JP4852728B2 - 方法及びキット - Google Patents

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Description

本発明は、ヒト又は動物の被験対象の成長ホルモン欠損症の診断に関して使用される方法及びキットに関する。
推定400人に一人の児童が、特発性下垂体不全が最も一般的な原因である成長ホルモン欠損症(GHD;成長ホルモン欠乏症、成長ホルモン分泌不全症)に罹患している。
GHDを患っている子供では、低身長のみが存在する特徴であると認識されている。成長ホルモン研究学会(Growth Hormone Research Society)では、特定の基準が存在するならば、即時調査を開始すべきであると示唆しており、これらには、1)平均より3標準偏差(SD)を越えて低い身長と定義される重度の低身長症;2)両親の平均身長より1.5SDを越えて低い身長;3)平均より2SDを越えて低い身長及び実年齢の平均より1SDを越えて低い1年を越える身長発育速度、又は2才以上の子供で1年に亘って0.5SDを越えた身長低下;4)低伸長症ではなく、1年以上平均より2SDを越えて低いか、又は2年以上持続して1.5SDを越えて低い身長発育速度;5)頭蓋内病巣に表れる兆候;6)多発性下垂体ホルモン病(MPHD)の兆候;及び7)新生児の病状及びGHDの兆候が含まれる(Growth Hormone Research Society, J. Clin. Endocrinol. Metab. (2000), 85(11), p 3990-3993)。
しかしながら、GHDは、乏しい成長速度を伴う小児疾患とは、もはや単純には考えられない。成人は、健康な身体組成及び代謝を維持するために適切なレベルのGHを必要とする。GHDを患っている成人では、腹部脂肪が増加し、心機能が損なわれ、コレステロールレベルが上昇し、運動能力が低下し、脂肪のない体となり、骨塩量が低下する(Growth Hormone Research Society, J. Clin. Endocrinol. Metab. (1998), 83(2), p 379-381)。下垂体を刺激してGHを放出させる試験が、成人と子供の双方においてGHDの診断に使用されている。レボドパ、クロニジン、アルギニン、インシュリンを含む様々な成長ホルモン放出誘発剤が存在しており、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)及び種々のGHRH類似体が、低身長症を患っている子供及びGHDに関連する所定の範囲の病状を患っている成人におけるGHを分泌する能力を評価するために、単独で又は組合せて使用されている(Greenspan, F.及びBaxter, J.D., Chapter 3, Basic & Clinical Endocrinology, 第4版. (1994) Prentice Hall, USA; 国際公開第94/11396号; 及び国際公開第94/11397号)。
インシュリン及びGHRHプラスアルギニンの組合せは別として、上述した薬剤には、低感受性(「感受性」とは、GHDと正確に診断された被験対象の割合のことである)又は低特異性(「特異性」とは、GHDを患っていないと正確に判断された被験対象の割合である)から生じる問題があり、これは、主として、被験対象間のGH反応にかなりの変動があり、偽陽性結果の割合が高いためである。感受性及び特異性の要約は、以下及び表1に含まれる;理想的には、誘発剤は、感受性及び特異性の双方が≧95%であるべきである(Biller, B. M. Kら J. Clin. Endocrinol. Metab. (2002), 87(5), p2067-2079を参照)。
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静脈内インシュリン不耐性試験(ITT)は、GHD診断のための最も優れたスクリーニング方法であると考えられている(Mahajanら J. Clim. Endocrin. & Metab. (2000), p1473-1476)。しかしながら、この試験には、被験対象に重篤な害をもたらす危険性があり(例えば、低血糖症による糖尿病性昏睡を引き起こす)、よって、被験対象は、スタッフが適切に配された研究班で長期間に亘って継続的に観察されなければならない。このため、ITTは、非常に専門的なセンター外では、スクリーニング手順としては非常に高価なものとなる。
GHRHプラスL-アルギニン試験は、ITT試験とほぼ同程度の予測ができると考えられている。しかしながら、血管拡張、又は潮紅、錯感覚、吐き気、及び味覚異常を含む所定範囲の副作用を誘発する可能性がある(Biller, B. M. Kら J. Clin. Endocrinol. Metab. (2002), 87(5), p2067-2079)。
上記試験の全てにおいて、診断を確立するためには、数時間かけて多くのサンプルをしばしば採取しなければならない。さらに、上述した他の試験では、吐き気、嘔吐、錯感覚、めまい、無力症及び頭痛を含む副作用が生じる(同上)。
最近の数年、数人の研究者が、GH分泌はヘキサレリン(hexarelin)及び種々のヘキサレリン類似体等のGH放出ペプチド(GHRP)と称される合成オリゴペプチドにより刺激され得ることを実証している(Ghigoら, European Journal of Endocrinology, 136, 445-460, 1997)。これらの化合物は、GHRHとは異なる機序を介し(C.Y. Bowers, "Xenobiotic Growth Hormone Secretagogues", Eds. B.Bercu及びR.F. Walker, Pg. 9-28, Springer-Verlag, New York 1996)、視床下部及び下垂体に局在する特定のレセプターと相互作用することにより((a) G. Muccioliら, Journal of Endocrinology, 157, 99-106, 1998; (b) G. Muccioli, "Tissue Distribution of GHRP Receptors in Humans", Abstracts IV European Congress of Endocrinology, Sevilla, Spain, 1998)、作用する。近年、GHRPレセプターは視床下部下垂体系ばかりでなく、一般的にGH放出には関連していない種々のヒト組織中に存在していることが示されている(G. Muccioliら, 上述の(a)参照)。
GHRP及びそれらのアンタゴニストは、例えば次の文献:C.Y. Bowers, 上掲, R. Deghenghi, "Growth Hormone Releasing Peptides",同書, 1996, pg. 85-102; R. Deghenghiら, "Small Peptides as Potent Releasers of Growth Hormone", J. Ped. End. Metab., 8, pg. 311-313, 1996; R. Deghenghi, "The Development of Impervious Peptides as Growth Hormone Secretagogues", Acta Paediatr. Suppl., 423, pg. 85-87, 1997; K. Veeraraganavanら, "Growth Hormone Releasing Peptides (GHRP) Binding to Porcine Anterior Pituitary and Hypothalamic Membranes", Life Sci., 50, Pg. 1149-1155, 1992; 及びT.C. Somersら, "Low Molecular Weight Peptidomimetic Growth Hormone Secretagogues", 国際公開第96/15148号(1996年5月23日), 国際公開第95/14666号, 国際公開第01/96300号, 国際公開第91/18016号, 国際公開第96/10040号, 国際公開第97/22620号, 国際公開第99/62539号, 米国特許第5,646,301号, 米国特許第5,955,421号, 米国特許第5,872,100号, 米国特許第5,668,254号, 米国特許第5,635,379号, 米国特許第6,025,471号に記載されている。
成長ホルモン放出ペプチド6(GHRP-6)は、GHRHと組み合わせて、GHDを診断するための誘発剤として使用されている(米国特許第5,811,074号)。この方法はGHRP-6及びGHRHの静脈内投与に依存しており、診断に達するには多くのサンプルと長時間の試験期間を必要とする。
成長ホルモン放出ペプチド2(GHRP-2)は、静脈内注入又は経鼻投与を介して被験対象に投与される場合にGHDの診断においてある程度の有用性があることが実証されている(Pihokerら J. Clin. Endocrin. & Metab. (1995), p2987-2992)。また、GHRP-2が静脈内投与を介してGHRHと組合せられる場合、相乗効果が生じ、さらに正確な結果が生じることも記されている。しかしながら、記載された方法は、診断を可能とする前に、被験対象から多くのサンプルと何時間にもわたる期間を必要とするものである。
上記試験(Mahajanら J. Clin. Endorin. & Metab. (2000), p1473-1476)の改良版では、GHRP-2及びGHRHが併せて静脈内投与され、診断のために血液の単一サンプルが採取される。該文献には、経口投与がこの併用療法に効果的であることについては示唆されていない。
最近、科研製薬が、静脈内投与用に承認されているGHRP-2を使用したGHD診断キットを日本市場で発売した。
本発明者らは、成長ホルモン分泌促進剤(GHSs)EP1572及びEP1573の経口投与が、GHDの診断に効果的かつ信頼性をもって使用可能であることを見出した。
EP1572(式I)又はEP1573(式II)は、経口的に付与され得るGHSs(それぞれEP1572及びEP1573である国際公開第01/96300号の実施例1及び実施例58を参照)である。
Figure 0004852728
Figure 0004852728
EP1572及びEP1573は、H-Aib-D-Trp-D-gTrp-CHO及びH-Aib-D-Trp-D-gTrp-C(O)NHCHCHとしてもまた定義することができる。ここで、Hは水素、Aibはアミノイソブチル、Dは右旋性異性体、Trpはトリプトファン、gTrpは式IIIの基である。
Figure 0004852728
本発明の第1の態様は、ヒト又は動物の被験対象の成長ホルモン欠損症(GHD)を判断する方法を提供するものであり、該方法は、EP1572又はEP1573を被験対象に経口的に投与し、被験対象から少なくとも一の投与後サンプルを得、該サンプル又はサンプル群中の成長ホルモン(GH)レベルを測定し、サンプル又はサンプル群中のGHレベルが被験対象におけるGHDを示すかどうかを判断することを含む。
典型的には、少なくとも一の投与後サンプル中のGHレベルは、GHDでないことが知られている被験対象からの等価な投与後サンプル中に見出され得るレベル、及び/又はGHDであることが知られている被験対象からの等価な投与後サンプル中に見出され得るレベルと比較される。簡便には、EP1572又はEP1573の投与後に処置される被験対象に放出されるGHのピーク濃度が、GHDでないことが知られている被験対象で見出されるピーク濃度、及び/又はGHDであることが知られている被験対象で見出されるピーク濃度と比較され得、双方の場合においてEP1572及びEP1573の投与後である。
好ましくは、被験対象に投与されるEP1572又はEP1573の量は、18〜75mgである。典型的には、投与される量は0.5mg/kgであるが、0.1mg/kg〜1.0mg/kg、又は医師により特定される量であってもよい。肥満体の被験対象には、より多くの用量を使用する必要があるかもしれない。典型的には、被験対象に与えられるEP1572又はEP1573の量は、被験対象において可能なGH最大放出を誘発する量であると理解される。典型的には、被験対象に与えられる量は、被験対象にGH最大放出を誘発する最小量の1〜3倍である。
とにかく、医師又は当業者は、個々の被験対象に最も適した実際の用量を決定することができるであろうし、それは、種、年齢、体重、性別、腎機能、肝機能、及びEP1572又はEP1573で処置された特定の被験対象の反応により変わり得る。上述した用量は平均的な場合の例であり;もちろん、より多い又は少ない用量範囲が有益である個々の例もあり得、これもこの発明の範囲に入る。
好ましくは、少なくとも一の投与前サンプルは、EP1572又はEP1573の投与前に採取し、一又は複数の投与後サンプルは、投与後、適切な時間間隔で採取される。各サンプル間の時間間隔は15〜30分であり、サンプルは、投与後3時間までに採取しうる。より好ましくは、サンプルは、EP1572又はEP1573の経口投与時間に対して−30、及び/又は−15、0、15、30、60、90及び120分で採取される。典型的には、1又は2のサンプルは、EP1572又はEP1573の投与前に採取され、典型的には、2又は3又は4又は5のサンプルは、EP1572又はEP1573の投与後、様々な時間に採取される。
本発明は、ヒト又は動物の被験対象がGHDに罹患しているかどうかを診断するための方法を含み、該方法は、被験対象にEP1572又はEP1573を経口的に投与し、ヒト又は動物の被験対象からサンプルを得、サンプル中のGHレベルを測定し、該レベルが、被験対象におけるGHDの兆候であるかどうかを判断することを含むことが理解されるであろう。この判断は診断を補助するであろうし、診断に達するように他の試験又は医師による観察と組合せられうることが理解されるであろう。
本発明は、被験対象にEP1572又はEP1573を経口投与し、被験対象から投与後のサンプルを得、サンプル中の成長ホルモン(GH)レベルを測定し、サンプル中のGHレベルが、被験対象におけるGHDを示すかどうかを判断することを含む。
本発明の第2の態様は、ヒト又は動物の被験対象におけるGHDを判断する方法を提供するものであり、該方法は、EP1572又はEP1573が経口的に投与された被験対象から少なくとも一の投与後サンプルを得、サンプル又はサンプル群中の成長ホルモン(GH)レベルを測定し、サンプル又はサンプル群中のGHレベルが、被験対象における成長ホルモン欠損症を示すかどうかを判断することを含む。
いずれかの態様におけるヒト又は動物の被験対象は、子供又は成人であってよい。動物の被験対象は任意の哺乳動物の被験対象であってよいが、典型的には、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ及びイヌからなる群から選択される。
好ましくは、サンプルは、EP1572又はEP1573の投与前に被験対象から採取されて提供されるもの(すなわち投与前サンプル)であり、一又は複数のサンプルは、投与後、適切な時間間隔の後に被験対象から採取されて提供されるもの(すなわち投与後サンプル)である。各サンプル間の時間間隔は15〜30分とすることができる。より好ましくは、提供されるサンプルは、EP1572又はEP1573の経口投与時間に対して−30、及び/又は−15、0、15、30、60、90及び120分に被験対象から採取される。典型的には、提供される1又は2のサンプルは、EP1572又はEP1573の投与前に採取され、典型的には、提供される2又は3又は4又は5のサンプルは、EP1572又はEP1573の投与後、様々な時間で採取される。
本発明は、被験対象がGHDに罹患しているかどうかを診断する方法を含み、該方法は、EP1572又はEP1573が経口的に投与された被験対象から少なくとも一の投与後サンプルを得、サンプル又はサンプル群中の成長ホルモン(GH)レベルを測定し、サンプル又はサンプル群中のGHレベルが、被験対象における成長ホルモン欠損症を示すかどうかを判断することを含むと理解される。
本発明は、被験対象にEP1572又はEP1573を経口投与し、被験対象から投与後のサンプルを得、サンプルにおける成長ホルモン(GH)レベルを測定し、サンプル中のGHレベルが、被験対象におけるGHDの兆候であるかどうかを判断することを含む。
典型的には、少なくとも一の投与後サンプル中のGHレベルが、GHDでないことが知られている被験対象からの等価な投与後サンプル中に見出され得るレベル、及び/又はGHDであることが知られている被験対象からの等価な投与後サンプル中に見出され得るレベルと比較される。簡便には、EP1572又はEP1573の投与後に処置される被験対象に放出されるGHのピーク濃度が、GHDでないことが知られている被験対象で見出されるピーク濃度、及び/又はGHDであることが知られている被験対象で見出されるピーク濃度と比較され得、双方の場合においてEP1572及びEP1573の投与後である。
本発明は、低身長症の子供又はGHDが疑われている子供、例えば癌(例えば白血病)で生存している子供、脳外科手術及び/又は下垂体手術及び/又は化学治療及び/又は放射線治療及び/又は脳損傷を受けた子供の診断評価に使用可能であることが理解されるであろう。
本発明は、小児期にGHDと診断された成人、又はGHDが疑われている成人、例えば癌で生存している成人、脳外科手術及び/又は下垂体手術及び/又は化学治療及び/又は放射線治療及び/又は脳損傷を受けた成人、及び/又は下垂体腺腫を患っている成人又は下垂体腺腫の処置を受けた成人の診断評価に使用可能であると理解されるであろう。
さらに、通常、GHDに対する試験を受けたある被験対象集団、例えばHIVを患っている被験対象は、この診断評価から恩恵を被ることもまた認識されるであろう。
好ましくは、被験対象はEP1572又はEP1573の投与前、一晩絶食している。さらに、被験対象が他のホルモン障害を患っていることが分かっているならば、GHD診断を受ける前に、その疾患を安定にするための、適切な治療法を施してもよい(例えば、レボチロキシンでの甲状腺機能低下症の治療)。
投与前サンプルとは、EP1572又はEP1573を経口投与する前に被験対象から採取されるサンプルを意味する。
投与後サンプルとは、EP1572又はEP1573を経口投与した後に被験対象から採取されるサンプルを意味する。
ヒト又は動物の被験対象からのサンプルは、任意の適切なサンプルであってよい。本発明の特定の実施態様において、適切なサンプルは、判断(例えば診断)されたヒト又は動物の被験対象から得られたものであり、このサンプルはGHレベルを分析するために提供される。便宜的に、サンプルは流動サンプルであり、血液、血清又は血漿であってよい。サンプルが被験対象から採取された又は提供された血液サンプルである場合に特に便利であり、ここでサンプル中の成長ホルモンのレベルは、サンプル中のGHレベルを測定するための任意の適切な手段を使用して測定される。
サンプル中のGHレベルを測定するための適切な手段の具体例は、限定されるものではないが、GHに選択的に結合する薬剤、例えば抗体又は抗体様分子を使用し、GHを測定するもの(例えば、イムノアッセイ)である。これらには、ポリクローナル抗体ベースの免疫放射線測定法(p-IRMA)、モノクローナル抗体ベースのIRMA(m-IRMA)、モノクローナル抗体ベースの時間分解免疫蛍光測定法(trIFMA)、放射性レセプターアッセイ、バイオアッセイ及び免疫機能分析(IFA)(Ranke, M.B.(編): Diagnostics of Endocrine Function in Children and adolescents, Basel, Karger, 2003, pp107-128及びChatarine Janssonら, Clin. Chem. (1997) 43(6), pp 950-956を参照)が含まれる。上述のアッセイの例には、Microwell ELISAヒト成長ホルモンイムノアッセイ試験用キット、Diagnostic Automation INC., Calabasas, California 91302 USA (カタログ番号1901);ヒトGHを定量測定するためのイムノアッセイ、Nichols Diagnostic Institute, San Juan Capistrano, California, US (カタログ番号62-7056);及びヒトGH IRMAキット、Institute of Isotopes Co. Ltd., Budapest, Hungaryが含まれる。
投与後サンプル又はサンプル群中のGHレベル、及び/又は投与後サンプル中のGHレベルを測定することにより決定されるGH生成の動態は、ヒト又は動物の被験対象がGHDであるかどうかを判断するために使用されうる。GH欠損症であることを示すGHレベル又はGH生成動態は容易に測定され、良好な特異性及び感受性を与えるパラメータが使用される。上で検討されたように、測定されるレベルは、同じ試験レジメを受けた正常な被験対象(GHDではない)又は既知のGHD被験対象に見出されるレベルと比較され得る。本発明の一実施態様では、EP1572又はEP1573を使用する最大誘発後に見出されるGHのカットオフレベルを使用し、GHDを判断してもよい。特定用量のEP1572及びEP1573に対する適切なカットオフレベルは容易に測定される。
本発明の第3の態様は、ヒト又は動物の被験対象における成長ホルモン欠損症を判断するキットにおけるEP1572又はEP1573の使用を提供する。典型的には、キットは、ヒト又は動物の被験対象におけるGHDを診断するために使用される。
本発明は、ヒト又は動物の被験対象の成長ホルモン欠損症を判断するためのキットにおけるEP1572又はEP1573の使用を含み、ここでEP1572又はEP1573は経口的に投与される。典型的には、キットは、ヒト又は動物の被験対象のGHDを診断するために使用される。
本発明の第4の態様は、ヒト又は動物の被験対象の成長ホルモン欠損症を判断するために経口投与される組成物の製造におけるEP1572又はEP1573の使用を提供する。
好ましくは、組成物は、単一経口用量の適切量のEP1572又はEP1573を含む。典型的には、ヒト又は動物の被験対象のGHDの判断は、EP1572又はEP1573の投与後に採取されたサンプル(群)(投与後サンプル(群))中のGHレベルを測定することによりなされる。典型的には、少なくとも一のサンプルはEP1572又はEP1573の投与前に採取される(投与前サンプル)。
本発明は、ヒト又は動物の被験対象の成長ホルモン欠損症を判断するために経口投与される組成物の製造におけるEP1572又はEP1573の使用を含む。
本発明の第5の態様は、
(a)経口投与用に処方されたEP1572又はEP1573と;
(b)サンプル中の成長ホルモンレベルを測定する手段;
を含む診断キットを構成するパーツのキットを提供することにある。
好ましくは、組成物は、単一経口用量で適切な量のEP1572又はEP1573を含む。典型的には、ヒト又は動物の被験対象のGHDの判断は、EP1572又はEP1573の投与後に採取されたサンプル(群)(投与後サンプル(群))中のGHレベルを測定することによりなされる。典型的には、サンプルはEP1572又はEP1573の投与前に採取され(投与前サンプル)、投与後サンプル中のGHのピークレベルが測定される。好ましくは、GHレベルを測定するための手段は、上述したものである。より好ましくは、サンプル中のGHレベルを測定する手段は、限定されるものではないが、GHに選択的に結合する薬剤、例えば抗体又は抗体様分子を使用し、GHを測定するもの(例えば、イムノアッセイ)、特にポリクローナル抗体ベースの免疫放射線測定法(p-IRMA)、モノクローナル抗体ベースのIRMA(m-IRMA)、モノクローナル抗体ベースの時間分解免疫蛍光測定法(trIFMA)、放射性レセプターアッセイ、バイオアッセイ又は免疫機能分析(IFA)である。
パーツのキットは、診断に達するのに必要な工程を説明している診断キットの使用に対する説明書のセットをさらに含んでいてもよい。好ましくは、サンプル中の成長ホルモンレベルを測定する手段はイムノアッセイである。
また、パーツのキットはGHDの判断のためのシステムであるとみなすこともできる。典型的には、システムは、経口製剤中のEP1572及びEP1573と、GH用のイムノアッセイを含む。
さらに、EP1572又はEP1573は、ヒト又は動物の被験対象のGHDを判断するのにそれ自体で有用であるが、一又は複数の誘発剤、例えばレボドパ、クロニジン、アルギニン、インシュリン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、GHRHの種々の類似体、GHRPで、ヒト又は動物の被験対象においてGHDを判断するものと組合せて、EP1572又はEP1573を使用することも有益である。また、EP1572又はEP1573は、成長ホルモン学会(Growth Hormone Society)のガイドラインに記載されている試験(J. Clin. Endocrinol. Metab. (2000), 85(11), p 3990-3993)及びJ. Clin. Endocrinol. Metab. (1998), 83(2), p 379-381)等、GHD用の他の試験に対する補助として、又は組合せて使用されてもよい。
よって、本発明の第1及び第2の態様の方法では、ヒト又は動物の被験対象に、一又は複数の他の誘発剤並びにEP1572又はEP1573が投与されうる。同様に、本発明の第3及び第5の態様では、キットは一又は複数の他の誘発剤並びにEP1572又はEP1573をさらに含んでいてもよい。本発明の第4の態様では、組成物は、一又は複数の他の誘発剤をさらに含有していてもよく、又はヒトもしくは動物の被験対象には、一又は複数の誘発剤が投与されてもよい。
ヒト又は動物の被験対象は、一又は複数の他の誘発剤を使用して、別々にかつ独立してGHDが判断されることが理解されるであろう。
また、本発明の方法及びキットには、上述した兆候又は他のものに使用されるかどうかによらず、従来技術で知られた方法及びキットよりも、効果的であり、毒性が少なく、あまり副作用が生じることなく、及び/又は良好な薬物動態プロファイルを有し、及び/又は他の有用な薬理学的特性を有しているという利点がある。
この明細書において先に公開された文献の列挙又は論議は、文献が従来技術の一部であるか又は技術常識であることを認めたものと必ずしも取ってはならない。
特許明細書に引用された全ての文献は、出典明示によりここに援用する。
以下の非限定的な実施例及び図を参照して、本発明をさらに詳細に記載する。
実施例1:EP1572の経口生物学的利用能及び経口投与後のGHの誘導
EP15727を用いた誘発試験の後、EP1572の薬物動態プロファイル及び経口投与に応じて放出されるGHレベルを、種々の用量で36人の健常な男性被験対象において確証した。
70kgの体重の被験対象について使用された各用量の製剤を以下に記載する。
0.005mg/kgに対して、6mgのEP1572を40mLの蒸留水に溶解させた。この溶液のアリコート2.33mLを、17.67mLの水で希釈して、20mLの溶液として最終用量の製剤を作製した。
0.05mg/kgに対して、15mgのEP1572を40mLの蒸留水に溶解させた。この溶液のアリコート9.33mLを、10.67mLの水で希釈して、20mLの溶液として最終用量の製剤を作製した。
0.125mg/kgに対して、8.75mgのEP1572を、20mLの蒸留水と40μLの塩酸1モル溶液を含有する溶液に溶解させた。
0.25mg/kgに対して、17.5mgのEP1572を、20mLの蒸留水と40μLの塩酸1モル溶液を含有する溶液に溶解させた。
0.5mg/kgに対して、35mgのEP1572を、20mLの蒸留水と40μLの塩酸1モル溶液を含有する溶液に溶解させた。
EP1572の投与の30分及び15分前に、血液サンプルを被験対象から採取した。0.5mg/kgのEP1572を含む水性製剤を被験対象に経口投与する直前に、被験対象から血液サンプルを採取した。投与から15、30、60、90、120、150、180、210、240、270及び300分後、被験対象からさらに血液サンプルを採取し、各サンプルの一部を、以下に概説するアッセイプロトコルに従いプロセシングした。各サンプル中に存在するGHのレベルを、以下に概説するアッセイ方法により測定し、被験対象に対するピーク濃度(Cmax)を測定した。サンプルの残りを使用し、体循環中に存在するEP1572のレベルを測定した(以下に概説)。
GHレベルアッセイ
製造者の標準操作手順に記載された材料と方法(Nichols Institute Diagnostics, 1311 Calle Batido, San Clemente, California 92673, USA)を使用し、ヒト血清中のヒト成長ホルモン濃度を定性的測定するニコルズ・アドバンテージ(登録商標)・スペシャルティー・システム(Nichols Advantage Specialty System)を用いて、ニコルズ・アドバンテージ(登録商標)ヒト成長ホルモンイムノアッセイを使用するアッセイを実施した。
血液中のEP1572レベルを測定するためのアッセイ
ヒト血漿中の有機成分を、全量500mLの酢酸エチル/イソ-プロパノール混合物(それぞれ82.5%及び17.5%)を使用して抽出した。収集した有機フラクションの乾燥(硫酸ナトリウムを使用)及び濃縮後、メタノール、水及びギ酸(それぞれ65%、35%及び0.1%)の溶出混合物を使用し、検体を逆相HPLC(メルク社(Merck)、逆相シリカゲル、LiChroCART、125x4mm)により分離させ、質量分析計(Finnigan TSQ 7000)により分析した。内部標準としてEP1573を用い、定量を実施した(ピーク面積比評価)。
上述した製剤を使用し、0.005、0.05、0.25及び0.125mg/kgの用量を被験対象に投与し、さらなる投薬実験を実施した。
結果を、以下の図1〜3及び表2に報告する。
Figure 0004852728
AUC=曲線下の面積
Cmax=最大観測濃度
Tmax=最大観測濃度に達する時間
実施例2:GHRH+Arg試験に対するEP1572の感受性及び特異性の比較
被験対象(健常か、又は成人発症視床下部下垂体疾患又は多発性下垂体ホルモン欠損症が疑われる)に、GHRHプラスL-アルギニン試験又は経口投与EP1572を利用する試験のいずれかを施す。
静脈内ボーラス投与された1μg/kg用量のGHRHを用い、続いて30gのL-アルギニンを30分注入することにより、Biller, B. M. Kら J. Clin. Endocrinol. Metab. (2002),87(5), p2067-2079に記載されているようにして、GHRHプラスL-アルギニン試験を実施する。血液サンプルを、投与の−30又は−15、0、15、30、60、90、120及び150分後に被験対象から採取する。
0.5mg/kg用量を使用し、上述したようにしてEP1572試験を実施し、血液サンプルを、投与−30分又は−15、0、15、30、60、90、120及び150分後に被験対象から採取する。
少なくとも7日後、GHRHプラスL-アルギニン試験にかけた被験対象に、EP1572試験を施し、またその逆も行う。
ついで、上で参照したアッセイに記載されているようにして、サンプルを分析し、その結果を使用し、Biller, B. M. K. et al. J. Clin. Endocrinol. Metab. (2002), 87(5), p2067-2079に記載されているようにして、結果の統計的分析(95%感受性、95%特異性)に基づき、被験対象がGHDであるかどうかを決定する。
実施例3:標準的プロトコル
EP1572サンプル50mgを、100mLの精製水を添加することにより、250mLの目盛り付きバイアルにおいて振盪し、溶解させる。また、25mgのEP1572をそれぞれ含有する2つの分散性錠剤も、同様の方法で溶解させることができる。
被験対象から、EP1572投与の15分前に、血液サンプルを採取する。体重1kg当たり50mg又は1mLのいずれかの固定用量で、EP1572水溶液を被験対象に経口的に投与する直前に、血液サンプルを被験対象から採取する。投与から15、30、60、90及び120分後、被験対象からさらに血液サンプルを採取し、各サンプル中に存在するGHのレベルを、上述したアッセイ法により測定し、ついでそのピークレベルを使用し、被験対象がGHDに罹患しているかどうかを決定する。正常なヒトと比較したときに、GH濃度が欠如しているか又はその増加度が鈍い場合はGHDを示している。
実施例4:臨床的に使用されるEP1572の調製
1.50mLのシリンジ及び針を用いて、EP1572を含む100mlのボトルに、潅注用の水50mlを注入する。
2.完全に溶解するまで、ボトルを激しく振盪する。ボトルを開け、ガラスビーカー/測定用シリンダーに溶液を注ぐ。
3.潅注用の水をさらに50ml用いて100mlのガラスボトルをすすぎ、ガラスビーカー/測定用シリンダーに溶液を注ぐことで、EP1572の最終濃度約0.5mg/mlが得られる。
4.賦形剤の入ったサシェの全ての内容物を添加し、それを溶解させる。
5.被験対象の体重に応じて、適切な容量の溶液を分別用メスシリンダーで測定することで、0.5mg/kg(すなわち、体重1kg当たり1mlの溶液)のEP1572の用量が得られる。
6.被験対象の体重>100kgであるならば、成分の第2セットを用いて、工程1−4を繰り返す。
7.溶液は、被験対象に直ぐに投与されなければならない。
実施例5:臨床的に使用されるEP1572の調製
EP1572(50mg)と賦形剤を収容しているサシェの全ての内容物を、100mLの精製水を添加することにより、バイアル内で振盪して溶解させる(サシェの可能な内容物については表3を参照)。被験対象の体重に応じて、適切な容量の溶液を分別用メスシリンダーで測定することで、0.5mg/kg(すなわち、体重1kg当たり1mlの溶液)のEP1572の用量が得られる。被験対象の体重>100kgであるならば、さらなるサシェを100mLの精製水に溶解させる。溶液は、直ちに被験対象に投与されなければならない。
Figure 0004852728
健常な男性被験対象に様々な用量のEP1572を経口投与した後のEP1572の血漿濃度(平均±SEM)を示す。 健常な男性被験対象に様々な用量のEP1572を経口投与した後に放出される成長ホルモンの血漿濃度(平均±SEM)を示す。 健常な男性被験対象におけるベースラインを越えた、全GH分泌に対する様々な用量の経口EP1572の用量反応を示す。

Claims (8)

  1. ヒト又は動物の被験対象の下垂体関連成長ホルモン欠損症を判断するためのキットであって
    該キットはH−Aib−D−Trp−D−gTrp−CHO(EP1572)を含み;
    EP1572を経口的に投与された被験対象から少なくとも一の投与後サンプル中の成長ホルモンレベルを、下垂体関連成長ホルモン欠損症を有していないと知られている披験対象からの対応する投与後サンプル中で観察され得るレベルおよび/または下垂体関連成長ホルモン欠損症を有していると知られている披験対象からの対応する投与後サンプル中で観察され得るレベルと比較することにより、成長ホルモンレベルが、被験対象の下垂体関連成長ホルモン欠損症を示し;
    サンプルが血液サンプル、血清サンプル又は血漿サンプルであり;
    サンプル中の成長ホルモンレベルはイムノアッセイを使用して測定され;
    15〜120分の間の時間間隔後に採取された一又は複数の投与後サンプルが提供され;
    投与されるEP1572の量が18〜75mgである、キット。
  2. ヒト又は動物の被験対象の下垂体関連成長ホルモン欠損症を判断するためのキットであって
    該キットはH−Aib−D−Trp−D−gTrp−CHO(EP1572)を経口的に投与された被験対象から少なくとも一の投与後サンプルを含み;
    少なくとも一の投与後サンプル中の成長ホルモンレベルを、下垂体関連成長ホルモン欠損症を有していないと知られている披験対象からの対応する投与後サンプル中で観察され得るレベルおよび/または下垂体関連成長ホルモン欠損症を有していると知られている披験対象からの対応する投与後サンプル中で観察され得るレベルと比較することにより、成長ホルモンレベルが、被験対象の下垂体関連成長ホルモン欠損症を示し;
    サンプルが血液サンプル、血清サンプル又は血漿サンプルであり;
    サンプル中の成長ホルモンレベルはイムノアッセイを使用して測定され;
    15分から120分の間の時間間隔後に採取された一又は複数の投与後サンプルが提供され;
    投与されるEP1572の量が18〜75mgである、キット。
  3. EP1572の投与前の被験対象からのサンプルが提供される請求項1または2に記載のキット
  4. 一又は複数の投与後サンプルが15〜30分の時間間隔後に採取される請求項1または2に記載のキット
  5. EP1572の経口投与時間に対して、−30又は−15、0、15、30、60、90及び120分で採取されたサンプルが提供される請求項1または2に記載のキット
  6. タイムフレーム中に放出された成長ホルモンのピークレベルの評価が、被験対象の下垂体関連成長ホルモン欠損症を示すために使用される請求項1ないし5のいずれか1項に記載のキット
  7. ヒト又は動物の被験対象が子供又は成人のいずれかであってよい請求項1ないし6のいずれか1項に記載のキット
  8. 動物の被験対象が、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ネコ又はイヌである請求項1ないし7のいずれか1項に記載のキット
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