JP4867336B2 - 高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板 - Google Patents

高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、例えばプレス成形等によって様々な形状に成形されて使用される高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板に関する。具体的には、本発明は、プレス加工後の製品の表面性状、焼付硬化性ならびに耐常温時効性をいずれも良好にすることができる高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板に関する。
産業の技術分野が高度に分業化している今日、各技術分野において使用される材料には、特殊かつ高度な性能が要求される。例えばプレス加工等によって様々な形状に成形されて利用される冷延鋼板には、多くの場合、高い強度が要求される。このため、高張力冷延鋼板を用いることが検討されている。特に、自動車では、地球環境を保護するために車体を軽量化することによって燃費を向上することが重要な課題となっている。このため、自動車用鋼板の薄肉化を図ることが可能な高張力冷延鋼板に対する需要が高まっている。
例えばドアアウターやフェンダーといった自動車外板パネルに用いられる鋼板には、耐デント性、すなわち、指で押したり石が当たったりしても永久変形を起こさない性質を有することが求められる。耐デント性は、プレス成形後に塗装焼付けを行われた後の降伏応力が高いほど、また、板厚が厚いほど、向上する。このため、自動車外板パネルとして降伏応力が高い鋼板を用いれば、その薄肉化を図っても、要求される耐デント性を確保できる。
一方、自動車外板パネルに用いられる鋼板には、プレス加工においてプレス型に良くなじむとともに、成形品をプレス型から外した際のスプリングバックの発生が少ないこと、すなわち、形状凍結性が良好であることも求められる。このため、自動車外板パネルに用いられる鋼板には、プレス加工前の降伏応力が低いことも要求される。
このように、自動車外板パネル用鋼板には、プレス加工前には低い降伏応力を有するとともに、プレス加工し塗装焼付けした後には高い降伏応力を有することが、求められる。
このような特性を有する鋼板として、焼付硬化性鋼板(BH鋼板)が知られる。BH鋼板は、固溶C、N原子が転位上へ偏析して転位を固着することにより降伏応力が上昇する、いわゆる歪時効硬化現象を利用する鋼板である。BH鋼板を自動車用鋼板として用いると、プレス成形時に導入された転位が塗装焼付けの際に固溶C、Nによって固着されるために塗装焼付け後の降伏応力が上昇する。なお、高張力鋼板の焼付硬化性を改善することは、耐デント性や形状凍結性を改善することにもつながる。
これまでにも、BH鋼板に関して多数の提案が行われている。例えば、特許文献1、2には、極低炭素鋼にTiおよびNbを添加し、さらにSi、Mn、Pを添加することによって引張強度を高めた、深絞り性に優れたBH鋼板の製造方法が開示されている。しかし、この方法には以下に列記する問題点(a)〜(c)がある。
(a)引張強度を高めるためにSi、Mn、P等の固溶強化元素を添加するので、引張強度のみならず降伏応力も上昇する。この結果、形状凍結性が劣化するとともに面歪みも発生し易くなる。
(b)焼付硬化性および耐常温時効性の両立が困難であり、常温非時効を確保するために、得られる焼付硬化量が制限される。
(c)プレス加工時に線状の表面欠陥が生じ易い。すなわち、BH鋼板をプレス成形した際に生じる表面欠陥は、凹凸をなした線状の表面疵であることが多く、塗装後にも消失しない。このため、この表面欠陥が、例えばルーフやフードやドアのアウターパネル等といった、美麗な外観品質を要求される自動車外板パネルに発生すると、重大な欠陥となる。
これに対し、特許文献3〜5には、フェライト中にマルテンサイトを分散させた複合組織を有する低炭素Alキルド鋼板(以下、「複合組織鋼板」という)の製造方法が開示されている。この複合組織鋼板は、引張強度が高く、降伏応力が低く、焼付硬化量が大きくても常温非時効を確保でき、さらには延性にも優れる。このため、この複合組織鋼板を用いることにより上述した問題点(a)および(b)は改善されるものの、問題点(c)を解決できない。
そこで、この種の表面欠陥を防止するために、特許文献6、7にはP添加冷延鋼板において表面欠陥を軽減する発明が、特許文献8には表面性状に優れたTi、Nb添加極低炭素鋼板の製造方法が、さらに、特許文献9には表面性状に優れた中低炭素冷延鋼板の製造方法が、それぞれ開示されている。
特開昭59−31827号公報 特開昭59−38337号公報 特開昭55−50455号公報 特開昭56−90926号公報 特開昭56−146826号公報 特開平11−6028号公報 特開平11−335781号公報 特開平9−227955号公報 特開平9−125161号公報
特許文献6、7により開示された発明は、Pの偏析を抑制したりSiやMnを適量添加することによってPの偏析による鋼板の内部における硬度のムラを低減し、これにより、表面欠陥の発生を防止する。しかし、これらの発明では、P、MnさらにはSiの添加により降伏応力が上昇するため、形状凍結性や面歪み性の劣化が避けられない。降伏応力の低下には、鋼板を複合組織化することが有効である。しかし、本発明者らの検討結果によると、特許文献6、7により開示された発明では、フェライト単相鋼板の表面欠陥を抑制することはできるものの、複合組織鋼板の表面欠陥の発生を抑制することはできない。
また、特許文献8、9により開示された発明は、常温での降伏応力や引張強度に基づいて焼鈍後の冷却時の降伏応力を予測し、この冷却速度を制御することにより、表面欠陥を防止する。しかし、本発明者らの検討結果によれば、これらの発明によっても、複合組織鋼板の表面欠陥の発生を抑制することはできない。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、例えばプレス成形等によって様々な形状に成形されて使用され、プレス成形後の製品の表面性状を良好にすることができるとともに、優れた焼付硬化性ならびに耐常温時効性をいずれも有する高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板を提供することを目的とする。
具体的には、本発明は、プレス成形後の製品の表面性状が良好であり、かつ、優れた焼付硬化性および耐常温時効性を有する、引張強度が340MPa以上の複合組織を有する高張力冷延鋼板、高張力電気めっき鋼板および高張力溶融めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、複合組織鋼板の加工後の表面性状に及ぼす金属組織、添加元素ならびに焼鈍条件の影響を調べるため、詳細な予備試験を行った。なお、本明細書において、鋼成分の含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
この予備試験に用いた供試鋼の組成は、C:0.03%以下、Si:0.01%、Mn:4.0%以下、P:0.01%、S:0.005%、sol.Al:0.05%、N:0.003%、Cr:4.0%以下、残部Feおよび不純物である。
この組成を有する鋼片を1240℃に加熱した後、900℃以上の温度範囲で熱間圧延して600℃で巻き取り、得られた熱延鋼板を酸洗し、80%の圧延率で板厚0.8mmまで冷間圧延して冷延鋼板とした。この冷延鋼板を、連続焼鈍シミュレーターを用いて750℃以上まで加熱して30秒間保持した後、5℃/s以上500℃/s以下の種々の冷却速度で室温まで冷却した。このようにして得られた焼鈍板に5%の引張歪みを付与した後、その表面を油砥石で擦り、線状の表面欠陥の有無を観察した。
また、表面欠陥の発生部の近傍および正常部それぞれの内部におけるフェライトの硬さ分布を測定した。硬さ分布は、焼鈍板の表面から内部側へ向けて0.1mm以上0.2mm以下の距離にある範囲内に関して、フェライト粒のビッカース硬さ(荷重:0.0098N)の分布を板幅方向について測定することによって、求めた。焼鈍板の金属組織は、フェライトが主相であるとともに第二相はマルテンサイトまたは、マルテンサイトとベイナイトを含む低温変態生成相であった。なお、鋼片および焼鈍板それぞれの組成の違いは、事実上認められなかった。
次に、表面性状と焼鈍条件との関係を明確化するため、以下の実験を行った。上述した方法により得られた冷延鋼板を、連続焼鈍シミュレーターを用いて750℃以上まで加熱して30秒間保持した後、3℃/sの冷却速度で650℃まで冷却し、650℃から60℃/sの冷却速度で急冷し、室温から600℃までのある温度で急冷を中断し、その温度で引張試験を行った。
また、上述の方法で得られた冷延板を、連続焼鈍シュミレータを用いて、750℃以上まで加熱し、30秒間保持した後、3℃/sで650℃まで冷却し、650℃から60℃/sで急冷を開始し、150℃から600℃の間における、ある温度域を1℃/sで徐冷し、その後、室温まで60℃/sで急冷した。
得られた焼鈍板に5%の引張歪みを付与してから焼鈍板の表面を油砥石で擦り、表面欠陥の有無を観察した。また、欠陥発生部の近傍および正常部の鋼板内部における板幅方向へのフェライト粒の硬さ分布を測定した。
これらの予備試験により下記(A)〜(E)の結果を得て、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
(A)図1は、表面欠陥の発生部およびその周辺におけるフェライト粒の板幅方向への硬さ分布を示すグラフである。図2は、表面欠陥のない正常部におけるフェライト粒の板幅方向への硬さ分布を示すグラフである。図1、2のグラフにおけるHv(max)は測定範囲(10mm幅)におけるフェライト粒の最大のビッカース硬さを示し、Hv(ave)はこの測定範囲におけるフェライト粒の平均ビッカース硬さを示す。図1、2のグラフから、表面欠陥は、周囲に比べてフェライト粒の硬さが突出して高い部位において発生することがわかる。
(B)具体的には、表面欠陥は、Hv(max)とHv(ave)との差{Hv(max)−Hv(ave)}がHv(ave)の0.5倍以上となる部位で、発生する。
(C)焼鈍後の冷却速度が速いほどHv(max)とHv(ave)との差{Hv(max)−Hv(ave)}が大きくなり、表面欠陥が発生し易くなる。
これらの原因は、(a)複合組織鋼板に引張歪みを付与すると、主としてフェライトが塑性変形するが、フェライトに硬度差があると軟質部が優先的に塑性変形するため、硬質部の断面形状が凹凸状をなすこと、(b)フェライトの硬度差の増加に伴い、変形後の鋼板の板厚方向へ生じる凹凸の程度が激しくなり、疵として認識されるようになること、および(c)冷却速度が速いほど冷却ムラによる熱応力が大きくなり、冷却中に局所的な塑性変形が生じ、塑性変形部分が周囲と比べて硬質化することと推定される。
(D)複合組織鋼板は、室温で引張試験を行うと、連続降伏して降伏点伸びは現れないが、焼鈍後の冷却途中の段階で引張試験を行うと、試験温度によって不連続降伏し、降伏点伸びが現れる。
この理由は、フェライト相と低温変態生成相とが混在すると、フェライトの内部に可動転位が導入されて連続降伏するが、焼鈍後の冷却途中の段階における高温域では、低温変態生成相が形成されないためか、あるいはその生成量が少ないためであると考えられる。
(E)焼鈍後の冷却中に、鋼板が不連続降伏を起こす温度域において急冷を行うと、Hv(max)とHv(ave)との差が大きくなり、表面欠陥が発生する。
この理由は、鋼板が不連続降伏する場合、急冷中の熱応力による局所的な塑性変形量が特に増大し、さらに歪み時効硬化の影響が加わることにより、塑性変形部分が周囲に比較して著しく硬質化するためであると推定される。
これらの結果(A)〜(E)から、複合組織鋼板は、低温変態生成相を得るために、焼鈍後に急冷すると、表面欠陥が生じ易くなるが、不連続降伏が生じる温度域を徐冷してフェライト粒の硬さ分布を小さくし、Hv(max)とHv(ave)との差{Hv(max)−Hv(ave)}がHv(ave)の0.5倍未満に抑制することにより、プレス成形後に発生する線状の表面欠陥の発生を防止することができることがわかる。
本発明は、主相がフェライト相であるとともに第二相がマルテンサイト相を含む低温変態生成相である組織を備え、板幅方向へ長さが10mmである任意の断面におけるフェライト相の硬さ分布が、(1)式:Hv(max)−Hv(ave)<0.5×Hv(ave)を満足することを特徴とする高張力冷延鋼板である。
この(1)式におけるHv(max)は、高張力冷延鋼板の板厚をtとした場合に表面から深さ方向への距離が(1/8)t以上(1/4)t以下である範囲におけるフェライト粒の最大ビッカース硬さであり、Hv(ave)は、この範囲におけるフェライト粒の平均ビッカース硬さである。
この本発明にかかる高張力冷延鋼板は、C:0.0025%以上0.04%未満、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.15%以下、N:0.008%未満、Cr:0.02%以上2.0%以下、任意添加元素として、B:0.003%以下および/またはMo:1.0%以下ならびに/またはTi:0.1%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有することが望ましい。
別の観点からは、本発明は、上述した高張力冷延鋼板を母材とし、表面に電気めっき層を備えることを特徴とする高張力電気めっき鋼板である。
さらに別の観点からは、本発明は、上述した高張力冷延鋼板を母材とし、表面に溶融めっき層を備えることを特徴とする高張力溶融めっき鋼板である。
本発明によれば、例えばプレス成形等の加工に適用できる十分な成形性と、優れた焼付硬化性および耐常温時効性とを有し、さらにプレス加工を行っても表面欠陥を発生しない高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板を製造することができる。
本発明にかかる高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板を用いることにより、自動車の車体軽量化を通じて、地球環境問題の解決に寄与することができる。
以下、本発明にかかる高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本実施の形態の高張力冷延鋼板の(a)金属組織、(b)化学組成および(c)製造条件の限定理由を順次説明する。
(a)金属組織
本実施の形態の高張力冷延鋼板は、フェライト相中にマルテンサイト相を含む低温変態生成相が分散した複合組織を有する。この複合組織を有することにより、鋼板の降伏応力が低下し、良好なプレス成形性および耐面歪み性を得ることができるとともに、耐常温時効性を損なうことなく高い焼付硬化性を得ることができる。
ここで、「低温変態生成相」とは、マルテンサイト相やベイナイト相等といった低温変態により生成される組織をいう。これら以外にアシキュラーフェライト相が例示される。
低温変態生成相の全体の体積率は3%越であることが好ましい。低温変態生成相として2種以上の相、例えば、マルテンサイト相とベイナイト相を含んでいてもよい。マルテンサイト相の体積率が増加し過ぎると降伏応力が上昇し、形状凍結性および耐面歪み性が劣化する。このため、マルテンサイト相の体積率は10%未満とすること、もしくは、低温変態生成相としてマルテンサイト相とベイナイト相の双方を含ませることが望ましい。マルテンサイト相の体積率を3%未満とすればさらに好ましい。一方、低温変態生成相の体積率が増加し過ぎると引張強度が上昇し過ぎ、延性および深絞り性が劣化する。このため、低温変態生成相の体積率は15%未満とすることが好ましく、12%未満とすることがさらに好ましい。
また、耐面歪み性の観点から、鋼板の降伏応力は300MPa以下であることが好ましく、270MPa以下であればさらに好ましい。
また、プレス成形性の観点から、鋼板の引張強度は590MPa未満であることが好ましい。なお、フェライト相と低温変態生成相の他に残留オーステナイト相を含んでいてもよく、耐常温時効性を良好に保つためには、残留オーステナイト相の体積率を、低温変態生成相の全体の体積率よりも小さくするとともに3%未満とすることが好ましい。
本実施の形態の高張力冷延鋼板は、板幅方向へ長さが10mmである任意の断面におけるフェライト相の硬さ分布が、上述した(1)式:Hv(max)−Hv(ave)<0.5×Hv(ave)の関係を満足する。この(1)式の関係が満足されることにより、プレス成形時における線状の表面欠陥の発生が防止される。
(1)式において、Hv(max)は、板厚がtの冷延鋼板の場合にはその表面より(1/8)t以上(1/4)t以下の深さとなる範囲において、また、めっき鋼板の場合には板厚がtのめっき母材とめっき層との界面より(1/8)t以上(1/4)t以下の深さとなる範囲において、板幅方向への長さが10mmである部分におけるフェライト粒のビッカース硬さ分布を測定した際におけるフェライト粒の最大ビッカース硬さを意味する。また、Hv(ave)は、この範囲におけるフェライト粒の平均ビッカース硬さを意味する。
フェライト粒のビッカース硬さは、鋼板の断面を研磨し、ナイタール腐食等により金属組織を現出させた後、各フェライト粒の中央部の硬さを測定する。その際の荷重は特に規定しないが、圧痕が粒界もしくは第二相との境界に掛からないようにするために、0.0098(N)程度とすることが好ましい。
Hv(max)およびHv(ave)の決定は、フェライト粒の硬さを板幅方向への長さが10mmとなる部分にわたりおよそ等間隔となるように100点以上測定し、最大の測定値をHv(max)とするとともに全測定値の平均値をHv(ave)とする。望ましいのは、板幅方向へ長さが10mmである任意の断面におけるフェライト相の硬さ分布が、下記(4)式を満足することである。
Hv(max)−Hv(ave)<0.4×Hv(ave) ・・・・・(2)
本実施の形態の高張力冷延鋼板は、以上の金属組織を有する。
(b)組成
本実施の形態の高張力冷延鋼板は、延性や耐常温時効性等をさらに向上させるために、以下に示す組成を有する。
C:0.0025%以上0.04%未満
C含有量が0.0025%未満であると上述した複合組織を得られなくなり、一方、C含有量が0.04%以上であると鋼板の延性および深絞り性が損なわれる。したがって、本実施の形態では、C含有量は0.0025%以上0.04%未満とする。望ましい範囲は0.011%以上0.029%以下であり、さらに望ましい範囲は、0.016%以上0.029%以下である。
Si:0.5%以下
Siは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、延性を劣化させるとともに冷延鋼板の化成処理性およびめっき鋼板のめっき性を著しく劣化させる。したがって、Si含有量は少ないほど好ましい。しかし、Siは鋼板を強化する作用を有するので、本実施の形態では、鋼を強化するために0.5%まで含有させてもよい。好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。
Mn:0.5%以上2.5%以下
Mnは、鋼の焼入性を向上させる作用があり、フェライト相中に低温変態生成相を分散させるために本実施の形態では0.5%以上含有させる。一方、過度に含有させると延性および深絞り性が劣化するので、本実施の形態ではMn含有量の上限を2.5%とする。好ましい範囲は、1.0%以上2.0%未満であり、さらに好ましい範囲は1.0%以上1.5%未満である。
P:0.05%以下
Pは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、粒界に偏析して二次加工脆性および溶接性を劣化させる。したがって、P含有量は少ないほど好ましい。しかし、Pは安価に、また、深絞り性をさほど劣化させることなく、鋼を強化することができるため、本実施の形態では所望の強度を得るために0.05%以下の範囲で含有させてもよい。好ましくは、下限は0.01%であり、上限は0.035%である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中に不可避的に含有される不純物であり、粒界に偏析して鋼を脆化させるためにS含有量は少ないほど好ましい。本実施の形態ではS含有量は0.01%以下とする。
sol.Al:0.15%以下
Alは、溶鋼を脱酸するために用いられる。しかし、0.15%を超えて含有させると効果が飽和して不経済となる。このため、本実施の形態ではsol.Al含有量は0.15%以下とする。なお、AlはNと結合してAlNを形成し、Nによる時効劣化を防止するため、N含有量の10倍以上含有させることが望ましい。
N:0.008%未満
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、N含有量の増加は延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させる。したがって、本実施の形態ではN含有量は0.008%未満とする。好ましい範囲は0.005%未満であり、さらに好ましい範囲は0.004%未満である。
Cr:0.02%以上2.0%以下
Crは、延性を損なうことなく鋼の焼入性を向上させる作用があり、フェライト相中に低温変態生成相を分散させるために本実施の形態では0.02%以上含有させる。一方、過度に含有させると深絞り性が劣化し、冷延鋼板では化成処理性が劣化するとともにめっき鋼板ではめっき性が劣化する。したがって、本実施の形態ではCr含有量の上限を2.0%とする。好ましい範囲は0.05%以上1.0%以下である。また、延性をさらに向上させるためには、Mn含有量の1/10以上含有させることが好ましい。
本実施の形態では、以下に列記する元素を任意添加元素として含有してもよいので、これらの任意添加元素についても説明する。
B:0.003%以下および/またはMo:1.0%以下
B、Moは、特に含有させなくてもよい。しかし、鋼の焼入性をさらに向上させるためにその一方または双方を含有させてもよい。ただし、Bは深絞り性を劣化させるので、上限を0.003%とする。望ましい範囲は0.0002%以上0.002%未満である。また、Moは1.0%を超えて含有させると効果が飽和して不経済となるため、1.0%以下とする。望ましい範囲は0.02%以上0.5%未満である。
Ti:0.1%以下
Tiは、特に含有させる必要はない。しかし、Tiは、Nと結合してTiNを形成することでNによる時効劣化を防止するので、含有させてもよい。しかし、0.1%を超えて含有させても効果が飽和して不経済となる。このため、Ti含有量は0.1%以下とする。下限は特に規定されないが、好ましくは0.003%以上0.025%以下である。
上述した元素以外は、Feおよび不純物である。
本実施の形態の高張力冷延鋼板は、以上の組成を有する。
(c)製造条件
上述した組成を有する鋼は、適宜手段により溶製された後に、連続鋳造法により鋼塊とされるか、または、任意の鋳造法により鋼塊とした後に分塊圧延する方法等により鋼片とされる。この鋼塊または鋼片は再加熱するか、連続鋳造後の高温の鋼塊または分塊圧延後の高温の鋼片をそのまま、または、補助加熱を行って、熱間圧延される。本明細書では、このような鋼塊および鋼片を、熱間圧延の素材として「鋼片」と総称する。
熱間圧延の条件は特に規定しない。しかし、オーステナイト低温域で仕上げ圧延を行って熱延鋼板の結晶粒を微細化し、これにより、焼鈍時に深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させるために、Ar変態点以上(Ar変態点+100℃)以下の温度範囲で最終圧下を行うことが望ましい。
なお、最終圧下をこの温度範囲で行うために、粗圧延と仕上げ圧延との間で粗圧延材を加熱してもよい。この際、粗圧延材の後端が先端よりも高温となるように加熱することにより仕上げ圧延の開始時における粗圧延材の全長にわたる温度の変動を140℃以下に抑制することが望ましい。これにより、コイル内の製品特性の均一性が向上する。
粗圧延材の加熱は、例えば粗圧延機と仕上げ圧延機との間にソレノイド式誘導加熱装置を設けておき、この誘導加熱装置の上流側における長手方向の温度分布等に基づいて加熱昇温量を制御することが、例示される。
熱間圧延を終了した後に鋼板を冷却してコイル状に巻取る。スケールの生成による歩留まりの低下を招くために、600℃未満で巻き取ることが望ましい。一方、AlNを十分に析出させNによる時効劣化を抑制するために、巻取り温度の下限を450℃とすることが好ましい。
熱間圧延された鋼板を酸洗等により脱スケールした後に、冷間圧延を常法に従って行う。冷間圧延は、冷間圧延の後に行われる再結晶焼鈍によって深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させるため、70%以上の圧下率で1.0mm未満の板厚まで圧延することが好ましい。
このようにして得られる冷延鋼板は、必要に応じて公知の方法に従って脱脂等の処理が施され、再結晶焼鈍される。再結晶焼鈍の際の均熱温度は、鋼の金属組織を、主相がフェライト相であるとともに第二相がマルテンサイトを含む低温変態生成相である複合組織とするために、Ac変態点以上Ac変態点未満の温度範囲とする。均熱温度がAc変態点未満であると低温変態生成相が得られなくなる。ただし、焼鈍後のフェライトを粗大化させて延性を向上させるために、均熱温度をAc変態点以上(Ac変態点+100℃)未満の温度範囲としてもよい。
一方、この均熱温度が高くなり過ぎると、フェライトが過度に粗大化してプレス成形時に肌荒れを生じる。このため、上述したようにフェライトの粗大化により延性の向上を図る場合であっても、均熱温度の上限を(Ac変態点+100℃)未満とする。好ましい上限は、(Ac変態点+50℃)未満である。
Ac変態点とは加熱時におけるフェライト→オーステナイト変態の開始温度を意味し、Ac変態点とは加熱時におけるフェライト→オーステナイト変態の完了温度を意味する。
また、加熱速度が速すぎるとフェライトが細粒化し、延性の劣化を招く。このため、均熱温度までの加熱速度は60℃/s未満とすることが好ましい。
再結晶焼鈍における均熱後の冷却過程では、650℃以下450℃以上の温度範囲を15℃/s以上200℃/s以下の冷却速度で冷却する。この温度範囲での冷却速度が15℃/s未満であると、フェライト量が多くなり過ぎて耐常温時効性が劣化する。一方、この温度範囲での冷却速度が200℃/sを上回ると、鋼板の平坦度が劣化する。好ましい冷却速度は50℃/s以上150℃/s以下であり、さらに好ましい冷却速度は60℃/s超130℃/s未満である。
均熱温度から650℃までの冷却方法は特に限定を要さない。しかし、オーステナイトの安定性を高め、低温変態生成相を容易に得るために、Ac変態点以上Ac変態点未満で均熱する場合には、均熱温度〜(均熱温度−50℃)の温度範囲を10℃/s未満の冷却速度で冷却することが望ましい。また、Ac変態点以上(Ac変態点+100℃)未満で均熱する場合には、均熱温度〜(均熱温度−100℃)の温度範囲を10℃/s未満の冷却速度で冷却することが望ましい。
450℃以下の温度範囲においては、鋼板が不連続降伏する温度域を10℃/s未満で冷却する。これは、不連続降伏する温度域を急冷すると、上述したように、熱応力によって鋼板が局所的に塑性変形し、フェライト粒の硬さにバラツキが生じて、プレス成形時に線状の表面欠陥が発生するためである。好ましい冷却速度は6℃/s未満であり、さらに好ましい冷却速度は3℃/s未満である。また、冷却速度の下限は特に限定しないが、低温変態生成相が焼き戻し等によって変質してプレス成形性および耐常温時効性が劣化することを防ぐため、6℃/min以上とすることが望ましい。
不連続降伏の温度域は、上述したように、引張試験機構を備えた連続焼鈍シミュレータを用いて、冷延板を均熱処理し、その後の冷却過程において各温度で冷却を中断し、その温度で引張試験を行うことにより、求めることができる。焼付硬化量を上昇させるために、150℃以下の温度範囲を10℃/s以上で冷却することが望ましい。
このようにして得られた冷延鋼板は、常法にしたがって調質圧延を行ってもよい。しかし、調質圧延の伸び率が高いと伸びの低下を招く。そこで、調質圧延の伸び率は1.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましい伸び率は0.5%以下である。
電気めっき鋼板を製造する場合は、上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って電気めっきを行う。めっきの種類は特に限定しないが、亜鉛めっき、亜鉛ニッケル合金めっき等の亜鉛系めっきとすることが好ましい。また、電気めっき後に調質圧延を行ってもよい。
一方、溶融めっき鋼板を製造する場合は,上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って溶融めっきを行う。溶融めっきを行った後に再加熱して合金化処理を行ってもよい。めっきの種類は特に限定しないが、亜鉛系めっきとすることが好ましい。また、溶融めっき後に調質圧延を行ってもよい。
なお、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、上述した方法により再結晶焼鈍し、均熱後に650℃以下460℃以上の温度範囲を60℃/s超130℃/s未満の冷却速度で冷却し、溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行い、必要に応じて合金化処理を施し、その後、鋼板が不連続降伏する温度域を3℃/s未満の冷却速度で冷却してもよい。
このようにして製造される鋼板の組織は、主相がフェライト相であるとともに、これにマルテンサイト相を含む低温変態生成相が第二相として含まれる。本明細書において「主相」とは体積率が最大である相を意味し、「第二相」とは主相以外をいう。したがって、第二相はそのような低温変態生成相を含む。
かくして、本実施の形態により製造される高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板は、例えばプレス成形等の加工に適用できる十分な成形性と、優れた焼付硬化性および耐常温時効性とを有し、さらにプレス加工を行われても表面欠陥を発生しない。このため、この高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板は、自動車用部品用パネル、特に自動車外板パネル用として特に好適に用いることができる。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。これらの鋼塊を熱間鍛造により30mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1240℃に加熱し、1時間保持した。鋼片を炉から抽出した後、実験用熱間圧延機を用いて900℃以上の温度範囲で熱間圧延を開始し、厚さ5mmの熱延鋼板を得た。
Figure 0004867336
熱間圧延後、直ちに水スプレー冷却により550℃まで冷却してこれを巻取り温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して1時間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取り後の徐冷処理とした。得られた鋼板の両表面を研削して厚さ4mmの冷間圧延母材とし、圧延率85%で冷間圧延した。
連続焼鈍シミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を、780℃で30秒間保持した後、700℃まで3℃/sの冷却速度で冷却し、450℃まで70℃/sの冷却速度で冷却し、130℃まで表2に示される種々の冷却速度で冷却し、130℃で120秒間保持した後、室温まで15℃/sで冷却した。
Figure 0004867336
その後、これらの焼鈍板から、もしくは焼鈍板に電気めっき処理を施した電気めっき鋼板から、10mm幅の試験片を採取し、硬さ試験に供した。硬さ試験は、鋼板の表面もしくは鋼板の母材とめっき層との界面から、板厚中心方向へ0.1mmの位置において板幅方向10mmにわたり約0.1mmピッチでフェライト粒のビッカース硬さ(荷重:0.0098N)を測定した。得られたフェライト粒のビッカース硬さのうち最大の値をHv(max)とするとともに平均値をHv(ave)とし、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)を計算することによりフェライト粒の硬さ分布の指標とした。
加工後の表面性状は、焼鈍板の圧延方向へ長さ500mm、幅200mmの試験片を切り出し、この試験片に5%の引張歪みを付与した後、表面を油砥石で擦り、表面欠陥の有無を観察することにより評価した。
焼鈍板の板幅方向から採取したJIS5号引張試験片を用いて引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強度(TS)、降伏点伸び(YPE)および全伸び(El)を求めた。
焼付硬化性は、焼鈍板の板幅方向からJIS5号引張試験片を採取し、2%の引張予ひずみを付与してから、170℃で20分間の熱処理を施した後に引張試験に供し、得られた降伏応力(YS)と2%変形応力との差をBH量とし、焼付硬化性の指標とした。
さらに、耐常温時効性は、焼鈍板の板幅方向から採取したJIS5号引張試験片を採取し、40℃に設定した電気炉中で3ヶ月間保持した後に引張試験に供し、降伏点伸び(YPE)を測定することにより、評価した。
表2に性能評価結果を示した。(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値は、鋼板の10箇所における硬さ分布からそれぞれ計算し、それらの内の最大値を記した。
金属組織が、フェライト相とマルテンサイト相を含む低温変態生成相とを有し、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値が0.5未満であった、試番2、5、8、11、14、16は、いずれも、表面欠陥が発生しておらず、また、52MPa以上の高いBH量を示しながら、時効後YPEは0.1%以下であり、良好な耐常温時効性を示した。さらに、YSは270MPa以下、YPEは0%であり、良好なプレス成形性を示した。
これに対し、試番1、4、7、10、13、17は、金属組織がフェライト単相であったため、時効後のYPEが大きく、耐時効性が不芳であった。
さらに、試番3、6、9、12、15では、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値が0.5よりも大きいため、加工後の鋼板の表面に表面欠陥が発生してしまい、表面性状が不芳であった。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成の鋼を溶解し、鋳造した。これらの鋼塊を熱間鍛造により30mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1240℃に加熱し、1時間保持した。鋼片を炉から抽出した後に実験用熱間圧延機を用いて、900℃以上の温度範囲で熱間圧延し、厚さ4mmの熱延鋼板を得た。
熱間圧延後、直ちに水スプレー冷却により500℃まで冷却してこれを巻取り温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して1時間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取り後の徐冷処理とした。得られた鋼板を酸洗し、圧延率85%で冷間圧延した。
連続溶融亜鉛めっきシミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を、20℃/sの加熱速度で790℃まで加熱し60秒間保持した後、460℃まで70℃/sの冷却速度で冷却し、460℃の溶融亜鉛浴に3秒間浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。めっき後すぐに、もしくは、500℃で20秒間保持する合金化処理を施してから、室温まで表3に示される種々の冷却速度で冷却した。
これらの溶融亜鉛めっき鋼板から10mm幅の試験片を採取し、硬さ試験に供した。硬さ試験は、鋼板の母材とめっき層との界面から板厚中心方向へ0.1mmの位置において、幅方向10mmにわたり約0.1mmピッチでフェライト粒のビッカース硬さ(荷重:0.0098N)を測定した。得られたフェライト粒のビッカース硬さのうち最大の値をHv(max)とするとともに平均値をHv(ave)とし、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)を計算して、フェライト粒の硬さ分布の指標とした。
加工後の表面性状は、得られた溶融亜鉛めっき鋼板に5%の引張歪みを付与した後、表面を油砥石で擦り、表面欠陥の有無を観察することにより、評価した。
また、板幅方向から採取したJIS5号引張試験片に引張試験を行って、降伏応力(YS)、引張強度(TS)、降伏点伸び(YPE)および全伸び(El)を求めた。
焼付硬化性は、板幅方向からJIS5号引張試験片を採取し、2%の引張予ひずみを付与し、170℃で20分間の熱処理を施した後、引張試験に供した。得られたYSと2%変形応力の差をBH量とし、焼付硬化性の指標とした。
さらに、耐常温時効性は、板幅方向から採取したJIS5号引張試験片を、40℃に設定した電気炉中で3ヶ月間保持した後に引張試験に供し、降伏点伸び(YPE)を測定することにより、評価した。
表3に性能評価結果を示した。(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値は、鋼板の任意の10箇所における硬さ分布からそれぞれ計算し、それらのうち最大値を記した。
Figure 0004867336
金属組織がフェライト相とマルテンサイト相を含む低温変態生成相とを有し、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値が0.5未満であった試番19、22、25、28、31,33は、いずれも、表面欠陥が発生しておらず、また、48MPa以上の高いBH量を示しながら、時効後YPEは0.1%以下であり、良好な耐常温時効性を示した。さらに、YSは270MPa以下、YPEは0%であり、良好なプレス成形性を示した。
一方、試番18、21、24、27、30、34は、金属組織がフェライト単相もしくはフェライト相とベイナイト相との複合組織であったため、時効後のYPEが大きく、耐時効性が不芳であった。
さらに、試番20、23、26、29、32は、(Hv(max)−Hv(ave))/Hv(ave)の値が0.5よりも大きいため、加工後の鋼板の表面に表面欠陥が発生し、表面性状が不芳であった。
表面欠陥の発生部およびその周辺におけるフェライト粒の板幅方向への硬さ分布を示すグラフである。 表面欠陥のない正常部におけるフェライト粒の板幅方向への硬さ分布を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 主相がフェライト相であるとともに第二相がマルテンサイト相を含む低温変態生成相である組織を備え、板幅方向へ長さが10mmである任意の断面におけるフェライト相の硬さ分布が下記(1)式を満足することを特徴とする高張力冷延鋼板。
    Hv(max)−Hv(ave)<0.5×Hv(ave) ・・・・・(1)
    (1)式におけるHv(max)は、前記高張力冷延鋼板の板厚をtとした場合に表面から深さ方向への距離が(1/8)t以上(1/4)t以下である範囲におけるフェライト粒の最大ビッカース硬さであり、Hv(ave)は、該範囲におけるフェライト粒の平均ビッカース硬さである。
  2. 質量%で、C:0.0025%以上0.04%未満、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.15%以下、N:0.008%未満、Cr:0.02%以上2.0%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有する請求項1に記載された高張力冷延鋼板。
  3. さらに、質量%で、B:0.003%以下および/またはMo:1.0%以下を含有する請求項2に記載された高張力冷延鋼板。
  4. さらに、質量%で、Ti:0.1%以下を含有する請求項2または請求項3に記載された高張力冷延鋼板。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された高張力冷延鋼板が表面に電気めっき層を備えることを特徴とする高張力電気めっき鋼板。
  6. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された高張力冷延鋼板が表面に溶融めっき層を備えることを特徴とする高張力溶融めっき鋼板。
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