(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態を図1乃至図13を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態である油圧制御装置を有する自動変速機を示すスケルトン図である。この自動変速機は中空状の第1入力軸11と、第1入力軸11内を貫通する第2入力軸12と、出力軸13と、アイドラギヤ軸14が平行配置されて図示しないトランスミッションケース内に組み込まれている。これら第1入力軸11及び第2入力軸12にはエンジンEからの動力がそれぞれ第1入力クラッチ15及び第2入力クラッチ16を介して伝達される。
更に、出力軸13からの変速出力がリダクションギヤ17を介してドライブ軸18に伝達され、ドライブ軸18からデファレンシャル装置19を介して左右の駆動輪に伝動される。
第1入力軸11には第1入力クラッチ15側から順に6速、4速、2速用の駆動ギヤ26a、24a、22aが一体に装着されている。第2入力軸12には第2入力クラッチ16側から順に3速、5速、1速用の駆動ギヤ23a、25a、21aが一体に装着されている。
一方、出力軸13には、駆動ギヤ26a、24a、22a、23a、25a、21aにそれぞれ常時噛み合う6速、4速、2速、3速、5速、1速用の従動ギヤ26b、24b、22b、23b、25b、21bが回転自在に装着されている。互いに噛み合うこれら各々の駆動ギヤと従動ギヤによって前進段の変速ギヤ列が形成され、複数の変速ギヤ列のうち動力伝達を行う変速ギヤ列が選択されると、その変速ギヤ列により1速から6速の前進用の変速段が形成される。
更に、第2入力軸12には、後進用の駆動ギヤ27aが一体に装着され、出力軸13には従動ギヤ27bが回転自在に装着され、駆動ギヤ27aと従動ギヤ27bはアイドラ軸14に装着されたアイドラギヤ27cを介して常時噛み合って後進用の変速ギヤ列が形成される。
出力軸13には、動力伝達する変速ギヤ列を一般の変速ギヤ列となる6速と4速の変速ギヤ列の間で選択的に切り換える第1切換機構31と、特定の変速ギヤ列となる2速の変速ギヤ列と後進用の変速ギヤ列の間で選択的に切り換える第2切換機構32と、一般用変速ギヤ列となる3速と5速との間で選択的に切り換える第3切換機構33と、動力伝達する変速ギヤ列を一般の変速ギヤ列となる1速の変速ギヤ列に選択的に切り換える第4切換機構34が配置され、これら各切換機構31〜34はシンクロメッシュ機構によって構成されている。
第1切換機構31は、従動ギヤ26bと24bの間に配置されて出力軸13に固定されたシンクロハブ31aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ31bとを有し、シンクロスリーブ31bを従動ギヤ26bに一体形成されたスプライン26dに噛み合わせると動力伝達する変速ギヤ列が6速に設定され、逆に従動ギヤ24bに一体形成されたスプライン24dに噛み合わせると4速に設定される。
同様に、第2切換機構32は、従動ギヤ22bと27bの間で出力軸13に固定されたシンクロハブ32aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ32bを有し、シンクロスリーブ32bを従動ギヤ22bに一体形成されたスプライン22dに噛み合わせると2速に設定され、従動ギヤ27bに一体形成されたスプライン27dに噛み合わせると後進段に設定される。更に、第3切換機構33は、従動ギヤ23bと25bの間で出力軸13に固定されたシンクロハブ33aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ33bを有し、シンクロスリーブ33bを従動ギヤ23bに一体形成されたスプライン23dに噛み合わせると3速に設定され、従動ギヤ25bに一体形成されたスプライン25dに噛み合わせると5速に設定される。第4切換機構33は、従動ギヤ25bと21bの間で出力軸13に固定されたシンクロハブ34aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ34bを有し、シンクロスリーブ34bを従動ギヤ21bに一体形成されたスプライン21dに噛み合わせると動力伝達する変速ギヤ列が1速に設定される。
動力伝達する変速ギヤ列を6速と4速のいずれかに設定する一般のシフトアクチュエータである第1シフトアクチュエータ41と、2速と後進段のいずれかに設定する特定のシフトアクチュエータである第2シフトアクチュエータ42と、3速と5速のいずれかに設定する一般のシフトアクチュエータである第3シフトアクチュエータ43と、1速に設定する一般のシフトアクチュエータである第4シフトアクチュエータ44とを有している。
第1シフトアクチュエータ41は、第1切換機構31のシンクロスリーブ31bをスプライン26dに噛み合わせて6速に設定する6速位置と、スプライン24dに噛み合わせて4速に設定する4速位置と、これらスプライン26d及び24dに噛み合わない中立位置に移動させる。
同様に、第2シフトアクチュエータ42は、第2切換機構32のシンクロスリーブ32bをスプライン22dに噛み合わせて2速を設定する2速位置と、スプライン27dに噛み合わせて後進段を設定する後進位置と、スプライン22d及び27dに噛み合わない中立位置に移動させる。第3シフトアクチュエータ43は、第3切換機構33のシンクロスリーブ33bをスプライン23dに噛み合わせて3速に設定する3速位置と、スプライン25dに噛み合わせて5速に設定する5速位置と、スプライン23d及び25dに噛み合わない中立位置に移動させる。第4シフトアクチュエータ44は、第4切換機構34のシンクロスリーブ34bをスプライン21dに噛み合わせて1速に設定する1速位置と、スプライン21dに噛み合わない中立位置に移動させる。
このような構成を有する自動変速機は、図2に示す変速制御系によって制御される。電子制御ユニット(ECU)49にはエンジン回転数Ne、スロットル開度θ、車速v、セレクトポジションSL、選択されている変速段PG等の各種信号が入力される。ECU49は、これらの信号から現在の走行状態に応じた変速段を特定し、油圧制御装置50に対して適切な制御信号を出力する。油圧制御部50は、油圧ポンプ、各種油圧制御バルブ等で構成されておりECU49からの制御信号に応じて制御圧を第1入力クラッチ15、第2入力クラッチ16に供給すると共に、第1〜第4の各シフトアクチュエータ41〜44に供給する。
そして、例えば6速、4速或いは2速の変速ギヤ列が選択されて第1入力クラッチ14が締結すると6速、4速或いは2速の変速段が設定され、3速、5速或いは1速の変速ギヤ列が選択されて第2入力クラッチ15が締結すると3速、5速或いは1速の変速段が設定され、その変速出力が出力軸13からリダクションギヤ17を介してドライブ軸18に伝達され、ドライブ軸18からデファレンシャル装置19を介して左右の駆動輪に伝動される。
また、後退段の変速ギヤ列が選択されて第2入力クラッチ16が締結すると後退段が設定され、その変速出力が出力軸13からリダクションギヤ17を介してドライブ軸18に伝達され、ドライブ軸18からデファレンシャル装置19を介して左右の駆動輪に伝動される。
図3及び図4はそれぞれ自動変速機の油圧制御装置50の油圧回路図であり、これら図3及び図4の油圧回路図にあっては対応する符号a〜kの部分で接続されている。
油圧制御装置50は、エンジン或いは電動モータ等によって駆動される油圧ポンプ及び油圧を所定のライン圧に調圧する調圧機器等を有する油圧供給部P、第1〜第4のシフトアクチュエータ41〜44、第1〜第4のニュートラル切換バルブ51〜54、第1及び第2のクラッチ調圧バルブ55、56、マニュアルバルブ57、リンプホーム回路切換バルブ58、リンプホーム回路切換バルブストッパ装置59及び電磁バルブからなる各制御バルブ41Va〜41Vd、42Va〜42Vd、43Va〜43Vd、44Va〜44Vd、45Va、45Vb46Va、46Vbを有し、油圧供給部Pからのライン圧がライン圧油路PLを介して各部に送給される。
第1シフトアクチュエータ41は、図3及び図5に拡大図を示すように出力軸13の延在方向と平行に対向してトランスミッションケース内に設けられた第1シリンダ部41A及び第2シリンダ部41Bと、第1シリンダ部41Aに摺動自在に内装される第1スプール部41D及び第2シリンダ41Bに摺動自在に内装される第2スプール部41Eが一体形成されたスプール弁軸41Cを有し、スプール弁軸41Cに第1切換機構31のシンクロスリーブ31bの外周に形成された溝に先端が係合するシフトフォーク41S(図1参照)が設けられている。
これら第1シリンダ部41Aと第2シリンダ部41Bは同一形状で同軸上に対向配置され、第1シリンダ部41Aは第2シリンダ部41Bから離れた頂端側となる小径部41Aaと大径部41Abが段部41Acを介して連続形成され、第2シリンダ部41Bは頂端側となる小径部41Baと大径部41Bbとが段部41Bcを介して連続形成されている。
第2シリンダ部41Aの頂端に小径部41Aa内に連通する制御圧供給ポート41Adが形成され、大径部41Abに段部41Ac側から順に第1リンプホーム圧導入ポート41Ae、第1連通ポート41Af、第1ドレンポート41Agが形成され、第1連通ポート41Afは段部41Acに形成されたポート41Ahと油路41Aiを介して連通している。第2シリンダ部41Bも同様に頂端に小径部41Ba内に連通する制御圧供給ポート41Bdが形成され、大径部41Bbに段部41Bc側から順に第2リンプホーム圧導入ポート41Be、第2連通ポート41Bf、第2ドレンポート41Bgが形成され、第2連通ポート41Bfは段部41Bcに形成されたポート41Bhと油路41Biを介して連通している。
一方、スプール弁軸41Cの第1スプール部41Dは、第1シリンダ41Aの小径部41Aaに摺動自在に内装される小径部41Daと大径部41Abに摺動自在に内装される大径部41Dbが段部41Dcを介して形成され、大径部41Dbの外周に環状の溝41Ddが形成されている。ここで、小径部41Daの外径R1に対し溝41Ddの内径R2が大きく(R1<R2)設定されている。同様に第2スプール部41Eは第2シリンダ部41Bの小径部41Baに摺動自在に内装される小径部41Eaと大径部41Bbに摺動自在に内装される大径部41Ebが段部41Ecを介して形成され、大径部41Ebに環状の溝41Edが形成されている。小径部41Eaの外径R1に対し溝41Edの内径R2が大きく(R1<R2)設定されている。
そして、スプール弁軸41Cは、図5に一点鎖線で示すように第1スプール部41Dの段部41Dcが第1シリンダ部41Aの段部41Acに当接して移動が規制される第1速位置と、二点鎖線で示すように第2スプール部41Eの段部41Ecが第2シリンダ部41Bの段部41Bcに当接して移動が規制される第2変速位置と、実線で示す中立位置との間で軸方向に移動可能である。この第1変速位置においてスプール弁軸41Cに設けられたシフトフォーク41Sによってシンクロスリーブ31bが従動ギヤ26bに一体形成されたスプライン26dに噛合する6速に設定され、第2変速位置においてシンクロスリーブ31bが従動ギヤ24b側のスプライン24dに噛合する4速に設定され、中立位置においてシンクロスリーブ31bがスプライン26d及び24dに噛合しない中立位置に設定される。
スプール弁軸41Cが第1変速位置において図6(a)に示すように第1スプール部41Dの大径部41Dbによって第1ドレン孔41Agを閉じ、溝41Ddによって第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第1連通ポート41Afを開放する一方、第2スプール部41Eの大径部41Ebが第2リンプホーム圧導入ポート41Beを閉じ溝41Edによって第2連通ポート41Bf及び第2ドレンポート41Bgを開放する。
また、同様にスプール弁軸41Cが第2変速位置において第2スプール部41Eの大径部41Ebによって第2ドレン孔41Bgを閉じ、溝41Edによって第2リンプホーム圧導入ポート41Be及び第2連通ポート41Bfを開放する一方、第1スプール部41Dの大径部41Dbが第1リンプホーム圧導入ポート41Aeを閉じ溝41Ddによって第1連通ポート41Af及び第1ドレンポート41Agを開放する。
中立位置において図6(b)に示すように第1スプール部41Dの大径部41Dbによって第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第1ドレンポート41Agを閉じ、かつ同様に第2スプール41Eの大径部41Ebによって第2リンプホーム圧導入ポート41Beを閉じるように構成されている。
このように構成された第1アクチュエータ41は、例えばスプール弁軸41Cが中立位置において、第2シリンダ41Bの制御圧供給ポート41Bdから第2変速油圧室41−2内に制御油圧を導入すると、第2スプール部41Eの小径部41Eaの端面41Esに制御圧が作用して中立位置から一点鎖線で示す第1変速位置に移動する。一方、第1シリンダ部41Aの制御圧供給ポート41Adから第1変速油圧室41−1に制御油圧を導入すると、第1スプール部41Dの小径部41Daの端面41Dsに制御圧が作用して中立位置から二点鎖線で示す第2変速位置に移動する。
また、スプール弁軸41Cが第1変速位置において、第1リンプホーム圧導入ポート41Aeからリンプホーム圧を導入すると、そのリンプホーム圧がスプール弁軸41Cの溝41Dd及び油路41Aiを経てポート41Ahから第1ニュートラル油圧室41Dnに導入されて段部41Dcに制御圧が作用してスプール弁軸41Cが中立位置方向に移動し、かつ中立位置において第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第1ドレンポート41Agが大径部41Dによって閉じられる。この第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第1ドレンポート41Agが閉じられると、第1ニュートラル油圧室41Dnの内径となる小径部の外径R1と溝41Ddの内径R2との相違も相俟って第1ニュートラル油圧室41Dnと溝41Dd及び油路41Ai内に密封された作動油の移動が防止されてスプール弁軸41Cが中立位置に停止し該位置に維持される。
また同様に、スプール弁軸41Cが第2変速位置において、第2リンプホーム圧導入ポート41Bdからリンプホーム圧を導入すると、そのリンプホーム圧が大径部41Eの溝41Ed及び連通路41Biを経て連通ポート41Bfから第2ニュートラル油圧室41Enに導入され段部41Ecにリンプホーム圧が作用してスプール弁軸41Cが中立位置方向に移動し、中立位置において第2リンプホーム圧導入ポート41Beが大径部41Eによって閉じられて該位置に停止して維持される。
第2シフトアクチュエータ42は、第1シフトアクチュエータ41と同様の構成である。図3及び要部拡大図を図7に示すように小径部42Aaと大径部42Abが段部42Acを介して連続形成された第1シリンダ42Aと、小径部42Baと大径部42Bbが段部42Bcを介して連続形成された第2シリンダ部42Bと、スプール軸弁42Cを有している。スプール弁軸42Cは、第1シリンダ部42Aの小径部42Aa及び大径部42Abに摺動自在に内装される小径部42Daと大径部42Dbが段部42Dcを介して形成された第1スプール部42Dと、第2シリンダ部42Bの小径部42Ba及び大径部42Bbに摺動自在に内装される小径部42Eaと大径部42Ebが段部42Ecを介して形成された第2スプール部42Eとが一体形成されている。第1スプール部42Dの大径部42Dbの外周に環状の溝42Ddが形成され、第2スプール部42Eの大径部42Ebに環状の溝42Edが形成されている。このスプール弁軸42Cに第2切換機構32のシンクロスリーブ32bの外周に形成された溝に先端が係合するシフトフォーク42S(図1参照)が設けられている。
そして、例えばスプール弁軸42Cが中立位置において、第1シリンダ部42Aの制御圧供給ポート42Adから第1変速油圧室42−1に制御油圧を導入すると、その制御圧によって中立位置から二点鎖線で示す第2変速位置に移動し、2速シリンダ42Bの制御圧供給ポート42Bdから第2変速油圧室42−2に制御油圧を導入すると、その制御圧で一点鎖線で示す第1速位置に移動する。
また、スプール弁軸42Cが一点鎖線で示す第1変速位置において、第1リンプホーム圧供給ポート42Aeからリンプホーム圧を導入すると、そのリンプホーム圧が第1スプール部42Dの溝42Dd及び連通路42Aiを経て第1ニュートラル油圧室42Dnに導入され段部42Dcに制御圧が作用してスプール弁軸42Cが中立位置方向に移動し、実線で示す中立位置において第1リンプホーム圧導入ポート42Ae及び第1ドレンポート42Dgが大径部42Dによって閉じ、かつスプール弁軸42Cが停止して該位置に維持される。また同様に、スプール弁軸42Cが二点鎖線で示す第2変速位置において、第2リンプホーム圧導入ポート42Beからリンプホーム圧を導入すると、そのリンプホーム圧が第2スプール部42Eの溝42Ed及び連通路42Biを経て第2ニュートラル油圧室41Enに導入され段部42Ecにリンプホーム圧が作用してスプール弁軸42Cが中立位置方向に移動し、実線で示す中立位置において第2リンプホーム圧導入ポート42Be及び第2ドレンポート42Bgが大径部42Eによって閉じられて、スプール弁軸42Cが中立位置に維持される。
第3シフトアクチュエータ43、第1シフトアクチュエータ41と同様の構成であり、図3及び要部拡大図を図8に示すように、小径部43Aaと大径部43Abが段部43Acを介して連続形成され第1シリンダ部43Aと、小径部43Baと大径部43Bbが段部43Bcを介して連続形成された第2シリンダ部43Bと、スプール弁軸43Cを有している。スプール軸弁43Cは、第1シリンダ部43Aの小径部43Aa及び大径部43Abに摺動自在に内装される小径部43Daと大径部43Dbが段部43Dcを介して形成された第1スプール部43Dと、第2シリンダ部43Bの小径部43Ba及び大径部43Bbに摺動自在に内装される小径部43Eaと大径部43Ebが段部43Ecを介して形成された第2スプール部43Eとが一体形成され、大径部43Dbに溝43Dd及び大径部43Ebに溝43Edが形成されている。スプール軸弁43Cに第3切換機構33のシンクロスリーブ33bの外周に形成された溝に先端が係合するシフトフォーク43S(図1参照)が設けられている。
そして、例えばスプール軸弁43Cが中立位置において制御圧供給ポート43Bdから第2変速油圧室43−2内に制御油圧を導入するとその制御圧によって一点鎖線で示す第1変速位置に移動し、制御圧供給ポート43Adから第1変速油圧室43−1内に制御油圧を導入する二点鎖線で示す第2変速位置に移動する。また、スプール弁軸43Cが第1変速位置において、第1リンプホーム圧導入ポート43Aeから導入するリンプホーム圧が第1スプール部43Dの溝43Dd及び連通路43Aiを経て第1ニュートラル油圧室43Dnに導入されると、そのリンプホーム圧によってスプール軸弁43Cがニュートラル位置方向に移動し、ニュートラル位置において第1リンプホーム圧導入ポート43Aeが大径部43Dによって閉じられスプール弁軸43Cがニュートラル位置に停止して該位置に維持される。また同様に、スプール弁軸43Cが第2変速位置において、第2リンプホーム圧導入ポート43Beから導入するリンプホーム圧が第2スプール部43Eの溝43Ed及び連通路43Biを経て第2ニュートラル油圧室43Enに導入され、スプール軸弁43Cがニュートラル位置方向に移動し、ニュートラル位置において第2リンプホーム圧導入ポート43Beが大径部43Eによって閉じられ、スプール弁軸43Cが該位置に停止して維持される。
第4シフトアクチュエータ44、第1シフトアクチュエータ41と同様の構成であり、図3及び要部拡大図を図9に示すように、小径部44Aaと大径部44Abが段部44Acを介して連続形成された第1シリンダ部44Aと、小径部44Baと大径部44Bbが段部44Bcを介して連続形成され第2シリンダ部44Bと、スプール弁軸44Cを有している。スプール弁軸44Cは、第1シリンダ部44Aの小径部44Aa及び大径部44Abに摺動自在に内装される小径部44Daと大径部44Dbが段部44Dcを介して形成された第1スプール部44Dと、シリンダ44Bの小径部44Ba及び大径部44Bbに摺動自在に内装される小径部44Eaと大径部44Ebが段部44Ecを介して形成された第2スプール部44Eとが一体形成されている。第1スプール部44Dの大径部44Dbに環状の溝44Ddが形成され、第2スプール部44Eの大径部44Ebに環状の溝44Edが形成されている。スプール弁軸44Cに第4切換機構34のシンクロスリーブ34bの外周に形成された溝に先端が係合するシフトフォーク44S(図1参照)が設けられている。
そして、例えばスプール弁軸44Cが中立位置において、第1シリンダ44Aの制御圧供給ポート44Adから第1変速油圧室44−1に制御油圧を導入すると、その制御圧によって二点鎖線で示す第2変速位置に移動し、第2シリンダ部44Bの制御圧供給ポート44Bdから制御油圧を導入すると、その制御圧によって実線で示す中立位置或いは一点鎖線で示す第1変速位置に移動する。また、スプール弁軸44Cが2変速位置において、第2リンプホーム圧導入ポート44Beからリンプホーム圧を導入すると、そのリンプホーム圧がスプール弁軸44Cの溝44Ed及び連通路44Biを経て第2ニュートラル油圧室44Enに導入されて段部44Ecにリンプホーム圧が作用してスプール弁軸44Cがニュートラル位置方向に移動し、ニュートラル位置において第2リンプホーム圧導入ポート44Beが大径部44Eによって閉じられスプール弁軸44Cが中立位置に停止して保持される。
一方、第1ニュートラル切換バルブ51は、図3及び図5に第1シフトアクチュエータ41と共に示すように、第1シフトアクチュエータ41の制御圧供給ポート41Adに油路61aを介して連通するポート51a、制御圧供給ポート41Bdに油路61bを介して連通するポート51b、両リンプホーム圧導入ポート41Aeと41Beに共に分岐した油路61cを介して連通するポート51c、制御バルブ41Vaを介在する油路61d介してライン圧油路PLに接続されるポート51d、制御バルブ41Vbを介在する油路61eを介してライン圧油路PLに接続されるポート51e、油路61fを介して後述するマニュアルバルブ57のNポート57aに連通するポート51f及び油路61fから分岐した油路61gに連通するパイロットポート51gが設けられている。また、ポート51dは油路61dから分岐した油路61h及び制御バルブ41Vcを介してドレン油路DLに接続され、ポート51eは油路61eから分岐した油路61i及び制御バルブ41Vdを介してドレン油路DLに接続されている。
更に、第1ニュートラル切換バルブ51は、パイロットポート51gからのパイロット圧とスプリング51sの付勢力によって作動するスプール弁軸51Aを有し、パイロットポート51gからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング51sによってスプール弁軸51Aが定常運転位置に維持されてポート51aと51d、ポート51bと51eがそれぞれ連通しポート51c及び51fが閉じられる。一方、パイロット圧の供給によりスプール弁軸51Aがスプリング51sの付勢力に抗してニュートラル位置に押動されてポート51a、51d、51b、51eが閉じられてポート51cと51fが連通する。
第2ニュートラル切換バルブ52は、図3及び図7に第2シフトアクチュエータ42と共に示すように、第2シフトアクチュエータ42の制御圧供給ポート42Bdに油路62aを介して連通するポート52a、制御圧供給ポート42Bdに油路62bを介して連通するポート52b、両リンプホーム圧導入ポート42Aeと42Beに共に分岐した油路62cを介して連通するポート52c、制御バルブ42Vaを介在する油路62d介してライン圧油路PLに接続されるポート52d、制御バルブ42Vbを介在する油路62eを介してライン圧油路PLに接続されるポート52e、油路62fを介してマニュアルバルブ57のDポート57bに連通するポート52f、油路62gを介してマニュアルバルブ57のRポート57cに連通するポート52g、油路62hを介してマニュアルバルブ57のNポート57aに連通するポート52h、油路62fから分岐した油路62iに連通するパイロットポート52i、油路62gから分岐した油路62jに連通するパイロットポート52j、油路62hから分岐した油路62kに連通するパイロットポート52kの各ポートを有している。また、ポート52dは油路62dから分岐した油路62m及び制御バルブ42Vcを介してドレン油路DLに接続され、ポート53eは油路62eから分岐した油路62n及び制御バルブ42Vdを介してドレン油路DLに接続されている。
更に、第2ニュートラル切換バルブ52はパイロットポート52i、52j、或いは52kからのパイロット圧とスプリング52sの付勢力によって作動するスプール弁軸52Aを有し、パイロットポート52i、52j、或いは52kからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング52sによりスプール弁軸52Aが定常運転位置に維持されてポート52aと52d及び52bと52eが連通し、ポート52c、52f、52g、52hが閉じられる。一方、パイロットポート52i、52j、或いは52kからのパイロット圧によりスプール弁軸52Aがスプリング52sに抗してニュートラル兼リンプホーム位置に付勢されてポート52aと52f、52bと52g、52cと52hが連通する。
第3ニュートラル切換バルブ53は、図3及び図8に第3シフトアクチュエータ43と共に示すように、第3シフトアクチュエータ43の制御圧供給ポート43Adに油路63aを介して連通するポート53a、制御圧供給ポート43Bdに油路63bを介して連通するポート53b、両リンプホーム圧導入ポート43Aeと43Beに共に分岐した油路63cを介して連通するポート53c、制御バルブ43Vaを介在する油路63d介してライン圧油路PLに接続されるポート53d、制御バルブ43Vbを介在する油路63eを介してライン圧油路PLに接続されるポート53e、油路63fを介してマニュアルバルブ57のNポート57aに連通するポート53f及び油路63fから分岐した油路63gに連通するパイロットポート53gが設けられている。また、ポート53dは油路63dから分岐した油路63h及び制御バルブ43Vcを介してドレン油路DLに接続され、ポート53eは油路63eから分岐した油路63i及び制御バルブ43Vdを介してドレン油路DLに接続されている。
更に、第3ニュートラル切換バルブ53は、パイロットポート53gからパイロット圧とスプリング53sの付勢力によって作動するスプール弁軸53Aを有し、パイロットポート53gからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング53sによりスプール弁軸53Aが定常運転位置に維持されてポート53aと53d及び53bと53eが連通しポート53c及び53fが閉じられる。一方、パイロット圧の供給によりスプール弁軸53Aがスプリング53sの付勢力に抗してニュートラル位置に付勢されてポート53a、53d、53b、53eの間が閉じられてポート53cと53fが連通する。
第4ニュートラル切換バルブ54は、図3及び図9に第4シフトアクチュエータ44と共に示すように、第4シフトアクチュエータ44の制御圧供給ポート44Adに油路64aを介して連通するポート54a、制御圧供給ポート44Bdに油路64bを介して連通するポート54b、両リンプホーム圧導入ポート44Aeと44Beに共に分岐した油路64cを介して連通するポート54c、制御バルブ44Vaを介在する油路64d介してライン圧油路PLに接続されるポート54d、制御バルブ44Vbを介在する油路64eを介してライン圧油路PLに接続されるポート54e、油路64fを介してマニュアルバルブ57のNポート57aに連通するポート54f及び油路64fから分岐した油路64gに連通するパイロットポート64gが設けられている。また、ポート54dは油路64dから分岐した油路64h及び制御バルブ44Vcを介してドレン油路DLに接続され、ポート54eは油路64eから分岐した油路64i及び制御バルブ44Vdを介してドレン油路DLに接続されている。
更に、第4ニュートラル切換バルブ54は、パイロットポート54gからのパイロット圧とスプリング54sの付勢力によって作動するスプール弁軸54Aを有し、パイロットポート54gからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング54sによってスプール弁軸54Aが定常運転位置に維持されてポート54aと54d及びポート54bと54eが連通しポート54c及び54fが閉じられる。一方、パイロット圧の供給によりスプール弁軸54Aがスプリング54sの付勢力に抗してニュートラル位置に付勢されてポート54a、54d、54b、54eの間が閉じられてポート54cと54fが連通する。
第1クラッチ調圧バルブ55は、図3及び図10に要部拡大図を示すように、第1入力クラッチ15の図示しない油圧室に油路65aを介して連通するポート55aと、制御バルブ45Va及びクラッチ制御マニュアルバルブ60が介在する油路65b介してライン圧油路PLに接続されるポート55bと、油路65cを介してマニュアルバルブ57のDポート57bに連通するポート55cと、油路65cから分岐した油路65dが連通するパイロットポート55dを有している。また、ポート55bは油路65bから分岐した油路65d及び制御バルブ45Vbを介してドレン油路DLに接続されている。
更に、この第1クラッチ調圧バルブ55は、パイロットポート55dからのパイロット圧とスプリング55sの付勢力によって作動するスプール弁軸55Aを有し、パイロットポート55dからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング55sによってスプール弁軸55Aが定常運転位置に維持されてポート55aと55bが連通しポート55cが閉じられる。一方、パイロットポート55dからのパイロット圧の供給によりスプール弁軸55Aがスプリング55sの付勢力に抗してリンプホーム位置に付勢されるとポート55bが閉じられポート55aと55cが連通すると共にポート55cから55a側へ送給する油圧を減圧する。
第2クラッチ調圧バルブ56は、図3及び図11に要部拡大を示すように、第2クラッチ16の図示しない油圧室に油路66aを介して連通するポート56aと、制御バルブ46Va及びクラッチ制御マニュアルバルブ60が介在する油路66bを介してライン圧油路PLに接続されるポート56bと、油路66cを介してマニュアルバルブ57のRポート57cに連通するポート56cと、油路66cから分岐した油路66dが連通するパイロットポート56dを有している。
更に、第2クラッチ調圧バルブ56は、パイロットポート56dからのパイロット圧とスプリング56sの付勢力によって作動するスプール弁軸56Aを有し、パイロットポート56dからのパイロット圧の供給が停止した状態ではスプリング56sによりスプール弁軸56Aが定常運転位置に維持されてポート56aと56bが連通しポート56cが閉じられる。一方、パイロット圧の供給によりスプール弁軸56Aがスプリング56sの付勢力に抗してリンプホーム位置に付勢されるとポート56bが閉じられポート56aと56cが連通すると共にポート56aから56c側へ送給する油圧を減圧する。
マニュアルバルブ57は、図12及び図13に要部拡大を示すように油路61f、62h、63f及び64fに連通するNポート57a、油路62f及び65cに連通するDポート57b、油路62g及び66cに連通するRポート57c、ドレンポート57d、ライン圧油路PLから分岐した油路67aに連通するポート57e、後述するリンプホーム回路切換バルブ58のポート58aに油路67bを介して連通するポート57f、リンプホーム回路切換バルブ58のポート58bに油路66cを介して連通するポート57g、リンプホーム回路切換バルブストッパ装置59の油圧室59Cに油路67dを介して連通するポート57hを有している。
更に、マニュアルバルブ57は、車室内において運転者によるセレクトレバーSの操作によってドライブレンジに対応したD位置、ニュートラルレンジに対応したN位置、リバースレンジに対応したR位置、パーキングレンジに対応したP位置に移動するスプール弁軸57Aが設けられている。
スプール弁軸57AがD位置、即ちマニュアルバルブ57がドライブ位置状態においては、Dポート57bとポート57f、Nポート57a及びRポート57cとポート57g、ドレンポート57dとポート57hが連通し、ポート57eが閉じられる。
スプール弁軸57AがN位置、即ちマニュアルバルブ57がニュートラル位置状態においては、Nポート57aとポート57e、Dポート57b及びRポート57cとポート57g、ポート57dとポート57hが連通し、ポート57eが閉じられる。
スプール弁軸57AがR位置、即ちマニュアルバルブ57がリバース位置状態においては、Rポート57cとポート57e、Nポート57a及びポート57bとポート57g、ポート57dとポート57hが連通し、ポート57eが閉じられる。
スプール弁軸57AがP位置、即ちマニュアルバルブ57がパーキング位置状態においては、Nポート57aとポート57f、Dポート57b及びRポート57cとポート57g、ポート57eとポート57hが連通する。
リンプホーム回路切換バルブ58は、図12及び図13に示すようにマニュアルバルブ57のポート57fに油路67bを介して連通するポート58a、ポート57gに油路67cを介して連通するポート58b及びライン圧油路PLに連通するライン圧ポート58c及びドレンポート58dを有し、スプリング58sとECU49からの通電及び通電停止によって定常運転位置とリンプホーム位置に移動するスプール弁軸58Aを備えた電磁バルブによって構成されている。ECU49からの給電時にはスプリング58sに抗してスプール弁軸58Aが定常運転位置に保持されてポート58a及びポート58bとドレンポート58dが連通し、ポート58cは閉じられる。一方、通電停止時にはスプリング58sによってスプール弁軸58Aがリンプホーム位置に移動し、リンプホーム位置ではポート58aとポート58c、ポート58bとポート58dが連通する。
更に、リンプホーム回路切換バルブ58にはリンプホーム回路切換バルブストッパ装置59が設けられている。リンプホーム回路切換バルブストッパ装置59は、貫通孔59Abを有するシリンダ59Aと、シリンダ59Aに基部59Baが摺動自在に嵌合して先端部59Bbが貫通孔59Abから突出するストッパ59Bと、スプリング59s、及びシリンダ59Aとストッパ59Bの基部59Baとによって形成される油圧室59Cを備えている。なお、59Acはストッパ59Bの移動を確保すためにシリンダ59Aに穿設されたエア抜き孔である。通常時にはスプリング59sの付勢力でストッパ59Bの先端部58Bbがスプール弁軸58Aに係止する通常位置に保持される一方、油圧室59Cにマニュアルバルブ57のポート57hから油路67dを介して供給される油圧によってスプリング59sに抗してストッパ59Bが非係合位置まで押動されて先端部58Bbによるスプール弁軸57Aの係止が解除される。
更に、油路65c、66cにはシフトレバーSの操作によって作動するスプール弁軸60Aを有するクラッチ制御マニュアルバルブ60を備えている。クラッチ制御マニュアルバルブ60は、ライン圧油路PLと油路65b、66bとの間に配設され、スプール弁軸60Aがドライブレンジに対応したD位置及びリバースレンジに対応したR位置においてライン圧油路PLと油路65b、66bを連通し、ニュートラルレンジに対応したN位置においてライン圧油路PLと油路65b、66bの間を閉じる。
上述した油圧制御装置による定常走行状態における各部の作動状態について説明する。
定常運転状態においては、リンプホーム回路切換バルブ58にはTCU49から通電されてスプール弁軸58Aが定常運転位置に保持される。この定常運転位置においてはライン圧油路PLに連通するライン圧導入ポート58cが閉じられ、リンプホーム回路切換バルブ58のポート58aから油路67aを介してマニュアルバルブ57のポート57eへの送油は停止状態が維持される。更に、マニュアルバルブ57のライン圧油路PLに油路67aを介して連通するポート57eが遮蔽され、リンプホーム回路切換バルブストッパ装置59の油圧室59Cは油路66d及びマニュアルバルブ57のドレンポート57d等を介して開放されてスプリング59sによってストッパ58Bがスプール弁軸58Aに係合する係合位置に維持されて確実にスプール弁軸58Aを定常運転位置に保持する。
これによりマニュアルバルブ57から第1〜第4の各ニュートラル切換バルブ51〜54及び第1クラッチ調圧バルブ55、第2クラッチ調圧バルブ56へのリンクホーム圧導入が停止されてこれら各ニュートラル切換バルブ51〜54及び各クラッチ調圧バルブ55、56の各スプール弁軸51A〜56Aが定常運転位置に保持され、第1〜第4のシフトアクチュエータ41〜44及び第1クラッチ15、第2クラッチ16の作動による定常運転が確保できる。
即ち、第1ニュートラル切換バルブ51へのパイロット圧の供給が停止してスプール弁軸51Aが定常運転位置に保持されて、油路61aと61d及び61bと61eとが連通する。同様に、第2ニュートラル切換バルブ52へのパイロット圧の供給が停止してスプール弁軸52Aが定常運転位置に保持されて油路62aと62d及び62bと62eとが連通する。同様に第3ニュートラル切換バルブ53のスプール弁軸53Aが定常運転位置に保持されて油路63aと63d及び63bと63eとが連通し、第4ニュートラル切換バルブ54のスプール弁軸54Aが定常運転位置に保持されて油路64aと64d及び64bと64eとが連通する。
第1クラッチ調圧バルブ55へのパイロット圧の供給が停止してスプール弁軸55Aが定常運転位置に保持されて油路65aと65dが連通する。第2クラッチ調圧バルブ56においても同様にスプール弁軸56Aが定常運転位置に保持されてポート56aと56bが連通して油路66aと66dが連通する。
この第1〜第4のニュートラ切換バルブ51〜54及び第1及び第2のクラッチ調圧バルブ55、56のスプール弁軸51A〜56Aが定常運転位置に保持された定常運転状態において、常閉式の電磁バルブからなる制御バルブ41Va〜41Vd、42Va〜42Vd、43Va〜43Vd、44Va〜44Vdは閉じられている。
1速に設定するときには、制御バルブ44Vaを開きライン油路PLからの制御圧を油路64d及び64aを経て第4シフトアクチュエータ44の第1変速油圧室44−1に導入する。第1変速油圧室44−1への制御圧導入によってスプール弁軸44Cが第2変速位置に移動する。このスプール弁軸44Cの移動に連動するシフトフォーク44Sによって第4切換機構34のシンクロスリーブ34bが従動ギヤ21bと一体に形成されたスプライン21dに噛み合う。しかる後、制御バルブ46Vaを開きライン圧油路PLから油路66c、66aを介して第2入力クラッチ16に制御油圧を供給して第2入力クラッチ16を締結するとエンジンEからの動力は第2入力軸12伝達されて1速が設定される。
また、1速が設定された状態で制御バルブ46Vaを閉じ制御バルブ46Vbを開くと第2入力クラッチ16の締結が解除されてエンジンEから第2入力軸12への動力伝達を停止する。この第2クラッチ16の締結が解除された状態で制御バルブ44Vaを閉じ、制御バルブ44Vcを開き油路64bとドレン油路DLを連通させる。これにより第1変速油圧室44−1内が減圧されてスプール弁軸44Aが第2変速位置から中立位置に移動し、シフトフォーク44Sによってシンクロスリーブ34bが中立位置に移動してニュートラル状態になる。
2速に設定するときには、制御バルブ42Vaを開きライン油路PLからの制御圧を油路62d及び62aを経て第2シフトアクチュエータ42の第2変速油圧室42−2に導入する。第2変速油圧室42−2への制御圧導入によってスプール弁軸42Cが第1変速位置に移動する。このスプール弁軸42Cの移動に連動するシフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bが従動ギヤ22bと一体に形成されたスプライン22dに噛み合う。しかる後、制御バルブ45Vaを開きライン圧油路PLから油路65c、65aを介して第1クラッチ15に制御油圧が供給されて第1入力クラッチ15を締結するとエンジンEからの動力は第1入力軸11伝達されて2速が設定される。
また、2速が設定された状態で制御バルブ45Vaを閉じ制御バルブ45Vbを開くと第1入力クラッチ15の締結が解除されてエンジンEから第1入力軸11への動力伝達が停止する。この第1入力クラッチ15の締結が解除された状態で制御バルブ42Vaを閉じ、制御バルブ42Vcを開き油路62dとドレン油路DLを連通させる。これにより第2変速油圧室42−2内が減圧されてスプール弁軸42Aが第1変速位置から中立位置に移動し、シフトフォーク42Sによってシンクロスリーブ32bが中立位置に移動してニュートラル状態になる。
同様に制御バルブ43Vb、43Vdの開閉と制御バルブ46Va、46Vbの開閉により作動する第3シフトアクチュエータ43及び第2入力クラッチ16により3速が設定され、或いはニュートラル状態になる。また、制御バルブ41Va、41Vcの開閉と制御バルブ45Va、45Vbの開閉により作動する第1シフトアクチュエータ41及び第1入力クラッチ15により4速が設定され、或いはニュートラル状態になる。更に、制御バルブ43Vb、43Vdの開閉と制御バルブ46Va、46Vbの開閉により作動する第3シフトアクチュエータ43及び第2入力クラッチ16により5速が設定され、或いはニュートラル状態になる。制御バルブ41Va、41Vcの開閉と制御バルブ45Va、45Vbの開閉により作動する第1シフトアクチュエータ41及び第1入力クラッチ15により6速が設定され、或いはニュートラル状態になる。これにより1速から6速の前進段が得られる。
後進段に設定するときには、制御バルブ42Vbを開きライン油路PLからの制御圧を油路62e及び62bを経て第2シフトアクチュエータ42の第1変速油圧室42−1に導入する。第1変速油圧室42−1への制御圧導入によってスプール弁軸42Cが第2変速位置に移動する。このスプール弁軸42Cの移動に連動するシフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bが従動ギヤ27bと一体に形成されたスプライン27dに噛み合う。しかる後、制御バルブ46Vaを開きライン圧油路PLから油路66c、66aを介して第2入力クラッチ16に制御油圧が供給されて第2入力クラッチ16を締結するとエンジンEからの動力が第2入力軸12に伝達されて後進段が設定される。
また、後進段が設定された状態で制御バルブ46Vaを閉じ制御バルブ46Vbを開くと第2クラッチ16の締結が解除されてエンジンEからの第2入力軸12への動力伝達が停止する。この第2入力クラッチ16の締結が解除された状態で制御バルブ42Vbを閉じ、制御バルブ42Vdを開き油路62eとドレン油路DLを連通させる。これにより第1変速油圧室42−1内が減圧されてスプール弁軸42Aが第2変速位置から中立位置に移動し、シフトフォーク42Sによってシンクロスリーブ32bが中立位置に移動してニュートラル状態になる。
変速ギヤ列が1速〜6速或いは後進段のいずれかが設定されているときに、電気系に故障が発生した場合には、常閉式の電磁バルブからなる制御バルブ41Va、41Vc、42Va、42Vc、43Va、43Vc、44Va及び44Vcは閉状態となるが、噛み合い状態のシンクロスリーブとスプラインとの噛み合い抵抗及びディテント機構によってその変速ギヤ列が維持され、これにより車両は走行することができる。この変速ギヤ列が維持されたもとでセレクトレバーSをニュートラルレンジに選択されると、クラッチ制御マニュアルバルブ60によりライン圧油路PLと油路65b、66bとの間が閉じられ、第1入力クラッチ15及び第2入力クラッチ16への油圧供給が停止して、エンジンEから第1入力軸11或いは第2入力軸12への動力伝達が遮断されて車両が停止する。
また、この電気系の故障に伴ってECU49からリンプホーム回路切換バルブ58への通電が停止するが、スプール弁軸58Aはリンプ回路切換バルブストッパ装置59のストッパ59Bに係止されて通常運転位置に維持されている。
ここで、セレクトレバーSを操作してパーキングレンジを選択するとリンプホーム回路に切り換えられ、再度ドライブレンジが選択されたときにはリンプホーム制御がなされて通電停止前の変速ギヤ列の状態に拘わらず2速の変速ギヤ列で前進走行することができる。また、セレクトレバーSによりパーキングレンジを選択した後にリバースレンジを選択すると車両を後進走行することができる。これについて具体的に説明する。
例えば、変速ギヤ列が6速において電気系に故障が発生し、従動ギヤ26bに一体に設けられたスプライン26dと第1切換機構34のシンクロスリーブ34bが噛み合った6速の変速ギヤ列が維持された状態においては、第1シフトアクチュエータ41は、図5に一点鎖線で示すようにスプール弁軸41が第1変速位置で停止した状態であって、スプール弁軸41Cの第1スプール部41Dの大径部41Dbによって第1ドレン孔41Agを閉じ、溝41Ddによって第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第1連通ポート41Afを開放する一方、第2スプール部41Eの大径部41Ebが第2リンプホーム圧導入ポート41Beを閉じ溝41Edによって第2連通ポート41Bf及び第2ドレンポート41Bgを開放している。また、第2シフトアクチュエータ42、第3アクチュエータ43、第4アクチュエータ44のスプール弁42A、43A、44Aはそれぞれ図7、図8、図9において実線で示す中立位置に維持されている。
この状態でシフトレバーSをニュートラルレンジからパーキングレンジを選択すると、マニュアルバルブ57のスプール弁軸57AがP位置に移動し、このP位置状態において油路67aを介してライン圧油路PLに接続されたポート57eと油路67dを介してリンプホーム回路切換バルブストッパ装置59の油圧室59Cに接続されたポート57hが連通する。これによりライン圧が油路67a、マニュアルバルブ57及び油路67dを経てリンプホーム回路切換バルブストッパ装置59の油圧室59Cに供給され、スプリング59sに抗してストッパ59Bが非係合位置まで押動されて先端部59Bbによるスプール弁軸58Aの係止が解除される。また、ポート57fとNポート57aが連通し、Dポート57b及びNポート57cがポート57gを介してドレンされる。
ストッパ59Bによる係止が解除されたリンプホーム回路切換バルブ58のスプール弁軸58Aはスプリング58sの付勢力によって定常運転位置からリンプホーム位置に移動する。このスプール弁軸58Aがリンプホーム位置においてリンプホーム回路切換バルブ58のポート58aとポート58c、ポート58bとポート58dが連通する。
このマニュアルバルブ57のポート57fとNポート57aの連通によりリンプホーム回路切換バルブ58のポート58cに導入されたライン圧がポート58aから油路67bを介してマニュアルバルブ57のポート57fに導入されNポート57aから油路61f及び油路61fから分岐した油路61gからそれぞれ第1ニュートラル切換バルブ51のポート51fにリンプホーム圧として導入され、パイロットポート51gにパイロット圧として導入される。
第1ニュートラル切換バルブ51は、このパイロット圧の導入に伴ってスプリング51sに抗してスプール弁軸51Aが定常運転位置からニュートラル位置に移動し、油路61fに接続されたポート51fと油路61cが接続されたポート52cとが連通する。これにより第1ニュートラル切換バルブ51のポート51fに導入されたリンプホーム圧は油路61cを介して第1シフトアクチュエータ41の第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート41Beに導入される。
ここで、第1シフトアクチュエータ41の第2リンプホーム圧導入ポート41Beはスプール軸弁41Cの第2スプール部41Eによって閉じられているが、開放された第1リンプホーム圧導入41Aeからリンプホーム圧が導入され、その導入されたリンプホーム圧が第1スプール部41Dの溝41Dd及び油路41Aiを経て第1ニュートラル油圧室41Dnに導入される。第1ニュートラル油圧室41Dnに導入されたリンプホーム圧によってスプール弁軸43Cが一点鎖線で示す第1変速位置から実線で示す中立位置に移動し、中立位置において第1リンプホーム圧導入ポート41Aeを第1スプール部41Dによって閉じてスプール弁軸41Cがそのニュートラル位置に停止する。このスプール弁軸41Cの第1変速位置から中立位置への移動に連動してシフトフォーク41Sによって第1切換機構31のシンクロスリーブ32bが従動ギヤ26bに一体的に形成されたスプライン26dに噛み合った状態からシンクロハブ31aにのみ噛み合った中立位置に移動し、中立位置に停止して該位置に維持される。
同様に、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路62hを介して第2ニュートラル切換バルブ52のポート52hにリンプホーム圧が導入され、油路62hから分岐した油路62kを介してパイロットポート51iにパイロット圧が導入される。パイロット圧の導入に伴って第2ニュートラル切換バルブ52のスプール弁軸52Aが定常運転位置からニュートラル兼リンプホーム位置に移動し、第2シフトアクチュエータ42の第1リンプホーム圧導入ポート42Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート42Beにリンプホーム圧が導入される。
また、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路63fを介して第3ニュートラル切換バルブ53のポート53fにリンプホーム圧が導入され、油路63fから分岐した油路63gからパイロットポート53gにパイロット圧が導入される。パイロット圧の導入によりスプール弁軸53Aが定常運転位置からニュートラル位置に移動し、第3シートアクチュエータ43の各リンプホーム圧導入ポート43Ae及び43Beに導入される。更に、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路64fを介して第4ニュートラル切換バルブ54のポート54fにリンプホーム圧が導入され、油路64fから分岐した油路64gを介してパイロットポート54gにパイロット圧が導入される。このパイロット圧の導入によりスプール弁軸54Aが定常運転位置からニュートラル位置に移動し、第4シートアクチュエータ44の第1リンプホーム圧導入ポート44Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート44Beにリンプホーム圧が導入される。
このようにシフトレバーSをパーキングレンジからニュートラルレンジに選択操作してマニュアルバルブ57のスプール弁軸57AをP位置からN位置に切り換えることによって、第1シフトアクチュエータ41の第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート41Be、第2シフトアクチュエータ42の第1リンプホーム圧導入ポート42Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート42Be、第3シフトアクチュエータ43の第1リンプホーム圧導入ポート43Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート43Be、第4シフトアクチュエータ44の第2リンプホーム圧導入ポート44Beへそれぞれリンプホーム圧を導入することによって、例えば第2変速位置に位置していた第1シフトアクチュエータ41のスプール弁軸41C、第1変速位置或いは第2変速位置に位置していた第2シフトアクチュエータ42のスプール弁軸42C、第1変速位置或いは第2変速位置に位置していた第3シフトアクチュエータ43のスプール弁軸43C、及び第2変速位置に位置していた第4シフトアクチュエータ44のスプール弁軸44Cにおいても同様にそれぞれ中立位置に移動し、第1から第4切換機構31〜34の各シンクロスリーブ31b、32b、33b及び34bは共に中立位置に保持される。
しかる後、シフトレバーSを操作してドライブレンジを選択すると、それに連動してマニュアルバルブ57のスプール弁軸57AがD位置に移動する。このスプール弁軸57AがD位置においてマニュアルバルブ57のDポート57bとポート57f、Nポート57a及びRポート57cとポート57g、ドレンポート57dとポート57hが連通し、ポート57eが閉じられる。
これによりNポート57aに接続された油路61f、62h、63f及び64fがマニュアルバルブ57及びリンプホーム回路切換バルブ58を介してドレンして第1ニュートラル切換バルブ51、第3ニュートラル切換バルブ53及び第4ニュートラル切換バルブ54へのパイロット圧が減少し各スプール弁軸51A、53A、54Aはスプリング51s、53s、54sによってそれぞれ定常運転位置に移動する。
一方、マニュアルバルブ57のDポート57bに接続される油路62f及び油路65cにライン圧が導入される。油路62fから第2ニュートラル切換バルブ52のポート52fに制御圧として導入され、油路62fから分岐した油路62iを介してパイロットポート52iにパイロット圧として導入される。
第2ニュートラル切換バルブ52は、このパイロットポート52iから導入されるパイロット圧によってスプリング52sに抗してスプール弁軸52Aがニュートラル兼リンプホーム位置に移動し保持され、油路62fに接続されたポート52fと油路62bが接続されたポート52aとが連通する。これにより油路62fから第2ニュートラル切換バルブ52のポート52fに導入された制御圧がポート52aから油路62aを介して第2シフトアクチュエータ42の第2変速油圧室42−2に導入する。この第2変速油圧室42−2への制御圧導入によって第2スプール部42Eの端面42Esに制御圧が作用してスプール弁軸42Cが第1変速位置に移動する。このスプール弁軸42Cの移動に連動してシフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bを従動ギヤ22bと一体に形成されたスプライン22dに噛み合わせる。
一方、第1クラッチ調圧バルブ55には、油路65cからポート55cに制御圧として導入され、油路65cから分岐した油路65dからパイロットポート55dにパイロット圧が導入される。第1クラッチ調圧バルブ55は、パイロットポート55dから導入されたパイロット圧によってスプリング55sに抗してスプール弁軸55Aがリンプホーム位置に移動し保持され、油路65cに接続されたポート55cと油路65aが接続されたポート52aとが連通する。これにより油路65aからの制御圧が減圧されて油路65aを介して第1クラッチ15に制御圧が導入されて第1クラッチ15が半クラッチ状態で締結し、これにより変速ギヤ列が2速に設定されて前進走行が可能になる。
この前進走行状態で、シフトレバーSをドライブレンジからニュートラルレンジを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してスプール弁軸57AがD位置からN位置に移動してマニュアルバルブ57のDポート57bがドレンさせる。これにより油路65cから第1クラッチ15への制御圧導入が停止して第1クラッチ15の締結が解除され、かつパイロットポート55dへのパイロット圧の導入が停止してスプリング55sによってスプール弁軸55Aが定常運転位置に移動する。また、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路62hを介して第2ニュートラル切換バルブ52のポート52hにリンプホーム圧が導入され、油路62hからパイロット圧が導入され、第2ニュートラル切換バルブ52のスプール弁軸52Aが定常運転位置からニュートラル兼リンプホーム位置に移動し、シフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bが従動ギヤ22bに一体的に形成されたスプライン22dに噛み合った状態からシンクロハブ32aにのみ噛み合った中立位置に移動してニュートラル状態となり前進走行が停止する。
一方、シフトレバーSをニュートラルレンジからリバースレンジを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してマニュアルバルブ57のスプール弁軸57AがN位置からR位置に移動する。このスプール弁軸57AがR位置においてマニュアルバルブ57のRポート57cとポート57f、Nポート57a及びDポート57bとポート57gが連通し、ポート57dが閉じられる。これによりマニュアルバルブ57のRポート57cに接続される油路62g及び油路66bにライン圧が導入される。油路62g及び油路62gから分岐した油路62jから第2ニュートラル切換バルブ52のポート52gに制御圧として導入され、パイロットポート52jにパイロット圧として導入される。
第2ニュートラル切換バルブ52は、このパイロットポート52jからのパイロット圧の導入に伴ってスプリング52sに抗してスプール弁軸51Aがニュートラル兼リンプホーム位置に移動し保持され、油路62gに接続されたポート52gと油路62aが接続されたポート52bとが連通する。これにより油路62gから第2ニュートラル切換バルブ52のポート52gに導入された制御圧がポート52bから油路62aを介して第2シフトアクチュエータ42の第1変速油圧室42−1に導入する。この第1変速油圧室42−1への制御圧導入によって第1スプール部42Dの端面42Dsに制御圧が作用してスプール弁軸42Cが第2変速位置に移動し、シフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bを従動ギヤ27bと一体に形成されたスプライン27dに噛み合わせる。
一方、第2クラッチ調圧バルブ56には、油路66cからポート56cに制御圧として導入され、油路66cから分岐した油路66dからパイロットポート56dにパイロット圧が導入される。第2クラッチ調圧バルブ56は、パイロットポート56dから導入されたパイロット圧によってスプリング56sに抗してスプール弁軸56Aがリンプホーム位置に移動し保持され、油路66cに接続されたポート56cと油路66aが接続されたポート56aとが連通する。これにより油路66cからの制御圧が減圧されて油路66aを介して第2クラッチ16に制御圧が導入されて第2クラッチ16が半クラッチ状態で締結し、これにより変速ギヤ列が後進段に設定されて後進走行が可能になる。
この後進走行状態で、シフトレバーSをリバースポジションからニュートラルポジションを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してスプール弁軸57AがR位置からN位置に移動してマニュアルバルブ57のRポート57cがドレンさせる。これにより油路66cから第2クラッチ16への制御圧導入が停止して第2クラッチ16の締結が解除され、かつパイロットポート56dへのパイロット圧の導入が停止してスプリング56sによってスプール弁軸56Aが定常運転位置に移動する。
また、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路62h及び油路62kから第2ニュートラル切換バルブ52のポート52hにリンプホーム圧が導入されパイロットポート51kにパイロット圧が導入され、第2ニュートラル切換バルブ52のスプール弁軸52Aが定常運転位置からニュートラル位置に移動する。これにより油路62cから第1リンプホーム圧導入ポート42Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート42Beにリンプ圧が導入されてスプール弁軸42Cが第2変速位置から中立位置に移動する。スプール弁軸42の移動に連動してシフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bが従動ギヤ27bに一体的に形成されたスプライン27dに噛み合った状態からシンクロハブ32aにのみ噛み合った中立位置に移動してニュートラル状態となり後進走行が停止する。
従って、このように構成された本実施の形態によると、電気系統に電気系の故障が生じたときには、セレクトレバーSを操作してパーキングレンジを選択することによって、リンプホーム回路切換バルブ58が定常運転状態からリンプホーム状態に切り換えられ、かつ各ニュートラル切換バルブ51〜54から第1〜第4の各シフトアクチュエータ41〜44にリンプホーム圧が導入されて各シフトアクチュエータ41〜44のスプール弁軸41A〜44Aを中立位置に保持或いは中立位置に移動する。しかる後、シフトレバーSを操作してドライブレンジを選択することによって第2シフトアクチュエータ42に制御圧が導入されて2速が選択され、かつ第1入力クラッチ15が締結して2速の変速段が成立して前進走行が可能になる。この前進走行状態からシフトレバーSを操作してニュートラルレンジを選択すると第1入力クラッチ15の締結が解除され、かつ第2シフトアクチュエータ42が中立位置に移動して走行停止する。同様にパーキングレンジ或いはニュートラルレンジからリバースレンジを選択することによって、第2シフトアクチュエータ42に制御圧が導入されて後進段が選択され、かつ第2入力クラッチ16が締結して後進段が成立して後進走行が可能になり、この後退走行状態からシフトレバーSを操作してニュートラルレンジを選択すると第2入力クラッチ16の締結が解除され、かつ第2シフトアクチュエータ42が中立位置に移動して走行停止する。
これにより電気系の故障が生じたときにも、セレクトレバーSをパーキングレンジに操作に伴って各シフトアクチュエータ41〜44を中立位置に切り換え或いは保持し、しかる後セレクトラバーSをドライブレンジ或いはリバースレンジを選択することによって安定的に前進走行或いは後進走行が可能になり、この前進走行或いは後進走行においてシフトレバーSを操作してニュートラルレンジを選択することによって停止することができる。
しかも、リンプホーム回路切換バルブ58、マニュアルバルブ57、各ニュートラル切換バルブ51〜54、各クラッチ調圧バルブ55、56による簡単な構成及び油圧制御により各アクチュエータ41〜44の作動が適切に行え、構成及び油圧制御の複雑化を伴うことなく、電気系の故障が生じたときにも、セレクトレバーSの操作のみで前進走行及び後進走行が可能になり、車両の安全性が確保できる。
(第2実施の形態)
図14を参照して本発明の第2実施形態を説明する。なお、本実施の形態は第1実施の形態と第2ニュートラル切換バルブのみが異なり他は同一構成であり、第2ニュートラル切換バルブを主に説明する。
図14は第2実施の形態の要部を示す上記図12に対応するリンプホーム回路説明図であり、図12における第2ニュートラル切換バルブ52に代えて第2ニュートラル切換バルブ72が配置され、他の構成は第1実施の形態と同様の構成であり、図12と対応する符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
第2ニュートラル切換バルブ72は、第2シフトアクチュエータ42の制御圧供給ポート42Bdに油路62aを介して連通するポート72a、制御圧供給ポート42Adに油路62bを介して連通するポート72b、両リンプホーム圧導入ポート42Ae及び42Beに分岐した油路62cを介して連通するポート72c、制御バルブ42Vaを介在する油路62dに接続するポート72d、制御バルブ42Vbを介在する油路62eに接続するポート72e、油路62fを介してマニュアルバルブ57のDポート57bに連通するポート72f、油路62gを介してマニュアルバルブ57のRポート57cに連通するポート72g、油路62hを介してマニュアルバルブ57のNポート57aに連通するポート72h、油路62fから分岐した油路62iに連通するパイロットポート72i、油路62gから分岐した油路62jに連通するパイロットポート72j、油路62hから分岐した油路62kに連通するパイロットポート72kを有している。
更に、第2ニュートラル切換バルブ72はパイロットポート72i、72j、72kからのパイロット圧と一対のスプリング72s、72sの付勢力によって作動するスプール弁軸72Aを有している。そしてパイロットポート72i、72kからのパイロット圧によりスプール弁軸72Aが第1リンプホーム位置に付勢されてポート72aとポート72f及びポート72cとポート72hが連通する。一方、パイロットポート72jからのパイロット圧によりスプール弁軸72Aが第2リンプホーム位置に付勢されてポート72bと72gが連通する。更に、パイロットポート72i、72kからのパイロット圧の供給が停止するとスプリング72s、72sによりスプール弁軸72Aが定常運転位置に維持されてポート72aと72d及び72bと72eが連通する。
このように構成された油圧制御装置による定常走行状態においては、第1実施の形態と同様にリンプホーム回路切換バルブ58にはECU49から通電されてスプール弁軸58Aが定常運転位置に保持されている。
これによりマニュアルバルブ57から各ニュートラル切換バルブ51、53、54、72及び第1クラッチ調圧バルブ55、第2クラッチ調圧バルブ56へのリンプホーム圧導入が停止されて第1〜第4のシフトアクチュエータ41〜44及び第1クラッチ15、第2クラッチ16の作動による定常運転が確保できる。
変速ギヤ列が1速〜6速或いは後進段のいずれかとなっているときに、電気系に故障が発生した場合には常閉式の電磁バルブからなる制御バルブ41Va、41Vc、42Va、42Vc、43Va、43Vc、44Va及び44Vcは閉状態となるが、噛み合い状態のシンクロスリーブとスプラインとの噛み合い抵抗及びディテント機構によってその変速ギヤ列が維持される。これらの変速ギヤ列のもとでセレクトレバーSがニュートラルレンジに選択されると、クラッチ制御マニュアルバルブ60により第1入力クラッチ15及び第2入力クラッチ16への油圧供給が停止し、エンジンEから第1入力軸11及び第2入力軸12への動力伝達が遮断されて車両を停止することができる。
この状態でシフトレバーSをニュートラルレンジからパーキングレンジを選択すると、第1実施の形態と同様に、ライン圧がリンプホーム回路切換バルブストッパ装置59の油圧室59Cに供給され、ストッパ59Bが押動されてリンプホーム回路切換バルブ58のスプール弁軸58Aの係止が解除される。
ストッパ59Bによる係止が解除されたスプール弁軸58Aはスプリング58sの付勢力によって定常運転位置からリンプホーム位置に移動し、このリンプホーム位置においてリンプホーム回路切換バルブ58のポート58aとポート58c、ポート58bとポート58dが連通する。
このマニュアルバルブ57のポート57fとNポート57aの連通によりマニュアルバルブ57のNポート57aから油路61f及び油路61fから第1ニュートラル切換バルブ51のポート51fにリンプホーム圧が導入されパイロットポート51gにパイロット圧が導入される。これによりスプール弁軸51Aが定常運転位置からニュートラル位置に移動し、リンプホーム圧がポート51fから油路61cを介して第1シフトアクチュエータ41の第1リンプホーム圧導入ポート41Ae及び第2リンプホーム圧導入ポート41Beに導入される。
同様に、マニュアルバルブ57のNポート57aから油路62h及び油路62hから分離した油路62iを介して第2ニュートラル切換バルブ72のポート72hにリンプホーム圧が導入されパイロットポート72iにパイロット圧が導入される。このパイロット圧の導入によってスプール弁軸72Aが第1リンプホーム位置に移動してポート72hと72cが連通してリンプホーム圧がポート72cから油路62cを介して第2シフトアクチュエータ42の第1リンプホーム圧導入ポート42Ae及び第1リンプホーム圧導入ポート42Beに導入される。
また、同様にマニュアルバルブ57のNポート57aから油路63f、64fから第3及び第4のニュートラル切換バルブ53、54のポート53f、54fにリンプホーム圧が導入されパイロットポート53g、54gにパイロット圧が導入される。これによりスプール弁軸53A、54Aがそれぞれ定常運転位置からニュートラル位置に移動してリンプホーム圧がポート53f、54fから油路63c、64cを介して第3シフトアクチュエータ43の各リンプホーム圧導入ポート43Ae、43Be及び第4シフトアクチュエータ44のリンプホーム圧導入ポート44Ae、44Beに導入される。これにより第1〜第4の各シフトアクチュエータ41〜44の各スプール軸弁41A〜44Aは、中立位置へ移動或いは中立位置に維持されて第1〜第4の各切換機構31〜34のシンクロハブ31b〜34bは中立位置に維持される。
更に、シフトレバーSを操作してドライブレンジを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してマニュアルバルブ57のスプール弁軸57AがD位置に移動し、マニュアルバルブ57のDポート57bとポート57f、Nポート57a及びRポート57cとポート57g、ポート57dとポート57hが連通し、ポート57dが閉じられる。
これによりNポート57aに接続された油路61f、62h、63f及び64fがマニュアルバルブ57及びリンプホーム回路切換バルブ58を介してドレンさせ、第1ニュートラル切換バルブ51、第3ニュートラル切換バルブ53及び第4ニュートラル切換バルブ54へのパイロット圧が減少し各スプール弁軸551A、53A、54Aはスプリング51s、53s、54sによってそれぞれ定常運転位置に移動する。
一方、マニュアルバルブ57のDポート57aに接続される油路62f及び油路65cにライン圧が導入される。油路62f及び油路62fから分岐した油路62iから第2ニュートラル切換バルブ72のポート72fに制御圧が導入され、パイロットポート72iにパイロット圧が導入される。
第2ニュートラル切換バルブ72は、このパイロットポート72iからのパイロット圧の導入に伴ってスプリング72s、72sに抗してスプール弁軸72Aが第1リンプホーム位置に移動し、油路62fに接続されたポート72fと油路62aが接続されたポート72aが連通する。これにより油路62fから第2ニュートラル切換バルブ72のポート72fに導入された制御圧がポート72aから油路62bを介して第2シフトアクチュエータ42の第2変速油圧室42−2に導入する。この第2変速油圧室42−2への制御圧導入によってスプール弁軸42Cが第1変速位置に移動し、シフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bを従動ギヤ22bと一体に形成されたスプライン22dに噛み合わせる。
一方、第1クラッチ調圧バルブ55には、油路65cからポート55cに制御圧が導入され、油路65cから分岐した油路65dを介してパイロットポート55dにパイロット圧が導入される。第1クラッチ調圧バルブ55は、導入されたパイロット圧によってスプリング55sに抗してスプール弁軸55Aがリンプホーム位置に移動し保持され、油路65cに接続されたポート55cと油路65aが接続されたポート52aとが連通する。これにより油路65cからの制御圧が減圧されて油路65aを介して第1クラッチ15に導入されて第1クラッチ15が半クラッチ状態で締結する。これにより変速ギヤ列が2速に設定されて前進走行が可能になる。
この前進走行状態で、シフトレバーSをニュートラルレンジに選択すると、シフトレバーSの操作に連動してスプール弁軸57AがD位置からN位置に移動してマニュアルバルブ57のDポート57bがドレンさせる。これにより油路65cから第1クラッチ15への制御圧導入が停止して第1クラッチ15の締結が解除されて前進走行が停止する。
一方、シフトレバーSをニュートラルレンジ或いはドライブレンジからリバースポジションを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してマニュアルバルブ57のスプール弁軸57AがR位置に移動する。このスプール弁軸57AがR位置においてマニュアルバルブ57のRポート57cとポート57f、Nポート57a及びDポート57bとポート57gが連通し、ポート57dが閉じられる。
これによりマニュアルバルブ57のRポート57cに接続される油路62g及び油路66cにライン圧が導入される。油路62g及び油路62gから分岐した油路62jから第2ニュートラル切換バルブ72のポート52gに制御圧として導入され、パイロットポート72jにパイロット圧として導入される。
第2ニュートラル切換バルブ72は、このパイロットポート52jからのパイロット圧の導入に伴ってスプリング52sに抗してスプール弁軸72Aが第2リンプホーム位置に移動し保持され、油路62gに接続されたポート72gと油路62aが接続されたポート72bとが連通する。これにより油路62gから第2ニュートラル切換バルブ72のポート72gに導入された制御圧がポート72bから油路62aを介して第2シフトアクチュエータ42の第1変速油圧室42−1に導入する。この第1変速油圧室42−1への制御圧導入によってスプール弁軸42Cが第2変速位置に移動し、シフトフォーク42Sによって第2切換機構32のシンクロスリーブ32bを従動ギヤ27bと一体に形成されたスプライン27dに噛み合わせる。
一方、第2クラッチ調圧バルブ56には、油路66cからポート56cに制御圧として導入され、油路66cから分岐した油路66dからパイロットポート56dにパイロット圧が導入される。第2クラッチ調圧バルブ56は、パイロットポート56dから導入されたパイロット圧によってスプリング56sに抗してスプール弁軸56Aがニュートラル位置に移動し保持され、油路66bに接続されたポート56cと油路66aが接続されたポート56aとが連通する。これにより油路66cからの制御圧が減圧されて油路66aから第2クラッチ16に制御圧が導入されて第2クラッチ16が半クラッチ状態で締結し、これにより変速ギヤ列が後進段に設定されて後進走行が可能になる。
この後進走行状態で、シフトレバーSをリバースレンジからニュートラルレンジを選択すると、シフトレバーSの操作に連動してスプール弁軸57AがR位置からN位置に移動してマニュアルバルブ57のRポート57cをドレンさせる。これにより油路66cから第2クラッチ16への制御圧導入が停止して第2クラッチ16の締結が解除され、後進走行が停止する。
従って、このように構成された本実施の形態によると、電気系の故障が生じたときには、セレクトレバーSを操作してパーキングレンジを選択することによって、リンプホーム回路切換バルブ58が定常運転位置からリンプホーム位置に切り換えられ、かつ各ニュートラル切換バルブ41〜44から第1〜第4の各シフトアクチュエータ41にリンプホーム圧が導入されて第1〜第4の各シフトアクチュエータ41〜44のスプール弁軸41A〜44Aを中立位置に保持或いは中立位置に移動する。しかる後、シフトレバーSを操作してドライブレンジを選択することによって第2シフトアクチュエータ42に制御圧が導入されて2速が選択され、かつ第1入力クラッチ15が締結して2速の変速段が成立して前進走行が可能になる。この前進走行状態からシフトレバーSを操作してニュートラルポジションを選択すると第1入力クラッチ15の締結が解除されて走行停止する。同様にパーキングレンジ、ニュートラルレンジポジション或いはドライブレンジからリバースレンジを選択することによって、第2シフトアクチュエータ42に制御圧が導入されて後進段が選択され、かつ第2入力クラッチ16が締結して後進段が成立して後進走行が可能になり、この後進走行状態からシフトレバーSを操作してニュートラルレンジを選択すると第2入力クラッチ16の締結が解除されて後進走行が停止する。
従って、本実施の形態によると、第1実施の形態に加え、変速ギヤ列が1速から6速或いは後進段のいずれかとなっているときに、電気系に故障が発生しても、シフトレバーSをパーキングレンジに選択してリンプホーム回路に切り換えた後に、ニュートラルレンジを介すことなく直接的にドライブレンジからリバースレンジ或いはリバースレンジからドライブレンジを選択することによって前進走行或いは後進走行ができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることなく発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、上記各実施の形態では前進6速、後進1速の変速の自動変速機を例に説明したが、他の前進5速等他の変速段を備えた自動変速機に適用することも可能であり、またリンプホーム時において2速及び後進段において走行可能に構成したが、2速に限らず他の前進速段に設定することができる。