JP2008048629A - 抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する多型、およびその利用 - Google Patents

抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する多型、およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子、および、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNAに存在する、該副作用に関連する多型の提供、該多型を利用した抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法の提供。
【解決手段】関節リウマチ治療に関するインフリキシマブ投与において、副作用の原因となる、HACA産生に関わる2遺伝子である、CD28、TNFAIP2、およびインフリキシマブの残存に関わる1遺伝子TNFSF13B遺伝子の多型変異を検出する検査方法、および該多型変位を含むDNAにハイブリダイズし、抗ヒトTNFα抗体を含有する薬剤に対して、副作用を起こすオリゴヌクレオチド。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子、および、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNAに存在する、該副作用に関連する多型に関する。また、該多型を利用した抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法に関する。
インフリキシマブ(infliximab)は、関節リウマチ、クローン病等の治療薬として使用されている、抗ヒトTNFα(tumor necrosis factor α)キメラ型モノクローナル抗体製剤である。TNFαは炎症のキーメディエーターであり、インフリキシマブはこれを阻害することにより効果を示す(非特許文献1)。
インフリキシマブはヒト−マウスキメラモノクローナル抗体であり、75%がヒト、25%がマウスタンパク由来である(非特許文献2)。このことに起因して、インフリキシマブの投与を受けた患者の一部の血中には、ヒト−マウスキメラ抗体に対する抗体であるHuman anti chimeric antibody(HACA)が検出されることがある。例えば、大規模な臨床試験であるATTRACTの結果では、約10%の患者でHACAの産生が認められたと報告されている(非特許文献3)。半数近くの投与患者でHACAの産生が認められたとする報告も存在する(非特許文献4)。
HACAが検出される患者では、インフリキシマブの血中濃度の持続が短くなる傾向がみられ、HACAによりインフリキシマブが中和されるため効果の減弱が認められる(非特許文献4、非特許文献5)。また、HACAが検出される患者では、検出されなかった患者と比較して、インフリキシマブ注射時の副作用の1つであるinfusion reactionの発現が多い傾向にある(非特許文献5)。インフリキシマブ投与を中断し、再び投与を開始した際に投与後数週間後に皮膚に硬化性浮腫症を認めた関節リウマチ患者において高力価のHACAが検出された例も報告されている(非特許文献6)。
インフリキシマブの副作用の中にはアナフィラキシーショックを伴う重篤な例が存在し、副作用の発現を予測することは極めて意義が高い。さらに、インフリキシマブは高価な薬剤であるため、インフリキシマブの有効・無効を予め予測することは医療経済上でも重要である。そのため、インフリキシマブの有効・無効を予測するマーカーについては多くの探索がなされ、いくつかのマーカーが報告されている。インフリキシマブを関節リウマチ患者に投与したときの有効・無効の予測をするための遺伝的多型マーカーとして、インフリキシマブの抗原である腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遺伝子の-308位(非特許文献7)、-238および+489(非特許文献8)、IgGFc受容体IIIa型の158位のアミノ酸V/F多型(非特許文献9)、HLA-DRB1 Shared epitope(SE)(非特許文献10)、などが報告されている。また、抗好中球細胞質抗体(ANCA:antineutrophil cytoplasmic antibody)の有無(非特許文献11)との関連も報告されているが、未だ実用化には至っていない。また、インフリキシマブの副作用を予測するマーカーとしては、HACAの産生との関連が示唆されるのみである。
インフリキシマブはクローン病の治療にも用いられているが、クローン病においてもHACAの産生が認められる場合にはinfusion reactionが発現する頻度が高く、インフリキシマブの効果が持続する時間が短くなることが報告されている(非特許文献12)。
また、HACA以外にインフリキシマブの有効・無効を予測する因子として、クローン病の診断にも利用されるマーカーである抗好中球細胞質抗体(pANCA)および抗saccharomyces cerevisiae抗体が挙げられる(非特許文献13)。
遺伝的なマーカーとしては、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遺伝子の-308位(非特許文献14)をはじめ、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)受容体遺伝子1(TNFR1 )の36位A/G変異および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)受容体遺伝子2(TNFR2 )の587位T/G変異(非特許文献15)、Fasリガンドの-843位のCC/CT遺伝子型(非特許文献16)、IBD5遺伝子上のクローン病の疾患感受性と関連する多型(非特許文献17)、IgGFc受容体IIIa型の158位のアミノ酸V/F多型(非特許文献18)等を挙げることができる。
また、クローン病の治療のために、初回投与より15ヶ月後に2回目のインフリキシマブ投与を受け、1週間以内に呼吸困難、発熱等の遅延型のinfusion reactionを起こした患者の血中に高濃度のHACAが検出されたという報告(非特許文献19)、クローン病および潰瘍性大腸炎患者においてHACAの産生が認められた患者ではinfusion reactionの発現率が高くインフリキシマブの効果持続時間も短いこと(非特許文献20、非特許文献21)などが知られている。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
Knight DM. et al., Mol Immunol 1993;30:1443-53 Scallon BJ. et al., Cytokine 1995;7:251-9 Harriman G. et al., Ann Rheum Dis 1999;58:(Suppl I) I61-64 Wolbink GJ. et al., Arthritis Rheuma. 2006;54(3):711-5 レミケード(R)点滴静注用100添付文書第6版 Ranganathan P. J Clin Rheumatol. 2005;11(6):319-22 Mugnier B. et al., Arthritis Rheum. 2003;48(7):1849-52 Fabris M. et al., Reumatismo. 2002;54(1):19-26 Tutuncu Z. et al., Arthritis Rheum. 2005;52(9):2693-6 Marotte H. et al., Ann Rheum Dis. 2006;65(3):342-7 Taylor KD. et al., Gastroenterology. 2001;120(6):1347-55 Baert F. et al., New Engl J Med 2003;348(7):601-7 Arnott et al., Aliment Pharmacol. Ther. 2003;17:1451-7 Su et al., Advanced Drug Delivery Reviews 2005;57:237-45 Pierik et al., Aliment Pharmacol Ther. 2004;20(3):303-10 Hlavaty et al., Aliment Pharmacol Ther. 2005;22(7):613-26 Urcelay et al., World J Gadstroenterol. 2005;11(8):1187-92 Louis et al., Aliment Pharmacol Ther. 2004;19(5):511-9 Riegert-Johnson DL. et al., Inflamm Bowel Des. 2002;8(3):186-91 Miele E. et al., J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2004;38(5):502-8 Sandborn WJ. et al., Curr Gastroenterol Rep. 2003;5(6):501-5
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子、および、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNAに存在する、該副作用に関連する多型を提供することにある。また、該多型を利用した抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法を提供することにある。
T細胞の分化増殖には、T細胞レセプターを介するシグナルに加えて、各種補助刺激分子からの補助シグナルが必要であることが知られている。中でもCD28は、非常に強力な補助シグナルを与える代表的な補助刺激分子の一つであり、T細胞レセプター(TCR)を介した一次刺激と協調してT 細胞に働きかけ、増殖因子であるインターロイキン2(IL-2)産生と引き続く細胞増殖を誘導する。一方そのアナログであるCTLA-4 は、TCRおよびCD28依存性のIL-2産生と細胞増殖を抑制することから、一種の抑制シグナルを与える分子と考えられている(Abe r. Jpn J Immunol. 2005;28(1):21-32)。 T細胞の調節を通じて、関節リウマチの病態に関与することについて研究がなされており(Brunner-Weinzierl M., Arthrits Res Ther. 2004;6:45-54)、CD28を阻害するというコンセプトの関節リウマチ薬(Cianci R. et al., Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2005;9(6):305-14)、インフリキシマブ投与によりCD28がダウンレギュレートされること(Bryl E. et al., Arthritis Rheum. 2005;52(10):2996-3003)などが報告されている。しかし、CD28がインフリキシマブ投与によるHACAの産生、薬剤の有効・無効や副作用に関与することについてはこれまで明らかにされていない。
TNFAIP2は、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)においてTNFαに誘導されるタンパクとして同定されたものであり(Sarma V. et al., J Immun. 1992;148:3302-12)、インフリキシマブの有効性、HACA産生との関連については全く知られていない。
TNFSF13Bは、抹消Bリンパ球の生存と分化に関わるTNFスーパーファミリーの一員である。関節リウマチ患者の滑膜組織に発現し、CD68+マクロファージにより専ら発現していることが報告されており(Seyler TM. et al., J Clin Invest. 2005;115:3083-92)、炎症や自己免疫疾患との関連が示唆されている。インフリキシマブ投与との関わりにおいては、インフリキシマブ投与中に抗核抗体(ANA)が強陽性に転じた例でTNFSF13Bを測定した研究がある。TNFSF13BはIL-10の産生を促進する作用があり、IL-10は自己抗体の出現と関連するとされているためであるが、測定の結果明らかな傾向は認められなかったとされており(Caramaschi P. et al., Rheumatol. Int. 2006;26(3):209-14)、インフリキシマブの残存と関連するとの報告は未だない。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用のモデルケースとして、関節リウマチ治療におけるインフリキシマブ投与による副作用に関与するSNPsを解析した。具体的には、インフリキシマブ投与によるHACAの産生、インフリキシマブの血中濃度に関連する遺伝素因に着目し、副作用および/または効果減弱のリスクが高い患者を予め選別することを目的としてSNPsを用いたケースコントロール研究を行った。
その結果、HACAの産生に関わる遺伝子としてCD28および腫瘍壊死因子αinduced protein2(TNFAIP2)を同定した。また、インフリキシマブの残存に関わる遺伝子として腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13B)を同定した。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔11〕を提供するものである。
〔1〕被検者について、下記(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査する方法。
(1)CD28、(2)TNFAIP2、(3)TNFSF13B
〔2〕変異が、下記(1)または(2)に記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する抗体(HACA)の産生によるものである、〔1〕に記載の方法。
(1)CD28、(2)TNFAIP2
〔3〕変異が、(3)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下によるものである、〔1〕に記載の方法。
〔4〕抗ヒトTNFαキメラ抗体が、抗ヒトTNFαキメラ型モノクローナル抗体である、〔1〕に記載の方法。
〔5〕変異が、一塩基多型変異である、〔1〕に記載の方法。
〔6〕以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法。
(a)被検者における〔1〕に記載の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定する工程
(b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する工程
〔7〕多型部位が、それぞれ以下の(1a)〜(3a)に記載の多型部位である、〔6〕に記載の方法。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
〔8〕〔7〕に記載の(1a)〜(3a)の多型部位における塩基種の変異が、それぞれ以下の(1b)〜(3b)である場合に、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する、〔6〕に記載の方法。
(1b)CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTに変異
(2b)TNFAIP2遺伝子領域上の部位において、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の塩基種がAからTに変異
(3b)TNFSF13B遺伝子領域上の部位において、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからTに変異
〔9〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
〔10〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
〔11〕〔7〕に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
本発明によって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子、および、該遺伝子上または該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤の投与によって副作用が起こるか否かを判定する方法が提供された。本発明の遺伝子上または該遺伝子の近傍DNA領域における多型を検出することで、当該副作用が起こるか否かが予測可能となる。関節リウマチ、クローン病などの治療薬であるインフリキシマブは、高価な薬剤であるため、インフリキシマブの有効・無効を予め予測することは医療経済上でも重要である。
また、本発明により抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤の投与における、より効率的な戦略(いわゆるオーダーメイド医療)を立てることが可能になる。具体的には抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤の投与によって副作用が発症すると予想される患者の治療方針を決める際の一助となりうるし、さらに抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する抗体(HACA)の産生に対する新たな治療薬の開発にもつながる可能性があり大いに期待される。
〔発明の実施の形態〕
本発明者らによって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子および多型が同定された。抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症する患者においては、有意にこれら遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域において変異が見出されることから、該遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における変異の有無を調べることにより、被検者に抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与した場合に副作用が起こるか否かの判定を行うことが可能である。
本発明で使用される抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤は、自己免疫疾患、炎症性疾患、敗血症、悪液質、移植片対宿主病等の疾患の治療薬として使用されている。本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与される被検者は、自己免疫疾患、敗血症、悪液質、移植片対宿主病、ベーチェット病、強直性脊椎炎、乾癬、サルコイドーシス、炎症性皮膚疾患、骨髄異形成症候群、難治性ブドウ膜炎、成人スティル病等の疾患を発症していることが好ましい。本発明の被検者が発症している疾患として、より好ましくは、自己免疫疾患、炎症性疾患であり、さらに好ましくは関節リウマチ、クローン病である。
本発明において抗ヒトTNFαキメラ抗体は、ヒトTNFαに特異的に結合し、TNFαの機能を抑制する。キメラ抗体はヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体である。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体等の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体である。キメラ抗体は、例えばマウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる(欧州特許出願公開番号EP 125023)。
本発明において「抗ヒトTNFαキメラ抗体」とは、好ましくは、インフリキシマブ等の抗ヒトTNFαキメラ型モノクローナル抗体を挙げることができる。さらに、本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体には、インフリキシマブと同様の構造を持ち、同様の活性を有するキメラ抗体も含まれる。
抗ヒトTNFαキメラ型モノクローナル抗体としては、モノクローナル抗体として抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C. A. K. and Larrick J. W. THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。
具体的な作成方法としては、まず、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987)162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とする抗体のV領域をコードするDNA断片を精製し、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、ベクターDNAと連結する。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
本発明で使用される抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
キメラ抗体には、ヒト抗体定常領域が使用される。ヒト抗体定常領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体定常領域を修飾してもよい。
副作用について、世界保健機関(WHO)は「有害であって意図されない、疾病の予防・診断・治療又は生理学的機能の修正のために、通常の使用量で人に起こる、薬に対する何らかの反応である」と定義している。また、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、副作用を、「人において薬の使用に関係する何らかの有害な結果であって、薬に関連しているかどうかを問わず専門的実践における薬製品の使用の過程で起こる有害な結果、事故か意図したものかを問わず薬の適量超過使用から起こる有害な結果、薬の濫用から起こる有害な結果、薬の使用中止から起こる有害な結果、期待した薬理的効果が有意に発生しないこと含む」と定義している。
本発明において、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるとは、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤の使用に関係する、被検者における何らかの有害な結果をいう。本発明における副作用の具体的な例としては、当該薬剤の使用の過程で起こる、適量超過使用から起こる有害な結果、薬の濫用から起こる有害な結果、薬の使用中止から起こる有害な結果、期待した薬理的効果が有意に発生しないこと等が挙げられる。
より具体的には、投与中または投与初期における過敏反応、投与後における抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下により、有効性が低下することもまた、副作用に含まれる。
投与中または投与初期における過敏反応(infusion reaction)としては、アナフィラキシー反応が例として挙げられ、具体的な症状としては、呼吸困難、気管支痙攣、血圧上昇、血圧低下、血管浮腫、チアノーゼ、低酸素症、熱関係副作用(ほてり、高熱、発赤等)、皮膚関係副作用(皮膚紅斑、皮膚発疹、皮膚蕁麻疹、皮膚掻痒感等)、消化器嘔吐等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。投与後における抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下の例としては、HACAによる抗ヒトTNFαキメラ抗体の中和反応が挙げられるがこれに限定されるものではない。
HACAを産生しているか否かは、後述の実施例による方法により測定することができる。また、抗ヒトTNFαキメラ抗体が血中に残存するとは、抗ヒトTNFαキメラ抗体の投与後に、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下傾向が小さいことをいう。血中濃度の低下傾向が小さいとは、抗ヒトTNFαキメラ抗体投与一定期間後に抗ヒトTNFαキメラ抗体が血中に検出されることをいう。具体的には、投与8週後に血中に抗ヒトTNFαキメラ抗体が検出されること、より好ましくは、初回、2週後、6週後、14週後、22週後の投与後、さらに投与8週間経過後の投与前の血中に抗ヒトTNFαキメラ抗体が検出されることが挙げられる。抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度は、EIA法等により検出することができる。
本発明における抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用は、抗ヒトTNFαキメラ抗体の投与中に起こってもよいし、投与直後、投与初期、または投与後に起こっても良い。
本発明において、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が投与初期におこるとは、抗体投与中〜6時間、好ましくは2〜3時間以内に副作用が発症することをいう。また、投与後に起こるとは、投与後1日〜4週、好ましくは投与後1〜2週に副作用が起こることをいう。
さらに、本発明の副作用は、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を一回投与することにより起こってもよいし、投与中断後に投与を再開した際に起こっても良いし、また、連続して投与することによって起こっても良い。
本発明者らによって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用と関連することが見出された遺伝子は、以下の(1)〜(3)に示す遺伝子である。括弧内には遺伝子座を示す。括弧の後ろにGenBankのアクセッション番号を示す。
(1)CD28(2q33-q34)NM_006139.1
(2)TNFAIP2:腫瘍壊死因子αinduced protein2 (14q32) NM_006291.2
(3)TNFSF13B:腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13(13q32-q34) NM_006573.3
これら遺伝子の塩基配列、およびそれら遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に関する情報は、上記のGenBankのアクセッション番号から、容易に取得することが可能である。また当業者においては、上記の遺伝子表記(遺伝子名)を基に、公共の遺伝子データベースあるいは文献データベース等から遺伝子の塩基配列、および該遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列に関する情報を容易に入手することが可能である。
本発明者らによって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用と関連することが見出された遺伝子のうち、特に(1)CD28遺伝子、および(2)TNFAIP2遺伝子は、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する中和抗体(HACA)の産生に関連する遺伝子であることが見出された。
また、(3)TNFSF13B遺伝子は、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下に関連することが見出された。
上記の知見に基づき、本発明は、被検者について、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法を提供する。
なお、本発明において「いずれかに記載の遺伝子」とは、上記(1)〜(3)のいずれか少なくとも1以上の遺伝子を意味する。即ち、上記(1)〜(3)の複数の遺伝子もしくはそれら各遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することによって、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査を行う場合も、本発明に含まれる。
本発明において「抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの判定」とは、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる可能性が高いか低いかを判定するための検査が含まれる。本発明の方法においては、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出された場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる、あるいは抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる素因を有すると判定される。
さらに詳細には、(1)CD28遺伝子、および/または(2)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出された場合には、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する中和抗体(HACA)を産生することにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こる、あるいは抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる素因を有すると判定される。
また、(3)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出された場合には、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度が低下することにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こる、あるいは抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる素因を有すると判定される。
一方、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において変異が検出されない場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用を起こさないと判定される。または、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こる素因を有さないと判定される。
本発明の方法により、未だ抗ヒトTNFαキメラ抗体を投与していない被検者であっても、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定することができる。また既に抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症している被検者の場合は、副作用が進行する可能性が高いか低いかを判定することができ、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与することによる、疾患の治療方針の決定等に利用する事ができる。
なお、本明細書で用いられる「治療」とは、通常、薬理学的なおよび/または生理学的な効果を得ることを意味する。効果とは、疾患や症状を完全にあるいは部分的に妨げる点で予防的であってもよく、疾患の症状を完全にあるいは部分的に治療する点で治療的であっても良い。本明細書における「治療」とは、哺乳類、特にヒトにおける疾患の治療すべてを含んでいる。そしてさらに、疾患の素因があるが未だ発病していると診断されていない被検者の発病の予防、疾患の進行を抑制すること、または疾患を軽減させることなどもこの「治療」に含まれる。
本発明の上記(1)〜(3)の各遺伝子のDNA配列、および該遺伝子の近傍DNA配列としては、具体的には、例えば配列番号:1〜7に記載の配列が挙げられる。配列番号:1〜5に記載の配列は、mapping info(NCBI build33)の結果に基づいて作製した配列である。本発明における「遺伝子の近傍DNA領域」とは、通常、該遺伝子の近傍の染色体上の領域を指す。近傍とは、特に制限されるものではないが、通常、本発明の多型部位を含むDNA領域であり、一例を示せば、配列番号:1〜7のいずれかに記載のDNA領域を挙げることができる。
上記本発明の検査方法における「変異」の位置は、予め規定することは困難であるが、通常、上記遺伝子のORF中、あるいは上記遺伝子の発現を制御する領域(例えば、プロモーター領域、エンハンサー領域等)中に存在するが、これらに限定されるものではない。また、この「変異」とは、上記遺伝子の発現量を変化させる、mRNAの安定性等の性質を変化させる、あるいは上記遺伝子によってコードされるタンパク質の有する活性を変化させるような変異であることが多いが、特に制限されない。本発明の変異としては、例えば、塩基の付加、欠失、置換、挿入変異等を挙げることができる。
本発明者らは、被検者における本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用に対して有意に関連する多型変異を見出すことに成功した。従って、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の多型部位について変異の有無を指標とする(塩基種を決定する)ことにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かの検査を行なうことが可能である。
なお、上記の「遺伝子の近傍DNA領域」とは、通常該遺伝子の近傍の染色体上の領域を指す。近傍とは特に制限されるものではないが、通常、本発明の多型部位を含むDNA領域であり、好ましくは多型部位または多型部位を含むLDブロック(連鎖不平衡ブロック)の末端部位から10kb以内の領域を指す。
前後10kbすなわち20kb以内の範囲にある多型は、Gabrielらの報告の通り、連鎖している可能性が高い(Gabriel SB, Schaffner SF, Nguyen H et al. The structure of haplotype blocks in the human genome. Science 296, 2225-9. 2002)。
上記(1)〜(3)の各遺伝子および該遺伝子の近傍DNA配列の一例を、それぞれ配列番号:1〜7に示す。例えば、配列番号:1〜5に記載の塩基配列は、CD28遺伝子および該遺伝子の近傍のDNA配列の一例を示す。なお、それぞれの配列はプラス鎖で示してある。
本発明の好ましい態様においては、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における多型変異(多型部位における塩基種)を検出することを特徴とする、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かを検査する方法である。
多型とは、遺伝学的には、人口中1%以上の頻度で存在している1遺伝子におけるある塩基の変化と一般的に定義されるが、本発明における「多型」は、この定義に制限されない。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型、一から数十塩基(時には数千塩基)が欠失あるいは挿入している多型等が挙げられる。さらに、多型部位の数も、1個に限定されず、複数個の多型であってもよい。
また本発明は、被検者について、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定することを特徴とする、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かを検査する方法を提供する。
本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する副作用が起こるか否かを検査する方法における「多型部位」は、本発明の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域に存在する多型であれば、特に制限されない。具体的には、本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査方法に利用可能な多型部位として、上記(1)〜(3)のいずれかの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域に存在する、以下の(1a)〜(3a)に記載の多型部位を挙げることができる。(なお、本明細書においては、これらの多型部位を単に『本発明の多型部位』と記載する場合がある)。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
また、当業者においては掲載されたdbSNPデータベースのrs番号をもとに、当該部位についての塩基種の情報を適宜取得することができる。また、NCBI SNPリファレンス欄の記載内容は、先頭にrsが付くものはdbSNPデータベースの登録IDのうちNCBIにより一配列に一意に定まるIDを付与されたものである。また、dbSNPデータベースはウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/index.html)に公開されており、NCBI SNPリファレンス欄に記載された登録ID番号を用いてウェブサイト上で検索することにより、塩基配列におけるSNPsの詳細な情報(例えば、染色体上の位置、多型部位の塩基の種類、前後の配列等)が入手できる。これらの情報を用いた場合、当業者においては、本発明に記載する検査を容易に行うことができる。
上記表中に示した多型部位の塩基種は配列表に示した配列に対して相補鎖側にある塩基種を示している場合があるが、本明細書において記載された前後配列、あるいは、dbSNPおよびJSNPデータベースにて公開される前後配列を用いれば異同を確認することは当業者にとって容易であり、検査を行うにあたってはプラス鎖とマイナス鎖のどちらを調べても必然的にもう一方の結果を決定することができる。なお、現在ヒトゲノム配列については、ほぼ最終版といわれているヒトゲノム国際プロジェクトbuild35が発表されており、本明細書に記した配列等はヒトゲノム国際プロジェクトbuild35の結果に基づいている。
当業者においては、通常、本明細書において開示された多型に付与された登録ID番号、例えばdbSNPデータベースにおけるrs番号によって、本発明の多型部位の実際のゲノム上の位置および前後の配列等を容易に知ることができる。これによって、知ることができない場合であっても、当業者においては、配列番号:1〜7で示される塩基配列および多型部位等に関する情報から、適宜、該多型部位に相当する実際のゲノム上の位置を知ることは容易である。例えば、公開されているゲノムデータベース等と照会することにより、本発明の多型部位のゲノム上の位置を知ることができる。即ち、配列表に記載の塩基配列とゲノム上の実際の塩基配列との間に若干の塩基配列の相違がみられた場合であっても、配列表に記載の塩基配列を基にゲノム配列と相同性検索等を行うことにより、本発明の多型部位について、実際のゲノム上の位置を正確に知ることが可能である。また、ゲノム上の位置が特定できない場合でも、本明細書に記載の配列表および多型部位の情報から本発明に記載する検査を行うことは容易である。
また、ゲノムDNAは、通常、互いに相補的な二本鎖DNA構造を有している。従って、本明細書においては、便宜的に一方の鎖におけるDNA配列を示した場合であっても、当然の如く、当該配列(塩基)に相補的な配列も開示したものと解釈される。当業者にとって、一方のDNA配列(塩基)が判れば、該配列(塩基)に相補的な配列(塩基)は自明である。
なお、後述する実施例においては、配列番号:1に記載の各配列に対する相補鎖を用いて試験を行なっているものもある。
本発明の好ましい態様においては、(1a)〜(3a)の多型部位における塩基種の変異が、それぞれ以下の(1b)〜(3b)である場合に、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定される。
(1b)CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTに変異
(2b)TNFAIP2遺伝子領域上の部位において、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の塩基種がAからTに変異
(3b)TNFSF13B遺伝子領域上の部位において、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからTに変異
本発明においては、上記多型部位以外であっても、該多型部位とその周辺のDNA領域は強く連鎖しているものと考えられることから、上記多型部位の近傍の多型部位について塩基種を決定することによっても、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査が可能である。即ち、多型部位の塩基種が上記(1b)〜(3b)のいずれかの塩基種であるような、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症する患者を含むヒトの小集団について、この「近傍の多型部位」における塩基種を予め決定する。
次いで、この「近傍の多型部位」について被検者における塩基種を決定し、予め決定された前記塩基種と比較することにより、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査を行うことができる。予め決定された塩基種と同一の塩基種である場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定される。本発明の検査方法により、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定することができ、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤を投与することによる疾患の治療方針の決定や、薬剤投与量の決定等に利用することができる。
以上のように、本発明により、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用に関連する遺伝子上の領域が明らかになったことにより、当業者に過度の負担を強いることなく、該副作用が起こるか否かについて検査を行うことができる。
本発明の多型部位における塩基種の決定は、当業者においては種々の方法によって行うことができる。一例を示せば、本発明の多型部位を含むDNAの塩基配列を直接決定することによって行うことができる。
本発明の検査方法に供する被検試料は、通常、予め被検者から取得された生体試料であることが好ましい。生体試料としては、例えばDNA試料を挙げることができる。本発明におけるDNA試料は、例えば被検者の血液、皮膚、口腔粘膜、手術により採取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液等から抽出した染色体DNA、あるいはRNAを基に調製することができる。
即ち本発明は、通常、被検者由来の生体試料(予め被検者から取得された生体試料)を被検試料として検査に供する方法である。
当業者においては、公知の技術を用いて、適宜、生体試料の調製を行うことができる。例えば、DNA試料は、本発明の多型部位を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、染色体DNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって調製することができる。
本方法においては、次いで、単離したDNAの塩基配列を決定する。単離したDNAの塩基配列の決定は、当業者においては、DNAシークエンサー等を用いて容易に実施することができる。
本発明の多型部位は、通常、その部位の塩基種のバリエーションが既に明らかになっている。本発明における「塩基種の決定」とは、必ずしもその多型部位についてA、G、T、Cのいずれかの塩基種であるかを判別することを意味するものではない。例えば、ある多型部位について塩基種のバリエーションがAまたはGであることが判明している場合には、その部位の塩基種が「Aでない」もしくは「Gでない」ことが判明すれば充分である。
予め塩基のバリエーションが明らかにされている多型部位について、その塩基種を決定するための様々な方法が公知である。本発明の塩基種の決定方法は、特に限定されない。例えば、PCR法を応用した解析方法として、TaqMan PCR法、AcycloPrime法、およびMALDI-TOF/MS法等が実用化されている。またPCRに依存しない塩基種の決定法としてInvader法やRCA法が知られている。更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる。以下にこれらの方法について簡単に述べる。ここに述べた方法は、いずれも本発明における多型部位の塩基種の決定に応用できる。
[TaqMan PCR法]
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。TaqMan PCR法は、アリルを含む領域を増幅することができるプライマーセットと、TaqManプローブを利用した解析方法である。TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるアリルを含む領域にハイブリダイズするように設計される。
TaqManプローブのTmに近い条件で標的塩基配列にハイブリダイズさせれば、1塩基の相違によってTaqManプローブのハイブリダイズ効率は著しく低下する。TaqManプローブの存在下でPCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリダイズしたTaqManプローブに到達する。このときDNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性によって、TaqManプローブはその5'末端から分解される。TaqManプローブをレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、TaqManプローブの分解を、蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、TaqManプローブの分解が起きれば、レポーター色素が遊離してクエンチャーとの距離が離れることによって蛍光シグナルが生成する。1塩基の相違のためにTaqManプローブのハイブリダイズが低下すればTaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
多型に対応するTaqManプローブをデザインし、更に各プローブの分解によって異なるシグナルが生成されるようにすれば、同時に塩基種の判定を行うこともできる。例えば、レポーター色素として、あるアリルのアリルAのTaqManプローブに6-carboxy-fluorescein(FAM)を、アリルBのプローブにVICを用いる。プローブが分解されない状態では、クエンチャーによってレポーター色素の蛍光シグナル生成は抑制されている。各プローブが対応するアリルにハイブリダイズすれば、ハイブリダイズに応じた蛍光シグナルが観察される。すなわち、FAMまたはVICのいずれかのシグナルが他方よりも強い場合には、アリルAまたはアリルBのホモであることが判明する。他方、アリルをヘテロで有する場合には、両者のシグナルがほぼ同じレベルで検出されることになる。TaqMan PCR法の利用によって、ゲル上での分離のような時間のかかる工程無しで、ゲノムを解析対象としてPCRと塩基種の決定を同時に行うことができる。そのため、TaqMan PCR法は、多くの被検者についての塩基種を決定できる方法として有用である。
[AcycloPrime法]
PCR法を利用した塩基種を決定する方法として、AcycloPrime法も実用化されている。AcycloPrime法では、ゲノム増幅用のプライマー1組と、多型検出用の1つのプライマーを用いる。まず、ゲノムの多型部位を含む領域をPCRで増幅する。この工程は、通常のゲノムPCRと同じである。次に、得られたPCR産物に対して、SNPs検出用のプライマーをアニールさせ、伸長反応を行う。SNPs検出用のプライマーは、検出対象となっている多型部位に隣接する領域にアニールするようにデザインされている。
このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、かつ3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体(ターミネータ)を用いる。その結果、多型部位に相当する位置の塩基に相補的な塩基が1塩基だけ取りこまれて伸長反応が停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍光偏光(Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏光色素に波長の異なる2種類のラベルを用いれば、特定のSNPsが2種類の塩基のうちのいずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することができるので、1度の解析でアリルがホモかヘテロかを判定することもできる。
[MALDI-TOF/MS法]
PCR産物をMALDI-TOF/MSで解析することによって塩基種の決定を行うこともできる。MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、タンパク質のアミノ酸配列や、DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる解析手法として様々な分野で利用されている。MALDI-TOF/MSによる塩基種の決定のためには、まず解析対象であるアリルを含む領域をPCRで増幅する。次いで増幅産物を単離してMALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。アリルの塩基配列は予めわかっているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決定される。
MALDI-TOF/MSを利用した塩基種の決定には、PCR産物の分離工程などが必要となる。しかし標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確な塩基種の決定が期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
[IIs型制限酵素を利用したSNPs特異的な標識方法]
PCR法を利用した更に高速な塩基種の決定が可能な方法も報告されている。例えば、IIs型制限酵素を利用して多型部位の塩基種の決定が行われている。この方法においては、PCRにあたり、IIs型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素(II型)は、特定の塩基配列を認識して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対してIIs型の制限酵素は、特定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。従って、この塩基数の分だけ離れた位置にIIs型制限酵素の認識配列を含むプライマーがアニールするようにすれば、IIs型制限酵素によってちょうど多型部位で増幅産物を切断することができる。
IIs型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、SNPsの塩基を含む付着末端(conhesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からなるアダプターをライゲーションする。アダプターは、多型変異に対応する塩基を含む異なる塩基配列からなり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最終的に、増幅産物は多型部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
前記IIs型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー(capture primer)を組み合わせてPCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマーを利用して固相化することができる。例えばビオチン標識プライマーを捕捉プライマーとして用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、塩基種を決定することができる。
[磁気蛍光ビーズを使った多型部位における塩基種の決定]
複数のアリルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。複数のアリルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成分が必要である。しかし実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多くない。これに対して、樹脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができる。更に、樹脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気によって分離可能なビーズとすることができる。このような磁気蛍光ビーズを利用した、多重化多型タイピングが考え出された(バイオサイエンスとバイオインダストリー, Vol.60 No.12, 821-824)。
磁気蛍光ビーズを利用した多重化多型タイピングにおいては、各アリルの多型部位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各アリルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両者は組み合わせられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハイブリダイズしたときに、当該アリル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する蛍光標識オリゴDNAを調製する。
アリルを含む領域を非対称PCRによって増幅し、上記の磁気蛍光ビーズ固定化プローブと蛍光標識オリゴDNAをハイブリダイズさせ、更に両者をライゲーションする。磁気蛍光ビーズ固定化プローブの末端が、多型部位の塩基に相補的な塩基配列であった場合には効率的にライゲーションされる。逆にもしも多型のために末端の塩基が異なれば、両者のライゲーション効率は低下する。その結果、各磁気蛍光ビーズには、試料が当該磁気蛍光ビーズに相補的な塩基種であった場合に限り、蛍光標識オリゴDNAが結合する。
磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリゴDNAの存在を検出することにより、塩基種が決定される。磁気蛍光ビーズは、フローサイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類の多型部位について、単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
[Invader法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法も実用化されている。例えば、Invader法では、アリルプローブ、インベーダープローブ、およびFRETプローブの3種類のオリゴヌクレオチドと、cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、塩基種の決定を実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのはFRETプローブのみである。
アリルプローブは、検出すべきアリルに隣接する領域にハイブリダイズするようにデザインされる。アリルプローブの5'側には、ハイブリダイズに無関係な塩基配列からなるフラップが連結されている。アリルプローブは多型部位の3'側にハイブリダイズし、多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
一方インベーダープローブは、多型部位の5'側にハイブリダイズする塩基配列からなっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダイズによって3'末端が多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダープローブとアリルプローブとが隣接してハイブリダイズするように両者の塩基配列はデザインされている。
多型部位がアリルプローブの塩基配列に相補的な塩基であった場合には、インベーダープローブとアリルプローブの両者がアリルにハイブリダイズすると、アリルプローブの多型部位に相当する塩基にインベーダープローブが侵入(invasion)した構造が形成される。cleavaseは、このようにして形成された侵入構造を形成したオリゴヌクレオチドのうち、侵入された側の鎖を切断する。切断は侵入構造の上で起きるので、結果としてアリルプローブのフラップが切り離されることになる。一方、もしも多型部位の塩基がアリルプローブの塩基に相補的でなかった場合には、多型部位におけるインベーダープローブとアリルプローブの競合は無く、侵入構造は形成されない。したがってcleavaseによるフラップの切断が起こらない。
FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。FRETプローブは5'末端側に自己相補配列を有し、3'末端側に1本鎖部分が配置されたヘアピンループを構成している。FRETプローブの3'末端側に配置された1本鎖部分は、フラップに相補的な塩基配列からなっていて、ここにフラップがハイブリダイズすることができる。フラップがFRETプローブにハイブリダイズすると、FRETプローブの自己相補配列の5'末端部分にフラップの3'末端が侵入した構造が形成されるように両者の塩基配列がデザインされている。cleavaseは侵入構造を認識して切断する。FRETプローブのcleavaseによって切断される部分を挟んで、TaqMan PCRと同様のレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、FRETプローブの切断を蛍光シグナルの変化として検知することができる。
なお、理論的には、フラップは切断されない状態でもFRETプローブにハイブリダイズするはずである。しかし実際には、切断されたフラップとアリルプローブの状態で存在しているフラップとでは、FRETに対する結合効率に大きな差がある。そのため、FRETプローブを利用して、切断されたフラップを特異的に検出することは可能である。
Invader法に基づいて塩基種を決定するためには、アリルAとアリルBのそれぞれに相補的な塩基配列を含む、2種類のアリルプローブを用意すれば良い。このとき両者のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するためのFRETプローブも2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、TaqMan PCR法と同様の考え方によって、塩基種を決定することができる。
Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドがFRETプローブのみであることである。FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌクレオチドを利用することができる。従って、大量生産が可能である。一方アリルプローブとインベーダープローブは標識する必要が無いので、結局、ジェノタイピングのための試薬を安価に製造することができる。
[RCA法]
PCR法に依存しない塩基種の決定方法として、RCA法を挙げることができる。鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが、環状の1本鎖DNAを鋳型として、長い相補鎖を合成する反応に基づくDNAの増幅方法が、Rolling Circle Amplification(RCA)法である(Lizardri PM et al.,Nature Genetics 19, 225, 1998)。RCA法においては、環状DNAにアニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成する長い相補鎖にアニールする第2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している。
RCA法には、鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが利用されている。そのため、相補鎖合成によって2本鎖となった部分は、より5'側にアニールした別のプライマーから開始した相補鎖合成反応によって置換される。例えば、環状DNAを鋳型とする相補鎖合成反応は、1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相補鎖合成は継続し、長い1本鎖DNAが生成される。一方、環状DNAを鋳型として生成した長い1本鎖DNAには、第2のプライマーがアニールして相補鎖合成が開始する。RCA法において生成される1本鎖DNAは、環状のDNAを鋳型としていることから、その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。従って、長い1本鎖の連続的な生成は、第2のプライマーの連続的なアニールをもたらす。その結果、変性工程を経ることなく、プライマーがアニールすることができる1本鎖部分が連続的に生成される。こうして、DNAの増幅が達成される。
RCA法に必要な環状1本鎖DNAが多型部位の塩基種に応じて生成されれば、RCA法を利用して塩基種の決定をすることができる。そのために、直鎖状で1本鎖のパドロックプローブが利用される。パドロックプローブは、5'末端と3'末端に検出すべき多型部位の両側に相補的な塩基配列を有している。これらの塩基配列は、バックボーンと呼ばれる特殊な塩基配列からなる部分で連結されている。多型部位がパドロックプローブの末端に相補的な塩基配列であれば、アリルにハイブリダイズしたパドロックプローブの末端をDNAリガーゼによってライゲーションすることができる。その結果、直鎖状のパドロックプローブが環状化され、RCA法の反応がトリガーされる。DNAリガーゼの反応は、ライゲーションすべき末端部分が完全に相補的でない場合には反応効率が著しく低下する。従って、ライゲーションの有無をRCA法で確認することによって、多型部位の塩基種の決定が可能である。
RCA法は、DNAを増幅することはできるが、そのままではシグナルを生成しない。また増幅の有無のみを指標とするのでは、アリル毎に反応を行わなければ、通常、塩基種を決定することができない。これらの点を塩基種の決定のために改良した方法が公知である。例えば、モレキュラービーコンを利用して、RCA法に基づいて1チューブで塩基種の決定を行うことができる。モレキュラービーコンは、TaqMan法と同様に、蛍光色素とクエンチャーを利用したシグナル生成用プローブである。モレキュラービーコンの5'末端と3'末端は相補的な塩基配列で構成されており、単独ではヘアピン構造を形成する。両端付近を蛍光色素とクエンチャーで標識しておけば、ヘアピン構造を形成している状態では蛍光シグナルが検出できない。モレキュラービーコンの一部を、RCA法の増幅産物に相補的な塩基配列としておけば、モレキュラービーコンはRCA法の増幅産物にハイブリダイズする。ハイブリダイズによってヘアピン構造が解消されるため、蛍光シグナルが生成される。
モレキュラービーコンの利点は、パドロックプローブのバックボーン部分の塩基配列を利用することによって、検出対象とは無関係にモレキュラービーコンの塩基配列を共通にできる点である。アリル毎にバックボーンの塩基配列を変え、蛍光波長が異なる2種類のモレキュラービーコンを組み合わせれば、1チューブで塩基種の決定が可能である。蛍光標識プローブの合成コストは高いので、測定対象に関わらず共通のプローブを利用できることは、経済的なメリットである。
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、通常、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らない塩基種決定法も古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認識する制限酵素が存在すれば、RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることができる。
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
その他、標識プローブを必要としない方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
具体的には、まずPCR法等によって多型部位を含む領域を増幅する。増幅産物に、塩基配列がわかっているプローブDNAをハイブリダイズさせて2本鎖とする。これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。プローブDNAとのハイブリダイズによってミスマッチを生じたDNA断片では、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなる。こうして生じた移動度の差を検出することによりミスマッチの有無を検出することができる。
更にDNAアレイを使って塩基種を決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」,秀潤社,2000.4/20発行,pp97-103「オリゴDNAチップによるSNPの解析」,梶江慎一)。DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対してサンプルDNA(あるいはRNA)をハイブリダイズさせ、当該平面をスキャンすることによって、各プローブに対するハイブリダイズが検出される。多くのプローブに対する反応を同時に観察することができることから、例えば、多数の多型部位について同時に解析するには、DNAアレイは有用である。
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することもできる。
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インビトロ(in vitro)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
オリゴヌクレオチドは、検出すべきSNPsを含む領域に相補的な塩基配列で構成される。基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10〜100ベースであり、好ましくは10〜50ベースであり、さらに好ましくは15〜25ベースである。更に、一般にDNAアレイ法においては、クロスハイブリダイゼーション(非特異的ハイブリダイゼーション)による誤差を避けるために、ミスマッチ(MM)プローブが用いられる。ミスマッチプローブは、標的塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとのペアを構成している。ミスマッチプローブに対して、完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドはパーフェクトマッチ(PM)プローブと呼ばれる。データ解析の過程で、ミスマッチプローブで観察されたシグナルを消去することによって、クロスハイブリダイゼーションの影響を小さくすることができる。
DNAアレイ法によるジェノタイピングのための試料は、被検者から採取された生物学的試料をもとに当業者に周知の方法で調製することができる。生物学的試料は特に限定されない。例えば被検者の血液、末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪から抽出した染色体DNAから、DNA試料を調製することができる。判定すべき多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーを用いて、染色体DNAの特定の領域が増幅される。このとき、マルチプレックスPCR法によって複数の領域を同時に増幅することができる。マルチプレックスPCR法とは、複数組のプライマーセットを、同じ反応液中で用いるPCR法である。複数の多型部位を解析するときには、マルチプレックスPCR法が有用である。
一般にDNAアレイ法においては、PCR法によってDNA試料を増幅するとともに、増幅産物が標識される。増幅産物の標識には、標識を付したプライマーが利用される。例えば、まず多型部位を含む領域に特異的なプライマーセットによるPCR法でゲノムDNAを増幅する。次に、ビオチンラベルしたプライマーを使ったラベリングPCR法によって、ビオチンラベルされたDNAを合成する。こうして合成されたビオチンラベルDNAを、チップ上のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さや反応温度等の条件に応じて、適宜調整することができる。当業者は、適切なハイブリダイゼーションの条件をデザインすることができる。ハイブリダイズしたDNAを検出するために、蛍光色素で標識したアビジンが添加される。アレイをスキャナで解析し、蛍光を指標としてハイブリダイズの有無を確認する。
上記方法をより具体的に示せば、被検者から調製した本発明の多型部位を含むDNA、およびヌクレオチドプローブが固定された固相、を取得した後、次いで、該DNAと該固相を接触させる。さらに、固相に固定されたヌクレオチドプローブにハイブリダイズしたDNAを検出することにより、本発明の多型部位の塩基種を決定する。
本発明において「固相」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な材料を意味する。本発明の固相は、ヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、具体的には、マイクロプレートウェル、プラスチックビーズ、磁性粒子、基板などを含む固相等を例示することができる。本発明の「固相」としては、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。本発明において「基板」とは、ヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味する。また、本発明においてヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アリル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アリル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべき多型部位が存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によって多型部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。
上記オリゴヌクレオチドのうち、(1a)〜(3a)のいずれかに記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドは、HCV感染に起因する肝疾患に対して感受性か否かを検査するための試薬(検査薬)として利用できる。これは遺伝子発現を指標とする検査、または遺伝子多型を指標とする検査に使用される。
該オリゴヌクレオチドは、本発明の上記(1a)〜(3a)のいずれかの多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものである。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドは、検出する遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における、上記(1)〜(3)のいずれかの塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の検査方法におけるプローブやプライマーとして用いることができる。該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15bp〜100bpであり、好ましくは17bp〜30bpである。プライマーは、本発明の上記(1a)〜(3a)のいずれかの多型部位を含むDNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。
本発明は、本発明の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー、および多型部位を含むDNA領域にハイブリダイズするプローブを提供する。
本発明において、多型部位を含む領域を増幅するためのプライマーには、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位に向かって相補鎖合成を開始することができるプライマーも含まれる。該プライマーは、多型部位を含むDNAにおける、多型部位の3'側に複製開始点を与えるためのプライマーと表現することもできる。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。たとえば、DNAチップによる解析のためのプライマーであれば、多型部位を含む領域として、20〜500、通常50〜200塩基の長さの増幅産物が得られるようにプライマーをデザインすることができる。当業者においては、多型部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、解析手法に応じたプライマーをデザインすることができる。本発明のプライマーを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列のみならず、適宜改変することができる。
本発明のプライマーには、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に加え、任意の塩基配列を付加することができる。例えば、IIs型の制限酵素を利用した多型の解析方法のためのプライマーにおいては、IIs型制限酵素の認識配列を付加したプライマーが利用される。このような、塩基配列を修飾したプライマーは、本発明のプライマーに含まれる。更に、本発明のプライマーは、修飾することができる。例えば、蛍光物質や、ビオチンまたはジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーが各種のジェノタイピング方法において利用される。これらの修飾を有するプライマーも本発明に含まれる。
本発明のプライマーの具体的な例としては、配列番号:9〜18に記載のプライマーが挙げられるが、本発明のプライマーはこれに限定されるものではない。
本発明は、上記プライマーを有効成分として含有する、本発明の多型部位の検査薬またはキットも提供する。
一方本発明において、多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブとは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるプローブを言う。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
言いかえれば、ゲノムDNA上の本発明の多型部位、または多型部位に隣接する部位にハイブリダイズすることができるプローブは、本発明のプローブとして好ましい。本発明のプローブには、プライマーと同様に、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。例えば、Invader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを構成する塩基配列は、ゲノムにおける本発明の多型部位の周辺DNA領域の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。
本発明のプライマーまたはプローブは、それを構成する塩基配列をもとに、任意の方法によって合成することができる。本発明のプライマーまたはプローブの、ゲノムDNAに相補的な塩基配列の長さは、通常15〜100、一般に15〜50、通常15〜30である。与えられた塩基配列に基づいて、当該塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成する手法は公知である。更に、オリゴヌクレオチドの合成において、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用して、オリゴヌクレオチドに任意の修飾を導入することもできる。あるいは、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素などを結合する方法も公知である。
本発明のプローブの具体的な例としては、それぞれ以下の(1a)〜(3a)に記載のいずれかの多型部位を含む領域にハイブリダイズするプローブであって、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するプローブが挙げられる。
(1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
(2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
(3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
本発明のプローブの具体的な例としては、配列番号:8に記載のプローブが挙げられるが、本発明のプローブはこれに限定されるものではない。
本発明はまた、本発明の抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査方法に使用するための試薬(検査薬)を提供する。本発明の試薬は、前記本発明のプライマーおよび/またはプローブを含む。抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの検査においては(1a)〜(3a)のいずれかに記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーおよび/またはプローブを用いる。
本発明の試薬には、塩基種の決定方法に応じて、各種の酵素、酵素基質、および緩衝液などを組み合わせることができる。酵素としては、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、あるいはIIs制限酵素などの、上記の塩基種決定方法として例示した各種の解析方法に必要な酵素を示すことができる。緩衝液は、これらの解析に用いる酵素の活性の維持に好適な緩衝液が、適宜選択される。更に、酵素基質としては、例えば、相補鎖合成用の基質等が用いられる。
更に本発明の試薬には、多型部位における塩基が明らかな対照を添付することができる。対照は、予め多型部位の塩基種が明らかなゲノム、あるいはゲノムの断片を用いることができる。ゲノムは、細胞から抽出されたものでもよいし、細胞あるいは細胞の分画を用いることもできる。細胞を対照として用いれば、対照の結果によってゲノムDNAの抽出操作が正しく行われたことを証明することができる。あるいは、多型部位を含む塩基配列からなるDNAを対照として用いることもできる。具体的には、本発明の多型部位における塩基種が明らかにされたゲノム由来のDNAを含むYACベクターやBACベクターは、対照として有用である。あるいは多型部位に相当する数百ベースのみを切り出して挿入したベクターを対照として用いることもできる。
さらに、本発明における試薬の別の態様は、本発明の(1a)〜(3a)のいずれかに記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査するための試薬である。
これらは本発明の多型部位を指標とする検査に使用される。これらの調製方法に関しては、上述の通りである。
また本発明は、被検者(被検者由来の生体試料)における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現量を指標として、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かの判定を行うことも可能である。即ち本発明は、被検者における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現量が対照と比較して低下している場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用を発症するものと判定される、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査する方法を提供する。
上記方法においては、通常、被検者由来の生体試料を被検試料とする。該被検試料における該遺伝子の発現量の測定は、当業者においては公知の技術を用いて適宜実施することが可能である。なお、上記「対照」とは、通常、健常者由来の生体試料における該遺伝子の発現量を指す。なお、本発明における(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子の発現とは、該遺伝子から転写されるmRNAの発現、または該遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の両方を意味するものである。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
1.対象
松原メイフラワー病院(日本)の外来に通院、または松原メイフラワー病院に入院中の関節リウマチと診断された患者のうち、以下の(1)から(3)の条件をすべて満たすインフリキシマブ(商品名 レミケード)未投与の患者を対象とした。
(1) メトトレキサート製剤(商品名 リウマトレックス)6 mg/週以上の用量を3ヶ月以上継続して投与してもコントロール不良の関節リウマチ患者(以下の3項目を判定基準とした)
・疼痛関節≧6個
・腫脹関節≧6個
・CRP≧2.0 mg/dlあるいはESR≧28 mm/hr
(2) 次の3項目を満たす関節リウマチ患者(日和見感染症のリスクが高い患者を除外するため)
・末梢血白血球≧4000 /mm3
・末梢血リンパ球≧1000 /mm3
・血中β‐D‐グルカン陰性
(3) 本研究の目的及び内容を説明し本人から文書にて同意が得られた関節リウマチ患者
本研究では、代諾者が必要な患者、小児患者は対象としなかった。また、インフリキシマブ投与が禁忌である患者( 1)重篤な感染症の患者、2)活動性結核の患者、3)レミケードの成分又はマウス由来蛋白に対する過敏症の既往歴のある患者、4)脱髄疾患及びその既往歴のある患者、5)うっ血性心不全の患者)は除外した。
また、研究期間の終了までに54週後にHACAの測定データが得られた症例は45名であった。
2.投与方法
(1)インフリキシマブの用法・用量
体重1 kg当たりインフリキシマブ3 mgを1回の投与量として、添付文書の記載に従いインフリキシマブ100 mgバイアルを10 mlの日本薬局方注射用蒸留水で溶解し、患者の体重から換算した必要溶解液量を約250 mlの日本薬局方生理食塩液に希釈し、独立した点滴ラインにより1.2ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して2時間以上をかけて緩徐に点滴静注した。投与間隔は、初回投与後、2週後、6週後に投与し、以後は8週間の間隔で投与を行った。下記の通り、メトトレキサート製剤を併用薬とした。
(2)メトトレキサート製剤の投与方法
すべての患者に対して、1日当たり6〜8 mgのメトトレキサートを1日3回に分けて投与した。
3.インフリキシマブの有効・無効の判定基準
DAS(disease activity score)を用いてインフリキシマブの関節リウマチに対する有効性を評価した。欧州リウマチ学会議(EULAR)で汎用されているDASは、疼痛指数、腫脹関節数、赤沈値、患者の健康状態の全般評価の4つの活動性指標を指数化して、以下の式から疾患活動性を算定し、DAS28の改善と評価時のDAS28の値の両方を用いて表1に示すように、「有効」、「やや有効」、「無効」の3種類の評価を付与した(表1)。
Figure 2008048629
Figure 2008048629
Figure 2008048629
DAS28を用いたEULAR改善基準
*治療前のDAS28-現在のDAS28
4.投与、観察・検査のスケジュール
本研究は主に表2に記載した観察・検査スケジュールに沿って行った。初回投与日、6週後、14週後、30週後、54週後のインフリキシマブ有効性を判定し、投与の約1時間前に対象患者の血液を採取した。また、遺伝子解析用として別に血液約10 mlを採取した。
Figure 2008048629
#1: bは、インフリキシマブ投与約1時間前の採血を示す。
5.解析対象遺伝子
免疫、炎症と関連する13遺伝子(C3orf1、CD28、CD80、CD86、CTLA4、LST1、LTA、SCNN1A、TNFA、TNFAIP2、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFSF13B)の領域に存在する61SNPsを解析対象とした。
6.SNPs解析
対象患者より採血した血液10 mlよりDNAを抽出し(三菱化学BCL社)、SNPs解析用のDNA試料を得た。一塩基多型(SNP)の遺伝子型の解析は、TaqMan allelic discrimination assay(Livak KJ. Genet Anal. 1999; 14: 143-149.)により実施した。試薬は、アプライド・バイオシステムズ(Foster City,CA,USA)より購入した。PCR反応の完了時にSNPを区別するタックマン・プローブは、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosisytems)で設計、合成されたTaqMan(R) SNP Genotyping Assayを用いた。アッセイIDおよびプライマーセットをリストに示す。一方のアレル・プローブを蛍光FAM色素で標識し、他方を蛍光VIC色素で標識した。PCR反応は、濃度900 nMのPCRプライマーおよび濃度200 nMのタックマンMGB-プローブを用いて、UNGを含まないTaqMan Universsal Master Mix without UNG(Applied Biosisytems)中で行った。反応は、3.0 ngのゲノムDNAを使用し、全反応容量3μlで、384穴フォーマットで行った。次いで、プレートをGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosisytems)に設置し、95℃に10分間加熱した後、92℃15秒、60℃1分のサイクルを40回行い、最後に25℃に浸漬した。Prism 7900HT装置(Applied Biosisytems)により、プレートの各ウェル内の蛍光強度を読み取った。各プレートからの蛍光データ・ファイルは、SDS2.0 allele calling software(Applied Biosisytems)により分析した。
〔リスト〕
rs8003080(TNFAIP2) C___2434859_10
プローブ : TGTGTGTACAATAC(A/T)GATGCCAGCGAGAG(配列番号:8)
rs1224149(TNSF13B) C___8705042_10
rs1879877(CD28) C__11459560_10
フォワードプライマー :ACAGGTGGAA GGCAGTGGAC(配列番号:9)
リバースプライマー :CATTCTACGT GCAAGCAGCC(配列番号:10)
rs3181097(CD28) C__27467171_10
フォワードプライマー :ACAGGTGGAA GGCAGTGGAC(配列番号:11)
リバースプライマー :CATTCTACGT GCAAGCAGCC(配列番号:12)
rs1181390(CD28) C___8806607_10
フォワードプライマー :GTTACTTGGG TGGGCTGGAG(配列番号:13)
リバースプライマー :GGGTAGGCTT CCCTTGACTG(配列番号:14)
rs1181388(CD28) C___2821002_10
フォワードプライマー :GGAACTTCAC AGAGGCTGGA AC(配列番号:15)
リバースプライマー :AAGAACTTCT CCACCACCTT GC(配列番号:16)
rs3769684(CD28) C__30981306_10
フォワードプライマー : TTAACTGAGC TGGTGGGAGG(配列番号:17)
リバースプライマー : AAGAAACATT GTCAACCCAT CC(配列番号:18)
8.血中インフリキシマブの測定方法
血中のインフリキシマブ濃度は、MainiらのEIA法(Maini et al., Arthritis&Rheumatism, Vol.41, No.9, p1552-1563, 1998)で測定した。すなわち、インフリキシマブのTNFα結合部位を特異的に認識するモノクローナル抗体を固層に結合して血中のインフリキシマブを補足し、さらに、インフリキシマブの複数のエピトープを特異的に認識するビオチン化モノクローナル抗体を用いて検出した。検出に用いたモノクローナル抗体は、インフリキシマブのTNFαへの結合を阻害しなかった。検出限界の下限は0.10μg/mlであった。インフリキシマブ投与前の血清パネルは、ブランク対照のシグナルを上回らず、インフリキシマブ濃度の上昇幅は再現性があるレンジを越えることはなかった。
9.血中HACAの測定方法
血中HACAの測定は、MainiらのブリッジングEIA法(Maini et al., Arthritis&Rheumatism, Vol.41, No.9, p1552-1563, 1998)により行った。まず、マイクロタイタープレートにストレプトアビジンをコーティングし、1%ウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄した後に、ビオチン化したインフリキシマブを結合させ室温で2時間静置した。同様に洗浄した後、患者より採取した血清を、IgGのFcフラグメントの重合体、およびゼラチンを添加した生理食塩水を用いて1:10の割合で希釈し、マイクロタイタープレートに加え室温で1時間静置した。IgGのFcフラグメントの重合体、およびゼラチンの添加は、RF(リウマチ因子)をはじめとする非特異的因子による反応を防止するためである。1%ウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識したインフリキシマブを加え再び洗浄し、基質の発色強度を測定することにより血中HACAの量を測定した。
本研究におけるすべての解析は統計パッケージSPSS ver.12.0.1J (SPSS Inc., Chicago, IL, 2003)を用いて行われた。
〔実施例1〕臨床パラメターの基礎記述統計
本発明では61名慢性関節リウマチ患者を対象とした(男性15名、女性46名)。平均年齢、発症時年齢、罹患年数はそれぞれ58.4歳、47.3歳と11.1年であった。男女別の結果を表に示した(表3)。
Figure 2008048629
表4に投薬期間に現れた副作用の種類と頻度を示す。大別して、熱関係副作用(10名、16.4%)、皮膚関係副作用(15名、24.6%)が見られた。
Figure 2008048629
有効性の指標(DAS28のEULAR改善基準に基づいて有効、やや有効、無効を判断した)は、年齢、発症時年齢、罹患年数と有意な相関を示さなかったが(P>0.05 )、有効例では年齢或いは発症時年齢が高く、罹患年数が低いことが示された(表5、6)。
Figure 2008048629
Figure 2008048629
表7〜9に、投与6週間後における臨床データから有効性を判断した結果を例として示す。
Figure 2008048629
性別と有効性:P>0.05
Figure 2008048629
年齢、発症時年齢、罹患年数と有効性:P>0.05
Figure 2008048629
P>0.05. 有効例では年齢或いは発症時年齢が高く、罹患年数が低い傾向が見られた。
なお、性別、年齢、発症時年齢、罹患年数のいずれかと、副作用の発現には、有意な相関が見られなかった(表10、11)。
Figure 2008048629
Figure 2008048629
インフリキシマブの有効性と副作用発現との関連を調べたところ、皮膚関係副作用と全副作用においては、DAS28Scoreの変化率が低い群では(無効例)、副作用のランクが高い傾向が認められた(0.05<P<0.1、)。有効性の判定との有意な相関は見られなかったが、無効群では、副作用の割合が高く見られた(P>0.05)(表12)。
Figure 2008048629
〔実施例2〕副作用とHACA(ATI)との相関解析
61名RA患者中の45名のインフリキシマブ中和抗体(HACA)を、インフリキシマブ初回投与より54週後に採血した血清を試料としてBridging EIA法で測定した。また、同じ試料を用いて血中インフリキシマブの有無、すなわち、インフリキシマブの残存量をEIA法により測定した。インフリキシマブが血中に残存していたときには、HACAは測定不能とした。血中にHACAが存在したとしても血中ですでにインフリキシマブと結合しているため、Bridging EIA法で検出できないためである。
副作用とHACAの相関を分析したところ、熱関係副作用ではHACA陽性の有無および薬物残存の有無と有意な相関が見られなかったのに対して、皮膚関係副作用ではいずれにも強い相関が見られ、HACA陽性ケースが陰性或いは測定不能(薬物残存)ケースより44.8倍のオッズ比で皮膚関係副作用が現れた。また、インフリキシマブ残存がある群は、ない群と比較して、皮膚関係副作用発現のオッズ比が0.13倍であり、インフリキシマブ残存がある群では皮膚関係副作用が出にくいことを示した。インフリキシマブ残存が認められた患者では、HACAは測定不能であるため、インフリキシマブ残存例を除き、HACA陽性とHACA陰性で集計したところ、オッズ比が28倍となり、HACAの産生が皮膚関係副作用に強く相関することが明らかになった(表13)。
Figure 2008048629
〔実施例3〕有効性とHACAとの相関解析
投与開始時点のDAS28Score(0w)に対するScoreの変化率を従属変数として、HACA判定(陽性、陰性、判定不能)による差をANOVA検定で分析したところ、6wと54wではいずれにも有意差が認められなかったが、30wでは有意差が認められた(P =0.0049)。Scheffeの多重検定により、HACA測定不能いわゆる薬物残存群が陽性群と陰性群対して、それぞれに0.012、0.094の有意確率が示された。結果としては薬物残存群がHACA陽性群と陰性群に比べ、それぞれ、26.6%、17.4%で有効率が高かったと見られた(表14)。
Figure 2008048629
〔実施例4〕HACAの産生、または薬物残存に関連する遺伝子の探索について
初回投与後54週間後のHACAの陽性率は17%であった(8/45)。約60%がインフリキシマブ残存によりHACA測定が不能(27/45)であり、HACAの産生には個人差が存在した。また、インフリキシマブ残存に関わる薬物代謝の個人差も考えられる。HACAの産生やインフリキシマブ残存は、副作用と有効性に強く関連することから、これらと関連する遺伝要因を明確にすることはとても重要であると考えられる。
13種類の炎症と関連する遺伝子領域に存在する61SNPを解析した。これらの遺伝子またはSNPが上記個人差に関連するかどうかをカイ二乗のFisher’s Exact Testで解析した。
HACA陽性群と陽性でない群(HACA陰性+HACA測定不能)におけるFisher’s検定を行ったところ、TNFAIP2遺伝子の上流3.5kbにある一つのSNPが有意に検出された。このSNPのA alleleをもつ(AA+AT)患者ではHACAの陽性率が高く見られ(p<0.05),TTに対するオッズ比が9倍(逆数は0.111)であった(表15)。
Figure 2008048629
HACA非陽性(HACA陰性+HACA測定不能)群とHACA陽性群間のフィシャー検定の結果(Aアリル優性モデル)
遺伝子:TNFAIP2、SNP ID=rs8003080
次に、インフリキシマブ残存によりHACA測定ができなかったHACA測定不能群と測定可能(HACA陽性+HACA陰性)群におけるFisher’s検定を行ったところ、TNFSF13B遺伝子のIntron領域にあるSNPがインフリキシマブ残存に関連しそうな結果を示唆した(P=0.054, odds=4.17)。T alleleのホモ接合体が薬物残存群に多く見られた(表16)。
Figure 2008048629
インフリキシマブ残存(HACA測定可能)群とインフリキシマブ非残存(HACA測定不能)群間のフィッシャー検定の結果(Gアリル優性モデル)
遺伝子:TNFSF13B、SNP ID=rs1224149
また、測定不能群を除外し、HACA測定可能であったHACA陽性群と陰性群の間でFisher’s検定を行った。その結果、CD28遺伝子領域にある測定対象8SNPsのうち5SNPsで有意差が認められた。これらの5個SNPはCD28遺伝子上の14kbの範囲に位置する。国際HapMapプロジェクトの情報(http://hapmap.jst.go.jp/)からこの5個SNPが強い連鎖不平衡にあることが示唆された(表17、18)。
DominantおよびRecessive Modelで検討したところ、5SNPsのGenotype分布は、陰性群では一方で0人であったため、オッズ比が計算できなかったが、約10倍、20倍であると推定される(表17、18)。
Figure 2008048629
HACA陽性群とHACA陰性群間のフィッシャー検定の結果(優性モデル)
遺伝子:CD28
Figure 2008048629
HACA陽性群とHACA陰性群間のフィッシャー検定の結果(劣性モデル)
遺伝子:CD28

Claims (11)

  1. 被検者について、下記(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異を検出することを特徴とする、被検者において抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを検査する方法。
    (1)CD28、(2)TNFAIP2、(3)TNFSF13B
  2. 変異が、下記(1)または(2)に記載の遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体に対する抗体(HACA)の産生によるものである、請求項1に記載の方法。
    (1)CD28、(2)TNFAIP2
  3. 変異が、(3)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における変異であり、副作用が、抗ヒトTNFαキメラ抗体の血中濃度の低下によるものである、請求項1に記載の方法。
  4. 抗ヒトTNFαキメラ抗体が、抗ヒトTNFαキメラ型モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
  5. 変異が、一塩基多型変異である、請求項1に記載の方法。
  6. 以下の工程(a)および(b)を含む、被検者について、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こるか否かを判定する方法。
    (a)被検者における請求項1に記載の(1)〜(3)のいずれかに記載の遺伝子または該遺伝子の近傍DNA領域における多型部位の塩基種を決定する工程
    (b)(a)で決定された多型部位の塩基種において、変異が検出された場合に、被検者は抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する工程
  7. 多型部位が、それぞれ以下の(1a)〜(3a)に記載の多型部位である、請求項6に記載の方法。
    (1a)CD28遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:1に記載の塩基配列における301位、配列番号:2に記載の塩基配列における101位、配列番号:3に記載の塩基配列における402位、配列番号:4に記載の塩基配列における301位、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の多型部位
    (2a)TNFAIP2遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の多型部位
    (3a)TNFSF13B遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域上の部位であって、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の多型部位
  8. 請求項7に記載の(1a)〜(3a)の多型部位における塩基種の変異が、それぞれ以下の(1b)〜(3b)である場合に、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対する副作用が起こると判定する、請求項6に記載の方法。
    (1b)CD28遺伝子領域上の部位において、配列番号:1に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからT、配列番号:2に記載の塩基配列における101位の塩基種がAからG、配列番号:3に記載の塩基配列における402位の塩基種がGからT、配列番号:4に記載の塩基配列における301位の塩基種がAからG、または配列番号:5に記載の塩基配列における61位の塩基種がCからTに変異
    (2b)TNFAIP2遺伝子領域上の部位において、配列番号:6に記載の塩基配列における201位の塩基種がAからTに変異
    (3b)TNFSF13B遺伝子領域上の部位において、配列番号:7に記載の塩基配列における301位の塩基種がGからTに変異
  9. 請求項7に記載の多型部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
  10. 請求項7に記載の多型部位を含むDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された固相からなる、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
  11. 請求項7に記載の多型部位を含むDNAを増幅するためのプライマーオリゴヌクレオチドを含む、抗ヒトTNFαキメラ抗体を含有する薬剤に対して副作用が起こると判定するための薬剤。
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