JP4838151B2 - ダッタンソバスプラウトピューレ、その製造法並びにダッタンソバスプラウトピューレ含有飲食品の製造法 - Google Patents
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Description
一方、ダッタン種はダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)と呼ばれる高山植物であって、中国南西部の雲南省、四川省、チベット自治区、内モンゴル、ネパールなどの山岳地帯で多く栽培されている。このダッタンソバの種子は普通ソバの種子に比較して、毛細血管強化作用、高血圧予防作用、酸化防止作用などの生理活性を有するフラボノイドの一種であるルチンが、60〜100倍も含まれており、機能性食品の素材として期待されている。
従来、このダッタンソバの種子からルチン含量の多い食品素材を得ることが知られているが(例えば、特許文献1〜5参照)、ダッタンソバの種子を発芽させスプラウトとした後ルチンの多いピューレを得ること、また該ピューレを効率良く得ること、また該ピューレを用いた飲食品は知られていない。
(1)ソバ殻の外径に対し5〜45倍に伸長した殻付きダッタンソバスプラウトを品温90〜100℃で15〜60分水蒸気との接触により加熱し、遠心力にて円周方向に高速回転させながら破砕部に誘導し先端部の間隙で機械的に破砕またはカットする破砕機の該間隙が0.7〜3.0mmの破砕機で破砕した後、0.3〜1.5mmの目開きの篩で篩別することを特徴とするダッタンソバスプラウトピューレの製造法。
(2)ソバ殻含量が2.6%(w/w)以下であり、ルチン含量が0.4%(w/w)以上であり、ルチン分解酵素活性が0であり、保存中にルチン含量の低減がなく、黄緑色の色調を有し、食感が非常に滑らかなダッタンソバスプラウトピューレ。
(3)飲食品の製造工程において、ソバ殻含量が2.6%(w/w)以下であり、ルチン含量が0.4%(w/w)以上であり、ルチン分解酵素活性が0であり、保存中にルチン含量の低減がなく、黄緑色の色調を有し、食感が非常に滑らかなダッタンソバスプラウトピューレを添加することを特徴とするダッタンソバスプラウトピューレ含有飲食品の製造法。
これに対し、水蒸気との接触による方法のときは、スプラウトの組織を傷める(成分が漏洩する)ことなく、また着色及び風味を劣化させることなく、加熱を行うことが可能で、また、簡易な設備でダッタンソバスプラウトを大量に処理できるので好ましい。
また、加熱時間が15分間未満では、ルチン分解酵素が完全に失活せず、ダッタンソバスプラウトが含有するルチンの分解が生じる危険性があり、反対に60分を超えると着色が進み、風味が劣化する危険を有するので好ましくない。
該スプラウトには殻が付着している。この殻の大きさは、通常は(2.4〜5.0mm)×(4.5〜5.9mm)×(2.4〜5.0mm)である。この殻の付着は強固であるため、該スプラウトから殻を分離することは容易でなく、また、殻が付着したスプラウトは通常の磨砕では、殻が微細化され磨砕物に分散して、ザラザラとした舌触りとなり、食品素材として、特にピューレとして利用することができない。また、該スプラウトは、通常の磨砕では、磨砕後、殻部分のみを磨砕物全体から取り除くことが容易でなく、効率的に殻を分離除去できない。
破砕機を用いることは重要であって、他の磨砕機を用いるときは、殻が微細化され磨砕物に分散して、ザラザラとした舌触りとなり、該殻の分離が効率よく行うことができない。そして食品素材として、特にピューレとして利用することができない。
このとき、篩の目開きが1.5mmを越えるときはソバ殻含量が2.6%(w/w)を越え、このときザラザラとした食感となり、本発明の滑らかなダッタンソバスプラウトピューレを得ることができない。
(ダッタンソバスプラウトにおけるルチンの分布調査)
ルチン含量の高いダッタンソバスプラウトピューレを製造するため、ダッタンソバスプラウトの殻、芽、茎及び根において、どの部分にルチンが最も含まれているかを調査した。
栽培8日目のダッタンソバスプラウト20個体を、殻、芽、茎及び根の部分に分別して、それぞれの部位を凍結した。凍結したそれぞれの部位と同じ重量の海砂を乳鉢にとり、ドライアイス/メタノールバス中で10分間磨砕した。磨砕したそれぞれの部位にメタノール50mlを加えて、1時間還流した。得られた溶液を冷却後、3300Gで15分間遠心分離処理した。上澄液を減圧濃縮し、メタノールで30mlに定容した後、それぞれの部位に含まれるルチン含量を以下の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
0〜10分(A液95%、B液5%)、
10〜50分(A液95%〜50%、B液5%〜50%)、
50〜55分(A液50%〜95%、B液50%〜5%)、
55〜60分(A液95%、B液5%)、
流量:0.8ml/min、検出波長:254nm、供試サンプル量:20μlであった。
以上の測定条件でルチンのピーク高さを測定し、ピーク高さによる絶対検量線法により作成した検量線から、ダッタンソバスプラウトの殻、芽、茎及び根のそれぞれの部位のルチン含量を測定した。
その結果を表1に示す。
(ダッタンソバスプラウトの加熱処理条件の検討)
ダッタンソバスプラウトは、ルチンを多量に含有する一方で、ルチンをケルセチンに分解するルチン分解酵素も多量に含有するため、ダッタンソバスプラウトピューレの製造時に、ダッタンソバスプラウトをそのまま破砕するとルチンがケルセチンに分解され、該ダッタンソバスプラウトピューレのルチン含量が低減する欠点を有する。よって、ダッタンソバスプラウトピューレの製造時の、ルチンの低下を抑制するため、ダッタンソバスプラウトに含まれるルチン分解酵素の加熱による失活条件を検討した。
100粒のダッタンソバ種子を0.3%さらし粉水溶液に15分間浸漬して当該種子表面を殺菌し、流水で15分間洗浄した後に、ガーゼを敷いたシャーレ上に播種して、26℃のインキュベーターで8日間栽培しダッタンソバスプラウトとした。
次いで当該ダッタンソバスプラウト10gに0.02M酢酸緩衝液(pH5.0)40gと海砂5gを加えて、乳鉢中で3分間磨砕した。次いで当該磨砕物を1200Gで10分間遠心分離し、上清をNo.1濾紙(東洋濾紙株式会社製)で濾過し、上記酢酸緩衝液でコンディショニングしたC18ミニカラム(日本ウォーターズ株式会社製)に供し、ルチン及びケルセチンを除去したルチン分解酵素の粗酵素液を調整した。
以上の測定条件で当該酵素反応前後におけるルチン及びケルセチン含量のピーク面積を測定し、ルチン分解酵素によるルチンのケルセチンへの分解率を測定した。
その結果を表2に示す。
(ダッタンソバスプラウトの加熱処理の検討)
上記実験例2より、ダッタンソバスプラウト中のルチン分解酵素は、90℃、5分間の加熱処理により完全に失活することが判明したが、ダッタンソバスプラウトを直接加熱して、含有するルチン分解酵素の失活条件を検討するため、当該加熱されるダッタンソバスプラウトの品温が90℃に達するまでのカムアップタイム(Come−up time)を調査した。その結果、本実験で用いた加熱装置であるスチームブランチングでは、加熱開始から6分で、ダッタンソバスプラウトの品温が90℃に達した。よって、以下の実験では目的とする加熱時間に6分間を加えた時間で、ダッタンソバスプラウトを加熱処理した。
その結果を表3及び図2に示す。
ダッタンソバスプラウト1.0kgを21分間スチームブランチングし、コミトロール(商品名、アーシェル社製)を用いて、そのブレード間隙(opening)が、0.0799インチ(約2.0mm)と0.0507インチ(約1.3mm)で破砕した。
このダッタンソバスプラウトの破砕処理条件は、殻の大きさが、(2.4〜5.0mm)×(4.5〜5.9mm)×(2.4〜5.0mm)であるため、当該殻(果皮)をすべて確実に破砕できる、該殻が通過できない若干狭い当該ブレード間隙を選択した。
先ず、上から目開き1.7mm、1.0mm、0.84mm、0.6mm、0.42mm及び0.35mmの篩を6段の重ね、最上段の目開き1.7mmの篩上に、破砕したダッタンソバスプラウト100gをのせて、水道水で充分に洗浄した。次いで該最上段の目開き1.7mmの篩を除いて、2段目の目開き1.0mmの篩を水道水で充分に洗浄し、同様に3段目、4段目、5段目及び6段目の篩を同様に水道水で充分に洗浄した後、各篩上の残滓の重量を測定し、また肉眼観察をして殻の混入状態を確認した。
この結果を表4(残滓の粒度分布と殻の混入状態)に示す。
ここで得られたダッタンソバスプラウトピューレは、ダッタンソバスプラウト特有の香味ときれいな黄緑色の色調を有するものであり、ソバ殻含量が1.0%(w/w)で、ルチン含量が0.4%(w/w)含有するものであった。
ここで得られたダッタンソバスプラウトピューレも、ダッタンソバスプラウト特有の香味ときれいな黄緑色の色調を有するものであり、ソバ殻含量が0.4%(w/w)で、ルチン含量が0.4%(w/w)含有するものであった。
ダッタンソバスプラウト1.0kgを21分間スチームブランチングし、スーパーマスコロイダー(商品名、増幸産業株式会社製)を用いて、そのクリアランスを2.0mmに設定して破砕した。そして、スクリーンサイズφ0.5mmのパドル式パルパーフィニッシャーで裏ごしして、該ダッタンソバスプラウト破砕物から殻を取り除いて、ダッタンソバスプラウトピューレ622gを得た。ここで得られたダッタンソバスプラウトピューレも、ダッタンソバスプラウト特有の香味ときれいな黄緑色の色調を有するものであり、ソバ殻含量が0.4%(w/w)で、ルチン含量が0.4%(w/w)含有するものであった。
実施例1の、ブレード間隙0.0799インチ(約2.0mm)のコミトロールで破砕し、φ0.5mmのパドル式パルパーフィニッシャーで裏ごしして、作成したダッタンソバスプラウトピューレ0.5kgに、トマトジュース6.35kg、人参ジュース1.5kg、ほうれん草汁1.5kg、セロリ汁0.05kg、明日葉汁0.05kg、及びかぼちゃピューレ0.05kgを配合し撹拌混合して、野菜ジュース10kgを調合した。
そして、当該野菜ジュースをHTST(High Tempereture Short Time)殺菌機で、120℃、42秒の加熱条件で殺菌し190g缶に充填して冷却し、ダッタンソバスプラウト含有野菜ジュース飲料を製造した。
Claims (3)
- ソバ殻の外径に対し5〜45倍に伸長した殻付きダッタンソバスプラウトを品温90〜100℃で15〜60分水蒸気との接触により加熱し、遠心力にて円周方向に高速回転させながら破砕部に誘導し先端部の間隙で機械的に破砕またはカットする破砕機の該間隙が0.7〜3.0mmの破砕機で破砕した後、0.3〜1.5mmの目開きの篩で篩別することを特徴とするダッタンソバスプラウトピューレの製造法。
- ソバ殻含量が2.6%(w/w)以下であり、ルチン含量が0.4%(w/w)以上であり、ルチン分解酵素活性が0であり、保存中にルチン含量の低減がなく、黄緑色の色調を有し、食感が非常に滑らかなダッタンソバスプラウトピューレ。
- 飲食品の製造工程において、ソバ殻含量が2.6%(w/w)以下であり、ルチン含量が0.4%(w/w)以上であり、ルチン分解酵素活性が0であり、保存中にルチン含量の低減がなく、黄緑色の色調を有し、食感が非常に滑らかなダッタンソバスプラウトピューレを添加することを特徴とするダッタンソバスプラウトピューレ含有飲食品の製造法。
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