JP4854178B2 - 半導体素子 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体素子に関する。
文献1は、窒化物半導体発光素子が記載されている。窒化物半導体発光素子は、サファイア基板上に設けられたInGaN活性層を含み、この活性層は、n型クラッド層とp型クラッド層に挟まれている。この窒化物半導体発光素子は、AlGaNクラッド層を用いることによって生じる不具合を解消することができるものであり、2つのクラッド層の少なくともいずれか一方がInGaN半導体から形成される。
文献2は、III族窒化物化合物半導体素子が記載されている。このIII族窒化物化合物半導体素子は、ホールに対する障壁を大きくしてキャリアの閉じ込めを高めることができる。キャリア閉じ込めを改善するために、III族窒化物化合物半導体素子では、発光層に接して設けられるn型クラッド層をバリア層の厚さより厚くしている。
特開平8−228025号公報 特開2000−286448号公報
文献1の窒化物半導体発光素子では、InGaNクラッド層がバッファ層として作用するためには、活性層とn型クラッド層との組み合わせ、活性層とp型クラッド層との組み合わせ、活性層とp型およびn型クラッド層との組み合わせにおいて、その組み合わせたInGaN層の総和膜厚が300オングストローム以上であることが求められる。しかしながら、この窒化物半導体発光素子では、InGaN半導体層の膜厚が厚くなるので、貫通転位がピット状に広がり、結果として発光特性が劣化することになる。
文献2のIII族窒化物化合物半導体素子では、n型クラッド層は、GaN半導体から成り、また色純度を良くするためには、500オングストロームを以下であることを必要としている。
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、光出力を向上できる半導体素子を提供することを目的とする。
本発明の一側面によれば、半導体素子は、(a)1×10cm−2未満の貫通転位密度を有するIII族窒化物基板と、(b)圧縮歪みが加えられた一または複数のInGa1−XN層を含みIII族窒化物基板上に設けられた活性領域と、(c)インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含むIn Al Ga 1−Y―Z N半導体からなり、当該4つの構成元素の全てを含み且つZが0.5以下であり、前記活性領域と前記III族窒化物基板との間に設けられたIII−V化合物半導体層とを備え、前記III族窒化物基板は窒化ガリウム基板であり、前記一または複数のIn Ga 1−X N層は前記窒化ガリウム基板から前記圧縮歪みを受けており、前記III−V化合物半導体層の前記InAlGa1−Y―ZN半導体の格子定数(DInAlGaN)とGaN半導体の格子定数(DGaN)との比(DInAlGaN/DGaN)は0.97以上であり、前記比は1.03以下であり、前記InGa1−XN層のIn組成Xはゼロより大きく、0.5以下であり、前記III−V化合物半導体層は1マイクロメートル以下であり、前記III−V化合物半導体層は50ナノメートル以上である。前記III−V化合物半導体層は前記活性領域に対して電位障壁を有する。前記III−V化合物半導体層の一部又は全部はn導電型であり、前記活性領域にホールを閉じ込めるように働く。
この半導体素子では、InGaN半導体層はIII族窒化物基板から応力を受ける。インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含むIII−V化合物半導体層が活性領域とIII族窒化物基板との間に設けられたので、活性領域に加わる過度の歪みが低減される。
本発明に係る半導体素子では、当該半導体素子は発光ダイオードであることができる。本発明に係る半導体素子は、前記活性領域と前記III−V化合物半導体層との間に設けられた第1のクラッド層と、III族窒化物基板上に設けられた第2のクラッド層とを更に備え、前記活性領域は、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられる。本発明に係る半導体素子は、前記III族窒化物基板とIII−V化合物半導体層との間に設けられたバッファ層を更に備える。本発明に係る半導体素子は、前記活性領域に接触するAlGaN層を更に備える。
本発明の半導体素子では、前記III−V化合物半導体層はInAlGa1−Y−ZN半導体(0<Y≦0.5、0≦Z≦0.5)層であるようにしてもよい。
この半導体素子では、InAlGa1−Y−ZN半導体層において、0<Y≦0.5および0≦Z≦0.5の範囲が歪みを低減するために有効である。
本発明の半導体素子では、前記III−V化合物半導体層は30ナノメートル以上であるようにしてもよい。
この半導体素子では、30ナノメートル以上のIII−V化合物半導体層によれば、活性領域に加わる歪みを低減することができる。
本発明の半導体素子では、前記III−V化合物半導体層は1マイクロメートル以下であることが好ましい。
この半導体素子では、III−V化合物半導体層が1マイクロメートル以下であれば、このIII−V化合物半導体層を用いることによる寄生的な影響が活性領域の特性に大きく影響しない。
本発明の半導体素子では、前記III族窒化物基板は、1×10cm−2未満の貫通転位密度を有する窒化ガリウム基板であるようにしてもよい。
半導体素子では、貫通転位密度が1×10cm−2未満であると、貫通転位に起因するピットによる影響が、該半導体素子の特性にあまり現れない。
本発明の半導体素子では、前記III族窒化物基板は窒化ガリウム基板であり、InAlGa1―Y−ZN半導体の格子定数(DInAlGaN)とGaN半導体の格子定数(DGaN)との比(DInAlGaN/DGaN)は0.97以上であり、前記比は1.03以下であることが好ましい。
この半導体素子では、InAlGa1―Y−ZN半導体の格子定数は、該半導体の組成を調整することによって窒化ガリウム半導体の格子定数に近くできる。格子定数の比(DInAlGaN/DGaN)は0.97以上であれば、InAlGa1―Y−ZN半導体層は、窒化ガリウム基板から受ける引っ張り歪みを低減することができる。格子定数の比(DInAlGaN/DGaN)は1.03以下であれば、InAlGa1―Y−ZN半導体層は、窒化ガリウム基板から受ける圧縮歪みを低減することができる。
本発明の半導体素子は、(d)III−V化合物半導体のp型半導体層を更に備え、前記III−V化合物半導体層は、InAlGa1―Y−ZN半導体(0<Y≦0.5、0≦Z≦0.5)のn型半導体層であり、前記活性領域は前記p型半導体層と前記n型半導体層との間に設けられ、前記n型半導体層は前記活性領域に対して電位障壁を有するようにしてもよい。
この半導体素子では、n型半導体層は活性領域にホールを閉じ込めるように働くと共に、活性領域に加わる過度の歪みを低減するように働く。
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
以上説明したように、本発明によれば、光出力を向上できる半導体素子が提供される。
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の半導体素子、その製造方法、エピタキシャル基板およびその製造方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
(第1の実施の形態)
図1(A)は、本発明の実施の形態に係る半導体素子を示す図面である。図1(A)を参照すると、半導体発光素子1といった半導体素子が示されている。半導体発光素子1は、III族窒化物基板3と、活性領域5と、III−V化合物半導体層7とを備える。活性領域5は、III族窒化物基板3上に設けられており、III−V化合物半導体から成る。III−V化合物半導体層7は、活性領域5とIII族窒化物基板3との間に設けられている。III−V化合物半導体層7は、インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含んでいる。活性領域5は、少なくともインジウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成っており、例えばInGaN層を含む。
半導体発光素子1では、活性領域5のInGaN半導体層はIII族窒化物基板3から応力を受ける。インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含むIII−V化合物半導体層7が活性領域5とIII族窒化物基板3との間に設けられたので、活性領域5に加わる過度の歪みが低減される。活性領域に加わる応力が小さくなるので、半導体発光素子の光出力が大きくなる。
好適な実施例では、活性領域5は、好適な実施例ではInGa1−XN層である。その組成Xは、ゼロより大きく0.5以下である。
半導体発光素子1では、III−V化合物半導体層7はInAlGaN半導体層であることができる。InAlGaN半導体層は、歪みを低減するために有効である。好ましくは、InAlGa1−Y−ZN半導体の組成Yは、ゼロより大きく0.5以下であり、組成Zは、ゼロ以上0.5以下である。インジウムの組成Yが0.5以下であれば、成長温度を下げること無く良好な結晶品質のInAlGaN半導体が得られる。アルミニウムの組成Zが0.5以下であれば、InAlGaN半導体の格子定数をGaN半導体の格子定数に近づけることができる。。
半導体発光素子1は、III族化合物基板を用いて製造されており、好適には、III族化合物基板は窒化物から成る。III族化合物基板は、導電性、例えばn導電型を示しており、低い抵抗値を有することが好ましい。また、III族窒化物基板3は、1×10cm−2未満の貫通転位密度を有する窒化ガリウム基板であるようにしてもよい。貫通転位密度が1×10cm−2未満であると、貫通転位に起因するピットが、半導体発光素子の特性にあまり影響しない。
半導体発光素子1では、III−V化合物半導体層7は30ナノメートル以上であるようにしてもよい。III−V化合物半導体層7が30ナノメートル以上であれば、活性領域5に加わる歪みを低減することができる。好ましくは、50ナノメートルを超える厚さのIII−V化合物半導体層7によれば、活性領域5に加わる歪みを十分に低減することができる。また、半導体発光素子では、III−V化合物半導体層7は1マイクロメートル以下であることが好ましい。この半導体発光素子1では、III−V化合物半導体層が1マイクロメートル以下であれば、III−V化合物半導体層を用いることによる寄生的な作用が活性領域の特性に大きく影響しない。例えば、III−V化合物半導体層の厚さが大きい場合、半導体発光素子の光出力が低下することがある。
半導体発光素子1は、第1のクラッド層9を含む。第1のクラッド層9は、活性領域5とIII−V化合物半導体層7との間に設けられている。また、半導体発光素子1は、第2のクラッド層11を含む。活性領域5は、第1のクラッド層9と第2のクラッド層11との間に設けられている。第1のクラッド層9および第2のクラッド層11は、活性領域5にキャリアを閉じ込める。第1のクラッド層9は、例えば、InGaN半導体から成ることができる。第2のクラッド層11は、例えば、InGaN半導体から成ることができる。第1のクラッド層9の一部または全部はn型導電性を示すことが好ましく、第2のクラッド層11の一部または全部はp型導電性を示すことが好ましい。第1のクラッド層9および第2のクラッド層11の各々は、単一の半導体材料から成るものに限定されること無く、また、第1のクラッド層9および第2のクラッド層11は、互いに異なる導電性を示し互いに異なる組成の半導体層から構成されることができる。
半導体発光素子1は、コンタクト層13を含む。コンタクト層13は、第2のクラッド層上に設けられており、III族窒化物基板3の導電型と異なる導電型を有している。本実施例では、コンタクト層13はp導電性を示しており、低い抵抗値を有する。
半導体発光素子1は、バッファ層15を含むことができる。バッファ層15は、III族窒化物基板3とIII−V化合物半導体層7との間に設けられている。バッファ層15は、III族窒化物基板3の導電型と同じ導電型を有しており、好ましくは、III族窒化物基板3と同じ組成の半導体から成る。また、半導体発光素子1は、コンタクト層13上に設けられた電極17aを含むことができ、III族窒化物基板3の裏面3aに設けられた電極17bを含むことができる。
また、III族窒化物基板3として、窒化ガリウム基板、窒化アルミニウム基板、窒化アルミニウムガリウム基板等を用いることができる。
半導体発光素子1の一実施例は下記の構造
III族窒化物基板3:n型GaN半導体単結晶基板
活性領域5:アンドープInGaN半導体
III−V化合物半導体層7:シリコンドープn型InAlGaN半導体
第1のクラッド層9:シリコンドープn型InGaN半導体
第2のクラッド層11:マグネシウムドープp型InGaN半導体
コンタクト層13:マグネシウムドープp型GaN半導体
バッファ層15:シリコンドープn型GaN半導体
電極17a:アノード電極
電極17b:カソード電極
である。
好適な実施例では、半導体発光素子1のIII族窒化物基板3は窒化ガリウム基板である。InAlGa1―Y−ZNN半導体の格子定数は、該半導体の組成を調整することによって窒化ガリウム半導体の格子定数に近くできる。GaN半導体の格子定数(DGaN)とInAlGa1―Y−ZN半導体の格子定数(DInAlGaN)との比(DInAlGaN/DGaN)が0.97以上であれば、InAlGa1―Y−ZN半導体層は、窒化ガリウム基板から受ける引っ張り歪みを低減することができる。格子定数の比(DInAlGaN/DGaN)は1.03以下であれば、InAlGa1―Y−ZN半導体層は、窒化ガリウム基板から受ける圧縮歪みを低減することができる。
図1(B)は、本実施の形態の一変形例を示す図面である。半導体発光素子1aは、量子井戸構造を有する発光領域5aを含む。発光領域5aは、井戸層19aおよびバリア層19bを含むことができる。井戸層19aは、少なくともインジウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成っており、例えばInGa1−UN層を含む。その組成Uは、ゼロより大きく0.5以下である。バリア層19bは、少なくともインジウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成っており、例えばInGa1−VN層を含む。その組成Vは、ゼロより大きく、0.5以下である。
量子井戸構造の一実施例を示せば、3周期の
井戸層19a:InGa1−UN層
厚さ:3ナノメートル
バリア層19b:InGa1−VN層
厚さ:15ナノメートル
である。
この半導体発光素子1aでは、活性領域5内の井戸層19aおよびバリア層あ9b(InGaN半導体)はIII族窒化物基板3から応力を受ける。インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含むIII−V化合物半導体層7が活性領域5とIII族窒化物基板3との間に設けられたので、活性領域5に加わる過度の歪みが低減される。また、活性領域に加わる応力が小さくなるので、半導体発光素子の光出力が大きくなる。
必要な場合には、活性領域5は、光閉じ込め層といった追加の半導体層を含むことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、光出力を向上できる半導体発光素子1、1aが提供される。
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係る半導体素子を示す図面である。図2を参照すると、半導体発光素子1bといった半導体素子が示されている。半導体発光素子1bは、III−V化合物半導体層7に替えて、III−V化合物半導体層25を備える。III−V化合物半導体層25は、III−V化合物半導体層7と同様に、少なくともインジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成る。III−V化合物半導体層25は、InAlGa1−Y−ZN半導体(0<Y≦0.5、0≦Z≦0.5)のn型半導体層である。半導体発光素子1bは、III−V化合物半導体のp型半導体層11aを更に備えることができる。活性領域3はp型半導体層11aとn型半導体層25との間にある。p型半導体層11aは活性領域3に対して電位障壁を有しており、n型半導体層25は活性領域3に対して電位障壁を有する。
この半導体発光素子1bでは、活性領域5のInGaN半導体層はIII族窒化物基板3から応力を受ける。III−V化合物半導体層25がインジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含んでおり、また活性領域5とIII族窒化物基板3との間に設けられている。これ故に、活性領域5に加わる過度の歪みが低減される。また、活性領域5に加わる応力が小さくなるので、半導体発光素子1bの光出力が大きくなる。加えて、n型半導体層25は活性領域5にホールを閉じ込めるように働くと共に、活性領域5に加わる過度の歪みを低減するように働く。III−V化合物半導体層25は、クラッド層としても働いている。
以上説明したように、本実施の形態によれば、光出力を向上できる半導体発光素子1bが提供される。
(第3の実施の形態)
図3(A)〜図3(C)、図4(A)および図4(B)は、本実施の形態に係る窒化物半導体エピタキシャル基板を形成する方法及び窒化ガリウム系半導体デバイスを製造する方法を示す図面である。
単結晶窒化ガリウム基板21を準備する。III族窒化物膜の成長に先立って、図3(A)に示されるように、有機金属気相エピタキシャル成長(OMVPE)装置23内において窒化ガリウム基板21の前処理を行う。OMVPE装置23のサセプタ23a上に窒化ガリウム基板21を置く。プロセスガスを流しながら窒化ガリウム基板21を熱処理して、窒化ガリウム基板21の表面21aの平坦化を行う。この平坦化により、機械研磨によって生じた窒化ガリウム基板21の表面21aの研磨キズを小さくできる。好適な実施例では、プロセスガスはアンモニア(NH)および水素(H)を含むことができる。
図3(B)に示されるように、原料ガスを用いて窒化ガリウム基板21の主面21a上にIII族窒化物半導体膜29を形成する。本実施例では、OMVPE装置23を用いて第1導電型のGaN膜を窒化ガリウム基板21の主面21a上に直接に成長している。サセプタ温度は前処理温度より高い温度、例えば摂氏1050度に設定されている。原料ガスは、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)、水素(H)および窒素(N)を含むことができる。膜厚は、例えば、1.0マイクロメートルである。必要な場合には、n型ドーパントのためにシラン(SiH)を使用できる。この工程の後に、窒化ガリウム基板上に形成されたIII族窒化物半導体膜を含む窒化物半導体エピタキシャル基板32aが得られる。
図3(C)に示されるように、デバイス領域を形成する。デバイス領域のために、第1導電型のIII族窒化物半導体膜31を窒化ガリウム基板21の主面21a上に形成する。本実施例では、III族窒化物半導体膜31は、少なくともインジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体膜である。サセプタ温度はGaN膜の成膜温度より低い温度、例えば摂氏830度に設定されている。原料ガスは、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH)、水素(H)および窒素(N)を含むことができる。膜厚は、例えば、600ナノメートルである。必要な場合には、n型ドーパントのためにシラン(SiH)を使用して、この膜の一部および全部をn導電型にすることができる。この半導体膜31はInAlGaN半導体から成るようにしてもよい。InAlGaN半導体層は、歪みを低減するために有効である。好ましくは、InAlGa1−Y−ZN半導体の組成Yは、ゼロより大きく0.5以下であり、組成Zは、ゼロ以上0.5以下である。
図3(C)に示されるように、デバイス領域のために、例えば活性領域といった一または複数の別のIII族窒化物半導体膜33をIII族窒化物半導体膜31上に形成する。本実施例では、多重量子井戸構造を有する活性領域を形成する。活性領域は、例えばSQW構造またはMQW構造を有することができる。多重量子井戸構造の井戸層のために、例えばIn0.15Ga0.85N膜が成長される。また、障壁層のために、例えば、井戸層よりバンドギャップが大きいIn0.05Ga0.99N膜が成長される。例えば、発光ダイオードを作製するために、3つの薄い井戸層を有する多重量子井戸構造を作製する。これらの膜の成長温度は、GaN膜の成長におけるサセプタ温度よりサセプタ温度を低くする。障壁層および井戸層の成膜温度は、例えば摂氏830度である。障壁層の厚さは、例えば15ナノメートルであり、井戸層の厚さは、例えば3ナノメートルである。この工程の後に、窒化ガリウム基板上に形成された複数の窒化ガリウム系膜を有する窒化物半導体エピタキシャル基板が得られる。
次いで、図3(C)に示されるように、更なる別のIII族窒化物半導体膜35を窒化ガリウム基板21の主面21a上に形成する。本実施例では、OMVPE装置23を用いてAlGaN膜を活性領域上に成長している。原料ガスは、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH)、水素(H)および窒素(N)を含むことができる。必要な場合には、p型ドーパントのためにビスシクロペンタディエニルマグネシウム(CPMg)を用いることができる。MgドープのAlGaN膜を形成して、例えばp型Al0.12Ga0.88N膜を得る。サセプタ温度は活性領域の成膜温度より高い。成膜温度は、例えば摂氏1050度である。膜厚は、例えば20ナノメートルである。この工程の後に、窒化ガリウム基板上に形成された複数のIII族窒化物半導体膜を有する窒化物半導体エピタキシャル基板が得られる。
続いて、図3(C)に示されるように、更なる別のIII族窒化物半導体膜37を窒化ガリウム基板21の主面21a上に形成する。本実施例では、OMVPE装置23を用いてGaN膜をp型AlGaN膜上に成長している。原料ガスは、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)、水素(H)および窒素(N)を含むことができる。p型ドーパントとしてCPMgを用いることができる。例えば、MgドープのGaN膜を形成してp型GaN膜を得る。成膜温度は、例えば摂氏1050度である。膜厚は、例えば。50ナノメートルである。この工程によって、窒化ガリウム基板上に形成された複数のIII族窒化物半導体膜を有する窒化物半導体エピタキシャル基板32bが得られる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、GaN基板を用いる窒化物半導体エピタキシャル基板が提供される。
この後に、図4(A)に示されるように、窒化ガリウム基板21の裏面21bの一部または全面にn型のオーミック電極39を形成する。図3(C)に示される工程において作製されたエピタキシャル膜上に、p型のオーミック電極およびパッド電極41を形成する。p型のオーミック電極およびパッド電極41は、アレイ状に配列されている。
パッド電極を形成した後に、図4(B)に示される破線CUT1、CUT2に沿って基板を分離して、発光ダイオードといった半導体発光デバイス51を得る。これらの製造工程を用いて、窒化物半導体デバイスを製造できる。
この方法により作製された発光ダイオードAは青色の光を発生する。この発光ダイオードAに連続的に電流を印加したとき、電流値20ミリアンペアにおいて波長450ナノメートルの光が出力され、光パワーは10ミリワットである。
活性領域と基板との間にInAlGaN半導体層を含むこと無くn型GaN膜上に直接に活性領域を形成した発光ダイオードBを作製している。発光ダイオードBに連続的に電流を印加したとき、電流値20ミリアンペアにおいて波長450ナノメートル程度の光が出力され、光パワーは1ミリワットである。
発光ダイオードAの窒化ガリウム基板に替えてサファイア基板を有する発光ダイオードCを作製している。サファイア基板上には、0.1マイクロメートル厚のn型GaN膜が形成されている。このn型GaN膜上には、60ナノメートル厚のInAlGaN半導体膜が形成されている。このInAlGaN半導体膜上には、発光ダイオードAと同様の構造を有する活性領域が設けられている。次いで、摂氏1050度の成膜温度で、マグネシウムドープのAl0.12Ga0.88N半導体層が堆積される。この後に、摂氏1050度の成膜温度で、マグネシウムドープのGaN半導体層が堆積される。この発光ダイオードCに連続的に電流を印加したとき、電流値20ミリアンペアにおいて波長450ナノメートル程度の光が出力され、光パワーは1ミリワットである。
図5(A)は、発光ダイオードAの活性領域の表面モフォロジを示す図面である。図5(B)は、発光ダイオードCの活性領域の表面モフォロジを示す図面である。これらの図面は、走査型電子顕微鏡からのデータを用いて作製されている。両図面を比較すると、サファイア基板上に形成された活性領域の表面には、多数のピットが観測される。これらのピットに起因するリーク電流によって、光パワーは大きくならない。発光ダイオードCに連続的に電流を印加したとき、電流値20ミリアンペアにおいて波長450ナノメートル程度の光が出力され、光パワーは1ミリワットである。InAlGaN半導体膜は、GaN基板といったIII族窒化物基板と活性領域との間に設けられるとき、光出力を増加することにおいて有効である。
これまでに説明されたエピタキシャル基板を製造する方法によって、例えば、次のようなエピタキシャル基板が製造できる。このエピタキシャル基板は、III族窒化物ウエハと、活性領域と、活性領域とIII族窒化物基板との間に設けられたIII−V化合物半導体膜とを備える。エピタキシャル基板では、活性領域は、一または複数のInGa1−XN層を含みIII族窒化物基板上に設けられている。III−V化合物半導体膜、少なくともインジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成る。このエピタキシャル基板から製造される半導体素子では、活性領域に加わる応力が低減されている。
また、別のこのエピタキシャル基板は、III族窒化物ウエハと、量子井戸構造を有するInGaN半導体領域と、InGaN半導体領域とIII族窒化物基板との間に設けられたIII−V化合物半導体膜とを備える。エピタキシャル基板では、InGaN半導体領域は、InGaN井戸層およびInGaNバリア層を含む。III−V化合物半導体膜、少なくともインジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含む半導体から成る。このエピタキシャル基板から製造される半導体素子では、InGaN半導体領域に加わる応力が低減されている。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本実施の形態では、例えば、発光ダイオードといった半導体発光素子を説明したけれども、本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。また、本実施の形態では、窒化ガリウム基板上に形成された窒化ガリウム膜について例示的に説明しているけれども、III族窒化物半導体膜を形成することもできる。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
図1(A)は、本発明の実施の形態に係る半導体素子を示す図面である。図1(B)は、本実施の形態の一変形例を示す図面である。 図2は、第2の実施の形態に係る半導体素子を示す図面である。 図3(A)〜図3(C)は、本実施の形態に係る窒化物半導体エピタキシャル基板を形成する方法及び窒化ガリウム系半導体デバイスを製造する方法を示す図面である。 図4(A)および図4(B)は、本実施の形態に係る窒化物半導体エピタキシャル基板を形成する方法及び窒化ガリウム系半導体デバイスを製造する方法を示す図面である。 図5(A)は、発光ダイオードAの活性領域の表面モフォロジを示す図面である。図5(B)は、発光ダイオードCの活性領域の表面モフォロジを示す図面である。
符号の説明
1、1a、1b…半導体発光素子、3…III族窒化物基板、5…活性領域、7…III−V化合物半導体層、9…第1のクラッド層、11…第2のクラッド層、11a…p型半導体層、13…コンタクト層、15…バッファ層、17a、17b…電極、5a…発光領域、19a…井戸層、19b…バリア層、25…III−V化合物半導体層、21…単結晶窒化ガリウム基板、23…OMVPE装置、23a…サセプタ、29…III族窒化物半導体膜、31…第1導電型のIII族窒化物半導体膜、32…窒化物半導体エピタキシャル基板、33…III族窒化物半導体膜、35…III族窒化物半導体膜、37…III族窒化物半導体膜、39…n型のオーミック電極、41…p型のオーミック電極およびパッド電極、CUT1、CUT2…切断線

Claims (6)

  1. 1×10cm−2未満の貫通転位密度を有するIII族窒化物基板と、
    圧縮歪みが加えられた一または複数のInGa1−XN層を含みIII族窒化物基板上に設けられた活性領域と、
    インジウム元素、アルミニウム元素、ガリウム元素および窒素元素を含むIn Al Ga 1−Y―Z N半導体からなり、当該4つの構成元素の全てを含み且つZが0.5以下であり、前記活性領域と前記III族窒化物基板との間に設けられたIII−V化合物半導体層と
    を備え、
    前記III族窒化物基板は窒化ガリウム基板であり、
    前記一または複数のIn Ga 1−X N層は前記窒化ガリウム基板から前記圧縮歪みを受けており、
    前記III−V化合物半導体層の前記InAlGa1−Y―ZN半導体の格子定数(DInAlGaN)とGaN半導体の格子定数(DGaN)との比(DInAlGaN/DGaN)は0.97以上であり、前記比は1.03以下であり、
    前記InGa1−XN層のIn組成Xはゼロより大きく、0.5以下であり、
    前記III−V化合物半導体層は1マイクロメートル以下であり、
    前記III−V化合物半導体層は50ナノメートル以上であり、
    前記III−V化合物半導体層は前記活性領域に対して電位障壁を有し、
    前記III−V化合物半導体層の一部又は全部はn導電型であり、前記活性領域にホールを閉じ込めるように働く、半導体素子。
  2. 前記III−V化合物半導体層はInAlGa1−Y−ZN半導体(0<Y≦0.5、0<Z≦0.5)層である、請求項1に記載された半導体素子。
  3. 前記活性領域に接触するAlGaN層を更に備える、請求項1または請求項2に記載された半導体素子。
  4. 前記活性領域と前記III−V化合物半導体層との間に設けられた第1のクラッド層と、
    前記III族窒化物基板上に設けられた第2のクラッド層と
    を更に備え、
    前記活性領域は、前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との間に設けられる、請求項1又は請求項2に記載された半導体素子。
  5. 前記III族窒化物基板と前記III−V化合物半導体層との間に設けられたバッファ層を更に備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された半導体素子。
  6. III−V化合物半導体のp型半導体層を更に備え、
    前記III−V化合物半導体層は、InAlGa1−Y−ZN半導体(0<Y≦0.5、0<Z≦0.5)のn型半導体層であり、
    前記活性領域は前記p型半導体層と前記n型半導体層との間に設けられる、請求項1に記載された半導体素子。
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