JP4854782B2 - 投写型画像表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は投写型画像表示装置に関し、特にシンチレーション低減機能を備えた投写型画像表示装置に関するものである。
背面投写型テレビ等の投写型画像表示装置では、光源としてランプやレーザ発振器が用いられる。レーザ発振器を光源とした用いた場合には、明るい室内でも鮮明な画像を表示できる程度にまで投写型画像表示装置の高輝度化を図ることも比較的容易である。ただし、光源としてレーザ発振器を用いた場合には、ランプを光源に用いた場合に比べてスペックルパターンによる画面のぎらつき現象、いわゆるシンチレーションが顕著になる。
上記のシンチレーションを低減する従来の手法として、スクリーンを該スクリーンの画像表示面の垂直方向、スクリーンの長手方向、およびスクリーンの幅方向のいずれかの方向に振動させるか、またはスクリーン面に至るレーザ光を光軸に対して直角方向に振動させるものがある(特許文献1参照)。スクリーンは、バイモルフやモータ等を用いた加振装置により上記の方向に振動され、レーザ光は、加振装置に取り付けられた振動鏡によって該レーザ光をスクリーン側に反射させたり、加振装置に取り付けられた偏向装置によって該レーザ光をスクリーンの手前で偏向させたりすることにより、あるいはレーザ光源自体を振動させることにより、上記の方向に振動される。
特開昭55−65940号公報
しかしながら、スクリーンを該スクリーンの画像表示面に対して垂直方向(法線方向)に振動させると、画像に揺れが生じたり解像度が低下したりする結果として画質が低下する。また、スクリーンを該スクリーンの長手方向や幅方向に振動させた場合には、原点からの変位量が最大になって振動の向きが変わるときにスクリーンが一旦止まるため、このときに強いシンチレーションが発生する。スクリーン面に至るレーザ光を光軸に対して直角方向に振動させた場合も同様である。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、画質の低下をまねくことなくシンチレーションの発生を抑え易い投写型画像表示装置を得ることを目的とする。
上述の課題を解決し、目的を達成する本発明の投写型画像表示装置は、画像信号に応じて光を出射する光学エンジンと、光学エンジンから入射した光をフレネルレンズにより略平行な光にした後に拡散部材により拡散光にして出射させるスクリーンと、フレネルレンズまたは拡散部材を被駆動部材として該被駆動部材をスクリーンに平行な面内で変位させるスクリーン駆動部と、光学エンジン、スクリーン、およびスクリーン駆動部を収容する筐体とを備え、スクリーン駆動部は、筐体に支持されて被駆動部材をスクリーンに平行な面内で移動可能に保持する弾性保持ユニットと、弾性保持ユニットに互いに交差する方向の駆動力を付与することができる一対の駆動源と、一対の駆動源の各々に接続されて該一対の駆動源の各々を互いに所定の位相差をもった駆動波形で駆動させる制御回路とを有し、弾性保持ユニットは、平板状の第1および第2の変形部が直交して形成されるL字状の弾性部材であって、該弾性部材の一端は筐体に、他端が被駆動部材に結合されて構成され、画像の投写時に一対の駆動源から弾性保持ユニットに駆動力を付与して、被駆動部材をスクリーンに平行な面内で常に停止することのない連続運動をさせることを特徴とする。
本発明の投写型画像表示装置では、被駆動部材を保持した弾性保持ユニットに一対の駆動源から駆動力を付与することで、画像の投写時に被駆動部材をスクリーンに平行な面内で連続運動させるので、上記の光学エンジンがレーザ発振器を光源として用いたものであっても、シンチレーションの発生を抑えることができる。また、スクリーンを該スクリーンの画像表示面の法線方向に振動させる必要がないので、画像の揺れや解像度の低下に起因する画質の低下も起こり難い。したがって、本発明によれば画質の低下をまねくことなくシンチレーションの発生を抑えることが容易になる結果として、高輝度で画質が良好な投写型画像表示装置を提供することが容易になる。
図1は、この発明の投写型画像表示装置の一例を概略的に示す一部切欠き断面図である。 図2は、図1に示した投写型画像表示装置の内部構造を概略的に示す断面図である。 図3は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてスクリーン駆動部を構成している弾性保持ユニットでのフレネルフレームの断面形状の一例を示す概略図である。 図4は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてスクリーン駆動部を構成している弾性保持ユニットでの弾性支持部材の一例を概略的に示す斜視図である。 図5は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてスクリーン駆動部を構成している駆動源の一例を概略的に示す分解斜視図である。 図6は、図5に示した駆動源の動作原理を示す概念図である。 図7は、図1および図2に示した投写型画像表示装置における一対の駆動源それぞれの駆動波形の一例を示す概略図である。 図8は、図7に示した駆動波形で各駆動源を駆動させたときの位相角とフレネルレンズの重心に働く力との関係の一例を示す概念図である。 図9は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてフレネルレンズに働く力と投写型画像表示装置内でのフレネルレンズの位置との関係の一例を示す概略図である。 図10は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてフレネルレンズに働く力と投写型画像表示装置内でのフレネルレンズの位置との関係の他の例を示す概略図である。 図11は、図1および図2に示した投写型画像表示装置においてフレネルレンズに働く力と投写型画像表示装置内でのフレネルレンズの位置との関係の更に他の例を示す概略図である。 図12は、この発明の投写型画像表示装置における各駆動源の駆動波形の他の例を示す概略図である。 図13は、図12に示した駆動波形で各駆動源が動作される投写型画像表示装置での位相角と被駆動部材の重心に働く力との関係の一例を示す概念図である。 図14は、図12に示した駆動波形で各駆動源が動作される投写型画像表示装置での位相角と被駆動部材の重心に働く力との関係の他の例を示す概念図である。 図15は、この発明の投写型画像表示装置の他の例を概略的に示す正面図である。
以下、本発明の投写型画像表示装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、この発明の投写型画像表示装置の一例を概略的に示す一部切欠き断面図であり、図2は、図1に示した投写型画像表示装置の内部構造を概略的に示す断面図である。これらの図に示す投写型画像表示装置80は、光学エンジン10と、スクリーン20と、スクリーン駆動部60と、これらを収容する筐体70とを備えており、画像信号に応じて光学エンジン10から出射された光をスクリーン20の背面側から該スクリーン20に投写して画像表示を行う。
図1に示すように、上記の光学エンジン10は、レーザ発振器を含んだレーザモジュール11と、レーザモジュール11から出射したレーザ光LBの光路を制御するリレーレンズ13と、レーザ光LBを画像信号に応じて空間変調して映像光ILを形成する空間変調素子15と、空間変調素子15で形成された映像光ILを拡大してスクリーン20に投写する投写光学系17とを有している。上記の空間変調素子15としては、例えば、整列配置された多数の微小ミラーを有し、各微小ミラーの角度を画像信号に応じて調整することによりレーザ光LBを空間変調するマイクロミラーデバイスが用いられる。図1においては、便宜上、投写光学系17を1つのレンズで代表して描いてある。また、同図中の一点鎖線OA1,OA2はそれぞれ光軸を表している。
スクリーン20は、投写光学系17側に配置されて光学エンジン10からの映像光ILが入射するフレネルレンズ23と、該フレネルレンズ23よりも観察者側に配置されてフレネルレンズ23から出射した光が入射する拡散部材25とを有している。フレネルレンズ23は、後述する弾性保持ユニット30により保持されて、光学エンジン10から入射した映像光ILを略平行な光にして出射させる。拡散部材25は、例えばレンチキュラーレンズシート、散乱層、遮光層等により構成され、筐体70に形成された溝状の拡散部材保持部73に固着されて、フレネルレンズ23で略平行な光となって入射した映像光ILを拡散光にして出射させる。光学エンジン10から出射した映像光ILを最終的に拡散部材25で拡散光にして出射させることで、スクリーン20での画像の視野角が拡がる。
スクリーン駆動部60は、図1または図2に示すように、フレネルレンズ23を保持した弾性保持ユニット30と、一対の駆動源40A,40Bと、制御回路部55とを有しており、光学エンジン10から画像が投写されるときに制御回路部55からの駆動信号に応じて各駆動源40A,40Bが弾性保持ユニット30に所定の駆動力を付与することで、フレネルレンズ23をスクリーン20に平行な面内で連続運動させる。ここで、本発明でいう「連続運動」とは、例えば円運動のように運動方向が変化するときでも速度が0よりも大きい運動を意味する。
上記のスクリーン駆動部60を構成する弾性保持ユニット30は、フレネルレンズ23を保持するフレネルフレーム31と、フレネルフレーム31を筐体70に取り付ける4つの弾性支持部材35a〜35dとを備えている。フレネルフレーム31は、図2に示すように、上框31a、下框31b、左框31c、および右框31dを有しており、上框31aおよび下框31bそれぞれの長手方向両端部には、弾性支持部材35a〜35dを固定するための固定部33が設けられている。
上框31aでの長手方向の一端側に設けられた固定部33に弾性支持部材35aの一端が固定されており、他端側に設けられた固定部33に弾性支持部材35bの一端が固定されている。また、下框31bでの長手方向の一端側に設けられた固定部33に弾性支持部材35cの一端が固定されており、他端側に設けられた固定部33に弾性支持部材35dの一端が固定されている。個々の弾性支持部材35a〜35dでの筐体70側の端部は、1つの弾性支持部材に1つずつ対応して筐体70の内面に設けられた取付け部75に固定されている。
各弾性支持部材35a〜35dは、スクリーン20の左右軸(以下「X軸」という)および上下軸(以下「Y軸」という)を対称軸として軸対称に、かつX軸方向およびY軸方向のいずれにおいてもバネ定数が同じ値となるように設置されている。弾性保持ユニット30は、これら4つの弾性支持部材35a〜35bにより筐体70に取り付けられて、該筐体70に支持されている。なお、図2には上記のX軸とY軸を併記してある。
スクリーン駆動部60における一対の駆動源40A,40Bは、弾性保持ユニット30に互いに交差する方向の駆動力を付与する。個々の駆動源40A,40Bとしては、例えばリニアモータ等により構成されたリニアアクチュエータが用いられる。また、スクリーン駆動部60における制御回路部55は、上記一対の駆動源40A,40Bの各々に所定の駆動信号を供給する。
スクリーン駆動部60は、画像の投写時に上記の制御回路部55から各駆動源40A,40Bに所定の駆動信号を供給することで、被駆動部材であるフレネルレンズ23をスクリーン20に平行な面内で連続運動させる。このときの運動の具体例としては、例えば楕円運動(円運動を含む)を挙げることができる。各駆動源40A,40Bによる駆動力が弾性保持ユニット30により保持されたフレネルレンズ23の重心Oを通る方向に付与されるようにスクリーン駆動部60を構成すると、フレネルレンズ23をスクリーン20に平行な面内で連続運動させる際に、モーメントの影響を排除し易くなる。
なお、「弾性保持ユニットにより保持されたフレネルレンズの重心」とは、弾性保持ユニットと該弾性保持ユニットにより保持されたフレネルレンズとからなる構造体の重心を意味する。本明細書においては、当該重心を、以下、単に「フレネルレンズの重心」という。図2においては、上記の重心を点Oで示してあり、フレネルレンズ23の運動方向の一例を矢印Aで示している。
以上説明した構成を有する投写型画像表示装置80では、フレネルレンズ23を保持した弾性保持ユニット30に一対の駆動源40A,40Bから駆動力を付与することで、画像の投写時にフレネルレンズ23をスクリーン20に平行な面内で連続運動させるので、スペックルパターンによる画面のぎらつき現象、いわゆるシンチレーションを抑えることができる。また、フレネルレンズ23や拡散部材25をスクリーン20での画面の法線方向(前後軸方向;以下「Z軸方向」という)に振動させる必要がないので、画像の揺れや解像度の低下に起因する画質の低下が起こり難い。したがって、当該投写型画像表示装置80では、画質の低下をまねくことなくシンチレーションの発生を抑えることが容易である。
上述の技術的効果を奏する投写型画像表示装置80は、スクリーン駆動部60の構成および駆動方法に特徴を有しているので、以下、図3〜図6を参照してスクリーン駆動部60の構成部材を具体的に説明した後、図7〜図11を参照してスクリーン駆動部60によるフレネルレンズ23の駆動方法について詳述する。
図3は、スクリーン駆動部を構成している弾性保持ユニットでのフレネルフレームの断面形状の一例を示す概略図である。同図には、フレネルフレーム31における上框31aの断面形状の一例が概略的に示されている。
図示の上框31aは、フレネルレンズ23の周縁部が挿入固定される溝部Gr、該溝部Grからスクリーン20(図1参照)のZ軸に沿って後方に突出形成された突出部Pr、および該突出部Prからスクリーン20のY軸に沿って内側に突出形成されたフランジ部Flを有しており、フランジ部Flは光学エンジン10(図1参照)からの映像光ILを遮らない位置、長さに成形されている。また、突出部Prの外表面上の所定箇所には、弾性支持部材35aまたは弾性支持部材35b(図2参照)の一端が固定される固定部33が配置されている。図3には、弾性支持部材35bと該弾性支持部材35bを上框31aに固定する固定部33とが現れている。図示を省略するが、下框31b、左框31c、および右框31d(図2参照)の各々も上框31aと同様の断面形状とすることができる。
図4は、スクリーン駆動部を構成している弾性保持ユニットでの弾性支持部材の一例を概略的に示す斜視図である。同図に示す弾性支持部材35aは、平板状を呈する第1および第2の変形部Df1,Df2が各々の一端で繋がったL字状の部材であり、第1の変形部Df1の他端はフレネルフレーム31(上框31a)に、また第2の変形部Df2の他端は筐体70の所定箇所に設けられた取付け部75(図2参照)に固定される。
第1の変形部Df1の長手軸はスクリーン20(図1参照)のX軸と平行であり、当該第1の変形部Df1はスクリーン20のY軸方向に可撓性を有している。また、第2の変形部Df2の長手軸はスクリーン20のY軸と平行であり、当該第2の変形部Df2はスクリーン20のX軸方向に可撓性を有している。
この弾性支持部材35aは、該弾性支持部材35aをフレネルフレーム31および筐体70の各々に固定した状態下でX軸方向のバネ定数とY軸方向のバネ定数とが互いに同じ値となるように設計され、固定される。また、フレネルレンズ23およびフレネルフレーム31等の重みを受けた状態で第1の変形部Df1と第2の変形部Df2とが略90度の角度をなすように、これら第1の変形部Df1と第2の変形部Df2との結合部の曲げ角度が設計されている。他の弾性支持部材35b〜35dも弾性支持部材35aと同様の技術思想で設計され、その形状は弾性支持部材35aと同様の形状とすることができる。弾性保持ユニット30は、これらの弾性支持部材35a〜35dのスクリーン20に平行な面内での等方的な弾性力により、フレネルレンズ23を保持している。
図5は、スクリーン駆動部を構成している駆動源の一例を概略的に示す分解斜視図である。同図に示す駆動源40Aは、固定子45と可動子50とを備えたリニアモータからなるリニアアクチュエータである。
上記の固定子45は、2枚のヨーク板41a,41bと、一方のヨーク板41aに固着された2つのマグネット42a,42bと、各ヨーク板41a,41bを所定の間隔をもって保持する樹脂製のヨークホルダ43とを有している。個々のヨーク板41a,41bは平板状を呈し、個々のマグネット42a,42bも平板状を呈する。ヨーク板41aは、各マグネット42a,42bを内側にしてヨークホルダ43に装着され、ヨーク板41bは、各マグネット42a,42bから離隔し、かつヨーク板41aに対向した状態でヨークホルダ43に装着される。ヨークホルダ43には取付け孔44a,44bが形成されている。固定子45は、上記の取付け孔44a,44bに挿入されたネジ等の固定用部品(図示せず)により筐体70(図2参照)に固定される。
一方、可動子50は、コイル46と、該コイル46と一体にモールド成形された樹脂製のコイルホルダ47と、コイル46に接続された状態でコイルホルダ47に設けられた給電端子48a,48bとを有している。コイルホルダ47には取付け孔49a,49bが形成されている。可動子50は、固定子45における2枚のヨーク板41a41b間にコイル46を介在させた状態で固定子45に装着され、上記の取付け孔49a,49bに挿入されたネジ等の固定用部品(図示せず)によりフレネルフレーム31(図2参照)に固定される。図示を省略するが、駆動源40B(図2参照)も上述の駆動源40Aと同様の構成とすることができる。
図6は、図5に示した駆動源の動作原理を示す概念図である。同図に示すように、固定子45(図5参照)における2つのマグネット42a,42bのうちでフレネルフレーム31(図2参照)側に位置するマグネット42aは、ヨーク板41a側がS極、コイル46側がN極となる向きでヨーク板41aに固着されており、筐体70(図2参照)側に位置するマグネット42bは、ヨーク板41a側がN極、コイル46側がS極となる向きでヨーク板41aに固着されている。これらの結果として、固定子45においては、マグネット42aからヨーク板41b、マグネット42b、およびヨーク板41aを経てマグネット42aに戻る磁気回路MCが形成される。各マグネット42a,42bとヨーク板41bとの間のギャップGには、磁束MFが形成される。
固定子45に可動子50(図5参照)を装着してそのコイル46に通電すると、フレミングの左手の法則に従って所定の向きの力が発生する。例えば、図6での紙面裏側から表側に向かう方向の電流をコイル46に流すと、該コイル46には矢印Bの方向に力がかかる。逆に、図6での紙面表側から裏側に向かう方向の電流をコイル46に流すと、該コイル46には矢印Cの方向に力がかかる。コイル46に流す電流の向きおよび強さを制御することにより、駆動源40Aからフレネルフレーム31に所定の向きおよび強さの引張り力または押力(以下「駆動力」と総称する)を付与することができる。可動子50は、コイル46に通電しているときでも、磁束MFと直交する面内を駆動力の発生方向と直交する方向に滑動可能である。
なお、駆動源40Bを駆動源40Aと同じ構成とした場合には、上述の理由と同じ理由から、コイルに流す電流の向きおよび強さを制御することにより、当該駆動源40Bからフレネルフレーム31に所定の向きおよび強さの駆動力を付与することができる。
図2を参照して既に説明したように、弾性保持ユニット30のフレネルフレーム31に保持されたフレネルレンズ23はスクリーン20に平行な面内で移動可能な状態にあり、各駆動源40A,40Bは弾性保持ユニット30(フレネルフレーム31)に互いに交差する方向の駆動力を付与する。そして、各駆動源40A,40Bが弾性保持ユニット30に付与する駆動力の向きおよび強さは、上述のように、コイル46に流す電流の向きおよび強さにより制御することができる。
したがって、各駆動源40A,40Bのコイル46に流す電流の向きおよび強さを制御回路部55(図2参照)で適宜制御することにより、フレネルレンズ23をスクリーン20に平行な面内で連続運動させることができる。以下、図7〜図11を参照して、スクリーン駆動部60(図2参照)によるフレネルレンズ23の駆動方法について詳述する。
図7は、一対の駆動源それぞれの駆動波形の一例を示す概略図であり、弾性保持ユニットに対する駆動力の方向が互いに90度の角度をなすように各駆動源を配置したときに好適な駆動波形の一例である。同図中に実線で描いた曲線が駆動源40Aの駆動波形DW1を表し、破線で描いた曲線が駆動源40B(図2参照)の駆動波形DW2を表す。横軸は位相角θであり、縦軸は個々の駆動源40A,40Bから弾性保持ユニット30(図2参照)に付与される駆動力である。縦軸の駆動力は、駆動源40A,40Bから弾性保持ユニット30に付与される引張り力を正の値とし、押力を負の値としている。
図示の各駆動波形DW1,DW2は、互いに同じ振幅および波長を有する正弦波形であり、駆動波形DW1と駆動波形DW2との位相差Δφは90度とされている。このとき、駆動源40Aから弾性保持ユニット30に付与される駆動力Fa(θ)は位相角θの関数となり、下式(i)
Fa(θ)=F0・sin(θ+90°)=F0・cosθ ……(i)
で表される。同様に、駆動源40Bから弾性保持ユニット30に付与される駆動力Fb(θ)も位相角θの関数となり、下式(ii)
Fb(θ)=F0・sinθ ……(ii)
で表される。これらの駆動力Fa(θ),Fb(θ)の合力が、フレネルレンズ23の重心O(図2参照)に実際に働く。
なお、上記の式(i),(ii)中の「F0」は、駆動力Fa(θ),Fb(θ)の基準となる力を示しており、当該力F0の大きさは、弾性保持ユニット30を構成している各弾性支持部材35a〜35d(図2参照)の弾性力や、フレネルレンズ23を連続運動させる際に許容される重心O(図2参照)の移動範囲の広さ等を考慮して予め選定される。
図8は、図7に示した駆動波形で各駆動源を駆動させたときの位相角とフレネルレンズの重心に働く力との関係の一例を示す概念図である。同図には、スクリーン20(図1参照)におけるX軸およびY軸と、図7に示した駆動波形DW1で駆動源40Aを駆動させたときに弾性保持ユニット30を介してフレネルレンズ23に付与される駆動力の作用線に相当するX’軸と、図7に示した駆動波形DW2で駆動源40Bを駆動させたときに弾性保持ユニット30を介してフレネルレンズ23に付与される駆動力の作用線に相当するY’軸とが示されている。また、フレネルレンズ23の重心O(図2参照)の位置が点P0で示されている。図示のX軸、Y軸、X’軸、およびY’軸の各々は上記の点P0を通っている。また、X’軸とY’軸とは互いに直交しており、X軸とY軸も互いに直交している。X’軸およびY’軸の各々は、駆動源による引張り力の方向を正方向としており、X’軸の方位角とX軸の方位角とは互いに135度ずれている。
弾性保持ユニット30による弾性力がスクリーン20(図1参照)に平行な面内で等方的であれば、図8に示すように、各駆動源40A,40Bから弾性保持ユニット30に上述の駆動力Fa(θ),Fb(θ)を付与したときに、フレネルレンズ23の重心Oに当該駆動力Fa(θ),Fb(θ)の合力FがX’軸と角度θをなす向きに生じる。このときの角度θは図7に示した位相角θに相当し、合力Fの大きさは図7に示したF0と同じ値になる。
各駆動源40A,40Bの駆動波形DW1,DW2の位相角θが(0+360・n)度(nは整数を表す)のときの合力Fは、重心Oが点P0からX’軸上の点P1に変位する向きおよび大きさとなり、(45+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からY軸上の点P2に変位する向きおよび大きさとなり、(135+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からX軸上の点P3に変位する向きおよび大きさとなる。また、位相角θが(225+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からY軸上の点P4に変位する向きおよび大きさとなり、(315+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からX軸上の点P5に変位する向きおよび大きさとなる。
弾性保持ユニット30による弾性力がスクリーン20に平行な面内で等方的であるときには、上記の合力Fがどの方向に向いていたとしても当該合力Fと逆向きの弾性力が各弾性支持部材35a〜35dにより働く結果として、各駆動源40A,40Bを駆動波形DW1,DW2で駆動させると、フレネルレンズ23の重心Oは実質的に半径F0の円Crの円周上を移動することとなる。
図9〜図11の各々は、フレネルレンズ23に働く力と投写型画像表示装置80内でのフレネルレンズ23の位置との関係の一例を示す概略図である。これらの図に示す各部材については図2を参照して既に説明しているので、当該部材については図2で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、上述の駆動波形DW1,DW2の位相角θが(45+360・n)度のときには、下向きの合力Fがスクリーン20(図1参照)のY軸に沿って生じる結果として、フレネルレンズ23の重心Oは初期位置からみて真下方向、すなわち図8に示す点P2の方向に移動する。また、上述の駆動波形DW1,DW2の位相角θが(225+360・n)度のときには、図10に示すように、上向きの合力Fがスクリーン20のY軸に沿って生じる結果として、フレネルレンズ23の重心Oは初期位置からみて真上方向、すなわち図8に示す点P4の方向に移動する。そして、上述の駆動波形DW1,DW2の位相角θが(315+360・n)度のときには、図11に示すように、フレネルレンズ23を裏面視したときの左向きの合力Fがスクリーン20のX軸に沿って生じる結果として、フレネルレンズ23の重心Oは初期位置からみて左方向(裏面視したときの左方向)、すなわち図8に示す点P5の方向に移動する。
フレネルレンズ23に図2の紙面に垂直な軸まわりの回転成分が加わると、運動の軌跡が例えば楕円になり、運動の線速度が周期的に変化してシンチレーションの強弱として視認されるため、画質を劣化させることになる。上述のように位相角θに応じてフレネルレンズ23の重心Oが所定の方向に移動するようにすれば、当該フレネルレンズ23はスクリーン20(図1参照)に平行な面内で連続円運動する。このとき、各駆動力Fa(θ),Fb(θ)が重心Oを通る方向に付与されることから、フレネルレンズ23を保持する弾性保持ユニット30(図2参照)での各弾性支持部材35a〜35dの弾性力(バネ定数)をX軸方向およびY軸方向のいずれについても同じ値に設定することにより、フレネルレンズ23は図2の紙面に垂直な軸まわりに姿勢を回転させることなく同図中に矢印Aで示すような円運動をするので、シンチレーションの強弱が生じることがない。
以上説明した構成を有する投写型画像表示装置80(図1または図2参照)では、前述したように、映像の投写時にスクリーン20に平行な面内でフレネルレンズ23を連続運動させることができるので、画質の低下をまねくことなくスペックルパターンによる画面のぎらつき現象、いわゆるシンチレーションを抑えることができる。また、スクリーン駆動部60(図2参照)が摺動部を有していないことから、フレネルレンズ23に上記の運動を行わせたときの動作音を実質的になくすことができる。
投射型画像表示装置では一般に筐体内の下部に光学エンジンが搭載され、「袴」と呼ばれる当該下部には比較的広い空間がある。上述した投写型画像表示装置80では、一対の駆動源40A,40Bをスクリーン20の下方に配置するので、これらの駆動源40A,40Bを上記の空間に配置することにより、駆動源40A,40Bを配置することに起因する投写型画像表示装置80の高さ寸法の増大を実質的になくすことが容易である。また、弾性支持部材35a〜35d(図2参照)として図4に示したような板バネを用いた場合には、弾性保持ユニット30を安価に構成することが容易になる。
実施の形態2.
投写型画像表示装置のスクリーン駆動部を構成する一対の駆動源は、各駆動源による駆動力の方向が互いに180度未満の所望の角度をなすように配置することができ、当該角度は実施の形態1で説明した90度に限定されるものではない。なお、「各駆動源による駆動力の方向が互いになす角度」とは、個々の駆動源による引張り力の方向を正方向として各駆動力の作用線を軸線とする座標系を想定したときに、第1象限で各軸線が互いになす角度を意味する。
上記の角度をα度とすれば、一方の駆動源の駆動波形と他方の駆動源の駆動波形との位相差Δφを(180−α)度とすることにより、被駆動部材をスクリーンと平行な面内で連続運動させることが容易になる。このとき、個々の駆動源からの駆動力が被駆動部材の重心を通るように当該駆動源を配置すれば、モーメントの影響を排除することが容易になる。
図12は、一対の駆動源それぞれの駆動波形の他の例を示す概略図であり、弾性保持ユニットに対する駆動力の方向が互いに90度未満の所望の角度α(度)をなすように各駆動源を配置したときに好適な駆動波形の一例である。同図中に実線で描いた曲線が一方の駆動源の駆動波形DW3を、また破線で描いた曲線が他方の駆動源の駆動波形DW4を表しており、これらの駆動波形DW3,DW4の位相差Δφは(180−α)度である。なお、同図中の横軸は位相角θであり、縦軸は個々の駆動源から弾性保持ユニットに付与される駆動力である。縦軸の駆動力は、各駆動源から弾性保持ユニットに付与される引張り力を正の値とし、押力を負の値としている。
駆動波形DW3の駆動源から弾性保持ユニットに付与される駆動力Fa(θ)は位相角θの関数となり、下式(iii)
Fa(θ)=F0・sin(θ+90) ……(iii)
で表される。同様に、駆動波形DW4の駆動源から弾性保持ユニットに付与される駆動力Fb(θ)も位相角θの関数となり、下式(iv)
Fb(θ)=F0・sin(θ−90+α) ……(iv)
で表される。これらの駆動力Fa(θ),Fb(θ)の合力が、被駆動部材の重心に実際に働く。
上記の駆動波形DW3,DW4によって各駆動源を駆動させる投写画像表示装置の構成は、当該駆動源の配設位置を除き、例えば実施の形態1で説明した投写型画像表示装置80(図1および図2参照)の構成と同様とすることができる。なお、式(iii),(iv)中の「F0」の大きさは、前述した式(i),(ii)中の「F0」の大きさと同様に、弾性保持ユニット30を構成している各弾性支持部材35a〜35d(図2参照)の弾性力や、フレネルレンズ23を連続運動させる際に許容される重心O(図2参照)の移動範囲の広さ等を考慮して予め選定される。
図13および図14は、各駆動源の配設位置が異なる以外は実施の形態1で説明した投写型画像表示装置と同様の構成を有する投写型画像表示装置において、図12に示した駆動波形で各駆動源を駆動させたときの位相角と被駆動部材(フレネルレンズ)の重心に働く力との関係の一例を示す概念図である。これらの図においては、図8に示した要素と共通するものに図8で用いた参照符号と同じ参照符号を付してある。
弾性保持ユニット30による弾性力がスクリーン20(図1参照)に平行な面内で等方的であれば、各駆動源40A,40Bから弾性保持ユニット30に上述の駆動力Fa(θ),Fb(θ)を付与したときに、フレネルレンズ23の重心Oにこれらの駆動力Fa(θ),Fb(θ)の合力FがX’軸と角度θをなす向きに生じる。このときの角度θは図12に示した位相角θに相当し、合力Fの大きさは図12に示したF0と同じ値になる。
各駆動源40A,40Bの駆動波形DW3,DW4の位相角θが(0+360・n)度(nは整数を表す)のときの合力Fは、フレネルレンズ23の重心Oが点P0からX’軸上の点P1に変位する向きおよび大きさとなり、(α/2+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からY軸上の点P2に変位する向きおよび大きさとなり、(α/2+90+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からX軸上の点P3に変位する向きおよび大きさとなる。また、位相角θが(α/2+180+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からY軸上の点P4に変位する向きおよび大きさとなり、(α/2+270+360・n)度のときの合力Fは、重心Oが点P0からX軸上の点P5に変位する向きおよび大きさとなる。
弾性保持ユニット30による弾性力がスクリーン20に平行な面内で等方的であるときには、上記の合力Fがどの方向に向いていたとしても当該合力Fと逆向きの弾性力が各弾性支持部材35a〜35dにより働く結果として、各駆動源40A,40Bを駆動波形DW3,DW4で駆動させると、フレネルレンズ23の重心Oは実質的に半径F0の円Crの円周上を移動することとなる。
このようにして各駆動源を駆動させて画像の投写時にフレネルレンズを連続運動させる投写型画像表示装置は、実施の形態1で説明した投写型画像表示装置におけるのと同様に、画質の低下をまねくことなくスペックルパターンによる画面のぎらつき現象、いわゆるシンチレーションを抑えることができる。また、フレネルレンズに上記の円運動を行わせることによる動作音を実質的になくすことができる。弾性保持ユニットを安価に構成することも容易である。
さらには、駆動源を配置することに起因する投写型画像表示装置の高さ寸法の増大を実質的になくすことも容易であるし、駆動源40Aと駆動源40Bとの間隔を狭くし易いことから、例えば図15に示す投写型画像表示装置85のように、装置下部の正面視上の幅Wを絞ったスリムなデザインを実現することも容易である。なお、図15中の参照符号20はスクリーンを示しており、参照符号70は筐体を示している。
以上、本発明の投写型画像表示装置について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例えば、スクリーン駆動部により楕円運動させる被駆動部材は、フレネルレンズ23ではなく拡散部材25(図1参照)であってもよい。
また、スクリーン駆動部を構成する弾性支持部材の総数は4に限定されるものではなく、当該総数は、スクリーンに平行な面内で被駆動部材を等方的に弾性支持することができるように適宜選定可能である。例えば、被駆動部材のZ軸(図3参照)方向への変形を抑制するため、被駆動部材の上辺中央部の近傍や下辺中央部の近傍に弾性支持部材を配置してもよい。個々の弾性支持部材の構造は、適宜変更可能である。
各駆動源としては、リニアモータ以外のリニアアクチュエータを用いることもでき、その動作原理は適宜変更可能である。また、駆動源の総数は、2以上の所望数とすることができる。個々の駆動源の駆動波形は、画像の投写時に被駆動部材を行わせようとする連続運動の形態に応じて適宜選定可能である。本発明の投写型画像表示装置については、上述したもの以外にも種々の変形、修飾、組合せ等が可能である。
本発明は、家庭または業務用の投写型画像表示装置に適用することができ、特にシンチレーションが目立ち易い大画面の投写型画像表示装置に好適である。
10 光学エンジン
20 スクリーン
23 フレネルレンズ
25 拡散部材
30 弾性保持ユニット
40A,40B 駆動源
55 制御回路部
60 スクリーン駆動部
70 筐体
80,85 投写型画像表示装置
O フレネルレンズの重心
Fa(θ),Fb(θ) 駆動源から弾性保持ユニットに付与される駆動力
F 合力
X スクリーンの左右軸
Y スクリーンの上下軸
Z スクリーンの前後軸

Claims (7)

  1. 画像信号に応じて光を出射する光学エンジンと、
    前記光学エンジンから入射した光をフレネルレンズにより略平行な光にした後に拡散部材により拡散光にして出射させるスクリーンと、
    前記フレネルレンズまたは前記拡散部材を被駆動部材として該被駆動部材を前記スクリーンに平行な面内で変位させるスクリーン駆動部と、
    前記光学エンジン、前記スクリーン、および前記スクリーン駆動部を収容する筐体と、
    を備え、
    前記スクリーン駆動部は、
    前記筐体に支持されて前記被駆動部材を前記スクリーンに平行な面内で移動可能に保持する弾性保持ユニットと、
    前記弾性保持ユニットに互いに交差する方向の駆動力を付与することができる一対の駆動源と、
    前記一対の駆動源の各々に接続されて該一対の駆動源の各々を互いに所定の位相差をもった駆動波形で駆動させる制御回路とを有し、
    前記弾性保持ユニットは、平板状の第1および第2の変形部が直交して形成されるL字状の弾性部材であって、該弾性部材の一端は前記筐体に、他端が前記被駆動部材に結合されて構成され、
    画像の投写時に前記一対の駆動源から前記弾性保持ユニットに駆動力を付与して、前記被駆動部材を前記スクリーンに平行な面内で常に停止することのない連続運動をさせることを特徴とする投写型画像表示装置。
  2. 前記一対の駆動源の各々は、前記弾性保持ユニットにより保持された被駆動部材の重心を通る方向に前記駆動力を付与することを特徴とする請求項1に記載の投写型画像表示装置。
  3. 前記一対の駆動源の各々は、前記スクリーンの左右軸または上下軸を対称軸として軸対称に配置され、
    前記一対の駆動源の各々の駆動波形は、前記一対の駆動源の各々による前記駆動力の方向が互いになす角度をα度としたときに、(180−α)度の位相差をもった正弦波形である、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の投写型画像表示装置。
  4. 前記角度は90度であることを特徴とする請求項3に記載の投写型画像表示装置。
  5. 前記一対の駆動源の各々は、前記スクリーンの下方に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の投写型画像表示装置。
  6. 前記一対の駆動源の各々は、リニアアクチュエータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の投写型画像表示装置。
  7. 前記一対の駆動源の各々は、リニアモータであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の投写型画像表示装置。
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