以下、図面に基づいて、本発明の血液検査装置を説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における血液検査装置21の外観斜視図である。この血液検査装置21の筺体22は、縦、横、高さ寸法が共に異なる直方体形状をしており、略手のひらに収まる大きさである。また、筺体22は半透明の白色部材で形成されている。この筺体22の上面22aであって、一方の側面22e側の中央にはカートリッジ装着部34(図3参照)が設けられており、このカートリッジ装着部34には、カートリッジ24が着脱自在に装着されている。このカートリッジ24の上面には血液センサ(以後、センサという)33が装着されている。
また、このカートリッジ装着部34に隣接する両側には、穿刺ボタン25a、25bが設けられている。筺体22の他方の側面22dとカートリッジ装着部34との間には表示部23が設けられている。この表示部23は発光ダイオードで形成されており、この発光ダイオードが点灯することにより、半透明の筺体22から浮き上がった文字として認識することができるものである。消灯時には筺体22の上面22aからは表示部23を認識することはできず、デザイン性に富んだ形状となる。
また、表示には、カラー発光ダイオードを用いており、このカラー表示を活用して、血液の特性値の測定結果が予め定められた値を超えた場合は赤色で表示し、血液の測定結果が予め定められた値以内の場合は緑色で表示することも可能となる。従って、赤色表示のときは注意が必要であり、緑色表示のときは安心して良いことになる。
更に、この表示部23には、文字表示に併せて矢印23aでも表示できるようにしている。この矢印23aを用いて、前回の血糖値との比較、或いは平均値との比較、或いは長期の血糖値の動向等を示すものである。例えば、矢印23aが上向き(一方の側面22e方向)であれば血糖値が上昇傾向にあることを示す。なお、この表示部23は、発光ダイオードに限ることはなく、液晶で構成しても良い。液晶で構成すれば、省電力化を図ることができる。この場合は、表示部23に対応する上面22aは透明にしておくか、開放しておかなければならない。
22gは、一方の側面22e側に回動自在に装着されたカバーであり、センサ33と穿刺ボタン25a、25bを保護するものである。なお、本実施の形態において、筺体22の表面色は白色としているが、白色に限ることはなく、他人の血液検査装置21との識別や、患者12の好みに合わせて、緑色、青色、黄色、紫色、茶色、黒等を用いることもできる。
なお、筺体22の形状は、本実施の形態では直方体形状としたが、これは直方体形状に限ることはなく、てんとう虫型、ねずみ型等、患者の好みのものとすることもできる。
以上のように構成されているので、以下の効果を奏するものである。即ち、カートリッジ24の両側に穿刺ボタン25a、25bが夫々設けられており、あたかもオフィスでコンピュータに接続されたマウスをクリックしているようであり、オフィス等で使用しても血液の測定に対する違和感がない。
また、センサ33が内蔵されたカートリッジ24は着脱自在であるので、センサ33の交換は容易に行うことができる。更に、カートリッジ24毎の廃棄が可能であるので、血液が本体部に付着することはなく衛生的である。
更に、センサ33と穿刺ボタン25a、25bを保護する蓋22gが設けられているので、センサ33の衛生状態を保つことができるとともに、穿刺ボタン25a、25bを誤って押下することもない。
更にまた、握り易い形状でもある。また、筺体22はデザイン性に富んだ形状であり、例え、人目に触れる場所で使用したとしても、血液の測定をしている等と悟られ難い形状である。従って、恥ずかしさを感ずることはない。
図2は、その使用状態を示す平面図である。図2(a)は、血液検査装置21を右手12a(左手であっても良い)で握り、中指12cをカートリッジ24のセンサ33上に載せ、人差し指12dを用いてクリック感覚で穿刺ボタン25aを押下する。このようにして、中指12cの皮膚13から血液14を採取する様子を示したものである。
また、図2(b)も、血液検査装置21を右手12aで握り、人差し指12dをカートリッジ24のセンサ33上に載せ、中指12cを用いてクリック感覚で穿刺ボタン25bを押下する。このようにして、人差し指12dの皮膚13から血液14を採取する様子を示したものである。
この場合、クリック感覚で血液14を採取することができる。また、クリックする指を変えることで、血液14を採取する指を変えることができる。
図3は、血液検査装置21の正面22b側から見た断面図である。図3において、筺体22の上面22a側であって、筺体22の一方の側面22e側にはカートリッジ24が装着されるカートリッジ装着部34が設けられている。そして、このカートリッジ装着部34には、カートリッジ24が装着されている。カートリッジ装着部34に形成された位置決め凸部34jが設けられており、カートリッジ24に形成された位置決め凹部24jと嵌合して位置決めされる。
筺体22の裏面22fは、レーザ発射装置(穿刺手段の一例として用いた)26が裏面22fに沿わせて載置されており、このレーザ発射装置26の前方には、レーザ発射装置26から発射されるレーザ光35を90度曲げる反射鏡39が45度の角度で装着されている。この反射鏡39の上方はカートリッジ装着部34となっており、このカートリッジ装着部34には、レーザ光35が通過する孔34aが設けられている。この孔34aは、透明部材34bで塞がれている。従って、レーザ光35は、この透明部材34bを通過するが水分とか埃は通過しない。この配慮により、血液検査装置21の内部が穿刺時等に血液14や埃で汚れることはない。
レーザ光35が孔34aを通過して進行する先には、センサ33がカートリッジ24内に装着されている。レーザ光35は、センサ33の貯留部49(図12参照)とカートリッジ24に形成された孔24kを通過して皮膚13を穿刺する。この孔24kは、カートリッジ24の上面24aに設けられた半円形の谷24mに設けられている。
本実施の形態におけるカートリッジ24は、センサ33に比べて横方向が長いので、センサ33の他にもう一つセンサ33aが装着されている。そして、このセンサ33aの貯留部49(センサ33の貯留部49と同じ)に対応するカートリッジ24の谷24sにも孔24nが設けられている。従って、センサ33で血液14を測定した後、カートリッジ24を(図3において)180度水平方向に回転させて、今度はセンサ33aを用いて更にもう一回血液14の検査をすることができる。
なお、このセンサ33aの下に複数のセンサを積層収納して、順次この積層収納されたセンサをセンサ33の装着場所へ搬送するとともに、使用済みのセンサを排出するようにしても良い。このことにより、一個のカートリッジ24で複数回の血液検査をすることができる。また、センサ33aの代わりに消毒綿を装着することで、検査後に指先に残る余分な血液を吸い取るように構成してもかまわない。
谷24mと谷24sとの間の山24tに細線を設けて、毛細管現象で流出した余分な血液14を吸い取るようにしても良い。また、山24tに消毒綿を装着して、流出した余分な血液14を吸い取るようにしても良い。23は、レーザ発射装置26の上方に設けられた表示部23である。
図4は、血液検査装置21の部分破砕上面図であり、筺体22の略中央にレーザ発射装置26が装着されている。そして、このレーザ発射装置26の一方の側面側には、電気回路部27と負圧手段28が設けられている。この負圧手段28は、吸引ポンプ用モータ28aと、この吸引ポンプ用モータ28aに連結された吸引ポンプ28bとから構成されている。この吸引ポンプ28bからは、ホース28cでカートリッジ24内へ負圧が導かれる。
また、このレーザ発射装置26の他方の側面側には、レーザ発射装置26と電気回路部27と吸引ポンプ用モータ28a等に電源を供給する電池30が配置されている。
22hは、穿刺ボタン25aと25b上に夫々3個ずつ形成された凸部であり、指をすべり難くするとともに、血液検査装置21の重要なデザインの一部を形成している。
34pはカートリッジ装着部34に形成された位置決め凸部であり、カートリッジ24に形成された位置決め凹部24pと嵌合して位置決めされる。従って、カートリッジ24のカートリッジ装着部34への位置決めは、図3に示した位置決め凹部24jと、この位置決め凹部24pとで位置決めされる。
29は、カートリッジ装着部34の上面であって、谷24m(図3参照)近傍に設けられた皮膚検知センサであり、穿刺ボタン25a側に装着された発光ダイオード29aと、穿刺ボタン25b側に装着された受光トランジスタ29bとで構成されており、発光ダイオード29aから発射された光は、カートリッジ24の谷24m上を越えて受光トランジスタ29bに到達することになる。従って、カートリッジ24上に指を載せると、発光ダイオード29から発射した光が遮断されるので、指が載置されたことを検知することができる。
なお、スペースが狭くて発光ダイオード29aや受光トランジスタ29bが装着し難い場合には、ファイバーケーブルを用いて、このファイバーケーブルの端をカートリッジ装着部34の上面であって、谷24m近傍に設置しても良い。このことにより、発光ダイオード29aや受光トランジスタ29bの装着場所の自由度が増す。
図5は、血液検査装置21の側面図である。上方中央のカートリッジ装着部34にカートリッジ24が装着されている。また、中央にはレーザ発射装置26が設けられており、このレーザ発射装置26の一方の側面には、吸引ポンプ28bが配置され、他方の側面には電池30が配置されている。
ここで、図4を用いてレーザ発射装置26の詳細について説明する。レーザ発射装置26は、発振チューブ26aと、この発振チューブ26aの前方に連結された円筒状の筒体26bとから構成されている。発振チューブ26a内には、Er:YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ結晶26cとフラッシュ光源26dが格納されている。発振チューブ26aの一方の端には透過率約1%の部分透過鏡26eが装着されており、他方の端には全反射鏡26fが装着されている。
部分透過鏡26eの前方の筒体26b内には凸レンズ26gが装着されており、レーザ光35で患者12の皮膚下に焦点を結ぶように設定されている。このレーザ光35での穿刺電圧は、約300Vとしている。従って、患者12に与える苦痛は少ない。
以上のように構成されたレーザ発射装置26について、以下にその動作を説明する。フラッシュ光源26dから発射された光源は、Er:YAGレーザ結晶26c内に入り、ここで、全反射鏡26fとYAGレーザ結晶26cと部分透過鏡26eの間を反射して共振するとともに増幅される。この増幅されたレーザ光の一部は誘導放出により部分透過鏡26eを通過する。この部分透過鏡26eを通過したレーザ光35はレンズ26gを透過して放射され、センサ33を通過して皮膚13を穿刺(照射)する。
次に、図6を用いて、レーザ光35が皮膚13へ照射されたときの穿刺の深さ13dとレーザ光35の焦点との関係について説明する。図6において、13は患者12の皮膚であり、35はこの皮膚13に照射されるレーザ光である。図6(a)は、皮膚13の表面から深さ13dの距離にレーザ光35の焦点を結ぶように設定したものである。この場合、レーザ光35により破壊される皮膚13の容積13aは逆円錐形になる。従って、皮膚13の開口は血液14を採血するに十分な大きさとなり血液14の流出は容易になるので痛みは少ない。また、皮膚13につける傷の大きさも小さい。
これに対して図6(b)は、丁度皮膚13の表面にレーザ光35の焦点を結ぶように設定したものである。この場合も皮膚13から深さ13dの距離まで穿刺すると、レーザ光35により破壊される皮膚13の容積13bは円錐形になる。従って、皮膚13の開口は極端に小さくなり血液14の流出は少なく大きな痛みを感じる。また、皮膚13につける傷の大きさは図6(a)の場合と同程度とになる。
図6(c)は、皮膚13の上方にレーザ光35の焦点を結ぶように設定したものである。この場合も皮膚13から深さ13dの距離まで穿刺すると、レーザ光35により破壊される皮膚13の容積13cは輪切りにした円錐の下部形状のようになる。この場合も、皮膚13の開口は小さくなり血液14の流出は少なく大きな痛みを感じる。また、皮膚13につける傷の大きさは図6(a)、(b)の場合に比べて大きくなる。
従って、本実施の形態におけるレーザ発射装置26の焦点は皮膚13の表面から深さ13dの距離に焦点を結ぶようにしている。このように設定することにより、血液14の流出を容易にするとともに患者12に与える痛みを最小にしている。なお、穿刺の深さ13dは0.1mm〜1.5mmが適しており、本実施の形態では0.5mmとしている。
このように本実施の形態では、患者12の皮膚13へ非接触で穿刺できるレーザ発射装置26を用いているので、従来のように針8の交換作業が不要となり、穿刺前の準備作業が大幅に簡素化される。また、患者12の皮膚13と、レーザ発射装置26とは非接触であり衛生的である。さらに、従来のように運動する可動部品は無く、故障は少なくなる。更にまた、部品点数が少なくなるので、部品管理が容易である。また、非接触であり血液検査装置21を容易に防水構造とすることができ、全体を丸洗いすることも可能となる。
図7は、カートリッジ24の斜視図である。このカートリッジ24は、下面24hが開口した略直方体形状をしており、樹脂で形成されている。そして、このカートリッジ24の内部両側面には、コネクタせり出し機構36を構成する歯36aが設けられている。また、カートリッジ24の上面24aは、2つの半円型の波で形成されており、この波の谷24m、24sには夫々孔24k、24n(図3参照)が形成されている。この半円型の波は、指の皮膚13に適合し易い形状となっている。
カートリッジ24の正面24bと背面24cには、夫々位置決め凹部24pが形成されており、カートリッジ装着部34に形成された位置決め凸部34pに嵌合する。また、カートリッジ24の一方の側面24fと他方の側面24dには、夫々位置決め凹部24jが形成されており、側面24d側の位置決め凹部24jはカートリッジ装着部34に形成された位置決め凸部34jに嵌合する。また、側面24f側の位置決め凹部24jは、カートリッジ24の着脱時の滑り止めとして使用される。なお、カートリッジ24を半回転させて、センサ33aを使用するときは、この位置決めと滑り止めの関係は逆になる。
図8は、コネクタせり出し機構36とその周辺の要部断面図である。なお、この図はカートリッジ24の背面24c側からみた断面図である。36bは、断面が逆「U」字型をするとともに樹脂で形成されたせり出し部材であり、このせり出し部材36bの両側面には、歯36cが形成されている。この歯36cはカートリッジ装着部34(図3参照)に回転自在に固定装着された大歯車36dに歯合する。36eは、大歯車36dと同軸で固定された小歯車であり、この小歯車36eは、カートリッジ装着部34に回転自在に固定装着された小歯車36fに歯合する。また、この小歯車36fはカートリッジ24に形成された歯36aに歯合する。
なお、37はせり出し部材36bの上面に植設されたコネクタであり、センサ33に形成された接触場所54b〜57b、56c(図11参照)に接触する位置に設けられている。24eはカートリッジ24内の底面24g側近傍に形成されたストッパであり、センサ33を底面24g側に固定するものである。24kは、谷24mの中央に形成された貫通孔であり、負圧室38を形成している。
以上のように構成されたせり出し機構36について、以下にその動作を説明する。カートリッジ24を矢印36g方向に挿入する。すると歯36aに歯合した小歯車36fが矢印36h方向に回転する。小歯車36fが矢印36h方向に回転すると、この小歯車36fに歯合した小歯車36eが矢印36j方向に回転する。小歯車36eが矢印36j方向に回転すると、この小歯車36eに固定された大歯車36dも矢印36kの方向に回転する。大歯車36dが矢印36kの方向に回転すると、この大歯車36dに歯合した歯36cに伝達され、歯36cが移動する。即ち、歯36cが装着されたせり出し部材36bが矢印36m方向に移動する。このようにして、せり出し部材36bの上面に植設されたコネクタ37がセンサ33の接触場所54b〜57b、56cに接触する。
このように、カートリッジ24の動き(矢印36g)とせり出し部材36b(矢印36m)とは互いに逆方向に動作する。このことにより、カートリッジ24をカートリッジ装着部34に挿入すると、奥まっていたコネクタ37がせり出してセンサ33の接触場所54b〜57b、56cに当接する。この動作により、カートリッジ24を外した状態におけるコネクタ37は、カートリッジ装着部34の奥まった位置にあり、外部から損傷を受けないという効果を奏する。
なお、このときカートリッジ24の挿入距離とせり出し部材36bのせり出し距離は、小歯車36fの直径と、大歯車36dの直径の比に比例する。但し、各歯車のピッチは同じとしている。本実施の形態では、小歯車36fと大歯車36dの直径の比を1対2にしている。従って、せり出し部材36bの移動距離は、カートリッジ24の移動距離の2倍移動することになる。なお、カートリッジ24を排出するときは、この逆の動作になる。
次に、図9〜11を用いて、センサ33の詳細を説明する。図9は、本実施の形態におけるセンサ33の断面図である。このセンサ33を形成する基体45は、基板46と、この基板46の上面に貼り合わされたスペーサ47と、このスペーサ47の上面に貼り合わされたカバー48とで構成されている。
49は、血液の貯留部であり、その容積は0.904μLである。またこの貯留部49は、基板46に設けられた孔46aとスペーサ47に設けられた孔47aに連通して形成されており、図9の表示では下方に向かって開口している。50はこの貯留部49に一方の端が連結された供給路であり、貯留部49に溜められた血液14を毛細管現象で検出部51に導く路である。また、この供給路50の他端は空気孔52に連結している。59は、基体45の上面と下面とを貫通する孔であり、この孔59と空気孔52を介して負圧室38に負圧を加える。ここで貯留部49の容積は、供給路50の容積の5倍以上とすれば、正確な測定をするのに十分な血液14を得ることができる。しかし、多くの血液14を採取すると患者12に負担をかけるので、7倍以下程度にすべきである。
53は、検出部51上に載置された試薬であって、この試薬53は、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して溶解させて試薬溶液を調整し、これを基板46に形成された検出電極54,56(図11参照)上に滴下し、乾燥させることで形成したものである。
図10は、センサ33の分解平面図である。図10(c)は、センサ33を構成する長方形をした基板46の平面図であり、その寸法は、カートリッジ24の底面24gへ丁度2個挿入される大きさである。この基板46の材質はポリエチレンテレフタレート(PET)であり、その厚さは0.188mm(0.075〜0.250mmの範囲)の物を用いている。
そして、この基板46の上面には金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法或いは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザ加工により検出電極54〜57と、この検出電極54〜57から夫々導出された接続電極54a〜57aを一体的に形成している。また、この接続電極54a〜57aにはコネクタ37が接触する接触場所54b〜57b、56cが設けられている。
46aは、基板46の略中央に設けられた孔であり、その直径は2.000mmとしている。この孔46aの壁面は、供給路50より弱い親水性処理をするか、或いはカバー48の上面48e(図9参照)より弱い撥水性処理をすることが好ましい。
図10(b)はスペーサ47の平面図である。このスペーサ47の形状は長方形状をしており、基板46に形成された接触場所54b、55b、56b、57bに対応した四隅の場所に夫々4分の1円形の切欠き47gと、基板46の接触場所56cと対応する両辺に夫々半円形の切欠き47hを形成している。
47aは、スペーサ47の略中央に設けられた直径2.000mmの孔であり、基板46に設けられた孔46aに対応した位置に設けられている。この孔47aの壁面は、供給路50より弱い親水性処理をするか、或いはカバー48の上面48eより弱い撥水性処理をすることが好ましい。
また、この孔47aから検出部51方向に向かってスリット47eが形成されている。このスリット47eは血液14の供給路50を形成するものである。このスリット47eの壁面と、それに対応する基板46の上面も親水性処理を行なう。また、このスリット47eの幅47fは0.600mmとし、その長さ47gは2.400mmとして、0.144μLの容積を有する供給路50を形成している。なお、スペーサ47の材質はポリエチレンテレフタレートであり、その厚さは0.100mm(0.050〜0.125mmの範囲)の物を用いている。
図10(a)はカバー48の平面図である。その形状は、スペーサ47と同様、長方形状をしており、基板46の4角の接触場所54b、55b、56b、57bに対応した四隅に夫々4分の1円形の切欠き48gと、基板46の接触場所56cと対応する両辺に夫々半円形の切欠き48hを形成している。52は空気孔であり、供給路50の先端部に対応して設けられている。空気孔52の直径は50μmである。
このカバー48はレーザ光35が通過するように透明のものを用いており、その厚さは0.075mm(0.050〜0.125mmの範囲)の物を用いている。このカバー48は以下の処理を行なっている。即ち、基体45の上面を形成するカバー48の上面48e(図9参照)は撥水性処理を行なっている。また、供給路50の天面を形成するカバー48の下面側は親水性処理を行なっている。また、貯留部49の天面49aは、供給路50より弱い親水性処理をするか、或いはカバー48の上面48eより弱い撥水性処理をすることが好ましい。本実施の形態では、貯留部49の天面49aは供給路50より弱い親水性処理にするとともに、カバー48の上面48eより弱い撥水性処理を行なっている。
なお、貯留部49と対応する位置に、貯留部49より小さく、空気孔52より大きい孔59aを設けても良い。この孔59aを設けることにより、カバー48によるレーザ光35の減衰を無くすることができるとともに、この孔59aに負圧路としての機能を持たせることができる。また、穿刺手段に穿刺針を用いた血液検査装置に使用する場合には、穿刺針の受ける抵抗を無くすことができ、穿刺深さが安定する。
図11は、センサ33の透視平面図である。図11において、54〜57は検出電極であり、貯留部49から空気孔52に向かって順に、検出電極57(Hct測定極)、検出電極56(対極)、検出電極54(作用極)、検出電極56(対極)、検出電極55(検知極)となっている。また、51は検出部である。
54a〜57aは検出電極54〜57に夫々接続された接続電極であり、基板46の外周方向に導出されている。また、夫々の接続電極54a〜57aには夫々接触場所54b〜57bが設けられている。ここで、接続電極56aにのみ接触場所56bと接触場所56cの2つの接触場所が形成されている。そして、接触場所56bと接触場所56cのみが導通しており、その他の接触場所同士は全て絶縁されている。この接触場所56cを基準接触場所即ち、基準電極56dとする。
このように構成されているので、隣り合う接触場所の絶縁抵抗を電気回路部27(図13参照)で測定し、絶縁抵抗が零となった接触場所が基準電極56dであると特定することができる。これ以降、以下時計周りに接続電極56a、接続電極57a、接続電極54a、接続電極55aと特定することができる。従って、無造作にカートリッジ24を装着しても、カートリッジ24の挿入方向に拘わらず、センサ33の基準電極56dを検知することができる。従って、以降この基準電極56dに基づいて自動的に他の接続電極54a〜57aを決定することができる。この配慮により、カートリッジ24の挿入操作が非常に容易となる。なお、本実施の形態では基準電極56dを接続電極56a上に設けたがこれは他の接続電極54a、55a,57aの何れに設けても良い。
以上のように構成されたセンサ33を用いた採血について、以下にその動作を説明する。図12に示すように、先ず、カートリッジ24を患者12の皮膚13に当接させる。そして、穿刺ボタン25a(又は25b)を押下してレーザ光35を発射させる。そうすると、レーザ光35はカバー48を透過し皮膚13に傷をつける。そうすると、この皮膚13から血液14が流出する。この流出した血液14は貯留部49を満たす。貯留部49を満たした血液14は供給路50に達し、この供給路50の毛細管現象で検出部51へ向かって一気に一定速度で流入する。そして、この血液14は検出部51に達し、試薬53と化学反応して血糖値等の血液14の性質が測定される。
なお、24eは、カートリッジ24に形成されたストッパであり、このストッパ24eで2枚のセンサ33,33aをカートリッジ24に固定する。また、採血を容易にするため、空気孔52と孔59を介して負圧室38に負圧を加える。
図13は、電気回路部27のブロック図である。図13において、54b〜57b、56cはセンサ33に形成された接触場所であり、これらの接触場所54b〜57b、56cはコネクタ37a〜37f(コネクタ37は、挿入方向を意識しないでカートリッジ24を挿入可能にするため、接触場所56cと対向する場所にもコネクタが必要であり6本となっている)を介して切換回路71に接続される。この切換回路71の出力は電流/電圧変換器72の入力に接続されている。そして、その出力はアナログ/デジタル変換器(以後、A/D変換器という)73を介して演算部74の入力に接続されている。この演算部74の出力は、発光ダイオード或いは液晶で形成された表示部23に接続されている。また、切換回路71には基準電圧源78が接続されている。なお、この基準電圧源78はグランド電位であっても良い。
76は制御部であり、この制御部76は、切換回路71の制御端子と、演算部74と、穿刺ボタン25a、25bと、送信部77と、タイマ79と、レーザ発射装置26と、負圧手段28と、皮膚検知センサ29(発光ダイオード29aと受光トランジスタ29b)に接続されている。なお、図示していないが警報手段にも接続されている。また、演算部74の出力は送信部77の入力にも接続されている。また、負圧手段28の出力はホース28cを介して負圧室38に導かれている。
次に、電気回路部27の動作を説明する。先ず、血液14の測定に先立って、センサ33の接触場所54b〜57b、56cがコネクタ37a〜37fの何れに接続されているかを検出する必要がある。即ち、制御部76の指令により、コネクタ37a〜37fの内、隣り合う端子間の電気抵抗が零である接触場所56cを検出する。そして、この電気抵抗が零の接触場所56cが検出されたら、その接触場所56cに接続されているものが基準電極56dであると決定する。そして、この接触場所56cに接続されたコネクタ37を基準として、順に接続電極56a、57a,54a、55aが決定される。このようにして、接続電極54a〜57aに接続された夫々のコネクタ37を決定し、その後、血液14の測定に移行する。
また、本実施の形態では、カートリッジ24に2枚のセンサ33,33aが装着されているので、使用済みのセンサか否かの検出をしなければならない。使用済みセンサの場合には、警報手段で警報するとともに、表示部23にその旨を表示して、カートリッジ24の装着方向を変更するか、或いはカートリッジ24そのものを新しいものに交換させる必要がある。
使用済みのセンサの検出は、制御部76の指令により、コネクタ37a〜37fの内、隣り合う端子間の電気抵抗が零である接触場所56cの他に、隣り合う端子間の電気抵抗が無限大ではなく、予め定められた値以下のものがあることで判別する。
測定動作では、先ず切換回路71を切換えて、血液成分量を測定するための作用極となる検出電極54を(上記決定されたコネクタ37を介して)電流/電圧変換器72に接続する。また、血液14の流入を検知するための検知極となる検出電極55を(上記決定されたコネクタ37を介して)基準電圧源78に接続する。そして、検出電極54及び検出電極55間に一定の電圧を印加する。この状態において、血液14が流入すると、検出電極54,55間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器73によってデジタル値に変換される。そして、演算部74に向かって出力される。演算部74はそのデジタル値に基づいて血液14が十分に流入したことを検出する。なお、ここで予め定められた時間が経過しても、検出部51で血液14の検出がされない場合や、血液14の量が適正でない場合は警報手段を働かせて警報するとともに処置の内容を表示部23に表示する。
次に、血液成分であるグルコースの測定が行なわれる。グルコース成分量の測定は、先ず、制御部76の指令により、切換回路71を切換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極54を(上記決定されたコネクタ37を介して)電流/電圧変換器72に接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極56を(上記決定されたコネクタ37を介して)基準電圧源78に接続する。
なお、例えば血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器72及び基準電圧源78をオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部76の指令により、検出電極54と56間に一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そうすると、検出電極54,56間に電流が流れる。この電流は電流/電圧変換器72によって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器73によってデジタル値に変換する。そして、演算部74に向かって出力される。演算部74はそのデジタル値を基にグルコース成分量に換算する。
次に、グルコース成分量の測定後、Hct値の測定が行なわれる。Hct値の測定は次のように行なわれる。先ず、制御部76からの指令により切換回路71を切換える。そして、Hct値の測定のための作用極となる検出電極57を(上記決定されたコネクタ37を介して)電流/電圧変換器72に接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極54を基準電圧源78に接続する。
次に、制御部76の指令により、電流/電圧変換器72及び基準電圧源78から検出電極57と検出電極54間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極57と54間に流れる電流は、電流/電圧変換器72によって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器73によってデジタル値に変換される。そして演算部74に向かって出力される。演算部74はそのデジタル値に基づいてHct値に換算する。
この測定で得られたHct値とグルコース成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正し、その補正された結果を表示部23に表示する。また、この補正された結果を送信部77からインスリン(治療薬の一例として用いた)を注射する注射装置に向けて送信する。この送信は電波を用いることもできるが、医療器具への妨害のない光通信で送信することが好ましい。
このように補正された測定データを送信部77から送信することにより、インスリンの投与量が注射装置に自動的に設定されるようにすれば、患者12が投与するインスリンの量を注射装置に設定する必要は無く、設定の煩わしさは無い。また、人為手段を介さずにインスリンの量を注射装置に設定することができるので、設定のミスを防止することができる。
また、送信部77とパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)とをUSBケーブル或いは無線で接続して、測定データをパソコンへ送信してパソコンで管理することもできる。なお、USBケーブルで接続すれば、パソコンから電源の供給を受けることもできる。
以上、グルコースの測定を例に説明したが、グルコースの測定の他に乳酸値やコレステロールの血液成分の測定にも有用である。
以上のように構成された血液検査装置21の動作について図14を参照しながら説明する。図14において、先ず、カートリッジ24の血液検査装置21への装着ステップ81を説明する。この装着ステップ81では、カートリッジ24を血液センサ装着部34へ装着する。この装着により、カートリッジ24に形成された位置決め凹部24jと24pがカートリッジ装着部34に形成された位置決め凸部34jと34pに嵌入して係止される。
次に、ステップ82で、センサ33の接続電極54a〜57aの特定と、センサ33が使用済み(旧センサ)か、未使用のセンサ33(新センサ)かの検出を行なう。接続電極54a〜57aの特定では、検出電極54〜57、接続電極54a〜57a、接触場所54b〜57b、56c、コネクタ37a~37fを介して電気回路部27で隣り合うコネクタ37a〜37f間の抵抗値から基準電極56dを特定する。そして、この基準電極56dから時計回りに接続電極56a、57a、54a,55aを決定する。従って、カートリッジ24が無造作に挿入されてもこのステップ82で接続電極54a〜57aを特定することができる。即ち、検出電極54〜57が決定される。
使用済みのセンサか未使用のセンサかの特定は、ステップ83に移り、図13の説明で述べたように、隣り合う端子間の電気抵抗が予め定められた値以下のものがあるか否かで特定する。使用済みセンサの場合は、ステップ90でカートリッジ24の装着方向を逆にするか或いはカートリッジ24の交換をして修了する。或いは、始めからやり直す。
未使用のカートリッジの場合は、ステップ84に移行する。ステップ84は、患者12の皮膚13へカートリッジ24のセンサ33に押し当て密着する。そうすると皮膚検知センサ29がオンとなる。皮膚検知センサ29がオンとなると、負圧手段28の吸引ポンプ用モータ28aが動作して吸引ポンプ28bで負圧を発生する。この吸引ポンプ用モータ28aに加わる負荷電流を制御部76で検出して、穿刺可能な負圧か否かを判断し表示部23に表示する。なお、負荷電流を検出する代わりに、この負圧が発生してから予め定められた時間をタイマ79で計測して、表示部23に穿刺が可能であるか否かを表示しても良い。
ここで、負圧を加える理由を説明する。穿刺時に皮膚13に負圧を加えることにより、例え弛緩した皮膚13であっても緊張状態になるので、例え小さな穿刺穴であっても血液14を効率良く採取することができる。従って、穿刺穴は小さくても良いので、患者に与える苦痛は少ないものになる。
次に、ステップ85に移り、穿刺ボタン25a(又は25b)を押下する。この穿刺ボタン25a(又は25b)の信号は電気回路部27で認識される。電気回路部27ではレーザ発射装置26を駆動する。そうするとレーザ光35は、皮膚検知センサ29の出力と穿刺ボタン25a(又は25b)の論理積条件で皮膚13に向けて発射される。なお、穿刺可能な負圧になったら自動的にレーザ発射装置26を駆動して穿刺しても良い。
次に、採血動作のステップ86に移る。このステップ86においてレーザ光35での穿刺により、患者12の皮膚13から血液14が流出する。この血液14をセンサ33内の貯留部49に貯留する。貯留部49に貯留された血液14は毛細管現象により、供給路50を介して検出部51に導かれる。検出部51に導かれた血液14は検知極としての検出電極55(図11参照)に達すると、測定に必要な量の血液14が得られたと判断する。そして、この時点で負圧手段28の動作を停止する。なお、負圧手段28の動作は、皮膚検知センサ29のオフにより停止しても良い。
また、予め定められた時間が経過しても、検出部51で血液14の検出がされない場合や、血液14の量が適正でない場合(検出電極54と検出電極55間の抵抗で検出)は、警報手段を働かせて警報するとともに処置の内容を表示部23に表示する。
次に、測定ステップ87に移りグルコースの測定を行う。即ち、血液中のグルコースとグルコース酸化還元酵素とを一定時間反応させた後、検出電極54を作用極、検出電極56を対極として、前記両検出電極54,56間に電圧を印加する。そして、グルコースの測定を行う。
次はステップ88に移りHct値の測定をする。検出電極57を作用極、検出電極54を対極として、両検出電極54,57間に電圧を印加する。このことにより、Hct値に依存する電流が検出できる。従って、この電流に基づきHct値を測定する。
そして最後に、ステップ89で血液成分の補正を行なう。即ち、ステップ88で検出したHct値を用いて、ステップ87で得られたグルコース量を補正する。以上のステップにより、血糖値測定が終了したら使用済みカートリッジ24は廃棄する。
(実施の形態2)
実施の形態2では、カートリッジ24をスクロールユニットと交換することにより、いわゆるマウスとしても使用できる血液検査装置100について述べる。なお、実施の形態1と同じものついては同符号を用いて説明を簡略化している。また、実施の形態2で説明を簡略化した事項については実施の形態1と同じとする。
図15は、パソコン101にUSBケーブル102で血液検査装置100を接続した斜視図である。この血液検査装置100は、直方体形状であっても良いし、円形をおびた形状であっても良い。この血液検査装置100は、カートリッジ24をスクロールユニット105と交換したものであり、この血液検査装置100をマウスとしてパソコン業務に使うことができる。また、血糖値を測定したい場合には、スクロールユニット105をカートリッジ24と交換すれば良い。いづれにしても、血糖値等のデータをパソコンで処理したり、医療機関へ転送したり、グラフ化したりしてデータ管理をすることができる。また、USBケーブルを介してパソコン101から電源の供給を受けることもできる。
図16は、血液検査装置100の正面図である。この血液検査装置100の筺体103の裏面103eに位置検出ボール104が回転自在に装着されている。この血液検査装置100をマウスとして使用する場合であり、カートリッジ24の装着するカートリッジ装着部34にはスクロールユニット105が装着される。このスクロールユニット105には、スクロールリング105aが装着されている。
図17は、血液検査装置100の電気回路部110(実施の形態1の電気回路部27に該当する)のブロック図である。105は、スクロールユニットであり、このスクロールユニット105を装着すると、このスクロールユニット105に設けられたスクロールユニット識別コード発生器105cから識別コードがコネクタ37を介して切換回路109(実施の形態1の切換回路71に該当する)に入力される。そして、制御部111(実施の形態1の制御部76に該当する)でスクロールユニット105が装着されたことを認識する。
装着されたスクロールユニット105には、スクロールリング105aが回転自在に装着されている。このスクロールリング105aの回転情報は回転情報検出部105bに入力される。回転情報検出部105bの出力はコネクタ37を介して切換回路109に入力される。この切換回路109から制御部111を介して通信部112に入力されている。この通信部112からは、USBケーブル102を介してパソコン101に送られる。また、穿刺ボタン25aから出力される信号は左クリック信号として、穿刺ボタン25bから出力される信号は右クリック信号として、制御部111から出力されパソコン101に伝送される。
104は、回転自在に設けられた位置検出ボールであり、この位置検出ボール104の回転の情報は位置抽出部113で抽出される。そして、この位置抽出部113で抽出された位置情報は通信部112に送られ、この通信部112からUSBケーブル102を介してパソコン101に送られる。このようにして、カートリッジ装着部34にスクロールユニット105を装着することにより、この血液検査装置100をマウスとして用いて、パソコン業務を行うことができる。なお、ここでは位置検出ボール104を用いたが、これは光学的な検出であっても良い。