以下、本発明に係るダイナミックダンパの実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1、図2は、本発明に係るダイナミックダンパの第1の実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、トルクロッド1は、長手方向両端に設けた弾性体2、3を介してパワーユニット4と車体5とを弾性的に連結している。パワーユニット4は自動車等の車両に搭載された内燃機関であるエンジンとトランスミッションを一体化したものであり、例えば、FF(フロントドライブ・フロントアクスル)車に横置きされている。
トルクロッド1は、長手方向両端の円筒部6、7が軸部10を介して連結されているとともに、円筒部6、7の内周部が弾性体2、3を介して内筒部8、9の外周部に連結されており、この内筒部8、9が図示しないボルトによってパワーユニット4および車体5に取付けられている。
また、トルクロッド1は、制振対象部材を構成しており、トルクロッド1の軸部10にはダイナミックダンパ11が取付けられている。このダイナミックダンパ11は、それぞれ直交するX方向、Y方向およびZ方向の固有振動数がパワーユニット4を介してトルクロッド1に入力される共振周波数にチューニングされており、X方向、Y方向およびZ方向における特定の周波数域の振動に対して制振効果を発揮し、パワーユニット4から車体5に入力される振動を吸収するようになっている。
図2に示すように、ダイナミックダンパ11は、トルクロッド1に取付けられる内筒部材12と、内筒部材12の周囲に内筒部材12と同軸状に設けられた筒状の質量体であるマス部材13と、内筒部材12およびマス部材13の間に設けられ、マス部材13と内筒部材12とを弾性的に連結する弾性体としてのゴム部材14とを備えており、ゴム部材14は、内筒部材12の外周部とマス部材13の内周部に加硫接着されている。
また、内筒部材12にはボルト穴12aが設けられており、このボルト穴12aを通してトルクロッド1にボルトを螺合することにより、マス部材13がゴム部材14を介してトルクロッド1に弾性的に連結されている。なお、図1では、ボルトを図示省略してボルト穴12aを図示している。
一方、内筒部材12およびマス部材13の間の隙間A1、A2が第1の方向であるX方向(車両の上下方向)と第1の方向と直交する第2の方向であるY方向(車両の前後方向)とで異なる大きさとなるように、内筒部材12がX方向とY方向とで異形状に形成されている。
すなわち、内筒部材12は、隙間A1が隙間A2よりも長くなるように横長に形成されており、マス部材13は、円状に形成されている。このため、ゴム部材14は、内筒部材12を挟んでX方向の幅がY方向の幅に対して長くなっている。
また、マス部材13の内周部には突起部15が形成されており、この突起部15は、マス部材13の周方向に延在している。また、内筒部材12の外周部には溝部16が形成されており、この溝部16は、突起部15に対向して内筒部材12の周方向に延在している。
また、突起部15および溝部16は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面15a、16aをそれぞれ有している。
本実施の形態では、パワーユニット4を介してトルクロッド1がX方向、Y方向およびZ方向に振動したときに、ゴム部材14を介してマス部材13が振動することにより、X方向、Y方向およびZ方向の共振周波数による振動を吸収するようになっている。
すなわち、本実施の形態では、内筒部材12およびマス部材13の間の隙間がX方向とY方向とで異なる大きさとなるように、内筒部材12をX方向とY方向で異形状に形成したので、内筒部材12およびマス部材13の間の隙間A1、A2の大きさを調整することにより、内筒部材12およびマス部材13の間に介装されるゴム部材14の形状をX方向とY方向とで異なる形状にすることができる。このため、X方向とY方向とでゴム部材14の剛性を異ならせることができる。
また、マス部材13の内周部に周方向に延在する突起部15を形成し、突起部15に、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面15aを設けたので、突起部15の傾斜面15aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部15へのゴム部材14の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材14の剛性を小さくするように調整し、突起部15の傾斜面15aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部15へのゴム部材14の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材14の剛性を大きくするように調整することができる。
このため、ゴム部材14の剛性、すなわち、固有振動数を互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向で異ならせることができ、並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができる。
また、本実施の形態では、単一のダイナミックダンパ11を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができるので、ダイナミックダンパ11の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
また、本実施の形態では、マス部材13の内周部に突起部15を設けるとともに、内筒部材12の外周部に溝部16を設け、ゴム部材14を突起部15および溝部16によって挟み込むようにしているので、ゴム部材14がZ方向に抜け出てしまうのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材13の内周部に突起部15を設けているが、ゴム部材14の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材14の剛性を調整してもよい。
(第2の実施の形態)
図3は、本発明に係るダイナミックダンパの第2の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
図3において、ダイナミックダンパ21は、トルクロッド1に取付けられる内筒部材22と、内筒部材22の周囲に内筒部材22と同軸状に設けられた筒状の質量体であるマス部材23と、内筒部材22およびマス部材23の間に設けられ、マス部材23と内筒部材22とを弾性的に連結する弾性体としてのゴム部材24とを備えており、ゴム部材24は、内筒部材22の外周部とマス部材23の内周部に加硫接着されている。
また、内筒部材22にはボルト穴22aが設けられており、このボルト穴22aを通してトルクロッド1にボルトを螺合することにより、マス部材23がゴム部材24を介してトルクロッド1に弾性的に連結されている。
マス部材23および内筒部材22の間に設けられる弾性体としてのゴム部材24は第1の方向であるY方向(車両の前後方向)と直交する第2の方向であるX方向(車両の上下方向)に内筒部材22を挟んで対向する穴24aが形成されている。また、マス部材23および内筒部材22は、いずれも円状に形成されている。
また、マス部材23の内周部には突起部25が形成されており、この突起部25は、マス部材23の周方向に延在している。また、内筒部材22の外周部には溝部26が形成されており、この溝部26は、突起部25に対向して内筒部材22の周方向に延在している。
また、突起部25および溝部26は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面25a、26aをそれぞれ有している。
本実施の形態では、ゴム部材24が、X方向において内筒部材22を挟んで対向する穴24aを有するので、穴24aの大きさを調整することにより、内筒部材22およびマス部材23の間に介装されるゴム部材24の剛性をX方向とY方向とで異ならせることができる。
また、マス部材23の内周部に周方向に延在する突起部25を形成し、突起部25、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面25aを設けたので、突起部25の傾斜面25aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部25へのゴム部材24の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材24の剛性を小さくするように調整し、突起部25の傾斜面25aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部25へのゴム部材24の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材24の剛性を大きくするように調整することができる。
このため、ゴム部材24の剛性、すなわち、固有振動数を互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向で異ならせることができ、並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができる。
また、本実施の形態では、単一のダイナミックダンパ21を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができるので、ダイナミックダンパ21の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材23の内周部に突起部25を設けているが、ゴム部材24の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材24の剛性を調整してもよい。
また、ゴム部材24のX方向において内筒部材22を挟んで対向する穴24aを形成しているが、ゴム部材24のY方向において内筒部材22を挟んで対向する穴を形成してもよい。
(第3の実施の形態)
図4は、本発明に係るダイナミックダンパの第3の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
一方、内筒部材32およびマス部材33の間の隙間B1、B2が第1の方向であるX方向(車両の上下方向)と第1の方向と直交する第2の方向であるY方向(車両の前後方向)とで異なる大きさとなるように、マス部材33がX方向とY方向とで異形状に形成されている。
すなわち、マス部材33は、隙間B1が隙間B2よりも長くなるように縦長に形成されており、内筒部材32は、円状に形成されている。このため、ゴム部材34は、内筒部材32を挟んでX方向の幅がY方向の幅に対して長くなっている。
また、マス部材33の内周部には突起部35が形成されており、この突起部35は、マス部材33の周方向に延在している。また、内筒部材32の外周部には溝部36が形成されており、この溝部36は、突起部35に対向して内筒部材32の周方向に延在している。
また、突起部35および溝部36は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面35a、36aをそれぞれ有している。
本実施の形態では、内筒部材32およびマス部材33の間の隙間がX方向とY方向とで異なる大きさとなるように、マス部材33をX方向とY方向で異形状に形成したので、内筒部材32およびマス部材33の間の隙間B1、B2の大きさを調整することにより、内筒部材32およびマス部材33の間に介装されるゴム部材34の形状をX方向とY方向とで異なる形状にすることができる。このため、X方向とY方向とでゴム部材34の剛性を異ならせることができる。
また、マス部材33の内周部に周方向に延在する突起部35を形成し、突起部35に、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面35aを設けたので、突起部35の傾斜面35aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部35へのゴム部材34の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材34の剛性を小さくするように調整し、突起部35の傾斜面35aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部35へのゴム部材34の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材34の剛性を大きくするように調整することができる。
このため、ゴム部材34の剛性、すなわち、固有振動数を互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向で異ならせることができ、並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができる。
また、本実施の形態では、単一のダイナミックダンパ31を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができるので、ダイナミックダンパ31の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材33の内周部に突起部35を設けているが、ゴム部材34の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材34の剛性を調整してもよい。
(第4の実施の形態)
図5、図6は、本発明に係るダイナミックダンパの第4の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
図5、図6において、ダイナミックダンパ41は、トルクロッド1に取付けられる内筒部材42と、内筒部材42の周囲に内筒部材42と同軸状に設けられた筒状の質量体であるマス部材43と、内筒部材42およびマス部材43の間に設けられ、マス部材43と内筒部材42とを弾性的に連結する弾性体としてのゴム部材44とを備えており、ゴム部材44は、内筒部材42の外周部とマス部材43の内周部に加硫接着されている。
また、内筒部材42にはボルト穴42aが設けられており、このボルト穴42aを通してトルクロッド1にボルトを螺合することにより、マス部材43がゴム部材44を介してトルクロッド1に弾性的に連結されている。
一方、内筒部材42およびマス部材43の間の隙間C1、C2が第1の方向であるX方向(車両の上下方向)と第1の方向と直交する第2の方向であるY方向(車両の前後方向)とで異なる大きさとなるように、内筒部材42がX方向とY方向とで異形状に形成されている。
すなわち、内筒部材42は、隙間C1が隙間C2よりも長くなるように横長に形成されている。このため、ゴム部材44は、内筒部材42を挟んでX方向の幅がY方向の幅に対して長くなっている。
また、マス部材43の内周部には突起部45が形成されており、この突起部45は、マス部材43の周方向に延在している。また、内筒部材42の外周部には溝部46が形成されており、この溝部46は、突起部45に対向して内筒部材42の周方向に延在している。
また、突起部45および溝部46は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面45a、46aをそれぞれ有している。また、マス部材43の肉厚は、X方向およびY方向において異なっており、マス部材43のX方向の肉厚C3がY方向の肉厚C4に対して小さくなっている。
また、ゴム部材44の外周部には係合部としての突起部47が設けられており、この突起部47は、ゴム部材44の周方向に等間隔で設けられている。また、マス部材43の内周部には溝部48が設けられており、この溝部48には突起部47が係合するようになっている。
突起部47は、Z方向を回転中心とした軸周りに対して溝部48に係合する傾斜面47aを有しており、溝部48は、傾斜面47aと同じ傾斜角度の傾斜面48aを有している。なお、突起部45は、マス部材43のZ方向の中央部に設けられているため、溝部48は突起部45を除いたマス部材43の内周部に設けられている。
本実施の形態では、パワーユニット4を介してトルクロッド1がX方向、Y方向、Z方向、X方向を回転中心とした軸周り、Y方向を回転中心とした軸周りおよびZ方向を回転中心とした軸周りに振動したときに、ゴム部材44を介してマス部材43が振動することにより、X方向、Y方向、Z方向、X方向を回転中心とした軸周り、Y方向を回転中心とした軸周りおよびZ方向を回転中心とした軸周りの共振周波数による振動を吸収するようになっている。
すなわち、本実施の形態では、内筒部材42およびマス部材43の間の隙間がX方向とY方向とで異なる大きさとなるように、内筒部材42をX方向とY方向で異形状に形成したので、内筒部材42およびマス部材43の間の隙間C1、C2の大きさを調整することにより、内筒部材42およびマス部材43の間に介装されるゴム部材44の形状をX方向とY方向とで異なる形状にすることができる。このため、X方向とY方向とでゴム部材44の剛性、すなわち、固有振動数を異ならせることができる。
また、マス部材43の内周部に周方向に延在する突起部45を形成し、突起部45に、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面45aを設けたので、突起部45の傾斜面45aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部45へのゴム部材44の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材44の剛性を小さくするように調整し、突起部45の傾斜面45aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部45へのゴム部材44の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材44の剛性を大きくするように調整することができ、ゴム部材44のZ方向の固有振動数を調整することができる。
また、X方向およびY方向においてマス部材43の肉厚を異ならせるようにしたので、マス部材43がX方向およびY方向を回転中心とした軸周りに回転したときの慣性モーメントを調整することができ、X方向およびY方向を回転中心として軸周りの固有振動数を異ならせることができる。
また、ゴム部材44の外周部に突起部47を設け、突起部47がZ方向を回転中心とした軸周りに対してマス部材43の内周部に係合する傾斜面47aを有するので、突起部47の傾斜面47aの傾斜角度を小さくした場合に、ゴム部材44がマス部材43に当接するときの当接面積を小さくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材44の剛性を小さくするように調整し、突起部47の傾斜面47aの傾斜角度を大きくした場合に、ゴム部材44がマス部材43に当接するときの当接面積を大きくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材44の剛性を大きくするように調整することができる。このため、Z方向を回転中心とした軸周りの固有振動数を調整することができる。
この結果、単一のダイナミックダンパ41を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができることに加えて、回転3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができ、ダイナミックダンパ41の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材43の内周部に突起部45を設けているが、ゴム部材44の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材44の剛性を調整してもよい。
(第5の実施の形態)
図7、図8は、本発明に係るダイナミックダンパの第5の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
図7、図8において、ダイナミックダンパ51は、トルクロッド1に取付けられる内筒部材52と、内筒部材52の周囲に内筒部材52と同軸状に設けられた筒状の質量体であるマス部材53と、内筒部材52およびマス部材53の間に設けられ、マス部材53と内筒部材52とを弾性的に連結する弾性体としてのゴム部材54とを備えており、ゴム部材54は、内筒部材52の外周部とマス部材53の内周部に加硫接着されている。
また、内筒部材52にはボルト穴52aが設けられており、このボルト穴52aを通してトルクロッド1にボルトを螺合することにより、マス部材53がゴム部材54を介してトルクロッド1に弾性的に連結されている。
マス部材53および内筒部材52の間に設けられる弾性体としてのゴム部材54は第1の方向であるY方向(車両の前後方向)と直交する第2の方向であるX方向(車両の上下方向)に内筒部材52を挟んで対向する穴54aが形成されている。また、内筒部材52は、円状に形成されている。
また、マス部材53の内周部には突起部55が形成されており、この突起部55は、マス部材53の周方向に延在している。また、内筒部材52の外周部には溝部56が形成されており、この溝部56は、突起部55に対向して内筒部材52の周方向に延在している。
また、突起部55および溝部56は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面55a、56aをそれぞれ有している。また、マス部材53の肉厚は、X方向およびY方向において異なっており、マス部材53のX方向の肉厚C3がY方向の肉厚C4に対して小さくなっている。
また、ゴム部材54の外周部には係合部としての突起部57が設けられており、この突起部57は、ゴム部材54の周方向に等間隔で設けられている。また、マス部材53の内周部には溝部58が設けられており、この溝部58には突起部57が係合するようになっている。
突起部57は、Z方向を回転中心とした軸周りに対して溝部58に係合する傾斜面57aを有しており、溝部58は、傾斜面57aと同じ傾斜角度の傾斜面58aを有している。なお、突起部55は、マス部材53のZ方向の中央部に設けられているため、溝部58は突起部55を除いたマス部材53の内周部に設けられている。
本実施の形態では、ゴム部材54が、X方向において内筒部材52を挟んで対向する穴54aを有するので、穴54aの大きさを調整することにより、内筒部材52およびマス部材53の間に介装されるゴム部材54の剛性、すなわち、固有振動数をX方向とY方向とで異ならせることができる。
また、マス部材53の内周部に周方向に延在する突起部55を形成し、突起部55に、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面55aを設けたので、突起部55の傾斜面55aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部55へのゴム部材54の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材54の剛性を小さくするように調整し、突起部55の傾斜面55aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部55へのゴム部材54の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材54の剛性を大きくするように調整することができ、ゴム部材54のZ方向の固有振動数を調整することができる。
また、X方向およびY方向においてマス部材53の肉厚を異ならせるようにしたので、マス部材43がX方向およびY方向を回転中心とした軸周りに回転したときの慣性モーメントを調整することができ、X方向およびY方向を回転中心とした軸周りの固有振動数を異ならせることができる。
また、ゴム部材54の外周部に突起部57を設け、突起部57がZ方向を回転中心とした軸周りに対してマス部材53の内周部に係合する傾斜面57aを有するので、突起部57の傾斜面57aの傾斜角度を小さくした場合に、ゴム部材54がマス部材53に当接するときの当接面積を小さくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材54の剛性を小さくするように調整し、突起部57の傾斜面57aの傾斜角度を大きくした場合に、ゴム部材54がマス部材53に当接するときの当接面積を大きくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材54の剛性を大きくするように調整することができる。このため、Z方向を回転中心とした軸周りの固有振動数を調整することができる。
この結果、単一のダイナミックダンパ51を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができることに加えて、回転3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができ、ダイナミックダンパ51の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材53の内周部に突起部55を設けているが、ゴム部材54の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材54の剛性を調整してもよい。
(第6の実施の形態)
図9、図10は、本発明に係るダイナミックダンパの第6の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
図9、図10は、本発明に係るダイナミックダンパの第4の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、トルクロッド1に取付けられるダイナミックダンパの構成が異なるのみであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
図9、図10において、ダイナミックダンパ61は、トルクロッド1に取付けられる内筒部材62と、内筒部材62の周囲に内筒部材62と同軸状に設けられた筒状の質量体であるマス部材63と、内筒部材62およびマス部材63の間に設けられ、マス部材63と内筒部材62とを弾性的に連結する弾性体としてのゴム部材64とを備えており、ゴム部材64は、内筒部材62の外周部とマス部材63の内周部に加硫接着されている。
また、内筒部材62にはボルト穴62aが設けられており、このボルト穴62aを通してトルクロッド1にボルトを螺合することにより、マス部材63がゴム部材64を介してトルクロッド1に弾性的に連結されている。
一方、内筒部材62およびマス部材63の間の隙間D1、D2が第1の方向であるX方向(車両の上下方向)と第1の方向と直交する第2の方向であるY方向(車両の前後方向)とで異なる大きさとなるように、マス部材63がX方向とY方向とで異形状に形成されている。
すなわち、マス部材63は、隙間D1が隙間D2よりも短くなるように横長に形成されており、内筒部材62は、円状に形成されている。このため、ゴム部材64は、内筒部材62を挟んでX方向の幅がY方向の幅に対して短くなっている。
また、マス部材63の内周部には突起部65が形成されており、この突起部65は、マス部材63の周方向に延在している。また、内筒部材62の外周部には溝部66が形成されており、この溝部66は、突起部65に対向して内筒部材62の周方向に延在している。
また、突起部65および溝部66は、X方向およびY方向と直交する第3の方向であるZ方向(車両の幅方向)に対して前後方向(Z方向)に傾斜する傾斜面65a、66aをそれぞれ有している。また、マス部材63の肉厚は、X方向およびY方向において異なっており、マス部材63のX方向の肉厚D3がY方向の肉厚D4に対して小さくなっている。
また、ゴム部材64の外周部には係合部としての突起部67が設けられており、この突起部67は、ゴム部材64の周方向に等間隔で設けられている。また、マス部材63の内周部には溝部68が設けられており、この溝部68には突起部67が係合するようになっている。
突起部67は、Z方向を回転中心とした軸周りに対して溝部68に係合する傾斜面67aを有しており、溝部68は、傾斜面67aと同じ傾斜角度の傾斜面68aを有している。なお、突起部65は、マス部材63のZ方向の中央部に設けられているため、溝部68は突起部65を除いたマス部材63の内周部に設けられている。
本実施の形態では、内筒部材62およびマス部材63の間の隙間がX方向とY方向とで異なる大きさとなるように、内筒部材62をX方向とY方向で異形状に形成したので、内筒部材62およびマス部材63の間の隙間D1、D2の大きさを調整することにより、内筒部材62およびマス部材63の間に介装されるゴム部材64の形状をX方向とY方向とで異なる形状にすることができる。このため、X方向とY方向とでゴム部材64の剛性、すなわち、固有振動数を異ならせることができる。
また、マス部材63の内周部に周方向に延在する突起部65を形成し、突起部65に、Z方向に対して前後方向に傾斜する傾斜面65aを設けたので、突起部65の傾斜面65aの傾斜角度を小さくした場合に、突起部65へのゴム部材64の当接面積を少なくしてZ方向のゴム部材64の剛性を小さくするように調整し、突起部65の傾斜面65aの傾斜角度を大きくした場合に、突起部65へのゴム部材64の当接面積を大きくしてZ方向のゴム部材64の剛性を大きくするように調整することができ、ゴム部材64のZ方向の固有振動数を調整することができる。
また、X方向およびY方向においてマス部材63の肉厚を異ならせるようにしたので、マス部材63がX方向およびY方向を回転中心とした軸周りに回転したときの慣性モーメントを調整することができ、X方向およびY方向を回転中心とした軸周りの固有振動数を異ならせることができる。
また、ゴム部材64の外周部に突起部67を設け、突起部67がZ方向を回転中心とした軸周りに対してマス部材63の内周部に係合する傾斜面67aを有するので、突起部67の傾斜面67aの傾斜角度を小さくした場合に、ゴム部材64がマス部材63に当接するときの当接面積を小さくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材64の剛性を小さくするように調整し、突起部67の傾斜面67aの傾斜角度を大きくした場合に、ゴム部材64がマス部材63に当接するときの当接面積を大きくしてZ方向を回転中心とした軸周りのゴム部材64の剛性を大きくするように調整することができる。このため、Z方向を回転中心とした軸周りの固有振動数を調整することができる。
この結果、単一のダイナミックダンパ61を用いて並進3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができることに加えて、回転3方向の異なる共振周波数による振動の増幅を抑制することができ、ダイナミックダンパ61の設置スペースやコストが増大するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、マス部材63の内周部に突起部65を設けているが、ゴム部材64の外周部に突起部を設け、この突起部の傾斜面の傾斜角度を調整することにより、ゴム部材64の剛性を調整してもよい。
なお、本実施の形態では、ダイナミックダンパを制振対象部材としてトルクロッドに適用しているが、制振対象部材としては、自動車のドライブシャフトのように少なくとも並進3方向または並進3方向と回転方向に振動するものに適用してもよい。また、ドライブシャフト等にダイナミックダンパが取付けられる場合には、内筒部材がドライブシャフトの周囲を取り囲むようにしてドライブシャフトに取付けられる。
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
以上のように、本発明に係るダイナミックダンパは、設置スペースやコストが増大するのを防止しつつ、並進3方向の共振周波数による振動の増幅を抑制することができるという効果を有し、制振対象部材の共振周波数による振動の増幅を抑制することができるダイナミックダンパ等として有用である。