図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は以下のものを備える。
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明光学系(イルミネータ)IL。
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、所定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MT。
基板(例えばレジストでコーティングされたウエーハ)Wを保持するよう構成され、所定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエーハテーブル)WT。
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つ以上のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ系)PS。
照明系は、放射の方向や形状の調整またはその他の制御用に、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
支持構造は、パターニングデバイスの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持構造においてはパターニングデバイスを保持するために、機械的固定、真空固定、静電固定、または他の固定用技術が用いられる。支持構造は例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスを例えば投影系に対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、例えば仮に放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合には、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。一般に、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光光あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられ得る。
ここに説明されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイや反射型マスクなどを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブル(及び/または2つ以上のパターニングデバイステーブル)を備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。あるいは光源が例えば水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系または放射システムと総称される。
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般にはアジャスタADにより、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。マスクMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに投影する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や露光走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは逆に)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスのアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスのアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルがX及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、スキャン移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームPBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
基板と投影系PSの末端素子との間に液体を供給する従来の構成は2種類に分類される。1つは浴槽形式である。このタイプは、基板W全体(場合によっては基板テーブルWTの一部も)が液体槽に浸される。もう1つはいわゆる局所液浸システムである。これは、基板の局所領域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。後者のタイプでは、液体が占める空間は基板上面よりも平面視において小さく、液体が占める領域は基板Wがその領域に対して移動するときも投影系PSに対して静止したままである。
本発明の一実施形態が主として対象とする別の構成例は、液体を封じ込めない完全湿式法である。この構成は、基板上面全体及び基板テーブル全体(または基板テーブル一部)が液浸液に覆われる。これは、基板上面全体が同一条件に置かれるという点で有利である。これは基板温度制御及び基板処理に有利である。また、液浸液中の汚染物質を洗い流すことも可能である。
図2乃至図5のいずれに示される液体供給装置も完全湿式システムに使用可能であるが、シール構造は存在していないか、動作していないか、通常ほど有効ではないか、あるいは局所領域のみに液体を封止するには何らかの点で有効ではない。図2乃至図5には4種類の異なる局所液体供給システムが示されている。図2乃至図4の液体供給システムについては上で述べた。
図5は、液体を局所的に供給するシステムを模式的に示す。この液体供給システムは基板テーブルと投影系の末端素子との間の空間の辺縁部の少なくとも一部に沿って延在するバリア部材12を備える。バリア部材12はXY面内では投影系に対して実質的に静止しているが、Z軸方向(光軸方向)にはある程度相対移動が可能である。一実施例においては、バリア部材と基板表面との間にシールが形成され、このシールはガスシールまたは流体シールのような非接触のシールである。
バリア部材12は、投影系PSの末端素子と基板Wとの間の空間11に液体を少なくとも部分的に収容する。基板に対する非接触シール16が投影系の結像領域の周囲に形成されていてもよい。その結果、投影系の末端素子と基板表面との間の空間に液体が封じ込められる。この空間の少なくとも一部は、投影系PSの末端素子の下方及び周囲に配置されるバリア部材12によって区切られて形成される。液体が、液体供給口13により投影系下方かつバリア部材12内部の空間に供給され、液体排出口13により除去されてもよい。バリア部材12は投影系末端素子の若干上方にまで延在していてもよい。これにより液位が末端素子よりも上方に上昇したときに液体のバッファーが形成される。一実施例ではバリア部材12は上端部において内周形状が投影系またはその末端素子の形状に近似していてもよく、例えば円周状であってもよい。底部においては内周形状が結像領域の形状例えば長方形に近似していてもよいが、これは必須ではない。
液体はガスシール16によって空間11に保持されている。このガスシール16は、使用時にバリア部材12の底部と基板Wの表面との間に形成される。ガスシールは例えば空気や合成空気などの気体により形成されるが、一実施例ではN2や他の不活性ガスでもよい。ガスシールは、バリア部材12と基板との間隙に吸気口15から負圧を供給するとともに排気口14で吸引することにより形成される。ガス吸気口15での超過圧力、排気口14での真空レベル、及び間隙の幾何形状は、液体を封じ込める高速なガス流れ16を中心方向に生じさせるように構成される。バリア部材12と基板Wとの間で気体から液体に作用する力により空間11に液体が保持される。これらの吸気口及び排気口は空間11を取り囲む環状の溝であってもよい。環状溝は連続していても非連続であってもよい。ガス16の流れは空間11に液体を保持するのに有効なものとされる。このようなシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号明細書に開示されている。
他の構成も可能であることは以下の説明からも明らかであろう。また、本発明の一実施形態は、液体供給システムとしてのいかなる形式の局所液体供給システムにも使用可能でありうる。
局所液体供給システムには、その液体供給システムの一部と基板Wとの間をシールするものがある。液体供給システムの該一部と基板Wとの相対運動により、そのシールが破れて液体が漏れるおそれがある。
局所領域液体供給システムの課題は、基板と投影系との相対移動に際して液浸液を完全に保持して基板上に残さないようにするのが難しいということである。液体が失われるのを避けるには、液体供給システムに対する基板の移動速度を制限すべきである。液浸リソグラフィ装置で高NA値を生成する液浸液については特にそうであり、水以外の液体についてはなおさらである。そのような液体は水よりも低表面張力かつ高粘性の傾向がある。表面張力及び粘性に対応するメニスカス破断速度を越えると、高NA液体を保持するのは非常に難しい。基板上の一部の領域に液体が残されると、液浸液の蒸発により基板の(例えば基板表面において)温度変動が生じ得る。そうすると、オーバレイエラーが生じ得る。
また、液浸液が蒸発するときに、(汚染物質またはパーティクルに由来する)乾燥ステインが基板Wに残されうる。また、基板上のレジストに液体が拡散することで、基板上面の光化学性に不一致が生じ得る。浴槽法(液槽に基板を浸す方式)によりこれらの問題を緩和することも可能であるが、浴槽法では液浸装置における基板交換が難しくなりうる。本発明の一実施形態においては、以下でこれらの課題の1つまたは複数に対処する。
本発明の一実施形態においては、投影系PS下方及び基板W上方に液体を供給するために局所液体供給システムLSSが使用される。その領域に液体流れが生成される。そのためにいかなる局所液体供給システム(例えば図2乃至図5に示されるいずれかの形式)が使用されてもよく、図5に示されるものでもよいしその変形例であってもよい。しかし、局所液体供給システムLSSと基板Wとの間に形成されるシールは特に良好に作られていなくてもよく、まったく設けられていなくてもよい。すなわち、液体供給システムにより液体が封止されていなくてもよい。例えば、バリア部材12の下側の構成要素すべてが図5の実施形態から省略されていてもよい。シール形式は本発明の一実施形態において重要ではないし、あるいはシールがまったく設けられていなくてもよい。図6に示されるように、液体17のフィルムまたは液体17の層が基板W上面全体を実質的に覆うよう設計されていてもよい。基板テーブルWTの上面が液体層17で完全にまたは部分的に覆われていてもよい。2006年6月22日出願の米国特許出願第11/472,566号は基板W上面全体が液体フィルム17で覆われる他の実施形態を複数開示している。本発明の一実施形態は米国特許出願第11/472,566号に開示される液体供給システムにも適用可能であると理解されたい。
本発明の一実施形態においては、基板テーブルWTの少なくとも2つの端部400から液体の排出が許容されている。これらの端部は、基板テーブル上面の端部である。各端部は端部面407を有する。これらの端部は互いに基板テーブルWTの反対側の端部である。端部は、基板テーブルWT(または基板テーブルWT上面)の外側端または最外端である。一実施例では、端部400は、走査移動(スキャン移動ともいう)に実質的に垂直な基板テーブル端部である。この走査方向は、最長ストローク(つまり長ストローク方向)及び最大加速度の方向である。このストローク中に、基板テーブルWT端部のごく狭い部位ではなく、少なくとも半分の長さあるいは全体から液体の排出が許容される。端部を越えて放射方向外側に流れる基板テーブルからの液体流出に対する障壁(及び/または基板テーブルWT上面に取り付けられた障壁)が存在しないように構成されていてもよい。
図7に示されるように、走査方向に実質的に平行な端部に沿ってバリア401が設けられていてもよい。このバリアは基板テーブルWT上面から突出し、この端部から液体が流れ落ちるのを防ぐ。しかしこれは必須ではなく、基板テーブルWT上面のすべての端部から液体が排出されるよう構成されていてもよい。
端部400から流出した液体は、少なくとも1つの溝部(ガターともいう)500に捕らえられてから排出される。溝部500は、基板テーブルWTまたは少なくとも基板を保持する部位から機械的に動的に切り離されていてもよい。溝部500は、長ストローク位置決め機構に取り付けられていてもよいし、長ストローク位置決め機構から独立であってもよい。基板を保持する部位または基板テーブルWTと溝部500との相対位置は固定されていてもよいし、相対移動可能であってもよい。一実施例では溝部500は独自の独立した位置決め機構を有するが、これは必須ではない。端部400に対し溝部500を実質的に定位置に移動させるコントローラが設けられていてもよい。溝部500は、基板テーブルWTから独立して移動されてもよい。この独立移動は、基板テーブル端部の長手方向に垂直な方向であってもよい。
図6は、本発明の一実施形態に係り、走査方向に平行な平面による部分断面図である。図示されるように、走査方向に実質的に垂直に端部400から液体の排出が許容されている。液体は端部から流出して該端部下方に位置する溝部500へと流れ落ちている。図6の端部400及び溝部500はともに紙面に垂直方向に長手方向が延びている。これは図7に、よりはっきりと示されている。図7は基板テーブル及び溝部500の構成を示す平面図である。
図6に示されるように、投影系と基板Wとの間の領域に液体が供給されている。液体供給システムLSSの下方から基板Wの上面全域へと液体の漏れが許容されている。液体はさらに基板テーブルWTの上面へと漏れ流れる。そして液体は端部400を越えて端部面407(すなわち基板テーブル上面に実質的に垂直な面)の少なくとも一部を下方に溝部500へと流れる。溝部500から液体は除去される。
基板テーブルが静止していると、基板W及び基板テーブルWT上面を覆う液体層17の厚さが増加していく。ある厚さに達すると(液体の特性及び/または基板テーブルの形状に依存するが)、液体は端部400を越えて端部面407を下方に溝部500へと流れる。端部の下端409(すなわち端部のうち上面から最も遠い部位)から溝部500へと液体は落ちる。端部下端409に個々に液滴が生じ下端409から分離されて溝部500に落下すると問題が起こりうる。端部400の特定位置からしか液体が流れなくなり端部400における流れ抵抗が増大するおそれがあるからである。流れ抵抗が大きくなると、基板テーブルWT上の液浸液層17は厚くなる。液浸液層が厚いと慣性により基板テーブルWTが移動開始するときに端部400及び溝部500へと受け渡されるので不都合である。層厚が非常に大きい場合には、溝部500がすぐに一杯になってしまう。溝部500が一杯になると溝部500に作用する負荷が大きくなる。また、溝部500内で波や液跳ねが生じやすくなる。このような過度の液量を収容する大きさの溝部500としなければならなくなることも不都合である。
また、基板テーブルWTの加速中に端部400の下端409の液滴が基板テーブルWT端部400から離れる可能性もある。その結果、基板テーブルWTの端部400の面407が非湿化され液滴が形成される。この液滴形成は、飛沫化及び液浸装置の汚染をもたらすため有害である。飛沫化は2つの結果を少なくとも生む。第1に、液浸装置(通常は液浸システム)表面に接触または到達する液滴を形成することである。液滴の蒸発は熱負荷となり、また、乾燥によりステイン、汚染物質、汚染パーティクルの発生源となる。第2に、液浸システム周囲の気体の蒸気圧が大きくなる(つまり液浸液の湿度が増える)。
基板テーブルのストローク移動により、液体流れは、最小量の最小速度での移動から最大量の最大速度での移動へと変動する。一実施例では、基板テーブルWTの移動を制御することにより流れ変化が管理される。例えば、溝部への液体流れが滑らかであることを保証するのに役立つように基板テーブル移動が管理されてもよい。その結果、最大速度における液浸液量が溝部500に滑らかに「落下」し滑らかに除去されてもよい。この加速がうまく管理されない場合には液体流れは液滴を形成し飛沫化し得る。
上述の課題に対処するためには、端部400のうち基板テーブル上面から最も遠い部位と溝部500の一部分との間に小さい間隙を設け、端部400の下方に溝部500を配置することが望ましい。一実施例では、端部の基板テーブルWT上面からの最遠部位(つまり最下端409)は、溝部500の一部分から5mm以内または3mm以内である。基板テーブルWT上面から溝部500を分離状態としておくためには、少なくとも非接触とすべきである。
一実施例では、5mm以内にある最遠端と溝部500の一部とは、液体表面張力により該最遠部と該一部との間隙が液体で橋渡しされ該最遠部から分断されないよう十分に近接している。
このように間隙の寸法を小さくすることにより、端部400の下端409から溝部500の一部分に直接液体が流出することが許容される。この間隙により液滴形成が避けられる。液体表面張力の粘着により、端部400の下端409から溝部500への液体の横断が許容される。これにより端部400から溝部500への液体流れが改善される。上述の寸法制限を満たす1つの方法は、下方に延在する突起(例えば縁部600)を基板テーブルWTの端部400の下部に設けることである。縁部600は連続リムであってもよいし、あるいは、反復的に配列された例えば1つまたは複数の縁部として非連続であってもよい。縁部600の配列を端部400周囲に設けることにより、濡れ状態を保ちやすくなる。各縁部600は、液体表面または液体メニスカスを固定する尖端を有する。液体表面が滑らかであると、液体表面張力は基板テーブルWT表面に液体を薄くのばすのに役立ち、基板テーブルWT表面は通常よりも広く液体に覆われる。端部400に沿って縁部600の配列間隔を調整することにより、基板テーブルWT表面をより広く覆うことが可能となる。縁部600間の距離を最適化することにより、基板テーブルWT表面全域が非濡れ状態とならないようにすることができる。縁部600は、基板テーブルWTのトップブロックまたはチャックの下方に基板テーブルWTの端部400の下端409を延在して形成してもよい。これにより溝部500を配置する空間を確保できる。特に、溝部500の少なくとも1つの側壁700を端部400の下端409の上方へと延在させることができる。これにより、液浸液が漂って装置が汚染されるのを抑えることができる。
縁部600は溝部に向かう液体に方向を与えるよう角度を有していてもよい。
縁部から5mm以内である溝部500の一部分は、いかなる部分でも部材でも突起であってもよい。例えば、縁部600の下方に位置する細長突起604であってもよい。この突起は壁のように連続的であってもよいし、(反復して)配列される1つまたは複数の舌部のように非連続的であってもよい。縁部600及び突起604は、液体が縁部600から突起604へと両者を橋渡しして流れ落ちるようにある距離隔てて配置されてもよい。この間隙は小さいので、液体表面張力により液体流れは飛沫化されない。
溝部500は基板テーブルWTとは異なる動きをし得るので、縁部600及び突起604は、対応して動くように構成されていることが望ましい。すなわち、突起604の上端は通常(好ましくは常に)縁部600の下端の下方に位置するように対応して動くことが好ましい。よって、対向する両端部の間隔は最小化され、それにより飛沫も最小化されてもよい。一実施例では、溝部500は基板テーブルWTに追従して移動する。これは、溝部に進入する液体の直線運動(直線的な水平方向の運動量による)を補償するためである。溝部においても液体は水平方向運動量を実質的に保持する。しかし、溝部の相対速度は変化するので、液体は溝部に完全に垂直には落下しない。相対速度は、複数回のストローク移動が連続して生じるときにはテーブルの相対水平速度に従って振動的に変動する。追従移動または突起形状(望ましくは舌部の形状)により、液体が溝部に到達するまでの間隙が最小化または低減されてもよい。この追従移動は、溝部500を移動させかつ溝部500の移動により突起604を移動させるアクチュエータを制御するコントローラを使用することにより実現されてもよい。また、突起604は、溝部に対して移動されてもよい。例えばこの移動は、突起604の上面が溝部に対して移動する揺動運動であってもよい。また、縁部600の端部とそれに対向する突起604の端部との間隙が溝部500と基板テーブルWTとの相対移動中に保たれるように突起604の形状が定められていてもよい。縁部600が突起の配列である(つまり非連続である)場合には、突起604は突起(舌部)の反復配列であってもよい。下向きに延びる突起600のそれぞれに対応して上向きに延びる突起604が設けられていてもよい。
よって、液体は縁部600から突起604へと流れる。これは図6に示されている。縁部600または突起604またはこれら双方は、弾性部材で形成されていてもよい。そうすると、縁部600と突起604との間またはその他の部材との間で仮に衝突したとしても変形可能である。意図されていない衝突による損傷を防ぐことができる。また、端部の長さ方向に延びる縁部600を使用することは、液体が縁部から離れない場合であっても基板W保持面からの位置が他の部位よりも遠くなっているという点で有利である。縁部600を使用することにより基板W(基板テーブルWT)への影響を小さくすることができる。
小間隙が低剛性膜で置き換えられてもよい。低剛性膜は間隙を接続し、縁部600から突起604に液体が流れるのを許容する。この膜は剛性が低いので、縁部600と突起604との間でほとんど(またはまったく)力が伝わらない。この膜は基板テーブルの速度変化によりたわむ。そうして、基板テーブルから溝部に向かう液体流れ経路が追従する。これにより、基板テーブルから離れても運動量を保持する液体の流れ補償が可能である。
図8aにおいては、縁部の下端から5mm以内である溝部500の一部がハニカム材710である。すなわち、ハニカム材710は平面視で六角形形状の流路を与える。しかし、溝部500の外部から溝部500の底部に導く複数の流路を与えるいかなる構造が使用されてもよい。よって、流路形状は六角形でなくてもよく、円形、四角形、三角形などその他のいかなる形状であってもよい。この場合、流路を形成する構造の壁部は、端部の縁部600の下端409から5mm以内である溝部500の一部分である。
一実施例では、縁部600から5mm以内である溝部500の一部分は浸透性部材であってもよい。例えば浸透性の布または有孔プレートであってもよい。浸透性部材は、親液体性の外面及び/または疎液体性の内面を有してもよい。そうすれば、溝部500への液体の進入を促進し、溝部から浸透性部材を通じて液体が逆流するのを阻害することができる。
基板テーブルWTの下面を液体が伝うのを防ぎ、基板テーブルWTの構成要素を濡らさないようにすることが好ましい。そのために、縁部600の内面を疎液体性としてもよい。内面というのは基板テーブルWTの中心に近いほうの表面である。縁部の外面(図9においては右側の面)を親液体性とすれば、端部400で液体フィルムが破れる可能性を小さくできる。端部400の他の部位も有利には親液体性とされてもよい。さらに、縁部600の端部または端部の下端409を尖らせた場合には(例えば、半径1mm未満、半径0.5mm未満、半径0.1mm未満、または半径0.01mm未満)、端部400の下方を液体が伝う可能性を小さくできる。
よって、縁部600を設けることにより、基板テーブルWTの端部400が非濡れ状態となるおそれを少なくできる。また、端部400の基板テーブルWT上面からの最遠部位から小さい間隙を有する溝部500の一部分を設けることは、液体が端部400を越えて滑らかに流れるのを保証するのに役立つ。また、液体層が離れるおそれも小さくできる。
上述のように、溝部500の少なくとも一部は、溝部500の外部から溝部500の底部への(好ましくは垂直または垂直に近い)流路を与える構造で満たされていてもよい。図8に示されるように、流路710は、溝部500の底部まで完全に延びていなくてもよい。流路710の下端と溝部500の底部との間に空間720が残されている。空間720は、流路から液体を逃がし、溝部500に沿って排出箇所まで液体を流すことができる。この排出箇所を通じて溝部500から液体は排出される。
これらの流路は溝部500が液体で一杯になろうとするときに役に立つ。このような状況は例えば、基板テーブルWTが静止してからある時間経過後に起こりうる。次いで基板テーブルが特に長ストロークの移動をすると、移動完了までの間に、大量の液体が溝部へと向かう。そして大量の液体が短時間に溝部に流れ込む。大量の液体による問題は、特に溝部が移動する場合に溝部500で液体が跳ねることである。
垂直流路を設けることにより、溝部の液体表面が小部分に分割される。よって大きな波が生じるのを防ぐことができる。これにより液体の跳ねも防止される。跳ねは防止されるが、垂直流路の存在により溝部への液体流入速度は実質的にほとんど低下しない。
これらの構造はプラスチックで形成することができるので比較的安価である。また、この構造は軽量であり、溝部500に容易に組み込むことができる。この構造は溝部の側壁に一体に形成されていてもよい。また、この構造は溝部500に構造的に取り付けられていてもよい。この場合、溝部500の残りの部分を弱く(つまり薄く)することができる。流路構造により必要な剛性を与えることが可能だからである。例えば、溝部の外壁700を薄くすることができる。
一実施例では、垂直流路は、液体が80度乃至140度の範囲の接触角を液体が有する材料で形成されている。一実施例では、その材料と液体との接触角は90度より大きく、100度より大きく、110度より大きく、または120度より大きい。図9は接触角αを示す。この接触角は液跳ねが生じにくい最良の状況を示す。また、流路の最大寸法は平面視において2mm乃至6mmの範囲にあることが望ましく、3mm乃至5mmの範囲にあることが望ましい。この最大寸法が小さすぎると流路に液体がつまるおそれがある。そうすると液体流れが妨げられてしまう。最大寸法が大きすぎると流路内で液体が跳ねてしまう。そうすると液体は十分にエネルギを得て流路上部を通じて流路から脱出してしまうおそれがある。
各垂直流路の底部に一方向弁を設けてもよい。受動的な一方向弁が使用されてもよい。流路外部に液体が噴霧されるのを防ぐことができる。このような噴霧は、溝部500の加速(本明細書では正の加速及び負の加速(減速)の両方を意味するものとする)により圧力が上昇したときに生じ得る。弁は例えば膜で形成されていてもよい。弁は差圧で切り替えられてもよい。または加速により切り替えられる質量平衡弁であってもよい。図8bは、各垂直流路底部に一方向弁715を有する溝部500を示す。
液体は溝部500の底部から除去される。しかし、除去される前に、溝部500の底部の空間720に液体がある時間滞留してもよい。液体の滞留は例えば、基板テーブルWTが実質的にある時間静止してから移動したときに起こりうる。この場合液跳ねが生じ得る。
図10に示されるように、溝部500の底部の空間720に少なくとも1つのバリア部材730が設けられている。バリア部材730は、例えば溝部500の移動の際に液体の慣性により空間720に生じる液体の溝部500との相対移動の低減に有効である。バリア部材730は、液体移動が抑制されるべき方向に実質的に垂直な方向または少なくとも垂直成分を有する方向のいずれかに沿って延びている。バリア部材730を多く設けるほど高い効果を得られる。バリア部材730は溝部500の一端から他端への液体流れ経路が存在するように配置されているが、これには限られない。例えば溝部500の各長手方向端において溝部500から液体が除去されてもよいからである。よってこの場合、溝部500は2区画に分離されていてもよい。しかしこれは図10には示されていない。液体は溝部500のいかなる位置から除去されてもよいし、何カ所から除去されてもよい。分離された複数区画を設け、各区画から独立に液体を除去してもよい。
一実施例では、バリア部材730は、溝部500の長手方向に実質的に平行な方向または少なくとも実質的に平行な成分を有する方向についての液体の溝部との相対移動を低減する位置及び向きを有する。図11a乃至図11dは4つの異なる実施例を示すが、これらには限定されない。図11cに示されるように、溝部の長手方向に実質的に垂直な方向または少なくとも実質的に垂直な成分を有する方向についての液体の溝部との相対移動を低減する向きを有するバリア部材735が設けられていてもよい。しかし、これは長手方向に実質的に平行な相対移動を低減することよりは重要ではない。しかし、図11cに示される溝部の特徴、すなわち溝部の長手方向に実質的に垂直な方向または少なくとも実質的に垂直な成分を有する方向についての液体の溝部との相対移動を低減する構成は、長ストローク方向に平行に位置する溝部に有用でありうる。短ストローク中の移動量は小さいので、短ストローク中の液体の跳ねを抑制する形状を長ストロークの溝部に設ける必要性は低い。しかし、短ストローク中に液体を回収するよう位置決めされた溝部には常に液体が落下しうる。このような短ストローク用の溝部においては長手方向に実質的に平行または少なくとも実質的に平行な成分を有する移動を低減することが望ましい。この方向は長ストローク移動が生じる方向であり、長ストローク中に短ストローク用の溝部には液体が存在しうるからである。よって、バリア部材735は長ストローク中の液体移動を低減しうる。
図11aの実施形態では、バリア部材730の外側端部が溝部500の側壁700に取り付けられている。バリア部材730は側壁700に角度を有している(つまり側壁に垂直ではない)。例えば、バリア部材730は、長手方向に対し側壁700から30度乃至60度の角度を有していてもよい。一実施例では、バリア部材730は、側壁700に40度乃至50度の角度を有する。バリア部材730の自由端は、バリア部材730の(壁部700に取り付けられている)外側端部よりも溝部500の最近接端に接近している。よって、図11aに示される溝部500の左側においてはバリア部材730の自由端は固定端よりも溝部500の左側端部に近接している。逆に、図11aに示される溝部500の右側においてはバリア部材730の自由端は固定端よりも溝部500の右側端部に近接している。この構成は、矢印705で示すように左右に溝部500が移動する場合にポンプとして有効に機能する。このように作用するのは、溝部が左に移動する場合にバリア部材により液体が溝部500に対して右に移動するのが妨げられるからである。しかしその逆は真ではなく、溝部500が右に移動する場合には液体は溝部の左へとより自由に移動する。これは溝部の左側についても同様である。よって、左右の往復動により、溝部500の左側の液体は溝部500の左端510(つまり近いほうの端部)に移動する。逆も同様である。つまり溝部500の右側の液体は溝部500の右端510(つまり近いほうの端部)に移動する。よって、バリア部材730はポンプとして動作する。
図11aのバリア部材730は、ヘリングボーン状のプロファイルまたはリブ状のプロファイルであってもよい。上述のように受動的なバリア部材730によりポンプ動作が実現されるので、駆動部材がないという点で有利である。同様の機能を実現する他の例は一方向弁を使用することである。以下に説明する図11dはその一実施例を示す。
図11bにおいては、溝部500の側壁700に直角である点を除き図11aと同様にバリア部材730が配置されている。図11cには、図11bと同様に設けられたバリア部材730が示されているが、すべてのバリア部材730が側壁700に接続されているわけではないという点で異なる。さらに、側壁700に実質的に平行なバリア部材735が設けられているという点でも異なる。これらは既に述べた。
図11dの実施例では、バリア部材730は溝部500を完全に横断して延びている。バリア部材730のそれぞれは2つの一方向弁732を有し、各一方向弁は流れ方向が異なる。バリア部材730はS字状の形状である。バリア部材730を通過するバルブの動きは、液体のバルブ通過前に側方から見たときのS字形状の凹部において生じる。図11dは溝部の2方向の移動、及びそれによるポンプ動作を示している。
図10は、複数の室を使用して液体の跳ねに対処する更なる例を示す。溝部500の底部空間720において液体が動き回ることにより気体運動が生成される。これは、流路構造710の垂直流路が下方に流れる液体で遮断されるおそれがあり不利である。垂直流路の底部で(気体運動により)圧力が増加して、流路上部から液体が噴出しうる。この課題は、図10の実施例により緩和される。垂直流路が形成される領域は、中央部のみに減らされている。溝部500の外側領域550には垂直流路は形成されない。その代わりに、外側領域550は1つの大きな流路とされる。気体浸透性または多孔性の頂部560が、該頂部を通過する気体流れを与える。多孔性頂部560は、液体を通過させないように液体をはじく性質であってもよい。一実施例では、液体は多孔性頂部に対して90度より大きい接触角、100度より大きい接触角、110度より大きい接触角、または120度より大きい接触角を有する。このため、溝部500の(例えば長手方向とは垂直方向に)大きな加速度が生じても、溝部500の側壁700に跳ねる液体は溝部500の内部に止められる一方、これによる気体移動は制限されない。
図12aは溝部500の一例を示す。図12aにおいては、基板テーブルWTのそれぞれの端部のまわりに溝部が設けられている。4つの溝部が設けられており、それぞれが1つの端部を覆っている。各溝部500の各末端にはポンプが設けられている。ポンプは4つある。各ポンプは、2つの溝部を接続する末端部に設けられている。よって、各溝部は2つのポンプに接続されている。これは、通常はある時点において隣接する2つの溝部が両方とも一杯にはならない(つまり、対向する2つの溝部が同時に実質的に一杯になるか空になる)ために、有利である。よって、一杯となった2つの溝部500から排液するのに4つのポンプすべてが常に有効となる。1つのポンプまたは抽出器で対処できる量を超える液体を(例えば長ストローク移動の終了時に)1つの溝部が受けたとしても、2つの抽出システムまたはポンプに通じていることにより、液体排出が可能である。これは、隣接する2つの溝部の両方が同時に大量の液体を受けない場合に特に当てはまる。図12a及び図12bの実施形態を以下に詳しく述べる。しかしこれは一例にすぎず、他の構成も可能である。他の構成においても少なくとも2つの溝部でポンプを共有していてもよい。排出口は溝部の末端に必ずしも設けられていなくてもよいが、そのように設けられているほうが好ましい。溝部の中途に排出口があってもよい。各溝部の長手方向のどの位置に排出口が設けられているかとは関係なく、排出口は任意の数だけ設けられていてもよい。排出口及びポンプを多く設けるほど液体排出を迅速にすることができるが、複雑さや大きさ、重さについてコストが増すであろう。
図12bは、溝部500の角部における溝部とポンプとの接続を示す図である。角部で基板テーブルから排出される液体は、基板テーブル及び/または隣接する溝部500から副溝部510へと流れる。この副溝部は主溝部500ほどは深くない。副溝部の底部は導管515により回収室520に接続されている。回収室520は副溝部510の下方に位置している。隣接する溝部500の底部は導管525により回収室520に接続されている。回収室520は、液体を排出するポンプ530に接続されている。このシステムは、重力で溝部500に液体が流れるという点で受動的である。
図13は、能動的に排出する別の実施例を示す図である。この実施例では、垂直流路の代わりに浸透性部材800が設けられている。浸透性部材は、基板テーブル端部の5mm以内にある溝部に関して説明した浸透性部材の特性を有してもよい。浸透性部材は、溝部500の上方開口を覆っている。浸透性部材800は例えば浸透性の布であってもよい。浸透性部材は浸透性のプレートであってもよい。浸透性部材の貫通孔の寸法は、5μm乃至50μmであってもよい。このようにして、溝部500の内側に負圧が生じた場合に、浸透性部材800上の液体は浸透性部材800を通じて溝部500へと引き込まれる。こうして、液体が浸透性部材に落ちると負圧によって引き込まれてポンプ810により排出される。
浸透性部材800は、溝部の外側から溝部の内側への方向にのみ浸透性を有するか実質的に浸透性を有することが好ましい。浸透性部材800は、液相にのみ浸透性を有してもよい(気相には浸透性を有しない)。これは、液体ですべての貫通孔が遮断されるように貫通孔の寸法及び負圧の大きさを調整することにより可能である。欧州特許出願公開公報EP1628163号には類似の原理の単相抽出器が開示されている。浸透性部材800は、外側表面が親液体性であり、及び/または内側表面が疎液体性であることが好ましい。
液体の飛沫をとらえるスカート820が設けられている。スカート820は、半浸透性であってもよいし、上述の浸透性部材800の形状及び特性を有していてもよい。スカート820は、浸透性部材800から除去されるべき液体がないときには溝部500の外側から気体が吸引されるのを許容する。スカートは、格子プレート840と相俟って、基板テーブルWT上方の環境を実質的に包囲する。同様のシステムが図6に示される実施例に使用されてもよい。これにより、基板テーブル上方の液浸流体の蒸気圧が増加される。液浸流体が水である場合には、基板テーブル上方が湿った雰囲気または高水分含有雰囲気となる。湿った雰囲気となることにより基板テーブルWTからの液体蒸発が減り、蒸発による冷却も小さくなる。このような雰囲気中の蒸気又は液体の含有は、液浸液の飛沫化によりもたらされ得る。部分840は格子プレート以外の部材により形成されていてもよい。スカート820はいずれの実施例に使用されてもよい。
図14は、更なる実施例に係る溝部を示す図である。図14は、図10の実施例の構成及び図13の実施例の構成を含む。図14の実施例では、溝部の長手方向に実質的に垂直な方向または少なくとも垂直成分を有する方向の加速に際して液体の緩衝(バッファ)容積を溝部に備える対策がとられている。加速は例えば方向900に生じる。図示されるように、この例では、ステージ端部を越えて流れる液体は、縁部600を流れ落ち、さらに溝部の外側側壁700に向けて水平に流れ落ちる。重力が液体に作用して、液体は溝部の底部へと落ちていく。浸透性膜800は、図13の実施例のように縁部の下端から離れて位置している。浸透性膜の下方は溝部は液体で満たされる。外側領域550に液体を収容するために、外側領域は緩衝材1000で満たされている。緩衝材1000は好ましくは、溝部の外側端部に沿って位置する。緩衝材1000は95%の多孔率及び0.3mm乃至3mmの孔径を有する多孔質材料(例えばプラスチックまたは金属の発泡体)である。孔の内部では、溝部の加速により生じる圧力よりも毛細管圧のほうが高い。よって、液体は緩衝材1000の内部に効果的に保持され飛沫化しない。緩衝材1000中の液体は、重力により、または浸透性膜800の下方から吸引されることにより、浸透性膜800からしみ出る(このようにして緩衝材中の毛細管現象により液体が輸送される)。通常の加速では液体は浸透性膜800から漏れ出さない。外側領域550には内側で下方に延びる縁部1010が設けられている。側壁700及び縁部1010は、両者の間に緩衝空間を画定し、多孔質頂部560にかぶさっている。
第1の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を回収する溝と、を備え、前記基板テーブル及び前記溝は、少なくとも一時点において前記端部のうち前記上面からの最遠部位が前記溝の一部分と間隙を有して隔てられて設けられている液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記間隙は5mm以下であるか又は3mm以下であってもよい。前記一部分は、前記端部の前記上面からの最遠部位の実質的に垂直方向下方にあってもよい。前記端部の前記上面からの最遠部位及び前記溝の前記一部分は、前記液体の表面張力により該最遠部位から該一部分が断たれることなく該最遠部位と該一部分との間隙が橋渡しされるようになっていてもよい。前記最遠部位は、前記溝に液体を向ける縁部を備えてもよい。前記縁部は下方へと延在することが好ましい。前記縁部は、前記端部に沿って複数の縁部を備えることが好ましい。前記一部分は浸透性部材を備えてもよい。前記浸透性部材は浸透性の布を備えることが好ましい。前記浸透性部材は、前記溝の外部から前記溝の下方部位へと導く複数の流路をなす構造を備えることが好ましい。前記一部分は、上方に延在する部位を備えてもよい。前記一部分は、前記溝の長手方向に沿って配列された複数の舌部を備えることが好ましい。前記最遠部位は下方へと延在する縁部を備え、前記一部分は該縁部に位置が対応しており、前記一部分は前記溝から上方に延在する舌部を備えてもよい。前記間隙は小さい間隙であってもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第2の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を回収する溝と、を備え、前記溝への開口が液体浸透性部材により覆われている液浸リソグラフィ投影装置が提供される。リソグラフィ投影装置は、前記溝に負圧を生成する負圧源をさらに備えてもよい。前記浸透性部材は、5μm乃至50μmの直径の貫通孔を有してもよい。前記浸透性部材は、前記上面からの最遠部位から3mm以内でありかつ非接触に位置するか、または、前記上面からの最遠部位から3mm以内でありかつ非接触に位置する突起を有してもよい。前記浸透性部材は、前記溝の外部から前記溝の内部への方向にのみ実質的に浸透性を有してもよい。前記浸透性部材は、使用に際して液相にのみ浸透性を有してもよい。前記浸透性部材は、浸透性の膜であってもよい。前記浸透性部材は、多孔質部材及び/または多層構造であってもよい。前記浸透性部材は、外側表面が親液体性であり、及び/または、内側表面が疎液体性であってもよい。リソグラフィ投影装置は、前記溝に多孔質材料を備えてもよい。前記多孔質材料は、前記溝の外側端部に沿って位置することが好ましい。前記溝は移動可能であることが好ましい。
第3の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を回収する溝と、を備え、前記溝は、溝外部から溝内部へ導く複数の垂直流路を備える液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記流路は、ハニカム構造で形成されていてもよい。リソグラフィ投影装置は、前記溝への液体の通過のみを許容する一方向弁を各流路に備えてもよい。前記弁は、圧力差により、または前記溝の加速により切り替えられることが好ましい。前記液体は、前記流路を形成する材料と80度乃至140度の接触角を有してもよい。各流路の最大平面寸法は、3.0mm乃至5.0mmであってもよい。リソグラフィ投影装置は、前記溝の底部及び前記流路の下方に位置する網の目状のリブをさらに備えてもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第4の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を回収する溝と、を備え、前記溝は、溝の移動に伴い液体の慣性により生じる液体と溝との溝内での相対移動を低減するバリア部材を溝底部に有する液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記バリア部材は、前記溝の長手方向に実質的に平行な方向についての液体の前記溝との相対運動を低減する向きを有するバリアを備えてもよい。前記バリア部材は、前記溝の長手方向に実質的に垂直な方向についての液体の前記溝との相対運動を低減する向きを有するバリアを備えてもよい。前記バリア部材は、前記溝の長手方向に成分を有する反復往復運動により前記溝の液体に前記溝の末端に向かう運動を生じさせる向きを有してもよい。リソグラフィ投影装置は、平面視においてヘリングボーン状のパターンに配列された複数のバリア部材を備えてもよい。前記バリア部材は、前記溝の側部で前記溝に取り付けられ、前記溝の末端のうち近いほうを指す角度を有して前記溝へと突出していてもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第5の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から該基板テーブル上面の端部を越えて液体が流れるのを許容する基板テーブルと、前記端部下方で液体を回収する溝と、前記溝に進入する液体を前記溝内で保持するシールド部材と、を備える液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記シールド部材は、液体が前記溝に進入するときに生成される液滴がリソグラフィ投影装置の他の部分を汚染するのを避けるよう構成されていてもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第6の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、平面視において実質的に直進運動をし、基板から該基板テーブルの4つの端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を捕らえる溝と、前記溝に付随する液体除去装置と、を備える液浸リソグラフィ投影装置が提供される。リソグラフィ投影装置は少なくとも2つの溝を備え、前記液体除去装置は少なくとも2つの溝に付随していてもよい。リソグラフィ投影装置は少なくとも4つの溝を備え、少なくとも1つの溝に各端部が対応していてもよい。前記液体除去装置は長方形の角部において前記溝に接続されていてもよい。リソグラフィ投影装置は少なくとも4つの液体除去装置を備え、少なくとも1つの液体除去装置が2つの溝の末端に設けられていてもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第7の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記端部下方で液体を捕らえる溝と、前記端部のうち前記上面からの最遠部位と前記溝の一部分との間に設けられた低剛性膜と、を備える液浸リソグラフィ投影装置が提供される。
第8の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記液体を回収し、前記基板テーブルとは独立に移動する溝と、を備える液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記独立の移動は、前記端部に垂直な方向であってもよい。
第9の態様においては、基板を保持する基板テーブルであって、基板から流れて該基板テーブル上面の端部を越える液体流れが許容されている基板テーブルと、前記液体を回収する溝と、を備え、前記溝は、前記端部に実質的に平行な方向に細長い液浸リソグラフィ投影装置が提供される。前記溝は、排出口と、前記溝に回収された液体を該排出口から能動的に排出する能動液体排出装置と、を備えてもよい。前記溝は、基板テーブルから独立して前記端部に実質的に垂直な方向に移動可能であってもよい。前記溝は移動可能であってもよい。
第10の態様においては、パターンが付与された放射ビームを液浸流体を通じて基板に投影し、基板が保持されている基板テーブルの上面端部を越えて基板から液浸流体の流出を許容することを含み、基板から前記端部を越えて流出する流体は前記端部下方に位置する溝により捕らえられ、該流体は該溝の開口を覆う流体浸透部材を浸透するデバイス製造方法が提供される。
第11の態様においては、パターンが付与された放射ビームを液浸流体を通じて基板に投影し、基板が保持されている基板テーブル上面端部を越えて基板から液浸流体の流出を許容し、基板から前記端部を越えて流出する流体を前記端部下方に位置する溝により捕らえ、前記溝外部から前記溝内部へ前記流体を案内することを含むデバイス製造方法が提供される。
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用ガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウエーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を示す。
「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含む1つまたは各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
本発明の具体的な実施形態が上述のように説明されたが、本発明は上述の形式以外の形式でも実施可能であると理解されたい。例えば本発明は、上述の方法が記述された機械で読み取り可能な1以上の一連の指示を含むコンピュータプログラムの形式、またはこのような1以上のコンピュータプログラムが記録された(半導体メモリや磁気・光ディスクなどの)データ記録媒体の形式をとってもよい。本明細書で言及された1つまたは複数の異なるコントローラは、リソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内部に位置する1つまたは複数のコンピュータプロセッサにより1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み出されたときに動作可能であってもよい。1つまたは複数のプロセッサは少なくとも1つのコントローラに通信可能であって、1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読取可能命令に従って当該コントローラが動作するように構成されていてもよい。
本発明の1つ以上の実施形態はいかなる液浸リソグラフィ装置にも適用可能であり、特に上述の形式のものには限られない。液浸用の液体が液体槽の方式で供給されるものにも基板上の局所領域にだけ供給されるものにも適用可能である。あるいは、非封じ込め式であってもよい。非封じ込め方式の一例においては、液浸液は基板表面及び/または基板テーブル表面から流れ出して基板及び/または基板テーブルの露出面の事実上全域が濡れてもよい。このような非封じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは、液浸液を封じ込めなくてもよいし、液浸液を完全にではなく部分的に封じ込めてもよい。
本明細書にいう液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施形態では、液体供給システムは投影系と基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を供給する構造の組合せまたは機構であってもよい。液体供給システムは1つ以上の構造部材の組合せ、空間に液体を供給するための1つ以上の液体流入口、1つ以上の気体流入口、1つ以上の気体流出口、及び/または1つ以上の液体流出口を備えてもよい。一実施例では、液体が供給される空間の一表面が基板及び/または基板テーブルの一部分であってもよい。あるいはその空間の一表面が基板及び/または基板テーブルの表面を完全に覆ってもよい。またはその空間は基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、質、形状、流速または他の特性を制御するための1つ以上の要素を更に含んでもよい。
本発明の種々の実施例を上に記載したが、それらはあくまでも例示であって、それらに限定されるものではない。本発明の請求項の範囲から逸脱することなく種々に変更することができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。