JP4837226B2 - 光触媒体及び光触媒体の製造方法 - Google Patents

光触媒体及び光触媒体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒体及び光触媒体の製造方法に関し、特に、チタンなどの金属酸化物の結晶性薄膜を備え光の照射により活性種の生成を促進する光触媒作用を有する光触媒体及び光触媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化チタンなどのチタン酸化物を用いた光触媒体が注目を集めている。「光触媒体」とは、半導体的な物性を有し、その伝導電子帯と荷電子帯とのバンドギャップエネルギーより大きなエネルギーを有する光が照射されると励起状態となり、電子・正孔対を生成する物質のことである。
【0003】
二酸化チタンの場合、387nm以下の波長の光が照射されると光励起され、その内部に電子・正孔対が生成される。すると、その電子正孔対により光触媒膜の表面及びその近傍に、水酸基ラジカルや、スーパーオキサイドイオン等の活性酸素種が発生し、これらの活性酸素種の持つ酸化力が分解活性や親水化を引き起こす。そこで、これらの作用を利用して自己洗浄作用や、脱臭作用、抗菌作用等を得ることができ、光触媒体を被覆した各種の部材、商品群が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の二酸化チタンの場合、酸素原子の空孔などの欠陥が存在すると、その欠陥が電子・正孔の再結合センターとして作用し、光触媒特性が低下するという問題があった。
【0005】
この問題に対して、特開2002−105641号公報においては、アモルファス(非晶質)構造のチタン酸化物のTi(チタン)−O(酸素)−Ti結合のネットワークが切断されてTi−OH結合により終端された構造を部分的に有する光触媒体が開示されている。これは、チタンのアルコキシドを原料としてプラズマCVD法によりチタン酸化膜を形成すると、アルコキシドが分解してOH基により終端されたアモルファス状の薄膜が得られるというものである。
【0006】
しかし、本発明者の独自の検討の結果、このようなアモルファス状のチタン酸化物は、終端処理により親水性がやや改善されるものの、分解特性は未だ低く、改善の余地が大きいことが判明した。
【0007】
本発明はかかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、親水性とともに分解特性にも優れ、生産性も向上できる光触媒体及び光触媒体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の光触媒体は、基体と、前記基体の上に設けられた光触媒膜と、を備えた光触媒体であって、前記光触媒膜は、スパッタリング法により、前記基体の表面に、チタンと、酸素と、水と、を供給することにより形成したアナターゼ構造の化合物を主成分とし、前記化合物は、OH基を含み、前記OH基は、前記チタンと結合してなることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、親水性とともに分解特性にも優れ、生産性も向上できる光触媒体を提供できる。
【0011】
ここで、前記OH基は、前記チタンと結合してなるものとすれば、光励起された電子とホールとが再結合する結合の欠陥を減らして、良好な光触媒特性を得ることができる。
【0014】
一方、本発明の光触媒の製造方法は、基体と、前記基体の上に設けられた光触媒膜と、を有する光触媒体の製造方法であって、前記基体を加熱し、スパッタリング法により、前記基体の表面に、チタンと、酸素と、水と、を供給することによりアナターゼ構造の化合物を主成分としチタンと結合したOH基を含む前記光触媒膜を形成することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、親水性とともに分解特性にも優れ、生産性も向上できる光触媒体を提供できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、具体例を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる光触媒体の断面構造を例示する模式図である。
【0021】
この光触媒体は、基体100の上に薄膜状に被覆された光触媒膜10を有する。基体100の材料としては、ガラスやセラミクスなどの無機材料、ステンレスなどの金属材料、あるいは高分子材料などの有機材料など、各種の材料を用いることができ、またその形状やサイズも適宜決定することができる。
【0022】
光触媒膜10の材料としては、金属の酸化物を主成分とする物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを挙げることができる。これらのうちでも、特に、酸化チタンは、光触媒として活性であり、また、安定性や安全性などの点でも優れる。そこで、以下、金属酸化物として酸化チタンを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0023】
本発明の光触媒膜10は、アナターゼ構造の金属酸化物を含み、さらにその金属酸化物中の金属元素と酸素元素との結合の一部が、金属元素とOH基との結合に置換されている点に特徴のひとつを有する。後に詳述するように、このような独特の構成により、従来よりも優れた光触媒特性が得られる。
【0024】
すなわち、アナターゼ型結晶構造を有する二酸化チタンの場合、387nm以下の波長の光が照射されると光励起され、その内部に電子・正孔対が生成される。すると、その電子正孔対により光触媒膜の表面及びその近傍に、水酸基ラジカルや、スーパーオキサイドイオン等の活性酸素種が発生し、これらの活性酸素種の持つ強力な酸化力が分解活性と親水化を引き起こす。
【0025】
なお、このような光触媒膜10と基体100との間には、必要に応じてバッファ層20を設けてもよい。バッファ層20は、基体100の表面状態を改善し、光触媒膜10の付着強度、膜質、耐久性などを改善する役割を有する。バッファ層20の材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)などを用いることができる。
【0026】
本発明の光触媒膜は、反応性スパッタリング法により作成することができる。
【0027】
図2は、本発明者が用いたスパッタ装置の要部構成を表す模式図である。すなわち、真空チャンバ101の内部には、金属チタンからなるターゲット102が陰極103に接続して設けられる。一方、陽極104側には、光触媒膜を堆積する基板100が設置される。
【0028】
成膜に際しては、まず、真空排気ポンプ106によりチャンバ101内を真空状態にして、ガス供給源107からアルゴン(Ar)、酸素(O)、及び水(HO)または水素(H)の少なくともいずれかのガス、を導入する。なお、水(HO)は、エバポレータに収容して、その周囲をヒータにより適宜加熱して圧力を調節しながら、マスフロー・コントローラ(MFC)により、チャンバ101内に導入した。
【0029】
このように、ガスを導入した状態で、電源110により陽極104と陰極103の間に電界を印加し、プラズマ放電108を開始する。すると、ターゲット102の表面がスパッタリングされ、金属チタンと酸素とが基板100の上で結合して酸化チタン膜10が形成される。ここで、電源110から投入する電力は、DC(直流)電力でもよく、RF(高周波)電力でもよい。
【0030】
以下に説明する具体例においては、特に明記しない限り、DC電源を用いたDCスパッタリング法により光触媒膜を形成した。
【0031】
また、スパッタリングに際して、基板100は、チャンバ101(接地電位)からはフローティング状態とした。
【0032】
後に詳述するように、このようなスパッタリング装置において、プラズマ放電のための投入電力、スパッタリング時の雰囲気ガスの圧力および組成、基板温度などを調節することにより、所定の膜質の光触媒膜が得られる。
【0033】
なお、基板100の温度は、サーモラベル109をその上に貼付して確認した。
【0034】
図3は、本発明者が作成した光触媒膜のX線回折パターンを表すグラフ図である。すなわち、同図(a)は、X線ディフラクト・メータ法により測定した回折パターンであり、横軸は回折角度(2θ)、縦軸は回折強度(任意単位)をそれぞれ表す。また、同図(b)は基板として用いたシリコン、同図(c)はアナターゼ構造のTiO、同図(d)はルチル構造のTiOの典型的な回折ピークをそれぞれ表す。
【0035】
測定試料としては、シリコン・ウェーハの上に形成した酸化チタンを用いた。
その形成条件は、以下の如くである。
基板温度 :300℃
膜厚 :135nm
堆積速度 :26〜30nm/分
酸素分圧(O2/(Ar+O2)):30%
全圧 :1.0〜1.4Pa(パスカル)
水(HO)添加量 :0〜70SCCM
図3においては、シリコン基板からの回折ピークは、例えば、Si(200)の如く、アナターゼ構造の酸化チタンの回折ピークは、例えばA(101)の如く、ルチル構造の酸化チタンの回折ピークは、例えばR(110)の如く表した。
【0036】
図3においては、アナターゼ構造の回折ピークとルチル構造の回折ピークとが観察される。すなわち、本発明者が得た酸化チタンは、アナターゼ構造の酸化チタンとルチル構造の酸化チタンとの混合体であることが分かる。
【0037】
図4は、X線回折パターンの一部を拡大したグラフ図である。すなわち、同図においては、アナターゼ構造の酸化チタンのメインピークであるA(101)回折ピークと、ルチル構造の酸化チタンのメインピークであるR(110)回折ピークが拡大して表されている。これら回折ピークの高さの比は、およそ9:2であり、アナターゼ構造の占める割合がはるかに大きいことが分かる。
【0038】
また、これら回折ピークの半値幅に注目すると、アナターゼ(101)ピークの半値幅が0.283であるのに対して、ルチル(110)ピークの半値幅は0.399と大きい。これら回折ピークの高さを考慮すると、光触媒膜10の大部分を占めるアナターゼ構造の結晶性は、ルチル構造の結晶性よりも大幅に良好であることが推測される。
【0039】
つまり、本発明における光触媒膜10は、アナターゼ構造を有する酸化チタンがその大部分を占め、結晶性も良好であることが分かる。
【0040】
図5は、比較例として作成した非晶質状の酸化チタン膜から得られるX線回折パターンの典型例を表すグラフ図である。すなわち、同図は、反応性スパッタ法により得られた膜厚約135nmの非晶質状の酸化チタン膜の評価結果である。その成膜条件は、全圧1Pa(パスカル)、DC投入電力2kW、酸素添加率30%とした。また、ここでは、測定感度を上げるために、微小角入射法を用いてX線回折パターンを5回積算測定した結果を例示する。
【0041】
図5を見ると、回折角度2θが約24度の付近を中心としたブロードなハロー・パターンのみが観察され、結晶に起因するシャープなピークの存在は認められない。つまり、この酸化チタン膜は、実質的な非晶質状であることが分かる。
【0042】
次に、本発明者は、これらの酸化チタン膜について、湿式分解性能試験を行った。被分解色素としては、メチレンブルー(C1618S・Cl)を用いた。メチレンブルーは、青色の有機色素であり、紫外線によって殆ど分解されず、光触媒の分解活性により不可逆的に分解されて無色になることから、光触媒膜の分解性評価に用いることができる。
【0043】
図6は、湿式分解性能試験の手順を表すフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS1として表したように、酸化チタン膜の試験片を精製水、界面活性剤、及び必要に応じて超音波洗浄により洗浄する。さらに、洗浄後の試験片に、ブラックライト蛍光ランプにて波長360nmで強度が1mW/cm2以上の紫外線を24時間以上照射し、洗浄後にも表面に残留した有機物などの汚れを光触媒作用により分解する。
【0045】
次に、ステップS2として表したように、メチレンブルーを試験片の表面に飽和吸着させる。すなわち、試験片の表面にメチレンブルーが吸着することによるスペクトルの変化をキャンセルするために、予め飽和量まで表面にメチレンブルーを吸着させる。吸着液として用いるメチレンブルーの濃度は、0.02mmol/l とした。新しい吸着液を試験片に12時間接触させ、吸着液の吸光度に低下が生じなくなるまで吸着プロセスを繰り返す。
【0046】
このようにして試験片の表面にメチレンブルーを飽和吸着させたら、次に、ステップS3において、初期吸光スペクトルを測定する。この際の、メチレンブルー試験液の濃度は、0.01mmol/l とした。
【0047】
次に、ステップS4において、光照射後のスペクトルを測定する。すなわち、メチレンブルー試験液をセルに入れた状態で試験片の表面に接触させた状態で、1mW/cm2の紫外線を20分間照射する。光照射後、直ちにメチレンブルー試験液の吸光スペクトルを測定する。そして、測定した試験液を速やかにセルに戻し、試験片の表面に接触させた状態で、再び20分間、紫外線を照射する。
【0048】
このようにして、20分毎に、紫外線照射後のメチレンブルー試験液の吸光スペクトルを測定し、照射時間の合計が3時間になるまで、9回の測定を行う。光触媒膜の分解特性が高いほど、メチレンブルーが迅速に分解されて脱色する。つまり、吸光特性が低下する。
【0049】
図7は、湿式分解性能試験の結果を例示するグラフ図である。すなわち、同図の横軸は紫外線の照射時間、縦軸は吸光度から換算したメチレンブルー濃度を表す。
【0050】
また図7には、図3及び図4に例示したようなアナターゼ構造の酸化チタンの分解データと、図5に例示した非晶質の酸化チタンの分解データをそれぞれ表した。
【0051】
まず、比較例としての非晶質のデータを見ると、メチレンブルーの初期濃度が10.0(μmol/l)であったのに対し、紫外線を20分間照射すると約9.5まで低下するが、その後、分解は進まず、180分に達するまで殆ど横ばい状態となっている。また、水(HO)を添加しても分解特性に有意な改善は見られない。
【0052】
これに対して、アナターゼ構造の酸化チタンの場合、紫外線の照射に伴ってメチレンブルー濃度は連続的に低下し、光触媒作用が活性であることが分かる。さらに、水(HO)の添加量を、0から10、40、70SCCMと増加するに従い、分解が顕著になり、光触媒作用が大幅に改善されることが分かる。
【0053】
このように、アナターゼ構造の酸化チタンは、非晶質の酸化チタンと比べて、光触媒作用が顕著であり、さらに、水(HO)の添加によって、光触媒作用がさらに改善されるという特質を有することが判明した。また、同様の光触媒特性の改善は、水(HO)の代わりに水素(H)を添加しながら形成したアナターゼ構造の酸化チタンの場合にも確認された。
【0054】
次に、本発明者は、水(HO)を添加して形成したアナターゼ構造の酸化チタン膜をFT−IR(高速フーリエ変換赤外分光光度計)により評価した。
【0055】
図8は、透過法により測定した酸化チタンの吸収スペクトルを表すグラフ図である。ここで、サンプルAは、水(HO)を添加せずに形成したアナターゼ構造の酸化チタン膜であり、サンプルBは、水(HO)を70SCCM添加しながら形成したアナターゼ構造の酸化チタン膜である。
【0056】
この吸収スペクトルから、波数440cm−1付近にTi−O結合のTO(transverse optic)モードに対応する吸収が観察された。この吸収ピークから、サンプルA及びサンプルBは、共にアナターゼ構造のTiOを主成分とすることが考えられる。
【0057】
図9は、反射法により測定したサンプルA及びBの吸収スペクトルを表すグラフ図である。このデータは、ATR(Attenuated Total Reflection:全反射吸収)法により測定した。
【0058】
図9から、サンプルA及びBのいずれにも、波数700cm−1付近にTi−O(チタン−酸素)結合に対応する吸収が見られる。また、波数780cm−1付近には、Ti−O結合のLO(longitudinal optic)モードに対応すると考えられる吸収ピークが見られる。
【0059】
また、サンプルBにおいては、波数1210cm−1付近に、SiOの伸縮振動(LOモード)に対応すると考えられる吸収ピークが見られる。すなわち、水(HO)を添加したサンプルBの場合、シリコン基板100と光触媒膜10との間に、シリコン基板10が酸化されて形成された酸化シリコンの界面酸化膜が存在するものと考えられる。
【0060】
図10は、波数600〜4000cm−1付近の吸収スペクトルの差分を表すグラフ図である。
【0061】
また、図11は、このスペクトルの波数2600〜3800cm−1付近の拡大図である。ここで、図10及び図11は、サンプルB(水添加)の吸収スペクトルデータからサンプルAの吸収スペクトルデータを差し引いた、差分の吸収スペクトルを表すものである。
【0062】
これらのグラフから、水(HO)を添加したサンプルBは、サンプルAに比べて波数3400cm−1付近に有意な吸収ピークを有することが分かる。この吸収ピークは、チタン原子に結合したOH基の伸縮振動に対応するものであると考えられる。すなわち、本発明の光触媒膜においては、酸化チタンの成膜中に水(HO)を添加することにより、酸化チタン中のチタン原子の結合手がOH基により終端されている。そして、金属酸化物が、このようなOH基による終端構造を有すと、図7に表したように、優れた分解特性が得られるものと考えられる。
【0063】
なお、Ti−H(チタン−水素)結合の吸収ピークは、波数2000〜2100cm−1に表れるが、図10においては、有意なピークは見られない。つまり、これらアナターゼ構造の酸化チタン膜においては、Ti−H結合は少ないと考えられる。すなわち、本発明においては、チタンの結合手が水素(H)により終端されているのではなく、OH基により終端されているという特徴が見られる。
【0064】
酸化チタンなどの金属酸化物の場合、金属原子と酸素原子との結合は必ずしも完全ではなく、金属元素の結合手に、不対結合や、いわゆる「ダングリング・ボンド」などの欠陥が存在することが考えられる。光触媒膜における光触媒作用は、光の照射により発生した電子とホール(正孔)との作用による。しかし、金属酸化物中にこのような結合の欠陥が存在すると、励起された電子とホールとが再結合する確率が増加し、光触媒作用が低下してしまう。
【0065】
これに対して、本発明によれば、金属原子のダングリング・ボンドなどをOH基により終端し、光励起された電子とホールの再結合を防ぐことができる。その結果として、優れた光触媒作用を得ることができるものと考えられる。
【0066】
また、本発明によれば、このようなOH基による終端構造を、成膜中に水(HO)を添加することにより得ることができる。この方法は、工業的に見て極めて簡単であり、高活性な光触媒体を、低コストで安定した量産が容易である点も優れる。
【0067】
さらに、図2に例示したようなスパッタ法により光触媒膜を形成すると、緻密で付着強度が高い膜を容易に形成できる。その結果として、各種の用途において安定した特性と信頼性を有する光触媒体を組み合わせることが可能となる。
【0068】
以上具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0069】
例えば、本発明における光触媒膜としては、酸化チタン(TiO)に限定されず、酸化チタンに所定の元素を添加したものや、その他、光触媒作用を有する金属酸化物を用いて同様の効果を得ることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
【0070】
また、本発明の光触媒体において、基体100として適用しうるものは、例えば、自動車用のバックミラー、ボディあるいは窓ガラス、また、その他バスルーム用などの各種の鏡、建築用外壁材、バスルーム用内壁材、便器、流し、道路標識、陰極線管や液晶ディスプレイあるいはプラズマディスプレイなどの各種のディスプレイの画面表面、太陽電池パネル、各種表示体の外装材などさまざまなものを包含する。
【0071】
さらにまた、本発明の製造方法において光触媒膜の堆積方法として用いる方法は、DCスパッタリング法には限定されず、RFスパッタリング法や、真空蒸着法など、非晶質状の金属酸化物を得ることができるすべての方法を包含する。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、分解特性に優れた高活性な光触媒体を提供することができ、これを用いた各種の被覆体を市場に供給できる点で産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光触媒体の断面構造を例示する模式図である。
【図2】本発明者が用いたスパッタ装置の要部構成を表す模式図である。
【図3】本発明者が作成した光触媒膜のX線回折パターンを表すグラフ図である。
【図4】X線回折パターンの一部を拡大したグラフ図である。
【図5】比較例として作成した非晶質状の酸化チタン膜から得られるX線回折パターンの典型例を表すグラフ図である。
【図6】湿式分解性能試験の手順を表すフローチャートである。
【図7】湿式分解性能試験の結果を例示するグラフ図である。
【図8】透過法により測定したサンプルA及びBの吸収スペクトルを表すグラフ図である。
【図9】反射法による酸化チタン膜の吸収スペクトルを表すグラフ図である。
【図10】波数600〜4000cm−1付近の吸収スペクトルの差分を表すグラフ図である。
【図11】図10のスペクトルの波数2600〜3800cm−1付近の拡大図である。
【符号の説明】
10 光触媒膜
20 バッファ層
100 基体
101 チャンバ
102 ターゲット
103 陰極
104 陽極
106 真空排気ポンプ
107 ガス供給源
108 プラズマ放電
109 サーモラベル
110 電源

Claims (2)

  1. 基体と、前記基体の上に設けられた光触媒膜と、を備えた光触媒体であって、
    前記光触媒膜は、スパッタリング法により、前記基体の表面に、チタンと、酸素と、水と、を供給することにより形成したアナターゼ構造の化合物を主成分とし、
    前記化合物は、OH基を含み、
    前記OH基は、前記チタンと結合してなることを特徴とする光触媒体。
  2. 基体と、前記基体の上に設けられた光触媒膜と、を有する光触媒体の製造方法であって、
    前記基体を加熱し、スパッタリング法により、前記基体の表面に、チタンと、酸素と、水と、を供給することによりアナターゼ構造の化合物を主成分としチタンと結合したOH基を含む前記光触媒膜を形成することを特徴とする光触媒体の製造方法。
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