JP4855502B2 - 装飾パネル - Google Patents
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本発明は、装飾パネルに関する。
多様な装飾を施したパネルが各種製品などに用いられている。下記特許文献1には、ドット(網点)印刷の手法でパネルに図柄を印刷する技術が提案されている。
パネルに対する装飾としてグラデーション(色、明度あるいは濃度の漸次的あるいは連続的変化)がある。グラデーションをドット印刷によって実現する場合には、暗い領域(明度の低い領域、濃度が高い領域)ではドットを大きくし、明るい領域(明度の高い領域、濃度が低い領域)ではドットを小さくして、ドットが大きい領域から小さい領域へと連続的に変化するようにドットの大きさを調節して印刷する。
しかしドットを用いる場合、ドット自体が視認されてしまうと見る者にグラデーションの印象をうまく与えられない可能性がある。さらにドットの大きさを急激に変化させることには限界があり、そのためドット印刷でグラデーションを形成するときには、明るい部分と暗い部分との間の距離(後述の図1、2におけるL)をあまり小さくできない。したがって明暗の間隔が狭いグラデーションを実現することはドット印刷には適さないとの問題点もある。しかし今日において、パネルにグラデーションを施す場合ドット印刷以外の方法の提案はない。
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、ドット印刷の手法を用いることなく、パネル面にグラデーションが視認でき、そのグラデーションは明暗の間隔が狭いものも可能な装飾パネルを提供することにある。
上記課題を達成するために、本発明に係る装飾パネルは、板形状を有し、一方の主表面が平坦でその主表面の裏面が凹凸形状を有するように板厚が滑らかに徐変し、有色透明の樹脂により形成されて、板厚の変化につれて透光率も滑らかに徐変する基材と、その基材の前記裏面と同じ凹凸形状を有する湾曲した板形状で、板厚は均一であり一方の表面に印刷を施されて前記基材の裏面と密着して接合され、前記基材の透過率の徐変により前記印刷を施された面が前記基材の平坦な主表面側からグラデーションとして視認されるシートと、を備えたことを特徴とする。
これにより本発明の装飾パネルでは、基材の一方の主表面が平坦で、その裏面が凹凸形状で、その裏面に印刷を施されたシートが接合されることにより、光の透過率の徐変によって印刷面がグラデーションとして視認される。したがって凹凸形状を狭い間隔で形成すれば狭い間隔のグラデーションも容易に実現できる。そしてドット印刷の手法も用いていないので、見る者がドットを視認して滑らかなグラデーション効果の妨げとなることもない。
また前記シートはインサート成形によって前記基材の裏面に接合されたとしてもよい。
これにより例えば基材の裏面に直接印刷施す場合のように印刷不要な部分にマスキングを行うなどといった手間が省ける。よって余分な製造工程やコスト増加を回避して、グラデーション視覚効果を有する装飾パネルを製造できる。
また前記シートの主表面の印刷は、遮光性を有するインクが均一に印刷されているとしてもよい。
これにより遮光性を有するインクを均一に印刷するとの簡易な作業を施したシートを基材の裏面に接合するのみで、印刷自体にはグラデーションを施すことなくグラデーション視覚効果を有する装飾パネルを製造できる。
また前記基材の前記裏面の凹凸形状は、周期的な波形状であり、その波頭を連結する領域、及び波底を連結する領域が、前記基材の平坦な主表面側からグラデーションによる縞模様として視認されるとしてもよい。
これにより基材の裏面を周期的な波形状に形成することにより簡易に縞模様のグラデーションの視覚効果を有する装飾パネルを実現できる。上述のとおり波形状を狭い間隔で形成すれば縞模様における明暗の間隔を狭くすることが可能である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る装飾パネルを示す図である。図1(a)が装飾パネルの表面側から見た斜視図、図1(b)が裏面側から見た斜視図である。図2は図1(a)のX−X断面図である。
これらの図に示されているように、装飾パネル1(パネル)は基材2とシート3(あるいはフィルム)とを備える。基材2は、板部20と側面部23、24を備える。板部20は、板厚が変化する長方形あるいは正方形の板形状であり、主表面21(表面)は平坦で、その裏面22は凹凸形状を有する(主表面は周知のとおり立体の表面のうちで面積の最も大きい面を指す)。板部20の板厚は滑らかに(連続的に)変化(徐変)する。
図1の例では凹凸形状は波形状であり、その波頭(波形の最高点)を連結する領域と波底(波形の最低点)を連結する領域とは側面部23と平行な領域を交互に形成する。そして隣り合う波頭間の距離と、隣り合う波底間の距離とがともにLとなるように規則的に波形状は形成されている。このように板厚が滑らかに変化する(徐変する)ことにより、基材2の位置ごとに光の透過率もまた徐変する。
側面部23、24は、板部20の周縁部において主表面21と直交するように折り返されて形成されている。側面部24には貫通孔24aが複数個形成されて、パネル1の各種製品などへの固定のために用いられる。基材2の材質は有色透明の樹脂とすればよい。樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)等アクリル樹脂とすればよい。基材2は射出成形で製造する。製造手順は後述する。
シート3は、板部30と折り返し部31とを有する。板部30は、板部20の裏面22と同じ波形状を有し、ただし板厚は一定な湾曲した板部材とする。折り返し部31は、板部30の側面部23と接する端部から、側面部23に平行となるように折り返して形成される。板部30の厚さは例えば0.15mmから0.188mmの範囲内とすればよい。シート3には均一な印刷が施してあるとする。シート3は例えば透明樹脂製フィルムとし、その材質は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネード(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とすればよい。
完成品のパネル1においては、基材2の裏面22にシート3が、また側面部23に折り返し部31が隙間無く密着して接合された状態となる。上述の通り基材2は凹凸形状により光の透過率が位置に対して徐変する(連続的に変化する)。これにより表面21の側から見たときに、基材2のうち板厚が厚い部分ではシート3の印刷面が相対的に暗く見え、板厚が薄い部分ではシート3の印刷面が相対的に明るく見えることとなる。そしてその間の領域では明るさが連続的に変化する。したがって見る者は、パネル1の表面21にグラデーションを認識する。図1のパネル1では、基材2の波頭部と波底部とに対向するシート3の領域がグラデーションによる平行な縞模様として視認されることとなる。
特に基材2を有色としているので、凹凸形状やシート3等の存在などを見る者に視認させにくくし、表面21のグラデーションのみを印象付けることができる。基材2の色は青色、赤色、緑色、黄色、黒色等任意に決めればよい。パネル1は、洗濯機、エアコン(空調機)、空気清浄機などの各種家電製品の筐体の一部や自動車のパネル部分等に使用できる。
次にパネル1の製造方法を説明する。パネル1は上述の様に射出成形で製造される。図3は射出成形時に使用される型を示している。図4は射出成形時に使用されるシート3を示している。
図3に示された型4は、上側に配置される型4a、下側に配置される型4bからなる。図3は型4aが型4b上に降ろされた状態を示している。この状態で、型4a、型4b間には空隙5が形成される。型4bにはシート3と同じ波形状が形成されており、この部分にシート3が隙間無くセットされる。
セットされるシート3は図4のとおり、一方の折り返し部31の一端から延長部32が形成されている。延長部32には孔部33が形成されており、この孔部33に型4bに形成されたピン41が挿入されて、シート3の位置決めがなされる。
空隙5には、基材2が形成される空間から連続してゲート部40が形成される。ゲート部40はシート3の延長部32の図示上方に形成された空隙空間である。ゲート部40に連結して射出口6が配置されている。この射出口6からゲート部40内さらには空隙5内へ加熱溶融された樹脂が注入されることにより、シート3(あるいはフィルム)が成形品にとって裏側にインサートされた(フィルム裏)インサート成形が実行される。そして注入された樹脂が冷却固化することで、シート3と一体に接合された基材2が形成される。
図5はパネル1のより詳細な製造手順を示すフローチャートである。この工程ではまず手順S10で、最終的にシート3となる透明樹脂フィルムの一方の表面に印刷を施す。印刷方法はシルク印刷、スクリーン印刷あるいはオフセット印刷でよい。インクはメタル調(金属調)で遮光性のあるインクとして、これを均一に印刷すればグラデーション効果にとって好適である。インクは例えばウレタン系の2液硬化インクとすればよい。
次にS20で、S10で印刷されたインクの上からさらにバインダーを印刷する。これは後述のS70の射出成形時に注入される樹脂とシート3との間を接着する役割を果す。次にS30でシート3に位置決め穴(孔部33)を貫通形成する。次にS40で、S10からS30の処理が実行された透明樹脂フィルムに対して、図4に示されたシート3が得られる形状に例えばトムソン刃で型抜きを実行する。
次にS50で、S40で得たシート3にフォーミングを実行して図4の形状にする。フォーミングは例えばプレス絞り加工でもよく、真空成形や圧空成形でもよい。プレス絞り加工では、樹脂フィルムを予め摂氏130度から190度位に加熱し、これを絞り型を用いてプレスして成形する。真空成形では、樹脂フィルムを加熱し、型の凹部に蓋をするように配置して、凹部から空気を吸引して真空の力でフィルムを引張って凹部の内壁に密着させることにより成形する。圧空成形では、真空成形が真空で引張るのみであるところを、真空で引張ることと空気で押すこととを同時に実行してフィルムを成形する。
次にS60で、S70で得たシート3を型4bに上述のようにセットする。そしてS70で上述のように射出成形を実行する。射出する樹脂には着色剤(顔料)を練り込んでおいて、最終的なパネル1の基材2が有色透明となるようにする。そしてS80で延長部32とそこに接合した樹脂(さらには完成品のパネル1では不要となる部分)を切除する。以上がパネル1の製造手順である。
上記実施例のパネル1において、例えばシート3を用いずに、基材2の裏面22に印刷するように変形することは可能である。しかしその場合、印刷不要な部分にマスキングを施すなどの余分な工程が必要となり、作業効率の悪化やコスト増加につながる。それに対して上記パネル1ではシート3を用いているので、そのような不具合が発生しない。
また上記実施例において、折り返し部31が型4bを挟持するように配置され、さらに孔部33にピン41が挿入されることによって、射出成形時のシート3の位置は確実に固定される。さらに射出成形の際のシート3は延長部32を有することにより、射出成形時に注入された樹脂の影響でシート3の巻き上がりが発生してもゲート部40内で収められる。したがって完成時のパネル1のシート3における外側へ露出した面(図2における図示下側の面)に樹脂が付着する不具合の発生が抑制される。
上記実施例ではシート3に均一な印刷を施したが、シート3に文字、図柄、模様等を印刷してもよい。この場合グラデーション効果に文字、図柄、模様等を組み合わせて、より一層優れた視覚的効果を有するパネルが実現できる。また図1の基材2及びシート3では凹凸形状の波頭部、波底部が平行な直線を形成しているが、波頭部、波底部が他の幾何学形状、例えば曲線、円、楕円、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)、星型あるいはこれらの組合せを形成するようにしてもよい。その場合多彩な装飾性が実現できる。
1 装飾パネル
2 基材
3 シート
4 型
5 空隙
6 射出口
31 折り返し部
32 延長部
2 基材
3 シート
4 型
5 空隙
6 射出口
31 折り返し部
32 延長部
Claims (4)
- 板形状を有し、一方の主表面が平坦でその主表面の裏面が凹凸形状を有するように板厚が滑らかに徐変し、有色透明の樹脂により形成されて、板厚の変化につれて透光率も滑らかに徐変する基材と、
その基材の前記裏面と同じ凹凸形状を有する湾曲した板形状で、板厚は均一であり、一方の表面に印刷を施されて前記基材の裏面と密着して接合され、前記基材の透過率の徐変により前記印刷を施された面が前記基材の平坦な主表面側からグラデーションとして視認されるシートと、
を備えたことを特徴とする装飾パネル。 - 前記シートはインサート成形によって前記基材の裏面に接合された請求項1に記載の装飾パネル。
- 前記シートの主表面の印刷は、遮光性を有するインクが均一に印刷されている請求項1又は2に記載の装飾パネル。
- 前記基材の前記裏面の凹凸形状は、周期的な波形状であり、
その波頭を連結する領域、及び波底を連結する領域が、前記基材の平坦な主表面側からグラデーションによる縞模様として視認される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装飾パネル。
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