JP4843792B2 - 経粘膜及び経皮投与を可能にする抗原薬物ヴィークル、これを用いる粘膜免疫の誘導方法、粘膜ワクチン及びdds - Google Patents

経粘膜及び経皮投与を可能にする抗原薬物ヴィークル、これを用いる粘膜免疫の誘導方法、粘膜ワクチン及びdds Download PDF

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Description

本発明は、経粘膜投与及び経皮投与を可能にする抗原薬物ヴィークルに関するものであり、更に詳しくは、該ヴィークルを所望の抗原や薬物に用いることを特徴とする、抗原特異的分泌型免疫グロブリンAを優先的かつ効果的、特に選択的に産生させる粘膜免疫の誘導方法、粘膜ワクチン、アレルギーの予防・治療、及びドラッグデリバリーシステムに関するものである。
従来の不活化ワクチンやトキソイド等には次の欠点が知られている:
(1) 自然感染ルートでの乏しい感染防御
ワクチン接種ルートが皮下、筋肉内等であるのに対し、細菌やウイルス等の自然感染ルートは、例えば鼻腔、気管、腸管等の粘膜であり、上記接種ルートとは異なる。自然感染の実態に即した接種ルートによる感染防御、特に粘膜経由のワクチン投与よる粘膜での感染防御の実現が望まれる。
(2) 低い粘膜免疫性
ワクチン被接種者においては、主に免疫グロブリンG(以下「IgG」又は「IgG抗体」と略記する)が血中に産生され、体液性免疫が誘導される。しかし、粘膜免疫を担う免疫グロブリンA(以下「IgA」又は「IgA抗体」と略記する)は、ほとんど産生されず、粘膜免疫の成立は期待できない。尚、IgA抗体の必要性と有効性は次の通りである:IgA抗体は、飛沫や空気による鼻腔、気管等の呼吸器への感染、また、経口による腸管への感染の門戸である粘膜での感染防御、即ち、粘膜免疫を担っており、臨床免疫上、極めて重要な役割を演じている。更に、IgG抗体が、抗原に対する特異性が高く、感染防御スペクトルが狭隘で、抗原変異した病原体の感染防御にはほとんど無効であるのに対し、IgA抗体は、交差免疫性、即ち、交差中和活性があるので、それだけ感染防御スペクトルの幅が広く、変異抗原に対する感染をも防御する。
(3) 追加接種の必要性と重なる費用
初回免疫の1回接種だけでは産生されるIgG抗体が低く、確実な効果が期待できないため、その後のIgG抗体保有状況に基づき、更に1回以上の追加接種、いわゆるブースター接種により血中IgG抗体価を高める必要がある。そのため、経費や労力を繰り返し要する上に、ブースター接種の機会に恵まれた高齢者、成人及び学童では効果が認められるが、その機会を逸し易い低年齢、特に2歳以下の乳幼児では効果なしのケースが散見される。
以上につき換言すれば、従来の不活化ワクチンやトキソイド等は、被接種者において主に血中IgG抗体の産生を誘導し、体液性免疫を高める作用効果をもたらし、その有効性は確認されている。しかし、IgA抗体産生ないしは粘膜免疫の誘導能が低いため、自然感染を防御するに十分な機能と効果には限界がある。かかる現状から、従来ワクチンの欠点を解消するため、現在までに多種多様な側面から多くの試みがなされている。例えば、ワクチン抗原の質的又は量的改良、不活化ワクチンに代わる生ワクチンの試作、新しい接種ルートや粘膜ワクチン等の開発、体液性免疫の高進とその持続をもたらすアジュバントのスクリーニング、粘膜免疫アジュバントの開発に特定した試行等々。しかし、未だ安全かつ有効な粘膜ワクチンの開発は達成されていない。
以下、粘膜ワクチンの開発につき、説明する。
(1) ワクチン抗原の増量
皮下又は筋肉内接種するワクチン抗原を増量し、粘膜に分泌されるIgG及びIgA抗体量を増加させる試みがされている。例えば、従来の不活化インフルエンザワクチンに該ウイルス膜蛋白のノイラミニダーゼを添加混合して抗体産生量を増加させたり、アジュバントとしてMF59を添加混合する方法等が試みられている。しかし、これには痛みを生じ、副反応が強くなる等の不都合が見られる。
(2) 経鼻投与型ワクチン
最も有効と考えられるIgA抗体による感染防御のため、液状のスプリット抗原を経鼻に直接接種する方法が試みられたが、IgA産生量の低いことが指摘されている。そこでIgA抗体産生能を上げるため、スプリット抗原にアジュバントとして大腸菌易熱生毒素やコレラ毒素を添加混合し、粘膜免疫応答、即ち、IgA抗体産生能を上げる試みがなされているが、アジュバントとしての毒素の安全性が保証されていない現状から、治検が中止され、実用化には至っていない。
(3) 鼻腔内接種が可能な低温馴化株を用いる生ワクチン
増殖の最適温度が25℃であり、39℃ではほとんど増殖しない低温馴化インフルエンザウイルス株を鼻腔内に接種する方法が実用化されているが、低温馴化親株の弱毒のメカニズムが明らかでなく毒性復帰の危険性が否定できない。また、ワクチンの有効成分が生きたウイルスのため、細胞内への侵入力が高く免疫の初期化には優れているが、軽度のインフルエンザ症状が散発するので、インフルエンザに感染すると重症化しやすいハイリスクのヒトや高齢者等には使えない等の欠点が見られる。
(4) その他のワクチン
ワクチニアウイルスをウイルスベクターとしたベクターワクチンや、リバースジェネティクスによる弱毒生ワクチン、DNAやcDNAそのものを有効成分として用いるDNAワクチン等の開発が実験的に進められてはいるが実用化には至っていない。
更に、以下、免疫アジュバントの開発につき、説明する。
(1) 免疫アジュバント
免疫アジュバントは、免疫応答の強化や抑制等の調節活性を有する物質の総称であり、被接種体内での抗原の徐放や貯留等を目的とした投与形態に係る物質と、免疫応答の高進や抑制等を図るための物質に2大別される。これ等のうち、前者、投与形態のためのアジュバントとしては、例えばリン酸アルミニウム、ミョウバン等を用いるワクチンやトキソイドが既に実用化されている。しかし、後者、免疫応答の強化・高進を図るためのアジュバントの実用化は、未だ知られていない。例えば、細菌由来のBCG生菌、BCG−CWS、エンドトキシン、グルカン等、合成されたMDP、レバミソール、ポリ I−ポリ C、ベスタチン等、また、サイトカイン類のインターフェロン、TNF、CSF等が公知であるが、関節炎、慢性関節リウマチ、高グロブリン血症、貧血等のアジュバント病、効果が不十分等々の理由により、これ等の実用化には安全性と有効性の保証が必要だと思量される。また、広く体液性免疫の誘導強化を図るため、高等動物由来の肺サーファクタント・プロテインをアジュバントとして用いる技術(特許文献1)が公知であるが、その実用化は未だ知られていない。
(2) 粘膜免疫用アジュバントの開発
例えば、百日咳毒素Bオリゴマー(特許文献2)、コレラ毒素(特許文献3)、大腸菌の易熱性エンテロトキシンBサブユニットLTB(特許文献4)、デンプン粒子(特許文献5)、コレラトキシンB鎖タンパク質CTB(特許文献6)、ベロ毒素1のBサブユニット(特許文献7)、オリゴヌクレオチド(特許文献8)、インターロイキン12(非特許文献1)等々、多種多様に開発されてはいるが、未だ実用化には至っていない。
以上の通り、皮下や筋肉内等へ接種する従来ワクチンから、ウイルスの自然感染ルートである粘膜においてIgA抗体の産生を誘導する粘膜ワクチンへの切り替えの必要性は、広くかつ深く認識されている。特に、21世紀における次世代ワクチンとしては、IgA抗体の産生、局所免疫あるいは粘膜免疫を誘導する、いわゆる粘膜ワクチンの開発と実用化が全世界で待望されてはいるが、未だ達成されていない。その理由は、IgA抗体産生、局所免疫ないしは粘膜免疫を誘導する機能をワクチンに付与するための安全かつ有効なアジュバントが特定・確立されていないことにあると思量される。
特表2002−521460号公報 特開平3−135923号公報 特表平10−500102号公報 特表2001−523729号公報 特表2002−50452号公報 特開2003−116385号公報 特開2003−50452号公報 PCT公表WO 00/20039号パンフレット Infection and Immunity、第71巻、4780−4788頁、2003年 Journal of neonatal Nursing、第10巻、2−11頁、2004年 Biology of the Neonate、第74巻(suppl 1)、9−14頁、1998年 American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology、第24巻、452−458頁、2001年
本出願は以下を課題とする。すなわち、従来の不活化ワクチンやトキソイド等に、IgA抗体の産生、局所免疫あるいは粘膜免疫を誘導する機能を付与する。そのための安全かつ有効な技術の開発。従来の体液性免疫ワクチンから安全かつ有効な粘膜免疫ワクチンへの変換。また、アレルギーの予防と治療、更に、粘膜や皮膚を経由して薬物を投与かつ輸送する経粘膜・経皮ドラッグデリバリーシステム(以下「DDS」と略記する)の確立。
本発明は、前記課題の解決手段として、経粘膜投与及び経皮投与を可能にする抗原薬物ヴィークル、該ヴィークルを所望の抗原や薬物に用いることを特徴とする、抗原特異的分泌型免疫グロブリンAを優先的かつ効果的、特に選択的に産生させる粘膜免疫の誘導方法、粘膜ワクチン、アレルギーの予防と治療剤、並びに経粘膜・経皮DDSを提供する。
本発明が提供する抗原薬物ヴィークルの適用・汎用により、多種多様な感染症に対する粘膜ワクチン、アレルギーの予防と治療剤、及び経粘膜・経皮DDSの実現と普及をもたらす。粘膜ワクチンは、自然感染の実態に即した免疫手段であるので、従来ワクチンに比し、著しく優れた感染防御効果を発揮する。また、抗原薬物ヴィークルが誘導する鼻腔粘膜IgAは、そこでのアレルゲンの失活をもたらし、減感作を可能にする。更に、多種多様な薬剤への該DDSの適用は、薬物の経粘膜投与及び経皮投与による予防・治療効果を強化かつ促進させる。その結果、この発明は、人類全体の医療・保健・衛生を多大に向上させると共に、世界の医療・保健・衛生分野の従事者には待望の福音になる。併せて、従来及び未来のワクチンやトキソイド等を含む生物学的製剤、更に多種多様な薬物に広く、注射に比べ簡便な経粘膜投与及び経皮投与が可能な機能と性能を付加する手段を与える。
図1は、各種経鼻インフルエンザワクチン投与における鼻腔(a)、肺胞(b)、皮下注インフルエンザワクチン投与における鼻腔(c)、肺胞(d)におけるインフルエンザウイルス感染抑制効果。*はt検定によるワクチン単独(ADヴィークル又はアジュバントなし)投与群との間の有意水準(p<0.01)を示す。(実施例1)
図2は、経鼻投与(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチンによる鼻腔洗浄液の抗インフルエンザ抗体産生IgAとIgG量。白いバーはIgA量を、黒いバーはIgG量をそれぞれ示す。(実施例2)
図3は、経鼻(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチン投与による肺洗浄液における抗インフルエンザ特異抗体IgA及びIgG産生に対するアジュバントの影響を示す。(実施例3)
図4は、経鼻(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチン投与による血中抗インフルエンザ特異抗体産生に対するPSF−2,CTBの影響を示す。(実施例4)
図5は、経鼻インフルエンザワクチン投与による鼻腔(a)、肺胞(b)粘膜におけるTGF−β1分泌レベルに対するPSF−2,CTBの影響を示す。(実施例6)
図6は、経鼻投与インフルエンザワクチンによる鼻腔(a)、肺胞(b)及び血液中(c)の抗インフルエンザ特異抗体産生に対するPSF−2、CTBの影響を示す。(実施例7)。
図7は、経鼻インフルエンザワクチン投与による鼻、肺および脾臓のリンパ球から分泌される各種サイトカインに対するSPF−2、CTBの影響を示す。(実施例8)。
図8は、経鼻投与インフルエンザワクチンによる鼻腔(a)、肺胞(b)及び血液中(c)の抗インフルエンザ特異抗体産生に対するPSF−3の影響を示す。(実施例9)。
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。
1.用語及び抗原薬物ヴィークル構成成分の説明
(1) 抗原薬物ヴィークル
該ヴィークル(Antigen and Drug Vehicle、以下、「ADヴィークル」又は「ADV」と略記する)は、抗原や薬物等の経粘膜投与及び経皮投与が可能になるよう設計(デザイン)された、脂質とタンパク質との複合体(コンプレックス)である。ADヴィークルは、次の(a)〜(c)からなる。
(a) 肺サーファクタントプロテインB又はその断片(タンパク質分解酵素により得られる天然断片だけではなく、遺伝工学やペプチド合成により得られる人工断片、かかる断片を構成するアミノ酸の1個以上が置換及び/又は欠失した変異断片等々をも含む)。
(b) 肺サーファクタントプロテインC又はその断片(タンパク質分解酵素により得られる天然断片だけではなく、遺伝工学やペプチド合成により得られる人工断片、かかる断片を構成するアミノ酸の1個以上が置換及び/又は欠失した変異断片等々をも含む)。
(c) リン脂質や脂肪酸等の脂質。その形状構造は、表面に棘状あるいはスパイク状のポリペプチド鎖を保有の膜状(シート状又はローリング状の脂質膜)であり、複数のポリペプチド鎖の疎水領域末端を、脂質膜に嵌入させスパイク状に植鎖したかたちになっており、従来の脂質小胞(リポソーム)とは異なる。
この発明に係る抗原薬物ヴィークルに所望の抗原や薬物等を共存、接触、捕捉、吸着又は結合させれば(乗せれば)、かかる抗原や薬物等の経粘膜投与及び経皮投与が可能になる。換言すれば、該ヴィークルは、抗原や薬物等の経粘膜投与及び経皮投与を可能にする、これ等の乗り物である。
尚、ADヴィークルの構成成分、該ヴィーイグルの調製・製造に用いるタンパク質、ポリペプチドあるいはペプチドと脂質、即ち、肺サーファクタントプロテインBおよびC、これ等の断片、かかる断片ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸が置換及び/又は欠失した変異断片等々、及びリン脂質、脂肪酸等の脂質の詳細については、後述される。
(2) 肺サーファクタント
肺サーファクタントは、呼吸窮迫症候群(RDS:Respiratory Distress Syndrome)の治療に1990年代中頃から実用化され、既に現在、ヒト、ウシ、ブタ等に由来の、多様な製剤が広く市販され常用化されている(非特許文献2)。また、RDS治療に係る活性ドメインを含む合成ペプチド製剤も市販され、更に、SP−BやSP−Cアナログのデザイン開発や合成も進められている(非特許文献3)。肺サーファクタントの組成と構成は通りである:約90%の脂質(ホスファチシセルコリン67.3%、ホスファチジルグリセロール19.3%、ホスファチジルセリン3.2%、その他の遊離脂肪酸等)と、約10%の蛋白質(サーファクタントプロテインA、B、C及びD;以下「SP−A」、「SP−B」、「SP−C」及び「SP−D」とそれぞれ略記する)からなる複合体である。分子量はSP−Aが28−36kDa、Bが15kDa、Cが3.5kDa、及びDが43kDaである。SP−AとDは親水性(水溶性)かつレクチン様(膜アソシエィテッド)である。SP−BとCは、疎水性(脂溶性)かつ脂質結合性で、リン脂質膜への嵌入能及び界面活性作用を有する。ヒト、ウシ、ブタ等に由来の肺サーファクタントプロテイン遺伝子は公知であり、例えば、GenBank/NCBI(http//www.ncbi.nlm.nih.gov./)におけるヒトSP−B遺伝子DNAの完全長塩基配列のアクセッション番号はJ02761、ヒトSP−C(及びSP−C1)のそれは、J03890である。以下、このNCBIより得たヒトSP−B及びCのコーディング領域(CDR)とそれがコードするアミノ酸配列を記載する。
配列番号1:ヒトSP−B遺伝子DNAのCDR塩基配列;
配列番号2:配列番号1から解読されたヒトSP−B完全長アミノ酸配列;
配列番号3:ヒトSP−C遺伝子DNAのCDR塩基配列;
配列番号4:配列番号3から解読されたヒトSP−C完全長アミノ酸配列;
配列番号5:ヒトSP−C遺伝子DNA上に占めるSP−C1のCDR塩基配列;及び
配列番号6:配列番号5から解読されたヒトSP−C1完全長アミノ酸配列。
(3) この発明で用いるタンパク質あるいはペプチド
この発明に係る抗原薬物ヴィークルの調製・製造には、ヒト、ウシ、ブタ、クジラ、イルカ等の哺乳類に由来、更に、マグロ、サメ、エイ、ブリ等の魚類に由来のSP−BとSP−Cとの組合せ、及びSP−BとSP−C1との組合せをそれぞれ用いることができる。例えば、上記の配列番号2、4及び6にそれぞれ記載の完全長アミノ酸配列からなるヒト由来タンパク質、SP−BとSP−Cとの組合せ、及びSP−BとSP−C1との組合せを、それぞれ用いることができる。更に、例えばKyte−Doolittleの疎水性値に基づくSP−B及びSP−Cの疎水性(脂溶性)領域及び該領域を含む断片、かかる断片ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸が置換及び/又は欠失した変異断片等々をも用いることができる。例えば、以下に示す配列番号7〜20に記載のアミノ酸配列からなる天然ペプチドあるいは遺伝子工学や化学合成により得られるペプチド、これ等のペプチドを含むこれより長鎖のペプチド、及びかかるペプチドの少なくとも1個のアミノ酸が置換及び/又は欠失した変異体や合成アナログ等々を使用できる。尚、アミノ酸番号は、各配列のN末端を占めるMetを第1番アミノ酸とし、これよりC末端方向(記載配列の左から右方向)に順に付された序数で表示されている。
配列番号7:配列番号2の第214〜225番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号8:配列番号2の第257〜266番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号9:配列番号4及び6の第29〜58番のアミノ酸配列(SP−C断片);
配列番号10:配列番号2の第1〜20番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号11:配列番号2の第102〜110番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号12:配列番号2の第119〜127番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号13:配列番号2の第136〜142番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号14:配列番号2の第171〜185番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号15:配列番号2の第201〜279番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号16:配列番号2の第253〜278番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号17:配列番号2の第300〜307番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号18:配列番号2の第317〜330番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号19:配列番号2の第344〜351番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号20:配列番号2の第358〜381番のアミノ酸配列(SP−B断片);
配列番号21:配列番号4及び6の第24〜58番のアミノ酸配列(SP−C断片)。
尚、この発明によれば、配列番号2、7、8、10〜20に記載のアミノ酸配列からなるSP−Bとその断片群から選ばれる少なくとも1種と、配列番号4、6、9及び21に記載のアミノ酸配列からなるとSP−C(及びSP−C1)とその断片群から選ばれる少なくとも1種とを組合せて用いることができる。
(4) 本発明で用いる脂質
リン脂質としては、肺サーファクタントが含有するリン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン等の使用が望ましい。その他、ジパルミトイルグリセロホスホコリン、ジアシルグリセロホスホグリセロール、ホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン等を用いることができる。また、脂肪酸としては、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸等を用いることができる。更に、肺の膨張が活発なクジラ、マグロ、イルカ等の水棲動物に由来の脂質を用いることができる。
(5) RDS治療用の市販の肺サーファクタント製剤
この発明によれば、RDS治療剤としての安全性と有効性が関係当局により認可され、かつ、疎水性あるいは脂溶性のSP−B及びSP−C並びにリン脂質を含有する市販の肺サーファクタント、例えば、商品名サーファクテン(Surfacten)Infasurf、Curosurf、Humansurf、Exosurf、Alveofact等をADヴィークルとして用いることができる。尚、SP−BとSP−C以外に、親水性あるいは水溶性のSP−A及びSP−Dを含有する市販製剤では、例えば1−ブタノールでこれ等の水溶性タンパク質SP−AとSP−Dとを抽出し、これ等を検出限界以下にまで除去した後、使用に供する。また、ADヴィークルの調製における使用濃度の調整を考慮すると、液状製剤に比べ、乾燥製剤の使用が望ましい。
2.本発明の基礎となる新規な知見
この発明は、前述した背景技術の激しく厳しい渦中にあって、10余年にも及ぶ試行錯誤を重ねた筆頭発明者の卓抜した観察力と解析力、そして深い学識経験と斬新な着想によるものであり、次の驚くべき発見に基づく。
(1) 従来のアジュバントが炎症を惹起して抗原提示能を増強するのに対し、本来、肺や消化管粘膜が分泌の界面活性物質である肺サーファクタントの4種のタンパク質有効成分、SP−A、B、C及びDから、AとDとを除去したSP−B及びSP−Cの組合せとリン脂質との複合体、あるいはこれ等の脂溶性領域(有効領域)を含むSP−BとSP−C両断片の合成ペプチドの組合せと脂質膜との複合体(前述したADヴィークル)に、ウイルス抗原を共存又は接触又は捕捉又は吸着させると、炎症を惹起することなく鼻腔粘膜の抗原提示細胞が活性化され、ウイルス抗原が該細胞内に効率よく取り込まれると共に、粘膜や血液中でのIgG産生の誘導を起こすことなく、粘膜の抗ウイルスIgA産生が効果的かつ優先的に、就中、選択的に誘導されることを発見した。
(2) 更に、従来から安全な不活化ワクチン抗原として使用されているインフルエンザウイルス・スプリット抗原に、SP−BとSP−Cの組合せとリン脂質との複合体、あるいはこれ等の脂溶性領域(有効領域)を含むSP−BとSP−C両断片の合成ペプチドの組合せと脂質膜との複合体(ADヴィークル)を添加混合することにより、スプリット抗原の高い安全性を保持しながら、しかもスプリット抗原単独では生ワクチンに比べて劣る抗原提示細胞の活性化が十分に増強され補われた状態で、分泌型IgA産生の選択的誘導が実現されることを発見した。
3.上記の発見に至る経緯
(1) 筆頭発明者は、インフルエンザ発症機序と治療、予防法を解明するべく鋭意研究を重ねてきた。その過程で、インフルエンザウイルス膜蛋白質のヘマグルチニン(HA)を限定分解してウイルスの膜融合活性と感染能を発現させる気道のHAプロセシングプロテアーゼのトリプターゼクララを肺サーファクタントが吸着して不活性化し、結果としてウイルスの増殖サイクルを阻止することを解明した。
(2) 引き続く研究の結果、肺サーファクタントには上記の作用以外に、選択的に粘膜の抗原提示細胞を活性化してウイルス抗原に対する免疫能を活性化して、分泌型IgAの誘導を引き起こすがIgGの誘導は起こさないことを見いだした。さらに肺サーファクタント中の粘膜免疫増強有効成分として、SP−B、SP−Cが脂質成分と共に重要であることを明らかにし、これら蛋白成分の有効領域の特定と、粘膜免疫増強の有効性を検証した。
(3) 更に、上述したように気道粘膜の生体防御物質とウイルス感染防御の観点から研究を進め、体内に分泌されている肺サーファクタントが生体内由来の粘膜免疫アジュバントとして選択的IgA産生の誘導に関与していることを証明した。
(4) 上記の肺サーファクタントが本来生体内の生理的作用物質で、(a)特定の生体物質を吸着する性質のあること(Kido H.,et al.FEBS Lett.Pulmonary surfactant is a potentialendogenous inhibitor of proteolytic activation of Sendai virus and influenza Avirus,322(29),115−119,1992)、(b)肺胞II型細胞やクララ細胞から分泌された後、選択的にマクロファージーに取り込まれて代謝されること(諏訪部彰、J.Jpn.Med.Soc.Biol.Interface;肺胞蛋白症におけるサーファクタント代謝異常、33,10−13,2002)、更に(c)その類縁細胞、例えば抗原提示細胞(樹状細胞)に取り込まれて代謝されることに注目し研究を重ねた。
その結果、肺サーファクタントの蛋白成分の中で、SP−B、SP−C及び脂質成分だけで、選択的にIgA産生を誘導する粘膜ワクチンの「ADヴィークル」として機能すること、更に、SP−Bの有効成分領域あるいは粘膜免疫誘導活性ドメインが次のアミノ酸配列からなるペプチドであることを明らかにした:
SP−B 214−225:Leu Ile Lys Arg Ile Gln Ala Met Ile Pro Lys Gly(配列番号7);及び
SP−B 257−266:Leu Leu Asp Thr Leu Leu Gly Arg Met Leu(配列番号8)。
併せて、SP−Cの有効成分領域あるいは粘膜免疫誘導活性ドメインが次のアミノ酸配列からなるペプチドであることを明らかにした:
SP−C 29−58:Cys Pro Val His Leu Lys Arg Leu Leu Ile Val Val Val Val Val Val Leu Ile Val Val Val Ile Val Gly Ala Leu Leu Met Gly Leu(配列番号9)。
(5) 更に、選択的IgA誘導の機序として、肺サーファクタントの有効成分は、抗原提示樹上細胞のMHC Class II、CD40、B7−2の発現増加を誘導してT−リンパ球への抗原提示を効果的に実行する以外に、粘膜局所のサイトカインTGF−β1を誘導してIgA産生B−リンパ球へのクラススイッチを促進していることを明らかにした。
4.以上の発見とその経緯に基づき完成された本発明の目的は次の通りである
(1) 第1の目的は、粘膜免疫方法の確立である。「ADヴィークル」の提供とその活用により、粘膜免疫の有効物質である抗原特異的IgA産生の選択的誘導を実現すると共に、安全かつ有効な(副作用のない)粘膜免疫の誘導とその方法を確立する。
(2) 第2の目的は、合成ペプチドの使用による、ADヴィークルの安全性・有効性・均質性に係る品質の向上にある。SP−Bの粘膜免疫誘導活性ドメイン(前述SP−B 214−225及びSP−B 257−266の各アミノ酸配列からなる)の合成ペプチド、及びSP−Cの粘膜免疫活性導活性ドメイン(前記SP−C 29−58のアミノ酸配列からなる)の合成ペプチド、これ等の合成アナログ、更に、これ等のアミノ酸配列を部分として含む長鎖の合成ペプチド等々と、肺サーファクタント脂質成分との間で調製される複合体(ADヴィークル)を提供し、ADヴィークルの品質を向上させる。
(3) 第3の目的は、従来ワクチンの皮下接種から経粘膜投与への転換にある。ADヴィークルを、気道感染ウイルスの不活化ワクチン、例えばインフルエンザ、SARS、麻疹、風疹、ムンプス等の不活化ワクチン、更に、腸管感染ウイルスの不活化ワクチン、例えばロタ、ポリオ等の不活化ワクチンに利用し、これ等の皮下接種ワクチンを粘膜ワクチンに変換する。
(4) 第4の目的は、気道、腸管以外の粘膜経由ウイルス感染に対する不活化ワクチン、例えばエイズ、B型肝炎、C型肝炎等の不活化ワクチンにおいて、ADヴィークルの利用可能な方法を提供することである。
(5) 第5の目的は、DNAワクチン、生ワクチン、アレルギーの予防や治療等についても、ADヴィークルの利用可能な方法を提供することである。
(6) 第6の目的は、粘膜以外のIgAを誘導可能な免疫ルートとして、経皮接種(塗布や貼付等)において、ADヴィークルの利用可能な方法を提供することにある。
(7) 第7の目的は、DDSや製薬のみならず、農業、漁業等々へのADヴィークルの用途と応用の道を開くことにある。
尚、本発明が提案するADヴィークルは、従来免疫学で使用されているアジュバントとは、次の通り性能と作用を異にする。すなわち、従来アジュバントは、通常、皮下あるいは筋肉内接種され、局所の炎症反応を引き起こし、抗原提示細胞やB−、T−リンパ球を引き寄せ、その能力を発揮する異物を有効成分としている。更に、長時間にわたる炎症反応を維持するため、抗原の徐放や貯留を惹起する鉱油や金属塩が併用されている。また、従来の粘膜ワクチン・アジュバントとして知られているものは、前述した通り、大腸菌易熱生毒素やコレラ毒素等の異物であり、為害作用や副作用の生じる危険性がある。これに対し、本発明に係るADヴィークルは、局所の炎症反応を引き起こさない。更に、生体成分由来である上に、肺サーファクタントの中の活性成分あるいはその活性ドメインが限定されていると共に、かかるドメインや該ドメイン領域を含む低分子ペプチドを使い、効果的な粘膜ワクチンを実現している。従って、極めて安全であり、かつ非侵襲的である。
5.この発明によれば、次(1)〜(5)が、それぞれ提供される
(1) 肺サーファクタントプロテインB又は該プロテインBに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片、肺サーファクタントプロテインC又は該プロテインCに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片、及び少なくとも1種の脂質からなる複合体である抗原薬物ヴィークル。
更に詳しくは、ADヴィークルは、次のI群(肺サーファクタントプロテインB及び該プロテインBに由来あるいは起因する天然及び合成ポリペプチド群)II群(肺サーファクタントプロテインC及び該プロテインCに由来あるいは起因する天然及び合成ポリペプチド群)及びIII群(リン脂質、脂肪酸等の脂質群)の各群から少なくとも1種ずつ選ばれる、合計、少なくとも3種の物質からなる複合体である。
[I群]肺サーファクタントプロテインB、及び配列番号2に記載の次のアミノ酸配列からなるポリペプチド(アミノ酸番号は、N末端のMetを第1番アミノ酸とし、これよりC末端方向に順次付されている):第1−381番(配列番号2)、第214−225番(配列番号7)、第257−266番(配列番号8)、第1−20番(配列番号10)、第102−110番(配列番号11)、第119−127番(配列番号12)、第136−142番(配列番号13)、第171−185番(配列番号14)、第201−279番(配列番号15)、第253−278番(配列番号16)、第300−307番(配列番号17)、第317−330番(配列番号18)、第344−351番(配列番号19)、第358−381番(配列番号20)、上記のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列を活性ドメインとして保有するポリペプチド、上記の各アミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が置換及び/又は欠失したポリペプチド、これ等の合成アナログ、これ等の糖又は糖鎖による修飾体等々。
[II群]肺サーファクタントプロテインC、及び配列番号4に記載の次のアミノ酸配列からなるポリペプチド(アミノ酸番号は、N末端のMetを第1番アミノ酸とし、これよりC末端方向に順次付されている):第1−197番(配列番号4)、第29−58番(配列番号9)、第24−58番(配列番号21)、配列番号6の第1−191番のアミノ酸配列からなるポリペプチド、上記のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列を活性ドメインとして保有するポリペプチド、上記の各アミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が置換及び/又は欠失したポリペプチド、これ等の合成アナログ、これ等の糖又は糖鎖による修飾体等々。
[III群]ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ジパルミトイルグリセロホスホコリン、ジアシルグリセロホスホグセロール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸等のリン脂質、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸等々の脂質。
またこの抗原薬物ヴィークルは、前記III群がシート状又はロール状の脂質膜であり、前記I群及びII群のそれぞれ複数鎖が、疎水領域末端を該脂質膜に嵌入した状態でスパイク状に植鎖されていることを、その構成及び形状の一つの好ましい態様としている。
(2) 上記(1)の抗原薬物ヴィークルに抗原を共存、接触、捕捉、又は吸着させることにより得られ、粘膜免疫を誘導することを特徴とする粘膜ワクチン。
(3) 上記(1)の抗原薬物ヴィークルにアレルゲンを共存、接触、捕捉、又は吸着させることにより得られ、粘膜免疫を誘導することを特徴とするアレルギーの予防及び治療剤。その作用効果は、例えば、飛来吸引されたスギ花粉、ダニ等のアレルゲンの鼻腔あるいは鼻咽頭粘膜IgAによる失活あるいは減感作にある。
(4) 上記(1)の抗原薬物ヴィークルに薬効を奏する量の薬物を共存、接触、捕捉又は吸着させることにより得られる経粘膜及び/又は経皮DDS。
(5) 上記(1)の抗原薬物ヴィークルに抗原を共存、接触、捕捉又は吸着させることによって得られる粘膜ワクチンを鼻または上気道に投与することを特徴とする粘膜免疫の誘導方法。
なお、上記の発明(2)、(3)および(5)においては、粘膜免疫の誘導が、粘膜局所におけるIgA抗体の産生促進によって、さらには粘膜局所におけるTGF−β1およびTh2タイプサイトカインの産生促進によって特徴付けられることを好ましい態様としている。
6.以下、この発明の実施態様につき説明する。
(1) ADヴィークルの組成
前述したI群(肺サーファクタントプロテインB及び該プロテインBに由来あるいは起因する天然及び合成ポリペプチド群)、II群(肺サーファクタントプロテインC及び該プロテインCに由来あるいは起因する天然及び合成ポリペプチド群)及びIII群(リン脂質、脂肪酸等の脂質群)の3群の乾燥重量%は、次の通りである:I群は約0.1〜約6.0重量%、II群は約0.1〜約6.0重量%、及びIII群は約88〜約99.8重量%である。抗原薬物ヴィークルの調製では、重量%においてI群%+II群+III群%=100%になるよう調整する。
(2) ADヴィークルの調製
以下に調製手順を例示する。例えば、I群を2mg、II群を2mg、及びIII群を96mgそれぞれ秤取し(重量%にてI群%+II群+III群%=100%)、これ等を5mlの等張液、例えば生理的食塩水やリン酸緩衝液(PBS)中に均一に懸濁させる。得られた懸濁液は、抗原薬物ヴィークル(100mg/5ml)液として使用に供する。該ヴィークルは、使用時にその都度、調製する。尚、懸濁には、超音波、ホモジナイザー、ミキサー、振盪器等を用いることができる。超音波は過剰処理による液の変性(粘性の増加)をもたらし易いので、ミキサー、例えばボックスミキサー(例えば商品名Vortex mixer)の使用が望ましい。
尚、III群の脂質96mgの内訳については、例えば、ホスファチジルコリン71mg、ホスファチジルグリセロール21mg、及びホスファチジルセリン4mgの混合等を採用することができる(脂質量の合計は96mg)。また、SP−AとDが除去され、SP−BとCの含有が確実な市販のRDS治療用の肺サーファクタント製剤を用いる場合には、その使用書に従って調製した懸濁液をそのまま、抗原薬物ヴィークル液として使用に供することができる。
(3) 粘膜ワクチンの調製
ワクチン中の抗原量(A)に対する抗原薬物ヴィークル量(V)の乾燥重量比A/Vが約0.2〜約5になるよう、ワクチン原液に抗原薬物ヴィークル液を添加混合し調製する。例えば、抗原含有量が1μg/mlのワクチン原液1,000mlに対し、重量比A/V=1を採用すると、上記(2)で調製した抗原薬物ヴィークル(100mg/5ml)液の添加混合量は50μlである。尚、均一に混合するには、ホモジナイザー、ミキサー、振盪器、攪拌器等を用いることができる。
(4) 経粘膜・経皮DDSの調製
上記(3)と同様にして、抗原の代わりに薬物を用いることにより、調製できる。
以下、実施例を示し、この発明の構成と効果につき、具体的に説明する。但し、この発明は、これ等の具体例、説明及び記載にのみ限定されるわけではない。
なお、この実施例で使用した材料、試験手続等は以下のとおりである。
(1) 肺サーファクタント
「抗原薬物ヴィークル(ADヴィークル)」して用いた肺サーファクタントは、牛の肺よりHowgoodらの方法(Howgood S,et al.,:Effects of a surfactant−associated protein and calcium ions on the structure and surface activity of lung surfactant lipids.Biochemistry 24,184−190,1985)で調整した標品(PSF−1)か、あるいは多くはこの標品を1−ブタノールで抽出して水溶性蛋白成分SP−A、SP−Dを除去、あるいは検出限界以下にまで減じた標品(Haagsman HP,et al.,:The major lung surfactant protein,SP28−36,isa calcium−dependent,carbohydrate binding protein,J.Biol.Chem.262,13977−13880,1987)(PSF−2)、さらに主にホスファチジルコリンやジパルミトイルホスファチジルコリンからなるリン脂質を全体として40重量%以上含有し、さらに肺サーファクタント脂質に類似してホスファチジルグリセロールを10−20%、ホスファチジルセリンが2〜5%含有され、脂溶性蛋白質のSP−B、SP−Cの有効領域の合成ペプチドのどちらか、あるいは両方のペプチドを合わせて、0〜3.5%含む標品が用いられる。この標品の中でSP−B、SP−Cの有効領域の両方のペプチドを合わせ持つ標品(PSF−3)、SP−Bの有効領域の合成ペプチドを有する標品(PSF−4)、SP−Cの有効領域の合成ペプチドを有する標品(PSF−5)についても検討した。あるいはPSF−1、PSF−2に相当する公知の標品、例えば商品名サーファクテン、インサァーフ(Infasurf)、キューロサーフ(Curosurf)、ヒューマンサーフ(Humansurf)、エキソサーフ(Exosurf)、アルビオファクト(Alveofact)なども用いられる。
(2) 動物
6週齢、メスBALB/cマウスおよび、10週齢Hartleyモルモットを日本エスエルシー株式会社(日本・静岡)から購入して用いた。全ての動物実験は徳島大学医学部実験動物センターの感染動物舎(P2レベル)で行われ、徳島大学医学部動物実験委員会のガイドラインに従って行われた。
(3) スプリット型インフルエンザワクチンの作製
インフルエンザウイルスA Aichi/68/2/H3N2株を接種した発育鶏卵由来浮遊液(1×10Plaque forming unit(PFU))(川崎医科大学・微生物学教室 大内正信教授より供与された)を用いて以下の操作でスプリット型インフルエンザワクチンの作成を行った。0.004M PBS(タカラバイオ株式会社 日本・東京・滋賀)で一晩透析されたウイルス浮遊液にβプロピオラクトン(和光純薬株式会社 日本・大阪)を液量の0.05%、最終濃度8nMになるように添加し、氷浴中で18時間インキュベートした。その後、37℃で1.5時間インキュベートすることで、βプロピオラクトンの加水分解を行った。その後、終濃度0.1%となるようにTween20(和光純薬株式会社)を加え、さらにTweenと等量のジエチルエーテル(和光純薬株式会社)を加え、4℃で2時間転倒混和した。この液を2000rpm、5分間遠心分離することにより水層を回収した。さらにAutomatic Environmental SpeedVac System(SAVANT INSTRUMENTS,INC.アメリカ・ニューヨーク)を用いて水層よりジエチルエーテルの除去を行った。これをMillex 0.45μmフィルター(MILLIPORE アメリカ・マサチューセッツ)で濾過し、不活化スプリット型インフルエンザワクチンとして用いた。
(4) 免疫法
上記の製造法で作製したスプリット型インフルエンザワクチンに「ADヴィークル」として上記の肺サーファクタント(PSF−1)、1−ブタノール抽出肺サーファクタント(PSF−2)、SP−B,SP−Cの有効領域の合成ペプチドと肺サーファクタント脂質(PSF−3、4、5)、公知の肺サーファクタント商品、あるいは免疫アジュバントとしてコレラトキシンBサブユニット(CTB、SIGMA アメリカ・ミズーリ)を混合して用いた。肺サーファクタントあるいは上記の相当標品を、ワクチン投与に必要な濃度で用時PBSに懸濁し、室温、5分間の超音波処理により均一な懸濁液とした。これに肺サーファクタントあるいは上記の相当標品の乾燥重量で0.1μgに対してスプリット型インフルエンザワクチンを0.1μg加え、ボルテックスミキサーで混合したのち、室温で1時間静置して使用した。CTBも同様に用時に調整し、スプリット型インフルエンザワクチン0.1μgに対して0.1μgになるように混合した(Watanabe I,et al.,:Characterization of protective immune responses induced by nasal influenza vaccine containing mutant cholera toxin as a safe Adjuvant(CT112K).Vaccine 2002;20:3443−55)。
ワクチンの経鼻投与においては、上記の調整品を乾燥重量相当量として0.1μg/1μl Phosphate buffered saline(PBS)溶液になるようにPBSで希釈し、これを1匹当たり片側1μlづつを両側に投与して、合計2μlをエーテルで麻酔したマウスの両側鼻腔に点鼻投与した。比較のために行った従来型皮下注射においては、スプリット型インフルエンザワクチンを0.1μg/50μl溶液になるようにPBSで希釈し、これをマウス頸部皮下に投与した。対照群にはワクチン液と同量のPBSを投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行い、2次免疫後2週間目のマウスの、鼻腔・肺胞洗浄液および血清を調製して、ウイルス特異的なIgA、IgGの測定とウイルス感染実験に用いた。
(5) マウス鼻腔・肺胞洗浄液および血清の調製
ワクチン投与マウスをペントバルビタール麻酔下で開腹開胸し、気管を切開しアトム静脈カテーテル節付3Fr(アトムメディカル株式会社 日本・東京)を肺へ挿入後、生理食塩水1mlを注入し、この液を回収した。これを3回繰り返して採取した液、計3mlを肺胞洗浄液として用いた。肺洗浄液採取後、切開した気管から鼻腔方向へアトム静脈カテーテルを挿入し、1mlの生理食塩水を注入し、鼻から出てきた液を採取した。この液を鼻洗浄液として用いた。さらに、心臓より採血を行い、5,000rpm、10分間の遠心分離により血清を調製した。
(6) タンパク定量
鼻洗浄液、肺洗浄液、および血清のタンパク含有量をBCA Protein Assay Reagent Kit(PIERCE アメリカ・イリノイ)を用いて測定した(Smith PK.et al.,:Measurement of protein using bicinchoninic acid.Anal.Biochem.,150,76−85,1985)。562nmの吸光度はSPECTRAmax PLUS 384(Molecular Devices Corporation アメリカ・カリフォルニア)を用いて測定した。
(7) ウイルス感染実験および感染価の評価
スプリット型インフルエンザワクチンの調製に用いたウイルス株と同じインフルエンザウイルス株、A Aichi/68/2/H3N2株を感染に用いた。2次免疫終了後2週間目のマウスをエーテルで麻酔した後、インフルエンザウイルス発育鶏卵由来浮遊液を、両側鼻腔に合計7×10PFU/3μlを滴下して感染させた。感染3日後に鼻腔、肺胞洗浄液を上記の要領で調製し、ウイルス感染価の評価に用いた。ウイルス感染価の評価をA549細胞(川崎医科大学・微生物学教室 大内正信教授より供与された)を用いて行った。A549細胞は、5%牛胎児血清/DMEM(Gibco アメリカ・ニューヨーク)の条件下で培養を行った。A549細胞を6ウェル培養プレート(グレイナー ドイツ・シュトゥットガルト社)に100%コンフルエントになるように継代し、24時間後に無血清培地に交換した。各ウェルにインフルエンザ感染マウスの鼻腔・肺胞洗浄液を500μlずつ滴下し、COインキュベーターにて12時間から16時間37℃で培養を行った。これにモルモットより採血した赤血球1% PBS液を加え、5分間室温下で静置した。これを1mM Ca2+/Mg2+PBSを用いて洗浄し、赤血球を凝集させた細胞をウイルス感染細胞としてカウントし、ウイルス感染価の評価を行った(Tashiro M.,HommaM.:Pneumotropism of Sendai virus in relation to protease−mediated activation in mouse lungs.Infect.Immun.39,879−888,1983)。
(8) 抗インフルエンザ特異的IgAおよびIgGの精製
ELISA assayにおける定量の基準として用いるために、特異的抗インフルエンザIgAおよびIgGの精製を以下のようにして行った。組換え大腸菌発現ProteinGセファロース4Bカラム(ZYMED LABORTORIES INC,アメリカ・サンフランシスコ)を用いたアフィニィティークロマトグラフィーにより、インフルエンザワクチン投与およびウイルス感染マウスの肺洗浄液からIgG画分を精製した。抗マウスIgAヤギIgG(SIGMA)をBrCN活性化セファロース4Bカラム(Amersham Bioscience アメリカ・ニュージャージー)に結合し、ProteinGの素通り画分からこれを用いたアフィニィティークロマトグラフィーによりIgA画分を精製した。これらのIgG、IgA画分からウイルス特異的抗体を精製するため、免疫に用いた不活化スプリット型インフルエンザワクチンをBrCN活性化セファロースカラムに結合し、IgA、IgG画分からこれを用いた抗原アフィニィティークロマトグラフィーによりそれぞれ抗インフルエンザ特異的IgAおよびIgGを精製した。リガンドとしてのスプリット型インフルエンザ蛋白質のカラムへのカップリングは、0.1M NaHCO/0.5M NaCl緩衝液(pH8.5)を用いて結合反応を行い、フリーのリガンドを0.1M 酢酸/0.5M NaCl緩衝液(pH8.5)を用いて除去後、PBS(pH7.5)により中和を行った。各アフィニティクロマトグラフィーはPBS(pH7.5)によりアフィニティ結合反応およびフリーの抗体の除去を行った後、glycine−HCl緩衝液(pH2.8)によって特異抗体の溶出を行った。溶出された画分は直ちに0.5M Tris−HCl緩衝液(pH9.0)により中和を行い、MilliQ水にて透析後凍結乾燥し、用時PBSに溶解して用いた。
(9) 抗インフルエンザ抗体の定量
鼻腔、肺胞洗浄液および血清中の抗インフルエンザIgA、IgG含有量を、ELISA assayにより定量した。ELISA assayはBETHYL LABORATORIES社(アメリカ・テキサス)のMouse ELISA quantitation kitの方法に従って行った。96ウェル Nunc イムノプレート(Nalgen Nunc International アメリカ・ニューヨーク)各ウェルにワクチン1μg、ウシ血清アルブミン(BSA,SIGMA アメリカ・ミズーリ)1μg/ml PBS溶液100μlを加え、4℃で一晩固層化反応を行った。その後洗浄液(50mM Tris,0.14M NaCl,0.05% Tween 20,pH8.0)で3回すすぎワクチン液を除去した。各ウェルに0.15M NaCl、1% BSAを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)200μlを加え、室温で1時間ブロッキング反応を行った。各ウェルを洗浄液で3回すすいだのち、サンプル結合緩衝液(50mM Tris,0.15M NaCl,1% BSA,0.05% Tween 20,pH8.0)にて適量に希釈した鼻洗浄液・肺洗浄液あるいは血清を100μl加え、室温で2時間反応させた。Goat anti−mouse IgAまたはIgG−horse rADish peroxidase(HRP)(BETHYL LABORATORIES INC.)を二次抗体として用い、TMB Microwell Peroxidase Substrate System(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.アメリカ・メリーランド)を用いて発色反応を行った。各ウェルに100μl、2M HSO(和光純薬株式会社)を添加することによって反応を停止し、450nmの吸光度をSPECTRAmax PLUS 384で測定した。定量のためのスタンダードとして、上記肺洗浄液から精製した抗インフルエンザIgAおよびIgG 10ngについて同様にして得られた吸光度を用いた。
(10) 樹状細胞の調製およびフローサイトメトリー
初回免疫後2日目の各群のマウス(1群4匹)より採取した鼻、肺、脾臓より、樹状細胞の調製をGonzalez−Juarrero Mの方法(Gonzalez−Juarrero M,Orme IM.:Characterization of murine lung dendritic cells infected with Mycobacterium tuberculosis.Infect Immun 2001;69:1127−33)によりの調製を行った。なお、鼻より樹状細胞の調製、およびそのコラゲナーゼ処理はAsanuma H等の方法(Asanuma H,et al.,:Characterization of mousenasal lymphocytes isolated by enzymatic extraction with collagenase.J Immunol Methods 1995;187:41−51)に従って行った。各組織から調製された樹状細胞を1mM EDTA/PBSにて洗浄し、10細胞当たりFITC conjugated Anti−IA/IE(MHC class II)およびPE conjugated Anti CD40あるいはFITC conjugated Anti−CD80(B7−1)およびPE conjugated Anti CD86(B7−2)(BDバイオサイエンス アメリカ・ニュージャージー)各1μg/mlを加え、50μl 1mM EDTA/PBS懸濁液として氷上で30分間反応させた。1mlの1mM EDTA/PBSで2回洗浄を行ってフリーの抗体を除き、1mlの1mM EDTA/PBSに再懸濁した。これを用いてBD FACS Callibur(BDバイオサイエンス)により細胞表面修飾因子の検出を行った。
(11) TGF−β1の定量
鼻腔、肺胞洗浄液中のTGF−β1の分泌量を、ELISA assayにより定量した。
ELISA assayはTGF−β1 ELISA kit(BIOSOURCE INTERNATIONAL アメリカ・カリフォルニア)を用いて、キットに添付された使用法に従って行った。
(12) 各種サイトカインの定量
鼻腔、肺胞洗浄液中、および脾臓のリンパ球からそれぞれ分泌されるサイトカイン(インターロイキン 4:IL−4、IL−5、IL−6、IL−13)の量を、それぞれの市販ELISAキットにより定量した。
(13) SP−BおよびSP−Cの合成ペプチドとリン脂質とからなるPSF−3の調製
SP−B 253−278(配列番号16)とSP−C 24−58(配列番号21)のそれぞれのペプチドを公知の方法により化学合成した。これらのペプチドを、リン脂質膜(ジパルミトイルホスファチジルコリン(75)、ホスファチジルグリセロール(25)、パルミチン酸(10))に加えて板状のリン脂質膜を作成し、ADヴィークルPSF−3を調製した。
実施例1
経鼻インフルエンザワクチンと皮下注射インフルエンザワクチンのウイルス増殖抑制作用の比較
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいは「ADヴィークル」として1−ブタノール抽出(SP−A、SP−D除去)サーファクタント(以下PSF−2)0.1μg、あるいはCTB 0.1μgとともに、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ投与を行った。皮下注射ワクチンとしては、経鼻ワクチンと同量のワクチン単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−2、又はアジュバントとしてCTBを加え、全体で50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。2次免疫2週間経過後に6.6×10PFUのインフルエンザウイルスを3μl PBS溶液として経鼻感染させた。感染3日後にマウスを屠殺し、鼻腔および肺胞洗浄液を調製しこれらを用いてウイルス感染価の評価を行った(n=15〜20;平均±SE;*,t検定による有意水準はワクチン投与群に対してp<0.01)。
図1(a)と(b)に示すように、経鼻インフルエンザワクチン投与の場合、鼻腔と肺洗浄液中のインフルエンザウイルスの増殖は、ワクチン単独投与によっても抑制されるが、PSF−2、CTBはその効果を有意に増強してほぼ完全にまでインフルエンザの増殖をおさえてワクチンの効果を確実にした。図には示していないが、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3を使用してもほほ程度の効果が得られている。PSF−4、−5についても同様な現象は確認されたが、効果は減弱している。
尚、図には示していないがPSF−2、CTBをそれぞれ単独に初回免疫時と2次免疫時に経鼻投与しても、ウイルス増殖の抑制効果は全く認められず、PSF−2、CTBの効果はワクチン作用の増強効果と判定された。
一方、皮下注射インフルエンザワクチンの場合、図1(c)と(d)に示す通り、鼻腔、肺洗浄液中のインフルエンザウイルスのタイター(PFU)はワクチン単独でも有意に減少して、ワクチンの効果は確認されたが、PSF−2、CTBのワクチン作用の増強効果は認められなかった。則ち皮下投与の場合には、PSF−2、CTBの免疫増強効果はほとんど認められないか、あっても極僅かと推定された。なお、この実験においては図には示していないが、PSF−2、CTBをそれぞれ単独に初回免疫時と2次免疫時に皮下投与しても、ウイルス増殖の抑制効果は全く認められなかった。図には示していないが、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3、PSF−4、PSF−5を使用してもワクチン作用の増強効果は認められなかった。
実施例2
経鼻(a)、皮下注射(b)によるインフルエンザワクチン投与後の鼻腔洗浄液中における抗インフルエンザ特異抗体(IgA、IgG)産生に対するPSF−2、CTBの影響
図1に記載した方法で、経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−2 0.1μg、あるいはアジュバントとしてCTB0.1μgと共に、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ合計2μl投与を行った。皮下ワクチンとしては、経鼻ワクチンと同量のワクチン、PSF−2、CTBを50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。2次免疫2週間経過後に6.6×10PFUのインフルエンザウイルスを3μl PBS溶液として経鼻感染させた。感染3日後にマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液を調製しこれらを用いてウイルス感染価の評価を行った(n=15〜20;平均±SE;*,t検定による有意水準はワクチン投与群に対してp<0.01)。
その結果を図2(a)と(b)に示す。経鼻投与したスプリット型インフルエンザワクチンによって、抗インフルエンザ特異IgAが選択的に鼻腔で産生されて洗浄液中に増加するが、この特異的IgA量をPSF−2、CTBは共に同程度、著明に増加させた。一方皮下注射した場合も、スプリット型インフルエンザワクチン単独による鼻腔洗浄液中の特異的IgA量の増加は認められたが、鼻腔投与に比べてその程度は低かった。またワクチンの皮下注射の場合、PSF−2、CTBの免疫増強効果はIgA、IgG産生において共に認められなかった。図には示していないが、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3を使用してもPSF−2と同程度の効果が得られている。PSF−4、−5についても同様な現象は確認されたが、その効果は減弱している。
実施例3
経鼻投与(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチンによる肺洗浄液中の抗インフルエンザ特異抗体(IgA、IgG)産生に対するPSF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−2 0.1μg、あるいはアジュバントとしてCTB0.1μgと共に、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ合計2μl投与を行った。皮下ワクチンとしては、経鼻ワクチンと同量のワクチン、PSF−2、CTBを50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。2次免疫2週間経過後に6.6×10 PFUのインフルエンザウイルスを3μl PBS溶液として経鼻感染させた。感染3日後にマウスを屠殺し、肺胞洗浄液を調製しこれらを用いて抗インフルエンザ特異抗体IgA、IgG産生に対する抗原薬物ヴィークルの影響を検討した。(n=15〜20; 平均±SE;*,t検定による有意水準はワクチン投与群に対してp<0.01)。
図3(a)と(b)に示すようにワクチンの鼻腔投与の場合と同様、肺洗浄液中に産生される抗インフルエンザ特異抗体に対するPSF−2、CTBの産生促進効果は著明で、両者の間に大きな差はなかった。この免疫増強効果はIgAに特異的で、IgGに対して効果は認められなかった。皮下注射の場合、肺洗浄中のIgAの増加が認められたが、PSF−2、CTBの免疫増強効果は、鼻腔洗浄液中の場合と同様に認められなかった。なお、図には示していないがPSF−2、CTBをそれぞれ単独に初回免疫時と2次免疫時に経鼻投与、皮下投与しても、肺洗浄中のウイルス特異的IgA、IgGの増加は認められず、PSF−2、CTBの効果はワクチン作用の増強効果と判定された。図には示していないが、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3を使用してもほほ程度の効果が得られている。PSF−4、−5についても同様な現象は確認されたが、その効果は減弱している。
実施例4
経鼻投与(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチンによる血液中の抗インフルエンザ特異抗体(IgA、IgG)産生に対するPSF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−2 0.1μg、あるいはアジュバントとしてCTB0.1μgと共に、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ合計2μl投与を行った。皮下注射ワクチンとしては、経鼻ワクチンと同量のワクチン、PSF−2、CTBを50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。2次免疫2週間後にマウスを屠殺し、心臓採血を行い、これより血清を調製しこれらを用いて抗インフルエンザ抗体発現量の定量を行った(n=15〜20,平均±SE)。
図4(a)と(b)に示すように、血液中抗インフルエンザ抗体IgA(白いバー)、IgG(黒いバー)の産生量は、経鼻ワクチン投与の場合、軽度のIgA、IgGの増加が認められるものの、PSF−2、CTBによるIgA、IgGの増加はなく、免疫増強効果は認められなかった。一方、皮下注射の場合、スプリット型インフルエンザワクチン投与による著しいIgGの増加と、IgAの明らかな増加が認められたが、ここでもPSF−2、CTBによる抗体産生量の増加はなく、免疫増強効果は認められなかった。特に皮下注射の場合、IgGが特異的に血液中で増加していた。PSF−2の代わりにPSF−1を使用してもほほ同様の結果が得られている(図には示していない)。
なお、PSF−2、CTBをそれぞれ単独に初回免疫時と2次免疫時に経鼻投与、皮下投与しても血液中のウイルス特異的IgA、IgGの増加は認められず、PSF−2、CTBの効果はワクチン作用の増強効果と判定された(図には示していない)。
実施例5
経鼻投与(a)、皮下注射(b)インフルエンザワクチンによる鼻、肺、脾臓の樹状細胞の抗原提示能に対するPSF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいはPSF−2 0.1μg、CTB 0.1μgと共に、1μl PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に合計2μl投与を行った。皮下ワクチンとして経鼻ワクチンと同量のスプリット型インフルエンザワクチン、PSF−2、CTBを50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。2日後にマウスを屠殺し鼻、肺、脾臓より樹状細胞を調製し、フローサイトメトリーによりMHC class II、CD40、B7−1(CD80)、B7−2(CD80)の細胞表面発現レベルを測定した。
その結果、CTBによってワクチンをチャレンジした鼻の樹状細胞(抗原提示細胞)の膜表面の抗原提示関連分子、CD40、B7−2の発現増加が認められ、アジュバント効果が分子のレベルで確かめられた。PSF−2の場合、鼻の樹状細胞のCD40、B7−2に加えてMHC II分子の発現増加も認められ、その免疫増強効果に樹状細胞の少なくとも3つの分子が関与していることが明らかとなった。
しかし肺と脾臓の樹状細胞のCD40、B7−2、MHC II分子では、明らかな変化は認めることができなかった。また、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3を使用してもほほ程度の効果が得られた。PSF−4、−5についても同様な現象は確認されたが、その効果は減弱していた。
実施例6
経鼻インフルエンザワクチン投与による鼻腔(a)、肺胞(b)粘膜におけるTGF−β1分泌レベルに対するSPF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.1μgを単独、あるいはSPF−2 0.1μg、CTB 0.1μgとともに、1μl PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に合計2μl投与を行った。皮下ワクチンとして経鼻ワクチンと同量のワクチン、PSF−2、CTBを50μl PBS溶液としてBALB/cマウス頸部皮下に投与した。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。2次免疫2週間後にマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液を調製しこれらを用いてTGF−β1分泌量の定量を行った(n=15〜20; 平均±SE;,t検定による有意水準はワクチン投与群に対してp<0.01)。
B細胞がIgA産生細胞に分化(クラススイッチ)するためには、産生細胞の局在している局所のTGF−β1濃度が重要であることが知られている(Stavnezer,J.:Regulation of antibody production and class switching by TGF−beta.J.Immunol.155(4),1647−1651,1995)。そこで上記の条件下での鼻腔(a)、肺胞(b)粘膜局所のTGF−β1濃度を検討した。
スプリット型インフルエンザワクチンを投与した鼻腔、肺胞粘膜局所のTGF−β1濃度は、共にSPF−2、CTB存在下に有意に増加した。増加の程度は、SPF−2、CTB間で有意な差はなかった。その結果を図5(a)と(b)に示す。生体内由来のSPF−2は、外来毒素のCTBと同程度、IgA分泌B細胞分化の促進を促すTGF−β1の濃度を増加させていることが判明した。図には示していないが、PSF−2の代わりにPSF−1、PSF−3を使用してもほほ程度の効果が得られている。PSF−4、−5についても同様な現象は確認されたが、効果は減弱している。なお、PSF−2、CTBをそれぞれ単独に初回免疫時と2次免疫時に経鼻投与、皮下注射投与してもTGF−β1の濃度の増加は認められず、PSF−2、CTBの効果はワクチン作用の増強効果と判定された(図には示していない)。
実施例7
経鼻投与インフルエンザワクチンによる鼻腔(a)、肺胞(b)及び血液中(c)の抗インフルエンザ特異抗体(IgA、IgG)産生に対するPSF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.2μgを単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−2 0.2μg、あるいはアジュバントとしてCTB0.2μgと共に、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ合計2μl投与を行った。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。各群とも、2次免疫2週間後にマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液および心臓採血による血清を調製し、これらを用いて抗インフルエンザ抗体発現量の定量を行った(n=15〜30,平均±SE、+,p<0.01vs.ワクチン単独投与)。
図6(a)と(b)に示すように、鼻腔洗浄液および肺胞洗浄液では、PSF−2とワクチンとを投与した場合に血液中抗インフルエンザ抗体IgA(青丸)が顕著な増加を示したが、図6(c)に示すように、血液中ではIgG(赤丸)の増加は認められなかった。
一方、CTBとワクチンを投与した場合、IgGとIgGが、鼻腔洗浄液およ肺胞洗浄液で増加し(図6(a)、(b))、さらに血液中でも顕著に増加した(図6(c))。
以上のとおり、CTBの場合には、従来からの報告のとおり、経鼻接種した抗原に反応して局所免疫を成立させる以外に、全身性の免疫反応(Systemic Immune Response)を生じさせた。一方、PSF−2を用いた場合には、局所粘膜免疫のみを成立させた。
なお、J.Freek van Iwaarden等(非特許文献4)は、肺からマクロファージを人工的に除去すると、SP−Bと脂質によって全身性の免疫反応を誘導できるが、マクロファージを除去しない場合には免疫を誘導することができないことを報告している。また、前記文献においては、前身性免疫反応を誘導するために必要なSP−B+脂質量は250−300μlであり、前記実施例のPSF−2投与量(0.2μl)とは大きくかけ離れている。しかも、局所粘膜免疫については一切言及していない。
実施例8
経鼻インフルエンザワクチン投与による鼻、肺および脾臓のリンパ球から分泌される各種サイトカインに対するSPF−2、CTBの影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.2μgをSPF−20.2μg、またはCTB 0.2μgとともに、1μl PBS溶液としてBALB/cマウスの上気道に合計2μl投与した。2次免疫2週間後にマウスを屠殺し、鼻腔、肺胞および脾臓リンパ球からのTGF−β1およびサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6、IL−13)の分泌量の定量を行った(n=15〜20;平均±SE;+++,P=0.06;++,P=0.05;+,P=0.01 vs.ワクチン単独投与)。
図7(a)〜(e)に示すように、PSF−2とともにワクチン免疫した後の粘膜局所(鼻、肺)ではTGF−β1、IL−5およびIL−6の有意な分泌増加が認められたが、IL−4およびIL−13では有意な増加は認められなかった。一方、脾臓ではいずれのサイトカインの有意な増加は観察されなかった。
以上の結果から、PSF−2は、IgAを産生するB細胞の分化、誘導を促進するTh2タイプのサイトカインを粘膜局所で増加させることが確認された。
実施例9
経鼻投与インフルエンザワクチンによる鼻腔(a)、肺胞(b)及び血液中(c)の抗インフルエンザ特異抗体(IgA、IgG)産生に対するPSF−3の影響
経鼻ワクチンとしてスプリット型インフルエンザワクチン0.2μgを単独、あるいはADヴィークルとしてPSF−3(配列番号16に記載のSP−B断片253〜278ペプチドと配列番号21に記載のSP−C断片24〜58ペプチドとの等重量混合物)0.2μg、または脂質成分0.2μgと共に、PBS溶液としてBALB/cマウス両鼻に1μlずつ合計2μl投与を行った。4週間後に初回免疫と同様の方法によって2次免疫を行った。対照群にはそれぞれ同容量のPBSを投与した。各群とも、2次免疫2週間後にマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液および心臓採血による血清を調製し、これらを用いて抗インフルエンザ抗体発現量の定量を行った(n=15〜30,平均±SE、+,p<0.01 vs.ワクチン単独投与)。
図8(a)と(b)に示すように、鼻腔洗浄液および肺胞洗浄液では、PSF−3とワクチンとを投与した場合に血液中抗インフルエンザ抗体IgA(青丸)が顕著な増加を示したが、IgG(赤丸)の有意な増加は認められなかった。一方、血清中(c)では、IgG(赤丸)およびIgG(青丸)とも、有意な増強は認められなかった。
この発明に係る「ADヴィークル」は、抗原・薬物・栄養剤等々のあらゆる物質を、鼻・気管・腸管等々の粘膜あるいは皮膚から細胞内に輸送する機能を発揮すると共に、そこでのIgA産生を優先的かつ選択的に誘導するので、粘膜ワクチン、アレルギーの予防と治療、経粘膜及び経皮DDS、薬物や栄養素等の有用物質の経粘膜投与及び経皮投与を可能にする。しかも、その臨床使用及び安全性は国内及び諸外国で既に認可されている。
従って、生物学的製剤やDDS等での医薬品・製薬、機能性食品や健康食品等での飲食品・食糧工業、農産物の育成・栽培・病気対策・昆虫駆除等での農業・農薬、魚病ワクチン・投薬等での栽培漁業、防蟻・防虫等での建築業や環境保全等々、極めて広範囲の産業における用途と活用が期待される。

Claims (6)

  1. 肺サーファクタントプロテインB又は該プロテインBに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片、肺サーファクタントプロテインC又は該プロテインCに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片、及び少なくとも1種の脂質からなる複合体であり、プロテインBに由来の断片が配列番号2、7、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸配列からなるペプチドであり、プロテインCに由来の断片が配列番号4、配列番号9、21、または配列番号6のアミノ酸配列からなるペプチドである抗原薬物ヴィークルに抗原を共存、接触、捕捉、又は吸着させることにより得られ、粘膜局所におけるIgA抗体の産生促進により粘膜免疫を誘導することを特徴とする経鼻投与型の粘膜ワクチン。
  2. 少なくとも1種の脂質が、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ジパルミトイルグリセロホスホコリン、ジアシルグリセロホスホグリセロール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる脂質群から選ばれる請求項1に記載の粘膜ワクチン。
  3. 脂質がシート状又はロール状の膜であり、肺サーファクタントプロテインB又は該プロテインBに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片、及び肺サーファクタントプロテインC又は該プロテインCに由来の複数の断片から選ばれる少なくとも1つの断片のそれぞれ複数鎖が、疎水領域末端を該脂質膜に嵌入した状態でスパイク状に植鎖されている請求項1または2のいずれかに記載の粘膜ワクチン。
  4. 粘膜免疫の誘導が、粘膜局所におけるTGF-β1およびTh2タイプサイトカインの産生促進により特徴付けられる請求項1から3のいずれかに記載の粘膜ワクチン。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の粘膜ワクチン非ヒト動物の鼻腔に投与し、粘膜局所におけるIgA抗体の産生を促進することを特徴とする粘膜免疫の誘導方法。
  6. 粘膜免疫の誘導が、粘膜局所におけるTGF-β1およびTh2タイプサイトカインの産生促進によって特徴付けられる請求項に記載の粘膜免疫の誘導方法。
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