光(Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏光色素に波長の異なる2種類のラベルを用いれば、特定のSNPsが2種類の塩基のうちのいずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することができるので、1度の解析でアリルがホモかヘテロかを判定することもできる。
PCR産物をMALDI-TOF/MSで解析することによって塩基種の決定を行うこともできる。MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、タンパク質のアミノ酸配列や、DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる解析手法として様々な分野で利用されている。MALDI-TOF/MSによる塩基種の決定のためには、まず解析対象であるアリルを含む領域をPCRで増幅する。次いで増幅産物を単離してMALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。アリルの塩基配列は予めわかっているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決定される。
MALDI-TOF/MSを利用した塩基種の決定には、PCR産物の分離工程などが必要となる。しかし標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確な塩基種の決定が期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
PCR法を利用した更に高速な塩基種の決定が可能な方法も報告されている。例えば、IIs型制限酵素を利用して多型部位の塩基種の決定が行われている。この方法においては、PCRにあたり、IIs型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素(II型)は、特定の塩基配列を認識して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対してIIs型の制限酵素は、特定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。従って、この塩基数の分だけ離れた位置にIIs型制限酵素の認識配列を含むプライマーがアニールするようにすれば、IIs型制限酵素によってちょうど多型部位で増幅産物を切断することができる。
IIs型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、SNPsの塩基を含む付着末端(conhesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からなるアダプターをライゲーションする。アダプターは、多型変異に対応する塩基を含む異なる塩基配列からなり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最終的に、増幅産物は多型部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
前記IIs型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー(capture primer)を組み合わせてPCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマーを利用して固相化することができる。例えばビオチン標識プライマーを捕捉プライマーとして用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、塩基種を決定することができる。
複数のアリルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。複数のアリルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成分が必要である。しかし実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多くない。これに対して、樹脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができる。更に、樹脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気によって分離可能なビーズとすることができる。このような磁気蛍光ビーズを利用した、多重化多型タイピングが考え出された(バイオサイエンスとバイオインダストリー, Vol.60 No.12, 821-824)。
磁気蛍光ビーズを利用した多重化多型タイピングにおいては、各アリルの多型部位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各アリルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両者は組み合わせられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハイブリダイズしたときに、当該アリル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する蛍光標識オリゴDNAを調製する。
磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリゴDNAの存在を検出することにより、塩基種が決定される。磁気蛍光ビーズは、フローサイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類の多型部位について、単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法も実用化されている。例えば、Invader法では、アリルプローブ、インベーダープローブ、およびFRETプローブの3種類のオリゴヌクレオチドと、cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、塩基種の決定を実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのはFRETプローブのみである。
アリルプローブは、検出すべきアリルに隣接する領域にハイブリダイズするようにデザインされる。アリルプローブの5'側には、ハイブリダイズに無関係な塩基配列からなるフラップが連結されている。アリルプローブは多型部位の3'側にハイブリダイズし、多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
一方インベーダープローブは、多型部位の5'側にハイブリダイズする塩基配列からなっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダイズによって3'末端が多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダープローブとアリルプローブとが隣接してハイブリダイズするように両者の塩基配列はデザインされている。
FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。FRETプローブは5'末端側に自己相補配列を有し、3'末端側に1本鎖部分が配置されたヘアピンループを構成している。FRETプローブの3'末端側に配置された1本鎖部分は、フラップに相補的な塩基配列からなっていて、ここにフラップがハイブリダイズすることができる。フラップがFRETプローブにハイブリダイズすると、FRETプローブの自己相補配列の5'末端部分にフラップの3'末端が侵入した構造が形成されるように両者の塩基配列がデザインされている。cleavaseは侵入構造を認識して切断する。FRETプローブのcleavaseによって切断される部分を挟んで、TaqMan PCRと同様のレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、FRETプローブの切断を蛍光シグナルの変化として検知することができる。
Invader法に基づいて塩基種を決定するためには、アリルAとアリルBのそれぞれに相補的な塩基配列を含む、2種類のアリルプローブを用意すれば良い。このとき両者のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するためのFRETプローブも2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、TaqMan PCR法と同様の考え方によって、塩基種を決定することができる。
Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドがFRETプローブのみであることである。FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌクレオチドを利用することができる。従って、大量生産が可能である。一方アリルプローブとインベーダープローブは標識する必要が無いので、結局、ジェノタイピングのための試薬を安価に製造することができる。
PCR法に依存しない塩基種の決定方法として、RCA法を挙げることができる。鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが、環状の1本鎖DNAを鋳型として、長い相補鎖を合成する反応に基づくDNAの増幅方法が、Rolling Circle Amplification(RCA)法である(Lizardri PM et al.,Nature Genetics 19, 225, 1998)。RCA法においては、環状DNAにアニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成する長い相補鎖にアニールする第2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している。
RCA法には、鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが利用されている。そのため、相補鎖合成によって2本鎖となった部分は、より5'側にアニールした別のプライマーから開始した相補鎖合成反応によって置換される。例えば、環状DNAを鋳型とする相補鎖合成反応は、1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相補鎖合成は継続し、長い1本鎖DNAが生成される。一方、環状DNAを鋳型として生成した長い1本鎖DNAには、第2のプライマーがアニールして相補鎖合成が開始する。RCA法において生成される1本鎖DNAは、環状のDNAを鋳型としていることから、その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。従って、長い1本鎖の連続的な生成は、第2のプライマーの連続的なアニールをもたらす。その結果、変性工程を経ることなく、プライマーがアニールすることができる1本鎖部分が連続的に生成される。こうして、DNAの増幅が達成される。
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、通常、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らない塩基種決定法も古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することもできる。
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インビトロ(in vitro)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
本発明において「固相」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な材料を意味する。本発明の固相は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、具体的には、マイクロプレートウェル、プラスチックビーズ、磁性粒子、基板などを含む固相等を例示することができる。本発明の「固相」としては、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。本発明において「基板」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味する。また、本発明においてヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。
該オリゴヌクレオチドは、本発明の上記(1a)〜(3a)のいずれかの多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものである。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドは、検出する遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における、上記(1)〜(3)のいずれかの塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
本発明は、本発明の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー、および多型部位を含むDNA領域にハイブリダイズするプローブを提供する。
本発明において、多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーには、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーも含まれる。該プライマーは、多型部位を含むDNAにおける、多型部位の3'側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。たとえば、DNAチップによる解析のためのプライマーであれば、多型部位を含む領域として、20〜500、通常50〜200塩基の長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者においては、多型部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。本発明のプライマーを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列のみならず、適宜改変することができる。
本発明のプライマーの具体的な例としては、配列番号:9〜18に記載のプライマーが挙げられるが、本発明のプライマーはこれに限定されるものではない。
一方本発明において、多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブとは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるプローブを言う。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
本発明のプローブの具体的な例としては、配列番号:8に記載のプローブが挙げられるが、本発明のプローブはこれに限定されるものではない。
本発明の試薬には、塩基種の決定方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいはIIs制限酵素などの、上記の塩基種決定方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。
さらに、本発明における試薬の別の態様は、本発明の(1a)〜(3a)のいずれかに記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査するための試薬である。
また本発明は、被検者(被検者由来の生体試料)における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現量を指標として、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの判定を行うことも可能である。即ち本発明は、被検者における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現量が対照と比較して低下している場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症するものと判定される、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査する方法を提供する。
上記方法においては、通常、被検者由来の生体試料を被検試料とする。該被検試料における該遺伝子の発現量の測定は、当業者においては公知の技術を用いて適宜実施することが可能である。なお、上記「対照」とは、通常、健常者由来の生体試料における該遺伝子の発現量を指す。なお、本発明における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現とは、該遺伝子から転写されるmRNAの発現、または該遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の両方を意味するものである。
1.対象
松原メイフラワー病院(日本)の外来に通院、または松原メイフラワー病院に入院中の関節リウマチと診断された患者のうち、以下の(1)から(3)の条件をすべて満たすインフリキシマブ(商品名 レミケード)未投与の患者を対象とした。
(1) メトトレキサート製剤(商品名 リウマトレックス)6 mg/週以上の用量を3ヶ月以上継続して投与してもコントロール不良の関節リウマチ患者(以下の3項目を判定基準とした)
・疼痛関節≧6個
・腫脹関節≧6個
・CRP≧2.0 mg/dlあるいはESR≧28 mm/hr
(2) 次の3項目を満たす関節リウマチ患者(日和見感染症のリスクが高い患者を除外するため)
・末梢血白血球≧4000 /mm3
・末梢血リンパ球≧1000 /mm3
・血中β‐D‐グルカン陰性
(3) 本研究の目的及び内容を説明し本人から文書にて同意が得られた関節リウマチ患者
本研究では、代諾者が必要な患者、小児患者は対象としなかった。また、インフリキシマブ投与が禁忌である患者( 1)重篤な感染症の患者、2)活動性結核の患者、3)レミケードの成分又はマウス由来蛋白に対する過敏症の既往歴のある患者、4)脱髄疾患及びその既往歴のある患者、5)うっ血性心不全の患者)は除外した。
また、研究期間の終了までに54週後にHACAの測定データが得られた症例は45名であった。
(1)インフリキシマブの用法・用量
体重1 kg当たりインフリキシマブ3 mgを1回の投与量として、添付文書の記載に従いインフリキシマブ100 mgバイアルを10 mlの日本薬局方注射用蒸留水で溶解し、患者の体重から換算した必要溶解液量を約250 mlの日本薬局方生理食塩液に希釈し、独立した点滴ラインにより1.2ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して2時間以上をかけて緩徐に点滴静注した。投与間隔は、初回投与後、2週後、6週後に投与し、以後は8週間の間隔で投与を行った。下記の通り、メトトレキサート製剤を併用薬とした。
(2)メトトレキサート製剤の投与方法
すべての患者に対して、1日当たり6〜8 mgのメトトレキサートを1日3回に分けて投与した。
DAS(disease activity score)を用いてインフリキシマブの関節リウマチに対する有効性を評価した。欧州リウマチ学会議(EULAR)で汎用されているDASは、疼痛指数、腫脹関節数、赤沈値、患者の健康状態の全般評価の4つの活動性指標を指数化して、以下の式から疾患活動性を算定し、DAS28の改善と評価時のDAS28の値の両方を用いて表1に示すように、「有効」、「やや有効」、「無効」の3種類の評価を付与した(表1)。
本研究は主に表2に記載した観察・検査スケジュールに沿って行った。初回投与日、6週後、14週後、30週後、54週後のインフリキシマブ有効性を判定し、投与の約1時間前に対象患者の血液を採取した。また、遺伝子解析用として別に血液約10 mlを採取した。
免疫、炎症と関連する13遺伝子(C3orf1、CD28、CD80、CD86、CTLA4、LST1、LTA、SCNN1A、TNFA、TNFAIP2、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFSF13B)の領域に存在する61SNPsを解析対象とした。
対象患者より採血した血液10 mlよりDNAを抽出し(三菱化学BCL社)、SNPs解析用のDNA試料を得た。一塩基多型(SNP)の遺伝子型の解析は、TaqMan allelic discrimination assay(Livak KJ. Genet Anal. 1999; 14: 143-149.)により実施した。試薬は、アプライド・バイオシステムズ(Foster City,CA,USA)より購入した。PCR反応の完了時にSNPを区別するタックマン・プローブは、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosisytems)で設計、合成されたTaqMan(R) SNP Genotyping Assayを用いた。アッセイIDおよびプライマーセットをリストに示す。一方のアレル・プローブを蛍光FAM色素で標識し、他方を蛍光VIC色素で標識した。PCR反応は、濃度900 nMのPCRプライマーおよび濃度200 nMのタックマンMGB-プローブを用いて、UNGを含まないTaqMan Universsal Master Mix without UNG(Applied Biosisytems)中で行った。反応は、3.0 ngのゲノムDNAを使用し、全反応容量3μlで、384穴フォーマットで行った。次いで、プレートをGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosisytems)に設置し、95℃に10分間加熱した後、92℃15秒、60℃1分のサイクルを40回行い、最後に25℃に浸漬した。Prism 7900HT装置(Applied Biosisytems)により、プレートの各ウェル内の蛍光強度を読み取った。各プレートからの蛍光データ・ファイルは、SDS2.0 allele calling software(Applied Biosisytems)により分析した。
〔リスト〕
rs8003080(TNFAIP2) C___2434859_10
プローブ : TGTGTGTACAATAC(A/T)GATGCCAGCGAGAG(配列番号:8)
rs1224149(TNSF13B) C___8705042_10
rs1879877(CD28) C__11459560_10
フォワードプライマー :ACAGGTGGAA GGCAGTGGAC(配列番号:9)
リバースプライマー :CATTCTACGT GCAAGCAGCC(配列番号:10)
rs3181097(CD28) C__27467171_10
フォワードプライマー :ACAGGTGGAA GGCAGTGGAC(配列番号:11)
リバースプライマー :CATTCTACGT GCAAGCAGCC(配列番号:12)
rs1181390(CD28) C___8806607_10
フォワードプライマー :GTTACTTGGG TGGGCTGGAG(配列番号:13)
リバースプライマー :GGGTAGGCTT CCCTTGACTG(配列番号:14)
rs1181388(CD28) C___2821002_10
フォワードプライマー :GGAACTTCAC AGAGGCTGGA AC(配列番号:15)
リバースプライマー :AAGAACTTCT CCACCACCTT GC(配列番号:16)
rs3769684(CD28) C__30981306_10
フォワードプライマー : TTAACTGAGC TGGTGGGAGG(配列番号:17)
リバースプライマー : AAGAAACATT GTCAACCCAT CC(配列番号:18)
血中のインフリキシマブ濃度は、MainiらのEIA法(Maini et al., Arthritis&Rheumatism, Vol.41, No.9, p1552-1563, 1998)で測定した。すなわち、インフリキシマブのTNFα結合部位を特異的に認識するモノクローナル抗体を固層に結合して血中のインフリキシマブを補足し、さらに、インフリキシマブの複数のエピトープを特異的に認識するビオチン化モノクローナル抗体を用いて検出した。検出に用いたモノクローナル抗体は、インフリキシマブのTNFαへの結合を阻害しなかった。検出限界の下限は0.10μg/mlであった。インフリキシマブ投与前の血清パネルは、ブランク対照のシグナルを上回らず、インフリキシマブ濃度の上昇幅は再現性があるレンジを越えることはなかった。
血中HACAの測定は、MainiらのブリッジングEIA法(Maini et al., Arthritis&Rheumatism, Vol.41, No.9, p1552-1563, 1998)により行った。まず、マイクロタイタープレートにストレプトアビジンをコーティングし、1%ウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄した後に、ビオチン化したインフリキシマブを結合させ室温で2時間静置した。同様に洗浄した後、患者より採取した血清を、IgGのFcフラグメントの重合体、およびゼラチンを添加した生理食塩水を用いて1:10の割合で希釈し、マイクロタイタープレートに加え室温で1時間静置した。IgGのFcフラグメントの重合体、およびゼラチンの添加は、RF(リウマチ因子)をはじめとする非特異的因子による反応を防止するためである。1%ウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識したインフリキシマブを加え再び洗浄し、基質の発色強度を測定することにより血中HACAの量を測定した。
本研究におけるすべての解析は統計パッケージSPSS ver.12.0.1J (SPSS Inc., Chicago, IL, 2003)を用いて行われた。
本発明では61名慢性関節リウマチ患者を対象とした(男性15名、女性46名)。平均年齢、発症時年齢、罹患年数はそれぞれ58.4歳、47.3歳と11.1年であった。男女別の結果を表に示した(表3)。
61名RA患者中の45名のインフリキシマブ中和抗体(HACA)を、インフリキシマブ初回投与より54週後に採血した血清を試料としてBridging EIA法で測定した。また、同じ試料を用いて血中インフリキシマブの有無、すなわち、インフリキシマブの残存量をEIA法により測定した。インフリキシマブが血中に残存していたときには、HACAは測定不能とした。血中にHACAが存在したとしても血中ですでにインフリキシマブと結合しているため、Bridging EIA法で検出できないためである。
副作用とHACAの相関を分析したところ、熱関係副作用ではHACA陽性の有無および薬物残存の有無と有意な相関が見られなかったのに対して、皮膚関係副作用ではいずれにも強い相関が見られ、HACA陽性ケースが陰性或いは測定不能(薬物残存)ケースより44.8倍のオッズ比で皮膚関係副作用が現れた。また、インフリキシマブ残存がある群は、ない群と比較して、皮膚関係副作用発現のオッズ比が0.13倍であり、インフリキシマブ残存がある群では皮膚関係副作用が出にくいことを示した。インフリキシマブ残存が認められた患者では、HACAは測定不能であるため、インフリキシマブ残存例を除き、HACA陽性とHACA陰性で集計したところ、オッズ比が28倍となり、HACAの産生が皮膚関係副作用に強く相関することが明らかになった(表13)。
投与開始時点のDAS28Score(0w)に対するScoreの変化率を従属変数として、HACA判定(陽性、陰性、判定不能)による差をANOVA検定で分析したところ、6wと54wではいずれにも有意差が認められなかったが、30wでは有意差が認められた(P =0.0049)。Scheffeの多重検定により、HACA測定不能いわゆる薬物残存群が陽性群と陰性群対して、それぞれに0.012、0.094の有意確率が示された。結果としては薬物残存群がHACA陽性群と陰性群に比べ、それぞれ、26.6%、17.4%で有効率が高かったと見られた(表14)。
初回投与後54週間後のHACAの陽性率は17%であった(8/45)。約60%がインフリキシマブ残存によりHACA測定が不能(27/45)であり、HACAの産生には個人差が存在した。また、インフリキシマブ残存に関わる薬物代謝の個人差も考えられる。HACAの産生やインフリキシマブ残存は、副作用と有効性に強く関連することから、これらと関連する遺伝要因を明確にすることはとても重要であると考えられる。
13種類の炎症と関連する遺伝子領域に存在する61SNPを解析した。これらの遺伝子またはSNPが上記個人差に関連するかどうかをカイ二乗のFisher’s Exact Testで解析した。
HACA陽性群と陽性でない群(HACA陰性+HACA測定不能)におけるFisher’s検定を行ったところ、TNFAIP2遺伝子の上流3.5kbにある一つのSNPが有意に検出された。このSNPのA alleleをもつ(AA+AT)患者ではHACAの陽性率が高く見られ(p<0.05),TTに対するオッズ比が9倍(逆数は0.111)であった(表15)。
DominantおよびRecessive Modelで検討したところ、5SNPsのGenotype分布は、陰性群では一方で0人であったため、オッズ比が計算できなかったが、約10倍、20倍であると推定される(表17、18)。
Claims (5)
- 以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法;
(a)被検者におけるCD28遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位の塩基種を決定する工程、
(b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する工程。 - 多型部位における塩基種の変異が、CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTの変異である場合に、
抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する、請求項1に記載の方法。 - 請求項1に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
- 請求項1に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
- 請求項1に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
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