以下、本発明の気泡除去装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の気泡除去装置の第1実施形態を示す断面側面図、図2は、図1中のA矢視図(下面図)、図3は、図1中のB−B線断面図、図4は、図1に示す気泡除去装置を用いた体外循環装置の一例を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の上側を「上」または「上方」といい、下側を「下」または「下方」という。
これらの図に示す気泡除去装置1Aは、体外循環する血液中の気泡を除去するためのものである。本発明の気泡除去装置1Aは、患者の心臓に血液が循環せず患者体内でガス交換が行われず、そして体外循環装置により血液の循環と血液に対するガス交換(酸素付加および/または二酸化炭素除去)が行われる体外循環と、患者の心臓に血液が循環し患者体内でもガス交換が行われるが、体外循環装置によっても血液の循環と血液に対するガス交換が行われる体外循環(補助循環)とのいずれの場合にも使用することができる。
以下、主として図1を参照しつつ、気泡除去装置1Aの構成について説明する。
図1に示すように、気泡除去装置1Aは、装置本体40と、装置本体40(旋回流形成室2)の上側に設けられた気泡貯留室5と、気泡貯留室5の上側に設けられた陰圧室8と、連結管18を介して陰圧室8に連通する液体貯留室(部屋)15と、気泡貯留室5と陰圧室8とを隔てるように設けられた第1のフィルタ(フィルタ部材(脱気膜))9と、液体貯留室15に設けられた第2のフィルタ16と、気泡貯留室5内の血液の液面レベルを検出する検出手段17Aとを有している。
なお、装置本体40、気泡貯留室5、陰圧室8、連結管18および液体貯留室15の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の比較的硬質な樹脂材料が好ましい。また、内部の血液等の状態を目視で確認することができるように、実質的に透明な材料が好ましい。
装置本体40は、旋回流形成室2と、旋回流形成室2(内部空間)内に血液を導入する流入口3と、旋回流形成室2内の血液を気泡除去装置1Aの外部へ排出する流出口4と、旋回流形成室2と気泡貯留室5とを連通させる第1連通部6および第2連通部7とを有している。
旋回流形成室2は、回転体形状の内部空間、すなわち横断面形状が略円形の内部空間を有しており、流入した血液に旋回流を形成させる部屋である。気泡除去装置1Aは、旋回流形成室2の中心軸20を鉛直方向(上下方向)にした姿勢で使用される。よって、以下では、旋回流形成室2の中心軸20に垂直な平面を水平面という。
この旋回流形成室2は、流入口3とほぼ同じ高さに位置する円盤状の拡径部21と、拡径部21の上側(上部)に設けられた円錐台形部22と、拡径部21の下側(下部)に設けられた胴部23とで構成されている。
円錐台形部22の内部空間は、内径が上方に向かって漸減する略円錐台状をなしている。図示の構成では、円錐台形部22の内部空間は、ほぼ完全な円錐台状をなしているが、本発明では円錐台形部22の内部空間は完全には円錐台状をなしていなくてもよく、その周面が側面視で丸みを帯びたようなものであってもよい。
拡径部21の内部空間は、その内径が円錐台形部22の下端の内径よりも大きい略円盤状をなしている。
胴部23の内部空間は、拡径部21より内径が小さい略円筒状(略円柱状)をなしている。胴部23の下部は、漏斗状をなしており、その下端に流出口4が突出形成されている。
流入口3は、旋回流形成室2の拡径部21の内周面のほぼ接線方向に突出するように設けられている(図2参照)。
このような構成の装置本体40により、流入口3から旋回流形成室2内に流入した血液は、旋回流を確実に形成することができる。
気泡貯留室5は、旋回流形成室2から浮上した気泡を一時的に貯留するための部屋である。この気泡貯留室5は、旋回流形成室2に流入する血液中に気泡が含まれていないときには、血液で満たされている。
気泡貯留室5は、略円盤状の内部空間を有している。気泡貯留室5の上面は、第1のフィルタ9により隔てられている(覆われている)。気泡貯留室5を略円盤状としたことにより、充填量(プライミングボリューム)を低くしつつ、第1のフィルタ9の面積を大きく確保することができ、また、プライミング液充填時の気泡残りをより確実に防止することができる。なお、気泡貯留室5の形状は、略円盤状に限らず、多角形板状などでもよい。
この気泡貯留室5の中心軸50は、旋回流形成室2の中心軸20に対し図1中の左側に偏心している。これにより、気泡貯留室5内に流入した気泡が気泡貯留室5の片側(偏心した側、図1中では左側)に集まり易くなるので、気泡を効率良く第1のフィルタ9を透過させることができる。
また、気泡貯留室5の中心軸50は、旋回流形成室2の中心軸20に対し傾斜している。その傾斜の向きは、気泡貯留室5の高さが、旋回流形成室2の中心軸20からの距離が遠いところほど高くなるような向きである。これにより、気泡貯留室5内に流入した気泡を気泡貯留室5の片側により円滑かつ迅速に集めることができる。
気泡貯留室5の中心軸50の、旋回流形成室2の中心軸20に対する傾斜角度αは、特に限定されないが、0〜50°程度であるのが好ましく、5〜20°程度であるのがより好ましい。
気泡貯留室5の底面51は、中心に向かって深さが漸増するようなすり鉢状をなしている。
旋回流形成室2の円錐台形部22の頂部付近は、第1連通部6を介して気泡貯留室5に連通している。第1連通部6は、気泡貯留室5の底面51に形成された円形開口で構成されている(図3参照)。
旋回流形成室2内で血液が旋回流を形成すると、遠心力の作用により、血液中の気泡は、気液の密度差によって中心部に集まる。中心部に集まった気泡は、さらに浮力によって浮上して、第1連通部6を通って気泡貯留室5内に流入する(図1中の点線参照)。
気泡貯留室5内に流入した気泡は、浮力により、気泡貯留室5の高い方の部分(図1中の左側)へ集まる。
旋回流形成室2と気泡貯留室5とは、さらに第2連通部7を介して連通している。第2連通部7は、円錐台形部22の図1中の左側の周壁部(山腹部)付近に開口している。この第2連通部7は、中心軸50を介して第1連通部6と反対側の部分の気泡貯留室5と、円錐台形部22の周壁部とを連通している。
気泡貯留室5の容積は当然ながら一定であるので、旋回流形成室2から浮上した気泡が第1連通部6を通って気泡貯留室5へ流入すると、その流入した気泡と入れ替わりに同じの分だけの血液が気泡貯留室5から旋回流形成室2へ戻る必要がある。
本発明では、第2連通部7を設けたことにより、旋回流形成室2から浮上した気泡が第1連通部6を通って気泡貯留室5へ流入するのに伴い、気泡貯留室5内の血液が第2連通部7を通って旋回流形成室2へ戻ることができる(図1中の点線参照)。
よって、旋回流形成室2から浮上した気泡が気泡貯留室5へ流入するとき、円錐台形部22→第1連通部6→気泡貯留室5→第2連通部7→円錐台形部22の順の経路で一方向の流れを形成することができるので、旋回流形成室2内の気泡を効率良く、円滑かつ迅速に気泡貯留室5へ導入することができる。また、上記一方向の流れが形成されることにより、気泡貯留室5内での血液の滞留を防止することができるので、血液凝固が起こりにくい、という副次的効果も得られる。
また、第2連通部7が円錐台形部22の周壁部に連通しているので、第2連通部7の出口付近は、中心軸20に比較的近い。よって、第2連通部7の出口付近では旋回流の流速が比較的遅いので、第2連通部7から出た血液は、逆流したり旋回流を乱したりすることなく、円錐台形部22内に円滑に入ることができる。
第2連通部7の出口は、円錐台形部22の周壁に対し平面視で垂直な方向を向いていてもよく、また、円錐台形部22の周壁の接線方向、すなわち旋回流の向きに合わせた方向を向いていてもよい。
このような本発明と異なり、仮に第2連通部7がないとすると、旋回流形成室2内の気泡が第1連通部6を通って気泡貯留室5へ流入しようとしたとき、入れ替わりに気泡貯留室5から旋回流形成室2へ戻る血液が第1連通部6を気泡と逆向に通過することとなるので、第1連通部6付近の流れが乱され、気泡の円滑な通過が阻害されてしまうこととなる。
本実施形態では、中心軸50を介して第1連通部6と反対側の部分に、底面51よりも深さが一段深くなった溝53が形成されている。この溝53の底面である傾斜面52は、第2連通部7へ続いており、第2連通部7へ向かって下るように水平面に対し傾斜している。この傾斜面52を設けたことにより、気泡貯留室5内の血液を第2連通部7へより円滑かつ迅速に流下させることができる。
傾斜面52の傾斜角度βは、特に限定されないが、0〜90°であるのが好ましく、5〜40°であるのがより好ましい。
第1のフィルタ9は、空気(気体)を通過させ、血液を通過させないように構成された膜部材である。この第1のフィルタ9(第2のフィルタ16も同様)は、その表面が疎水化処理されているか、または、疎水性膜(疎水膜)であるのが好ましい。
前記疎水性膜の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。第1のフィルタ9は、これらの材料を、延伸法、ミクロ相分離法、電子線エッチング法、焼結法、アルゴンプラズマ粒子等の方法で多孔質としたものが好適に用いられる。
また、前記疎水化処理の方法は、特に限定されず、例えば、第1のフィルタ9の表面に、疎水性を有する構成材料をコーティングする方法等が挙げられる。
第1のフィルタ9は、気泡貯留室5の中心軸50に対し垂直に設けられている。すなわち、第1のフィルタ9は、旋回流形成室2の中心軸20に垂直な平面(水平面)に対し傾斜している。これにより、気泡貯留室5内に流入した気泡が第1のフィルタ9の傾斜に沿って気泡貯留室5の片側(図1中左側)に移動するので、気泡をより円滑かつ迅速に集めることができる。
また、第1のフィルタ9は、前述したように気泡貯留室5内の気体の通過を許容するため、気泡貯留室5からの水蒸気が第1のフィルタ9を通過することができる。この第1のフィルタ9を通過した水蒸気は、結露して液体Lとなり、第1のフィルタ9の傾斜に沿って、前記気泡と反対側(図1中右側)、すなわち、液体貯留室15側に移動することができ、よって、当該液体Lが液体貯留室15に流入し易くなる。
陰圧室8は、第1のフィルタ9により気泡貯留室5と隔てられて形成された平板状(扁平形状)の内部空間を有する部屋である。この陰圧室8は、気泡貯留室5と同心的に設けられている。よって、陰圧室8の中心軸も、旋回流形成室2の中心軸20に対し傾斜していることとなる。これにより、前述と同様に、陰圧室8の内部空間の液体Lが液体貯留室15側に移動することができ、よって、当該液体Lが液体貯留室15に流入し易くなる。
この陰圧室8内には、血液は流入しない。すなわち、第1のフィルタ9の上面91は、血液に接触せず、下面92は、血液に接触する。
気泡貯留室5内に溜まった気泡(空気)は、第1のフィルタ9を透過して陰圧室8内に吸い込まれ、液体貯留室15の脱気口153を通って気泡除去装置1Aの外部へ排出される。
図1に示すように、傾斜した陰圧室8の下方には、陰圧室8から突出した連結管18が設けられている。
この連結管18の底面181と第1のフィルタ9の上面91とには、段差が生じていない、すなわち、連結管18の底面181と第1のフィルタ9の上面91とが同一平面上に設けられているのが好ましい。これにより、液体Lが陰圧室8内に滞留するのを防止することができ、すなわち、液体Lが第1のフィルタ9の上面91から連結管18の底面181に円滑に流れることができ、よって、当該液体Lを液体貯留室15に向けて確実に排出することができる。
また、陰圧室8には、連結管18を介して、液体貯留室15が接続されて(設けられて)いる。
この液体貯留室15は、貯留室本体151と、逆止弁30を設置する逆止弁設置部152と、脱気手段(図示せず)に接続される脱気口153とを有している。なお、前記脱気手段としては、例えば、手術室の壁吸引を用いることができる。壁吸引とは、酸素、治療用空気、窒素、吸引などの医療ガス配管設備の一つであり、手術室の壁などに設置されている吸引(脱気)のための配管のことである。その他、脱気手段としては、個別の真空ポンプ等を用いてもよい。
貯留室本体151は、その形状が箱状をなす部位である。この貯留室本体151には、陰圧室8から流出し、連結管18を経て流入してくる液体Lを貯留することができる。これにより、前記液体Lが貯留室本体151で確実に捕獲されることとなり、よって、当該液体Lが気泡除去装置1Aの外部へ流出するのを確実に防止することができる。
逆止弁設置部152は、貯留室本体151の上部155に設けられた、円筒状をなす部位である。また、この逆止弁設置部152は、連結管18の突出方向(形成方向)と同方向に傾斜している。
また、逆止弁設置部152の端部154には、円筒状をなす脱気口153が突出して形成されている。このような脱気口153が設けられていることにより、例えば、脱気手段のチューブを当該脱気口153に容易かつ確実に接続することができ、よって、陰圧室8内は、陰圧に保たれ、当該陰圧室8内の気体(空気)が脱気口153から排出される。
脱気口153の突出方向は、連結管18(逆止弁設置部152)の突出方向とほぼ同じである。また、脱気口153は、その外径および内径が逆止弁設置部152より縮径している。
このような構成の液体貯留室15内には、第2のフィルタ16と、逆止弁30とが設置されている。この第2のフィルタ16は、第1のフィルタ9とほぼ同様の、空気(気体)を通過させ液体Lを通過させないように構成された膜部材である。また、逆止弁30は、気体の脱気手段側への流れのみを許容するよう構成された弁体である。
第2のフィルタ16は、陰圧室8と脱気手段との間、すなわち、貯留室本体151の連結管18が開口する開口部182より上部155側に設けられている。これにより、連結管18からの液体Lが第2のフィルタ16に接触せずに、貯留室本体151内に流入することができる。よって、液体Lが貯留室本体151内に確実に貯留され、当該液体Lが気泡除去装置1Aの外部へ流出するのを確実に防止することができる。
第2のフィルタ16は、第1のフィルタ9とほぼ平行、すなわち、水平方向に対して傾斜している。このような姿勢で第2のフィルタ16が設置されていることにより、万が一、第2のフィルタ16に液体Lが触れても、傾斜した(傾斜角度βの)第2のフィルタ16に沿って、液体Lは、第2のフィルタ16から速やかに離れるので、第2のフィルタ16の通気能力(気泡除去能力)が損なわれることが防止される。
また、第2のフィルタ16は、その厚さ方向、すなわち、中心軸50方向において、第1のフィルタ9より上側に位置している。換言すれば、第2のフィルタ16は、その最上端部161が第1のフィルタ9の最上端部93より下側に位置し、最下端部162が第1のフィルタ9の最下端部94とほぼ同じ高さに位置している。
また、第1のフィルタ9と第2のフィルタ16とは、それらの面方向、すなわち、中心軸50に対して垂直な方向(傾斜方向)において、互いに異なる位置に設けられている。これにより、第1のフィルタ9上の液体Lが第2のフィルタ16に接触するのを防止することができる。
逆止弁30は、脱気口153と第2のフィルタ16との間、すなわち、逆止弁設置部152に設けられている。これにより、脱気手段により排出された気体が陰圧室8に逆流するのを確実に防止することができ、よって、気泡除去装置1Aから気体を確実に除去することができる。また、液体貯留室15内の陰圧状態を安定して保つことができる。
また、本実施形態では、逆止弁30は、ダックビル弁で構成されているが(図1参照)、これに限定されず、気体の脱気手段側への流れのみを許容するよう構成されたものであれば、いかなる弁体でもよい。
このような気泡除去装置1Aでは、旋回流形成室2の上部に円錐台形部22を設けたことにより、遠心力と浮力とを効率良く用いて気泡を集めることができ、集めた気泡を第1連通部6を通して効率良く気泡貯留室5へ送ることができる。
本発明者の知見によれば、旋回流形成室2内の旋回流の作用によって中心部に集まった気泡は、略円柱状の塊となり、その気泡塊は、直径が第1連通部6の内径d2と概ね同じとなるように形成される。そのため、第1連通部6の内径d2と旋回流形成室2の最大内径とが近似な値であったり、第1連通部6の内径d2が旋回流形成室2の最大内径より大きかったりすると、気泡塊が旋回流形成室2内に全体的に広がってしまい、気液の分離効率が低下する。
このような観点から、旋回流形成室2の胴部23の内径(最大内径)d1と、第1連通部6の内径との比d2は、d1:d2=1:1〜10:1程度であるのが好ましく、2:1〜4:1程度であるのがより好ましい。
また、円錐台形部22の頂角θは、10〜170°であるのが好ましく、30〜150°であるのがより好ましく、40〜120°であるのがさらに好ましい。
円錐台形部22の頂角θが大きすぎると、円錐台形部22が高さの低い扁平な形状となるので、浮力を効果的に利用して気泡を気泡貯留室5に導きにくくなり、逆に、円錐台形部22の頂角θが小さすぎると、円錐台形部22の高さが高くなって充填量が増大してしまう。
旋回流形成室2の胴部23内には、中心部に集まった気泡塊の下端を規定する作用をする円板11と、この円板11を旋回流形成室2の底部に連結する連結部材12とが設置されている。円板11は、旋回流形成室2の中心軸20に垂直な姿勢で設置されている。円板11は、旋回流形成室2と同心的に設置するのが好ましいが、偏心していてもよい。
この円板11を設けたことにより、気泡塊は円板11より下側には形成されないので、集まった気泡が流出口4から流出するのをより確実に防止することができる。
円板11の上面の高さは、流入口3の下端31とほぼ同じかまたはそれより低い高さとされる。これにより、円板11が旋回流形成を阻害することはない。
円板11の直径は、第1連通部6の内径とほぼ同じかまたはそれより大きくされる。前述したように、気泡塊の直径は第1連通部6の内径とほぼ同じになるので、円板11の直径を第1連通部6の内径以上にすることにより、円板11の直径が気泡塊の直径以上になるので、気泡塊が円板11より下方に形成されるのをより確実に防止することができる。
円板11は、連結部材12の上端部に固定されている。連結部材12は、円板11とほぼ同じ直径の円筒状の部材であり、その下端は旋回流形成室2の底面に固定されている。連結部材12の周壁には、複数のスリットまたは開口が形成されており、血液はこのスリットまたは開口を通って連結部材12の外周側から内周側へ流れ、さらに流出口4へ流れる。
なお、連結部材12のスリットまたは開口には、気泡を通さないフィルタを設置してもよい。また、連結部材12は、円板11を単に支持する脚のような部材であっても良い。
円板11および連結部材12の外周面と、胴部23の内周面との間に形成されるドーナツ状(円筒状)の流路の断面積は、流入口3の流路断面積よりも大きくされる。これにより、このドーナツ状流路での流路抵抗を軽減することができる。
気泡除去装置1Aには、気泡貯留室5内の血液の液面レベルを検出する検出手段17Aが設けられている。この検出手段17Aは、傾斜面52(溝53)の上部521付近の外側に設けられた第1のセンサ13Aで構成されている(図1および図2参照)。
図2に示すように、第1のセンサ13Aは、超音波送信部(送信部)131と、溝53を介して超音波送信部(送信部)131の反対側に設置された超音波受信部(受信部)132とを有している。第1のセンサ13Aは、超音波送信部131から送信した超音波を超音波受信部132で受信し、液体(血液)と気体(気泡)とで超音波の透過率が異なるのを利用することにより、超音波送信部131および超音波受信部132の間にあるのが血液(液相)であるか気泡(気相)であるかを検出することができる。すなわち、気泡貯留室5内に気泡が溜まってきて、液面が第1のセンサ13Aの位置まで下がってきたとき、その液面レベル(液面)を第1のセンサ13Aで検出することができる。
なお、超音波送信部131と超音波受信部132とは、兼用することもでき、この場合は、下面視において、溝53の片側に設置することができる。
また、第1のセンサ13Aは、上記のような超音波式のものに限らず、光学式などの他の方式のものを用いてもよい。
次に、図4に基づいて、気泡除去装置1Aを用いた体外循環装置100Aの一例について説明する。
体外循環装置100Aは、血液を送液(移送)する遠心ポンプ(血液ポンプ)101と、遠心ポンプ101の吸入口と患者とを結ぶ脱血ライン102と、遠心ポンプ101の吐出口と患者とを結ぶ送血ライン103と、脱血ライン102の途中に設置された気泡除去装置1Aと、送血ライン103の途中に設置され、血液に対しガス交換を行う人工肺104と、送血ライン103の途中に設置された流量計105と、遠心ポンプ101の吸入口付近の脱血ライン102と人工肺104の出口付近の送血ライン103とを短絡して接続する再循環ライン106と、ラインを構成するチューブを挟持・開放することにより流路を開閉するクランプ107、108および109と、気泡除去装置1Aに設置された第1のセンサ13Aの検出信号に基づいてクランプ107、108および109の開閉状態を制御する制御装置(制御手段)110とを備えている。
クランプ107は、気泡除去装置1Aの流出口4付近の脱血ライン102に設置されており、クランプ108は、人工肺104の出口付近の送血ライン103に設置されており、クランプ109は、再循環ライン106に設置されている。
また、気泡除去装置1Aの脱気口153は、脱気ライン111を介して壁吸引(脱気手段)に接続されている。脱気ライン111の途中には、陰圧室8内の圧力を調整する陰圧レギュレータ112が設けられている。
制御装置110は、通常時は、クランプ107および108が開状態、クランプ109が閉状態となるよう制御する。
遠心ポンプ101が作動すると、患者から脱血カテーテル(図示せず)を介して脱血された血液は、脱血ライン102を通り、まず、気泡除去装置1Aの流入口3に流入する。気泡除去装置1Aでは、前述したようにして、血液中の気泡が除去される。気泡が除去された血液は、気泡除去装置1Aの流出口4から流出して、遠心ポンプ101内を通り、人工肺104に送られる。人工肺104では、血液に対してガス交換(酸素加脱炭酸ガス)がなされる。ガス交換がなされた血液は、送血ライン103を経て、送血カテーテル(図示せず)を介して患者に戻される。
これに対し、気泡除去装置1Aにおいて、気泡貯留室5内に気泡が所定量溜まったこと、すなわち、血液の液面が第1のセンサ13Aにより検出された場合には、制御装置110は、クランプ107および108が閉状態、クランプ109が開状態となるよう制御する。これにより、人工肺104を出た血液は、再循環ライン106を通って再度遠心ポンプ101の吸入口に戻ることとなる。よって、血液は、遠心ポンプ101および人工肺104を含む環状の流路を繰り返し循環(再循環)する。
この再循環を行うことにより、気泡除去装置1A内の気泡を患者へ送るのを確実に防止することができるとともに、遠心ポンプ101が駆動し続けても、遠心ポンプ101内での血液の損傷を抑えることができる。
再循環をしているとき、気泡貯留室5内の気泡が陰圧室8へ吸収され、気泡貯留室5内の気泡の量が減少または消滅したことが第1のセンサ13Aによって検出された、すなわち、血液の液面が上昇して当該液面が第1のセンサ13Aによって検出されない場合には、制御装置110は、クランプ107および108を開状態、クランプ109を閉状態に戻し、通常の体外循環状態に復帰させる。
以上のような制御により、体外循環装置100Aでは、気泡貯留室5内に気泡が過剰に溜まるのを確実に防止しつつ、円滑で適正な血液体外循環を行うことができる。
<第2実施形態>
図5は、本発明の気泡除去装置の第2実施形態を示す断面側面図、図6は、図5に示す気泡除去装置を用いた体外循環装置の一例を示す図、図7は、図6に示す体外循環装置の制御装置の制御プログラムを示すフローチャート、図8は、図6に示す体外循環装置の制御装置の制御による血液ポンプの回転数の経時変化を模式的に示すグラフである。なお、説明の都合上、図5中の上側を「上」または「上方」といい、下側を「下」または「下方」という。
以下、これらの図を参照して本発明の気泡除去装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、検出手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図5に示すように、気泡除去装置1Bには、気泡貯留室5内の血液の液面レベルを検出する検出手段17Bが設けられている。この検出手段17Bは、第1のセンサ13Aと、第2のセンサ13Bとを有している。
これらの第1のセンサ13Aおよび第2のセンサ13Bは、それぞれ、前記第1実施形態の第1のセンサ13Aと同様の構成の、すなわち、超音波送信部131と超音波受信部132とを有するセンサである。第1のセンサ13Aは、血液の第1の液面レベルQ1を検出するセンサであり、第2のセンサ13Bは、第1の液面レベルより下方の第2の液面レベルQ2を検出するセンサである。
第1のセンサ13Aは、傾斜面52の上部521付近の外側に設けられており、第2のセンサは、傾斜面52の中央部付近の外側に設けられている。換言すれば、第1のセンサ13Aおよび第2のセンサ13Bは、傾斜面52の傾斜方向に沿って設けられている。これにより、傾斜面52に沿う血液の流れに伴なう、液面の変化を確実に検知することができる。
また、第1のセンサ13Aと第2のセンサ13Bとは、鉛直方向、すなわち、中心軸20方向に、距離Hだけ離間している。なお、距離Hは、特に限定されないが、例えば、3〜30mmであるのが好ましく、5〜20mmであるのがより好ましい。
距離Hが前記下限値未満であると、第1のセンサ13Aと第2のセンサ13Bとが近接し過ぎてしまい、第1のセンサ13Aが第1の液面レベルQ1を検出した後、すぐに、第2のセンサ13Bが第2の液面レベルQ2を検出して、遠心ポンプ101の作動が停止してしまう。このため、体外循環装置100Bの稼働率が著しく低下することがある。
また、距離Hが前記上限値を超えると、他の条件によっては(例えば気泡貯留室5の大きさが小さい場合には)、第2のセンサ13Bが気泡貯留室5の最下面511より下方に位置する可能性がある。このため、第2のセンサ13Bが気泡貯留室5内の第2の液面レベルQ2を検出することが不可能となることがある。
次に、体外循環装置100Bについて説明する。
体外循環装置100Bは、制御装置110が第1のセンサ13Aおよび第2のセンサ13Bから得られた情報に基づいて、遠心ポンプ101の作動を制御する以外は前記第1実施形態の体外循環装置100Aと同様である。
制御装置110は、通常時は、クランプ107および108が開状態、クランプ109が閉状態となるよう制御する。
遠心ポンプ101が作動すると、患者から脱血カテーテル(図示せず)を介して脱血された血液は、脱血ライン102を通り、まず、気泡除去装置1Bの流入口3に流入する。気泡除去装置1Bでは、前記第1実施形態の気泡除去装置1Aと同様にして、血液中の気泡が除去される。気泡が除去された血液は、気泡除去装置1Bの流出口4から流出して、遠心ポンプ101内を通り、人工肺104に送られる。人工肺104では、血液に対してガス交換(酸素加脱炭酸ガス)がなされる。ガス交換がなされた血液は、送血ライン103を経て、送血カテーテル(図示せず)を介して患者に戻される。
体外循環装置100Bでは、脱血された血液とともに気泡除去装置1Bに流入する気泡量と、気泡除去装置1B(気泡除去手段)の気泡除去能力が等しいとき、気泡貯留室5内において、液面はある位置で安定する(バランスする)。
体外循環装置100B(気泡除去装置1B)では、遠心ポンプ101の回転数を低下させると、脱血される血流量が減少し、これに伴ない、気泡の流入量が減少する。このため、気泡除去能力が上回り、気泡貯留室5内の気泡は、順次除去されるので、気泡貯留室5内の血液の液面が上昇する傾向を示す。逆に、遠心ポンプ101の回転数を上昇させ過ぎると、遠心ポンプ101は、患者の適正血流量以上の血液(血流量)を無理に引き込むよう作動し(働き)、このため、血液のみならず、空気までも引き込んでしまう。この結果、気泡の流入量が増えて、気泡除去装置1B(気泡除去手段)の気泡除去能力を上回り、気泡貯留室5内に気泡が蓄積し、血液の液面が下降する。
この体外循環装置100Bでは、気泡貯留室5内の血液の液面を、第1の液面レベルQ1よりも上方に位置させる(維持させる)のが理想的である。
従って、制御装置110は、液面が第1の液面レベルQ1より上方に位置した状態から、第1の液面レベルQ1と第2の液面レベルQ2との間に下降したときは、その液面を第1の液面レベルQ1よりも上昇させるように、遠心ポンプ101の回転数を低下(減少)させる。
また、制御装置110は、第1の液面レベルQ1と第2の液面レベルQ2との間に位置する液面がさらに低下して、第2の液面レベルQ2よりも下降したときは、気泡貯留室5に多量の気泡が充満したこととなり、もはや遠心ポンプ101の回転数の制御では、気泡除去装置1Bから気泡を迅速かつ十分に除去するのが困難となるため、遠心ポンプ101の作動を停止する。この遠心ポンプ101の作動停止後、気泡除去装置1B内の気泡の除去を速やかに行い、その後、遠心ポンプ101を速やかに再度作動させる、すなわち、血液の体外循環を速やかに復帰させる。
なお、遠心ポンプ101作動停止中は、気泡除去装置1Bへの新たな気泡流入はないので、気泡除去装置1Bの気泡は、気泡除去手段により除去される。
以下、体外循環装置100Bの制御装置110の制御プログラムを、主に図7のフローチャートに基づいて説明する。
前述したように体外循環を開始すると、第1のセンサ13Aで液相が検出されたか否か、すなわち、液面が第1の液面レベルQ1より下方に位置するか否かを判断し(ステップS500)、第1のセンサ13Aで液相が検出された(液面が第1の液面レベルQ1より上方にある)場合には、そのときの(現状の)遠心ポンプ101の回転数を維持する(ステップS501)。
ステップS501を実行した後は、ステップS500に戻り、以後、それより下位のステップを順次実行する。
ステップS500において、第1のセンサ13Aで液相が検出されていない(液面が第1の液面レベルQ1まで低下した)と判断されたら、このときの遠心ポンプ101の回転数を、予め設定されている低下の度合(低下率)分(本実施形態では、10%)だけ低下させる(ステップS502)。
次に、制御装置110に内蔵されているタイマを作動させ(ステップS503)、該タイマにより設定された所定時間を経過したと判断されたら(ステップS504)、第2のセンサ13Bで液相が検出されたか否かを判断する(ステップS505)。
ステップS505において、第2のセンサ13Bで液相が検出された(液面が第2の液面レベルQ2まで低下していない)と判断されたら、ステップS500に戻り、以後、それより下位のステップを順次実行する。
また、ステップS505において、第2のセンサ13Bで液相が検出されていない(液面が第2の液面レベルQ2まで低下した)と判断されたら、遠心ポンプ101の作動を停止する(ステップS506)。
以上のような制御により、体外循環装置100Bでは、気泡貯留室5内に気泡が過剰に溜まるのを確実に防止しつつ、円滑で適正な血液体外循環を行うことができる。
なお、ステップS502において、遠心ポンプ101の回転数は、1回の工程で10%だけ低下し、タイマの設定時間、回転数を制御させているが、このときの低下は、ステップS502とステップS503との組み合せにより、図8(a)に示すように連続的であってもよいし、図8(b)に示すように段階的であってもよい。
回転数が連続的に低下するよう制御した場合には、流入する気泡の量(気泡流入量)が気泡除去能力を大きく上回る状況において、速やかにポンプ回転数を落とせるので、遠心ポンプ101の作動停止に至らず、体外循環を維持することができる。
また、回転数が段階的に低下するよう制御した場合には、流入する気泡の量(気泡流入量)が気泡除去能力をわずかに上回る状況において、液面が回復する(下降から上昇に転じる)時間を与えるため、過剰に遠心ポンプ101(血液ポンプ)の回転数を低下させる必要が省略される。
また、ステップS502において、遠心ポンプ101の回転数の低下率は、10%であるのに限定されず、例えば、5〜90%の範囲内にある所定の低下率であるのが好ましく、10〜50%の範囲内にある所定の低下率であるのがより好ましい。
また、ステップS505において、第2のセンサ13Bで液相が検出されていないと判断されたら、遠心ポンプ101の作動を停止するが、これに限定されず、例えば、遠心ポンプ101の作動を停止せずに、制御装置110が、クランプ107および108が閉状態、クランプ109が開状態となるよう制御してもよい。これにより、人工肺104を出た血液は、再循環ライン106を通って再度遠心ポンプ101の吸入口に戻ることとなる。よって、血液は、遠心ポンプ101および人工肺104を含む環状の流路を繰り返し循環(再循環)する。
再循環をしているとき、気泡除去装置1B内の気泡の除去を速やかに行い、その後、クランプ107および108を開状態、クランプ109を閉状態に戻し、通常の体外循環状態に復帰させる。
また、図5に示すように、第2のセンサ13Bは、第1のフィルタ9の最下端部94とほぼ同じ高さの位置に設けられているのが好ましい。これにより、第2のセンサ13Bが第2の液面レベルQ2を検出したとき、遠心ポンプ101の作動が停止するため、血液の液面レベルがさらに下降して、気泡貯留室5内の全体が空気で満たされるのを防止することができる。
また、第1のセンサ13Aおよび第2のセンサ13Bは、それぞれ、超音波送信部131および超音波受信部132を1つずつ有するものであるが、これに限定されず、例えば、一方が超音波送信部131と超音波受信部132とを兼用する1つのセンサで構成されたものであってもよし、双方が超音波送信部131と超音波受信部132とを兼用する1つのセンサで構成されたものであってもよい。
また、第1のセンサ13Aおよび第2のセンサ13Bは、それぞれ、超音波式のものであるが、これに限定されず、例えば、一方が光学式などの他の方式のものであってもよし、双方が光学式などの他の方式のものであってもよい。
以上、本発明の気泡除去装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、気泡除去装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、検出手段は、気泡貯留室内の血液の液面レベルを検出するよう構成されているが、これに限定されず、当該液面レベルに係る情報(例えば、圧力、質量)を検出するよう構成されていてもよい。
また、液体貯留室には、貯留した液体を排出する排出口を設けてもよい。これにより、貯留した液体が第2のフィルタに接触する(到達する)以前に、当該液体を液体貯留室から排出することができる。
この排出口は、通常、密閉されているが、例えば術後などにその密閉を解除して、貯留した液体を取り除くよう構成されていてもよい。
また、液体貯留室には、当該液体貯留室内を冷却する冷却手段を設けてもよい。これにより、液体貯留室内で水蒸気を確実に結露させることができ、よって、水蒸気が第2のフィルタを通過するのを確実に防止することができる。なお、冷却手段としては、例えば、液体貯留室本体の周囲にヒートシンクを設けることやペルチェ素子を装着すること等が挙げられる。