本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
一般に、液滴吐出装置において、組成物を吐出する出口であるノズル孔に存在する組成物は、常に空気に触れているため乾燥して固化しやすい。組成物が連続して吐出される場合には、吐出される度に組成物が入れ替わるため乾燥等の問題は起きないが、一定の期間吐出されない場合には組成物が乾燥するといった問題が生じる。
特に組成物において揮発性の高い溶媒を用いている場合には、より乾燥が著しいため組成物が固化してノズル孔が詰まる恐れが非常に高くなる。また、固化まではならなくとも溶媒の蒸発によって組成物の粘度が上昇し、吐出する際に方向等の着弾精度に問題が生じる。そのため、このような問題を防ぐために、本発明の液滴吐出装置はノズル孔の組成物を乾燥させない構成とする。
具体的には、ノズルの底面にノズル孔から吐出する組成物と同じものを供給し、少なくともノズル孔とその周辺のノズルの底面を組成物で被覆する。ノズルの底面に組成物を供給する手段としては、例えばノズルの底面にノズル孔とは別にノズルの底面と連結している流路を設ける。そして、当該流路から組成物を供給してノズルの底面を組成物で覆うことによって乾燥を防止することができる。この場合には、ノズルの底面をあらかじめ組成物をはじかない状態(親液性)にしておくことが好ましい。
また、本発明の他の構成として、ノズル孔の側壁に連結した流路を設け、当該流路から直接ノズル孔に組成物を供給する。ノズル孔と流路間で直接組成物のやりとりを行うことによって、ノズル孔における組成物が流動して常に入れ替わるため、組成物が乾燥して固化するのを防止することができる。
また、本発明の他の構成として、ノズル孔に連結された加圧室の側壁に循環流路を設け、当該循環流路を用いてノズル孔の組成物を流動させる。組成物の流動は、加圧室および循環流路の側壁にそれぞれ設けられた圧電素子に選択的に電圧を印加して、加圧室および循環流路を変形することによって制御することができる。
以下に、本発明の液滴吐出装置の構成に関して図面を用いて具体的に説明を行っていく。
(実施の形態1)
本実施の形態では、組成物を吐出するノズル孔を備えたノズルの底面に、組成物を供給する手段を設けた液滴吐出装置に関して図を用いて説明する。
図1に液滴吐出装置における液滴吐出手段の構成について示す。液滴吐出手段101は、液室流路102に連結された予備液室103と、流体抵抗部104、加圧室105、圧電素子106およびノズル孔107を含むノズル部109と、ノズル部底面100に組成物を供給する手段である流路111、112から構成されている。
外部から液滴吐出手段101の内部に供給される組成物は、液室流路102を通過して予備液室103に蓄えられた後、組成物を吐出するためのノズル部109へと移動する。ノズル部109では流体抵抗部104によって、適度の組成物が加圧室105内へ充填される。
加圧室105の側壁には、電圧を印可することにより変形する圧電素子106が設けられている。圧電素子106としては、例えばチタン酸・ジルコン酸・鉛(PZT)等のピエゾ圧電効果を有する圧電素子を用いることができる。目的のノズルに配置された圧電素子106に電圧を印可することにより、加圧室105内の組成物を押しだし、外部に組成物108を吐出することができる。
通常、ノズル孔107の最表面にある組成物は、空気と触れているため乾燥しやすい。ノズル孔107から組成物が吐出されている場合には、組成物が入れ替わるため乾燥が問題にはならないが、一定期間吐出が行われない場合には組成物が乾燥して固化する恐れがある。そのため、図1に示す液滴吐出手段101では、ノズル孔107の最表面の組成物の乾燥を防止するために流路111、112を設ける。流路111、112を用いてノズル孔107から吐出する組成物と同じものをノズル部109の底面100(以下、ノズル部底面100と記す)に供給し、ノズル孔107およびノズル孔107周辺のノズル部底面100を組成物で被覆する(図1(A))。
このような構成とすることにより、常に新しい組成物がノズル孔107に供給されるため、ノズル孔107の組成物の乾燥を防ぐことが可能となる。なお、ここではノズル孔107から吐出する組成物と同じものを流路111、112からノズル部底面100に供給しているが、これに限られず、組成物の溶媒や乾燥を防止する溶液等を供給してもよい。
また、流路111、112の形状や配置はノズル部底面100に組成物を供給できるのであればどのようなものでもよく、例えば、ノズル孔107の周りに線状で形成してもよいし(図1(B))、ノズル孔107の周りに円状(環状やリング状を含む)で形成してもよい(図1(C))。また、1つのノズル孔に対して1つの流路を設けてもよいし、複数の流路を設けてもよい。さらに、図1(A)に示すように、ノズル部底面100に対して流路をノズル孔107に向かって斜めに設けると、流路111、112から供給される組成物がノズル孔107に向かって流れやすくなるため好ましい。なお、図1(B)、(C)は、図1(A)における液滴吐出手段101の底部を模式的に表したもので、図1(B)、(C)のA−Bの断面が図1(A)のA−Bに対応している。
また、流路111、112に、組成物を送り出して供給する手段(送液手段)または組成物を吸引して回収する手段(戻液手段)を備えてもよい。組成物の送液手段や戻液手段としては、ポンプやスクリュー等を利用することができる。ここでは、図1(A)に示すように、流路111、112のノズル部底面100に連結している端部と反対側の端部に送液手段または戻液手段を備えたポンプ111a、112aを設けることによって、流路111、112における組成物の流れを制御できる。
この場合、ポンプ111a、112aに送液手段を設けるか、戻液手段を設けるかにより組成物の流れを選択的に調整することができる。例えば、ポンプ111a、112aのそれぞれに送液手段を有するポンプを設けると、流路111、112からノズル部底面100に組成物を供給することができる。また、ポンプ111a、112aの一方に送液手段を有するポンプを設け、他方に戻液手段を有するポンプを設けることによって、組成物をノズル部底面100の特定の方向に流して移動させることができる。
流路111、112への組成物の供給は、別途外部に供給用の液室を設けて行ってもよいし、予備液室103と流路111、112を連結することによって行ってもよい。
流路111、112からノズル部底面100に供給される組成物が、落下しないようにする必要がある。そのため、ノズル部底面100の表面をあらかじめ組成物をはじかない状態(親液性)にしておくことが好ましい。また、ノズル部底面100に流路111、112から組成物が過剰に供給されて落下しないように、送液手段または戻液手段を有するポンプ等で制御する。
また、ノズル部109においても、組成物と、液室流路102、予備液室103、流体抵抗部104、加圧室105およびノズル孔107とのぬれ性が重要となる。そのため、組成物と材質とのぬれ性を調整するために、それぞれ組成物と接触する部分に炭素膜や樹脂膜等を形成してもよい。
上記の構成によって、組成物を被処理物上に正確に吐出することができる。液滴吐出方式には、液滴を連続して噴射させ連続した線状のパターンを形成する、いわゆるシーケンシャル方式と、液滴をドット状に噴射する、いわゆるオンデマンド方式があるが、どちらの方式を用いてもよい。また、連続した線状のパターンを形成する場合には、ディスペンサ方式を用いても良い。
次に、複数のノズル孔が配置された液滴吐出装置の液滴吐出手段の構成について図2を用いて説明する。なお、図1と同じものを表す場合は同様の符号で示す。
液滴吐出手段120は、図1で示した液滴吐出手段101と同様に、液室流路102に連結された予備液室103と、流体抵抗部104、加圧室105、圧電素子106およびノズル孔107を含むノズル部109が複数連結した構成となっている。
また、図2では、ノズル部109にそれぞれ流路113a〜113eを設ける。ここでは、流路113a〜113eは、それぞれ隣り合うノズル孔107a〜107d間に設けられ、ノズル孔107a〜107dおよびノズル部底面100は流路113a〜113eから供給される組成物により被覆される(図2(A)、(B))。流路113a〜113eから組成物が供給されることによって、ノズル孔107の組成物の乾燥を防ぐことが可能となる。なお、流路113a〜113eからノズル部底面100に供給される組成物は、ノズル孔107から吐出される組成物と同じものを用いるのが好ましいが、他にも組成物の溶媒や組成物の乾燥を防止する溶液等を用いることができる。
流路の形状はどのような形状でもよく、例えば、ノズル孔の配列した方向と垂直方向に複数のノズル孔の間に形成してもよいし(図2(B))、ノズル孔が配列した方向と平行方向に線状で流路115、116を形成してもよい(図2(C))。また、図1(C)で示したように各ノズル孔の周辺に円状(環状、リング状を含む)で形成してもよい。
なお、図2では複数のノズル孔を1直線上に配列しているが、これに限られず、例えばノズル孔を交互にずらして3角形を構成するように配列させるクラスタ状としてもよいし、ノズル孔を上下に並べて配列させてもよい。
また、流路113a〜113eに、図1で示したように送液手段または戻液手段を設けることができる。ここでは、流路113a〜113eのノズル部底面100に連結していない方の端部にそれぞれ送液手段または戻液手段を有するポンプ114a〜114eを設けることによって、流路113a〜113eの組成物の流れを制御することができる。
また、流路113a〜113eへの組成物の供給は、別途供給用の液室を設けて行ってもよいし、予備液室103と連結することによって行ってもよい。
流路113a〜113eからノズル部底面100に供給される組成物は、落下しないようにする必要がある。そのため、ノズル部底面100の表面をあらかじめ組成物をはじかない(親液性)状態にしておくことが好ましい。また、ノズル部底面100に流路113a〜113eから組成物が過剰に供給されて落下しないように、送液手段を有するポンプ等で制御を行う。
上記の構成によって、組成物を被処理物上に吐出することができる。液滴吐出方式には、液滴を連続して噴射させ連続した線状のパターンを形成する、いわゆるシーケンシャル方式と、液滴をドット状に噴射する、いわゆるオンデマンド方式があるが、どちらの方式を用いてもよい。また、連続した線状のパターンを形成する場合には、ディスペンサ方式を用いても良い。
なお、本実施の形態では、組成物の吐出を圧電素子を用いたいわゆるピエゾ方式で行う場合を示したが、これに限られず発熱体を発熱させて気泡を生じさせることによって組成物を押し出すいわゆるサーマルインクジェット方式を用いてもよい。この場合、圧電素子106を発熱体に置き換えた構造とすればよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる液滴吐出装置に関して図を用いて説明する。なお、本実施の形態で示す図面において実施の形態1と同じものを表す場合は同様の符号を用いて示す。
まず、図3(A)を用いて、本実施の形態の液滴吐出装置における液滴吐出手段の具体的な構成について説明する。液滴吐出手段201は、液室流路102に連結された予備液室103と、流体抵抗部104、加圧室105、圧電素子106およびノズル孔107を含むノズル部209と、ノズル孔107に組成物を供給する手段である流路211、212から構成されている。
外部から液滴吐出手段201の内部に供給される組成物は、液室流路102を通過して予備液室103に蓄えられた後、組成物を吐出するためのノズル部209へと移動する。ノズル部209では流体抵抗部104によって、適度の組成物が加圧室105内へ充填される。
加圧室105の側壁には、電圧を印可することにより変形する圧電素子106が設けられている。圧電素子106としては、例えばチタン酸・ジルコン酸・鉛(PZT)等のピエゾ圧電効果を有する圧電素子を用いることができる。目的のノズルに配置された圧電素子106に電圧を印可することにより、加圧室105内の組成物を押しだし、ノズル孔107から外部に組成物を吐出することができる。
また、図3に示す液滴吐出手段201では、ノズル部209に組成物を流すことのできる流路211、212を設ける。流路211、212はノズル孔107に連結しており、ノズル孔107と流路211または212との連結部において組成物のやりとりが行われる。通常、ノズル孔107に存在する組成物は空気と触れているため乾燥しやすいが、外部から新しい組成物を直接ノズル孔107に供給することによって、ノズル孔107の組成物が入れ替わり乾燥を防止することができる。ここでは、ノズル孔107の側壁130a、130bに流路211または流路212を設ける。
また、流路211、212に、組成物を送り出してノズル孔107に供給する手段(送液手段)または組成物を吸引してノズル孔107から組成物を回収する手段(戻液手段)を備えるとよい。組成物の送液手段や戻液手段としては、上記実施の形態1で示したようにポンプ等を利用することができる。図3(A)に示すように、流路211、212のノズル孔107と連結している端部と反対側の端部に送液手段または戻液手段を有するポンプ211a、212bを設けることによって、流路211、212およびノズル孔107の組成物の流れを制御できる。
なお、流路211、212に設けられたポンプ211a、212bは、双方が送液手段または戻液手段を有してもよいし、一方が送液手段を有し他方が戻液手段を有していてもよく、実施者が適宜選択することができる。なお、ポンプ211a、211bに送液手段を設けるか、戻液手段を設けるかの組み合わせによって組成物の流れを選択的に制御することができる。
例えば、一方の流路(例えば流路211)が送液手段を有しノズル孔107に組成物を供給し、他方の流路(例えば流路212)が戻液手段を有しノズル孔107から組成物を吸引することによって、流路211、212およびノズル孔107の組成物が特定の方向に流れるように制御することができる。通常、ノズル孔107の組成物の流れは規則的でない(乱流状態)ため、吐出した際に吐出方向が一定とはならない。しかし、流路211、212を用いてノズル孔107と組成物の授受を行うことにより、ノズル孔107の組成物の流れを規則的(例えば層流状態)にすることによって、組成物を吐出する位置や方向を正確に制御することが可能となる。
また、流路211、212とノズル孔107の連結部分に開閉可能な弁を設けてもよい。この場合について図3(B)を用いて説明する。
通常、組成物の吐出は、加圧室105の側壁に設けられた圧電素子106に電圧を印可することによって変形させ、組成物をノズル孔107から押し出すことによって行う。しかし、ノズル孔107に連結された流路211、212があることにより、吐出する際に組成物を押し出す力が流路211、212の組成物にも働き、ノズル孔107から吐出される組成物量や吐出方向を正確に制御できなくなる恐れがある。そのため、図3(B)に示すように、ノズル孔107と流路211、212が連結する部分に、開閉によって流路211、212とノズル孔107との組成物の授受を調節する開閉弁213、214を設けてもよい。
開閉弁213、214は、ノズル孔107から組成物が吐出される際には閉じており、ノズル孔107から組成物が吐出されない場合(ノズル部209を使用しない場合)には開いて、ノズル孔107に流路211、212から組成物を供給することができる。このように、開閉弁213、214の開閉を制御することによって、ノズル孔に連結する流路を設けた場合であっても、組成物量や吐出方向を正確に制御することができる。なお、開閉弁213、214はノズル孔107と流路211、212の連結部を遮断することができればどのようなものでもよく、一点を固定させて開閉を行う弁やスライドさせて開閉を行う弁を利用することができる。
また、流路211、212への組成物の供給は、別途外部に供給用の液室を設けて行ってもよいし、予備液室103と流路211、212を連結することによって行ってもよい。
また、ノズル部209において、組成物と、液室流路102、予備液室103、流体抵抗部104、加圧室105およびノズル孔107とのぬれ性が重要となる。そのため、組成物と材質とのぬれ性を調整するために、それぞれ組成物と接触する部分に炭素膜や樹脂膜等を形成してもよい。
上記の手段によって、組成物を被処理物上に正確に吐出することができる。液滴吐出方式には、液滴を連続して噴射させ連続した線状のパターンを形成する、いわゆるシーケンシャル方式と、液滴をドット状に噴射する、いわゆるオンデマンド方式があるが、どちらの方式を用いてもよい。また、連続した線状のパターンを形成する場合には、ディスペンサ方式を用いても良い。
次に、図3に示した液滴吐出手段において、複数のノズル孔が配置された液滴吐出手段の構成について図4を用いて説明する。なお、図面において上記で示したものと同じものを表す場合は同様の符号で示す。
図4では、共通液室218が設けられ、ノズル部における複数の加圧室105の各々と連結している。また、複数のノズル孔207a〜207eに連結した流路215が設けられている。流路215の端部にはそれぞれ、組成物を送り出す送液手段216と組成物を吸引する戻液手段217が設けられており、流路215において組成物はノズル孔107aから107eの方向へ流れるように制御されている。なお、これに限られず、上述したように流路215の端部には、両方に送液手段を用いてもよいし、戻液手段を用いてもよい。
また、流路215は、ノズル孔207a〜207eに組成物を供給することができればどのような形状や配置で設けてもよい。例えば、図4(A)、(B)に示すように、隣り合うノズル孔同士(例えば、ノズル孔107aと107b)を連結するように設けて、流路215の一方の端部からノズル孔107a〜107eを通って流路215の他方の端部まで組成物が流れるように設けることができる。
また、他にも図4(C)に示すように、複数のノズル孔が共有するように流路215を形成し、ノズル孔の配列に対して垂直方向から組成物を流す構成としてもよい。この場合、隣り合うノズル孔の間にノズル部の補強のためにしきり板219を設けることが好ましい。また、しきり板219を設けることによって、組成物の流れる方向をそろえることができる。
上記の手段によって、組成物を被処理物上に吐出することができる。液滴吐出方式には、液滴を連続して噴射させ連続した線状のパターンを形成する、いわゆるシーケンシャル方式と、液滴をドット状に噴射する、いわゆるオンデマンド方式があるが、どちらの方式を用いてもよい。また、連続した線状のパターンを形成する場合には、ディスペンサ方式を用いても良い。
なお、本実施の形態では、組成物の吐出を圧電素子を用いたいわゆるピエゾ方式で行う場合を示したが、これに限られず発熱体を発熱させて気泡を生じさせることによって組成物を押し出すいわゆるサーマルインクジェット方式を用いてもよい。この場合、圧電素子106を発熱体に置き換えた構造とすればよい。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上述した実施の形態とは異なる液滴吐出装置の構成に関して図面を用いて説明する。なお、上記実施の形態と同じものを表す場合には同様の符号を用いて示す。
本実施の形態では、液滴吐出手段301において、加圧室305に連結する循環流路321を設けた構成に関して、図5を用いて説明する。
液滴吐出手段301は、液室流路102に連結された予備液室103と、流体抵抗部104、加圧室305、圧電素子306a〜306d、循環流路321およびノズル孔107を含むノズル部309から構成されている。
外部から液滴吐出手段301の内部に供給された組成物は、液室流路102を通過して予備液室103に蓄えられた後、組成物を吐出するためのノズル部309へと移動する。ノズル部309では流体抵抗部104によって、適度の組成物が加圧室305内へ充填される。
加圧室305の側壁には、電圧を印可することにより変形する圧電素子306a、306bが設けられている。さらに、本実施の形態では加圧室305の側壁に連結する循環流路321が設けられており、循環流路321の側壁にも、圧電素子306c、306dが設けられている。
加圧室305および循環流路321に設けられた圧電素子306a〜306dは、それぞれ別個に電圧を印可することによって変形させることが可能となっている。圧電素子としては、例えばチタン酸・ジルコン酸・鉛(PZT)等のピエゾ圧電効果を有する圧電素子を用いることができる。目的のノズルに配置された圧電素子306a〜306dに選択的に電圧を印可することにより、加圧室305内の組成物を押しだし、外部に組成物108を吐出することができる。
本実施の形態では、加圧室305に設けられた循環流路321を用いることにより、加圧室305およびノズル孔107の組成物を流動させて、ノズル孔107の組成物を入れ替えることによって組成物の乾燥を防止することができる。以下に加圧室305およびノズル孔107の組成物の流動に関して説明する。
図5(A)に示すように、加圧室305と循環流路321の連結部分には開閉可能な開閉弁311、312が設けられ、圧電素子306a〜306dと開閉弁311、312によって、組成物が矢印(実線)方向に流動する。図5においては、開閉弁311、312はそれぞれ一方向のみに開閉可能であり、組成物の逆流を防止する機能を有している。ここでは、開閉弁311は紙面において左側にのみ開閉可能であり、開閉弁312は紙面において右側にのみ開閉可能となるように設ける。そして、圧電素子306a〜306dに選択的に電圧を印可して変形させることによって組成物を実線の矢印方向に流動させる。
具体的には、圧電素子306a、306bが縮む際に圧電素子306c、306dを広げることによって、組成物が動いて開閉弁312が開き、ノズル孔107から組成物を吐出させずに加圧室305およびノズル孔107の組成物を流動させることができる。また、それと同時に、開閉弁311が開いて組成物が移動するため、新たな組成物がノズル孔107に移動してノズル孔107の組成物が入れ替わる。その結果、ノズル孔107の組成物の乾燥を防ぐことができる。また、圧電素子306c、306dのみを縮めたり広げたりすることによって、循環流路321と加圧室305およびノズル孔107の組成物の流動が可能な場合は、圧電素子306a、306bを使用しなくてもよい。
また、図5(B)に示すように、循環流路321に外部から組成物を供給することができる流路313を設けてもよい。一般的に、ノズル孔107の組成物を循環させた場合であっても、時間と共に組成物の溶媒の蒸発により組成物の粘性が高くなるという問題がある。そこで、流路313を設けることによって新たな組成物を循環流路321に供給することにより、ノズル孔107の組成物の粘性の上昇や乾燥を防止することが可能となる。
上記の手段によって、ノズル孔の組成物の乾燥を防止して、被処理物上に効率的に組成物を吐出することができる。液滴吐出方式には、液滴を連続して噴射させ連続した線状のパターンを形成する、いわゆるシーケンシャル方式と、液滴をドット状に噴射する、いわゆるオンデマンド方式があるが、どちらの方式を用いてもよい。また、連続した線状のパターンを形成する場合には、ディスペンサ方式を用いても良い。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態1〜3で示した液滴吐出手段を備えた線状液滴吐出装置の一構成例に関して図を用いて説明する。
図6(A)に示す線状液滴吐出装置は、装置内に液滴吐出手段506を有し、これにより組成物を吐出することで、基板502に所望の組成物のパターンを形成するものである。この線状液滴吐出装置においては、基板502として、所望のサイズのガラス基板の他、プラスチック基板に代表される樹脂基板、あるいはシリコンに代表される半導体ウェハ等の基板を用いることができる。
図6(A)において、基板502は搬入口504から筐体501内部へ搬入し、組成物の吐出を終えた基板を搬出口505から搬出する。筐体501内部において、基板502は搬送台503に搭載され、搬送台503は搬入口504と搬出口505とを結ぶレール510a、510b上を移動する。
支持部507は、組成物を吐出する液滴吐出手段506を支持し、搬送台503と平行に移動する。基板502が筐体501内部へ搬入されると、これと同時に支持部507が所定の位置に合うように移動する。液滴吐出手段506の初期位置への移動は、基板搬入時、あるいは基板搬出時に行うことで、効率よく吐出処理を行うことができる。
液滴吐出処理は、搬送台503の移動により基板502が、液滴吐出手段506の待つ所定の位置に到達すると開始する。液滴吐出処理は、支持部507および基板502の相対的な移動と、支持部507に支持される液滴吐出手段506からの液滴吐出の組み合わせによって達成される。基板502や支持部507の移動速度と、液滴吐出手段506からの組成物を吐出する周期を調節することで、基板502上に所望の液滴パターンを描画することができる。特に、液滴吐出処理は高度な精度が要求されるため、液滴吐出時は搬送台の移動を停止させ、制御性の高い支持部507のみを順次走査させることが望ましい。また、液滴吐出手段506は一方向に前後するようにも走査可能である。
原料液は、筐体501外部に設置した液滴供給部509から筐体内部へ供給され、さらに支持部507を介して液滴吐出手段506内部の液室に供給される。この原料液供給は筐体501外部に設置した制御手段508によって制御されるが、筐体内部おける支持部507に内蔵する制御手段によって制御してもよい。
また、搬送台および支持部507の移動は、同様に筐体501外部に設置した制御手段508により制御する。
また、図6に示した液滴吐出装置に、さらに基板や基板上のパターンへの位置あわせのためのセンサや、筐体へのガス導入手段、筐体内部の排気手段、基板を加熱処理する手段、基板へ光照射する手段、加えて温度、圧力等、種々の物性値を測定する手段等を、必要に応じて設置してもよい。またこれら手段も、筐体501の外部に設置した制御手段508によって一括して制御することが可能である。さらに制御手段508をLANケーブル、無線LAN、光ファイバ等で生産管理システム等に接続すれば、工程を外部から一律管理することが可能となり、生産性を向上させることにつながる。
次に、図6(A)で示す線状液滴吐出装置に改良を加えた、図6(B)に示す線状液滴吐出装置について説明する。本装置では支持部507に回転手段を設け、任意の角度θに回転することで、基板502に対し液滴吐出手段506が角度を持たせるように設計したものである。角度θは任意の角度が許されるが、装置全体のサイズを考慮すると基板502が移動する方向にたいし、0°〜45°以内であることが望ましい。この支持部507に回転手段を持たせることにより、液滴吐出手段506に設けられたノズル孔のピッチより狭いピッチで、組成物パターンを描画することが可能となる。
また、図6(C)は、図6(A)で示す線状液滴吐出装置の液滴吐出手段506を二つ配置した構造の線状液滴吐出装置である。本装置においては、材質の異なる組成物を同一の走査で一括して行うことができる。つまり、第1の液滴吐出手段506aで原料液Aの吐出によるパターンの形成を行いながら、僅かな時間差をおいて第2の液滴吐出手段506bによる原料液Bの吐出によるパターンの形成を行うという連続パターンが可能となる。原料液供給部509aと509bは、それぞれの液滴吐出手段で用いる原料液Aおよび原料液Bを備蓄して供給する。この構造を用いることにより、工程が簡略することができ、著しく効率を上げることが可能となる。
また、図7(A)〜(C)に図6における液滴吐出手段の底部を模式的に表す。
図7(A)は、ノズル部底面601にノズル孔602を線状に配置したものである。これに対し図7(B)では、ノズル部底面601のノズル孔604を2列に配置し、それぞれの列を半ピッチずらして3角形を構成するように配列させるクラスタ状に配置したものを示している。また、図7(C)では、ノズル孔のピッチをずらすことなく列を2列に増やした配置とする。
図7(C)の配置では、一段目のノズル孔606からの液滴を吐出した後、時間差をつけてノズル孔607から同様の組成物を同様の箇所に吐出することにより、既に吐出された基板上の組成物が乾燥や固化する前に、さらに同一の液滴を厚く積層して形成することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上述した構成とは異なる液滴吐出装置に関して、図8を用いて説明する。なお、以下に説明する図8の構成において、上記実施の形態と同じものを指す符号は同様の符号を用いて示す。
図8(A)に示すように、本実施の形態では液滴吐出装置において、少なくともノズル孔周辺を吐出する組成物の溶媒の蒸気で満たす構成とする。そのため、液滴吐出手段101を外界と遮断された閉空間402に設け、閉空間402を溶媒の蒸気で満たす。つまり、液滴吐出装置自体を閉空間402を有するチャンバー構造として、その内部に蒸気供給手段401を用いて溶媒の蒸気を供給する。このように、液滴吐出装置自体を吐出する組成物の溶媒の蒸気で満たすことによって、ノズル孔107の組成物は溶媒の蒸気に常に触れている状態となり、組成物の乾燥を防ぐことができる。
また、図8(B)に線状の液滴吐出装置の全体を表した模式図を示す。液滴吐出装置は、液滴吐出手段506を用いて、組成物を吐出することによって基板502に所望の組成物のパターンを形成する。基板502は開閉式の搬入口404から閉空間402内部へ搬入し、組成物の吐出を終えた基板を開閉式の搬出口405から搬出する。基板502の搬入、搬出はすばやく行い、外気が入らないように行う。
なお、閉空間402は蒸気供給手段401を用いることにより、組成物の溶媒の蒸気で満たされる。閉空間402内部において、基板502は搬送台503に搭載され、搬送台503は搬入口504と搬出口505とを結ぶレール510a、510b上を移動する。なお、液滴吐出手段は上述した実施の形態の構成を用いることができる。
以上のような構成とすることにより、液滴吐出装置において、吐出する組成物の乾燥や固化を防止することができる。なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、液滴吐出装置に振動を加えることによってノズル孔の組成物の乾燥を防止する構成に関して、図14を用いて説明する。なお、上記実施の形態と同じものを表す場合には同様の符号を用いて示す。
本実施の形態で示す液滴吐出装置は、液滴吐出手段101全体に振動を加えることができる振動手段801、802を設ける(図14(A))。本実施の形態では、組成物を吐出していないノズル部109の圧電素子106に高周波数のパルス電圧を印加して振動させ、且つ振動手段801、802によって液滴吐出手段101全体を振動させることによって、予備液室103、流体抵抗部104、加圧室105及びノズル孔107の組成物が振動する。その結果、液滴吐出手段101において、組成物の流れが形成され、ノズル孔107の組成物の乾燥を防止することができる。
圧電素子106に高周波数のパルス電圧を印加して組成物を振動させ、組成物の流れを形成する方法は従来にもあったが、圧電素子106による振動だけでは十分に組成物を流動させることはできなかった。これは、圧電素子に強い振動を加えた場合、組成物がノズル孔から飛び出す恐れがあるためある一定の振動しか行えず、圧電素子の周辺の組成物(ここでは加圧室105の組成物)しか流動しないためである。そのため、組成物の流動が十分でなく溶媒の乾燥が進むことによってノズル孔の組成物の粘性が増加した場合に吐出不良が生じる恐れがあった。
一方、本実施の形態では、圧電素子106の振動に加えて振動手段801、802によって液滴吐出手段101全体を振動することにより、組成物を十分に流動させることができる。その結果、ノズル孔107において、常に新しい組成物を供給することができるため、従来の方法に比べて、より確実に乾燥を防止することが可能となる。なお、振動手段801、802によって組成物を流動させることが可能である場合には、圧電素子106を振動させなくてもよい。
また、複数のノズル孔を有する場合も同様に圧電素子106と振動手段803、804を振動させることによって、組成物の流れを形成することができる(図14(B))。この場合、組成物は、ノズル孔207、加圧室105、流体抵抗部104および流体抵抗部104に連結した共通液室218間を流動する。そのため、ノズル孔207の組成物の溶媒が乾燥した場合にも常に組成物は入れ替わるため組成物の吐出不良を防止することができる。また、図14に示した構成に上記実施の形態で示したような流路を設けてもよく、この場合はより組成物の乾燥を防止することが実現できる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した液滴吐出手段を備えた液滴吐出装置の一構成例に関して、図6とは異なる構成に関して図を用いて説明する。
本実施の形態では、配線等のパターンの形成に用いる液滴吐出装置の一態様を図9に示す。液滴吐出手段14030の個々のヘッド14050は制御手段14070に接続され、それがコンピュータ14100で制御することにより予めプログラミングされたパターンを描画することができる。
描画するタイミングは、例えば、基板14000上に形成されたマーカー14110を基準に行えば良い。或いは、基板14000の縁を基準にして基準点を確定させても良い。これをCCDなどの撮像手段14040で検出し、画像処理手段14090にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ14100で認識して制御信号を発生させて制御手段14070に送る。勿論、基板14000上に形成されるべきパターンの情報は記憶媒体14080に格納されたものであり、この情報を基にして制御手段14070に制御信号を送り、液滴吐出手段14030の個々のヘッド14050を個別に制御することができる。
また、被処理物が大きい場合には、ヘッド14050をX−Y軸方向に走査して、吐出を行えばよい。この場合、液滴を吐出するヘッド14050の幅より大きい大型基板に吐出する場合に非常に有効となる。さらに、装置の小型化も図れる。
なお、ここでは、ヘッド14050を複数有する液滴吐出装置を示したが、この形態に限られない。一つのヘッドをX−Y軸方向に走査して吐出してもよい。この場合、さらに装置の小型・軽量化が可能となる。
また、複数のヘッド14050にそれぞれ異なる材料を充填することによって、複数の材料を同時に吐出することができる。さらに複数のヘッド14050のノズルの径をそれぞれ別個に設定しておくことによって、用途により様々な線幅の配線等を同時に形成することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した液滴吐出装置を用いて表示装置を作製する方法に関して図面を用いて説明する。
まず図10(A)に示すように、TFT(薄膜トランジスタ)及び発光素子を形成する基板700を用意する。具体的に基板700は、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレス基板を含む金属基板または半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。基板700の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。
上述した基板700の表面に、液滴吐出法を用いて形成される導電膜または絶縁膜の密着性を高めるための前処理を施す。密着性を高めることができる方法として、例えば触媒作用により導電膜または絶縁膜の密着性を高めることができる金属または金属化合物を基板700の表面に付着させる方法、形成される導電膜または絶縁膜との密着性が高い有機系の絶縁膜、金属や金属化合物を基板700の表面に付着させる方法、基板700の表面に大気圧下または減圧下においてプラズマ処理を施し表面改質を行なう方法などが挙げられる。また、上記導電膜または絶縁膜との密着性が高い金属として、チタン、チタン酸化物の他、3d遷移元素であるSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどが挙げられる。また金属化合物として、上述した金属の酸化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられる。上記有機系の絶縁膜として、例えばポリイミド、シロキサン材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む絶縁膜(以下、シロキサン絶縁膜と呼ぶ)等が挙げられる。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
なお、基板700に付着させる金属または金属化合物が導電性を有する場合、半導体素子の正常な動作が妨げられないように、そのシート抵抗を制御する。具体的には、導電性を有する金属または金属化合物の平均の厚さを、例えば1〜10nmとなるように制御したり、該金属または金属化合物を酸化により部分的に、または全体的に絶縁化したりすれば良い。或いは、密着性を高めたい領域以外は、付着した金属または金属化合物をエッチングにより選択的に除去しても良い。また金属または金属化合物を、予め基板の全面に付着させるのではなく、液滴吐出法、印刷法、ゾル−ゲル法などを用いて特定の領域にのみ選択的に付着させても良い。なお金属または金属化合物は、基板700の表面において完全に連続した膜状である必要はなく、ある程度分散した状態であっても良い。
本実施の形態では、光触媒反応により密着性を高めることができるZnOまたはTiO2などの光触媒を基板700の表面に付着させる。具体的には、ZnOまたはTiO2を溶媒に分散させ、基板700の表面に撒布したり、Znの化合物またはTiの化合物を基板700の表面に付着させた後、酸化させたり、ゾル−ゲル法を用いたりすることで、結果的にZnOまたはTiO2を基板700の表面に付着させることができる。
次に密着性を高めるための前処理が施された基板700の表面上に、上記実施の形態で示した液滴吐出手段を備えた液滴吐出装置を用いて、ゲート電極701〜703および配線704を形成する。具体的に、ゲート電極701〜703および配線704には、Ag、Au、Cu、Pdなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いる。なお、分散剤により凝集を抑え、溶液に分散させることができるならば、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Alなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることも可能である。また液滴吐出法による導電材料の成膜を複数回行なうことで、複数の導電膜が積層されたゲート電極を形成することも可能である。但し、ノズル孔から吐出する組成物は、比抵抗値を考慮して、Au、Ag、Cuのいずれかの材料を溶媒に溶解又は分散させたものを用いることが好適であり、より好適には、低抵抗な銀、銅を用いるとよい。但し、Ag、Cuを用いる場合には、不純物対策のため、ゲート電極701〜703および配線704を形成した後に合わせてバリア膜を設けるとよい。バリア膜としては、窒化珪素膜やニッケルボロン(NiB)を用いることができる。
また、導電性材料の周りに他の導電性材料がコーティングされ、複数の層になっている粒子でも良い。例えば、CuをAgでコートした導電粒子やCuの周りにニッケルボロン(NiB)がコーティングされ、その周囲にAgがコーティングされている3層構造の粒子などを用いても良い。溶媒は、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤等を用いる。組成物の粘度は20cp以下が好適であり、これは、乾燥が起こることを防止したり、ノズル孔から組成物を円滑に吐出できるようにしたりするためである。また、組成物の表面張力は、40mN/m以下が好適である。但し、用いる溶媒や、用途に合わせて、組成物の粘度等は適宜調整するとよい。一例として、ITOや、有機インジウム、有機スズを溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・S、Agを溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・S、Auを溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・Sに設定するとよい。
液滴吐出装置のノズル孔の径は、0.1〜50μm(好適には0.6〜26μm、)に設定し、ノズルから吐出される組成物の吐出量は0.00001pl〜50pl(好適には0.0001〜40pl)に設定する。この吐出量は、ノズル孔の径の大きさに比例して増加する。また、被処理物とノズル孔との距離は、所望の箇所に滴下するために、できる限り近づけておくことが好ましく、好適には0.1〜2mm程度に設定する。なお、ノズル孔の径を変えずとも、圧電素子に印加されるパルス電圧を変えることによって吐出量を制御することもできる。これらの吐出条件は、線幅が約10μm以下となるように設定しておくのが望ましい。
液滴吐出法を用いる場合、有機溶媒または無機溶媒に該導電材料を分散させたものを、ノズルから滴下した後、室温において乾燥または焼成することで、形成することができる。具体的に本実施の形態では、テトラデカン溶液にAgを分散させた溶液を滴下し、200℃〜300℃で1min〜50hr焼成することで溶媒を除去し、ゲート電極701〜703を形成する。有機溶媒を用いる場合、上記焼成を酸素雰囲気下で行なうことで、効率的に溶媒を除去することができ、ゲート電極701〜703の抵抗をより下げることができる。なお図示しないが、この工程でゲート電極701に接続した走査線も、同時に形成することができる。
次に、ゲート電極701〜703および配線704を覆うようにゲート絶縁膜705を形成する(図10(B)参照)。ゲート絶縁膜705は、例えば酸化珪素、窒化珪素または窒化酸化珪素等の絶縁膜を用いることができる。ゲート絶縁膜705は、単層の絶縁膜を用いても良いし、複数の絶縁膜を積層していても良い。本実施の形態では、窒化珪素、酸化珪素、窒化珪素が順に積層された絶縁膜を、ゲート絶縁膜705として用いる。また成膜方法は、プラズマCVD法、スパッタ法などを用いることができる。低い成膜温度でゲートリーク電流を抑えることができる緻密な絶縁膜を形成するには、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませ、形成される絶縁膜中に混入させると良い。また窒化アルミニウムをゲート絶縁膜705として用いることができる。窒化アルミニウムは熱伝導率が比較的高く、TFTで発生した熱を効率的に発散させることができる。
次に図10(B)に示すように、ゲート絶縁膜705上に液滴吐出装置を用いて発光素子が有する第1の電極706を形成する。なお本実施の形態では、第1の電極706が陽極、後に形成される第2の電極736が陰極に相当するが、本発明はこの構成に限定されない。第1の電極706が陰極、第2の電極736が陽極に相当していても良い。
陽極には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などその他の透光性酸化物導電材料を用いることが可能である。ITO及び酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(以下、ITSOとする)や、酸化珪素を含んだ酸化インジウムに、さらに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したものを用いても良い。また陽極として上記透光性酸化物導電材料の他に、例えばTiN、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr、Ag、Al等の1つまたは複数からなる単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を用いることができる。ただし透光性酸化物導電材料以外の材料で陽極側から光を取り出す場合、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で形成する。
なお、第1の電極706は、液滴吐出法の他にもスパッタ法または印刷法を用いて形成することが可能である。液滴吐出法または印刷法を用いる場合、マスクを用いなくても第1の電極706を形成することが可能である。またスパッタ法を用いる場合でも、リソグラフィ法において用いるレジストを、液滴吐出法または印刷法で形成することで、露光用のマスクを別途用意しておく必要がなくなり、よってコストの削減に繋がる。
また、第1の電極706は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に、陽極の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
次に、図10(C)に示すように、第1の半導体膜707を形成する。第1の半導体膜707は非晶質(アモルファス)半導体またはセミアモルファス半導体(SAS)で形成することができる。また多結晶半導体膜を用いていても良い。本実施の形態では、第1の半導体膜707としてセミアモルファス半導体を用いる。セミアモルファス半導体は、非晶質半導体よりも結晶性が高く高い移動度が得られ、また多結晶半導体と異なり結晶化させるための工程を増やさずとも形成することができる。
非晶質半導体は、珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4、Si2H6が挙げられる。この珪化物気体を、水素、水素とヘリウムで希釈して用いても良い。
またSASも珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4であり、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。また水素や、水素にヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素を加えたガスで、この珪化物気体を希釈して用いることで、SASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は2倍〜1000倍の範囲で珪化物気体を希釈することが好ましい。またさらに、珪化物気体中に、CH4、C2H6などの炭化物気体、GeH4、GeF4などのゲルマニウム化気体、F2などを混入させて、エネルギーバンド幅を1.5〜2.4eV、若しくは0.9〜1.1eVに調節しても良い。SASを第1の半導体膜として用いたTFTは、1〜10cm2/Vsecや、それ以上の移動度を得ることができる。
また異なるガスで形成されたSASを複数積層することで、第1の半導体膜を形成しても良い。例えば、上述した各種ガスのうち、弗素原子を含むガスを用いて形成されたSASと、水素原子を含むガスを用いて形成されたSASとを積層して、第1の半導体膜を形成することができる。
グロー放電分解による被膜の反応生成は減圧下または大気圧下で行なうことができる。減圧下で行なう場合、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲で行なえば良い。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良い。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzとする。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃とする。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020atoms/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019atoms/cm3以下、好ましくは1×1019atoms/cm3以下とする。
なお、Si2H6と、GeF4またはF2とを用いて半導体膜を形成する場合、半導体膜のより基板に近い側から結晶が成長するので、基板に近い側ほど半導体膜の結晶性が高い。よって、ゲート電極が第1の半導体膜よりも基板により近いボトムゲート型のTFTの場合、第1の半導体膜のうち基板に近い側の結晶性が高い領域をチャネル形成領域として用いることができるので、移動度をより高めることができ、適している。
また、SiH4と、H2とを用いて半導体膜を形成する場合、半導体膜の表面により近い側ほど大きい結晶粒が得られる。よって、第1の半導体膜がゲート電極よりも基板により近いトップゲート型のTFTの場合、第1の半導体膜のうち基板から遠い側の結晶性が高い領域をチャネル形成領域として用いることができるので、移動度をより高めることができ、適している。
また、SASは、価電子制御を目的とした不純物を意図的に添加しないときに弱いn型の導電型を示す。これは、アモルファス半導体を成膜するときよりも高い電力のグロー放電を行なうため酸素が半導体膜中に混入しやすいためである。そこで、TFTのチャネル形成領域を設ける第1の半導体膜に対しては、p型を付与する不純物を、この成膜と同時に、或いは成膜後に添加することで、しきい値制御をすることが可能となる。p型を付与する不純物としては、代表的には硼素であり、B2H6、BF3などの不純物気体を1ppm〜1000ppmの割合で珪化物気体に混入させると良い。例えば、p型を付与する不純物としてボロンを用いる場合、該ボロンの濃度を1×1014〜6×1016atoms/cm3とすると良い。
次に、第1の半導体膜707のうち、チャネル形成領域となる部分と重なるように、第1の半導体膜707上に保護膜708〜710を形成する。保護膜708〜710は液滴吐出法または印刷法を用いて形成しても良いし、CVD法、スパッタ法などを用いて形成しても良い。保護膜708〜710として、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素などの無機絶縁膜、シロキサン絶縁膜などを用いることができる。またこれらの膜を積層し、保護膜708〜710として用いても良い。本実施の形態では、プラズマCVD法で形成された窒化珪素、液滴吐出法で形成されたシロキサン絶縁膜を積層して、保護膜708〜710として用いる。この場合、窒化珪素のパターニングは、液滴吐出法で形成されたシロキサン絶縁膜をマスクとして用い行なうことができる。
次に図10(D)に示すように、第1の半導体膜707のパターニングを行なう。第1の半導体膜707のパターニングは、リソグラフィ法を用いても良いし、液滴吐出法または印刷法で形成されたレジストをマスクとして用いても良い。後者の場合、露光用のマスクを別途用意しておく必要がなくなり、コストの削減に繋がる。本実施の形態では、液滴吐出法で形成されたレジスト711を用い、パターニングする例を示す。なおレジスト711は、ポリイミド、アクリルなどの有機樹脂を用いることができる。そして、レジスト711を用いたドライエッチングにより、パターニングされた第1の半導体膜712、713が形成される。
次に図11(A)に示すように、ゲート絶縁膜705の一部をエッチングにより選択的に除去し、配線704の一部を露出させる。ゲート絶縁膜705のエッチングには、リソグラフィ法を用いても良いし、液滴吐出法または印刷法で形成されたレジストをマスクとして用いても良い。後者の場合、露光用のマスクを別途用意しておく必要がなくなり、よってコストの削減に繋がる。
次に図11(B)に示すように、パターニング後の第1の半導体膜712、713を覆うように、第2の半導体膜714を形成する。第2の半導体膜714には、一導電型を付与する不純物を添加しておく。pチャネル型のTFTを形成する場合には、p型を付与する不純物として、B2H6、BF3などの不純物気体を珪化物気体に混入させると良い。例えば、p型を付与する不純物としてボロンを用いる場合、該ボロンの濃度を1×1014〜6×1016atoms/cm3とすると良い。また、nチャネル型のTFTを形成する場合には、第2の半導体膜714に、n型を付与する不純物、例えばリンを添加すれば良い。具体的には、珪化物気体にPH3などの不純物気体を加え、第2の半導体膜714を形成すれば良い。一導電型を有する第2の半導体膜714は、第1の半導体膜712、713と同様にセミアモルファス半導体、非晶質半導体で形成することができる。
なお本実施の形態では、第2の半導体膜714を第1の半導体膜712、713と接するように形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。第1の半導体膜712、713と第2の半導体膜714の間に、LDD領域として機能する第3の半導体膜を形成しておいても良い。この場合、第3の半導体膜は、セミアモルファス半導体または非晶質半導体で形成する。
次に図11(C)に示すように、配線715〜719を液滴吐出法を用いて形成し、該配線715〜719をマスクとして用い、第2の半導体膜714をエッチングする。第2の半導体膜714のエッチングは、真空雰囲気下もしくは大気圧雰囲気下におけるドライエッチングで行なうことができる。上記エッチングにより、第2の半導体膜714からソース領域またはドレイン領域として機能する、第2の半導体膜720〜724が形成され、さらに第1の電極706の一部が露出される。第2の半導体膜714をエッチングする際、保護膜708〜710によって、第1の半導体膜712、713がオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
配線715〜719は、ゲート電極701〜703と同様に形成することができる。具体的には、Ag、Au、Cu、Pdなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いる。液滴吐出法を用いる場合、有機系または無機系の溶媒に該導電材料を分散させたものを、ノズルから滴下した後、室温において乾燥または焼成することで、形成することができる。分散剤により凝集を抑え、溶液に分散させることができるならば、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Alなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることも可能である。焼成は酸素雰囲気下で行ない、配線715〜719の抵抗を下げるようにしても良い。また液滴吐出法または各種印刷法による導電材料の成膜を複数回行なうことで、複数の導電膜が積層された配線715〜719を形成することも可能である。
上記工程によって、TFT730、731、732が形成される。
次に図11(D)に示すように、TFT730と、TFT731と、TFT732と、第1の電極706の端部とを覆うように、隔壁733を形成する。隔壁733は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン絶縁膜を用いて形成することができる。有機樹脂膜ならば、例えばアクリル、ポリイミド、ポリアミドなど、無機絶縁膜ならば酸化珪素、窒化酸化珪素などを用いることができる。特に感光性の有機樹脂膜を隔壁733に用い、第1の電極706上に開口部734を形成し、その開口部734の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することで、第1の電極706と後に形成される第2の電極736とが接続してしまうのを防ぐことができる。このとき、マスクを液滴吐出法または印刷法で形成することができる。また隔壁733自体を、液滴吐出法で形成することもできる。なお隔壁733は開口部734を有している。
次に電界発光層735を形成する前に、隔壁733及び第1の電極706に吸着した水分や酸素等を除去するために、大気雰囲気下で加熱処理または真空雰囲気下で加熱処理(真空ベーク)を行なっても良い。具体的には、基板の温度を200℃〜450℃、好ましくは250〜300℃で、0.5〜20時間程度、真空雰囲気下で加熱処理を行なう。望ましくは3×10-7Torr以下とし、可能であるならば3×10-8Torr以下とするのが最も望ましい。そして、真空雰囲気下で加熱処理を行なった後に電界発光層を成膜する場合、電界発光層を成膜する直前まで当該基板を真空雰囲気下に置いておくことで、信頼性をより高めることができる。また真空ベークの前または後に、第1の電極706に紫外線を照射してもよい。
なお、本実施の形態では、後に形成されるパッシベーション膜737を窒化珪素で形成しており、該パッシベーション膜737と、第2の電極736とが接している。窒化珪素または窒化酸化珪素を含む絶縁膜上に接するように、酸化インジウムスズ(ITO)等の透光性酸化物導電材料と酸化珪素を含む導電膜を用い、発光素子の第1の電極または第2の電極を形成することで、上述したどの材料の組み合わせよりも、発光素子の輝度を高めることができる。また、第1の電極706にITSOを用いた場合、含まれる酸化珪素によって水分が付着しやすいので、上述した真空ベークは特に有効である。
そして、隔壁733の開口部734において第1の電極706と接するように、電界発光層735を形成する。電界発光層735は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。複数の層で構成されている場合、陽極に相当する第1の電極706上に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層する。なお第1の電極706が陰極に相当する場合は、電界発光層735を、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層に積層して形成する。
なおモノクロの画像を表示する場合、もしくは白色の発光素子とカラーフィルターを用いてカラーの画像を表示する場合、電界発光層735の構造は全ての画素において同じである。三原色の光をそれぞれ発する3つの発光素子を用いてカラーの画像を表示する場合、電界発光層735は、対応する色ごとに材料、積層する層または膜厚を変えて塗り分けても良い。電界発光層を塗り分ける場合、液滴吐出法は材料の無駄がなく、工程も簡素化できるので、非常に有効である。なおカラーは、混色を用いたフルカラーであっても良いし、単一の色相を有する複数の画素を特定のエリアごとに配したエリアカラーであっても良い。
なおカラーフィルターは、特定の波長領域の光を透過させることができる着色層と、場合によっては該着色層に加え、可視光を遮蔽することができる遮蔽膜とを有する場合がある。そしてカラーフィルターは、発光素子を封止するためのカバー材上に形成する場合もあれば、素子基板に形成する場合もありうる。いずれの場合においても、着色層または遮蔽膜は、印刷法または液滴吐出法を用いて形成することが可能である。
また電界発光層735は、高分子系有機化合物、中分子系有機化合物、低分子系有機化合物、無機化合物のいずれを用いていても、液滴吐出法で形成することが可能である。また中分子系有機化合物、低分子系有機化合物、無機化合物は蒸着法で形成しても良い。
そして電界発光層735を覆うように、第2の電極736を形成する。本実施の形態では、第2の電極736は陰極に相当する。第2の電極736の作製方法は、蒸着法、スパッタ法、液滴吐出法などを材料に合わせて使い分けることが好ましい。
陰極は、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、これらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li、Mg:Inなど)、およびこれらの化合物(CaF2、CaN)の他、YbやEr等の希土類金属を用いることができる。また電子注入層を設ける場合、Alなどの他の導電層を用いることも可能である。また陰極側から光を取り出す場合は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などその他の透光性酸化物導電材料を用いることが可能である。酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(以下、ITSOとする)や、酸化珪素を含んだ酸化インジウムに、さらに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したものを用いても良い。透光性酸化物導電材料を用いる場合、後に形成される電界発光層735に電子注入層を設けるのが望ましい。また透光性酸化物導電材料を用いずとも、陰極を光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で形成することで、陰極側から光を取り出すことができる。この場合、該陰極の上または下に接するように透光性酸化物導電材料を用いて透光性を有する導電層を形成し、陰極のシート抵抗を抑えるようにしても良い。
隔壁733の開口部734において、第1の電極706と電界発光層735と第2の電極736が重なり合うことで、発光素子738が形成されている。
なお、発光素子738からの光の取り出しは、第1の電極706側からであっても良いし、第2の電極736側からであっても良いし、その両方からであっても良い。上記3つの構成にうち、目的とする構成に合わせて、陽極、陰極ぞれぞれの材料及び膜厚を選択するようにする。本実施の形態のように第2の電極736側から光の取り出す場合、第1の電極706側から光の取り出す場合に比べて、より低い消費電力でより高い輝度を得ることができる。
なお発光素子738を覆うようにパッシベーション膜737を形成しても良い。パッシベーション膜737は、水分や酸素などの発光素子の劣化を促進させる原因となる物質を、他の絶縁膜と比較して透過させにくい膜を用いる。代表的には、例えばDLC膜、窒化炭素膜、RFスパッタ法やCVD法などで形成された窒化珪素膜等を用いるのが望ましい。また、例えば窒化炭素膜と窒化珪素を積層した膜、ポリスチレンを積層した膜など、をパッシベーション膜737として用いても良い。また上述した水分や酸素などの物質を透過させにくい膜と、該膜に比べて水分や酸素などの物質を透過させやすいが内部応力の低い膜とを積層させて、パッシベーション膜737として用いることも可能である。本実施の形態では窒化珪素を用いる。パッシベーション膜737として窒化珪素を用いる場合、低い成膜温度で緻密なパッシベーション膜737を形成するには、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませ、パッシベーション膜737中に混入させると良い。
なお実際には、図11(D)に示す状態まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(ラミネートフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
なお本実施の形態では、画素部を形成する工程について説明したが、セミアモルファス半導体を第1の半導体膜として用いる場合、走査線駆動回路を画素部と同じ基板上に形成することが可能である。またアモルファス半導体を用いたTFTで画素部を形成し、該画素部が形成された基板に別途形成された駆動回路を貼り付けても良い。
また図10、図11に示す表示装置では、TFTの第1の半導体膜と第2の半導体膜の間に保護膜を形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されず、図10、図11の場合において、保護膜は必ずしも形成しなくても良い。図12(A)に、保護膜を形成していない場合の、画素の断面図を示す。図12(A)に示すTFT7010は、基板7000上に形成されたゲート電極7020と、該ゲート電極7020を覆うように形成されたゲート絶縁膜7030と、該ゲート電極7020と重なるようにゲート絶縁膜7030上に形成された第1の半導体膜7040と、第1の半導体膜7040と接する第2の半導体膜7050,7060とを有している。エッチングにより第2の半導体膜7050、7060を形成する際、SF6、NF3、CF4などのフッ化物気体を用いてエッチングガスとして用いる。そしてこのエッチングでは、第1の半導体膜7040とのエッチングの選択比がとれないので、処理時間を適宜調整して行なうこととなる。このエッチングにより、第1の半導体膜7040が一部露出する。
図12(A)のように保護膜を形成せず、第1の半導体膜7040と第2の半導体膜7050、7060を、同じマスクを用いてパターニングする場合、ゲート絶縁膜7030と、第1の半導体膜7040と、第2の半導体膜7050、7060とを、大気に触れさせることなく連続して形成することが可能である。すなわち、大気成分や大気中に浮遊する汚染物質に汚染されることなく各積層界面を形成することができるので、TFT特性のばらつきを低減することができる。
また図10、図11、図12(A)では、ゲート電極が第1の半導体膜よりも基板側に形成されているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。図12(B)に、第1の半導体膜がゲート電極よりも基板側に形成されている場合の、画素の断面図を示す。ただし図12(B)では、TFT7080を示す。図12(B)において、基板7070上に配線7090、7100が形成されており、また配線7090、7100上に接するように、第2の半導体膜7110,7120が形成されており、第2の半導体膜7110、7120上に接するように第1の半導体膜7130が形成されている。そして第1の半導体膜7130上にはゲート絶縁膜7140が形成されており、第1の半導体膜7130と重なるように該ゲート絶縁膜7140上にゲート電極7150が形成されている。
なお、上記図10〜図12に示したTFTは、いずれもソース領域またはドレイン領域として機能する第2の半導体膜を用いているが、第2の半導体膜は必ずしも形成する必要はない。この場合、配線が直接第1の半導体膜と接続され、該配線がソース領域またはドレイン領域として機能する。特に図10(B)に示したTFTは、第2の半導体膜を用いない場合、第2の半導体膜7110、7120を形成するためのパターニングに用いるマスクが不要になるので、大幅に工程数を削減することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態9)
本発明の液滴吐出装置を用いて形成された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話機、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図13に示す。
図13(A)はテレビ受像機であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2003やその他回路などの加工に用いることによって、テレビ受像機を作製することができる。
図13(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2102やその他回路などの加工に用いることによって、デジタルカメラを作製することができる。
図13(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2203やその他回路などの加工に用いることによって、コンピュータを作製することができる。
図13(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2302やその他回路などの加工に用いることによって、モバイルコンピュータを作製することができる。
図13(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(DVD再生装置など)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部A2403や表示部B2404やその他回路などの加工に用いることによって、画像再生装置を作製することができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置にはゲーム機器なども含まれる。
図13(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2502やその他回路などの加工に用いることによって、ゴーグル型ディスプレイを作製することができる。
図13(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2602やその他回路などの加工に用いることによって、ビデオカメラを作製することができる。
図13(H)は携帯電話機であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。上記実施の形態に示した液滴吐出装置を表示部2703やその他回路などの加工に用いることによって、携帯電話機を作製することができる。
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。