JP4837317B2 - 細胞培養器具及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を細胞培養面にコーティングした細胞培養器具及びその製造方法に関する。
接着性細胞の培養に用いられるシャーレ、チャンバー等の細胞培養器具としては、主として器具の培養面にα−ポリリジン、ポリエチレンイミン等のカチオン性ポリマーをコーティングし細胞接着性を増強したものが開示され(例えば、特許文献1参照)市販されている。また、生体適合性の高いキトサンの利用等も研究されている。これらの細胞培養器具は、比較的安価であり、また簡便に作成することができるため、接着性細胞では、株化細胞、初代細胞を問わず、線維芽細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、角膜細胞等の培養に広く用いられている。また、血球系細胞等のいわゆる浮遊細胞等にも広く使用されている。
しかし、α−ポリリジン、ポリエチレンイミン等のカチオン性ポリマーは、細胞毒性が強いことが知られている。またこれらの細胞培養器具上では細胞の種類によっては細胞の増殖は認められるものの、細胞の接着が不十分だったり、細胞骨格の発達が悪かったりすることがあり、特に初代培養においてはそれらの現象が顕著である。
そこで、細胞の接着性、増殖性を高めることを目的として、コラーゲン、ゼラチンといった細胞外マトリックスやファイブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンといった生体由来物質を接着因子として培養面にコーティングした細胞培養器具も用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
ところが、これら生体由来物質は概して非常に高価であることが多く、またこれらの物質を器具表面にコーティングするには煩雑な作業が必要であり、かつコーティングされた表面の安定性や保存性が乏しい等の短所を伴う。
そのため、容易かつ安価に培養器具表面をコーティングでき、基材表面と細胞との接着性が良好であるとともに、細胞毒性が低く細胞の伸展や増殖に有効な、かつ良好な細胞の形態及び配列が得られる培養手法に対する期待が大きい。
特開平6−181740号公報 Mochizuki, M., Kadoya, Y., Wakabayashi, Y., Kato, K., Okazaki, I., Yamada, M., Sato, T., Sakairi, N., Nishi, N., and Nomizu, M., FASEB J.,17, 875-877 (2003).
本発明の課題は、コーティング作業が容易で、低コストであり、細胞毒性が低く、かつ良好な細胞接着性を有する細胞培養器具を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究した。その結果、細胞培養器具の基材表面に、従来のα結合したポリリジンに代えて、リジンのε位のアミノ基が、カルボキシル基と結合したε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種をコーティングすることにより、カチオン性が強いにもかかわらず細胞毒性が低く、細胞接着性の弱い細胞においても良好な接着・増殖能が発現することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は下記によって構成される。
(1)基材表面が、ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされていることを特徴とする細胞培養器具。
(2)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体の数平均分子量が8,000〜100,000である前記(1)項記載の細胞培養器具。
(3ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種のコーティング量が1ng/cm〜500μg/cmである前記(1)または(2)項記載の細胞培養器具。
(4)基材がガラスである前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の細胞培養器具。
(5)基材が合成樹脂である前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の細胞培養器具。
(6)基材表面をε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種の溶液に接触させる工程を含むことを特徴とする、基材表面がε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされている細胞培養器具の製造方法。
(7)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体の数平均分子量が8,000〜100,000である前記(6)項記載の細胞培養器具の製造方法。
(8)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種の溶液に接触させる工程の後に、該表面を乾燥する工程を含む前記(6)または(7)項記載の細胞培養器具の製造方法。
(9)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種の溶液に接触させる工程の後に、過剰な該溶液を除去する工程を含む前記(6)または(7)項記載の細胞培養器具の製造方法。
(10)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種の溶液に接触させる工程の後に、過剰な該溶液を除去する工程を含み、更にその後に該表面を乾燥する工程を含む前記(6)または(7)項記載の細胞培養器具の製造方法。
(11)ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種の溶液の溶媒がホウ酸緩衝液である前記(6)〜(10)項のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
(12)基材がガラスである前記(6)〜(11)項のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
(13)基材が合成樹脂である前記(6)〜(11)項のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
本発明の細胞培養器具は、少なくとも基材表面の細胞培養に供する部分が、ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされているため、細胞接着率が高く、細胞も十分伸展し、細胞骨格の形成に優れており、更に細胞毒性が低い。また、本発明の製造方法に従うと、ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種は従来と同様の簡便な操作で細胞培養器具の基材表面にコーティングすることができ、該細胞培養器具を安価に量産し、広く供給することができる。
本発明の細胞培養器具は、基材表面がε−ポリ−L−リジン(以下、ε−ポリリジンという)の高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされる。コーティングは基材表面の一部でも全面でも良く、少なくとも基材表面の細胞培養に供する部分がコーティングされていれば良い。
本発明において使用される細胞培養器具の基材の材質は、細胞毒性が無く耐水性を有し、細胞の培養に適したものであれば特に限定しない。一般的にはガラスや、合成樹脂が用いられるが、蛍光顕微鏡観察等を目的とすることを考慮した場合は、ガラス等のような、使用する可視、紫外光の波長に対して測定可能な程度に透明であることが望ましい。ガラス以外の基材としては、透明であることが必要な場合は、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、TPX(メチルペンテンポリマー)樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、不透明の場合は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
また、本発明において使用される細胞培養器具の基材の形状は、特に限定はされないが、プレート状、ビーズ状、繊維状、及び多孔質状の形状が例示できる。
本発明において、使用されるε−ポリリジンは、何れの方法によって得られたものであってもよく、リジンから化学合成により得られたものもでもよいが、この化学合成品は非常に合成が難しく、また非常に高価でもある為、具体的には、特許第1245361号明細書に記載のストレプトマイセス・アルブラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを、グルコース5重量%、酵母エキス0.5重量%、硫酸アンモニウム1重量%、リン酸水素二カリウム0.08重量%、リン酸二水素カリウム0.136重量%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05重量%、硫酸亜鉛・7水和物0.004重量%、硫酸鉄・7水和物0.03重量%、pH6.8に調整した培地にて培養し、得られた培養物からε−ポリリジンを分離・採取することによって得られるε−ポリリジンを挙げることができる。
また、本発明において使用されるε−ポリリジンの高分子量化誘導体(以下、高分子量化ε−ポリリジンともいう)は、ε−ポリリジンをベースユニットとして高分子量化したものである。高分子量化ε−ポリリジンの製造方法としては、例えば特許第3502879号公報記載の放射線照射による方法や、特開2003−171464号公報記載の架橋剤を用いる方法を例示することができる。
しかし、放射線照射には高価な機器設備を必要とし、高分子量化ε−ポリリジンの製造に当っては高度な作業管理を必要とする。また、架橋剤による高分子量化では反応時間が長時間であるとともに未反応物の除去等煩雑な作業を要する。
簡便で容易な高分子量化ε−ポリリジンの作製方法としては、特開2003−171463号公報記載の方法を例示することができる。即ち、ε−ポリリジンを不活性ガス雰囲気または真空中において、150℃以上の温度で熱処理し、脱水縮合反応により高分子量化ε−ポリリジンを得ることができる。このとき、処理温度、処理時間を調節することにより、得られる高分子量化ε−ポリリジンの平均分子量を調節することができ、基本的には処理温度が高い程、また処理時間が長い程高分子化が進行する。また、このようにして製造した高分子量化ε−ポリリジンは分子量分布が広くなり易いが、必要に応じてゲルろ過、その他の方法を用いて適当な分子量画分を得ることもできる。
尚、本発明で使用される高分子量化ε−ポリリジンの数平均分子量は、前述の如く種々のものを製造することができるが、8,000〜100,000が安定して製造できるため好ましい。
また、本発明において、ε−ポリリジン、高分子量化ε−ポリリジン及びそれらの塩の分子量はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって測定される。
本発明において使用される高分子量化ε−ポリリジンの塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸等の無機酸と高分子量化ε−ポリリジンとで形成されるε−ポリリジンの無機酸塩、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸、グルコン酸、及び乳酸等の有機酸と高分子量化ε−ポリリジンとで形成されるε−ポリリジンの有機酸塩、カプロン酸、ラウリン酸、及びステアリン酸等の中鎖及び長鎖の飽和脂肪酸と高分子量化ε−ポリリジンとで形成されるε−ポリリジンの飽和脂肪酸塩、オレイン酸、リノール酸、及びアラキドン酸等の中鎖及び長鎖の不飽和脂肪酸と高分子量化ε−ポリリジンとで形成される高分子量化ε−ポリリジンの不飽和脂肪酸塩等が挙げられる。
本発明において、細胞培養器具の少なくとも基材表面の細胞培養に供する部分にコーティングされる高分子量化ε−ポリリジン、及びその塩から選ばれた少なくとも1種(以下、総称して「ε−ポリリジン類」ということがある)のコーティング量は、好ましくは1ng/cm〜500μg/cm、より好ましくは5ng/cm〜5μg/cm、更に好ましくは10〜500ng/cmである。コーティング量が上記の範囲であれば、接着性細胞の培養に適した細胞培養器具が得られる。
本発明の細胞培養器具で培養できる細胞の種類は特に限定されないが、例えば、接着性細胞では、株化細胞、初代細胞を問わず、線維芽細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、角膜細胞、軟骨細胞、肝細胞、小腸上皮細胞、表皮角化細胞、骨芽細胞、骨髄間葉細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、神経幹細胞、神経細胞等の培養に広く用いることができる。また、血球系細胞等のいわゆる浮遊細胞等にも広く使用することができる。
細胞の培養の際には、通常、細胞懸濁液、及び細胞培養液(例えば、DME培地、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を培養器具の培養面上に添加することができる。細胞の培養条件は培養する細胞の種類に応じて適宜選択が可能である。
本発明の細胞培養器具の製造方法においては、少なくとも基材表面の細胞培養に供する部分にε−ポリリジン類をコーティングするため、該部分をε−ポリリジン類の溶液に接触させる工程が含まれる。
ε−ポリリジン類の溶液に用いる溶媒としては、特に制限はないが、ε−ポリリジン類が溶解し、ε−ポリリジン類を変質させるものでなければ、何でも使用することができる。例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールと水の混合物、イソプロピルアルコールと水の混合物、燐酸緩衝液、ホウ酸緩衝液及びこれらを混合したものを挙げることができるが、例えばガラスへのコーティングに際しては、ホウ酸緩衝液が好ましい溶媒として例示される。
本発明の細胞培養器具を製造するため、少なくとも基材表面の細胞培養に供する部分をε−ポリリジン類の溶液に接触させる方法の例としては、ε−ポリリジン類のコーティング量が目的量となるようにε−ポリリジン類溶液をスピンコート、バーコート等の通常のコーティング方法により基材表面の細胞培養に供する部分に必要量塗工する方法が挙げられる。この場合、塗工後は乾燥させることなく細胞の培養に供することができるが、塗工後に乾燥する場合は、基材の材質に依存するが、室温(23℃)から150℃で実施することができる。
基材表面の細胞培養に供する部分の面積が非常に小さい場合、あるいは形状が複雑で目的量のε−ポリリジン類溶液を通常のコーティング方法で直接均一に塗工することができない場合は、基材表面の少なくとも細胞培養に供する部分をε−ポリリジン類溶液に含浸させるか、あるいはε−ポリリジン類溶液を基材表面の細胞培養に供する部分に滴下する等の方法によって、基材表面の細胞培養に供する部分にε−ポリリジン類溶液を接触させることで、コーティングすることができる。
その場合、ε−ポリリジン類溶液中のε−ポリリジン類の濃度は、特に限定されないが、濃度が薄いとコーティング量が少なくなり、逆に濃すぎても過剰のε−ポリリジン類を除去しない場合には、培養する細胞への影響が懸念されるため、1.0ng/ml〜20.0mg/mlが好ましく、1.0μg/ml〜10.0mg/mlがより好ましく、溶液のコストとコーティング量等を考慮した場合、0.01〜5.0mg/mlが更に好ましい。
ε−ポリリジン類の溶液と培養器具の基材表面の接触時間は特に限定しないが、該溶液と基材表面の接触角が40度以下であれば、数分間から数十分間で十分であり、40度以上の場合は数時間が好ましい。また、接着性の特に乏しい細胞の培養に供する場合は12時間から24時間接触させることが好ましい。
本発明においては、基材表面にε−ポリリジン類の溶液に接触させる工程の後に、コーティング量を調整するため、過剰なε−ポリリジン類の溶液を除去することが好ましい。過剰なε−ポリリジン類の溶液を除去するために、ε−ポリリジン類の溶液に接触させた後の基材表面を洗浄してもよい。洗浄する場合は、ε−ポリリジン類の溶液を作製するのに用いたのと同一の溶媒を用いるのが基本であるが、滅菌水や超純水を用いてもよい。
洗浄後は乾燥させることなく細胞の培養に供することができるが、洗浄後に乾燥する場合は、基材の材質に依存するが、室温(23℃)から150℃で実施することができる。
以下,本発明の特徴を更に具体的に示すため、本発明に従うε−ポリリジン類を用いる細胞培養器具の作製に関する実施例を記すが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
参考例1)
コーティングカバーガラスの作製
ε−ポリリジン塩酸塩(ε−ポリリジン(数平均分子量4,000)の塩酸塩、チッソ(株)製)を0.1Mホウ酸緩衝液にて溶解し、0.2及び1.0mg/mlの濃度のε−ポリリジン塩酸塩溶液を調製した。培養前日に10cmプラスティックシャーレにカバーガラス(岩城硝子(株)製、18mm)を並べ、100%エタノールを入れ室温(23℃)で30分静置した。超純水で2回洗った(1回の洗いで10分間振とう)後、上記のε−ポリリジン塩酸塩溶液2mlに一晩つけて、室温(23℃)にて静置した。培養当日、滅菌水で2回洗い(1回の洗いで2時間振とう)、コーティングカバーガラスを作製した。
コーティング量の定量
作製したコーティングカバーガラスを砕きガラス管に入れた。砕く時に使用した容器にカバーガラスの破片が残らないように、6M HCl、0.1%PhOH(100μl)で共洗いして、残さずにガラス管に移した。スイングアウトローターの遠心機で2,000rpm、5分間遠心した後、ガラス管を封管した。
封管したガラス管に乾熱滅菌器で熱をかけ、酸加水分解処理を行った(30分かけて120℃まで温度を上げ、120℃で5分間、続いて20分かけて150℃まで温度を上げ、150℃で2時間熱処理)。室温(23℃)まで温度が下がるのを待ち、封管を開けた。ガラス管中の溶液をピペットマン(ギルソン社製)でろ過フィルター付きのエッペドルフチューブ(Millipore社製、 Ultrafree-MC, 0.1μm Filter Unit)に移し、ガラス管の中を50μlの滅菌超純水で共洗いし、残さずろ過フィルター付きエッペンドルフチューブに移した。フィルター付きエッペンドルフチューブを2,000rpmで5分間遠心し、ろ過した。ろ液をアミノ酸分析に供しリジンの定量を行った。この値から求めたε−ポリリジン塩酸塩量をカバーガラスの表面積で除してコーティング量を求めた。基材表面の細胞培養に供する部分におけるε−ポリリジン塩酸塩のコーティング量は、濃度0.2mg/mlの溶液でコーティングしたものが100ng/cm、及び濃度1.0mg/mlの溶液でコーティングしたものが120ng/cmであった。
(比較例1)
ε−ポリリジン塩酸塩を、α−ポリリジン臭化水素酸塩(数平均分子量15,000、和光純薬工業(株)製)に代えた以外は参考例1と同様にしてコーティングカバーガラスを作製し、コーティング量を定量した。基材表面の細胞培養に供する部分におけるα−ポリリジン臭化水素酸塩のコーティング量は、130ng/cm及び160ng/cmであった。
細胞培養試験(1)
参考例1、及び比較例1に記載の手順で作製したコーティングカバーガラスを3.5cmプラスティックシャーレ内に置き、A549細胞(人肺ガン細胞、ATCCより入手)用のDME培地(牛胎児血清を10%含む)を1ml加えた。更に、カバーガラス上からゆっくりとA549細胞懸濁液(1×10cells/well)1mlを加えた。20時間後に位相差顕微鏡にて細胞の接着、増殖の様子を観察した。その結果を図1に示す。参考例1のε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具は、比較例1の細胞培養器具に比べて、細胞接着率が高く細胞も十分伸展しており、細胞骨格の形成に優れていることが明白である。
参考例2)
コーティング乾燥カバーガラスの作製
ε−ポリリジン塩酸塩(ε−ポリリジン(数平均分子量4,000)の塩酸塩、チッソ(株)製)を0.1Mホウ酸緩衝液にて溶解し、0.2及び1.0mg/mlの濃度のε−ポリリジン塩酸塩溶液を調製した。10cmプラスティックシャーレにカバーガラス(岩城硝子(株)製、18mm)を並べ、100%エタノールを入れ室温(23℃)で30分静置した。超純水で2回洗った(1回の洗いで10分間振とう)後、上記のε−ポリリジン塩酸塩溶液2mlに一晩つけて、室温(23℃)にて静置した。滅菌水で2回洗った(1回の洗いで2時間振とう)後、乾熱滅菌器に入れ70℃で12時間静置し完全に乾燥させて、コーティングカバーガラスを作製し、参考例1と同様にしてコーティング量を定量した。基材表面の細胞培養に供する部分におけるε−ポリリジン塩酸塩のコーティング量は、90ng/cm及び130ng/cmであった。
(比較例2)
ε−ポリリジン塩酸塩を、α−ポリリジン臭化水素酸塩(数平均分子量15,000、和光純薬工業(株)製)に代えた以外は参考例2と同様にしてコーティング乾燥カバーガラスを作製しコーティング量を定量した。基材表面の細胞培養に供する部分におけるα−ポリリジン臭化水素酸塩のコーティング量は、135ng/cm及び150ng/cmであった。
参考例2及び比較例2にて作製したコーティングカバーガラスにおけるコーティング量の定量結果を図4に示す。1cmあたりのポリリジン塩の量はε−ポリリジン塩酸塩の方が少ない。本発明におけるε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具の優れた細胞接着性はε−ポリリジン類の高い細胞親和性や低い細胞毒性が大きく寄与していることが示唆される。
細胞培養試験(2)
参考例2で作製した乾燥カバーガラスを細胞培養試験(1)の場合と同様に3.5cmプラスティックシャーレ内に置き、A549細胞用のDME培地(牛胎児血清を10%含む)を1ml加えた。更に、カバーガラス上からゆっくりとA549細胞懸濁液(1×10cells/well)1mlを加えた。20時間後に位相差顕微鏡にて細胞の接着・増殖の様子を観察した。その結果を図2に示す。本発明におけるε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具は、乾燥操作を加えても性能が低下しないことが明白である。
接着細胞数の定量
参考例2、及び比較例2にて作製したコーティング乾燥カバーガラス(0.2mg/mlポリリジン塩溶液:コーティング量90ng/cm 及び135ng/cm)を細胞培養試験(1)の場合と同様に3.5cmプラスティックシャーレ内に置き、A549細胞用のDME培地(牛胎児血清を10%含む)を1ml加えた。更に、カバーガラス上からゆっくりとA549細胞懸濁液(1×10cells/well)を1ml加えた。
20時間培養後、細胞を1×PBS1mlで2度洗浄した。3.5cmプラスティックシャーレからカバーガラスの表面を傷つけないように取り出し、1×PBS1mlで濯ぎ、2well培養チャンバー(Nunc社製、Lab-Tek チェンバースライド177380)に沈め新しい培地を1.1ml加えた。Cell Counting Kit-8((株)同仁化学研究所製)を各wellに300μl加え、全体が混ざるように軽く振とうした。37℃、COインキュベーターに入れ2時間培養した。Cell Counting Kit-8で呈色反応させた細胞培養培地を2well培養チャンバーから110μl/well取り、96well plateに移し変えた。プレートリーダー(Thermo Labsystems社製、Multiskan Ascent BIF)で波長450nmと620nmの吸光度を測定し、生細胞数を測定した。その結果を図3に示す。参考例2(図3のepsilon)のε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具が、比較例2(図3のalpha)の細胞培養器具に比べて、優れた細胞接着性を有することが明白である。
ε−ポリリジン類の細胞毒性評価
本発明においてコーティング剤として用いるε−ポリリジン類を用いて、A549細胞(人肺がん細胞、ATCCより入手)に対する細胞毒性評価を行った。評価にはε−ポリリジン塩酸塩(チッソ(株)製)を用い、比較化合物としてα−ポリリジン臭化水素酸塩(平均分子量15000、和光純薬工業(株)製)を用いた。
96wellマイクロプレートにA549細胞1×10cells/wellを播種し、DME培地(牛胎児血清を10%含む)を用い37℃、5%COで一晩培養した細胞の培地をアスピレーターで取り除き、新たに1well当り40μlずつ通常の濃度より1.25倍濃い培地を加えた。最終的に所定の濃度となるポリリジン塩溶液(10μl)を加え、37℃で3時間細胞を培養した。
3時間培養後、アスピレーターで培地を取り除いて、新たに培地を1well当り100μlずつ加え46時間培養した。110μlのフレッシュな培地に交換後、Cell Counting Kit-8((株)同仁化学研究所製)を10μlずつ加え37℃で2時間培養し呈色反応を行った。プレートリーダー(Thermo Labsystems社製、Multiskan Ascent BIF)を用い、波長450nm(リファレンス650nm)の吸光度を測定し細胞生存率を算出した。その結果を図5に示した。低濃度領域では相違はみられないが、300mg/l以上の高濃度領域ではα−ポリリジン臭化水素酸塩における細胞生存率がε−ポリリジン塩酸塩の場合より有意に低く、ε−ポリリジン類の細胞毒性が低いことが確認できた。
細胞培養試験(3)
参考例1で作製したε−ポリリジンコーティングカバーグラス(コーティング量:120ng/cm)、及び対照品となるノンコート(コーティングしていないことを意味する。以下同様)カバーグラスを24well plateに入れ、2×10cells/mlに調製したラット大脳皮質ニューロン初代培養細胞懸濁液を1ml/wellずつ加えた。24時間、5日、14日後に位相差顕微鏡にて細胞の接着や軸索の伸張を観察した。その結果を図6に示した。ε−ポリリジンを用いた場合、ノンコートカバーグラスと比較して明らかに細胞接着性が増大し、接着した細胞から軸索がより多く伸張していることがわかり、本発明のε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具は初代神経細胞の接着、培養に優れることが分かる。
参考例3)
コーティング乾燥プラスティックディッシュの作製
ε−ポリリジン塩酸塩(ε−ポリリジン(数平均分子量4,000)の塩酸塩、チッソ(株)製)を0.1Mホウ酸緩衝液にて溶解し、0.2及び1.0mg/mlの濃度のε−ポリリジン塩酸塩溶液を調製した。3.5cmプラスティックディッシュ(Greiner Bio-One社製、Petri Dish、ポリスチレン製、接触角65〜70°)に100%エタノールを入れ室温(23℃)で30分間静置した。超純水で2回洗浄(1回の洗浄で10分間振とう)後、ε−ポリリジン塩酸塩溶液2mlにつけて、室温(23℃)にて一晩静置した。滅菌水で2回洗浄(1回の洗浄で2時間振とう)後、乾熱滅菌器に入れ70℃で12時間静置し完全に乾燥させて、コーティング乾燥プラスティックディッシュを作製した。
コーティング量の定量
コーティングしたプラスティックディッシュに6M HClを加え、ディッシュをシーリングテープで覆った後、乾熱滅菌器にて70℃で1時間加熱し、コーティングしたポリリジンを溶解させた。放冷後6M HClを完全にガラス管に移し、6M HCl、20%PhOH溶液を加えて、溶液を6M HCl 0.1%PhOH溶液に調整した。ガスバーナーを用いて、ガラス管を封管した後、乾滅菌器で熱をかけ酸加水分解を行った(30分かけて120℃まで温度を上げ、120℃で5分間、続いて20分かけて150℃まで温度を上げ、150℃で2時間加熱処理)。室温(23℃)まで冷めてから、ガラス管の封管を開けて、口をパラフィルムで覆い注射針で2つ穴を開けてデシケーターに入れ、真空ポンプで減圧しHClを飛ばした。HClを飛ばしたガラス管に0.02M HCl溶液を100μl加えアミノ酸を溶解し、濾過フィルター付きのエッペンドルフチューブ(Millipore社製、Ultrafree-MC 0.1μm Filte Unit)に滴下し、続いて0.02M HCl溶液50μlでガラス管内をもう一度すすぎ、濾過フィルターに入れ、最終的には150μlで溶解した。フィルター付きエッペンドルフチューブを2000rpmで5分間遠心し、濾過後、濾液をアミノ酸分析に供しリジンの定量を行った。この値から求めたε−ポリリジン塩量をプラスティックディッシュの表面積で除してコーティング量を求めた。ε−ポリリジン塩酸塩のコーティング量は、濃度0.2mg/mlの溶液でコーティングしたものが70ng/cm、及び濃度1.0mg/mlの溶液でコーティングしたものが135ng/cmであった。
(比較例3)
ε−ポリリジン塩酸塩を、α−ポリリジン臭化水素酸塩(数平均分子量15,000、和光純薬工業(株)製)に代えた以外は参考例3と同様にしてコーティング乾燥プラスティックディッシュを作製しコーティング量を定量した。0.2及び1.0mg/mlのα−ポリリジン臭化水素酸塩溶液で調製したときのコーティング量はそれぞれ50及び110ng/cmであった。
細胞培養試験(4)
参考例3、及び比較例3の手順で作成したコーティング乾燥プラスティックディッシュ、及び対照品となるノンコートプラスティックディッシュ内に、A549細胞(人肺ガン細胞、ATCCより入手)用のDME培地(牛胎児血清を10%含む)を1ml加えた。更に、ゆっくりとA549細胞懸濁液(1×10 cells/well)1mlを加え、20時間後に位相差顕微鏡にて細胞の接着、増殖の様子を観察した。その結果を図7に示した。ε−ポリリジン塩酸塩を用いたコーティング乾燥プラスティックディッシュの場合、ノンコートプラスティックディッシュ及びα−ポリリジン臭化水素酸塩を用いたコーティング乾燥プラスティックディッシュと比較して明らかに細胞接着性が増大し、接着した細胞骨格が良好となっており、本発明のε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具は、プラスティック製品においても優れた細胞接着性、培養性能を示す事が明白である。
参考例4)
コーティング乾燥プラスティックプレートの作製
ε−ポリリジン塩酸塩(ε−ポリリジン(数平均分子量4,000)の塩酸塩、チッソ(株)製)を0.1Mホウ酸緩衝液にて溶解し、0.2及び1.0mg/mlの濃度のε−ポリリジン塩酸塩溶液を調製した。24well plate(FALCON polystyrene ノントリートメント プレート、接触角80〜84°)に100%エタノールを入れ室温(23℃)で30分静置した。超純水で2回洗った(1回の洗いで10分間振とう)後、ε−ポリリジン塩酸塩溶液1mlにつけて、室温(23℃)にて一晩静置した。滅菌水で2回洗浄(1回の洗いで2時間振とう)後、乾熱滅菌器に入れ70℃で12時間静置して完全に乾燥させて、コーティング乾燥プラスティックプレートを作製した。コーティングプラスティックディッシュをコーティング乾燥プラスティックプレートに置き換えた以外は参考例3と同様にしてコーティング量を定量した。0.2及び1.0mg/mlのε−ポリリジン塩酸塩溶液で調製したときのコーティング量はそれぞれ50及び140ng/cmであった。
(比較例4)
ε−ポリリジン塩酸塩を、α−ポリリジン臭化水素酸塩(数平均分子量15,000、和光純薬工業(株)製)に代えた以外は参考例4と同様にしてコーティング乾燥プラスティックプレートを作製しコーティング量を定量した。0.2及び1.0mg/mlのα−ポリリジン臭化水素酸塩溶液で調製したときのコーティング量はそれぞれ35及び100ng/cmであった。
細胞培養試験(5)
参考例4、及び比較例4の手順で作製したコーティング乾燥プラスティックプレート、及び対照品となるノンコートプレート内に、HeLa D98細胞(人子宮癌細胞)用のDME培地(牛胎児血清を10%含む)を含む細胞懸濁液(1×10 cells/well)1mlを加えた。20時間後に位相差顕微鏡にて細胞の接着、増殖の様子を観察した。結果を図8に示した。ε−ポリリジン塩酸塩を用いたコーティング乾燥プラスティックプレートの場合、A549細胞の場合と同様にHeLa D98細胞でも、ノンコートプレート及びα−ポリリジン臭化水素酸塩を用いたコーティング乾燥プラスティックプレートと比較して明らかに細胞接着性が増大し、接着した細胞骨格が良好であり、本発明のε−ポリリジン類でコーティングされた細胞培養器具は、プラスティックプレートにおいても優れた細胞接着、培養性能を示す事が明白である。
(実施例
高分子量化ε−ポリリジンの製造
ε−ポリリジン(数平均分子量4,000、チッソ(株)製)100mgをガラスマイクロチューブに入れ、ガラスチューブオーブン(柴田科学(株)製、Shibata GTO-350-RD)を用い、真空中185℃で40分間脱水縮合を行ない、分子量の範囲が20,000〜70,000の高分子量化ε−ポリリジンを製造した。尚、分子量の測定はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって行った。
コーティング乾燥カバーガラスの作製
実施例で製造した高分子量化ε−ポリリジンを0.1Mホウ酸緩衝液に溶解し、0.05及び0.2mg/mlの濃度の高分子量化ε−ポリリジン溶液を調製した。10cmプラスチックシャーレに丸型カバーガラス(松浪硝子工業(株)製、12mm)を並べ、100%エタノールを約15ml入れ、室温(23℃)で30分静置した。超純水で2回洗った(1回の洗いで10分間振盪)後、24well plate(FLCON polystyrene、ノントリートメントプレート)に移し、上記の高分子量化ε−ポリリジン溶液1mlを加えて室温(23℃)で20時間静置した。滅菌水で2回洗った(1回の洗いで2時間振盪)後、乾熱滅菌器に入れ70℃で12時間静置し完全に乾燥させて、コーティング乾燥カバーガラスを作製した。参考例1と同様にしてコーティング量を定量した。基材表面の細胞培養に供する部分における高分子量化ε−ポリリジンのコーティング量は、130ng/cm及び140ng/cmであった。
参考例5
高分子量化ε−ポリリジンを、ε−ポリリジン塩酸塩(ε−ポリリジン(数平均分子量4,000)の塩酸塩、チッソ(株)製)に代えた以外は実施例と同様にしてコーティング乾燥カバーガラスを作製した。参考例1と同様にしてコーティング量を定量した。基材表面の細胞培養に供する部分におけるε−ポリリジン塩酸塩のコーティング量は、610ng/cm及び920ng/cmであった。
細胞培養試験(6)
実施例及び参考例5で作製したコーティング乾燥カバーガラスに2×104 cells/mlに調製したラット大脳皮質ニューロン初代培養細胞懸濁液を1ml/wellずつ加えた。37℃で培養を行い、10及び20日後に位相差顕微鏡にて細胞の接着や軸索の伸張を観察した。結果を図9に示す。図より、培養10日目では高分子量化ε−ポリリジンよりもε−ポリリジン塩酸塩をコーティングしたカバーガラスの方が細胞の接着性、軸索のネットワークともに良好であるが、培養20日目では逆に高分子量化ε−ポリリジンをコーティングしたカバーガラスの方が細胞の成育、軸索ネットワークの形成が良好であった。本試験結果より、ニューロン細胞を長期的に培養するような場合には高分子量化ε−ポリリジンが細胞接着性や軸索ネットワークの形成に適していることが分かる。
本発明の細胞培養器具(ガラス未乾燥品)におけるA549細胞培養観察。 本発明の細胞培養器具(ガラス乾燥品)におけるA549細胞培養観察。 ポリリジン塩コーティング細胞培養器具における生A549細胞数評価。 ポリリジン塩コーティング細胞培養器具におけるポリリジン塩吸着量。 Cell Counting Kit-8により評価したポリリジン塩溶液 処理後のA549細胞生存率。 本発明の細胞培養器具(ガラス未乾燥品)における神経細胞培養観察。 本発明の細胞培養器具(プラスティックディッシュ)におけるA549細胞培養観察。 本発明の細胞培養器具(プラスティックプレート)におけるHeLa D98細胞培養観察。 本発明の細胞培養器具(ガラス乾燥品)における初代神経細胞培養観察。

Claims (13)

  1. 基材表面が、ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液によりコーティングされていることを特徴とする細胞培養器具。
  2. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体の数平均分子量が8,000〜100,000である請求項1記載の細胞培養器具。
  3. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種のコーティング量が1ng/cm2〜500μg/cm2である請求項1または2記載の細胞培養器具。
  4. 基材がガラスである請求項1〜3のいずれか1項記載の細胞培養器具。
  5. 基材が合成樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の細胞培養器具。
  6. 基材表面をε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液に接触させる工程を含むことを特徴とする、基材表面がε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされている細胞培養器具の製造方法。
  7. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体の数平均分子量が8,000〜100,000である請求項6記載の細胞培養器具の製造方法。
  8. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液に接触させる工程の後に、該表面を乾燥する工程を含む請求項6または7記載の細胞培養器具の製造方法。
  9. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液に接触させる工程の後に、過剰な該溶液を除去する工程を含む請求項6または7記載の細胞培養器具の製造方法。
  10. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液に接触させる工程の後に、過剰な該溶液を除去する工程を含み、更にその後に該表面を乾燥する工程を含む請求項6または7記載の細胞培養器具の製造方法。
  11. ε−ポリ−L−リジンの高分子量化誘導体、及びその塩から選ばれた少なくとも1種を水を含む溶媒に溶解した溶液の溶媒がホウ酸緩衝液である請求項6〜10のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
  12. 基材がガラスである請求項6〜11のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
  13. 基材が合成樹脂である請求項6〜11のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
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