JP4849500B2 - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁皮膜で被覆されたFe−Si系磁性粉末からなる圧粉磁心およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等、我々の周囲には電磁気を利用した製品が多々ある。これらの製品は交番磁界を利用したものが多く、その交番磁界は、通常、磁心(軟磁石)を中央に配設したコイルによって発生される。このため、電磁機器の性能は、そのコイルの性能に左右され、さらに、コイルの性能は、上記磁心の性能に左右される。従って、電磁機器の性能向上や小型化等を図る際に、磁心の性能向上や小型化等を図ることが非常に重要となってくる。
【0003】
一般的に、磁心は、先ず、交番磁界中で大きな磁束密度が得られることが求められる。次に、交番磁界中で使用したときに、その周波数に応じて生じる高周波損失(鉄損)が少ないことが求められる。この高周波損失には、渦電流損失、ヒステリシス損失および残留損失があるが、主に問題となるのは、渦電流損失とヒステリシス損失である。さらに、磁心が交番磁界に追従して素早く大きな磁束密度を発生させるには、その保磁力が小さいことも重要である。なお、この保磁力を低減させることで、(初期)透磁率の向上とヒステリシス損失の低減とを併せて図れる。
従来の磁心では、これらの要求を同時に満たすことは難しかったが、最近では、圧粉磁心を用いることでそれらの要求を高次元で満足させつつある。この圧粉磁心は、各粒子を絶縁皮膜で被覆した磁性粉末を加圧成形したものであり、比抵抗の増大による高周波損失の低減と高密度化による磁束密度の増加とを図ったものである。
【0004】
ところで、このような磁性粉末は、純鉄、Fe−Ni系合金、Fe−Ni−Mo系合金(パーマロイ)、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金(センダスト)等からなる粉末がこれまで主に用いられてきた。この中でも、比抵抗が大きく、リアクトルに要求される直流重畳特性にも優れ、安価なFe−Si系磁性粉末(Fe−Si−Al系磁性粉末等を含む。)が多用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Fe−Si系磁性粉末を用いた場合、そのSi含有量の増加につれてその硬さが増し、圧粉磁心の成形性が著しく阻害される。このようなFe−Si系磁性粉末を無理に高圧成形すれば、金型との間でかじり等を生じて粉末成形体の取出しすら困難となり、何よりも、金型寿命を著しく低下させてしまう。
このような事情により、従来のFe−Si系磁性粉末からなる圧粉磁心は、自ずとその強度、密度等が低いものとなり、十分な性能を有するものではなかった。例えば、そのSi含有量にも依るが、圧粉磁心の密度(嵩密度)は高々6.0〜6.5g/cm3程度であり、7.0g/cm3を越えるようなものはほとんどなかった。このため、その密度に応じた低い磁束密度の圧粉磁心しか存在していなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、従来よりも高密度で磁気的特性に優れた、Fe−Si系磁性粉末から圧粉磁心とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、従来になく高密度の、Fe−Si系磁性粉末からなる圧粉磁心を得ることに成功し、本発明を完成させるに至ったものである。
(圧粉磁心)
すなわち、本発明の圧粉磁心は、絶縁皮膜で被覆された、FeおよびSiを主成分とする磁性粉末を高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された成形用金型内へ充填する充填工程と、該成形用金型に充填された該磁性粉末を温間で加圧成形して該成形用金型の内面に接する該磁性粉末の表面に金属石鹸皮膜を生成させる成形工程とを経て得られる圧粉磁心において、
該磁性粉末中のSi含有量(X:質量%)は3〜7質量%であり、前記充填工程は、前記絶縁皮膜で被覆された磁性粉末100質量%に対して0.1〜0.5質量%の内部潤滑剤を含有した該磁性粉末を前記成形用金型へ充填する工程であり、該磁性粉末の真密度(ρ0)に対する該成形工程を経て得られた圧粉磁心の嵩密度(ρ)の比である密度比(ρ/ρ0:%)がρ/ρ0≧94−X (%)・・・(1)であり、
10kA/mの磁場中における磁束密度B10kが1.0T以上であり、
5kHzおよび0.2Tの条件下でのヒステリシス損失が250kW/m3以下であり、
高密度、高磁束密度および低損失であることを特徴とする。
【0008】
本発明者は、従来、高密度化が困難と考えられていたFe−Si系磁性粉末を用いた場合でも、例えば、後述の製造方法(金型潤滑温間加圧成形法)を用いることにより、従来になく高密度の圧粉磁心を得ることに成功した。勿論、Si含有量により原料粉末であるFe−Si系磁性粉末の塑性変形能は異なるため、得られた圧粉磁心の密度も自ずと、Si含有量の影響を受けることになる。つまり、Si含有量が増える程、圧粉磁心の高密度化を図ることが一般的に困難となる。
そこで、本発明では、その圧粉磁心が如何に高密度であるかを、その指標である密度比とSi含有量との相関を示す上式(1)を用いて明確にした。そして、従来のものに比較して、同Si含有量で、密度比が2〜10%程度も向上した圧粉磁心が得られた。
なお、式(1)の右辺は、95−X(%)、96−X(%)、さらには97−X(%)であるとより好ましい。
【0009】
(圧粉磁心の製造方法)
上記圧粉磁心は、例えば、次の本発明の製造方法によって製造できる。
すなわち、絶縁皮膜で被覆された、FeとSiとを主成分とする磁性粉末を高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された成形用金型内へ充填する充填工程と、該成形用金型内に充填された該磁性粉末を温間で加圧成形して該成形用金型の内面に接する該磁性粉末の表面に金属石鹸皮膜を生成させる成形工程とからなり、該磁性粉末中のSi含有量(X:質量%)は3〜質量%であり、前記充填工程は、前記絶縁皮膜で被覆された磁性粉末100質量%に対して0.1〜0.5質量%の内部潤滑剤を含有した該磁性粉末を前記成形用金型へ充填する工程であり、本発明に係る圧粉磁心が得られることを特徴とする圧粉磁心の製造方法を用いることができる。
【0010】
上記の充填工程と成形工程とを有する製造方法を、以降では適宜、金型潤滑温間加圧成形法という。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明の圧粉磁心のみならず、その製造方法にも、適宜、適用できるものであることを断っておく。
(1)磁性粉末
本発明で対象とする磁性粉末は、前述のように、FeおよびSiを主成分とするFe−Si系磁性粉末である。Si含有量は、少ない程、塑性変形能が向上して高密度の圧粉磁心が得られる点で好ましいが、圧粉磁心に求められる比抵抗、磁束密度、強度、高周波特性、重畳特性等とのかね合いでSi含有量は決定される。そこで例えば、Si含有量が、1〜10質量%、2〜8質量%、さらには3〜7質量%であると好適である。
Fe−Si系磁性粉末は、所定量のSiと残部Feと不可避不純物とからなる合金粉末でも良いし、その他の元素を含んでいても良い。そのような元素として、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等がある。
【0012】
磁性粉末は、ガスアトマイズや水アトマイズ等のアトマイズ粉末でも良いし、合金インゴットをボールミル等で粉砕した粉砕粉でも良い。もっとも、球状の粒子からなるアトマイズ粉末よりも、各粒子の形状が異なる粉砕粉の方が形状効果によって高強度で高強度の圧粉磁心が得られる。
磁性粉末の粒径は、圧粉磁心の高密度化の観点から、20〜300μm、さらには50〜200μmであると好ましい。本発明者が試験したところ、渦電流損失の低減を図る観点からは、その粒径が細かい程好ましく、例えば、50μm以下とすると良い。一方、ヒステリシス損失の低減を図る観点からは、粒径を粗くする方が好ましく、例えば、100μm以上とすると良い。なお、磁性粉末の分級は、篩い分法等により容易に行える。
【0013】
(2)絶縁皮膜
絶縁皮膜には、樹脂被膜、リン酸塩被膜、酸化被膜等がある。中でも、耐熱性に優れる酸化被膜を用いると、後述の焼鈍工程を行った際にも絶縁皮膜の破壊が抑制、防止されるので好ましい。このような耐熱性のある酸化被膜として、SiO2皮膜が代表的であるが、この他にも、Al23、TiO2、ZrO2およびそれらの複合酸化物系絶縁皮膜等を使用することができる。
なお、これらの被膜は、それら自体をコーティングして得られたものでも、磁性粉末中の成分であるSiと酸素(O)とが反応して形成されたものでも、さらには磁性粉末中の成分であるFeとリン酸等の処理液とが反応して得られたものでも良い。
【0014】
ところで、本発明の製造方法のように、磁性粉末を温間加圧成形する場合、成形用金型の内壁面と磁性粉末との間に非常に潤滑性に富んだ新たな潤滑剤(金属石鹸被膜)が形成される。この金属石鹸皮膜はFeを含むとき(例えば、高級脂肪酸の鉄塩被膜のとき)、最も優れた潤滑性を示す。従って、そのような被膜の形成を促進する観点からも、絶縁皮膜自体がFeを含んだ組成であると、一層好適である。
そのような絶縁皮膜は、例えば、リン酸塩系であればリン酸鉄が、酸化物系であればFeSiO3、FeAl24、NiFe24などのFeとの複合酸化物系が望ましい。
絶縁皮膜は、膜厚が厚くなるほど比抵抗が大きくなるが、膜厚があまり厚いと、成形された圧粉磁心の磁束密度が低下する。そこで、圧粉磁心の磁束密度と比抵抗とを確保する観点から、膜厚は、1〜1000nm、さらには、10〜100nmであると好ましい。
【0015】
(3)圧粉磁心の特性
本発明の圧粉磁心は、Fe−Si系磁性粉末からなるために比抵抗が大きくて渦電流損失が小さいことは勿論、高密度であるためヒステリシス損失も小さい。このため、ヒステリシス損失が支配的となる低周波数域で本発明の圧粉磁心を使用した場合でも、それらの損失の和である鉄損が従来になく低減される。さらに、Si含有量に応じた高密度が実現されているため、本発明の圧粉磁心が磁気的特性にも優れることはいうまでもない。
【0016】
次に、このような圧粉磁心の特性について個別に説明する。
▲1▼圧粉磁心の電気的特性を指標する比抵抗は、形状に依存しない圧粉磁心ごとの固有値であり、同形状の圧粉磁心であれば比抵抗が大きいほど、渦電流損失は小さくなる。この比抵抗は、磁性粉末の材質や粒径形状、絶縁皮膜の材質や膜厚、熱処理(焼鈍)の有無等によって異なる。
例えば、圧粉磁心の成形後に焼鈍を行わない場合なら、比抵抗は、1000μΩm以上、さらには、10000μΩm以上であると好ましい。また、焼鈍を行う場合でも、比抵抗が100μΩm以上、さらには、1000μΩm以上であると好ましい。
【0017】
▲2▼圧粉磁心の磁気的特性を指標する磁束密度は、当然ながら、圧粉磁心が置かれる磁界の強さによって異なる。そこで、その磁束密度は、特定強さの磁界中においたときの磁束密度で特定される必要がある。本発明のFe−Si系磁性粉末からなる圧粉磁心は、リアクトルのように、比較的変動幅の小さい高磁場中で使用されることが多い。ここでは、その特定磁界の一例として、8kA/mと10kA/mとを選択し、それらの磁界中に圧粉磁心を置いたときにできる磁束密度B8k、B10kで本発明の圧粉磁心を評価した。その場合、例えば、Fe−3%Si粉末を用いた本発明の圧粉磁心の磁束密度B8k≧0.8T、0.9Tさらには1.0Tにもなる。また、磁束密度B10k≧1.0T、1.2Tさらには1.3Tにもなる。
【0018】
なお、飽和磁化Msが小さいと、重畳特性等も低下するが、本発明の圧粉磁心では、例えば、Fe−3%Si粉末を用いた場合0.1MA/mの磁場中における飽和磁化Ms≧1.80Tさらには1.85T以上ともなり、低周波数域から高周波域にかけて重畳特性も優れたものとなっている。
さらに、圧粉磁心の磁気的特性を指標するものとして保磁力がある。圧粉磁心の場合、保磁力が小さい程、交番磁界に対する追従性が良く、ヒステリシス損失も小さくなる。この保磁力は、焼鈍等で残留歪を除去することにより低減できる。本発明の圧粉磁心は、焼鈍を行った場合、例えば、保磁力bHcは220A/m以下、200A/m以下、さらには180A/m以下ともなり得る。
【0019】
この保磁力bHcの低下に応じてヒステリシス損失も低下する。加えて、上述したように、高密度であることにも起因してヒステリシス損失が低下する。その結果、本発明の圧粉磁心では、例えば、5kHzおよび0.2Tの条件下でのヒステリシス損失が250kW/m3以下、225kW/m3以下、さらには200kW/m3以下ともなる。
そして、焼鈍の有無に拘らず、5kHzおよび0.2Tの条件下でのヒステリシス損失と渦電流損失との和である鉄損が、300kW/m3以下、280kW/m3以下、260kW/m3以下であると好適である。
【0020】
▲3▼一方、リアクトルのインダクタンス(L)は、L=(BS/I)xN と表される。ここでB:磁束密度、S:試料断面積、I:コイルに流れる直流電流、N:コイルの巻数である。この式から解るように、大電流を流す場合、Lを一定値以上に確保するためには、結局、材料のBを大きくすることが求められる。
Siを添加した場合、そのSi量の増加に伴って損失は低減するものの、Bも低下する。そしてSi量が10%以上になると、Bが大きく低下するようになり、Lを一定値以上に保持することが困難となる。しかし、圧粉磁心の密度が増加すれば、ヒステリシス損失が低下すると共にBが増大する。従って、圧粉磁心の密度上昇は、損失とインダクタンスの両面から非常に好ましくなるといえる。
【0021】
▲4▼この他、圧粉磁心の機械的な強度も重要となる。圧粉磁心は、鋳造品や焼結品と異なって、絶縁皮膜で被覆された構成粒子が塑性変形により機械的に結合している。このため、本来、その強度は弱いが、後述の金型潤滑温間加圧成形法等を用いることで、本発明の圧粉磁心は、その用途を拡大するに足る十分な強度得る。
【0022】
(4)磁性粉末の製造方法
圧粉磁心の製造方法は、上述の磁性粉末を成形用金型に充填する充填工程と、充填された磁性粉末を加圧成形する成形工程とから基本的になる。圧粉磁心の磁気的特性を向上させる上で重要なのは成形工程である。特に、その成形圧力が、圧粉磁心の高密度化、それに伴う磁束密度の向上等の観点から成形圧力が非常に重要となる。
従来は、その成形圧力を大きくすると、成形用金型の内面と磁性粉末との間でかじりを生じたり、抜圧が過大となったり、金型寿命が極端に低下したりし易かった。このため、試験レベルではともかくとして、工業レベルで考えると、その成形圧力を大きくすることが実際には困難であった。
【0023】
しかし、本発明者は、画期的な金型潤滑温間加圧成形法を確立してこの課題を見事に解決した。この成形法は、前記充填工程を高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された成形用金型内へ磁性粉末を充填する工程とし、前記成形工程をその成形用金型内に充填された磁性粉末を温間で加圧成形して成形用金型の内面に接する磁性粉末の表面に金属石鹸皮膜を生成させる工程とするものである。
【0024】
次に、この製造方法をさらに詳細に説明する。
▲1▼充填工程
充填工程に際して、成形用金型の内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布する必要がある(塗布工程)。
塗布する高級脂肪酸系潤滑剤としては、高級脂肪酸自体の他、高級脂肪酸の金属塩であると好適である。高級脂肪酸の金属塩には、リチウム塩、カルシウム塩又は亜鉛塩等がある。特に、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が好ましい。この他、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、オレイン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等を用いることもできる。
【0025】
この塗布工程は、加熱された成形用金型内に水または水溶液に分散させた高級脂肪酸系潤滑剤を噴霧する工程であると好ましい。
高級脂肪酸系潤滑剤が水等に分散していると、成形用金型の内面へ高級脂肪酸系潤滑剤を均一に噴霧し易い。さらに、加熱された成形用金型内にそれを噴霧すると、水分が素早く蒸発して、成形用金型の内面へ高級脂肪酸系潤滑剤が均一に付着する。そのときの成形用金型の加熱温度は、後述の成形工程の温度を考慮する必要があるが、例えば、100℃以上に加熱しておけば足る。もっとも、高級脂肪酸系潤滑剤の均一な膜を形成するために、その加熱温度を高級脂肪酸系潤滑剤の融点未満にすることが好ましい。例えば、高級脂肪酸系潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いた場合、その加熱温度を220℃未満とすると良い。
なお、高級脂肪酸系潤滑剤を水等に分散させる際、その水溶液全体の質量を100質量%としたときに、高級脂肪酸系潤滑剤が0.1〜5質量%、さらには、0.5〜2質量%の割合で含まれるようにすると、均一な潤滑膜が成形用金型の内面に形成されて好ましい。
【0026】
また、高級脂肪酸系潤滑剤を水等へ分散させる際、界面活性剤をその水に添加しておくと、高級脂肪酸系潤滑剤の均一な分散が図れる。そのような界面活性剤として、例えば、アルキルフェノール系の界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)10、アニオン性非イオン型界面活性剤、ホウ酸エステル系エマルボンT−80等を用いることができる。これらを2種以上組合わせて使用しても良い。例えば、高級脂肪酸系潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いた場合、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80の3種類の界面活性剤を同時に用いると好ましい。それらの1種のみを添加する場合に較べて複合添加した場合、ステアリン酸リチウムの水等への分散性が一層活性化されるからである。
【0027】
また、噴霧に適した粘度の高級脂肪酸系潤滑剤の水溶液を得るために、その水溶液全体を100体積%とした場合、界面活性剤の割合を1.5〜15体積%とすると好ましい。
この他、少量の消泡剤(例えば、シリコン系の消泡剤等)を添加しても良い。水溶液の泡立ちが激しいと、それを噴霧したときに成形用金型の内面に均一な高級脂肪酸系潤滑剤の被膜が形成され難いからである。消泡剤の添加割合は、その水溶液の全体積を100体積%としたときに、例えば0.1〜1体積%程度であればよい。
【0028】
水等に分散した高級脂肪酸系潤滑剤の粒子は、最大粒径が30μm未満であると、好適である。
最大粒径が30μm以上となると、高級脂肪酸系潤滑剤の粒子が水溶液中に沈殿し易く、成形用金型の内面に高級脂肪酸系潤滑剤を均一に塗布することが困難となるからである。
高級脂肪酸系潤滑剤の分散した水溶液の塗布には、例えば、塗装用のスプレーガンや静電ガン等を用いて行うことができる。
なお、本発明者が高級脂肪酸系潤滑剤の塗布量と粉末成形体の抜出圧力との関係を実験により調べた結果、膜厚が0.5〜1.5μm程度となるように高級脂肪酸系潤滑剤を成形用金型の内面に付着させると好ましいことが解った。
【0029】
▲2▼成形工程
詳細は明らかではないが、この工程で、前述の金属石鹸皮膜がメカノケミカル反応によって生成されると考えられる。
すなわち、その反応によって、磁性粉末(特に、絶縁皮膜)と高級脂肪酸系潤滑剤とが化学的に結合し、金属石鹸の被膜(例えば、高級脂肪酸の鉄塩被膜)が磁性粉末の成形体表面に形成される。この金属石鹸の被膜は、その粉末成形体の表面に強固に結合し、成形用金型の内表面に付着していた高級脂肪酸系潤滑剤よりも遙かに優れた潤滑性能を発揮する。その結果、成形用金型の内面と粉末成形体の外面との接触面間での摩擦力が著しく低減し、高圧成形にも拘らず、かじり等を生ぜず、非常に低い抜圧で粉末成形体が成形用金型から取出され、金型寿命を短くすることもなくなった。この金属石鹸皮膜の代表例は、高級脂肪酸系潤滑剤であるステアリン酸リチウムとFeとが反応して生成されたステアリン酸鉄皮膜である。
【0030】
なお、金属石鹸皮膜を形成する際に必要となるFe等は、磁性粉末の各粒子が絶縁皮膜で被覆されていることから、基本的にはその絶縁皮膜に存在すると考えられる。絶縁皮膜がもともとFe等の金属を含む場合は勿論、そうでなくても、磁性粉末と絶縁皮膜との間の反応や拡散により、Fe等が絶縁皮膜中に出現し得るからである。
【0031】
成形工程における「温間」とは、各状況に応じた適切な加熱条件の下で成形工程を行うことを意味する。もっとも、磁性粉末と高級脂肪酸系潤滑剤との反応を促進するために、概して成形温度を100℃以上とすると好ましい。また、高級脂肪酸系潤滑剤の変質を防止するために、概して成形温度を200℃以下とすると好ましい。成形温度を120〜180℃とするとより好適である。
【0032】
成形工程における「加圧」の程度も、所望する圧粉磁心の特性、磁性粉末の組成、絶縁皮膜や高級脂肪酸系潤滑剤の種類、成形用金型の材質や内面性状等に応じて適宜決定されるものである。この製造方法を用いると、従来の成形圧力を超越した高圧力下で成形可能であるため、硬質なFe−Si系磁性粉末であっても、高密度な圧粉磁心を容易に得ることができる。そして、成形圧力は、例えば、700MPa以上、785MPa以上、1000MPa以上、さらには、2000MPaともできる。成形圧力が高圧である程、高密度の圧粉磁心が得られる。もっとも、成形用金型の寿命や生産性を考慮して、その成形圧力を2000MPa以下、より望ましくは1500MPa以下とするのが良い。
【0033】
なお、本発明者は、この成形法を用いて純Fe粉を加圧成形した場合、成形圧力が約600MPaで抜出圧力が最大となり、それ以上ではむしろ抜出圧力が低下することを実験により確認している。そして、成形圧力を900〜2000MPaの範囲で変化させたときでさえ、抜出圧力が5MPa程度と、非常に低い値であった。このようなことから、上記金属石鹸被膜が如何に優れた潤滑性を有するかが解る。そして、この成形法は、実際に、硬質なFe−Si系磁性粉末を高圧成形する際にも非常に有効なものである。
このような優れた成形性は、ステアリン酸リチウムを用いた場合に限らず、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛を高級脂肪酸系潤滑剤として用いた場合でも同様である。
【0034】
▲3▼内部潤滑剤
この金型潤滑温間加圧成形法を用いた場合、従来必要とした内部潤滑剤を磁性粉末に添加せずとも、高圧成形が可能である。内部潤滑剤を添加しないことにより、圧粉磁心のさらなる高密度化、高磁束密度化を図れる。
その一方で、内部潤滑剤を磁性粉末に添加することにより、粉末粒子間のすべりが向上し、また、成形用金型と磁性粉末とのかじり等が防止される。しかも、内部潤滑剤を添加した場合、粉末粒子の塑性歪が抑制される。粉末粒子に生じる歪が抑制されると、圧粉磁心の保磁力が低下し、ヒステリシス損失の低減が図られる。
この内部潤滑剤は、例えば、絶縁皮膜で被覆された磁性粉末100質量%に対して0.1〜0.6質量%、さらには0.2〜0.5質量%であると好ましい。少なすぎると内部潤滑剤の効果がなく、多すぎると圧粉磁心の高密度化が図れず、磁気的特性の低下を招く。
【0035】
なお、内部潤滑剤の磁性粉末への添加は、噴霧、混合、浸漬等種々の方法で行える。そして、内部潤滑剤が添加(含有)された磁性粉末は、前記充填工程において成形用金型へ充填される。そして、この内部潤滑剤が、前記成形用金型の内面に塗布された高級脂肪酸系潤滑剤と同一の潤滑剤であると、取扱いが容易となり一層好ましい。具体的には、ステアリン酸リチウムやステアリン酸亜鉛等であると好ましい。
また、この内部潤滑剤を含有させた磁性粉末を成形し、得られた粉末成形体を焼鈍工程等において高温で加熱(例えば、700℃以上)すると、その内部潤滑剤は分解する。特に、上述したような耐熱性を有する酸化被膜を絶縁皮膜とする場合、焼鈍温度がかなり高温となるため、内部潤滑剤は完全に分解し得る。このとき、絶縁皮膜の種類によっては、分解した内部潤滑剤と反応をおこして試料の電気抵抗を低下させるおそれもあるため注意を要する。
【0036】
▲3▼焼鈍工程
焼鈍工程は、残留応力や残留歪を除去するために、成形工程後に得られた粉末成形体を加熱、徐冷する工程である。これにより、圧粉磁心の保磁力が低減され、ヒステリシス損失が低減されると共に交番磁界に対する追従性も良くなり、圧粉磁心の磁気的特性が向上する。
なお、焼鈍工程で除去される歪は、成形工程前から磁性粉末の粒子内に蓄積された歪でも、成形工程時の塑性変形によって生じる塑性歪(成形歪)でも、その両方でも良い。もっとも、本発明の上記製造方法(金型潤滑温間加圧成形法)を用いてFe−Si系磁性粉末を高圧で加圧成形した場合、粉末粒子内に蓄積される塑性歪は相当に大きいため、焼鈍工程ではこの歪を除去することが圧粉磁心の保磁力低減等に有効である。
【0037】
このような残留歪等を有効に除去するためには、磁性粉末の組成に応じて適切な焼鈍温度を選択することが必要である。ここで、焼鈍温度が高い程、残留歪の除去には有効である。しかし、焼鈍温度が高すぎると、絶縁皮膜を破壊することにもなる。そこで、絶縁皮膜の耐熱性をも考慮して焼鈍温度を決定することが好ましい。例えば、焼鈍温度を400〜500℃としても良し、絶縁皮膜が耐熱性を有する酸化皮膜等からなる場合は、焼鈍温度をより高温の500〜650℃、さらには650〜800℃としても良い。なお、加熱時間は、効果と経済性とから考えて、1〜300分、好ましくは5〜60分である。
【0038】
(5)圧粉磁心の用途
本発明の圧粉磁心は、各種の電磁機器、例えば、モータ、アクチュエータ、トランス、誘導加熱器(IH)、スピーカ等に利用できる。特に、本発明の圧粉磁心は、比抵抗が大きいのみならず、密度が大きいため、エネルギー損失を抑制しつつ、各種機器の高性能化、小型化、省エネルギー化等を図ることが可能となる。
これに対し、従来のFe−Si系磁性粉末からなる圧粉磁心は、比較的低密度のものが多かった。これは、Fe−Si系磁性粉末からなる高密度の圧粉磁心の製作が困難であったことも勿論であるが、高周波域(100kHz以上)における渦電流損失の低減に主眼が置かれていたことも大きな要因であると思われる。なぜなら、低密度であることにより、比抵抗が自ずと大きくなって、渦電流損失の低減が図られるからである。
【0039】
ここで、従来よりも低い周波数域(10kHz以下)において、Fe−Si系磁心を使用する場合を考える。すると、そのような低周波数域では、渦電流損失よりもヒステリシス損失が支配的になり、もはや渦電流損失に対してヒステリシス損失を無視し得なくなる。圧粉磁心が低密度であると、このヒステリシス損失を増大させる傾向にある。従って、低周波数域における圧粉磁心の使用を考えた場合、従来のような低密度の圧粉磁心では、鉄損が大きくなって好ましくない。
これに対し本発明の圧粉磁心は、従来の圧粉磁心よりも高密度であるため、ヒステリシス損失の低減に有利であり、低周波数域で使用した場合でも鉄損が少なく、低周波数域での使用にも適している。
また、コイル等のリアクトル毎に、要求される発生磁束やインダクタンスが決められているが、従来の圧粉磁心は低密度であったために、要求される磁束やインダクタンスは、その大型化(体積増大)によって補足しなければならなかった。そのため、従来のリアクトルや圧粉磁心は、自ずと、大型化し、重量も大きいものとなっていた。
【0040】
これに対し、本発明の圧粉磁心は高密度であるため、小型化しつつ、要求される発生磁束やインダクタンスを得ることができる。従って、各種リアクトルの軽量コンパクト化を図れ、また、その設計自由度を拡大させることもできる。
このように、本発明の圧粉磁心は、使用周波数域を低周波数側に拡張した場合でも、従来の圧粉磁心に比較して著しい鉄損の低減を図ることができる。これに加えて、本発明の圧粉磁心を使用すれば、リアクトル等の小型化、軽量化等を図りつつ、要求される発生磁束やインダクタンス等を十分に得ることができる。逆に、圧粉磁心を従来のものと同程度の大きさとした場合、より大きな磁束やインダクタンスを得ることができる。
【0041】
より具体的には、例えば、本発明の圧粉磁心がチョークコイル(平滑化コイル)等のリアクトル用鉄心(磁心)に用いられると、その高性能化、小型化、軽量化等を図れるので好適である。ちなみに、チョークコイルは、例えば、DC−DCコンバータのような電圧変換回路で用いられることが多い。DC−DCコンバータは、最近注目されている電気自動車やハイブリット車のように、駆動用の高電圧(例えば、200〜300V)の直流電源を補機類等のための低電圧(例えば、12V)に変換するものである。この他、誘導機を駆動するために、直流電源を交流電源に変換するインバータ回路等でもチョークコイルが用いられる。
【0042】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例)
(1)被覆処理粉末の製造
原料粉末(磁性粉末)として、市販のFe−3%Si粉末とFe−7%Si粉末と(大同特殊鋼社製水アトマイズ粉)を用意した。なお、単位は質量%である(以下、同様)。ここでは、原料粉末の分級等を特に行わずに、入手した状態のままで使用したので、その粒径は約20〜150μmであった。
この粉末に絶縁皮膜のコーティング処理を次の方法で行なった。
先ず、市販のシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「SR−2400」)を有機溶媒(トルエン)に溶解して5mol%の被覆処理液を製作した。次に、この被覆処理液を、空気流で流動させた上記原料粉末中にスプレー(噴霧)した後、180℃で30分間乾燥させた。
【0043】
こうして、原料粉末100質量%に対してシリコーン樹脂1質量%の割合で、原料粉末の各粒子の表面を被覆し(コーティング工程)、シリコーン樹脂で被覆された被覆処理粉末を得た。
この被覆処理粉末を、本発明でいう「絶縁皮膜で被覆された磁性粉末」と考えても良いが、次のように考えても良い。すなわち、そのシリコーン樹脂は、400℃以上で加熱すると分解し、原料粉末の表面にSiO2の酸化被膜(絶縁皮膜)を形成する。この酸化被膜は、絶縁性を有することは勿論、後述する焼鈍温度でも分解せずに高粘度を維持する。従って、このSiO2の酸化被膜は非常に耐熱性に優れた絶縁皮膜である。そこで、焼鈍工程等の加熱を施す場合なら、この被膜で被覆された磁性粉末を本発明でいう「絶縁皮膜で被覆された磁性粉末」と考えても良い。
【0044】
(2)圧粉磁心の製造
得られた各被覆処理粉末に対して、金型潤滑温間加圧成形法を行うことにより、リング状(外径:φ39mm×内径φ30mm×厚さ5mm)と板状(5mm×10mm×55mm)との2種の試験片をそれぞれの試料ごとに製作した。このリング状試験片は磁気特性評価用であり、板状試験片は電気抵抗評価用である。
この温間加圧成形は、具体的には次のようにして行った。
▲1▼上記の各試験片形状に応じたキャビティを有する超硬製の成形用金型を用意した。この成形用金型をバンドヒータで予め150℃に加熱しておいた。また、この成形用金型の内周面には、予めTiNコート処理を施し、その表面粗さを0.4Zとしておいた。
【0045】
そして、加熱した成形用金型の内周面に、水溶液に分散させたステアリン酸リチウム(高級脂肪酸系潤滑剤)をスプレーガンにて、1cm3/秒程度の割合で均一に塗布した(塗布工程)。ここで用いた水溶液は、水に界面活性剤と消泡剤とを添加したものである。界面活性剤には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用い、それぞれを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%づつ添加した。また、消泡剤には、FSアンチフォーム80を用い、水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。
【0046】
また、ステアリン酸リチウムには、融点が約225℃で、平均粒径が20μmのものを用いた。その分散量は、上記水溶液100cm3に対して25gとした。そして、これをさらにボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)し、得られた原液を20倍に希釈して最終濃度1%の水溶液として、上記塗布工程に供した。
【0047】
▲2▼ステアリン酸リチウムが内面に塗布されたその成形用金型へ、それと同温の150℃に加熱しておいた上記の各種被覆処理粉末を自然充填した(充填工程)。この成形用金型への充填に際して、適宜、ステアリン酸リチウム(LiSt)を内部潤滑剤として添加した(詳細は表1参照)。LiStは、粉末のまま所定量を秤量した後、それと被覆処理したFe−Si粉末とをV型ミキサーや回転ボールミルにより混合した。
【0048】
▲3▼成形用金型を150℃に保持したまま、1176〜1960MPaの成形圧力で、充填された各被覆処理粉末を温間加圧成形した(成形工程)。
なお、この温間加圧成形に際して、いずれの被覆処理粉末も成形用金型とかじり等を生じることがなく、5MPa程度の低い抜圧で粉末成形体をその金型から取出すことができた。
【0049】
▲4▼得られた粉末成形体に、非酸素雰囲気(N2ガス雰囲気)中で、焼鈍温度:600〜900℃、焼鈍時間:30分の焼鈍を適宜施した。
こうして得られた実施例の各試験片の製造条件を表1に示す。
【0050】
(比較例)
原料粉末として、圧粉磁心用磁性粉末として市販されているFe−3%Si粉末およびFe−7%Si粉末(大同特殊鋼社製、アジャスタロイ)を用意した。この原料粉末には、Si02の絶縁皮膜が既に被覆されている。
この原料粉末を用いて、表2に示す条件の下で種々の試験片を製造した。
なお、試験片No.C5は、Fe−3%Siの組成をもつ市販の電磁鋼板(新日鉄社製、35H270)を参考に挙げたものである。また、試験片No.C7は、Fe−6.5%Siの組成をもつ市販のFLコア(古河機械金属製、FL20SB)を参考に挙げたものである。
【0051】
(圧粉磁心の測定)
前述したリング状試験片と板状試験片とをそれぞれ用いて、それらの磁気的特性と電気的特性とを評価した。特に、比抵抗、密度および各種磁気特性について測定した。この測定結果を表1および表2に併せて示す。
なお、比抵抗の測定は、マイクロオームメータ(メーカ:ヒューレットパカード(HP)社、型番:34420A)を用いて4端子法により測定した。
磁気的特性の内、静磁場特性は直流自記磁束計(メーカ:東英工業、型番:MODEL−TRF)により測定した。交流磁場特性は交流B−Hカーブトレーサ(メーカ:理研電子、型番:ACBH−100K)により測定した。表中の交流磁場特性は、圧粉磁心を5kHz、0.2Tの磁場中に置いたときの高周波損失(鉄損)を測定したものである。
【0052】
静磁場中の磁束密度は、8kA/mおよび10kA/m中にできる磁束密度を示したものであり、各表中ではそれぞれB8kおよびB10kとして示した。また、表中に示した飽和磁化(Ms)は、0.1MA/mでの磁束密度(B)の値である。
圧粉磁心の密度(ρ)は、アルキメデス法により測定した。なお、Fe−3%Siの真密度(ρ0)は7.67x103kg/m3であり、Fe−7%Siの真密度(ρ0)は7.47x103kg/m3である。これに基づいて、密度比(ρ/ρ0)を算出し、その結果も表1および表2に併せて示した。
【0053】
(圧粉磁心の評価)
表1および表2に示した結果から、次のことが解る。
先ず、Fe−3%Si粉末を用いた試験片No.1〜9は、いずれも密度比が91%(=94−3%)を越えている。また、Fe−7%Si粉末を用いた試験片No.10〜12は、いずれも密度比が87%(=94−7%)を越えている。従って、本実施例に係る試験片はいずれも、Si含有量に応じて高密度であることが解る。
【0054】
これに対し、比較例のものは、溶製材である試験片No.C5を除き、いずれも密度比が91%未満または87%未満であり、低密度の圧粉磁心しか得られていない。しかも、試験片No.C1、C2等は、成形圧力が高いにも拘わらず、必ずしも密度比が向上していないことも解る。この理由は、試料No.C1の場合、内部潤滑剤が多いためであり、試料No.C2の場合、室温成形を考慮して内部潤滑剤0.5%で成形したためである。
この密度比に関連して、本実施例の試験片はいずれも、磁束密度B8K、B10K が十分大きな値となっている。一方、比較例のものはいずれも、実施例のものに対して磁束密度が10〜30%程度低くなっている。
【0055】
次に、ヒステリシス損失を観ると、本実施例のものは、相対的に低い値となっている。特に、試験片No.10〜12のように、Si含有量の大きなもの程この傾向は顕著である。
また、本実施例の試験片はいずれも700℃以上の高温で焼鈍を行っているにも拘わらず、100μΩm以上の大きな比抵抗が確保されている。そして、それに伴い、渦電流損失も小さな数値で安定している。これは、比抵抗が100μΩm以上にもなると、渦電流損失の低減効果が飽和状態に近づくからである。
【0056】
(内部潤滑剤と鉄損との関係)
本発明者は、金型潤滑温間加圧成形法を用いて、内部潤滑剤の添加量のみ異なるFe−3%Si粉末からなる圧粉磁心を種々製作した。このとき、成形圧力を1568MPa、焼鈍温度を700℃とした以外は、上述した実施例と同様の条件で圧粉磁心を製作した。
得られた各試験片について、上述の実施例と同様に鉄損を測定し、内部潤滑剤の量と鉄損との関係を調べた。この結果を図1に示す。
図1から、内部潤滑剤が0.2質量%付近、つまり0.1〜0.3質量%程度で、鉄損が最小となることが明らかとなった。
【0057】
【表1】
Figure 0004849500
【0058】
【表2】
Figure 0004849500
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、比抵抗等の電気的特性のみならず、磁束密度等の磁気的特性にも優れる、Fe−Si系磁性粉末から高密度の圧粉磁心が得られる。
そして、この圧粉磁心は、従来よりも低周波数域でも使用されるリアクトル等に使用されると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例について調査した内部潤滑剤の量と鉄損との関係を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 絶縁皮膜で被覆された、FeおよびSiを主成分とする磁性粉末を高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された成形用金型内へ充填する充填工程と、該成形用金型に充填された該磁性粉末を温間で加圧成形して該成形用金型の内面に接する該磁性粉末の表面に金属石鹸皮膜を生成させる成形工程とを経て得られる圧粉磁心において、
    該磁性粉末中のSi含有量(X:質量%)は3〜7質量%であり、
    前記充填工程は、前記絶縁皮膜で被覆された磁性粉末100質量%に対して0.1〜0.5質量%の内部潤滑剤を含有した該磁性粉末を前記成形用金型へ充填する工程であり、
    該磁性粉末の真密度(ρ0)に対する該成形工程を経て得られた圧粉磁心の嵩密度(ρ)の比である密度比(ρ/ρ0:%)がρ/ρ0≧94−X(%)であり、
    10kA/mの磁場中における磁束密度B10kが1.0T以上であり、
    5kHzおよび0.2Tの条件下でのヒステリシス損失が250kW/m3以下であり、
    高密度、高磁束密度および低損失であることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記絶縁皮膜は、耐熱性に優れた酸化皮膜である請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記酸化皮膜は、二酸化ケイ素(SiO2)皮膜である請求項に記載の圧粉磁心。
  4. 10kA/mの磁場中における磁束密度B10kが1.0T以上であり、
    比抵抗σが100μΩm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心。
  5. 5kHzおよび0.2Tの条件下でのヒステリシス損失と渦電流損失との和である鉄損が300kW/m3以下である請求項1〜4のいずれかに記載の圧粉磁心。
  6. 絶縁皮膜で被覆された、FeとSiとを主成分とする磁性粉末を高級脂肪酸系潤滑剤が内面に塗布された成形用金型内へ充填する充填工程と、
    該成形用金型内に充填された該磁性粉末を温間で加圧成形して該成形用金型の内面に接する該磁性粉末の表面に金属石鹸皮膜を生成させる成形工程とからなり、
    該磁性粉末中のSi含有量(X:質量%)は3〜7質量%であり、
    前記充填工程は、前記絶縁皮膜で被覆された磁性粉末100質量%に対して0.1〜0.5質量%の内部潤滑剤を含有した該磁性粉末を前記成形用金型へ充填する工程であり、
    請求項1に記載の圧粉磁心が得られることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  7. 前記高級脂肪酸系潤滑剤は、ステアリン酸リチウムであり、前記金属石鹸皮膜は、該ステアリン酸リチウムと前記絶縁被膜中に含まれるFeとが反応して生成されたステアリン酸鉄である請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  8. 前記内部潤滑剤は、前記成形用金型の内面に塗布された高級脂肪酸系潤滑剤と同一の潤滑剤である請求項またはに記載の圧粉磁心の製造方法。
  9. さらに、前記成形工程後に得られた粉末成形体を焼鈍する焼鈍工程を行う請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記絶縁皮膜は、耐熱性に優れた酸化皮膜であり、
    焼鈍工程は、焼鈍温度を650℃以上とする工程である請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  11. 前記酸化皮膜は、シリコーン皮膜を設けた前記磁性粉末を加熱して形成されたものである請求項10に記載の圧粉磁心の製造方法。
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