以下に、本発明にかかる自動列車停止装置の車上用装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置は、車上子の発振コイルに地上子の共振コイルが電磁結合したときのインピーダンスの変化を検出して地上子から信号現示情報を取得する自動列車停止装置の車上用装置100であって、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置の健全性を監視する動作監視部を備える。
図1に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。発振部1は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、インピーダンス変更部15と、信号判別部14と、インピーダンス変化検出部16と、を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
動作監視部は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、インピーダンス変更部15と、信号判別部14と、インピーダンス変化検出部16と、車上子2と、により構成される。
増幅部12の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されてインピーダンス変更部15、車上子2を介して入力部11へ帰還入力される。インピーダンス変更部15はこの帰還型発振回路上に配置され、帰還型発振回路のインピーダンスを変更する。同時に、増幅部12の出力は信号判別部14とインピーダンス変化検出部16に入力される。
次に動作について説明する。まず、車上用装置の装置電源が投入されると、帰還型発振回路は、増幅部12、出力部13、車上子2および入力部11の位相特性で定まる総合的な発振条件で発振する。車上子2が地上子200と電磁結合していないときの発振を常時発振といい、特定の周波数で発振する。車上子2が地上子200の上を通過する際には車上子2と地上子200が電磁結合するが、このときは車上子2のインピーダンスが見かけ上変化し、帰還型発振回路の総合的な位相特性で定まる共振周波数(変周周波数)へ変化する。これは変周現象と定義されている。
地上子200通過時に変化する共振周波数(変周周波数)は信号判別部14で判定され、地上子200側のインピーダンスを信号現示ごとに異なった種別に設定することで、地上子200の現示する信号種別を判別して取得することができる。例えば信号判別部14において100kHzの共振周波数(変周周波数)が検出された場合には、第1の信号種別(例えば青信号)と判別して、地上子200の現示する信号種別を取得することができる。
信号判別部14は、地上子200の現示する信号種別を取得した場合には、所定のブレーキ情報を上位のブレーキ装置等に出力する。信号判別部14におけるインピーダンス変化の検出は、例えば共振周波数が変化したことをフィルタ出力の判別やフーリエ変換等による周波数特性の判別で行うことができる。
また、例えば信号判別部14において112kHzの共振周波数(変周周波数)が検出された場合には、第1の信号種別(例えば黄色信号)と判別して、地上子200の現示する信号種別を取得することができる。また、例えば信号判別部14において124kHzの共振周波数(変周周波数)が検出された場合には、第1の信号種別(例えば赤信号)と判別して、地上子200の現示する信号種別を取得することができる。
しかし、故障等により常時発振が固着したり、帰還型発振回路のインピーダンスが変化して変周しづらくなると、変周すべき地上子200を検知できなくなる危険性がある。
そこで、本実施の形態においては、インピーダンス変更部15を備え、周期的に帰還型発振回路のインピーダンスを意図的に変更し、見かけ上地上子200と車上子2とが結合した状態を意図的に発生させる。そして、信号判別部14と平行してインピーダンス変化検出部16で共振周波数のインピーダンス変化を常時検知して、インピーダンス変更部15で帰還型発振回路のインピーダンスを変更したことにより生じる所定時間のインピーダンス変化が周期的に発生しているかどうかを常時監視する。
予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されていれば、インピーダンス変化検出部16は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全である、と判断する。一方、予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されなければ、インピーダンス変化検出部16は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、インピーダンス変化検出部16は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
インピーダンス変更部15における帰還型発振回路のインピーダンスの変更は、本来の地上子結合によるインピーダンス変化を阻害しないように、一時的に行う。すなわち、インピーダンス変更部15における帰還型発振回路のインピーダンスの変更は、信号判別部14が動作しない不動作時間未満の十分短い時間のみインピーダンス変更を行うようにする。なお、不動作時間未満の十分短い時間内においては、連続的にインピーダンスの変更を行うことは可能である。
信号判別部14においては不動作時間未満の変周はノイズとみなされるので、誤って信号現示を検知することはない。また、信号判別部14の動作時間の最小値は、車上子2と地上子200とが結合する最小離隔をあらかじめ規定された最高速度で通過する場合の最小変周時間からインピーダンス変更時間を差し引いた半分の時間未満に設定するため、極短時間の帰還型発振回路のインピーダンス変更が本来の変周動作に影響を与えることはない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、帰還型発振回路のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置にインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間インピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態2.
実施の形態1では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、帰還型発振回路のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態2では、帰還発振回路のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させたときの回路応答を2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図2は、本発明の実施の形態2にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。発振部1は、入力部11aと増幅部12aと信号判別部14aとインピーダンス変化検出部16aとにより構成される冗長回路部Aと、入力部11bと増幅部12bと信号判別部14bとインピーダンス変化検出部16bとにより構成される冗長回路部Bと、出力部13と、インピーダンス変更部15と、を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成はおよび動作は実施の形態1の場合と同様であり、実施の形態1の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、冗長回路部Aにおける入力部11a、増幅部12a、インピーダンス変化検出部16aと、冗長回路部Bにおける入力部11b、増幅部12b、インピーダンス変化検出部16bと、出力部13と、インピーダンス変更部15と、車上子2と、により構成される。
増幅部12aの出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されてインピーダンス変更部15、車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ帰還入力される。入力部11aの出力は増幅部12aに入力され、入力部11bの出力は増幅部12bに入力される。また、増幅部12aの出力は、信号判別部14aとインピーダンス変化検出部16aとに入力される。増幅部12bの出力は、信号判別部14bとインピーダンス変化検出部16bとに入力される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Aの信号判別部14aと冗長回路部Bの信号判別部14bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Aのインピーダンス変化検出部16aと冗長回路部Bのインピーダンス変化検出部16bとの間でインピーダンス変化の検出結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、帰還型発振回路のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置の信号現示情報の取得動作の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置にインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間インピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。
実施の形態3.
実施の形態1では、増幅部、出力部、車上子、入力部で帰還型発振回路を構成し、地上子と車上子の結合で共振周波数が変化することで地上子を検知する構成において、帰還発振回路のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態3では、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認する場合について説明する。
図3は、本発明の実施の形態3にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図3に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
発振部1は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、車上子2のインピーダンスの変更を制御するインピーダンス変更制御情報を生成するインピーダンス変更制御部31と、信号判別部14と、インピーダンス変化検出部16と、を備える。また、車上子2は、インピーダンス変更制御情報に従って車上子2のインピーダンスを変更可能なインピーダンス要素32を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
また、インピーダンス変更部15の代わりにインピーダンス変更制御部31とインピーダンス要素32を備えること以外は、基本的な構成および動作は実施の形態1の場合と同様であり、実施の形態1の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。
動作監視部は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、インピーダンス変化検出部16と、インピーダンス要素32を含む車上子2と、を含んで構成される。
増幅部12の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11へ帰還入力される。同時に、増幅部12の出力は信号判別部14とインピーダンス変化検出部16に入力される。インピーダンス変更制御部31は、車上子2のインピーダンス要素32に接続して配置される。
本実施の形態においては、インピーダンス変更制御部31とインピーダンス要素32を備え、周期的に車上子のインピーダンスを意図的に変更し、見かけ上地上子200と車上子2とが結合した状態を意図的に発生させる。そして、信号判別部14と平行してインピーダンス変化検出部16で共振周波数のインピーダンス変化を常時検知して、インピーダンス変更制御部31とインピーダンス要素32とにより車上子のインピーダンスを変更したことにより生じる所定時間のインピーダンス変化が周期的に発生しているかどうかを常時監視する。
実施の形態1の場合と同様に予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されていれば、インピーダンス変化検出部16は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全である、と判断する。一方、予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されなければ、インピーダンス変化検出部16は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、インピーダンス変化検出部16は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
本実施の形態においても、車上子のインピーダンスの変更は、本来の地上子結合によるインピーダンス変化を阻害しないように、一時的に行う。すなわち、車上子2のインピーダンスの変更は、信号判別部14が動作しない不動作時間未満の十分短い時間のみインピーダンス変更を行うようにする。なお、不動作時間未満の十分短い時間内においては、連続的にインピーダンスの変更を行うことは可能である。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、車上子のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置の信号現示情報の取得動作の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に車上子2のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間車上子2のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態4.
実施の形態3では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態4では、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させたときの回路応答を2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図4は、本発明の実施の形態4にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図4に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
発振部1は、入力部11aと増幅部12aと信号判別部14aとインピーダンス変化検出部16aとにより構成される冗長回路部Cと、入力部11bと増幅部12bと信号判別部14bとインピーダンス変化検出部16bとにより構成される冗長回路部Dと、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、を備える。また、車上子2は、インピーダンス要素32を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成および動作は実施の形態3の場合と同様であり、実施の形態3の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、冗長回路部Cにおける入力部11a、増幅部12a、インピーダンス変化検出部16aと、冗長回路部Dにおける入力部11b、増幅部12b、インピーダンス変化検出部16bと、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、インピーダンス要素32を含む車上子2と、により構成される。
増幅部12aの出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ帰還入力される。入力部11aの出力は増幅部12aに入力され、入力部11bの出力は増幅部12bに入力される。また、増幅部12aの出力は、信号判別部14aとインピーダンス変化検出部16aとに入力される。増幅部12bの出力は、信号判別部14bとインピーダンス変化検出部16bとに入力される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Cの信号判別部14aと冗長回路部Dの信号判別部14bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Cのインピーダンス変化検出部16aと冗長回路部Dのインピーダンス変化検出部16bとの間でインピーダンス変化の検出結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、車上子のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に車上子2のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間車上子2のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。
実施の形態5.
実施の形態1では、増幅部、出力部、車上子、入力部で帰還型発振回路を構成し、地上子と車上子の結合で共振周波数が変化することで地上子を検知する構成において、帰還発振回路のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態5では、試験信号を共振信号に周期的かつ一時的に重畳出力できる手段を有し、試験信号の受信特性、すなわち周波数と信号レベルを監視するようにした場合について説明する。
図5は、本発明の実施の形態5にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図5に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
発振部1は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力する試験信号発生部41と、信号判別部14と、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性として周波数と信号レベルを判断する試験信号受信特性判断部42と、を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
また、インピーダンス変更部15の代わりに試験信号発生部41と試験信号受信特性判断部42とを備えること以外は、基本的な構成は実施の形態1の場合と同様であり、実施の形態1の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。
動作監視部は、入力部11と、増幅部12と、出力部13と、試験信号発生部41と、試験信号受信特性判断部42と、車上子2と、により構成される。
増幅部12の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11へ帰還入力される。同時に、増幅部12の出力は信号判別部14と試験信号受信特性判断部42に入力される。
そして、本実施の形態においては、試験信号発生部41と試験信号受信特性判断部42とを備え、常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力する。そして、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性として周波数と信号レベルを常時検知、判断して、受信特性が正常に検出されているかどうか(試験信号が正常に戻ってきているかどうか)を常時監視する。
車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性が正常に検出されていれば、試験信号受信特性判断部42は、車上用装置の帰還型発振回路が健全である、と判断する。一方、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性が正常に検出されなければ、試験信号受信特性判断部42は、車上用装置の帰還型発振回路が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、試験信号受信特性判断部42は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
本実施の形態において、試験信号の周波数は共振周波数と同一周波数の試験信号でも良く、共振周波数と異なる周波数の試験信号であっても良い。なお、共振周波数と異なる周波数の試験信号の場合は連続して試験信号を出力しても良いが、共振周波数と同一周波数の試験信号の場合は連続出力は行えない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力して該試験信号が正常に戻ってきているかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置の帰還型発振回路の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に試験信号発生部と試験信号受信特性判断部を設け、周期的あるいは連続的に常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力し、その戻り信号の受信特性を確認することにより、故障等で車上用装置の帰還型発振回路が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態6.
実施の形態5では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、共振周波数と同一周波数(または異なる周波数)の試験信号を共振信号に周期的に重畳出力できる手段を有し、試験信号の受信特性を監視することで車上用装置の帰還型発振回路の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態6では、試験信号の受信特性、すなわち周波数と信号レベルを2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図6は、本発明の実施の形態6にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図6に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100は、車上子2と、車上子2を帰還回路として所定周波数より低い共振周波数で常時発振する発振部1と、を備えて構成される帰還型発振回路を有する。発振部1と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
発振部1は、入力部11aと増幅部12aと信号判別部14aと試験信号受信特性判断部42aとにより構成される冗長回路部Eと、入力部11bと増幅部12bと信号判別部14bと試験信号受信特性判断部42bとにより構成される冗長回路部Fと、出力部13と、試験信号発生部41と、を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成は実施の形態5の場合と同様であり、実施の形態5の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、冗長回路部Eにおける入力部11a、増幅部12a、試験信号受信特性判断部42aと、冗長回路部Fにおける入力部11b、増幅部12b、試験信号受信特性判断部42bと、出力部13と、試験信号発生部41と、により構成される。
増幅部12aの出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ帰還入力される。そして、本実施の形態においては、試験信号発生部41により増幅部12aの出力に試験信号を重畳出力する。入力部11aの出力は増幅部12aに入力され、入力部11bの出力は増幅部12bに入力される。また、増幅部12aの出力は、信号判別部14aと試験信号受信特性判断部42aとに入力される。増幅部12bの出力は、信号判別部14bと試験信号受信特性判断部42bとに入力される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Eの信号判別部14aと冗長回路部Fの信号判別部14bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Eの試験信号受信特性判断部42aと冗長回路部Fの試験信号受信特性判断部42bとの間でそれぞれでの判断結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
本実施の形態においても、試験信号の周波数は共振周波数と同一周波数の試験信号でも良く、共振周波数と異なる周波数の試験信号であっても良い。なお、共振周波数と異なる周波数の試験信号の場合は連続して試験信号を出力しても良いが、共振周波数と同一周波数の試験信号の場合は連続出力は行えない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置100においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力して該試験信号が正常に戻ってきているかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置の帰還型発振回路の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に試験信号発生部と試験信号受信特性判断部を設け、周期的あるいは連続的に常時発振の共振信号に試験信号を重畳出力し、その戻り信号の受信特性を確認することにより、故障等で車上用装置の帰還型発振回路が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。
実施の形態7.
実施の形態1〜6では、地上子の検知手段として、増幅部、出力部、車上子、入力部で構成される帰還型発振回路において地上子と車上子の結合で共振周波数が変化することを検知するようにしているが、この実施の形態7では、各地上子との共振周波数に応じた複数の信号を生成する信号生成手段、車上子へ信号出力する手段、車上子を経由した信号の応答を確認する信号判別手段を有し、地上子と車上子の結合で車上子インピーダンスが変化する際の信号特性の変化を検知する構成において、帰還型発振回路の回路インピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認するようにした場合について説明する。
図7は、本発明の実施の形態7にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置は、車上子の発振コイルに地上子の共振コイルが電磁結合したときのインピーダンスの変化を検出して地上子から信号現示情報を取得する自動列車停止装置の車上用装置300であって、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置の健全性を監視する動作監視部を備える。
図7に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。
検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。検知部301は、地上子200との共振周波数に応じた予め設定された複数の周波数の信号を発生する信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを変更するインピーダンス変更部51と、入力部11と、信号判別部22と、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスの変化を検出するインピーダンス変化検出部52と、を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
動作監視部は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更部51と、入力部11と、インピーダンス変化検出部52と、車上子2と、により構成される。
次に動作について説明する。まず、車上用装置の装置電源が投入されると、信号生成部21は、地上子200との共振周波数に応じた予め設定された複数の周波数の信号を発生する。信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されてインピーダンス変更部51、車上子2を介して入力部11へ入力される。車上子2からの出力信号は入力部11において適切な電圧値に調整されて信号判別部22に入力される。そして、信号判別部22において、地上子と車上子2の結合で車上子インピーダンスが変化する際の信号特性の変化が判別され、信号現示ごとに異なった変化を判別することで、地上子200の現示する信号種別を判別して取得することができる。
しかし、故障等によりインピーダンス変化検知回路のインピーダンスが変化してしまったり、また変化しづらくなると、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスが変化する際の信号特性の変化を検知できなくなる危険性がある。
そこで、本実施の形態においては、インピーダンス変化検知回路上にインピーダンス変更部51を備え、周期的にインピーダンス変化検知回路のインピーダンスを意図的に変更し、見かけ上地上子200と車上子2とが結合した状態を意図的に発生させる。そして、信号判別部22と平行してインピーダンス変化検出部52で信号特性の変化を常時検知して、インピーダンス変更部51でインピーダンス変化検知回路のインピーダンスを変更したことにより生じる信号特性の変化が周期的に発生しているかどうかを常時監視する。
予め設定された信号特性の変化が周期的に検出されていれば、インピーダンス変化検出部52は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全である、と判断する。一方、予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されなければ、インピーダンス変化検出部52は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、インピーダンス変化検出部52は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
インピーダンス変更部51におけるインピーダンス変化検知回路のインピーダンスの変更は、本来の地上子結合によるインピーダンス変化を阻害しないように、一時的に行う。すなわち、インピーダンス変更部51におけるインピーダンス変化検知回路のインピーダンスの変更は、信号判別部22が動作しない不動作時間未満の十分短い時間のみインピーダンス変更を行うようにする。なお、不動作時間未満の十分短い時間内においては、連続的にインピーダンスの変更を行うことは可能である。
信号判別部22においては不動作時間未満の変周はノイズとみなされるので、誤って信号現示を検知することはない。また、信号判別部22の動作時間の最小値は、車上子2と地上子200とが結合する最小離隔をあらかじめ規定された最高速度で通過する場合の最小変周時間からインピーダンス変更時間を差し引いた半分の時間未満に設定するため、極短時間のインピーダンス変化検知回路のインピーダンス変更が本来の変周動作に影響を与えることはない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置にインピーダンス変化検知回路のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態8.
実施の形態7では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、インピーダンス変化検知回路の回路インピーダンスを周期的かつ一時的に変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態8では、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを周期的かつ一時的に変化させたときの回路応答を2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図8は、本発明の実施の形態8にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図8に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
検知部301は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更部51と、入力部11aと信号判別部22aとインピーダンス変化検出部52aとにより構成される冗長回路部Gと、入力部11bと信号判別部22bとインピーダンス変化検出部52bとにより構成される冗長回路部Hと、を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成は実施の形態7の場合と同様であり、実施の形態7の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更部51と、冗長回路部Gにおける入力部11a、インピーダンス変化検出部52aと、冗長回路部Hにおける入力部11b、インピーダンス変化検出部52bと、車上子2と、により構成される。
信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されてインピーダンス変更部51、車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ入力される。入力部11aの出力は信号判別部22aとインピーダンス変化検出部52aとに入力され、入力部11bの出力は信号判別部22bとインピーダンス変化検出部52bとに入力される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Gの信号判別部22aと冗長回路部Hの信号判別部22bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Gのインピーダンス変化検出部52aと冗長回路部Hのインピーダンス変化検出部52bとの間でインピーダンス変化の検出結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置にインピーダンス変化検知回路のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間インピーダンス変化検知回路のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。
実施の形態9.
実施の形態7では、信号生成部、出力部、信号判別部を有し、地上子と車上子の結合で車上子インピーダンスが変化する際の信号特性の変化を検知する構成において、インピーダンス変化検知回路の回路インピーダンスを周期的かつ一時的に変化させて回路応答を確認するようにしたが、この実施の形態9では、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにした場合について説明する。
図9は、本発明の実施の形態9にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図9に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
検知部301は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、入力部11と、インピーダンス変化検出部16と、信号判別部22と、を備える。また、車上子2は、インピーダンス要素32を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
また、インピーダンス変更部51の代わりにインピーダンス変更制御部31とインピーダンス要素32を備えること以外は、基本的な構成は実施の形態7の場合と同様であり、実施の形態7等の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。
動作監視部は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、入力部11と、インピーダンス変化検出部16と、インピーダンス要素32を含む車上子2と、により構成される。
信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11へ入力される。入力部11の出力は信号判別部22とインピーダンス変化検出部16とに入力される。インピーダンス変更制御部31は、車上子2のインピーダンス要素32に接続して配置される。
本実施の形態においては、インピーダンス変更制御部31とインピーダンス要素32を備え、周期的に短い時間だけ車上子のインピーダンスを意図的に変更し、見かけ上地上子200と車上子2とが結合した状態を意図的に発生させる。そして、信号判別部22と平行してインピーダンス変化検出部52で信号特性の変化を常時検知して、インピーダンス変更部51でインピーダンス変化検知回路のインピーダンスを変更したことにより生じる信号特性の変化が周期的に発生しているかどうかを常時監視する。
実施の形態7の場合と同様に予め設定された信号特性の変化が周期的に検出されていれば、インピーダンス変化検出部52は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全である、と判断する。一方、予め設定されたインピーダンス変化が周期的に検出されなければ、インピーダンス変化検出部52は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、インピーダンス変化検出部52は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
車上子2のインピーダンスの変更は、本来の地上子結合によるインピーダンス変化を阻害しないように、一時的に行う。すなわち、車上子2のインピーダンスの変更は、信号判別部22が動作しない不動作時間未満の十分短い時間のみインピーダンス変更を行うようにする。なお、不動作時間未満の十分短い時間内においては、連続的にインピーダンスの変更を行うことは可能である。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、車上子2のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に車上子2のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間車上子2のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態10.
実施の形態9では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させて回路応答を確認することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態10では、車上子のインピーダンスを周期的かつ一時的に共振周波数を変化させたときの回路応答を2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図10は、本発明の実施の形態10にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図10に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
検知部301は、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、入力部11aとインピーダンス変化検出部52aと信号判断部22aとにより構成される冗長回路部Jと、入力部11bとインピーダンス変化検出部52bと信号判断部22bとにより構成される冗長回路部Kと、を備える。また、車上子2は、インピーダンス要素32を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成は実施の形態9の場合と同様であり、実施の形態9の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、冗長回路部Jにおける入力部11a、インピーダンス変化検出部52aと、冗長回路部Kにおける入力部11b、インピーダンス変化検出部52bと、信号生成部21と、出力部13と、インピーダンス変更制御部31と、車上子2と、により構成される。
信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ入力される。入力部11aの出力は信号判別部22aとインピーダンス変化検出部52aとに入力され、入力部11bの出力は信号判別部22bとインピーダンス変化検出部52bとに入力される。インピーダンス変更制御部31は、車上子2のインピーダンス要素32に接続して配置される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Jの信号判別部22aと冗長回路部Kの信号判別部22bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Jのインピーダンス変化検出部52aと冗長回路部Kのインピーダンス変化検出部52bとの間でインピーダンス変化の検出結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、車上子2のインピーダンスを周期的に信号判別時間未満の短い時間変化させて、車上子において予め設定された変周動作が行われるかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の車上用装置の信号現示情報の取得動作の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に車上子2のインピーダンス可変手段を設け、周期的あるいは連続的に信号判別時間未満の短い時間車上子2のインピーダンスを変化させてその回路応答を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。
実施の形態11.
実施の形態7では、信号生成部、出力部、信号判別部を有し、地上子と車上子の結合で車上子インピーダンスが変化する際の信号特性の変化を検知する構成において、インピーダンス変化検知回路の回路インピーダンスを周期的かつ一時的に変化させて回路応答を確認するようにしたが、この実施の形態11は、試験信号を共振信号に周期的かつ一時的に重畳出力できる手段を有し、試験信号の受信特性、すなわち周波数と信号レベルを監視するようにした場合について説明する。
図11は、本発明の実施の形態11にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図11に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
検知部301は、信号生成部21と、出力部13と、信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力する試験信号発生部41と、入力部11と、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性として周波数と信号レベルを判断する試験信号受信特性判断部42と、信号判別部22と、を備える。なお、自動列車停止装置の車上用装置は、故障モードが特定できるフェールセーフ素子を適用して構成されている。
動作監視部は、信号生成部21と、試験信号発生部41と、出力部13と、入力部11と、試験信号受信特性判断部42と、車上子2と、を含んで構成される。
信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11へ入力される。入力部11の出力は信号判別部22と試験信号受信特性判断部42とに入力される。
そして、本実施の形態においては、試験信号発生部41と試験信号受信特性判断部42とを備え、信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力する。そして、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性として周波数と信号レベルを常時検知、判断して、受信特性が正常に検出されているかどうか(試験信号が正常に戻ってきているかどうか)を常時監視する。
車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性が正常に検出されていれば、試験信号受信特性判断部42は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全である、と判断する。一方、車上子2からの戻り信号から試験信号の受信特性が正常に検出されなければ、試験信号受信特性判断部42は、信号現示情報の取得動作および自動列車停止装置の車上用装置が健全でなく故障が発生している、と判断する。この場合、試験信号受信特性判断部42は、故障情報を生成して上位のブレーキ装置等に出力する。
本実施の形態において、試験信号の周波数は共振周波数と同一周波数の試験信号でも良く、共振周波数と異なる周波数の試験信号であっても良い。なお、共振周波数と異なる周波数の試験信号の場合は連続して試験信号を出力しても良いが、共振周波数と同一周波数の試験信号の場合は連続出力は行えない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力して該試験信号が正常に戻ってきているかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に試験信号発生部と試験信号受信特性判断部を設け、周期的あるいは連続的に信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力し、その戻り信号の受信特性を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
実施の形態12.
実施の形態11では、故障モードが特定できるフェールセーフ素子が装置に適用され単独系でフェールセーフ性を確保できる構成において、試験信号を共振信号に周期的かつ一時的に重畳出力できる手段を有し、試験信号の受信特性を監視することで装置の健全性を確保できるようにしたが、この実施の形態12では、試験信号の受信特性、すなわち周波数と信号レベルを2重系間の照合で確認するようにした場合について説明する。
図12は、本発明の実施の形態12にかかる自動列車停止装置の車上用装置の概略構成を示す図である。図12に示すように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300は、車上子2と、所定の周波数の信号を発生して車上子2に入力するとともに車上子2からの戻り信号の受信状態を検知して車上子2のインピーダンスの変化を検知する検知部301と、を備えて構成されるインピーダンス変化検知回路を有する。検知部301と車上子2とは有線または無線により情報通信可能に接続される。
検知部301は、信号生成部21と、試験信号発生部41と、出力部13と、入力部11aと信号判別部22aと試験信号受信特性判断部42aとにより構成される冗長回路部Lと、入力部11bと信号判別部22bと試験信号受信特性判断部42bとにより構成される冗長回路部Mと、を備える。
なお、冗長回路部を構成していること以外は、基本的な構成は実施の形態11の場合と同様であり、実施の形態11等の場合と同じ構成要素には同じ符号を付すことで詳細な説明は省略し、異なる点について説明する。本実施の形態においては、自動列車停止装置の車上用装置は、デジタルデバイスを使用して構成されている。
動作監視部は、信号生成部21と、試験信号発生部41と、出力部13と、冗長回路部Lにおける入力部11a、試験信号受信特性判断部42a、信号判別部22aと、冗長回路部Mにおける入力部11b、試験信号受信特性判断部42b、信号判別部22bと、出力部13と、試験信号発生部41と、車上子2と、により構成される。
信号生成部21の出力は、出力部13において適切な電圧値に調整されて、車上子2を介して入力部11aおよび入力部11bへ入力される。そして、本実施の形態においては、試験信号発生部41により信号生成部21の出力に試験信号を重畳出力する。入力部11aの出力は、信号判別部22aと試験信号受信特性判断部42aとに入力される。入力部11bの出力は、信号判別部22bと試験信号受信特性判断部42bとに入力される。
この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Lの信号判別部22aと冗長回路部Mの信号判別部22bとの間で信号現示情報の判別結果を照合し、2重系間の照合で確認する。また、この自動列車停止装置の車上用装置では、冗長回路部Lの試験信号受信特性判断部42aと冗長回路部Mの試験信号受信特性判断部42bとの間でそれぞれでの判断結果を照合し、2重系間の照合で確認する。
本実施の形態においても、試験信号の周波数は共振周波数と同一周波数の試験信号でも良く、共振周波数と異なる周波数の試験信号であっても良い。なお、共振周波数と異なる周波数の試験信号の場合は連続して試験信号を出力しても良いが、共振周波数と同一周波数の試験信号の場合は連続出力は行えない。
上述したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置300においては、車上子2と地上子200とが電磁結合する本来の変周動作と平行して、信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力して該試験信号が正常に戻ってきているかどうかを検出する。これにより、通常の地上子検知と平行して、列車の走行中、停止中を問わず、通常の運行動作に影響を与えずに自動列車停止装置の自動列車停止装置の車上用装置全体(信号現示情報の取得動作)の健全性を常時診断することができる、という効果がある。
すなわち、自動列車停止装置の車上用装置に試験信号発生部と試験信号受信特性判断部を設け、周期的あるいは連続的に信号生成部21からの出力信号に試験信号を重畳出力し、その戻り信号の受信特性を確認することにより、故障等で車上用装置が正常な地上子の検知ができなくなった状態を潜在的に継続させることなく、迅速かつ確実に故障検知することができる、という効果を奏する。これにより、迅速かつ確実に非常制動をかけたり、乗務員へ通報するなどフェールセーフ側へ制御することができる、という効果がある。
また、故障モードが特定できないデジタル素子を装置に適用した場合、単独ではフェールセーフ性を確保できないため2重系の照合が必要となる。本実施の形態にかかる自動列車停止装置の車上用装置においては、故障モードが特定できないデジタルデバイスが適用され2重系でフェールセーフ性を確保している回路構成においても、確実に装置の健全性を確保できる、という効果がある。