JP4844165B2 - エレベータの異常検出装置 - Google Patents
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Description
このような従来技術として、平常運転時の振動に応じたパターンを記憶したパターン装置と、点検運転時の振動に応じた出力を発する振動検出器と、この振動検出器の出力が上記パターンによる値を超えたときに動作する認識装置とを備えたエレベータの異常検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、地震によって停止したかごを試運転装置で試運転し、そのときに発生される各所定部位の振動又は走行音を検出装置で検出し、平常運転時に発生する上記所定部位における振動又は走行音と比較器で比較し、その比較結果に応じてエレベータを平常運転に復帰させるエレベータ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、高精度な異常検出を行うためには、エレベータの走行方向(上昇、下降)を変えた点検運転や、走行速度(微速、低速、定格速度)を変更した点検運転が必要であり、このようなエレベータの走行状態に応じた参照パターンを準備しておくことが必要である。すなわち、異常点検時の速度や運転方向によって信号値出力が異なることから、それぞれの条件に対して参照パターンを設けなければならない。そのために、メモリ容量の増大や参照パターンの設定に時間がかかってしまうという問題点があった。
基準パターン作成部は、参照信号保存部及び振動成分と大域成分から構成される波形解析部を備え、参照パターン演算部は、波形合成部及び位相反転部を備え、参照パターンは、高速走行に対応する速度パターンと、低速走行に対応する速度パターンの二つの速度パターンであり、高速走行の速度パターンは、最下階から最上階までの連続したかご上昇区間全体が参照信号取得区間となり、最上階から最下階までのかご下降区間は始めと終わりのみが参照信号取得区間となり、低速走行の速度パターンは、最下階から最上階までのかご上昇区間及び最上階から最下階までのかご下降区間はいずれも始めと終わりのみが参照信号取得区間となり、高速かご上昇区間で得られた参照パターンを、全体の傾向を表わす大域成分と振動的な振る舞いを表わす振動成分とに分離して記憶装置に単一の基準パターンとして記憶し、基準パターンと高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンとの相違を、補間関数を用いて補正することにより、高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンが得られるようにしたものである。
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの異常検出装置の概略構成を示すブロック図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの異常検出装置の基準パターン作成部と参照パターン演算部の詳細を説明するブロック図、図3は巻上機のトルク電流波形を示す説明図、図4は高速走行と低速走行及びかご上昇・下降時のトルク電流波形の違いを示す説明図、図5は参照パターンを取得するためのかご運転例を示す説明図、図6は高速上昇時のトルク電流を基準パターンとして取得するための説明図、図7は高速下降時の参照パターンを求める方法について説明するための説明図、図8は低速上昇時の参照パターンを求める方法について説明するための説明図である。
エレベータの据付時、あるいは経年変化による状態変化に対応するために正常時信号を定期的に更新する場合に、制御盤からの指令により、基準パターン作成と参照パターン演算を行う。
図4において、実線は高速かご上昇時のトルク電流を示している。通常、点検運転を行う時は、かご内に人が乗り込んでいないか、保守員のみの乗り込み操作となることから、つり合いおもりの方がかごよりも重くなっている。そのため、かごの上昇に伴って、ロープ質量やケーブル質量の変化により、かごとつり合いおもりの重量差が拡大し、トルク電流の絶対値は、図4に示すように上昇する。なお、ロープの重量差を補償するためにつり合いロープを設けている場合は、上記の変動は抑えられる。
また、エレベータはガイドレールに沿って走行しているため、エレベータを駆動する巻上機トルクは、ガイドレールの据付精度に影響を受ける。もし、ガイド装置の据付精度が悪く、走行抵抗が一定でない場合は、図4に示すように、波形が振動的になる。この影響は据付精度を改善することにより低く抑えることができる。
次に、速度が異なる場合のトルク電流の影響について述べる。一般に速度が上昇すると、ガイドレールとの摩擦抵抗によって走行抵抗が上昇する。そのため、高速走行時は走行抵抗が増大するが、かご上昇時には走行抵抗がつり合いおもりとの重量差を緩和する方向に作用する。よって、トルク電流の絶対値は低速走行時よりも小さくなる。一方、かご下降時には、つり合いおもりとの重量差分を重力に逆らって持ち上げる必要があるため、かご上昇時よりも余分にトルクが必要となる。また、走行抵抗は、かご上昇時とは逆に重量差を増やす方向に作用するため、高速走行時のトルクは、更に増大する。このように、走行抵抗がトルク電流に与える影響は、走行方向によって逆転することが判る。
そのため、ガイドレールの据付精度に起因して発生するトルク電流の振動成分は、走行方向によってその位相が逆転する。例えば、かご上昇時に、据付精度が悪く走行抵抗の大きい位置を通過すると、その位置でかご質量が増加したことと等価になり、つり合いおもりとの重量差は緩和され、巻上機トルクの絶対値は減少する。一方、同じ位置を下降時に通過する場合、走行抵抗の上昇により、今度はかご質量が減少したことと等価になり、巻上機トルクの絶対値は、逆に増加することになる。
更に注目すべき点として、図4に示すように、横軸をかご位置としてトルク電流波形を見た場合、速度変更時においても、同じガイドレールを走行していることから、振動的な成分は同一となり、走行抵抗の違いによる一定の偏差のみが生じていることを確認することができた。
従来は、このような速度、走行方向などの走行条件変化に対して、全ての運転条件における参照パターンを記憶していたため、大きな記憶容量を用意しなければならなかった。
図5は参照パターンを取得するためのかごの走行状態を示す。ここでは、高速走行に対応する速度パターンP1と、低速走行に対応する速度パターンP2の二つの速度パターンについて示している。高速走行の速度パターンP1は、最下階から最上階までの連続したかご上昇区間全体が参照信号取得区間(実線矢印で示す)となり、最上階から最下階までのかご下降区間は始め(最上階近傍)と終わり(最下階近傍)のみが参照信号取得区間(実線矢印で示す)となる。また、低速走行の速度パターンP2は、最下階から最上階までのかご上昇区間及び最上階から最下階までのかご下降区間は、いずれも始め(最下階近傍と最上階近傍)と終わり(最上階近傍と最下階近傍)のみが参照信号取得区間(実線矢印で示す)となる。
図9はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの異常検出装置を示す加減速時の変動を考慮した参照パターンの演算方法を説明するための説明図である。
実施の形態1による参照パターンの作成方法では、速度に応じて複数の参照パターンを作成するため、一定速度の区間のみ利用している。参照信号が巻上機トルクのように加減速時間中に変化する場合、走行速度によって加減速時間が異なることから、ある速度で求めた基準パターンから、別の速度条件における参照パターンを求める際に、加減速時間の違いが問題となる。そこで、速度変化の影響を受けないように、基準パターン・参照パターンの作成は、一定速度の区間のみを利用している。
この実施の形態2は、加減速中においても参照パターンを設定する場合には、図9に示すように、加減速区間に、速度パターンから得られるトルク指令値のパターンを新たに設けて、大域成分と振動成分に合成しても良いものである。
図10及び図11はこの発明の実施の形態3におけるエレベータの異常検出装置で、参照パターンを取得するためのかご運転例を示す説明図である。
実施の形態3による参照パターンの作成方法では、図10、図11に示すように、低速走行の速度パターンP2の大域成分を得るためのデータ取得位置(実線矢印部分)以外、すなわち破線の部分では、かごの速度を速めて運転するようにしたものである。これにより、全ての参照パターンを設定する時間を短縮することができ、保守・点検時間を節約できる。特に、低速走行の参照パターンを作成する場合、昇降行程が長いエレベータに対して適用すると、極めて効果的となる。
図12はこの発明の実施の形態4におけるエレベータの異常検出装置で、参照パターンをチェックする区間を設けた場合を示す説明図である。
実施の形態4による参照パターンの作成方法においては、作成した参照パターンに対して、参照パターンを正常に設定できたかどうかをチェックする点検運転を途中に設けたものである。図12に示すように、高速走行による参照パターン作成後に、参照パターンをチェックする診断運転を設けている(図中の太い破線)。この診断運転では、設定した参照パターンが正常時の信号に対して、異常を検出するなどの問題がないかどうかをチェックする。もし、参照パターンに不適正な問題が見つかれば、その時点で最初の設定に戻り、参照パターンの記憶精度を上げるなどして、再度設定を行う。そのため、効率的で精度の高い参照パターンの設定が可能となる。ここでは、高速上昇時のチェック運転のみ示したが、信頼性を確保するために、全ての運転条件における参照パターンのチェックを実施しても良い。また、時間効率を考慮して、ある速度パターンについてのみチェックするか、一方向のみチェックするなどの選択を行っても良い。
2 記憶装置
3 基準パターン作成部
4 参照パターン演算部
5 参照信号の振動成分
6 参照信号の大域成分
7 異常判定の閾値
8 異常検出部
30 参照信号保存部
31 波形解析部
32 振動成分
33 大域成分
40 波形合成部
41 位相反転部
Claims (6)
- 正常走行時の参照パターンを保持し、参照信号の振動成分、参照信号の大域成分、異常判定の閾値を記憶する記憶装置と、ある走行条件下で取得した信号を元に、基準パターンを作成する基準パターン作成部と、基準パターンの特徴を抽出し、記憶装置に保存している振動成分と大域成分から、他の走行条件の参照パターンを求める参照パターン演算部と、記憶装置に保存している異常判定の閾値に基づいて、点検運転中の異常を判定する異常検出部とを備えたエレベータの異常検出装置であって、
前記基準パターン作成部は、参照信号保存部及び振動成分と大域成分から構成される波形解析部を備え、前記参照パターン演算部は、波形合成部及び位相反転部を備え、
前記参照パターンは、高速走行に対応する速度パターンと、低速走行に対応する速度パターンの二つの速度パターンであり、前記高速走行の速度パターンは、最下階から最上階までの連続したかご上昇区間全体が参照信号取得区間となり、最上階から最下階までのかご下降区間は始めと終わりのみが参照信号取得区間となり、前記低速走行の速度パターンは、最下階から最上階までのかご上昇区間及び最上階から最下階までのかご下降区間はいずれも始めと終わりのみが参照信号取得区間となり、
高速かご上昇区間で得られた参照パターンを、全体の傾向を表わす大域成分と振動的な振る舞いを表わす振動成分とに分離して前記記憶装置に単一の基準パターンとして記憶し、前記基準パターンと高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンとの相違を、補間関数を用いて補正することにより、高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンが得られるようにしたことを特徴とするエレベータの異常検出装置。 - 基準パターン及び高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンの設定では、一定速度で走行する区間のデータのみを利用することを特徴とする請求項1記載のエレベータの異常検出装置。
- 基準パターンから、高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンを作成するために用いる補間関数については、少なくとも1個所のかご位置における参照信号データを記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの異常検出装置。
- 基準パターンから、高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンを作成するために用いる補間関数については、最下階近傍及び最上階近傍の参照信号データを記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの異常検出装置。
- 基準パターンから、高速かご下降区間、低速かご上昇区間、低速かご下降区間の参照パターンを作成するために用いる補間関数については、複数箇所のかご位置における参照信号データを記憶し、それ以外のかご位置ではデータ取得不要としてかご速度を上げることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの異常検出装置。
- 基準パターンから参照パターンを決定する途中に、作成した参照パターンの可否を判定する診断運転モードを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエレベータの異常検出装置。
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