しかしながら、上記特許文献1に記載の噴流発生装置においては、気体を吐出するためのノズルが、気体の吐出方向に略垂直な筐体側面から突出するように設けられているため、当該噴流発生装置をヒートシンク等の発熱体と組み合わせた場合に、ノズルの周囲とヒートシンクとの間の空間が狭くなる。これにより、ノズル自体が、外部の気体の巻き込みの障害となり、外部から効率よく気体を巻き込んで合成噴流を発生させることができない。
また、上記噴流発生装置においては、上下のノズルのうち一方のノズルから気体の吐出を行うと同時に他方のノズルで外気の吸気を行うこととなるが、上記空間が狭いため、一方のノズルから吐出された気体を他方のノズルが引き戻して吸入してしまい、他方のノズルが効率よく外気を吸入できない。それとともに、合成噴流を効率よく発生させることも困難となる。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、気体の吐出の際に外気を効率よく巻き込むとともに、外気を効率よく吸気することで効率よく合成噴流を発生させることが可能なノズル、当該ノズルを用いた噴流発生装置、当該噴流発生装置を用いた冷却装置、当該冷却装置が搭載された電子機器を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、気体を吐出する際の騒音を低減することが可能なノズル、噴流発生装置、冷却装置及び電子機器を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明の主たる観点に係るノズルは、開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、当該筐体内に振動可能に設けられた振動体と、当該振動体を挟んで前記筐体内にそれぞれ設けられた第1のチャンバ及び第2のチャンバとを有する噴流発生装置に用いられ、前記振動体の振動により前記気体を脈流として吐出可能なノズルであって、上部表面と下部表面とを有し、前記筐体の前記開口を覆うように設けられ、当該上部表面と下部表面との間の距離が前記気体の吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されたノズル本体と、前記ノズル本体の前記上部表面に第1の吐出口を有し、前記第1のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第1の流路と、前記ノズル本体の前記下部表面に第2の吐出口を有し、前記第2のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第2の流路とを具備する。
上記噴流発生装置においては、上記振動体が周期的に往復運動をすることで、上記第1のチャンバから上記第1の流路を介して気体が吐出されるとともに上記第2の流路を介して外部の気体が第2のチャンバへ吸気される動作と、上記第2のチャンバから上記第2の流路を介して気体が吐出されるとともに上記第1の流路を介して外部の気体が第1のチャンバへ吸入される動作とが間欠的に繰り返されることとなる。吐出された気体は、例えばヒートシンクやIC等の高熱部に当てられる。
本発明によれば、上記第1の流路及び第2の流路が、上部表面と下部表面との距離が上記気体の吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されたノズル本体の上部表面及び下部表面に第1の吐出口及び第2の吐出口をそれぞれ有するように設けられているため、上部表面と下部表面との距離が一定のノズル本体(の垂直面上)に各流路が設けられている場合に比べて、上記吐出された気体が当てられる高熱部と各吐出口との間に十分なスペースを確保することができる。これにより、吐出された気体の流れにより外部から高熱部側へ引き込まれる気体の体積を増加させ、効率よく合成噴流を発生させることができる。この結果、噴流発生装置からの吐出体積を増やすことなく、高熱部へ当たる気体の流量を増加させることができるため、各流路から吐出される気体の最大流速でほぼ決まる気流音による騒音の発生を抑えながら、高熱部の熱抵抗を低減させ、高熱部から発せられる熱を効果的に放熱することができる。
また、上記第1の流路と第2の流路とを上記上部表面及び下部表面に設けることで、第1の流路と第2の流路との間が、当該上部表面及び下部表面の、各流路よりも吐出方向の部分で仕切られることとなるため、一方の流路から吐出された気体を他方の流路が引き戻すのを極力防いで、外部の気体を効率よく吸入することができる。
振動体の駆動方式としては、例えば電磁作用、圧電作用または静電作用を利用することができる。また気体は、例えば空気が挙げられるが、これに限らず、窒素、ヘリウムガス、あるいはアルゴンガス、その他の気体であってもよい。
上記ノズルは、前記ノズル本体の前記上部表面に形成された第1の段差部と、前記ノズル本体の前記下部表面に形成された第2の段差部とを更に具備し、前記第1の流路は前記第1の吐出口を前記第1の段差部に有するように設けられ、前記第2の流路は前記第2の吐出口を前記第2の段差部に有するように設けられていてもよい。
これにより、上記第1の段差部及び第2の段差部にそれぞれ第1の流路及び第2の流路が設けられているため、噴流発生装置と高熱部との間に当該段差分のスペースが生まれ、第1及び第2の吐出口から吐出される気体の流れにより外部から高熱部側へ引き込まれる気体の体積を増加させることができる。
また、第1の段差部と第2の段差部の、第1の吐出口と第2の吐出口からそれぞれ吐出方向に進んだ部分によって各吐出口が仕切られることとなるため、一方の流路から吐出された気体の、他方の流路による引き戻しを極力防ぐことができる。
上記ノズルは、前記ノズル本体の前記上部表面に形成された第1の斜面と、前記ノズル本体の前記下部表面に形成された第2の斜面とを更に具備し、前記第1の流路は前記第1の吐出口を前記第1の斜面に有するように設けられ、前記第2の流路は前記第2の吐出口を前記第2の斜面に有するように設けられていてもよい。
これにより、上記第1の斜面及び第2の斜面にそれぞれ第1の流路及び第2の流路が設けられているため、噴流発生装置と高熱部との間に当該斜面分のスペースが生まれ、第1の及び第2の吐出口から吐出される気体の流れにより外部から高熱部側へ引き込まれる気体の体積を増加させることができる。
また、第1の斜面と第2の斜面の、各吐出口から吐出方向に進んだ部分によって各吐出口が仕切られることとなるため、一方の流路から吐出された気体の、他方の流路による引き戻しを極力防ぐことができる。
更に、上記第1の吐出口及び第2の吐出口自体が傾斜を有しているため、各吐出口から吐出された気体の流れの幅が広がり、高熱部に対する気体の接触面積が大きくなり、高熱部を効率よく放熱させることができる。特に面積の大きいヒートシンクを放熱する場合には有効となる。
上記ノズルにおいて、前記第1の段差部は、前記上部表面に設けられた第3の段差部と、前記上部表面の前記第3の段差部よりも低い位置に設けられた第4の段差部とを有し、前記第2の段差部は、前記下部表面に設けられた第5の段差部と、前記下部表面の前記第5の段差部よりも高い位置に設けられた第6の段差部とを有し、前記第1の流路は、前記第3の段差部に第3の吐出口を有する第3の流路と、前記第4の段差部に第4の吐出口を有する第4の流路とを有し、前記第2の流路は、前記第5の段差部に第5の吐出口を有する第5の流路と、前記第6の段差部に第6の吐出口を有する第6の流路とを有していても構わない。
この構成においては、第1のチャンバにそれぞれ連通する第3の流路及び第4の流路と、第2のチャンバにそれぞれ連通する第5の流路及び第6の流路という上下各2つの流路を設けている。各吐出口から吐出される気体の流速は流路の径が小さいほど大きくなり、吐出される気体の流れにより外部から高熱部側へ引き込まれる気体の体積も大きくなる。したがって、上記振動体の振幅や各チャンバの容量等の他の条件が一定ならば、上下各2つの流路を設けることにより、流路が上下各1つの場合に比べて、流路の径を大きくすることなく、すなわち吐出される気体の流速を維持しながら、高熱部側へ引き込まれる気体の体積を大きくすることができる。
また、この構成においては、上部表面と下部表面との距離を、それぞれ吐出方向に向かう2つの段差部を設けることによって徐々に小さくして、かつ、当該上下各2つの段差部にそれぞれ流路を設けることとしたため、第3の段差部に設けられた第3の吐出口から高熱部までの距離及び第5の段差部に設けられた第5の吐出口から高熱部までの距離が、それぞれ第4の吐出口及び第6の吐出口から高熱部等までの距離よりも長くなり、そこにスペースが生まれる。これにより、各流路から吐出された気体の流れにより外部から高熱部側へ引き込まれる気体の体積を大きくすることができる。
更に、第3の吐出口と第4の吐出口、第5の吐出口と第6の吐出口とで、その上記吐出方向における位置がそれぞれ異なるため、上部または下部の各2つの流路が一方の流路の吸気動作に依存することなく、すなわち第3の吐出口と第4の吐出口がそれぞれ独自に、また第5の吐出口と第6の吐出口がそれぞれ独自に効率よく外気を吸入することができ、それにより効率よく合成噴流を発生させることができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の流路は、前記第1の斜面に第3の吐出口を有する第3の流路と、前記第1の斜面の前記第3の吐出口よりも低い位置に第4の吐出口を有する第4の流路とを有し、前記第2の流路は、前記第2の斜面に第5の吐出口を有する第5の流路と、前記第2の斜面の前記第5の吐出口よりも高い位置に第6の吐出口を有する第6の流路とを有していても構わない。
これにより、上記第1の斜面及び第2の斜面にそれぞれ2つずつ流路を設けることで、吐出される気体の流速を維持しながらヒートシンク等に引き込まれる気体の体積を大きくすることができるとともに、第3の吐出口及び第5の吐出口と高熱部との間に十分なスペースを確保することで、外部からヒートシンク等へ引き込まれる気体の体積を大きくすることができる。また、上部または下部の各2つの流路が、一方の流路の吸気動作に依存することなく独自に効率よく外気を吸入することができる。
更に、上下の各斜面にそれぞれ設けられた吐出口それぞれが傾斜しているため、吐出された気体の流れが拡散し、高熱部のより広い面積に気体を当てて効率よく放熱を行うことができる。
上記ノズルは、前記ノズル本体の前記吐出方向の端部に突出するように延在された仕切り板を更に具備していてもよい。
これにより、第1の吐出口または第2の吐出口から吐出された気体の流れが上記仕切り板によって仕切られるため、一方の吐出口から吐出された気体を他方の吐出口が引き戻す等、一方の吐出口から吐出された気体が他方の吐出口の動作に与える影響を極力排除して、吐出動作と吸気動作をそれぞれ独立して効率よく行うことができる。
上記ノズルにおいて、前記仕切り板は、前記上部表面及び下部表面から一体的に形成され、その垂直方向における厚さが前記吐出方向に向かって徐々に小さくなっていてもよい。
これにより、仕切り板と上部表面または下部表面との間の凹凸を極力排除して、吐出された気体をスムーズに案内することができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の段差部は、前記垂直方向に形成された第1の垂直面と、当該第1の垂直面から水平方向に連続して形成された第1の水平面と、当該第1の水平面から前記垂直方向に前記第1の垂直面よりも低い位置に形成された第2の垂直面とを有し、前記第2の段差部は、前記垂直方向に形成された第3の垂直面と、当該第3の垂直面から前記水平方向に連続して形成された第2の水平面と、当該第2の水平面から前記垂直方向に前記第3の垂直面よりも高い位置に形成された第4の垂直面とを有し、前記第1の流路は、前記第1の吐出口が前記第1の垂直面、前記第1の水平面及び前記第2の垂直面に亘って形成されるように設けられ、前記第2の流路は、前記第2の吐出口が前記第3の垂直面、前記第2の水平面及び前記第4の垂直面に亘って形成されるように設けられていても構わない。
これにより、第1の吐出口及び第2の吐出口から吐出された気体の軌道が拡散する方向に変化するため、面積の大きい高熱部の熱抵抗を効率よく低減することができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の段差部は、前記上部表面に設けられた第3の段差部と、前記上部表面の前記第3の段差部よりも低い位置に設けられた第4の段差部と、前記上部表面の前記第4の段差部よりも低い位置に設けられた第5の段差部とを有し、前記第2の段差部は、前記下部表面に設けられた第6の段差部と、前記下部表面の前記第6の段差部よりも高い位置に設けられた第7の段差部と、前記下部表面の前記第7の段差部よりも高い位置に設けられた第8の段差部とを有し、前記第1の流路は、前記第3の段差部に第3の吐出口を有する第3の流路と、前記第4の段差部に第4の吐出口を有する第4の流路と、第5の段差部に第5の吐出口を有する第5の流路とを有し、前記第2の流路は、前記第6の段差部に第6の吐出口を有する第6の流路と、前記第7の段差部に第7の吐出口を有する第6の流路と、前記第8の段差部に第8の吐出口を有する第8の流路とを有していてもよい。
これにより、ノズル本体の上部表面と下部表面とに流路を各3つ設けることで、各2つの場合に比べて、上記振動体の振幅や各チャンバの容量等(各チャンバからの吐出流量)の他の条件が一定ならば、高熱部側へ引き込まれる気体の流量を更に大きくすることができる。また、流路が上下各2つの場合に比べて、各吐出口から高熱部までの間に更にスペースが生まれるため、これによっても高熱部側へ引き込まれる気体の流量を更に大きくすることができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の段差部及び前記第2の段差部はそれぞれR形状を有していてもよい。
これにより、各段差部がエッジ状に形成されている場合に比べて各吐出部から高熱部までの間に更にスペースが生まれるため、高熱部側へ引き込まれる気体の流量を更に大きくすることができる。また、各段差部がエッジ状に形成されている場合に比べて、各吐出部から気体を吐出する際及び気体を吸入する際の空気抵抗が軽減されることで、騒音を更に抑えることもできる。
上記ノズルにおいて、前記第1の流路及び前記第2の流路は、それぞれ前記吐出方向に向かって各流路径が徐々に小さくなるように形成されても構わない。
これにより、各流路を吐出方向に向かってテーパ状に形成することで、上記振動体の振動に伴う各流路内の圧力の変動を、テーパ状に形成しない場合に比べて小さくすることができるため、騒音を軽減することが可能となる。また、各吐出口から吐出される気体の吐出流量を小さくすることなく最大流速を小さくすることができるため、単位流速あたりの吐出流量を大きくすることができる。これによっても騒音を軽減することができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の流路及び前記第2の流路は、前記吐出方向に形成された複数の溝をそれぞれ有していてもよい。
この場合、各流路の径方向の断面は多角形状になる。これにより、各流路内の圧力の変動を小さくすることで、騒音を軽減することができる。また、単位流速あたりの吐出流量を大きくすることによっても騒音を軽減することができる。
上記ノズルにおいて、前記第1の吐出口及び前記第2の吐出口はそれぞれR形状を有していても構わない。
これにより、各吐出口近辺の空気抵抗を小さくすることで、各流路内の圧力の変動を小さくし、騒音を軽減することができる。また、各吐出口にR形状を付けることで、実質的に各吐出口の径を大きくして単位流速あたりの吐出流量を大きくし、騒音を軽減することができる。
本発明の他の観点に係る噴流発生装置は、気体を脈流として吐出可能な噴流発生装置であって、開口を有し、内部に前記気体が含まれた筐体と、前記筐体内に振動可能に設けられた振動体と、当該振動体を挟んで前記筐体内にそれぞれ設けられた第1のチャンバ及び第2のチャンバと、上部表面と下部表面とを有し、前記開口を覆うように設けられ、当該上部表面と下部表面との間の距離が前記気体の吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されたノズル本体と、前記ノズル本体の前記上部表面に第1の吐出口を有し、前記第1のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第1の流路と、前記ノズル本体の前記下部表面に第2の吐出口を有し、前記第2のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第2の流路とを有するノズルと、前記第1の流路及び前記第2の流路を介して前記筐体内の気体を脈流として吐出させるために前記振動体を駆動させる駆動部とを具備する。
上記噴流発生装置において、前記筐体は、前記気体を前記第1のチャンバ内へ吸入するための第1の吸気口と、前記気体を前記第2のチャンバ内へ吸入するための第2の吸気口とを有し、当該噴流発生装置は、前記第1の吸気口を開閉可能に設けられ、前記吸入された気体の逆流を防ぐ第1の逆止弁と、前記第2の吸気口を開閉可能に設けられ、前記吸入された気体の逆流を防ぐ第2の逆止弁とを更に具備していても構わない。
これにより、気体の吸入量を増加させて高熱部側への気体の吐出量を増加させることができ、また、各吐出口から吐出された気体を引き戻してしまうことも防ぐことができる。
本発明のまた別の観点に係る冷却装置は、気体を脈流として吐出可能な噴流発生装置を有する冷却装置であって、開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、前記筐体内に振動可能に設けられた振動体と、当該振動体を挟んで前記筐体内にそれぞれ設けられた第1のチャンバ及び第2のチャンバと、上部表面と下部表面とを有し、前記開口を覆うように設けられ、当該上部表面と下部表面との間の距離が前記気体の吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されたノズル本体と、前記ノズル本体の前記上部表面に第1の吐出口を有し、前記第1のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第1の流路と、前記ノズル本体の前記下部表面に第2の吐出口を有し、前記第2のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第2の流路とを有するノズルと、前記第1の流路及び前記第2の流路を介して前記筐体内の気体を脈流として吐出させるために前記振動体を駆動させる駆動部とを有する噴流発生装置と、外部から前記気体を取り入れ可能な通気部を、前記第1の吐出口または第2の吐出口から吐出された気体を受ける側に有するヒートシンクとを具備する。
この構成により、上記第1の吐出口または第2の吐出口周辺に十分なスペースを確保することができるため、吐出された気体の流れにより十分な外気を巻き込んで効率よく合成噴流を発生させることができ、それによりヒートシンクへ上記通基部から引き込まれる気体の体積を増加させ、ヒートシンク出口から排出される気体の流量を増加させることで、ヒートシンクを効率よく放熱させることができる。
上記冷却装置において、前記ヒートシンクは、前記吐出方向に直交する第1の方向に複数の前記通気部を形成するように並設された複数のフィンを有し、前記第1の流路及び前記第2の流路は、一の前記第1の吐出口及び一の前記第2の吐出口からそれぞれ吐出される気体が複数の前記通気部を通るように、それぞれ前記第1の方向に複数設けられていてもよい。
これにより、一の通気部に各一の吐出口を対応させた場合に比べて、同等の熱抵抗を実現しながら、各流路の流路抵抗を小さくして圧力損失を小さくすることができるため、上記駆動部の消費電力を低減することができる。
本発明の更に別の観点に係る電子機器は、気体を脈流として吐出可能な噴流発生装置を有する電子機器であって、発熱体と、開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、前記筐体内に振動可能に設けられた振動体と、当該振動体を挟んで前記筐体内にそれぞれ設けられた第1のチャンバ及び第2のチャンバと、上部表面と下部表面とを有し、前記開口を覆うように設けられ、当該上部表面と下部表面との間の距離が前記気体の吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されたノズル本体と、前記ノズル本体の前記上部表面に第1の吐出口を有し、前記第1のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第1の流路と、前記ノズル本体の前記下部表面に第2の吐出口を有し、前記第2のチャンバと前記ノズル本体外とを連通する第2の流路とを有するノズルと、前記第1の流路及び前記第2の流路を介して前記筐体内の気体を脈流として吐出させるために前記振動体を駆動させる駆動部とを有する噴流発生装置と、外部から前記気体を取り入れ可能な通気部を、前記第1の吐出口または第2の吐出口から吐出された気体を受ける側に有するヒートシンクと、前記噴流発生装置及び前記ヒートシンクを保持可能な第2の筐体とを具備する。
ここで発熱体とは例えばICであり、電子機器としては例えばコンピュータ(パーソナルコンピュータの場合、ラップトップ型であっても、デスクトップ型であってもよい。)、PDA(Personal Digital Assistance)、電子辞書、カメラ、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、携帯電話、ゲーム機器、カーナビゲーション機器、ロボット機器、その他の電化製品等が挙げられる。
以上のように、本発明によれば、気体の吐出の際に外気を効率よく巻き込むとともに、外気を効率よく吸気することで効率よく合成噴流を発生させることができる。また、気体の吐出の際の騒音を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るノズルを有する噴流発生装置の外観を示した斜視図であり、図2は、図1に示す噴流発生装置の断面図である。なお当該噴流発生装置は、例えばヒートシンク等の放熱部材と組み合わされることで、冷却装置として機能する。
噴流発生装置10は、筐体1と、筐体1に装着されたノズル2と、筐体1内に配置された振動アクチュエータ15とを備えている。まず筐体1及び振動アクチュエータ15について説明する。
図2に示すように、筐体1には、振動板33、駆動装置35及び弾性支持部材36を有する振動アクチュエータ15が備えられている。弾性支持部材36は、筐体1の内壁に装着され、振動板33の周囲を弾性的に支持する。振動板33及び弾性支持部材36により筐体1内が二分され、チャンバ3及び4が形成される。上部に形成されたチャンバ3は、後述するノズル2の流路21及び流路22を介して筐体1の外部と連通し、下部に形成されたチャンバ4は、後述する流路23及び流路24を介して筐体1の外部と連通している。
駆動装置35は、例えば上部のチャンバ3内に配置されている。例えば円筒状のヨーク16の内側に、振動板33の振動方向Rに着磁されたマグネット17が内蔵され、マグネット17には、例えば円板状のヨーク34が取り付けられている。このマグネット17、ヨーク16及び34により磁気回路が構成される。マグネット17とヨーク16との間の空間には、コイル18が巻回されたコイルボビン19が出入りするようになっている。コイルボビン19は振動板33の表面に固定されている。このように構成された駆動装置35に駆動信号発生器5から電気信号が供給されることにより、振動板33を矢印Rの方向に振動させることができる。
振動板33は、例えば樹脂、紙、または金属でなる。特に、振動板33が紙でなることにより、非常に軽量化される。紙は、樹脂ほど任意な形状に作製しにくいが、軽量化では有利である。振動板33が樹脂の場合、成形により任意の形状に作製しやすい。一方、振動板33が金属の場合、例えば銅、アルミニウム、あるいはステンレス等でなる。あるいはマグネシウムでもよい。マグネシウムは軽量で射出成形が可能であるので有利となる。振動板33は平板状でなくてもよく、例えば立体的な振動体であってもよい。振動板33の平面形状(振動方向Rにほぼ垂直な面の形状)は、円、楕円、矩形、あるいはこれらの組み合わせ等の形状が考えられる。
筐体1は、例えば、樹脂、ゴム、または金属でなる。樹脂やゴムは成形で作製しやすく量産向きである。また、筐体1が樹脂やゴムの場合、振動アクチュエータ15の駆動により発生する音、あるいは振動板33が振動することにより発生する空気の気流音等を抑制することができる。つまり、筐体1が樹脂やゴムの場合、それらの音の減衰率も高くなり、騒音を抑制することができる。更に、軽量化に対応でき、低コストとなる。樹脂等の射出成形で筐体1が作製される場合は、ノズル2と一体で成形することが可能である。しかし、図1及び図2に示すように、筐体1とノズル2とは別体の方が、噴流発生装置10の作製が容易になる。筐体1が熱伝導性の高い材料、例えば金属でなる場合、駆動装置35から発せられる熱を筐体1に逃がして筐体1の外部に放熱することができる。金属としては、アルミニウムや銅が挙げられる。熱伝導性を考慮する場合、金属に限らず、カーボンであってもよい。金属としては、射出成形が可能なマグネシウム等も用いることができる。駆動装置35の磁気回路からの漏れ磁界が機器の他のデバイスに影響する場合は、漏れ磁界を無くす工夫が必要である。その一つが、筐体1を磁性材料、例えば鉄等にすることである。これにより、漏れ磁界はかなりのレベルで低減される。さらに、高温での使用や、特殊用途ではセラミックスの筐体であってもよい。
弾性支持部材36は、例えばゴムや樹脂等でなる。弾性支持部材36の形状は、振動板33の形状(外形)による。図2のように弾性支持部材36の断面形状は、1つの山部及び1つの谷部を有するものが用いられる。以下、これを2ロールタイプの弾性支持部材という。1つの谷部のみ、または1つの山部のみからなる弾性支持部材の場合、図2中の上下方向の高さが高くなり、厚さが増えてしまう。山部及び谷部がそれぞれ複数ある場合、振動板33が振動するときに振動方向R以外の複雑な動きが発生するおそれがあり、効率が落ちる可能性がある。また、それによって騒音が大きくなるおそれもある。したがって、2ロールタイプの弾性支持部材が用いられることの望ましい。しかしながら、必ずしも2ロールタイプが用いられなければならないわけではない。
次に、ノズル2について説明する。ノズル2のノズル本体20は、筐体1の前面の開口1aに装着されている。
ノズル本体20は、上部表面に斜面20aを有し、下部表面に斜面20bを有している。斜面20aと斜面20bとは、ノズル本体20の上部表面と下部表面との距離(両図のZ軸方向における距離)が、両図のY軸方向に向かって徐々に小さくなるように形成されている。斜面20aの上部には吐出口21aが、下部には吐出口22aが設けられ、ノズル本体20内部には、当該吐出口21a及び22aと上記チャンバ3とをそれぞれ連通する空気の流路21及び流路22が設けられている。
また同様に斜面20bの下部には吐出口23aが、上部には吐出口24aが設けられ、ノズル本体20内部には、当該吐出口23a及び24aと上記チャンバ4とをそれぞれ連通する空気の流路23及び流路24が設けられている。
後述するが、流路21、流路22、流路23及び流路24は図2の実線の矢印で示すように、各吐出口を介してチャンバ3及び4から外部へ空気を吐出し、また破線の矢印で示すように、各吐出口を介してチャンバ3及び4へ外気を吸入することが可能となっている。
上記流路21の長さと流路23の長さは略同一である。また上記流路22と流路24の長さは略同一であり、それぞれ斜面20aの下方及び斜面20bの上方から水平方向(Y軸方向)に設けられているため、それぞれ流路21及び流路23の長さよりも長くなっている。各流路の径は略同一であるが、流路21と流路22とで、また流路23と流路24とで異なるように形成されていても構わない。
またノズル本体20の上記空気の吐出方向(Y軸方向)の端部には、上記各流路から吐出されまたは吸入された空気の流れを仕切るための仕切り板25が設けられている。
次に、上記噴流発生装置10と組み合わされるヒートシンクについて説明する。図3は、ヒートシンクの斜視図であり、図4は、ヒートシンクを構成するフィン1枚の斜視図である。
両図に示すように、ヒートシンク40は、噴流発生装置10から吐出された空気を受ける複数のフィン(放熱板)41が、同図X軸方向に連続的に並設されて構成される。フィン41は上下方向(同図Y軸方向)の端部42a及び42bが同じ方向(図3中のX軸方向)にそれぞれ所定の長さCだけ折り曲げられた、厚さ約0.3mmの平板から構成されている。所定の長さはフィン41の大きさにより決まるもので、例えば折り曲げられていない部分の長さDが約12mmであるときは約2.3mmに形成されている。
またフィン41は、噴流発生装置10から吐出された空気を受ける側に通気部としての切欠き43a及び43bを有している。切欠き43a、43bは、上記折り曲げられた両端部42a及び42bが、上記噴流発生装置10から吐出された空気を受ける側の端部から同図Z軸方向へ所定の長さE分だけ矩形状に切り取られて形成されている。所定の長さは例えば4mmである。
ここで切欠き43a及び43bを上下のいずれか一方にのみ形成することもできるが、外部からの気体の取入れが両方に有る場合に比べ少なくなるため2つが好ましい。また、通気部としては当該切欠き43a及び43bに限られるものではなく、貫通孔のようなものでもよい。
フィン41に用いる熱伝導部材は、銅系の合金に限られず、アルミニウム系の合金等、熱伝導率の大きい材料であればよい。
図5は、噴流発生装置10とヒートシンク40とを組み合わせた様子を示した斜視図である。同図に示すように、噴流発生装置10とヒートシンク40とは、噴流発生装置10の各仕切り板25が、ヒートシンクの各フィン41の間に係合するように組み合わされる。またヒートシンク40は、ノズル2の各流路(各吐出口)が、ヒートシンク40の各切欠き43a及び43bに対応するように形成されている。ヒートシンク40は、当該各切欠き43a及び43bを通気部として、ノズル2の各流路から吐出された空気を内部に取り込むことが可能となっている。そして、ヒートシンク40は、図示しないIC等の発熱体からの熱を受けるように設置される。これにより噴流発生装置10とヒートシンク40とは当該発熱体の冷却装置として機能する。
次に、以上のように構成された噴流発生装置10の動作について説明する。
駆動装置35に例えばサイン波の交流電圧が印加されると、振動板33は正弦波振動を行う。これにより、チャンバ3及び4内の容積が増減する。チャンバ3及び4の容積変化に伴い、それらチャンバ3及び4の圧力が交互に増減し、これに伴い、それぞれ上部の流路21及び流路22と、下部の流路23及び流路24とを介して交互に脈流として吐出される。
そして、流路21及び流路22から、または流路23及び流路24から空気が吐出されるときに、筐体1やノズル2の周囲の気圧が低下することにより、当該周囲の空気が各流路から吐出される空気に巻き込まれ、合成噴流が発生する。この合成噴流が、発熱体や高熱部へ吹き付けられることにより、当該発熱体や高熱部を冷却することができる。発熱体や高熱部としては、上記ヒートシンク40の他、例えばIC、コイル、抵抗等の電子部品が挙げられるが、これらに限られず発熱するものなら何でもよい。
なお、流路21及び流路22、または流路23及び流路24から空気が吐出されるときに、各流路から独立して、特に気流音による騒音が発生する。しかしながら、各流路で発生する各音波は逆位相の音波であるため互いに弱められる。これにより、ある程度騒音が抑制され、静音化を図ることができる。
噴流発生装置10とヒートシンク40とを組み合わせた場合、上述したように、ヒートシンク40は、上記43切欠きa及び43bを介して、上記合成噴流を取り込むことが可能である。この結果、上記各流路から吐出された気体量よりも多くの気体がヒートシンク40の出口から排出されることとなる。これにより、噴流発生装置10の噴出体積を抑制して騒音の発生を極力抑えながら、発熱体から発生される熱を効果的に放熱することができる。
ところで、上記噴流発生装置10とヒートシンク40とを組み合わせた場合において、噴流発生装置10のノズル2に各吐出口を吐出方向とは垂直な面上に設けた場合、ノズルとヒートシンク40の各切欠き43a及び43bとの間に十分なスペースが無いと、上記吐出された空気による外気の巻き込みが困難となり、合成噴流を効果的に発生することができないことがある。しかしながら、本実施形態における噴流発生装置10は、上記第1の斜面及び第2の斜面に各吐出口が設けられるように各流路を形成することでこの問題を解決している。
図6は、ノズル2の各流路の各吐出口を斜面に設けた場合と、吐出方向に対して垂直な面に設けた場合とで吐出された空気の流れを比較した図である。同図(a)は、各吐出口を垂直面に設けたノズルを有する噴流発生装置とヒートシンク40とを組み合わせて、当該噴流発生装置を動作させた場合の、ノズルの中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。また同図(b)は、本実施形態における噴流発生装置10を動作させた場合の、ノズル2の中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。なお、両図においては、上部の2つの流路を介して上のチャンバから空気を吐出し、下部の2つの流路を介して下のチャンバへ空気を吸入しているものとする。
同図(a)に示すように、垂直面に各吐出口を設けた場合には、同図Aの丸で囲んだ部分において、上の2つの吐出口とヒートシンク40との距離が近く、十分なスペースが無いために、上の2つの流路から空気が吐出されても、当該吐出された空気による外気の巻き込みが少なくなっており、また巻き込まれた空気が各切欠き43aから取り込まれるスペースも十分でないため、合成噴流を効率よく発生させヒートシンク40へ取り込むことが困難な状態となっている。すなわち、ノズル自体が、外気の巻き込みよる合成噴流の発生及びその取り込みの障害となっている。
一方、同図(b)に示すように、本実施形態におけるノズル2を用いた場合には、上部の流路21及び流路22が斜面20aに形成されているため、各流路、特に流路21(吐出口21a)とヒートシンク40の各切欠き43aとの間に十分なスペースが生まれ、図6(a)の場合に比べて外気を巻き込みやすくなっている。これにより、各吐出口から吐出した空気の流れで合成噴流をより効果的に発生させることができ、ヒートシンク40は、当該合成噴流によってより多くの空気を取り込むことが可能となっている。具体的には、本発明者によるシミュレーションの結果、本実施形態におけるノズル2によれば、同図(a)のような垂直面に吐出口を有するノズルに比べて、ヒートシンク40へ取り込まれる空気の流量を最大15%程度増加させることができることが分かった。なお、ノズル2の下部の流路23及び流路24から空気を吐出する場合においても、もちろん同様にヒートシンク40の切欠き43bを介してより多くの空気を取り込むことができる。
この結果、ヒートシンク40の出口から排出される空気の流量を増やすことが可能となるため、各流路から吐出する空気の最大流速でほぼ決まる気流音を増加させることなく、熱抵抗を低減させることができる。
また、各流路からの吸気動作に関して、図6(a)のように各流路を垂直面に設けたノズルにおいては、各流路とヒートシンク40との間に十分なスペースが無いため、外部から効率よく空気を吸入することができない場合がある。しかし、本実施形態におけるノズル2においては、各流路を第1の斜面及び第2の斜面に有する各流路を形成することで、この問題も解決している。
図7は、ノズル2の各流路の各吐出口を斜面に設けた場合と、吐出方向に対して垂直な面に設けた場合とで、ノズル2から吸入される空気の流れを比較した図である。同図(a)は、各吐出口を垂直面に設けたノズルを有する噴流発生装置とヒートシンク40とを組み合わせて、当該噴流発生装置を動作させた場合の、ノズルの中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。また同図(b)は、本実施形態における噴流発生装置10を動作させた場合の、ノズル2の中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。なお、両図においては、下部の2つの流路を介して下のチャンバから空気を吐出し、上部の2つの流路を介して上のチャンバへ空気を吸入しているものとする。
同図(a)に示すように、垂直面に吐出口を設けた場合には、同図Aの丸で囲んだ部分において、上の2つの吐出口とヒートシンク40との距離が近く、各吐出口周辺のスペースが十分でないために、当該上の2つの吐出口は、下の2つの吐出口から空気が吐出される際に、上部の外気をあまり吸入できずに、むしろ下の2つの吐出口から吐出された空気を引き戻してしまっている。また、上の2つの吐出口のうち、下部の吐出口が引き戻した空気から分岐した空気を上部の吐出口も引き戻してしまっており、各吐出口が独立して吸気動作をできていない。これでは、本来ヒートシンク40に取り込まれるべき空気が取り込まれないため、ヒートシンク40から排出される空気の流量も少なくなってしまう。
一方、同図(b)に示すように、斜面20aに各吐出口を設けた場合、同図Bの丸で囲んだ部分において、各流路、特に流路21とヒートシンク40の切欠き43aとの間に十分なスペースが生まれるため、上の2つの吐出口21a及び22aによる、下の2つの吐出口23a及び24aから吐出された空気の引き戻しは少なく、吐出口21a及び吐出口22a周辺の外部の空気を効率よく吸入している。また、吐出口21aと吐出口22aの位置が吐出方向においてずれて配置されているため、各吐出口が独立してそれぞれ吸気動作を行うことができる。この結果、効率よく合成噴流を発生させてヒートシンク40へより多くの空気を取り込むことができる。もちろん、上部の吐出口21a及び吐出口22aから空気が吐出され下部の吐出口23a及び吐出口24aから吸気を行う場合でも、吐出口23a及び吐出口24aは同様に効率よく外気を吸気することで、結果として多くの空気をヒートシンク40へ取り込むことができる。
また、本実施形態においては、斜面20a及び斜面20bに各吐出口を設けることで、各吐出口自体が傾斜を有している。これにより、各吐出口から吐出された空気の流れの方向が変化し、流れの幅も広がることとなる。これは特に積載面積の大きいヒートシンクと組み合わせた場合に有効となる。図8は、当該積載面積の大きいヒートシンク50を示した斜視図であり、図9は、図8のヒートシンク50を構成する各フィン51のうち一枚を示した斜視図である。
これらの図に示すように、ヒートシンク50は、上記図3で示したヒートシンク40と同様に、フィン51の両端部52a及び52bを同一方向に折り曲げて複数並設して構成される。また各フィン51には、ヒートパイプ(図示せず)を挿通するための円形の貫通孔54が設けられている。なお、ヒートパイプは、パイプ内に冷媒例えば純水などを入れ、図示しないIC等の発熱源により加熱された蒸気流をヒートシンク50のフィン51で冷却し液化させてパイプ内の毛細管現象で発熱源に還流させるものである。ヒートパイプを用いることにより、フィン51を発熱源から離すことができる他、ノートパソコンのように電子機器全体の厚さを薄くすることができる。ヒートパイプは例えば熱伝導性に優れた銅系の合金やアルミニウム系の合金等により形成されている。
図10は、積載面積の大きいヒートシンク50と、4つの噴流発生装置10とを組み合わせて、噴流発生装置10から空気を吐出させるシミュレーションを行った様子を示した図である。同図(a)は、各吐出口を垂直面に設けたノズルを有する4つの噴流発生装置とヒートシンク50とを組み合わせて、当該噴流発生装置を動作させた場合の、ノズルの中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。また同図(b)は、本実施形態における4つの噴流発生装置10を動作させた場合の、ノズル2の中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。
同図(a)の丸で囲んだAの部分と、同図(b)の丸で囲んだBの部分を比較すると、本実施形態におけるノズル2から空気を吐出した場合の方が噴流の幅が広がっていることが分かる。したがって、本実施形態のように斜面に各吐出口が形成されるように各流路を設けることにより、ヒートシンク50のように積載面積の大きいヒートシンクのフィン全体を効率よく放熱に利用することができる。具体的には、本発明者らのシミュレーションの結果、同図(a)のノズルで空気を吐出した場合に比べて、同図(b)のノズル2で空気を吐出した場合には、ヒートシンク50の出口から排出される空気の流量が最大20%程度増加することが分かった。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1実施形態においては、ノズル2の上部表面に斜面20aを、下部表面に斜面20bを設け、当該斜面20a及び斜面20bにそれぞれ2つずつ吐出口を有する各流路を形成していたが、本実施形態においては、上記斜面20a及び斜面20bの代わりに段差部を設け、当該段差部に各流路を設けることとしている。なお、本実施形態において上記第1実施形態と同様の構成及び機能を有する部分については同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図11は、本実施形態におけるノズルを有する噴流発生装置の外観を示した図であり、図12は、図11に示した噴流発生装置100の断面図である。両図に示すように、噴流発生装置100は、筐体1と、筐体1に装着されたノズル12と、筐体1内に配置された振動アクチュエータ15とを備えている。筐体1及び振動アクチュエータ15の構成及び機能は、上記第1実施形態におけるものと同様であるため、説明を省略する。
本実施形態におけるノズル12のノズル本体120は、上記第1実施形態におけるノズル2と同様、筐体1の前面の開口1aに装着されている。ノズル本体120の上部表面には段差部120aが設けられ、段差部120aの下方には段差部120bが設けられている。またノズル本体120の下部表面には段差部120cが設けられ、その上方には段差部120dが設けられている。すなわち、段差部120a、段差部120b、段差部120c及び段差部120dは、ノズル本体120の上部表面と下部表面との同図Z軸方向における距離が、同図Y軸方向に向かって徐々に小さくなるように形成されている。
そして、上部表面の段差部120aには吐出口121aが、段差部120bには吐出口122aが設けられ、ノズル本体120内部には、当該吐出口121a及び122aとチャンバ3とをそれぞれ連通する空気の流路121及び流路122が設けられている。
また同様に、下部表面の段差部120cには吐出口123aが、段差部120dには吐出口124aが設けられ、ノズル本体120内部には、当該吐出口123a及び124aとチャンバ4とをそれぞれ連通する空気の流路123及び流路124が設けられている。
当該流路121、流路122、流路123及び流路124は、上記第1実施形態と同様、図12の実線の矢印で示すように、各吐出口を介してチャンバ3及び4から外部へ空気を吐出し、また破線の矢印で示すように、各吐出口を介してチャンバ3及び4へ外気を吸入することが可能となっている。
上記流路121の長さと流路123の長さは略同一である。また上記流路122と流路124の長さは略同一であり、それぞれ段差部120a及び段差部120cとは高さの異なる段差部120b及び段差部120dに設けられているため、それぞれ流路121及び流路123の長さよりも長くなっている。各流路の径は略同一であるが、流路121と流路122とで、また流路123と流路124とで異なるように形成されていても構わない。
また上記第1実施形態と同様、ノズル本体120の上記空気の吐出方向(同図Y軸方向)の端部には、上記各流路から吐出されまたは吸入された空気の流れを仕切るための仕切り板125が設けられている。
次に、本実施形態における噴流発生装置100の動作について説明する。筐体1内部の振動アクチュエータ15等の動作については、上記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
図13は、本実施形態における噴流発生装置100と上記第1実施形態におけるヒートシンク40とを組み合わせて、ノズル12から空気を吐出した場合の、ノズル12中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。なお、同図においては、上部の流路121及び流路122を介してチャンバ3から空気を吐出し、下部の流路123及び流路124を介してチャンバ4へ空気を吸入しているものとする。
同図に示すように、本実施形態におけるノズル12を用いた場合、流路121と流路122が、それぞれ段差部120a及び段差部120bに形成されているため、同図Aの丸で囲んだ部分において、上記第1実施形態と同様に、各流路、特に流路121(吐出口121a)とヒートシンク40の各切欠き43aとの間に十分なスペースが生まれ、外気を巻き込みやすくなっている。これにより、ヒートシンク40へ取り込まれる空気及びヒートシンク40の出口から排出される空気の流量を増やすことが可能となる。なお、ノズル2の下部の流路123及び流路124から空気を吐出する場合においても、もちろん同様にヒートシンク40の切欠き43bを介してより多くの空気を取り込むことができる。
図14は、本実施形態における噴流発生装置100と上記ヒートシンク40とを組み合わせて、ノズル12から外部の空気を吸入する場合の、ノズル12中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。なお、両図においては、流路123及び流路124を介してチャンバ4から空気を吐出し、流路121及び流路122を介してチャンバ3へ空気を吸入しているものとする。
同図に示すように、本実施形態におけるノズル12を用いた場合、流路121と流路122が、それぞれ段差部120a及び段差部120bに形成されているため、同図Aの丸で囲んだ部分において、上記第1実施形態と同様に、各流路、特に流路121(吐出口121a)とヒートシンク40の各切欠き43aとの間に十分なスペースが生まれる。これにより、上の2つの吐出口121a及び122aによる、下の2つの吐出口123a及び124aから吐出された空気の引き戻しは少なく、吐出口121a及び吐出口122a周辺の外部の空気を効率よく吸入している。また、吐出口121aと吐出口122aの位置が吐出方向においてずれて配置されているため、各吐出口が独立してそれぞれ吸気動作を行うことができる。この結果、効率よく合成噴流を発生させてヒートシンク40へより多くの空気を取り込むことができる。
もちろん、上部の吐出口121a及び吐出口122aから空気が吐出され下部の吐出口123a及び吐出口124aから吸気を行う場合でも、同様に多くの空気をヒートシンク40へ取り込むことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上記第1実施形態及び第2実施形態においては、ノズルに設けられる流路は上下各2つずつであったが、この数に限定されるものではなく、上下各2つ以上であってもよいし、各1つずつであってもよい。本実施形態においては、流路を上下各1つずつ設けることとしている。なお、本実施形態において、上記各実施形態と同様の機能または構成となる部分については同様の符号を付し、図示を省略する。
図15は、流路を上下各1つずつ設けたノズルを用いて空気を吐出した場合のノズル中央断面付近における流速ベクトルを示した図である。同図に示すように、ノズル112の上部表面及び下部表面にはそれぞれ段差部220a及び220bが設けられており、段差部220aには流路221が、段差部220bには流路222が設けられている。同図においては、上部の流路221から空気を吐出し、下部の流路222から空気を吸入している。この場合でも、流路221の吐出口221aから吐出された空気は、吐出口221a周辺の空気を効率よく巻き込みながら、ヒートシンク40へ取り込まれている。
図16は、上記図15のノズル112を用いて空気を吸気する場合の流速ベクトルを示した図である。同図においては、下部の流路222から空気を吐出し、上部の流路221から空気を吸入している。同図に示すように、上部の流路221の吐出口221aは、その周辺の外気を効率よく吸気しており、下部の流路222の吐出口222aから吐出された空気をほとんど引き戻してはいない。
なお、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記各実施形態におけるノズルは、空気の吐出方向に仕切り板を有していたが、当該仕切り板も、ノズル本体の上部表面と下部表面との距離が吐出方向に向かって徐々に小さくなっていくとの同様に、その垂直方向の幅が上記吐出方向に向かって徐々に小さくなるように形成されても構わない。図17は、上記図15及び図16に示したノズル112において仕切り板225が吐出方向に向かってその垂直方向の幅が徐々に小さくなるように一体的に形成されている例を示した断面図である。仕切り板225をこのように形成することにより、仕切り板225と上部表面または下部表面との間の凹凸を極力排除して、吐出された気体をスムーズに案内することができる。
また、上記第2実施形態においては、ノズルの段差部の垂直面上に各吐出口を設けていたが、図18に示すように、上下の2つの段差部(垂直面)320a及び320bとそれらの段差部を繋ぐ水平面320cに亘って吐出口321aを設けるようにしても構わない。これにより、吐出された空気の流れの幅が、上記第1実施形態のように吐出口を斜面に設けた場合よりも更に広がり、特に積載面積の大きいヒートシンク等を効率よく放熱することが可能となる。
上述した噴流発生装置とヒートシンクとを組み合わせた冷却装置は、電子機器に搭載される。図19は、上記各図に示した噴流発生装置10等が電子機器としてPC150に搭載された状態を示す斜視図である。噴流発生装置10から供給される合成噴流がヒートシンク40に吹き付けられ、ヒートシンク40の背後に設けられたPC筐体の排気口151から、熱を持つ空気が排出される。
なお、図19では電子機器としてラップトップ型のPCを例に挙げたが、デスクトップ型のPCでもよい。PCに限らず、PDA(Personal Digital Assistance)、電子辞書、カメラ、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、プロジェクタ、携帯電話、ゲーム機器、カーナビゲーション機器、ロボット機器、その他の電化製品等が挙げられる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態以降の実施形態において、上記各実施形態と同様の機能または構成となる部分については同様の符号を付し、図示を省略する。
図20は、本実施形態におけるノズルの外観を示した斜視図である。また、図21は、図20のノズル412とヒートシンク40とを組み合わせた様子を示した斜視図である。これらの図に示すように、上記図11等に示した第2の実施形態におけるノズル12が段差部を上部表面と下部表面に各2段有し、各段差部に流路を有しているのに比べて、本実施形態においては、ノズル412は、上部表面と下部表面に段差部(上部の段差部420a〜400c及び下部の段差部420d〜420f)を各3段有しており、各段差部には流路(上部の流路421〜423及び下部の流路424〜426)を有している。
なお、本実施形態において、ノズル412には仕切り板を設けていないが、仕切り板を設けるようにしてももちろん構わない。また、本実施形態以降の実施形態においても同様である。
図22は、上記第2の実施形態におけるノズル12(2段ノズル)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル412(3段ノズル)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせてシミュレーションを行った結果を示した図である。本シミュレーションにおいては、ヒートシンク40の出口を流れる気体の流量(以下、単に出口流量という)、両ノズルから吐出される気体の最大流速、単位流速あたりの出口流量(出口流量/最大流速)、ノズルからの気体の吸入と吐出1周期分の流路内の最大圧力と最小圧力との差(以下、単に圧力差という)をそれぞれ測定し、また出口流量、最大流速、単位流速あたりの出口流量及び圧力差のそれぞれについて、2段ノズルに対する3段ノズルの比率を計算した。なお、本シミュレーションにおいては、2段ノズルから吐出される気体の流量は3段ノズルから吐出される気体の流量と同一となるようにした。
同図から、本実施形態のように段差部を上下各3段有するノズル412を用いることにより、段差部が上下各2段である場合に比べて、ヒートシンク40の出口流量が約6%増加していることが分かる。これは、段差部を増やすことで、各吐出口とヒートシンク40との間に更にスペースが生まれるためであると考えられる。すなわち、本実施形態のノズル412によれば、2段ノズルに比べて、ヒートシンク40の熱抵抗を低減することが可能となる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図23は、本実施形態におけるノズルの外観を示した斜視図である。また、図24は、図23のノズル512とヒートシンク40とを組み合わせた様子を示した斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態においては、上記第2実施形態におけるノズル12に比べて、ノズル512の段差部520a、520b、520c及び520dのそれぞれのエッジを曲面状に削ったR部526a、526b、526c及び526dを設けている。
図25は、上記第2の実施形態におけるノズル12(R無し)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル512(R有り)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて、上記図22と同様に出口流量、最大流速、単位流速あたりの出口流量及び圧力差の各項目について測定したシミュレーション結果を示した図である。
同図から、本実施形態のように段差部にR部を設けることにより、R部を設けない場合に比べて、ヒートシンク40の出口流量が約3%増加していることが分かる。これは、R部を設けたことで、ヒートシンク40と各吐出口との間に更にスペースが生まれるためであると考えられる。すなわち、本実施形態のノズル512によれば、段差部にR部を設けない場合に比べて、ヒートシンク40の熱抵抗を低減することが可能となる。
図26は、上記第2の実施形態におけるノズル12(R無し)を有する噴流発生装置100と本実施形態におけるノズル512(R有り)を有する噴流発生装置とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて、駆動装置35を駆動させた場合の各騒音レベルを測定したシミュレーション結果を示した図である。なお、本シミュレーションにおいては、駆動装置35の駆動による振動板33の振幅を、3.5mm、4mm及び4.5mmの3段階に変更して測定を行った。また、本シミュレーションにおいては、装置による測定結果のばらつきを見るために、異なる2つの噴流発生装置100(A及びB)を用いて測定を行った。また、騒音の測定は、ヒートシンク40の出口から図24のy軸方向に15cm、z軸方向に15cmの地点において行った。
同図に示すように、いずれの振幅段階においても、またいずれの噴流発生装置を用いた場合でも、本実施形態のように段差部にR部を設けたノズル512を用いることにより、R部が無い場合に比べて騒音が低減されており、平均すると約2dBAの改善があった。これは、R部を設けることにより空気抵抗が軽減したためであると考えられる。すなわち、本実施形態におけるノズル512を用いることにより、熱抵抗のみならず騒音を低減することも可能となる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図27は、本実施形態におけるノズルの外観を示した斜視図である。同図に示すように、本実施形態においては、上記第2実施形態におけるノズル12に比べて、流路621、622、623及び624それぞれの径が、気体の吐出方向(同図y軸方向)に向かって徐々に小さくなるようなテーパを設けている。同図においてテーパ角θは例えば0.9度であるが、これに限られるものではない。また、各流路の各吐出口621a、622a、623a及び624aの径は上記第2実施形態におけるノズル12の各吐出口121a、122a、123a及び124aの径と同一であり、当該各吐出口から気体の吸入方向に向かって各流路内の径が徐々に大きくなるように形成されている。
図28は、上記第2の実施形態におけるノズル12(テーパ無し)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル612(テーパ有り)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて、上記図22等と同様に出口流量、最大流速、単位流速あたりの出口流量及び圧力差の各項目について測定したシミュレーション結果を示した図である。
同図から、本実施形態のように流路にテーパを設けることにより、テーパを設けない場合に比べて、圧力差が約18%小さくなっていることが分かる。すなわち、本実施形態のノズル612によれば、テーパ状に形成しない場合に比べて、上記振動アクチュエータ15の振動に伴う各流路内の圧力の変動を小さくすることで、振動アクチュエータ15の駆動時における騒音を低減することが可能となる。
また、同図から、流路にテーパを設けることにより、ヒートシンク40の出口流量は約1%減少するものの、最大流速が約5%減少しており、単位流速あたりの出口流量は約4%増加している。したがって、ノズル612からの吐出流量を減らすことなく流速を低くすることができるため、これによっても騒音を低減することが可能となる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図29は、本実施形態におけるノズルの外観を示した斜視図である。同図に示すように、本実施形態においては、上記第2実施形態におけるノズル12に比べて、各流路721、722、723及び724内に、気体の吐出方向に向かう複数の溝を設けている。すなわち、同図の円で囲んだ拡大図に示すように、各流路の径方向の断面形状が、2つの5角形を180度位相をずらして重ねた形状となるように各流路を形成している。
図30は、上記第2の実施形態におけるノズル12(流路内に溝無し)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル712(流路内に溝有り)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて、上記図22等と同様に出口流量、最大流速、単位流速あたりの出口流量及び圧力差の各項目について測定したシミュレーション結果を示した図である。
同図から、本実施形態のように流路内に溝を設けることにより、溝を設けない場合に比べて上記圧力差が約40%減少していることが分かる。したがって、流路内に溝を設けることにより、振動アクチュエータ15の駆動時における騒音を低減することが可能となる。
また、同図から、流路内に溝を設けることにより、溝を設けない場合に比べて単位流速あたりの出口流量が約12%増加していることが分かる。したがって、ノズル712からの吐出流量を減らすことなく流速を低くすることができるため、これによっても騒音を低減することが可能となる。
なお、流路内に溝を設ける場合には、上述のように流路の断面形状が2つの5角形を重ねた形状となる形態のみならず、例えば6角形となるような形状にしてもよいし、3角形を位相をずらして複数重ねた形状となるようにしてもよいし、それ以外の多角形となるように、または当該多角形を複数重ねた形状となるようにしても構わない。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図31は、本実施形態におけるノズルの外観を示した斜視図である。同図に示すように、本実施形態においては、同図に示すように、本実施形態においては、上記第2実施形態におけるノズル12に比べて、各流路821、822、823及び824にテーパを設け、また各段差部にR部826a〜826dを設け、更に各吐出口821a、822b、823c及び824dをR形状に形成している。すなわち、本実施形態においては、上記第5の実施形態におけるノズル512と第6の実施形態におけるノズル612とを組合せ、更に各吐出口にR形状を設けている。
図32は、上記第2の実施形態におけるノズル12(テーパ・段差部R・吐出口R無し)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル612(テーパ・段差部R・吐出口R有り)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて、上記図22等と同様に出口流量、最大流速、単位流速あたりの出口流量及び圧力差の各項目について測定したシミュレーション結果を示した図である。
同図から、テーパ、段差部のR及び吐出口のRをそれぞれ設けることで、それぞれを設けない場合に比べて上記圧力差が約16%減少していることが分かる。これは、各流路にテーパを設けたことによる効果である。これにより、振動アクチュエータ15の駆動時における騒音を低減することが可能となる。
また、同図から、テーパ、段差部のR及び吐出口のRをそれぞれ設けることで、それぞれを設けない場合に比べてヒートシンクの出口流量が約2%増加し、最大流速が約8%小さくなり、単位流速あたりの出口流量が約11%増加していることが分かる。出口流量の増加は、各流路にテーパを設けたことによる効果である。これにより、ヒートシンク40の熱抵抗を更に減少させることができるとともに、振動アクチュエータ15の駆動時における騒音を低減することが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、流路にテーパを設けることによる効果と、段差部または吐出口にRを設けることによる効果とを相反させることなく得ることができる。また、以上説明した、テーパと、各段差部または各吐出口のR部と、上記第4実施形態における上下各3段の段差部とを任意に組み合わせてノズルを構成することももちろん可能であり、これによっても上記の効果を得ることができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。図33は、本実施形態におけるノズル912とヒートシンク40とを組み合わせた様子を示した斜視図である。また図34(a)は、図33のノズル912及びヒートシンク40をヒートシンク40の出口側(図33の矢印A方向)から捉えた図であり、図34(b)は、図33のノズル912及びヒートシンク40をノズル912側(図33の矢印B方向)から捉えた図であり、図34(c)は、ノズル912単独の斜視図である。
同図に示すように、本実施形態におけるノズル912は、上記第3実施形態において図15等に示したノズル112と同様、流路を上部表面と下部表面とで各1つずつ設けたものであるが、上記各実施形態のように、各流路をヒートシンク40の各フィン41の1つの隙間44に対応させるのではなく、各流路の径を大きくして、各フィン41の2つの隙間44に対応させている点で異なる。すなわち、本実施形態においては、一の吐出口921a及び922aから吐出された気体は、各吐出口を略2分するように配置されたフィン41とその両隣のフィン41とで形成される2つの隙間を通って、ヒートシンク40の内部に取り込まれることとなる。なお、本実施形態におけるノズル912の流路の数は、上記第3実施形態におけるノズル112の流路の数の1/2であるが、ノズル912の吐出口921a及び922aの開口面積の和は、ノズル112の吐出口221a及び222aの開口面積の和に等しくなるように設計されている。
図35は、上記第3の実施形態におけるノズル112(各フィン41の1つの隙間に1つの吐出口が対応)を有する噴流発生装置100と、本実施形態におけるノズル912(各フィン41の2つの隙間に1つの吐出口が対応)を有する噴流発生装置100とをそれぞれヒートシンク40と組み合わせて駆動させた場合の消費電力及び熱抵抗を測定したシミュレーション結果を示した図である。両ノズルからの気体の吐出流量は等しくなるように設定した。同図(a)が各振動板の振幅と消費電力との関係を示しており、同図(b)が消費電力と熱抵抗との関係を示している。なお、各図においては、本実施形態のノズル912を「大穴ノズル」、第3実施形態のノズル112を「普通ノズル」と称している。
同図(a)から、吐出口と各フィン41の隙間を1:2で対応させることで、1:1で対応させる場合に比べて、振幅に関わらず消費電力が約0.6倍になることが分かる。また同図(b)から、消費電力が同一の場合、本実施形態のノズル912(大穴ノズル)の方が、熱抵抗が約0.1k/W小さくなることが分かる。すなわち、本実施形態によれば、各流路の径を大きくして流路抵抗及び圧力損失を小さくすることで、同等の消費電力でより低い熱抵抗を実現し、また同等の熱抵抗で低消費電力を実現することができる。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。図36は、本実施形態における噴流発生装置の断面図である。
同図に示すように、本実施形態における噴流発生装置200は、筐体1の背面(ノズル2とは反対側の面)に、外部からチャンバ3内及びチャンバ4内へそれぞれ気体を吸入するための例えば円筒状の吸気口6及び吸気口8を有している。各吸気口6及び8内部には、各吸気口6及び8からチャンバ3及び4内へ吸入した気体が、振動アクチュエータ15の駆動によりチャンバ3及び4の外部へ逆流するのを防ぐための逆止弁7及び9がそれぞれ設けられている。
図37は、上記図36の噴流発生装置200の、各吸気口6及び8近傍の拡大図である。同図(a)に示すように、各吸気口6及び8内の各逆止弁7及び9は、例えば円板状の弁体7a及び9aと、当該弁体7aに接続され当該弁体7aを、各吸気口6及び8を塞ぐ方向(同図矢印A1方向)に付勢するコイルバネ7b及び9bを有している。
振動アクチュエータ15の駆動により、チャンバ4内の圧力が上がりチャンバ3内の圧力が下がった場合には、チャンバ3内には、ノズル2の上部の流路21及び22から気体が吸入されるとともに、同図(b)に示すように、弁体7aが上記付勢力に抗して上記矢印A2方向へ移動することで、同図矢印Bで示すように吸気口6を介してチャンバ3内へ気体が吸入される。このとき、吸気口8は逆止弁9の弁体9aにより塞がれているため、圧力が上がったチャンバ4から吸気口8を介して気体が流出することはなく、ノズル2の下部の流路23及び24のみから気体が吐出される。
また、図示しないが、逆にチャンバ3内の圧力が上がりチャンバ4内の圧力が下がった場合には、チャンバ4内に流路23及び24から気体が吸入されるとともに、吸気口8からも気体が吸入される。このとき、吸気口6は逆止弁7の弁体7aにより塞がれているため、圧力が上がったチャンバ3から吸気口6を介して気体が流出することはなく、流路21及び22のみから気体が吐出される。
図38は、上記各吸気口から吸気を行った場合の吸気率とヒートシンク40の出口流量の増加率との関係を測定したシミュレーションの結果を示したグラフである。なお、同シミュレーションにおいては、例えばノズル2の各流路にも、例えば逆止弁のような気体の吸入を阻害する機構を設けて振動アクチュエータ15を駆動させることで、吸気口6及び8からの吸気率を調整した。また、ノズル2の各流路から吐出される気体の流量は常に一定となるように調整した。
同図に示すように、ノズル2からの吸気を完全に停止して、吸気を100%吸気口6または8から行った場合、ノズル2から100%吸気する場合に比べて、ヒートシンク40の出口流量が約42%増加している。また、吸気の一部を吸気口6または8から行った場合、例えば吸気率が25%である場合でも、ヒートシンク40の出口流量は16%増加することが分かった。
すなわち、吸気を全てノズル2以外から行わなくとも、本実施形態のように少なくとも吸気の一部を吸気口6または8から行うことで、各吐出口から吐出された気体の引き戻しが少なくなるため、ヒートシンク40の出口流量が増加して、ヒートシンク40の熱抵抗を低減させることができる。
また、上記噴流発生装置200を、上記図19で示したPC150のような電子機器に搭載する場合、上記吸気口6及び8を、電子機器の外部から直接外気を吸入するような位置に設けるようにしてもよい。これにより、電子機器内部の暖められた空気をノズル2から吸入して吐出する場合に比べて、ヒートシンク40のフィン41の隙間を流れる空気の温度を下げることができるため、発熱体の温度も更に低下させることが可能となる。
更に、上記吸気口6及び8を、例えばヒートシンク40に直接熱的に接触していない発熱体の近傍に設置するようにしても構わない。これにより、ヒートシンク40に直接熱的に接触していない発熱体の周りに気体の流れを作り、当該発熱体の温度を下げることが可能となる。これは、例えば電子機器の筐体表面で局所的に温度の高くなる場所(ヒートスポット)対策に有効である。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態について説明する。図39は、本実施形態における噴流発生装置300の吸気口6及び8近傍の拡大図である。
同図に示すように、本実施形態においては、上記第10実施形態において図36及び図37に示した噴流発生装置200の各吸気口6及び8に比べて、各吸気口6及び8の内部に、逆止弁として各2枚の例えば円板状の弾性体107a、107b及び109a、109bを設けている。同図(a)に示すように、当該各弾性体は、一端が吸気口6及び8内に固定されており、他端が同図矢印A方向(各チャンバ側)へ各吸気口6及び8を開くように湾曲することが可能となっている。
振動アクチュエータ15の駆動に伴い、チャンバ4内の圧力が上がりチャンバ3内の圧力が下がった場合には、チャンバ3内には、ノズル2の上部の流路21及び22から気体が吸入されるとともに、同図(b)に示すように、逆止弁7の弾性体107a及び107bが上記矢印A方向へ湾曲することで、同図矢印Bに示すように吸気口6を介してチャンバ3内へ気体が吸入される。このとき、吸気口8は弾性体109a及び109bにより塞がれているため、圧力が上がったチャンバ4から吸気口8を介して気体が流出することはなく、ノズル2の下部の流路23及び24のみから気体が吐出される。
また、図示しないが、逆にチャンバ3内の圧力が上がりチャンバ4内の圧力が下がった場合には、上記第10実施形態と同様、チャンバ4内に流路23及び24から気体が吸入されるとともに、吸気口8からも気体が吸入される。このとき、吸気口6は弾性体107a及び107bにより塞がれているため、圧力が上がったチャンバ3から吸気口6を介して気体が流出することはなく、流路21及び22のみから気体が吐出される。
以上の構成及び動作により、本実施形態においても、上記第10実施形態と同様、ヒートシンク40の出口流量を増加させてヒートシンク40の熱抵抗を低減させることができる。また、各吸気口6及び8を電子機器の外部から直接外気を吸入するような位置へ設けることで、発熱体の温度を低下させることもできる。また、各吸気口6及び8を発熱体の近傍に設けることで、発熱体の温度を下げることも可能である。