JP4860844B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波診断装置に関し、特に超音波探触子(プローブ)の表面温度管理に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
超音波診断装置においては、超音波探触子の送受面(通常、音響レンズ表面)が生体表面に当接され、その状態で超音波が送受波される。超音波探触子の内部には、電気音響変換素子としての超音波振動子が設けられ、その超音波振動子によって超音波の送波及び受波がなされる。超音波振動子は、単振動子及びアレイ振動子などによって構成される。
【0003】
超音波振動子には、送信パルスが送信繰り返し周期ごとに間欠的に供給され、超音波振動子において電気的な送信パルスが超音波パルスに変換される。その場合の変換効率は例えば10〜20%程度であり、変換によるエネルギー損失は熱エネルギーとなる。つまり、超音波パルスの送信を継続的に行うと、超音波振動子が発熱し、それを収容している超音波探触子自体も発熱する。
【0004】
法令、業界規格などによって、安全性の観点から、生体表面に当接される超音波探触子の温度(送受波面の温度)の上限が定められており、このため超音波の送受波に当たっては、送受波面の温度がその上限を越えない範囲で送信制御がなされる。具体的には、超音波探触子の温度が上限に到達した場合には、送信電力(送信電圧)を強制的に下げる、送信を停止させる、といった制御である。
【0005】
上記の送信制御に当たっては、超音波探触子の送受波面に直接的に温度センサを設けるのが理想的であるが、そのような構成の場合には、どうしても温度センサが超音波の伝搬上の障害となる。これに対し、温度センサを送受波面以外の例えば超音波探触子の側面に設け、そこでの検出温度をもって送受波面の温度とみなすと、実際の送受波面の温度に対して誤差が生じやすい。ちなみに、そのような温度センサを設けることなく、送信条件(送信電圧、送信パルスの幅、送信繰り返し周期、送信開始からの経過時間など)から、温度推定式によって、送受波面の温度を推定することも可能である。しかし、その場合には、装置ごとに一律不変の温度推定式が利用されるため、超音波振動子の特性のバラツキ、超音波振動子の経年変化(変換効率の低下)、といった諸条件を十分に加味できず、結果として、満足のいく温度推定精度を確保できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、超音波探触子における送受波面(生体接触面)に直接的に温度センサを設けることなく、送受波面の実際の温度を高精度に推定し、これによって最適な送信制御を実現できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超音波診断装置は、送受波面が生体に当接され、超音波の送受波を行う超音波探触子と、前記超音波探触子における温度参照位置に設けられ、参照位置温度を検出する参照位置温度センサと、前記参照位置温度センサによって検出された前記参照位置温度及び送信条件を構成する送信条件値に基づいて、実測方式及び推定方式の組み合わせにより前記超音波探触子の送受波面の温度を推定温度として推定する温度推定手段と、前記推定温度に基づいて送信制限を実行する温度制御手段と、を含む。望ましくは、前記送信条件値には送信電圧及び送信繰り返し周期が含まれる。望ましくは、超音波診断装置が、前記超音波探触子が前記生体に当接していない状態において前記送受波面の実温度を検出する実温度センサを含む。望ましくは、超音波診断装置が、前記推定された推定温度と前記検出された実温度とを比較して推定エラーを判定する推定エラー判定手段を含む。望ましくは、超音波診断装置が、前記推定された推定温度と前記検出された参照位置温度とを比較して検出エラーを判定する検出エラー判定手段を含む。
【0008】
上記構成によれば、超音波探触子における温度参照位置(送受波面とは異なるリファレンス計測位置)に温度センサが設けられ、それによる検出温度(リファレンス温度)を利用して、例えば、送信条件を加味した温度推定式を利用することによって、送受波面の実際の温度を高精度に推定することが可能となる。上記構成は、実測方式と推定方式の組み合わせとして位置づけられる。推定された送受波面の温度が温度上限に到達した場合あるいは温度上限に近づいた場合には、送信パワーダウンなどの従来同様の送信制御がなされ、これによって、送受波面の温度が上限以下に維持される。本発明によれば、従来装置において、温度推定誤差に起因する過剰な送信パワー制限を回避でき、また信頼性ある温度管理を実現できる。
【0009】
なお、望ましくは、更に、超音波探触子において超音波の送受波を行っている状態において当該超音波探触子の送受波面に接触してその送受波面の実温度を検出する実温度センサを設け、その送受波面の実温度を利用して、超音波診断の合間などに、温度検出や温度推定が正常であることを確認するようにしてもよい。その場合には、送受波面の実温度と温度参照位置の参照温度とを比較して温度検出エラーを判定する手段や、送受波面の実温度と推定温度とを比較して推定エラーを判定する手段などが設けられ、そのような手段を併設することによって、装置の信頼性及び安全性をより一層向上できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の全体構成がブロック図として示されている。
【0012】
図1において、超音波診断装置は、大別して、装置本体12と、超音波探触子10と、操作パネル14と、表示装置16とによって構成される。超音波探触子10はケーブル18によって装置本体12に接続されている。具体的には、超音波探触子10の一端側から引き出されたケーブルの端部にはコネクタ20Aが設けられ、そのコネクタ20Aは、装置本体12に設けられたコネクタ20Bに連結される。ケーブル18は複数の信号線からなる多芯ケーブルであって、そのケーブル18内には本実施形態において後述する温度センサ30から引き出された信号線が含まれる。なお、その温度センサ30からの信号線については、ケーブル18内に含ませず、別途、超音波探触子10から装置本体12へ引き回すようにしてもよい。超音波探触子10内には、複数の振動素子からなるアレイ振動子22が設けられている。このアレイ振動子22は超音波の送受波を行うものであり、このアレイ振動子22によって超音波ビームが形成される。アレイ振動子22の背面側にはバッキング層24が設けられ、アレイ振動子22の生体側には整合層26及び音響レンズ30が設けられている。音響レンズ30の表面は送受波面29Aを構成し、その送受波面29Aは生体表面100に当接される。
【0013】
したがって、生体表面100に対しては、送受波面29Aを介してアレイ振動子22にて発生した熱が伝達され、すなわち、送受波面29Aの温度管理が重要となる。このため、本実施形態においては、超音波探触子10のケース内の所定位置(送受波面とは異なるがその近傍であるのが望ましい)温度センサ30が埋設されており、送受波面29Aの温度が間接的に検出されている。具体的には、温度センサ30が設けられた位置(温度参照位置)における温度が検出され、その温度を示す信号が装置本体12へ送られている。
【0014】
装置本体12において、送信部32は、アレイ振動子を構成する複数の振動素子に対して送信信号を供給し、これによって送信ビームを形成する送信ビームフォーマーとして機能するものである。受信部36は、アレイ振動子を構成する複数の振動素子から出力された受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって受信ビームを電子的に形成する受信ビームフォーマーとして機能する。
【0015】
受信部36から出力される整相加算後の受信信号は、画像形成部40に入力され、この画像形成部40において、受信信号に基づいて、超音波画像、例えばBモード画像などが形成され、その画像データが表示処理部42に送られた後、必要な処理を経て、当該画像データが表示装置16へ出力される。表示装置16上においては、超音波画像が表示される。ちなみに、表示処理部42は例えばデジタルスキャンコンバータ(DSC)などからなるものである。
【0016】
制御部34は、送信部32及び受信部36の動作制御を行っている。特に、制御部34は送信部32における送信条件、具体的には、送信パワー(送信電圧)、送信周波数、送信繰り返し周期、送信パルス幅、送信時間、などの条件設定を行っている。それらの送信条件データ200は、別途、温度推定部38にも出力されている。
【0017】
温度推定部38は、上記の送受波面29Aの温度Tを推定する演算部であって、その温度推定に当たっては、温度センサ30によって検出された参照温度T’がパラメータとして利用される。具体的には、温度推定部38は、温度推定関数を有し、その温度推定関数内における1つのパラメータとして参照温度T’が含まれている。ここで、温度推定関数は、例えば、T=f(a,b,c・・・,T’)と表すことができ、ここにおいて、a,b,c・・・はそれぞれ送信条件データ200を構成する各条件値に相当している。
【0018】
すなわち、温度推定部38は、従来の推定方式と同様に、送信条件に従って温度推定演算式を用いて送受波面の温度を推定するが、その際において、補正パラメータとして、実測された参照温度T’が利用されており、すなわち温度推定と温度実測との組み合わせをもって、より確からしい送受波面29Aの温度(推定温度)Tが推定されている。
【0019】
制御部34は、後に図2を用いて説明するように、その推定温度Tが温度上限αを超えた場合に、送信部32に与える送信条件を調整し、具体的には送信パワーダウンになるように送信条件を修正する。このようなフィードバック制御によって、送受波面29Aの温度は常に温度上限α以下に維持され、その範囲内において超音波の送受波が継続的に実行されることになる。
【0020】
操作パネル14は、制御部34に対して各種のユーザー設定を行うための入力手段である。また、表示装置16は超音波画像が表示されるディスプレイとして構成されるものである。装置本体12には、プローブホルダ50が設けられ(図1においてはそのプローブホルダ50が概念的に示されている)、そのプローブホルダ50内には、超音波探触子10を生体表面100に当接していない非超音波診断時において超音波探触子10が収容保持される。本実施形態の変形例としては、そのプローブホルダ50内に温度センサ52が設けられ、その温度センサ52によって、超音波の送受波を継続的に行っている超音波探触子について、その送受波面29Aの実際の温度(実温度)Taが実測される。
【0021】
図2には、図1に示した制御部34の送信制限制御がフローチャートとして示されている。まず、S101において、超音波探触子10において超音波の送受波が開始されると、S102では、その超音波の送受波を終了させるか否かが判断され、超音波の送受波が継続される場合には、S103において温度センサ30によって参照温度T’が検出され、S104では、温度推定部38において、各種の送信条件及び参照温度T’に基づいて、送受波面29Aについての温度(推定温度)Tが求められる。S105では、その推定温度Tが温度上限α以上であるか否かが判断され、推定温度Tが温度上限α以上である場合には、S106において送信条件が修正され、すなわち送信パワーがダウンされる。これによって、超音波探触子に供給されるエネルギーが削減されるため、そこで生ずる発熱量も削減されることになる。
【0022】
よって、以上の実施形態によれば、単なる温度推定や単なる間接的な温度検出に比べてより高精度に送受波面29Aの温度を推定することができ、それに基づいて、的確な送信制御を行って、超音波診断装置の動作信頼性及び安全性を高めることができる。
【0023】
次に、図3及び図4を用いて上記実施形態の変形例について説明する。
【0024】
図3には、図1に示した装置本体に設けられるプローブホルダ50の概念が示されている。プローブホルダ50は、上述したように超音波探触子10を受け入れる凹部を有し、その底面50Aには、温度センサ52が設けられている。この温度センサ52は、収容された超音波探触子10の送受波面29Aに接触し、その表面温度(実温度)Taを直接的に検出するためのものである。超音波探触子10がプローブホルダ50に収容されている状態においても、通常は超音波の送受波が繰り返し実行されており、すなわち発熱の継続状態にある。よって、例えば超音波診断の合間に超音波探触子10がプローブホルダ50内に収容された時点で、送受波面29Aの実際の温度Taを検出することができる。
【0025】
図1に示すように、その検出された実温度Taは温度推定部38に送られ、温度推定部38は以下に詳述するようなエラー判定を実行する。
【0026】
図4には、温度推定部38の構成例が示されている。推定演算部60は、上述した温度推定関数に従って、参照温度T’から推定温度Tを求める回路である。減算器62は、参照温度T’から実温度Taを減算し、その差分値であるΔT1を出力する。絶対値演算器66では、その差分値ΔT1の絶対値が演算され、その演算結果が検出エラー判定器70において、所定の判定値K1と比較される。差分値ΔT1の絶対値が判定値K1よりも大きくなった場合には、例えば温度センサ30についての動作不良などが考えられるため、検出エラーと判定される。
【0027】
一方、減算器64においては、実温度Taから推定温度Tが減算され、その差分値がΔT2が出力される。絶対値演算器68では、その差分値ΔT2の絶対値が演算され、その演算結果が推定エラー判定器72において所定の判定値K2と比較される。ここで、差分値ΔT2の絶対値が判定値K2よりも大きい場合には、温度推定部38における温度推定演算などに誤差が大きいものと判断されるため、推定エラーと判定される。
【0028】
上記の検出エラーや推定エラーが判断された場合、制御部34によって、必要に応じて表示装置60にエラー表示がなされ、あるいは所定のエラー信号が出力される。
【0029】
以上の変形例によれば、温度センサ30や温度推定に関し、常にその動作の適正さを監視することができ、何らかの異常が生じた場合にはエラー判定を行って、それをユーザーに報知することができるので、超音波診断装置の動作信頼性や安全性をより一層高めることができるという利点がある。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、超音波探触子の温度管理をより適正に行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】 温度管理を行う場合の動作を示すフローチャートである。
【図3】 変形例の構成を示す図である。
【図4】 変形例の信号処理内容を示す図である。
【符号の説明】
10 超音波探触子、12 装置本体、14 操作パネル、16 表示装置、18 ケーブル、22 アレイ振動子、30 温度センサ、34 制御部、38温度推定部。
Claims (5)
- 送受波面が生体に当接され、超音波の送受波を行う超音波探触子と、
前記超音波探触子における温度参照位置に設けられ、参照位置温度を検出する参照位置温度センサと、
前記参照位置温度センサによって検出された前記参照位置温度及び送信条件を構成する送信条件値に基づいて、実測方式及び推定方式の組み合わせにより前記超音波探触子の送受波面の温度を推定温度として推定する温度推定手段と、
前記推定温度に基づいて送信制限を実行する温度制御手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記送信条件値には送信電圧及び送信繰り返し周期が含まれる、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記超音波探触子が前記生体に当接していない状態において前記送受波面の実温度を検出する実温度センサを含む、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項3記載の装置において、
前記推定された推定温度と前記検出された実温度とを比較して推定エラーを判定する推定エラー判定手段を含む、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項3又は4記載の装置において、
前記推定された推定温度と前記検出された参照位置温度とを比較して検出エラーを判定する検出エラー判定手段を含む、ことを特徴とする超音波診断装置。
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