JP4867083B2 - 家畜用飼料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家畜の増体効率および飼料効率を改善させるための飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業動物の飼育上特徴的な問題として、幼若期のトラブルが挙げられる。例えば出生直後から離乳期を経て飼料が肥育期用に切り替わる直前までの家畜は、母乳から固形飼料に切り替わるストレスの影響で飼料摂取量が低下する。この他にも、下痢や種々の感染症、環境の変化、あるいは密飼い飼育などの様々なストレスが、家畜の飼料摂取量の低下を引き起こし成長を遅延させる要因となることが知られている。この成長の遅延は産業上大きな損害をもたらす要因となるため、その対策として様々な試みがなされている。特に飼料摂取量増進を目的として甘味料など嗜好性の高い原料を添加した飼料の給与などが試みられてはいるが、明瞭な効果は認められていないというのが現状である。
【0003】
これらのストレスがもたらす特徴的な所見として、小腸絨毛の萎縮に起因する小腸機能の低下が挙げられる。絨毛の発育には物理的な要因と化学的な要因、すなわち固形飼料の摂取による粘膜への物理的な刺激と栄養分による化学的な刺激とが関わっていると云われているが、どちらの寄与が大きいかは不明である。しかしいずれにせよ、絨毛が萎縮した状態では栄養分の吸収が充分に行われず、その結果として飼料効率が低下し増体の遅延を引き起こしているであろうことは容易に想像できることである。
【0004】
実験動物において実験的に小腸絨毛を萎縮させた場合に、核酸を給与することで絨毛組織の回復が促進されたとする知見がいくつか報告されている [Nutrition, Vol. 13, No. 4 (1997), J. Nutr., 125, 42-48 (1995), JPEN, 14, 598-604 (1990)]。これらの報告は、腸管の絨毛のように急速な細胞増殖を必要とする組織に対しては、核酸合成の素材として飼料中へ核酸を添加することが有効であることを示唆していると考えられる。さらに幼若動物においてはアミノ酸を基質としたde novoでの核酸合成が未熟であるとされており、このような時期の動物に対しては核酸投与の有効性がさらに高まるものと推察できる。
【0005】
また母乳は子供の小腸機能発達と維持を図るため、いくつかの因子を含むと推測されている。その中でもグルタミンは母乳中の主要遊離アミノ酸であることから、このアミノ酸が動物の小腸機能発達とその維持に必須であるとする説もある [Nutrition Review, 48, 297 (1990)]。また、豚母乳中の遊離グルタミン濃度は泌乳が進むにつれ増加してくることが報告されており [J. Nutr., 124, 415-424 (1994)]、このアミノ酸が幼若動物において重要な役割を果たしている可能性を示唆するものと考えられる。さらに食餌由来のグルタミンは、腸管上皮細胞の主要なエネルギー源であると同時に核酸の前駆体であることも知られており、正常な小腸粘膜の形態と機能の維持に不可欠な栄養素であると考えられている [JPEN, 11, 569-579 (1987), Annu. Rev. Nutr., 11, 285-308 (1991), JPEN, 14, 237-243 (1990)]。
【0006】
グルタミンと同様グルタミン酸も母乳中の主要なアミノ酸であり、特に豚の母乳中では、最も多量に含まれるアミノ酸であることなどが報告されている [Br. J. Nutr., 79, 129-131 (1998)]。また小腸粘膜におけるグルタミン酸の機能についての研究が近年積み重ねられてきており、食餌由来のグルタミン酸はグルタミンと同様小腸上皮細胞の主要なエネルギー源であることや、アルギニンやプロリンなどの前駆体であること、さらにはグルタチオン合成の原料となることなどが明らかにされてきている [Am. J. Physiol., 273, E408-E415 (1997), J. Nutr., 126, 878-886 (1996), J. Nutr, 128, 1249-1252 (1998), J. Nutr, 130, 978S-982S (2000)]。これらの観点から近年ではグルタミン酸は小腸機能の維持のために不可欠なアミノ酸であると考えられている。
【0007】
以上の報告から、核酸、グルタミンおよびグルタミン酸はそれぞれ単独でもある程度の小腸機能改善効果を持つものと推測される。しかし、核酸とグルタミン、核酸とグルタミン酸、グルタミンとグルタミン酸など、2種以上を併用した場合の効果についての報告はこれまでなされていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、家畜の増体効率および飼料効率を改善させるための飼料および方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、グルタミンとグルタミン酸からなる添加物もしくは核酸とグルタミンからなる添加物を、家畜用飼料、例えば、通常の家畜用飼料に添加することにより、これらの添加物を各々単独で添加した場合に比べ家畜の飼料効率が改善し発育が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、家畜用飼料と、グルタミンとグルタミン酸からなる添加物もしくは核酸とグルタミンからなる添加物とを含有することを特徴とする家畜飼料用組成物に関するものである。また、本発明の家畜用飼料としては通常の家畜用飼料、例えば代用乳、プレスターター飼料またはスターター飼料であることが好ましい。前記核酸は飼料重量あたり0.01〜2.5重量%添加され、前記グルタミンおよび前記グルタミン酸はそれぞれ、飼料重量あたり0.05〜2.5重量%添加され、前記グルタミンとグルタミン酸からなる添加物の添加量が飼料重量あたり0.1〜5重量%、または前記核酸とグルタミンからなる添加物の添加量が飼料重量あたり0.06〜5重量%であることが好ましい。また、前記家畜は子豚であることが好ましく、本発明の家畜飼料用組成物は家畜の増体効率および飼料効率を増加させることが好ましい。
さらに、本発明は、上記家畜飼料用組成物を家畜に投与することを特徴とする、家畜の増体効率および飼料効率を増加する方法に関するものであり、該飼料の投与期間は離乳期、すなわち離乳をはさんだ前後1乃至2週間の時期であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
家畜とは乳用、肉用、あるいは皮革用の産業動物を指し、例えば牛、豚、鶏、馬、七面鳥、羊、山羊などが挙げられる。
本発明で使用する核酸は、飼料中に含まれている穀物などの細胞に由来する核酸ではなく、単体として存在する核酸、あるいは核酸を高度に含有するバクテリアや酵母などの菌体が該当する。さらにこの核酸はディオキシリボ核酸、リボ核酸のいずれも有効であり、またいわゆる高分子である核酸としてのみでなく、その構成単位であるヌクレオチド、ヌクレオチドが脱リン酸化されて生じるヌクレオシド、さらには最小単位であるプリンまたはピリミジン塩基のいずれの形でも有効に利用される。例えばヌクレオチドとしてはアデノシン一リン酸、グアノシン一リン酸、シチジン一リン酸、ウリジン一リン酸、チミジン一リン酸、イノシン一リン酸が、またヌクレオシドとしてはこれらヌクレオチドが脱リン酸化された化合物が該当する。またプリン塩基としてはアデニンとグアニンが、ピリミジン塩基としてはシトシン、ウラシル、チミンが挙げられる。
一方本発明で使用するグルタミンおよびグルタミン酸は、飼料中に含まれている蛋白質分子に由来するグルタミンおよびグルタミン酸とは異なり、アミノ酸単体として存在するグルタミンおよびグルタミン酸である。このグルタミンおよびグルタミン酸はL体およびD体のいずれも使用可能であるが、利用効率の点からL体の方が好ましい。アミノ酸単体としてのグルタミンおよびグルタミン酸は、合成法、抽出法、又は発酵法で製造されたグルタミンおよびグルタミン酸が使用可能であるが、その由来は特に問わない。
【0011】
核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の添加物を添加する家畜用飼料としては、通常、とうもろこし、大麦、小麦、ライ麦、ソルガム、大豆、黄粉などの穀類、大豆油かす、大豆蛋白、油脂、スキムミルク、魚粉、肉骨粉、血粉、血漿蛋白、ホエー、米ぬか、ふすま、砂糖などの糖類やその他の甘味料、ミネラル、ビタミン、食塩などの原料を単独あるいは組み合わせたものを用いればよい。また牛、羊、山羊などの反芻動物においては上記飼料以外に粗飼料として種々の牧草が給与される。
【0012】
核酸の添加量としては、通常用いられる飼料に核酸を飼料重量あたり0.01〜2.5重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%の割合で添加すればよい。
一方グルタミンまたはグルタミン酸の添加量としては、通常用いられる飼料にグルタミンおよびグルタミン酸を飼料重量あたり0.05〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の割合で添加すればよい。
そして核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の混合物としての添加量は、飼料重量あたり0.06〜5.0重量%、好ましくは0.5〜2.5%重量の割合で添加すればよい。
そして該家畜飼料用組成物を家畜に給餌することで、核酸を家畜体重1kgあたり0.01〜2.5g/日、好ましくは0.05〜1.0g/日、グルタミンまたはグルタミン酸を家畜体重1kgあたり0.05〜2.5g/日、好ましくは0.5〜2.0g/日摂取させることが望ましい。
【0013】
なお、核酸はその要求量のほぼ全てが生体内合成合成で満たされると考えられているため、飼料に由来する核酸供給量は従来考慮されていなかった。そのため各飼料原料の核酸含有量の分析値は不明なものが多いが、一般的にはこれら飼料原料に由来する核酸はごく微量であると云われている。一方飼料中のグルタミンは飼料原料の加水分解過程でグルタミン酸へと変化するため、飼料原料中のグルタミン含有量は測定されないのが現状である。そのため一般的には飼料由来のグルタミンはグルタミン酸との合計として測定され、飼料中の全蛋白の10〜15%を占めるとされている。これに基づけば通常使用される飼料は、グルタミンとグルタミン酸の合計として飼料重量あたり約1.5〜4.0重量%の割合で含んでいるものと推測される。
【0014】
核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の添加物は、飼料に添加、混合して家畜に給餌できる。例えば豚の飼育においては、出生直後は母乳給与のみであるが、1〜2週間後からは母乳に加え前初期飼料(プレスターター飼料)が並行して給与される。離乳とともに初期飼料(スターター飼料)に切り替えられ、その後肥育期飼料を用いて肥育される。また、牛、羊、山羊などの反芻動物においてはルーメン(第一胃)が形成されるまでは母乳または代用乳と固形飼料とが並行給与され、離乳と同時に固形飼料へと完全に切り替わる。核酸、グルタミンおよびグルタミン酸はこれらいずれの飼料に添加しても増体効率および飼料効率を改善させることができる。しかし核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の添加物を添加してなる家畜用飼料の給与による増体効率および飼料効率の改善効果は、該家畜用飼料の給与を停止した後でも継続されるため、特に離乳の前後1乃至2週間の時期に給与すると一層効果的である。核酸、グルタミンおよびグルタミン酸は食餌と別に、各々単独、あるいは混合した粉末状態で、あるいは家畜が好んで摂取する砂糖などと混合して与えることもできる。また代用乳あるいは水に溶かして液体として給与することもできる。
【0015】
核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の添加物は、家畜用飼料の作製時に予め添加されてもよいし、家畜への給餌時に添加されてもよい。
【0016】
本発明における、核酸、グルタミンおよびグルタミン酸から成る群から選択された2種以上の添加物を添加された家畜用飼料による増体効率および飼料効率の改善方法は、産業上は出生直後から離乳期を経て飼料が肥育期用に切り替わる直前までの家畜への適用が有用であり、特に豚への適用が有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、%は重量%を示す。
【0017】
【実施例】
実施例1 子豚の飼料効率改善
離乳子豚・去勢雄72頭、雌72頭を用い、対照区(C)、核酸単独投与区(N)、グルタミン単独投与区(G)、および核酸+グルタミン混合投与区(N+G)の4群(各群36頭、6頭ずつの6反復)に分けた。子豚を平均17日齢で離乳させ、離乳から2週間、C区には表−1に示す組成のスターター飼料を、N区にはビール酵母より抽出した市販のリボ核酸(キリンビール社製)を飼料重量あたり0.8%、G区には結晶グルタミンを飼料重量あたり1.2%、そしてN+G区には飼料重量あたり0.8%のリボ核酸と1.2%のグルタミンを、それぞれ表−1に示したスターター飼料に添加し試験用飼料として給与した。離乳後2週間が経過した後は、全区とも同一の飼料が給与された。離乳後7、14、21、28日目の各時点で体重と残飼重量を測定し、飼料摂取量と増体重量、飼料効率を算出した。結果を表−2に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
全試験期間(離乳後0〜28日)において、G区ではC区に対して飼料効率の改善は認められなかった。またN区ではC区に対して若干の飼料効率の改善が見られたが、その差は統計的に有意ではなかった。しかしN+G区では、C区あるいはG区に対して、飼料効率の有意な改善が認められた。各週毎の成績で比較しても、C区に対してN区では若干の飼料効率の改善が見られ、その改善効果はN+G区で一層大きくなる傾向が認められた。さらにこの増体および飼料効率の改善効果は、試験飼料の給与期間(0〜14日)のみならず、試験飼料給与が終了し全区共通の飼料が給与された期間(14〜28日)においても継続していることが確認された。その結果として、試験開始時の平均体重は各区とも同等であったものの、試験終了時の平均体重では、C区が12.98kgであったのに対しN+G区では14.09kgとなり、1kg以上の増体の改善効果が観察された。以上の結果から、核酸とグルタミンを同時に飼料に添加することにより離乳子豚の増体効率および飼料効率が改善された。また核酸とグルタミンの併用による増体効率および飼料効率の改善効果は、核酸あるいはグルタミンを単独で添加した際の効果を上回るものであった。さらにこの増体効率および飼料効率改善効果は、試験飼料の給与を終了した後も残存するものであることが確認された。
【0021】
実施例2 子豚の増体効率および飼料効率改善
離乳子豚・去勢雄120頭を用い、対照区(C)、核酸単独投与区(N)、グルタミン酸単独投与区(G)、および核酸+グルタミン酸混合投与区(N+G)の4群(各群30頭、5頭ずつの6反復)に分けた。子豚を平均17日齢で離乳させ、離乳から2週間、C区には表−3に示す組成のスターター飼料を、N区にはビール酵母より抽出した市販のリボ核酸(キリンビール社製)を飼料重量あたり0.8%、G区には結晶グルタミン酸を飼料重量あたり1.2%、そしてN+G区には飼料重量あたり0.12%のリボ核酸と1.08%のグルタミン酸を、それぞれ表−3に示したスターター飼料に添加し試験用飼料として給与した。離乳後7日および14日の時点で体重と残飼重量を測定し、飼料摂取量と増体重量、飼料効率を算出した。結果を表−4に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
離乳直後の7日間において、N区およびG区の1日あたりの増体量はC区と差はなかったが、N+G区の1日あたりの増体量は他の3区よりも有意に高かった。同時期における飼料摂取量はG区で最も少なく、N+G区で最も多かった。飼料効率は区間に統計的差は見られなかったが、N+G区で最も効率が高まる傾向にあった。その後の7日間(離乳後8日から14日)では、1日あたりの増体量はC区で最も低く、次いでG区、そしてN区およびN+G区で最も高い傾向にあったが、区間に統計的有意差はなかった。飼料摂取量は全区ほぼ同等であった。飼料効率はC区およびG区に比べ、N区およびN+G区で改善されている傾向にあったが、統計的に有意な差ではなかった。以上の結果から、核酸とグルタミン酸を同時に飼料に添加することにより離乳子豚の増体効率および飼料効率が改善された。また核酸とグルタミン酸の併用による増体効率および飼料効率の改善効果は、核酸あるいはグルタミン酸を単独で添加した際の効果を上回るものであった。さらにこの増体効率および飼料効率改善効果は、特に離乳直後の時期に顕著であるが、その傾向は離乳後2週間が経過しても継続していることが確認された。
【0025】
実施例3 子豚の増体効率および飼料効率改善
離乳子豚・去勢雄120頭を用い、対照区(C)、グルタミン単独投与区(GLN)、グルタミン酸単独投与区(GLU)、およびグルタミン+グルタミン酸混合投与区(GLN+GLU)の4群(各群30頭、5頭ずつの6反復)に分けた。子豚を平均17日齢で離乳させ、離乳から2週間、C区には実施例2の表−3に示したものと同一のスターター飼料を、GLN区およびGLU区には結晶グルタミンおよび結晶グルタミン酸をそれぞれ飼料重量あたり1.2%、そしてGLN+GLU区には飼料重量あたり0.12%のグルタミンと1.08%のグルタミン酸を、それぞれ表−3のスターター飼料に添加し試験用飼料として給与した。離乳後2週間が経過した後は、全区とも同一の飼料が給与された。離乳後14日および21日の時点で体重と残飼重量を測定し、飼料摂取量と増体重量、飼料効率を算出した。結果を表−5に示す。
【0026】
【表5】
【0027】
離乳後1日から14日の2週間において、1日あたりの増体量はGLN+GLU区で最も大きく、次いでC区およびGLU区、そしてGLN区が最も小さくなったが、各区に統計的差はなかった。同時期における飼料摂取量はGLU区で最も多く、次いでC区、GLN+GLU区となり、GLN区で最も少なかったが、増体量と同様区間に統計的有意差は見られなかった。飼料効率も区間に統計的差は見られなかったが、GLN+GLU区が他の3区よりも効率が高まる傾向を示した。その後の7日間(離乳後15日から21日)では、1日あたりの増体量はC区で最も低く、次いでGLU区およびGLN区、そしてGLN+GLU区で最も高くなる傾向を示した。飼料効率については、GLN区およびGLU区はC区に比べ改善傾向を示したが、GLN+GLU区では更に改善される傾向にあった。以上の結果から、グルタミンとグルタミン酸を同時に飼料に添加することにより離乳子豚の増体効率および飼料効率が改善された。またグルタミンとグルタミン酸の併用による増体効率および飼料効率の改善効果は、グルタミンあるいはグルタミン酸を単独で添加した際の効果を上回るものであった。さらにこの増体効率および飼料効率改善効果は、試験飼料の給与が終了し全区共通の飼料が給与された後も残存するものであることが確認された。
【0028】
実施例4 小腸絨毛の回復効果
離乳子豚・去勢雄24頭を用い、対照区(C)、核酸単独投与区(N)、グルタミン酸単独投与区(G)、および核酸+グルタミン酸混合投与区(N+G)の4群(各群6頭)に分けた。子豚を平均17日齢で離乳させ、離乳から1週間、C区には実施例2の表−3に示したものと同一のスターター飼料を、N区にはビール酵母より抽出した市販のリボ核酸(キリンビール社製)を飼料重量あたり0.8%、G区には結晶グルタミン酸を飼料重量あたり1.2%、そしてN+G区には飼料重量あたり0.12%のリボ核酸と1.08%のグルタミン酸を、それぞれ表−3に示したスターター飼料に添加し試験用飼料として給与した。離乳後7日目に全ての子豚を屠殺し、小腸を採取した。採取された小腸から一般的な手法により組織切片を作製し、光学顕微鏡下で絨毛の長さおよび陰窩の厚さを測定した。結果を表−6に示す。
【0029】
【表6】
【0030】
離乳後7日目の十二指腸において、N区およびG区の絨毛長はC区より有意に長くなっており、さらにN+G区の絨毛長はN区またはG区よりも有意に長くなっていた。十二指腸と同様に空腸および回腸においても、N+G区の絨毛長は他の3区よりも有意に長くなっていた。また陰窩厚については、十二指腸ではN+G区がC区およびG区よりも有意に厚く、空腸および回腸ではN区とN+G区が、C区およびG区よりも有意に厚い陰窩厚を示した。以上の結果から、核酸とグルタミン酸を同時に飼料に添加することにより離乳子豚の小腸の絨毛長が長くなり、陰窩厚も厚くなることが確認された。さらにこの効果は、核酸あるいはグルタミン酸をそれぞれ単独で添加した場合よりも明らかに大きかった。このことは、N+G区では小腸粘膜組織の形態および機能の障害の程度が小さいことを示しており、離乳子豚の栄養素の消化吸収や感染症の防止に極めて有効であるものと考えられた。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、家畜の増体効率および飼料効率を改善することが可能になり、その結果、体重増加等の効果を得ることができる。
Claims (7)
- 家畜用飼料と、グルタミンとグルタミン酸からなる添加物もしくは核酸とグルタミンからなる添加物とを含有することを特徴とする家畜飼料用組成物。
- 前記家畜用飼料が代用乳、プレスターター飼料またはスターター飼料であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記核酸は飼料重量あたり0.01〜2.5重量%添加され、前記グルタミンおよび前記グルタミン酸はそれぞれ、飼料重量あたり0.05〜2.5重量%添加され、
前記グルタミンとグルタミン酸からなる添加物の添加量が飼料重量あたり0.1〜5重量%、または前記核酸とグルタミンからなる添加物の添加量が飼料重量あたり0.06〜5重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。 - 前記家畜が子豚であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
- 家畜の増体効率および飼料効率を増加させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の家畜飼料用組成物を家畜に投与することを特徴とする、家畜の増体効率および飼料効率を増加する方法。
- 該家畜飼料用組成物の投与期間が離乳期であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
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