JP4863338B2 - ウレタンローラの注型装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はウレタンローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、抵抗値や硬度等のローラ性能に局所的なバラツキがなく、電子写真装置や静電記録装置において各種ローラとして好適に使用することのできるウレタンローラを、効率的かつ低コストで製造することができるウレタンローラの注型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンター、ファクシミリ等の電子写真装置や静電気録装置等においては、電子写真プロセスにおける帯電、トナー層形成、現像、クリーニング、給紙、搬送等の各工程で、トナー供給ローラ、現像ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、搬送ローラ等の、弾性材料や樹脂材料からなるローラが多様な役割を果たしている。
【0003】
これらの各種ローラ部材において多く使用されているのが、ローラ軸の外周に、ウレタン材料を主成分とするウレタンフォーム層が形成されてなるウレタンローラである。かかる各種ローラ部材としてのウレタンローラにおいては、ウレタンフォーム層が均一な内部および表面構造を有しており、抵抗値や硬度等のローラ性能に局所的なバラツキがないことが要求される。
【0004】
一方、これら各種ローラ部材として用いるウレタンローラの製造方法としては、ローラ軸の表面にウレタンフォーム体を担持させ、このウレタンフォーム体の外面を加工して円筒状のローラ形状に成形する方法や、ウレタンフォーム層を金軸と一体で筒型内において発泡成形する方法(特開平9−274373号、特開平5−188774号公報等)等が提案されている。
【0005】
しかし、このうち前者の方法においては、ローラ表面に研磨等の後加工による毛羽立ち等が残るために表面性が悪化して、実機搭載時に不良や欠陥等を生ずる原因となったり、製造工程が煩雑になるために生産効率が低下してしまうなどの問題があった。また、後者の方法においても、型内で発泡を行うために形成されたウレタンフォーム層において密度の不均一が生じたり、未充填部やエアの巻き込みに起因する欠陥が発生するなどの問題があり、いずれにおいても高性能のウレタンローラを歩留良く製造できるものではなかった。
【0006】
これらの方法に対し、上記問題点を有しないウレタンローラの製造方法として、泡体をモールド内に圧入して微細セル構造を有するポリウレタンフォーム成形品を得る技術が提案されている(特許第2990616号公報)。これは、上述の水を発泡剤とする一般的な低圧発泡方法を用いた技術に対し、機械的撹拌により泡体を形成する技術(メカニカルフロス)を用いるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記技術によれば表面性やローラ性能に優れたウレタンローラを得ることはできるものの、撹拌により生成した泡体の最初と最後の部分については、完全に均一な泡体状態にはならず、従って性能的に問題が生じてしまうために、廃棄せざるを得なかった。即ち、低圧発泡方法の場合と同様に、産業廃棄物の発生を避けることができなかった。また、これらの技術はいずれも、連続的なローラ製造には適さないものであった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述の従来技術における問題点を解消して、表面性の悪化や密度の不均一、ローラ性能のバラツキ等の問題がなく、各種ローラ部材として好適に用いることのできるウレタンローラを、産業廃棄物を発生させずに、連続的に、かつ、歩留良く製造することができる、コスト性および生産性に優れたウレタンローラの注型装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のとおりである。
(1)ポリオール成分系の貯蔵タンクと、イソシアネート成分系の貯蔵タンクと、吐出ヘッドと、二基の前記貯蔵タンクから両成分系を独立に循環させて該吐出ヘッドに流入させる一対の油圧ピストンとを備え、かつ、前記吐出ヘッドが対向する両成分系の流入口を有するウレタンローラの注型装置において、前記油圧ピストンが、油圧回路の間にオイルバイパスを有することを特徴とするウレタンローラの注型装置である。
【0014】
(2)前記(1)の注型装置において、前記油圧ピストンが、イソシアネート成分系側において、ポリオール成分系側よりも小型化されている注型装置である。
【0015】
(3)前記(1)または(2)の注型装置において、前記吐出ヘッドの流入口に設置されたオリフィスが、イソシアネート成分系側において、ポリオール成分系側よりも小径化されている注型装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
本発明のウレタンローラの注型方法においては、ポリオール成分系とイソシアネート成分系とからなるウレタン材料を筒型内に注入することによりローラのウレタンフォーム層を形成するに際し、注入時に、両成分系を高圧下で衝突混合して高圧発泡させる。かかる高圧発泡を用いてローラのウレタンフォーム層を形成することにより、密度やローラ性能の不均一等の欠陥のない良質のウレタンローラを得ることができるとともに、従来の低圧発泡やメカニカルフロスの技術では避けられなかった廃棄材料の発生を防止することができ、優れたコスト性および生産性を実現することができる。
【0017】
本発明においては、上記高圧発泡によりローラのウレタンフォーム層を形成するものであればよく、他の諸条件は適宜定めることが可能である。ここで、本発明における高圧発泡とは、ウレタン材料としてのポリオール成分系とイソシアネート成分系とを、高圧下、好適には圧力50〜300kg/cm2、特には100〜200kg/cm2にて衝突混合させ、発泡させることをいう。
【0018】
かかる高圧発泡によるローラの注型に使用することのできる注型装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。図示する注型装置は、ポリオール成分系の貯蔵タンク2と、イソシアネート成分系の貯蔵タンク3と、吐出ヘッド1と、両成分系を夫々独立に循環させるための一対の油圧ピストン4a、4bとを備えている。かかる一対の油圧ピストン4a、4bにより高圧で循環される両成分系は、貯蔵タンク2、3と油圧ピストン4a、4bとを結ぶ循環流路7a、7bから、分岐部6a、6bを介して吐出流路8a、8bへと流通し、吐出ヘッド1に流入する。
【0019】
かかる吐出ヘッド1の例としては、図2(イ)、(ロ)に示すものを挙げることができ、(イ)はいわゆるストレート型ヘッド、(ロ)はL型ヘッドを示している。図示するように、吐出ヘッド1には、ポリオール成分系およびイソシアネート成分系の流入口9、10が、互いに対向する位置に設けられており、かかる流入口9、10から両成分系を流入させる際の圧力を上記所定の高圧範囲に調整することにより、両成分系を対向する方向から噴射して、衝突混合することで、本発明に係る高圧発泡を行うことができる。
【0020】
この場合に圧力50〜300kg/cm2が好適であるのは、圧力がこれよりも高圧であると吐出ヘッド1からの吐出液の供給量が多すぎて、ウレタンローラの注型には適さないためである。本発明の注型方法におけるウレタン材料の好適供給量は、1〜50g/sec、特には3〜10g/secであるが、従来の高圧発泡機の場合、供給量では200g/sec、圧力では100kg/cm2が下限であり、ローラの注型に使用できるものではなかった。本発明の装置においては、図1に示すように、油圧ピストン4a、4bが油圧回路の間にオイルバイパス5a、5bを有しているために、油圧ピストン4a、4bに供給されるオイルの量が減少してシリンダー速度が低下し、結果として装置内の流量と、それに伴い吐出ノズルからの供給量をも低減することができる。かかる供給量の少量化により、本発明の方法に好適に使用できる装置が実現できたものである。
【0021】
この場合、少ない流量でも各成分系を安定して循環させるために、配合比率の低いイソシアネート成分系側の油圧ピストン4bを、ポリオール成分系側の油圧ピストン4aよりも小型化することが好ましい。これにより、少量供給を安定的に行うことができる。
【0022】
また、吐出時において流量を安定化するために、吐出ヘッド1のイソシアネート成分系側の流入口10に設置するオリフィス(図示せず)として、ポリオール成分系側よりも小径化した、少量吐出に適した口径のものを用いることが好ましい。ポリオール成分系側と同じ大口径オリフィスのままで、ニードルにより流量を絞ることも可能であるが、これは非常に微妙な調整が必要であるうえに材料中の異物により隙間が詰まって流量が不安定になるなどの問題があるため、小口径オリフィスを用いることが好適である。この場合、更に、対応するイソシアネート成分系側の循環流路7bと吐出流路8bとの分岐部6bに、小径オリフィスに合った微細ストレーナーを設けることが好ましい。
【0023】
ウレタン材料として用いることのできるポリオール成分としては、特に制限はなく、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、THF−アルキレンオキサイド共重合体ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、フォスフェート系ポリオール、ハロゲン含有ポリオール等を好適に用いることができる。
【0024】
また、イソシアネート成分についても特に制限はなく、汎用であるTDI、MDI、粗製−MDI(ポリメリックMDI)、および変性MDIだけでなく、特殊なイソシアネートを用いても差し支えない。特殊なイソシアネートしては、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添−XDI、水添−MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフェスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらも好適に用いることができる。
【0025】
ウレタン材料としては、これらポリウレタン原料に加え、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物等)、界面活性剤、触媒等を添加することができ、これにより所望に応じた特性とすることができる。また、難焼剤や充填材、イオン導電剤や電子導電剤等の導電剤、公知の充填剤や架橋剤等を適宜使用することも可能である。イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。
【0026】
また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
実施例
図1に示す、ポリオール成分系の貯蔵タンク2と、イソシアネート成分系の貯蔵タンク3と、吐出ヘッド1と、一対の油圧ピストン4a、4bと、油圧ピストン4a、4bの油圧回路間に設けられたオイルバイパス5a、5bとを備えた注型装置を用いて、吐出ヘッド1内でウレタン材料を高圧発泡させて筒型内に注入することにより、ウレタンローラの注型を行った。吐出ヘッド1としては図2(イ)に示すストレート型のものを用い、吐出ヘッド1内における噴射圧力100kg/cm2、吐出ヘッド1からの供給量10g/secとした。筒型としては、中心線上に径6.0mmの芯金を貫設した内径20.0mm、長さ300mmの筒型を用いた。ウレタン材料のポリオール成分系およびイソシアネート成分系の配合内容は下記の表1に示す通りである。
【0028】
【表1】
Figure 0004863338
【0029】
得られたウレタンローラは、密度およびローラ性能が均一で、欠陥等もない良質なものであり、各種ローラ部材として好適に使用可能であった。また、吐出されたウレタン材料の最初と最後の部分についてもローラの注型に使用することができ、これにより得られたローラについても品質、性能的に問題はなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、表面性の悪化や密度の不均一、ローラ性能のバラツキ等の問題がなく、各種ローラ部材として好適に用いることのできるウレタンローラを、産業廃棄物を発生させずに、連続的に、かつ、歩留よく製造することができる、コスト性および生産性に優れたウレタンローラの注型装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の注型装置の一例を示す説明図である。
【図2】吐出ヘッドの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 吐出ヘッド
2 ポリオール成分系の貯蔵タンク
3 イソシアネート成分系の貯蔵タンク
4a、4b 油圧ピストン
5a、5b オイルバイパス
6a、6b 分岐部
7a、7b 循環流路
8a、8b 吐出流路
9、10 流入口

Claims (3)

  1. ポリオール成分系の貯蔵タンクと、イソシアネート成分系の貯蔵タンクと、吐出ヘッドと、二基の前記貯蔵タンクから両成分系を独立に循環させて該吐出ヘッドに流入させる一対の油圧ピストンとを備え、かつ、前記吐出ヘッドが対向する両成分系の流入口を有するウレタンローラの注型装置において、
    前記油圧ピストンが、油圧回路の間にオイルバイパスを有することを特徴とするウレタンローラの注型装置。
  2. 前記油圧ピストンが、イソシアネート成分系側において、ポリオール成分系側よりも小型化されている請求項記載の注型装置。
  3. 前記吐出ヘッドの流入口に設置されたオリフィスが、イソシアネート成分系側において、ポリオール成分系側よりも小径化されている請求項1または2記載の注型装置。
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